(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】蓄電素子の管理装置、及び、管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220301BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20220301BHJP
G01R 31/36 20200101ALI20220301BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
H02J7/00 302D
B60R16/04 W
G01R31/36
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2017251526
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 敦史
(72)【発明者】
【氏名】白石 剛之
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-216879(JP,A)
【文献】特開2007-216838(JP,A)
【文献】特開2001-313081(JP,A)
【文献】特表2015-514382(JP,A)
【文献】特開2000-134705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
G01R 31/36
B60R 16/04
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源の始動及び機器への電力供給に用いられる蓄電素子の管理装置であって、
前記蓄電素子の状態に関する物理量を計測する計測部と、
前記蓄電素子を管理する管理部と、
を備え、
当該管理装置は、前記計測部によって所定の周期で前記物理量を計測する第1のモードと、前記所定の周期より長い周期で前記物理量を計測する第2のモードとを有し、
前記管理部は、前記動力源に関する第1の所定条件が成立すると当該管理装置を前記第2のモードで動作させ、前記第2のモード中に前記蓄電素子に関する第2の所定条件が成立した場合は前記第1の所定条件が成立していても当該管理装置を前記第1のモードに移行させ
、
前記第2の所定条件は、前記蓄電素子の過放電が予見されたことである、蓄電素子の管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記第1の所定条件は、前記動力源が停止していることである、蓄電素子の管理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記物理量は前記蓄電素子の電圧値を含み、
前記管理部は、前記第2のモード中に前記蓄電素子の電圧が所定の下限電圧値より高い所定の電圧値まで低下すると、前記蓄電素子の過放電が予見されたと判断する、蓄電素子の管理装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記物理量は前記蓄電素子に流れる電流の電流値を含み、
前記管理部は、前記計測部によって計測される電流値に基づいて前記蓄電素子の充電状態を推定し、前記第2のモード中に充電状態が所定の下限値より高い所定の充電状態まで低下すると、前記蓄電素子の過放電が予見されたと判断する、蓄電素子の管理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の蓄電素子の管理装置であって、
当該管理装置は前記蓄電素子と直列に接続されている遮断器を備え、前記遮断器を開いて電流を遮断する第3のモードを有し、
前記物理量は
前記蓄電素子の電圧値を含み、
前記管理部は、前記第2のモード中に前記計測部によって第4の基準値以下の電圧値が計測された場合は当該管理装置を前記第3のモードに移行させる、蓄電素子の管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記管理部は、前記第3のモード中に前記蓄電素子に充電器が接続されると当該管理装置を前記第1のモードに移行させる、蓄電素子の管理装置。
【請求項7】
動力源の始動及び機器への電力供給に用いられる蓄電素子の管理装置を用いた蓄電素子の管理方法であって、
前記管理装置は、前記蓄電素子の状態に関する物理量を所定の周期で計測する第1のモードと、前記所定の周期より長い周期で前記物理量を計測する第2のモードとを有し、
当該管理方法は、
前記動力源に関する第1の所定条件が成立すると前記管理装置を前記第2のモードで動作させる第1の工程と、
前記第2のモード中に前記蓄電素子に関する第2の所定条件が成立した場合は前記第1の所定条件が成立していても当該管理装置を前記第1のモードに移行させる第2の工程と、
を含
み、
