(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】潤滑剤塗布装置を備えた画像形成装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20220301BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G21/00 314
G03G21/00 318
G03G21/00
(21)【出願番号】P 2018003071
(22)【出願日】2018-01-12
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 邦章
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-234642(JP,A)
【文献】特開2006-154372(JP,A)
【文献】特開2016-151611(JP,A)
【文献】特開2010-230903(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0067897(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を作像する作像部において、像担持体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置を有する画像形成装置であって、
前記潤滑剤塗布装置が、
粉体状の潤滑剤を固形化した滑剤棒と、
前記像担持体に供給された潤滑剤を押圧して被膜化するクリーニング装置に対して前記像担持体の表面の進行方向上流側に配置され、前記滑剤棒から削り取った潤滑剤を像担持体に供給するとともに、前記像担持体に付着した残留トナーを除去する塗布部材と、
前記塗布部材に接触し、前記塗布部材に付着したトナーを回収する回収部材と、
前記塗布部材に電圧を印加する第1電圧印加部と、
前記回収部材に電圧を印加する第2電圧印加部と、
を備え、
前記画像形成装置が、
前記第1電圧印加部により前記塗布部材に印加される電圧の第1印加電圧値と、前記第2電圧印加部により前記回収部材に印加される電圧の第2印加電圧値と、をそれぞれ変更することにより、前記塗布部材による前記像担持体上の残留トナーの除去性と、前記回収部材による前記塗布部材上の残留トナーの回収性と、をそれぞれ変更することで、前記像担持体上の滑剤量を制御する制御部、を備え
、
前記制御部は、
前記第1印加電圧値と前記第2印加電圧値とが各々設定された第1のモード、第2のモード及び第3のモードのいずれかを実行し、
前記第1のモードにおける前記第1印加電圧値と前記第2印加電圧値との差が、前記第2のモードにおける前記第1印加電圧値と前記第2印加電圧値との差よりも大きく、
前記第3のモードにおける前記第1印加電圧値が、前記第1のモード及び前記第2のモードにおける第1印加電圧値よりも小さい
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1印加電圧値V
BR及び前記第2印加電圧値V
FLは、第1のモード、第2のモード及び第3のモードにおいて、それぞれ以下の式(1)、(2)及び(3)を満たすことを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
第1のモード:|V
FL|>|V
BR|>0V ・・・(1)
第2のモード:V
FL=V
BR>0V ・・・(2)
第3のモード:|V
FL|>|V
BR|=0V ・・・(3)
【請求項3】
前記制御部は、
前記作像部の駆動時間が所定の駆動時間を上回った場合に、前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える
ことを特徴とする請求項
1又は
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記滑剤棒の消費量が所定の消費量を上回った場合に、前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える
ことを特徴とする請求項
1又は
2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記作像部近傍の絶対湿度が所定の絶対湿度を上回った場合に、前記第1のモード又は前記第2のモードから前記第3のモードに切り替え、
前記作像部近傍の絶対湿度が前記所定の絶対湿度を下回った場合に、前記第3のモードから前記第1のモード又は前記第2のモードに切り替える
ことを特徴とする請求項
1から
4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
粉体状の潤滑剤を固形化した滑剤棒と、前記滑剤棒から削り取った潤滑剤を像担持体に供給するとともに、前記像担持体に付着した残留トナーを除去する塗布部材と、前記塗布部材に接触し、前記塗布部材に付着したトナーを回収する回収部材と、
前記塗布部材に電圧を印加する第1電圧印加部と、前記回収部材に電圧を印加する第2電圧印加部と、を備え、前記像担持体に供給された潤滑剤を押圧して被膜化するクリーニング装置に対し、像担持体表面の進行方向上流側に配置される潤滑剤塗布装置を備える画像形成装置のコンピューターに使用されるプログラムであって、
該プログラムは、
前記第1電圧印加部により前記塗布部材に印加される電圧の第1印加電圧値と、前記第2電圧印加部により前記回収部材に印加される電圧の第2印加電圧値と、をそれぞれ変更することにより、前記塗布部材による前記像担持体上の残留トナーの除去性と、前記回収部材による前記塗布部材上の残留トナーの回収性と、をそれぞれ変更して、前記像担持体上の滑剤量を制御する制御部として機能するものであ
り、
前記制御部は、
前記第1印加電圧値と前記第2印加電圧値とが各々設定された第1のモード、第2のモード及び第3のモードのいずれかを実行し、
前記第1のモードにおける前記第1印加電圧値と前記第2印加電圧値との差が、前記第2のモードにおける前記第1印加電圧値と前記第2印加電圧値との差よりも大きく、
前記第3のモードにおける前記第1印加電圧値が、前記第1のモード及び前記第2のモードにおける第1印加電圧値よりも小さい
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤塗布装置を備えた画像形成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーのクリーニング性を高めるとともに感光体膜厚の減耗を抑える目的で、感光体に潤滑剤(以降、滑剤と表記する)を塗布する技術が知られている。具体的には、感光体に当接して回転するブラシ(塗布ブラシ)が、ステアリン酸亜鉛からなる固形物である滑剤に圧接されて滑剤を削り取り、そのまま感光体まで搬送して感光体に滑剤を供給する。感光体に供給された滑剤粉は、その下流に配置されたゴムブレード(クリーニングブレード)で引き伸ばされて感光体上に成膜され、滑剤層となる。
【0003】
作像ユニットの状態によって、感光体上の滑剤量を多くしたり、あるいは少なくしたりすることが望まれる。たとえば作像ユニットのライフ末期において、クリーニングブレードの摩耗が進行するとトナーや外添剤がすり抜け易くなり、それに伴う不具合が発生するため、より滑剤量を多くすることでそれらのすり抜けを抑制することが有効である。また画像流れが発生しやすい高温高湿環境では、滑剤量を少なくし像流れの原因物質である放電生成物を削り落としてリフレッシュすることで、効果的に像流れを抑制できる。
【0004】
塗布ブラシがクリーニングブレードに対して感光体の回転方向上流側に配置される上流塗布の場合、滑剤量の制御は、塗布ブラシの除去性、つまりクリーニングブレードに到達するトナー量を制御することと、回収性、つまり塗布ブラシの汚れ状態を制御することで達成できる。除去性及び回収性を制御する方法として、塗布ブラシに印加する電圧を制御する方法がある。たとえば特許文献1には、塗布ブラシと、塗布ブラシに接触しながら回転し、塗布ブラシに付着したトナーを回収する回収ローラーと、を有する滑剤塗布装置において、塗布ブラシにトナーと逆極性の電圧を印加するとともに、回収ローラーには塗布ブラシからトナーを回収する回収電界を形成する電圧を印加する技術が開示されている。上記の構成により塗布ブラシの除去性が向上し、塗布ブラシに付着したトナーが確実に除去される。その結果、回収ローラーの回収性が向上し、クリーニングブレードに到達するトナー量を減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、クリーニングブレードに到達するトナー量が増加するように制御することは難しい。クリーニングブレードに到達するトナー量が不足すると、クリーニングブレードによる潤滑剤の除去効率が低下するため、感光体上で滑剤過多となる。さらに、塗布ブラシ及び回収ローラーに印加する電圧を一律に制御する方法では、高温高湿条件下に感光体上の滑剤量を減少させたい場合など、環境に応じた制御を行うことが難しい。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、作像部の耐久や使用環境等に応じて、感光体上の滑剤量を適切な量に維持することで、作像部の長期にわたる安定したクリーニング性を確保し、長寿命化を実現可能な潤滑剤塗布装置を備えた画像形成装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の画像形成装置は、