前記第2の所定条件は、前記蓄電素子の過放電が予見されたことである、蓄電素子の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、蓄電素子の管理装置、及び、管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジン始動及び車載機器への電力供給に用いられる車載用の蓄電素子を管理する管理装置において、エンジン動作中は通常モードで動作し、エンジンが停止されると通常モードより消費電力が少ない省電力モードに移行するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、特許文献1に記載の電池管理装置(BMS)は、エンジン動作中は通常モードで動作し、エンジンが停止されると通常モードより消費電力が少ないスリープモード(省電力モードに相当)に移行する。そして、当該電池管理装置は、スリープモード中に車両のECUからエンジン始動信号を受信した後にイグニションオン信号を受信すると、エンジンが動作中であると判断して通常モードに切り替える。すなわち、当該電池管理装置はスリープモード中にエンジンが動作すると通常モードに移行するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
省電力モードでは蓄電素子から車載機器に電力が供給されるので、車載機器の電力使用状況によっては省電力モード中に蓄電素子の状態が短時間に大きく変化する。しかしながら、従来は省電力モード中に蓄電素子の状態が短時間に大きく変化することについて十分に検討されておらず、蓄電素子を適切に管理する上で改善の余地があった。
【0005】
本明細書では、蓄電素子の電力消費を抑制しつつ蓄電素子を適切に管理できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される蓄電素子の管理装置は、動力源の始動及び機器への電力供給に用いられる蓄電素子の管理装置であって、前記蓄電素子の状態に関する物理量を計測する計測部と、前記蓄電素子を管理する管理部と、を備え、当該管理装置は、前記計測部によって所定の周期で前記物理量を計測する第1のモードと、前記所定の周期より長い周期で前記物理量を計測する第2のモードとを有し、前記管理部は、前記動力源に関する第1の所定条件が成立すると当該管理装置を前記第2のモードで動作させ、前記第2のモード中に前記蓄電素子に関する第2の所定条件が成立した場合は前記第1の所定条件が成立していても当該管理装置を前記第1のモードに移行させる。
【0007】
上記の管理装置によると、蓄電素子の電力消費を抑制しつつ蓄電素子を適切に管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る車両及びバッテリを示す模式図
【
図6】時間と電圧との関係、及び、動作モードを説明するためのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本実施形態の概要)
本明細書によって開示される蓄電素子の管理装置は、動力源の始動及び機器への電力供給に用いられる蓄電素子の管理装置であって、前記蓄電素子の状態に関する物理量を計測する計測部と、前記蓄電素子を管理する管理部と、を備え、当該管理装置は、前記計測部によって所定の周期で前記物理量を計測する第1のモードと、前記所定の周期より長い周期で前記物理量を計測する第2のモードとを有し、前記管理部は、前記動力源に関する第1の所定条件が成立すると当該管理装置を前記第2のモードで動作させ、前記第2のモード中に前記蓄電素子に関する第2の所定条件が成立した場合は前記第1の所定条件が成立していても当該管理装置を前記第1のモードに移行させる。
【0010】
上述した物理量から推定される蓄電素子の状態が短時間に大きく変化している場合は、物理量を計測する周期が長いと、今回計測したときは蓄電素子の状態に異常がなくても次回計測したときには既に蓄電素子が異常な状態になっているということが起こり得る。このため、第2のモード中に蓄電素子の状態が短時間に大きく変化している場合は蓄電素子を適切に管理するために、第1の所定条件が成立していても第1のモードに移行して物理量を短い周期で計測することが望ましい。
また、上述した物理量に基づいて蓄電素子の異常が検出された場合、異常を一度検出しただけで直ちに異常と判断すると判断を誤る可能性があるので、異常が複数回検出された場合に異常と判断することが望ましい。その場合、物理量を計測する周期が長いと異常が複数回検出されるまでに時間を要し、異常に対する対応が遅れる虞がある。このため、第2のモード中に蓄電素子の異常が検出された場合は、異常であるか否かを早い時点で確定するために、言い換えると蓄電素子を適切に管理するために、第1の所定条件が成立していても第1のモードに移行して物理量を短い周期で計測することが望ましい。
このように、第1の所定条件が成立していても、蓄電素子を適切に管理するために管理装置を第1のモードに移行させることが望ましい場合がある。
上記の管理装置によると、第1の所定条件が成立すると第2のモードで動作するので、蓄電素子の電力消費を抑制できる。そして、第2のモード中に蓄電素子に関する第2の所定条件が成立した場合は第1の所定条件が成立していても第1のモードに移行するので、蓄電素子を適切に管理できる。よって上記の管理装置によると、蓄電素子の電力消費を抑制しつつ蓄電素子を適切に管理できる。
【0011】
前記第1の所定条件は、前記動力源が停止していることであってもよい。
【0012】
動力源が停止すると蓄電素子が充電されなくなるので、物理量を短い周期で計測すると蓄電素子の電力が早く消費されてしまう。上記の管理装置によると、動力源が停止すると第2のモードで動作するので、蓄電素子の電力消費を抑制できる。
【0013】
前記第2の所定条件は、前記計測部によって第1の基準値以上の前記物理量が計測されたこと、及び、第2の基準値以下の前記物理量が計測されたことの少なくとも一方であってもよい。
【0014】