トナー像を作像する作像部において、像担持体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置を有する画像形成装置であって、
前記潤滑剤塗布装置が、
粉体状の潤滑剤を固形化した滑剤棒と、
前記像担持体に供給された潤滑剤を押圧して被膜化するクリーニング装置に対して前記像担持体の表面の進行方向上流側に配置され、前記滑剤棒から削り取った潤滑剤を像担持体に供給するとともに、前記像担持体に付着した残留トナーを除去する塗布部材と、
前記塗布部材に接触し、前記塗布部材に付着したトナーを回収する回収部材と、
前記塗布部材に電圧を印加する第1電圧印加部と、
前記回収部材に電圧を印加する第2電圧印加部と、
を備え、
前記画像形成装置が、
前記第1電圧印加部により前記塗布部材に印加される電圧の第1印加電圧値と、前記第2電圧印加部により前記回収部材に印加される電圧の第2印加電圧値と、をそれぞれ変更することにより、前記塗布部材による前記像担持体上の残留トナーの除去性と、前記回収部材による前記塗布部材上の残留トナーの回収性と、をそれぞれ変更することで、前記像担持体上の滑剤量を制御する制御部、を備え、
前記制御部は、
前記第1印加電圧値と前記第2印加電圧値とが各々設定された第1のモード、第2のモード及び第3のモードのいずれかを実行し、
前記第1のモードにおける前記第1印加電圧値と前記第2印加電圧値との差が、前記第2のモードにおける前記第1印加電圧値と前記第2印加電圧値との差よりも大きく、
前記第3のモードにおける前記第1印加電圧値が、前記第1のモード及び前記第2のモードにおける第1印加電圧値よりも小さい
ことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記第1印加電圧値VBR及び前記第2印加電圧値VFLは、第1のモード、第2のモード及び第3のモードにおいて、それぞれ以下の式(1)、(2)及び(3)を満たすことを特徴とする。
第1のモード:|VFL|>|VBR|>0V ・・・(1)
第2のモード:VFL=VBR>0V ・・・(2)
第3のモード:|VFL|>|VBR|=0V ・・・(3)
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、
前記作像部の駆動時間が所定の駆動時間を上回った場合に、前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える
ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、
前記滑剤棒の消費量が所定の消費量を上回った場合に、前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える
ことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、
前記作像部近傍の絶対湿度が所定の絶対湿度を上回った場合に、前記第1のモード又は前記第2のモードから前記第3のモードに切り替え、
前記作像部近傍の絶対湿度が前記所定の絶対湿度を下回った場合に、前記第3のモードから前記第1のモード又は前記第2のモードに切り替える
ことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載のプログラムは、
粉体状の潤滑剤を固形化した滑剤棒と、前記滑剤棒から削り取った潤滑剤を像担持体に供給するとともに、前記像担持体に付着した残留トナーを除去する塗布部材と、前記塗布部材に接触し、前記塗布部材に付着したトナーを回収する回収部材と、前記塗布部材に電圧を印加する第1電圧印加部と、前記回収部材に電圧を印加する第2電圧印加部と、を備え、前記像担持体に供給された潤滑剤を押圧して被膜化するクリーニング装置に対し、像担持体表面の進行方向上流側に配置される潤滑剤塗布装置を備える画像形成装置のコンピューターに使用されるプログラムであって、
該プログラムは、前記第1電圧印加部により前記塗布部材に印加される電圧の第1印加電圧値と、前記第2電圧印加部により前記回収部材に印加される電圧の第2印加電圧値と、をそれぞれ変更することにより、前記塗布部材による前記像担持体上の残留トナーの除去性と、前記回収部材による前記塗布部材上の残留トナーの回収性と、をそれぞれ変更して、前記像担持体上の滑剤量を制御する制御部として機能するものであり、
前記制御部は、
前記第1印加電圧値と前記第2印加電圧値とが各々設定された第1のモード、第2のモード及び第3のモードのいずれかを実行し、
前記第1のモードにおける前記第1印加電圧値と前記第2印加電圧値との差が、前記第2のモードにおける前記第1印加電圧値と前記第2印加電圧値との差よりも大きく、
前記第3のモードにおける前記第1印加電圧値が、前記第1のモード及び前記第2のモードにおける第1印加電圧値よりも小さい
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作像部の耐久や使用環境等に応じて、感光体上の滑剤量を適切な量に維持することで、作像部の長期にわたる安定したクリーニング性を確保し、長寿命化を実現可能な潤滑剤塗布装置を備えた画像形成装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る画像形成装置の制御構造を示す機能ブロック図である。
【
図5】モード1、モード2及びモード3の各々の実行時における感光体上滑剤量を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
[画像形成装置の構成]
本実施形態に係る画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置であり、
図1~
図3に示すように、自動原稿搬送部2と、スキャナー部3と、画像形成部4と、給紙部5と、記憶部6と、操作表示部7と、温湿度検出部8と、制御部10と、を備えて構成されている。
【0021】
自動原稿搬送部2は、原稿Dを載置する載置トレイ、原稿Dを搬送する機構及び搬送ローラー等を備えて構成され、原稿Dを所定の搬送路に搬送する。
スキャナー部3は、光源や反射鏡等の光学系を備えて構成され、所定の搬送路を搬送された原稿D又はプラテンガラスに載置された原稿Dに光源を照射し、反射光を受光する。また、スキャナー部3は、受光した反射光を電気信号に変換して制御部10に出力する。
【0022】
画像形成部4は、イエロー作像部Yと、マゼンタ作像部Mと、シアン作像部Cと、ブラック作像部Kと、中間転写ベルトTと、定着装置Fと、を備えて構成されている。
各作像部YMCKは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を感光体41に形成し、感光体41に形成されたYMCK各色のトナー像を中間転写ベルトTに一次転写する。
なお、各作像部YMCKの構成及び動作は何れも同様であるため、以下、イエロー作像部Yを例に挙げて、画像形成部4が行う一連の画像形成動作について説明する。
【0023】
感光体(像担持体)41は、ドラム状の金属基体の外周面に有機光導電体を含有させた樹脂からなる感光層が形成された有機感光体により構成され、図中a方向に回転駆動される。感光層を構成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0024】
帯電装置42は、帯電チャージャーを用いて感光体41を一定の電位に帯電する。
露光装置43は、制御部10からの画像データDyに基づいて感光体41の非画像領域を露光して露光した部分の電荷を除去し、感光体41の画像領域に静電潜像を形成する。
【0025】
現像装置44は、感光体41と現像領域を介して対向するように配置された現像スリーブ44aを備える。現像スリーブ44aには、例えば、帯電装置42の帯電極性と同極性の直流現像バイアス、又は交流電圧に帯電装置42の帯電極性と同極性の直流電圧が重畳された現像バイアスが印加され、これにより、感光体41に形成された静電潜像上に現像剤を供給し、感光体41にイエローのトナー像を形成する。なお、現像剤は、トナーと、トナーを帯電するためのキャリアと、を含む。トナーは特に限定されず、一般に使用されている公知のトナーを使用することができる。例えば、バインダー樹脂中に、着色剤や必要に応じて荷電制御剤や離型剤等を含有させ、外添剤を処理させたものを使用することができる。トナー粒径は、特に限定されるものではないが、3~15μm程度が好ましい。
【0026】
一次転写ローラーは、感光体41に形成されたイエローのトナー像を中間転写ベルトTに一次転写する。なお、他の作像部MCKも同様に、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を中間転写ベルトTに一次転写する。これにより、中間転写ベルトT上にYMCK各色のカラーのトナー像が形成される。
【0027】
中間転写ベルトTは、複数のローラーに懸架され回転可能に支持された半導電性エンドレスベルトであり、ローラーの回転に伴って図中b方向に回転駆動される。この中間転写ベルトTは、一次転写ローラー45により、対向するそれぞれの感光体41に圧着される。一次転写ローラー45のそれぞれには、印加された電圧に応じた転写電流が流れる。これにより、各感光体41の表面に現像された各トナー像は、それぞれ各一次転写ローラー45により順次中間転写ベルトTに一次転写される。