蓄電素子の状態に関する物理量の中には、蓄電素子の状態の単位時間当たりの変化量と比例するものがある。例えば電流値がその例である。そのような物理量の場合は、第1の基準値以上の物理量が計測された場合は蓄電素子の状態が短時間に大きく変化しているとして物理量を短い周期で計測することが望ましい。
また、蓄電素子の状態の単位時間当たりの変化量と比例しない物理量の場合は、第1の基準値以上の物理量が計測された場合や、第2の基準値以下の物理量が計測された場合は蓄電素子の異常が予見されるとして物理量を短い周期で計測することが望ましい場合がある。例えば電圧値や温度がその例である。
上記の管理装置によると、蓄電素子の状態の単位時間当たりの変化量と比例する物理量の場合は、第1の基準値以上の物理量が計測された場合は蓄電素子の状態が短時間に大きく変化しているとして第1のモードに移行することにより、蓄電素子を適切に管理できる。また、蓄電素子の状態の単位時間当たりの変化量と比例しない物理量の場合は、第1の基準値以上の物理量が計測された場合や第2の基準値以下の物理量が計測された場合は異常が予見されるとして第1のモードに移行することにより、蓄電素子を適切に管理できる。
【0015】
前記管理部は前記物理量に基づいて前記蓄電素子の状態を推定し、前記第2の所定条件は、前記状態の単位時間当たりの変化量が第3の基準値以上であることであってもよい。
【0016】
上記の管理装置によると、蓄電素子の状態の単位時間当たりの変化量が第3の基準値より大きい場合は蓄電素子の状態が短時間に大きく変化しているとして第1のモードに移行することにより、蓄電素子を適切に管理できる。
【0017】
前記管理部は前記物理量に基づいて前記蓄電素子の異常を検出し、前記第2の所定条件は、前記異常が検出されたことであってもよい。
【0018】
上記の管理装置によると、異常が検出された場合は第1の所定条件が成立していても第1のモードに移行するので、早い時点で次の物理量を計測できる。このため異常であるか否かを早い時点で確定でき、早期に異常に対応できる。
【0019】
前記物理量は前記蓄電素子に流れる電流の電流値であり、前記第2の所定条件は、前記計測部によって前記第1の基準値以上の電流値が計測されたことであってもよい。
【0020】
電流値は蓄電素子の充電状態の推定に用いられるなど蓄電素子の状態との関連性が高いので、物理量として電流値を用いると蓄電素子を適切に管理できる。
【0021】
当該管理装置は前記蓄電素子と直列に接続されている遮断器を備え、前記遮断器を開いて電流を遮断する第3のモードを有し、前記物理量は、前記蓄電素子に流れる電流の電流値、及び、前記蓄電素子の電圧値であり、前記管理部は、前記第2のモード中に前記計測部によって第4の基準値以下の電圧値が計測された場合は当該管理装置を前記第3のモードに移行させてもよい。
【0022】
上記の管理装置によると、第2のモードから第1のモードに移行するときと第2のモードから第3のモードに移行するときとで移行の判断に用いる物理量が異なるので、モードを移行させるか否かを移行先のモードに応じて適切に判断できる。
【0023】
前記管理部は、前記第3のモード中に前記蓄電素子に充電器が接続されると当該管理装置を前記第1のモードに移行させてもよい。
【0024】
管理装置が第3のモードに移行しているときは遮断器が開いているので動力源を始動できない。その場合、例えば管理装置にスイッチを備え、動力源の運転者がスイッチを操作して管理装置を第1のモードに移行させることも考えられる。しかしながら、スイッチを操作すればよいことを必ずしも全ての運転者が知っているとは限らず、そのことを知らない運転者は動力源を始動させることができずに混乱する虞がある。これに対し、バッテリ上がりのときは充電器を接続すればよいことは多くの運転者が知っているので、スイッチを操作する場合に比べて動力源を始動できる可能性が高くなる。
【0025】
本明細書によって開示される蓄電素子の管理方法は、動力源の始動及び機器への電力供給に用いられる蓄電素子の管理装置を用いた蓄電素子の管理方法であって、前記管理装置は、前記蓄電素子の状態に関する物理量を所定の周期で計測する第1のモードと、前記所定の周期より長い周期で前記物理量を計測する第2のモードとを有し、当該管理方法は、前記動力源に関する第1の所定条件が成立すると前記管理装置を前記第2のモードで動作させる第1の工程と、前記第2のモード中に前記蓄電素子に関する第2の所定条件が成立した場合は前記第1の所定条件が成立していても当該管理装置を前記第1のモードに移行させる第2の工程と、を含む。
【0026】
上記の管理方法によると、蓄電素子の電力消費を抑制しつつ蓄電素子を適切に管理できる。
【0027】
本明細書によって開示される発明は、制御装置、制御方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【0028】
<実施形態1>
実施形態1を
図1ないし
図7によって説明する。以降の説明において、
図2及び
図3を参照する場合、電池ケース11が設置面に対して傾きなく水平に置かれた状態の電池ケース11の上下方向をY方向とし、電池ケース11の長辺方向に沿う方向をX方向とし、電池ケース11の奥行き方向をZ方向として説明する。
【0029】
(1)バッテリの構成
図1において車両2はガソリンエンジンやディーゼルエンジンを有するエンジン自動車である。バッテリ1は車両2に搭載されるものであり、車両2のエンジン(動力源の一例)を動力源とする発電機(オルタネータ)によって充電され、エンジンを始動させるスタータや車載機器(ヘッドライトやオーディオ、エアコン等)に電力を供給する。車載機器は機器の一例である。