【0028】
二次転写ローラー46は、中間転写ベルトTに押圧されて従回転することで、当該中間転写ベルトTに転写されて形成されたYMCK各色のトナー像を給紙部5の給紙トレイ51~53から搬送されてきた用紙Pに二次転写する。二次転写ローラー46は、中間転写ベルトTを介して二次転写対向ローラー461に当接して配置され、二次転写ローラー46と二次転写対向ローラー461との間で形成される転写ニップを用紙Pが通過することにより、中間転写ベルトT上のトナー像が、用紙Pに二次転写される。
【0029】
画像形成部4は、YMCK各色のトナー像が二次転写された用紙Pを定着装置Fにより加熱及び加圧し、その後所定の搬送路に通して機外に排出する。
以上が画像形成部4による一連の画像形成動作である。
【0030】
除電装置47は、一次転写後の感光体41表面に残留する残留トナーを除電する。除電装置47は、例えばLED等の露光手段を備え、次の画像形成前に潜像を完全に消去し、次回の画像形成が確実に行われるようにする機能を有する。
【0031】
クリーニング装置48は、一次転写後の感光体41表面に残留する残留トナーや紙紛等の残留物を除去する。クリーニング装置48は、弾性体(例えばポリウレタンゴム)からなる平板状(シート状)のクリーニングブレードを感光体41に当接させるブレードクリーニング方式を採用している。
ベルトクリーニング装置49は、二次転写後の中間転写ベルトTに残留する残留物を除去する。
【0032】
潤滑剤塗布装置100は、感光体41の進行方向(回転方向)に対し、クリーニング装置48の上流側に設置され、滑剤棒102から削り取った潤滑剤を感光体41表面に塗布(供給)するとともに、一次転写ローラー45によりトナー画像が転写された後の感光体41の表面に残留しているトナーと外添剤の回収も行っている。
潤滑剤塗布装置100は、
図2及び
図4に示すように、塗布ブラシ101(塗布部材)と、滑剤棒102と、押圧部材103と、回収ローラー104(回収部材)と、スクレーパー105と、回収スクリュー106を備えて構成されている。
【0033】
塗布ブラシ101は、本発明でいう塗布部材に該当するもので、たとえば、ポリエステル繊維をループ状に織り込んだ布を金属シャフトに巻き付けてできたロール状のブラシ部材などがある。塗布ブラシ101は、塗布ブラシ駆動部101b(
図3参照)によって、感光体41よりも遅い線速度で感光体41の回転に対してカウンター回転する様に設定される。即ち、塗布ブラシ101の表面が、塗布ブラシ101と感光体41との接触部において感光体41と反対方向(
図4中のc方向)に進行するように設定される。
また、塗布ブラシ101は、滑剤棒102及び感光体41の双方と当接するように設置され、滑剤棒102から削り取った潤滑剤粒子(滑剤粉)を感光体41まで搬送し、感光体41に滑剤粉を供給する。塗布ブラシ101は、感光体41の回転方向に対し、現像装置44よりも感光体41の回転方向下流側に、また、クリーニング装置48よりも感光体41の回転方向上流側に設置される。
さらに、塗布ブラシ101は、一次転写ローラー45によりトナー画像が転写された後の感光体41の表面に残留しているトナーと外添剤の回収も行っている。また、塗布ブラシ101は、滑剤粉を感光体41に供給する際、感光体41との当接圧により滑剤粉を感光体41上に延展塗布する役割も担っている。
【0034】
滑剤棒102は、粉体状の潤滑剤を固形化したものであり、感光体41表面に塗布可能で且つ感光体41の表面エネルギーを低下させてトナーと感光体41との付着力を低減可能な材料(例えばステアリン酸亜鉛)から選択される。滑剤棒102は、上記の材料を溶融して成形する若しくは上記材料の粒子を圧縮成型することで、塗布ブラシ101により削り取ることが可能な形状に整えられて使用される。感光体41表面に供給された滑剤粉は、塗布ブラシ101の下流に設置されたクリーニング装置48により感光体41表面に成膜されて皮膜を形成する。ステアリン酸亜鉛で形成された皮膜は、離型性が高く(即ち純水接触角が高く)摩擦係数が小さいことから、転写性及びクリーニング性がよく、且つ感光体41の減耗も抑制されて長寿命化を達成することができる。
【0035】
押圧部材103は、例えば、圧縮バネであり、滑剤棒102を塗布ブラシ101に対して押圧保持する。
【0036】
回収ローラー104は、本発明でいう回収部材に該当するもので、ステンレス等の金属製のローラーであり、回収ローラー駆動部104b(
図3参照)によって、塗布ブラシ101に対してカウンター回転する様に設定されている。即ち、回収ローラー104の表面が、回収ローラー104と塗布ブラシ101との接触部において、塗布ブラシ101と反対方向(
図4中のd方向)に進行するように設定されている。
なお、感光体41から塗布ブラシ101に回収された残留トナーは、塗布ブラシ101の回転により回収ローラー104まで搬送される。そして、回収ローラー104にはステンレス板のスクレーパー105が当接しており、回収ローラー104上に搬送、回収された残留トナーを掻き落とす。
【0037】
回収スクリュー106は、図示しない駆動装置により所定の方向に回転可能に構成され、スクレーパー105により除去されて上方から落下してきたトナーを回収して排出する。回収スクリュー106は、回収したトナーを、図示しないトナーリサイクル装置を介して現像装置44に搬送するか又は図示しない廃トナーボックスに収容する。
【0038】
図4に示す様に、前述の塗布ブラシ101には、ブラシバイアス印加部101a(第1電圧印加部)により、ブラシバイアスV
BRが印加されている。また、回収ローラー104には、回収バイアス印加部104a(第2電圧印加部)により、回収バイアスV
FLが印加されている。
【0039】
給紙部5は、複数の給紙トレイ51~53を備えて構成され、各給紙トレイ51~53に種類の異なる複数の用紙Pを収容する。給紙部5は、所定の搬送路により収容される用紙Pを画像形成部4に給紙する。
【0040】
記憶部6は、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリーなどにより構成され、プログラムデータや各種設定データ等のデータを制御部10から読み書き可能に記憶する。
【0041】
操作表示部7は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD)で構成され、表示部71及び操作部72として機能する。
表示部71は、制御部10から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、各機能の動作状況等の表示を行う。また、ユーザーによるタッチ操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。
操作部72は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。ユーザーは、操作表示部7を操作して、画質設定、倍率設定、応用設定、出力設定及び用紙設定等の画像形成に関する設定、用紙搬送指示、並びに装置の停止操作などを行うことができる。
【0042】
温湿度検出部8は、温度センサーや湿度センサー等を備えて構成され、画像形成装置1の筐体内の温度や湿度を検知し、検知結果を制御部10に出力する。
【0043】
制御部10は、CPU、RAM、ROM等を備えて構成され、CPUはROMに記憶されている各種プログラムをRAMに展開し、展開された各種プログラムと協働して、自動原稿搬送部2、スキャナー部3、画像形成部4、給紙部5、記憶部6、操作表示部7、温湿度検出部8などの画像形成装置1の各部の動作を統括的に制御する(
図3参照)。例えば、制御部10は、スキャナー部3からの電気信号を入力して各種画像処理を行い、画像処理により生成されたYMCK各色の画像データDy、Dm、Dc、Dkを画像形成部4に出力する。また、制御部10は、画像形成部4の動作を制御して用紙Pに画像を形成する。
【0044】
[滑剤塗布装置の印加電圧]
続いて、本実施形態に係る潤滑剤塗布装置100の塗布ブラシ101及び回収ローラー104に印加される電圧の制御方法について、図面を参照して説明する。
【0045】
本実施形態に係る画像形成装置1は、塗布ブラシ101による感光体41上の残留トナーの除去性、及び回収ローラー104による塗布ブラシ101に付着したトナーの回収性をそれぞれ制御することを特徴とする。
具体的には、除去性及び回収性を相対的に高くすることで感光体41上の滑剤量を比較的中間的な値とするモード1(第1のモード)と、除去性を相対的に高くするとともに回収性を相対的に低くすることで感光体41上の滑剤量を比較的高い値とするモード2(第2のモード)と、除去性を相対的に低くするとともに回収性を相対的に高くすることで感光体41上の滑剤量を比較的低い値とするモード3(第3モード)と、を実行する。
モード1におけるブラシバイアスVBR(第1印加電圧値)と回収バイアスVFL(第2印加電圧値)との差が、モード2におけるブラシバイアスVBRと回収バイアスVFLとの差よりも大きくなるように制御する。また、モード3におけるブラシバイアスVBRが、モード1及びモード2におけるブラシバイアスVBRよりも小さくなるように制御する。
【0046】