【0030】
図2に示すように、バッテリ1はブロック状の電池ケース11を備えている。電池ケース11は上方に開口する箱型のケース本体13、ケース本体13の上部に装着される中蓋15、及び、中蓋15の上部に装着される上蓋16を有している。
図3に示すように、電池ケース11には複数の電池セル21(蓄電素子の一例)が直列接続された電池モジュール20、複数の電池セル21を位置決めする位置決め部材14、後述する管理部31(
図4参照)が実装されている制御基板18などが収容されている
【0031】
ケース本体13内には各電池セル21が個別に収容される複数のセル室13AがX方向に並んで設けられている。位置決め部材14の上面には複数のバスバー17が配置されており、セル室13Aに収容された複数の電池セル21の上部に位置決め部材14が配置されることで複数の電池セル21が位置決めされると共に、複数の電池セル21が複数のバスバー17によって直列に接続される。
【0032】
中蓋15は平面視略矩形状をなしており、Y方向に高低差が付けられている。中蓋15のX方向両端部には図示しないハーネス端子が接続される正極外部端子12P及び負極外部端子12Nが設けられている。制御基板18は中蓋15の内部に収容されており、中蓋15がケース本体13に装着されることで電池モジュール20と制御基板18とが接続される。
【0033】
(2)バッテリの電気的構成
図4を参照して、バッテリ1の電気的構成について説明する。バッテリ1は電池モジュール20、及び、電池モジュール20を管理する電池管理装置30(BMS:Battery Management System)を備えている。以降の説明では電池管理装置30のことをBMS30という。BMS30は蓄電素子の管理装置の一例である。
【0034】
前述したように電池モジュール20は複数の電池セル21が直列接続されたものである。各電池セル21は繰り返し充電可能な二次電池であり、具体的には例えばリチウムイオン電池である。電池モジュール20は複数の電池セル21が並列に接続されたものであってもよいし、直列と並列とを組み合わせて接続されたものであってもよい。複数の電池セル21の接続形態は適宜に決定できる。
【0035】
BMS30は電池セル21から供給される電力によって動作するものであり、管理部31、電流センサ32(計測部の一例)、電圧センサ33、温度センサ34、及び、リレー35(遮断器の一例)を備えている。
管理部31はCPU31A、ROM31B、RAM31C、通信部31D、割り込み回路31Eなどを備えている。ROM31Bには各種のプログラムやデータが記憶されている。CPU31AはROM31Bに記憶されているプログラムを実行することによってバッテリ1の各部を制御する。
【0036】
通信部31Dは車両2に搭載されているECUと通信するためのものである。管理部31がECUから受信する信号には、車両2のイグニションスイッチがイグニションオン位置にあるときに送信されるイグニションオン信号、エンジン始動位置にあるときに送信されるエンジン始動信号、アクセサリ位置にあるときに送信されるアクセサリ信号、ロック位置にあるときに送信されるロック信号などが含まれる。
【0037】
割り込み回路31Eはバッテリ1に外部の充電器が接続された場合にCPU31Aに起動電圧を印加する回路である。
図5に示すように割り込み回路31Eは一端が電流経路36に接続されており、他端が接地されている。割り込み回路31Eは直列に接続されたリレー41、分圧抵抗42及び分圧抵抗43を有しており、二つの分圧抵抗42,43の間から分岐する信号線44がCPU31Aの所定の入力ポートに接続されている。
【0038】
リレー41は電力供給が停止されても切り替えられた状態を維持するラッチ型であり、CPU31Aによって開閉される。詳しくは後述するが、BMS30の動作モードにはディープスリープモードがある。ディープスリープモードではCPU31Aは動作を停止する。CPU31Aはディープスリープモードに移行するときにリレー41を閉じ、ディープスリープモード中に入力ポートに起動電圧が印加されると動作を再開してリレー41を開く。
【0039】
図4に示すように、電流センサ32は電池モジュール20と直列に設けられている。電流センサ32は充電時にオルタネータから電池モジュール20に流れる充電電流の電流値I[A]、及び、放電時に電池モジュール20から車両2のスタータや車載機器に流れる放電電流の電流値I[A]を計測して管理部31に出力する。以降の説明では充電電流と放電電流とを区別しない場合は充放電電流という。電流値は物理量の一例である。
【0040】
電圧センサ33は各電池セル21の両端に並列に接続されている。電圧センサ33は各電池セル21の端子電圧である電圧値V[V]を計測して管理部31に出力する。
温度センサ34はいずれか一つの電池セル21に設けられており、その電池セル21の温度[℃]を計測して管理部31に出力する。温度センサ34は二以上の電池セル21にそれぞれ設けられていてもよい。また、一つの電池セル21に複数の温度センサ34が設けられてもよい。
【0041】
リレー35は電池モジュール20と直列に設けられている。リレー35は電池セル21の過充電や過放電が予見される場合や後述するディープスリープモードに移行した場合に電流経路36を遮断するためのものである。リレー35はラッチ型であり、管理部31によって開閉される。