より具体的には、例えば、ブラシバイアスVBRは0Vと+400Vとの二段階で切り替えられるように制御され、回収バイアスVFLは+400V、+600V、+1000Vの三段階で切り替えられるように制御されている。回収電位差ΔV=VFL-VBRと定義し、ΔV=0V又は600Vとすると、各モードの印加電圧は以下のようになる。
モード1:VBR=+400V、VFL=+1000V (VFL>VBR>0V)
モード2:VBR=+400V、VFL=+400V (VFL=VBR>0V)
モード3:VBR=0V、VFL=+600V (VFL>VBR=0V)
【0047】
モード1について説明する。
現像装置44によって、転写前のトナーは負極性に帯電する。残留トナーは現像直後の状態よりも除電されているものの、負極性のものがほとんどである。そのためほとんどのトナーが塗布ブラシ101によって回収されることとなり、クリーニング装置48にはトナーがほとんど到達しないため、クリーニング装置48での研磨作用は小さい。また塗布ブラシ101で回収されたトナーは、回収ローラー104によって回収される。塗布ブラシ101はきれいな状態で滑剤棒102を削るので、滑剤消費量は制限される。滑剤棒102から掻き取った滑剤粉は塗布ブラシ101の感光体41との摺擦部まで搬送され、感光体41に転移する。ただし、滑剤粉は弱マイナス荷電の帯電をしているため、ブラシバイアスVBRの影響で感光体41に移動しないものも存在する。それらの滑剤粉はトナーと一緒に回収ローラー104に回収される。その結果、感光体41上の滑剤量は、3つのモードの中で中間的な状態で維持される。
【0048】
モード2について説明する。
塗布ブラシ101がトナーを回収し、クリーニング装置48の研磨作用が小さい点ではモード1と同様である。回収電位差ΔV=0Vであるため、塗布ブラシ101で回収したトナーの半分程度は回収ローラー104に回収されない。その結果、滑剤棒102を削る作用が大きくなり、滑剤消費量が大きくなる。さらに感光体41に移動しなかった滑剤粉は回収ローラー104でも電気的に回収されにくいため、再び感光体41に供給されやすくなっている。その結果、感光体41上の滑剤量は多い状態で維持される。
【0049】
モード3について説明する。
塗布ブラシ101がトナーを回収しにくいため、クリーニング装置48に到達したトナーの研磨作用が大きくなる。さらに回収電位差ΔV=600Vであるため、塗布ブラシ101はきれいな状態となり、滑剤消費量が小さくなる。また滑剤粉は回収ローラー104によって回収されるため、感光体41上の滑剤量は少なくなる。
【0050】
図5は、モード1、モード2、モード3のそれぞれで潤滑剤塗布装置100を稼働した場合の感光体41上滑剤量を示した図である。
図1及び
図2と同様の構成の評価機(ただし転写部はなし)を作成して実験し、プロセス速度は460mm/s、塗布ブラシ101の線速度は460mm/s(感光体41に対し線速比θ=1.0)、回収ローラー104の線速度は69mm/s(塗布ブラシ101に対し線速比θ=0.15)、評価環境は10℃×20%、10分間駆動させたときの感光体上の滑剤量をESCAで測定した結果である。白部は露光を一切行わない部分、ベタ部は終始露光させた状態の部分であり、長手方向の約1/3の領域をベタ部とした。また、ベタ部の現像量は残留トナーと同等のトナー量(約0.2g/m
2)になるように感光体表面電位、現像電位を調整した。モード1は滑剤量が中間的な値(1.0at%程度)であり、モード2はモード1に比べて滑剤量が多く(1.6at%程度)、モード3はモード1に滑剤量が少ない(0~0.3at%)ことが示された。
【0051】
次いで、各モード間の切り替えについて説明する。
各作像部YMCKの状態によってモード1からモード2に切り替え、モード1、モード2問わず、各作像部YMCKの使用環境によってモード3に切り替える。モード1からモード2への切り替えは各作像部YMCKの駆動時間、滑剤棒102の残量に応じて行い、この切り替えは不可逆である。これに対し、モード3への切り替えは各作像部YMCK周辺の絶対湿度に応じて行い、この切り替えは可逆とし、使用環境が通常に戻ったときにはモードを切り替える前の状態(モード1あるいはモード2)に戻す。
【0052】
モード1からモード2への切り替えについて説明する。
各作像部YMCKのライフサイクルの前半はクリーニング装置48の摩耗が少なく、クリーニング能力が高いため、滑剤量が少なくてもトナーのすり抜けを抑制することができる。またクリーニング装置48は感光体41からの摩擦力で摩耗するが、通常はブレードエッジ先端部に堆積した外添剤が少しずつすり抜けることで、感光体41から受ける摩擦力を低減している。ところが滑剤量が多いと外添剤のすり抜けが極端に抑制され、結果的に感光体41から受ける摩擦力が大きくなり、ブレード摩耗が進行する。このことから、初期的には滑剤量をある程度少なくすることが、ブレード摩耗抑制に有効である。