【0042】
(3)電池セルの管理
電池セル21の管理には電池の保護や異常に対する対応などの種々の管理があるが、ここでは電池の保護について説明する。
管理部31は電池セル21の充電状態(SOC:State Of Charge)を推定し、過充電や過放電が予見される場合はリレー35を開いて電池セル21を過充電や過放電から保護する。ここではSOCを推定する手法として電流積算法を例に説明する。
【0043】
電流積算法は電池セル21の充放電電流を常時計測することで電池セル21に出入りする電力量を計測し、これを初期容量から加減することでSOCを推定する手法である。電流積算法は電池セル21の使用中でもSOCを推定できるという利点がある反面、常に電流を計測して充放電電力量を積算するので電流センサ32の計測誤差が累積して次第に不正確になる虞がある。
【0044】
このため、管理部31は、電流値が基準値以下のときの電池セル21の両端電圧(OCV:Open Circuit Voltage)とSOCとの間に比較的精度の良い相関関係があることを利用し、電流積算法によって推定したSOCを電池セル21の両端電圧に基づいてリセットする。
具体的には、管理部31は電池セル21のOCVを計測し、予め記憶しておいたOCVとSOCとの相関関係を参照して当該計測したOCVに対応するSOCを特定する。そして、管理部31は電流積算法によって推定されているSOCを当該特定したSOCでリセットする。SOCをリセットすると電流積算法における誤差の累積が断ち切られるので、SOCの推定精度を高めることができる。
【0045】
上述した両端電圧は電流値が基準値以下のときの両端電圧に限定されるものではなく、電流値が基準値以下のときの電池モジュール20の単位時間当たりの電圧変化量が所定の規定量以下であるという条件を満たしているときの電池モジュール20の両端電圧であってもよい。
【0046】
(4)BMSの動作モード、及び、動作モードの切り替え
次に、
図6を参照して、BMS30の動作モード、及び、動作モードの切り替えについて説明する。
図6において実線45は電池セル21の電圧の変化を示している。再利用不可電圧値(例えば0.5V)はそれ以上電圧が低下すると電池セル21の再利用が禁止される電圧である。
【0047】
図6に示すように、BMS30の動作モードには通常モード(第1のモードの一例)、スリープモード(第2のモードの一例)、及び、ディープスリープモード(第3のモードの一例)がある。管理部31は、電池セル21の電圧の低下(言い換えると電池セル21の電力消費)を抑制しつつ電池セル21を適切に管理するために、エンジンの状態や電池セル21に流れる電流の電流値などに応じてこれらのモードを切り替える。以下、具体的に説明する。
【0048】
通常モードはBMS30を所定のクロック周波数で動作させることによって電流値を短い周期(例えば数100msec~数秒周期)で計測するモードである。短い周期は所定の周期の一例である。通常モードでは電流値が短い周期で計測されるのでSOCを精度よく推定できる。これにより電池セル21を適切に管理できる。
【0049】
スリープモードはBMS30のクロック周波数を通常モードより低くすることによって電池セル21の電圧の低下を抑制するモードである。スリープモードではBMS30のクロック周波数が低くなるので電流値を計測する周期が通常モードより長くなる(例えば数十秒周期)。このためBMS30による電池セル21の電力消費が抑制される。言い換えると電池セル21の電圧の低下が抑制される。
【0050】
ディープスリープモードは、リレー35をオフにしてバッテリ1から車両2への電流の流れを遮断するとともに、BMS30を停止させることによってスリープモードよりも更に電力消費を抑制するモードである。
【0051】
車両2のエンジンが動作中のときはオルタネータによってバッテリ1が充電されるので、BMS30によって消費される電力は問題とはならない。このため、管理部31は、車両2のエンジンが動作中のときは電池セル21を適切に管理するためにBMS30を通常モードで動作させる。
【0052】
車両2のエンジンが停止すると電池セル21が充電されなくなるので、管理部31は車両2のエンジンが停止すると(第1の所定条件の一例)、BMS30による電力消費を抑制するためにBMS30をスリープモードに移行させる。言い換えると管理部31はBMS30をスリープモードで動作させる。具体的には例えば、管理部31は通常モード中に車両2のECUからロック信号を受信するとエンジンが停止していると判断してBMS30をスリープモードに移行させる。
【0053】
管理部31はスリープモードに移行すると電流値に加えて電圧値も計測する。そして、管理部31は再利用不可電圧値より高い所定の電圧値(例えば2.5V)以下の電圧値が計測されると、再利用不可電圧値に達するまでの期間を延ばすためにBMS30をディープスリープモードに移行させる。所定の電圧値は第4の基準値の一例である。
【0054】
図6において点線46は、ディープスリープモードにおいてリレー35を開く一方、BMS30については停止させない場合の電圧の変化を比較例として示している。本実施形態ではディープスリープモード中はBMS30も停止させるので、比較例に比べて再利用不可電圧値に達するまでの期間を延ばすことができる。
【0055】
ただし、本実施形態においても電池セル21の電圧の低下を完全に抑制することはできず、比較例に比べて緩やかではあるが電圧が低下する。このため車両2が長い期間駐車されると電池セル21が再利用不可電圧値まで低下し、エンジンを始動できなくなることもある。
【0056】
図7を参照して、スリープモードから通常モードへの移行、及び、ディープスリープモードから通常モードへの移行について説明する。
先ず、スリープモードから通常モードへの移行について説明する。スリープモードから通常モードに移行する契機には複数の契機があるが、ここでは以下の2つの契機について説明する。
【0057】
一つ目の契機は、管理部31が通信部31Dを介して車両2のECUからエンジン始動信号を受信した場合である。車両2のECUは、エンジンを始動するとき、エンジンの始動を開始する前にバッテリ1にエンジン始動信号を送信する。管理部31はエンジン始動信号を受信するとBMS30を直ちに通常モードに移行させる。すなわち、一つ目の契機はエンジンの始動が確定した場合である。
【0058】
管理部31はエンジン始動信号を受信すると直ちにBMS30を通常モードに移行させるので、BMS30はエンジンを始動させるときにバッテリ1からスタータに流れる電流の電流値を短い周期で計測できる。これにより、エンジンを始動させるときに流れる電流の電流値をSOCに精度よく反映できる。
【0059】
二つ目の契機は、スリープモード中にSOCが短時間に大きく変化している場合である。エンジン停止中(言い換えるとスリープモード中)はバッテリ1から車載機器に電力が供給されるので、車載機器の電力使用状況によっては電池セル21のSOCが短時間に大きく変化する。SOCが短時間に大きく変化している場合は、電流値を計測する周期が長いと、今回計測したときはSOCに異常(例えば過放電)がなくても、次回計測したときには既にSOCが異常な状態になっているということが起こり得る。
【0060】
このため、管理部31は、スリープモード中にSOCが短時間に大きく変化している場合は、電池セル21を適切に管理するために、エンジン停止中であってもBMS30を通常モードに移行させる。すなわち、二つ目の契機は、エンジンの始動が確定していなくてもSOCが短時間に大きく変化している場合である。
【0061】
SOCが短時間に大きく変化しているか否かは、電流センサ32によって計測された電流値から判断することができる。具体的には、SOCは電流値の積算値から推定されるので、ある時点で計測された電流値はその時点におけるSOCの単位時間当たりの変化量(以下、SOC変化量という)に比例する。
このため、管理部31は、スリープモード中に所定の電流値(第1の基準値の一例)以上の電流値が計測された場合(第2の所定条件の一例)はSOCが短時間に大きく変化していると判断してBMS30を通常モードに移行させる。所定の電流値は例えば100mAである。エンジンを始動するときにバッテリ1からスタータに流れる電流の電流値は例えば300Aであり、100mAはエンジンを始動するときに流れる電流の電流値より小さい値である。
【0062】
SOCが短時間に大きく変化しているか否かは、SOCから直接判断することもできる。例えば、前回電流値を計測したときに推定したSOCと今回電流値を計測したときに推定したSOCとの差の絶対値|ΔSOC|を計測周期で除算することによって単位時間当たりのSOC変化量(状態の単位時間当たりの変化量の一例)を算出し、算出したSOC変化量が所定の基準値(第3の基準値の一例)以上の場合(第2の所定条件の一例)はSOCが短時間に大きく変化していると判断してもよい。
【0063】
ディープスリープモードから通常モードへの移行について説明する。前述したようにディープスリープモードではBMS30が停止するので、管理部31は通常モードに移行するタイミングを自身で判断できない。このため、管理部31は車両2の運転者(あるいは整備士)がバッテリ1に充電器を接続したときにBMS30を通常モードに移行させる。
【0064】
具体的には、BMS30がディープスリープモードに移行しているときはリレー35が開いているので、運転者がエンジンを始動させようとしても車両2のスタータが回転しない。このため運転者はバッテリ上がりと判断してバッテリ1に外部の充電器を接続する。バッテリ1に充電器が接続されると割り込み回路31EからCPU31Aに起動電圧が印加され、管理部31が起動して動作を再開する。
【0065】
管理部31は動作を再開するとBMS30を通常モードに移行させる。ただし、前述したように車両2の駐車期間が長いと電池セル21の電圧が再利用不可電圧値未満まで低下していることがある。電圧が再利用不可電圧値未満まで低下している状態でリレー35を閉じることは望ましくないため、管理部31はこの時点では未だリレー35を閉じない。
【0066】
管理部31は通常モードに移行すると電圧センサ33によって電圧値を計測する。そして、管理部31は計測した電圧値が再利用不可電圧値以上であるか否かを判断し、再利用不可電圧値以上の場合はリレー35を閉じる。これに対し、再利用不可電圧値未満の場合は、管理部31はリレー35を閉じない。これによりバッテリ1の再利用が防止される。
【0067】
(5)実施形態の効果
実施形態1に係るBMS30によると、第1の所定条件が成立するとスリープモードで動作するので、BMS30による電池セル21の電力消費を抑制できる。そして、スリープモード中に第2の所定条件が成立した場合は第1の所定条件が成立していても通常モードに移行するので、電池セル21を適切に管理できる。よってBMS30によると、電池セル21の電力消費を抑制しつつ電池セル21を適切に管理できる。
【0068】
BMS30によると、第1の所定条件は、車両のエンジンが停止していることである。すなわち、BMS30によると、車両のエンジンが停止するとスリープモードに移行するので、電池セル21の電力消費を抑制できる。
【0069】
BMS30によると、物理量は電流値であり、第2の所定条件は、電流センサ32によって第1の基準値以上の電流値が計測されたことである。当該第2の所定条件が成立した場合はSOCが短時間に大きく変化していると判断して通常モードに移行することにより、電池セル21を適切に管理できる。電流値は電池セル21のSOCの推定に用いられるなど電池セル21の状態との関連性が高いので、物理量として電流値を用いると電池セル21を適切に管理できる。
【0070】
BMS30によると、第2の所定条件は、単位時間当たりのSOC変化量が第3の基準値以上であることである。当該第2の所定条件が成立した場合はSOCが短時間に大きく変化していると判断して通常モードに移行することにより、電池セル21を適切に管理できる。
【0071】
BMS30によると、スリープモードから通常モードへの移行は電流値によって判断し、スリープモードからディープスリープモードへの移行は電圧値によって判断する。すなわち、スリープモードから通常モードに移行するときとディープスリープモードに移行するときとで判断に用いる物理量が異なる。これにより、動作モードを移行させるか否かを移行先の動作モードに応じて適切に判断できる。
【0072】
BMS30によると、ディープスリープモード中にバッテリ1に充電器が接続されると通常モードに移行する。BMS30がディープスリープモードに移行しているときはリレー35が開いているのでエンジンを始動できない。その場合、例えばBMS30にリレー35を閉じるためのスイッチを備え、運転者がスイッチを操作してリレー35を閉じることも考えられる。しかしながら、スイッチを操作すればよいことを必ずしも全ての運転者が知っているとは限らず、そのことを知らない運転者はエンジンを始動させることができずに混乱する虞がある。これに対し、バッテリ上がりのときは充電器を接続すればよいことは多くの運転者が知っているので、スイッチを操作する場合に比べてエンジンを始動できる可能性が高くなる。
【0073】
<実施形態2>
前述した実施形態1では、第2の所定条件として、電流センサ32によって基準値以上の電流値が計測されたことや、単位時間当たりのSOC変化量が基準値以上であることを例に説明した。これに対し、第2の所定条件は電池セル21の異常が検出されたことであってもよい。
【0074】
ここでは異常としてバッテリ1の温度異常を例に説明する。前述したようにバッテリ1には電池セル21の温度を計測する温度センサ34が設けられている。BMS30は温度センサ34によって通常モードやスリープモードに応じた周期で温度を計測し、所定の基準温度以上の温度が計測された場合は温度異常と判断する。これにより温度異常が検出される。
ただし、温度センサ34には計測誤差もあるので、基準温度以上の温度を一度検出しただけで直ちに温度異常と判断すると判断を誤る可能性がある。このため、基準温度以上の温度が複数回検出された場合に温度異常と判断することが望ましい。
【0075】
しかしながら、スリープモードでは通常モードに比べて温度を計測する周期が長いので、温度が複数回計測されるまでに時間を要し、実際に温度異常であった場合に対応が遅れる虞がある。このため、スリープモード中に基準温度以上の温度が計測された場合は、早く次の温度を計測するために通常モードに移行することが望ましい。
【0076】
そこで、実施形態2に係る管理部31は、スリープモード中に基準温度以上の温度が計測された場合は、エンジンが停止中であってもBMS30を通常モードに移行させる。このため早い時点で次の温度を計測でき、温度異常であるか否かを早い時点で確定できる。これにより早期に温度異常に対応できる。
【0077】
<実施形態3>
前述した実施形態1及び2ではエンジン自動車に搭載されてエンジンの始動や車載機器への電力供給に用いられるバッテリを例に説明した。これに対し、実施形態3に係るバッテリはハイブリッド自動車に搭載される駆動用バッテリの始動や車載機器(ここでは補機という)への電力供給に用いられる補機用のバッテリである。
【0078】
一般にハイブリッド自動車には車両駆動力を発する電気モータに電力を供給する駆動用バッテリと補機用バッテリとが搭載される。駆動用バッテリは補機用バッテリから供給される電力によって始動し、始動した駆動用バッテリによって電気モータに電力が供給される。
【0079】
補機用バッテリが備えるBMS30の管理部31は、ハイブリッド自動車のエンジンが停止しているとき(第1の所定条件の一例)はBMS30をスリープモードで動作させる。ハイブリッド自動車は電気モータによって走行する場合があるので、実施形態3に係る管理部31は車両が走行中であってもエンジンが停止していればBMS30をスリープモードで動作させる。
【0080】
そして、管理部31は、スリープモード中に第2の所定条件が成立した場合は、エンジンが停止していてもBMS30を通常モードに移行させる。第2の所定条件は実施形態1や実施形態2と同様であるので説明は省略する。
【0081】
実施形態3に係るBMS30によると、補機用バッテリが備える電池セル21の電力消費を抑制しつつ電池セル21を適切に管理できる。
【0082】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0083】
(1)上記実施形態1では物理量として電流値を例に説明したが、物理量は電流値に限られない。
例えば、物理量は電池セル21の電圧値であってもよい。具体的には例えば、電圧値が所定の下限電圧値以下であれば過放電(異常の一例)であるとする。この場合、下限電圧値より高い所定の電圧値(第2の基準値の一例)まで低下すると、まだ過放電には至っていなくても、過放電が予見されるとして通常モードに移行してもよい。
【0084】
物理量は電池セル21の温度であってもよい。例えば、温度が所定の基準温度(第1の基準値の一例)以上であれば温度異常であるとする。この場合、基準温度より低い所定の温度まで上昇すると、まだ温度異常には至っていなくても、温度異常が予見されるとして通常モードに移行してもよい。
【0085】
(2)上記実施形態1では単位時間当たりのSOC変化量が基準値以上であれば通常モードに移行する場合を例に説明したが、通常モードに移行するか否かをSOCそのものから判断してもよい。例えば、SOCが所定の下限値未満であれば過放電であるとする。この場合、下限値より高い所定のSOCまで低下すると、まだ過放電には至っていなくても、過放電が予見されるとして通常モードに移行してもよい。
【0086】
(3)上記実施形態1では電池セル21の状態としてSOCを例に説明したが、電池セル21の状態はこれに限られない。
例えば、電池セル21の状態は電圧であってもよい。具体的には例えば、管理部31は前回計測した電圧値と今回計測した電圧値との差の絶対値を計測周期で除算することによってその間の単位時間当たりの電圧変化量を算出し、算出した電圧変化量が基準値以上であれば電池セル21の状態が短時間に大きく変化していると判断してもよい。
【0087】
また、電池セル21の状態は温度であってもよい。具体的には例えば、管理部31は前回計測した温度と今回計測した温度との差の絶対値を計測周期で除算することによってその間の単位時間当たりの温度変化量を算出し、算出した温度変化量が基準値以上であれば状態が短時間に大きく変化していると判断してもよい。
【0088】
電池セル21の状態は温度センサ34によって計測される局所的な温度から推定されるバッテリ1全体の温度であってもよい。具体的には例えば、温度センサ34によって計測される局所的な温度とバッテリ1全体の温度との関係を表すデータをROM31Bに記憶させておき、管理部31は局所的な温度に対応するバッテリ1全体の温度を当該データから特定することによってバッテリ1全体の温度を推定してもよい。そして、管理部31はスリープモード中にバッテリ1全体の温度の単位時間当たりの変化量を判断し、変化量が基準値以上であれば電池セル21の状態が短時間に大きく変化していると判断してもよい。
【0089】
電池セル21の状態はSOH(State Of Charge)であってもよい。SOHは二つの意味で用いられることがある。一つは容量維持率である。容量維持率は電池セル21の初期の充電容量に対するある時点における充電容量の割合を示すものであり、電池セル21の劣化に伴って小さくなる。このため、スリープモード中に容量維持率が短時間に大きく低下した場合は通常モードに移行してもよい。もう一つは抵抗上昇率である。抵抗上昇率は電池セル21の初期の抵抗値に対するある時点における抵抗値の割合を示すものであり、電池セル21の劣化に伴って大きくなる。このため、スリープモード中に抵抗上昇率が短時間に大きく上昇した場合は通常モードに移行してもよい。
【0090】
(4)上記実施形態2では電池セル21の異常として温度異常を例に説明したが、異常は異常温度に限られない。例えば、異常は電池セル21の過放電であってもよい。具体的には例えば、所定の下限電圧値以下の電圧値が計測された場合は過放電と判断して通常モードに移行してもよい。あるいは、電流値や電圧値から推定されるSOCが所定の下限値以下になった場合は過放電と判断して通常モードに移行してもよい。
【0091】
(5)上記実施形態ではエンジン自動車に搭載されるエンジン始動用のバッテリやハイブリッド自動車に搭載される補機用のバッテリを例に説明したが、バッテリはこれらの車両2に搭載されるバックアップ用のバッテリであってもよい。
【0092】
(6)上記実施形態ではエンジン自動車やハイブリッド自動車などの車両に搭載されるバッテリを例に説明したが、バッテリは動力源を備える装置であれば車両以外の装置に用いられるものであってもよい。
例えば、バッテリは建設機械に用いられるものであってもよい。バッテリは家庭や事業所などに設置される固定型の蓄電システムに用いられるものであってもよい。具体的には、固定型の蓄電システムには電池セル21を充電するためのエンジンを備えているものもある。バッテリはそのような蓄電システムに用いられるものであってもよい。
【0093】
(7)上記実施形態では管理部31が1つのCPUを有している場合を例に説明したが、管理部31は複数のCPUを備える構成や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハード回路を備える構成や、ハード回路及びCPUの両方を備える構成でもよい。
【符号の説明】
【0094】
21…電池セル(蓄電素子の一例)、30…電池管理装置(管理装置の一例)、31…管理部、31E…割り込み回路(電圧印加部の一例)、32…電流センサ(計測部の一例)、33…電圧センサ(計測部の一例)、34…温度センサ(計測部の一例)