一方で、ライフサイクルの後半になるとクリーニング装置48の摩耗が多くなり、滑剤量が少ないままだとトナーのすり抜けが激しくなる。トナーのすり抜けは感光体41の滑剤層を削ることになり、さらに滑剤量を減少させるため、一気にクリーニング不良として画像に現れる。このことから、使用後半では滑剤量を増やしてトナーのすり抜けを抑制することで各作像部YMCKのライフをさらに伸ばすことができる。
【0053】
各作像部YMCKの使用状態を見積もる手段として、駆動時間又は滑剤棒102の残量で見積もることが可能である。駆動時間は各作像部YMCKのライフを表している。
駆動時間は感光体41の駆動モーターの稼働時間をメモリーに積算していくことで可能である。また、印字枚数をカウントして、印字枚数によって切り替え制御をしても良い。
滑剤棒102の消費量も駆動時間に比例する。滑剤棒102の残量検知については直接的にその位置を測定することで可能になる。滑剤棒102は消耗してくると、図示しない支持板金(滑剤棒102を支持している支持部材)の位置が徐々に移動し、塗布ブラシ101に近づいてくる。たとえば、この支持板金の位置を検知することで滑剤棒102の残量を検知することが可能である。位置の検知は一般的な変位センサーを用いて連続的に残量を監視してもよく、またフォトセンサーを設置して滑剤棒102の消費量が所定の消費量を上回ったことを知らせるようにしてもよい。あるいは、滑剤棒102の押圧力を直接測定することが可能であり、押圧部材103の力量を直接測定することができる。この場合、たとえば押圧部材103の支持部(滑剤棒102に当接する端部の反対側の端部)に押圧センサーを設置することで可能になる。押圧センサーはシート状のものやロードセルを使用できる。
【0054】
モード3への切り替えについて説明する。
一般的に滑剤塗布を行う各作像部YMCKは感光体41の減耗量が小さくなる。帯電装置42で発生した放電生成物(窒素酸化物)が感光体41に付着し、空気中の水分と結合するとイオン化し、静電潜像が維持できなくなり、にじんだような画像、いわゆる像流れが発生する。通常は放電生成物をクリーニング装置48で除去しているが、減耗量が小さくなるとこの放電生成物の除去もできなくなり、像流れが発生しやすくなる。したがって像流れが発生しやすい環境では、滑剤量を少なくすることが有効になる。
像流れが発生しやすい環境とは、空気中の水分量が多い状態、つまり絶対湿度が高い状態である。特に絶対湿度が20g/m3を超えると、像流れが発生するリスクが高くなる。このような状態の時にモード3に切り替えることで、像流れの発生を抑制できる。絶対湿度は温度と湿度の関数であるので、温度と湿度を検知して温度湿度のマトリックス(高温、高湿ほど絶対湿度高い)で制御を行ってもよい。本実施形態においては、温湿度検出部8によって温度及び湿度を検知するものとする。
【0055】
続いて、本実施形態に係る画像形成装置1の動作について、
図6のフローチャートを用いて説明する。
図6においては、各作像部YMCKは初期状態から使用開始するものとし、即ちクリーニング装置48や滑剤棒102は未使用ものを使用するものとする。ここでは作像部Yを例にとり説明するが、作像部M,C,Kについても同様の説明を適用可能であり、個々の作像部について別個に下記の制御を行うものとする。
なお、
図6における画像形成装置1の動作は、制御部10と記憶部6に記憶されているプログラムとの協働により実現される。
【0056】
まず、作像部Yの使用を開始すると、制御部10は、ブラシバイアスVBRと回収バイアスVFLをモード1の電圧に設定する(ステップS601)。
【0057】
続いて、制御部10は、作像部Yを所定の駆動時間だけ駆動したか否かを判断する(ステップS602)。所定の駆動時間とは、上記したようにクリーニング装置48のブレード摩耗が進行し、トナーのすり抜けが発生すると見込まれる駆動時間を指す。制御部10は、所定の駆動時間だけ駆動したと判断すると(ステップS603:YES)、ブラシバイアスVBRと回収バイアスVFLをモード2の電圧に切り替えるが(ステップS603)、所定の駆動時間だけ駆動していないと判断すると(ステップS603:NO)、ステップS609へと移行する。
なお、ここではモード1とモード2との切り替えのタイミングを駆動時間によって判断するものとしたが、上記したように滑剤棒102の消費量が所定の消費量を上回ったか否かによって判断することも可能である。
【0058】
ステップS603の後、制御部10は、H1≧Hであるか否かを判断する(ステップS604)。ここで、H1とは温湿度検出部8によって検出された温度及び湿度に基づいて、制御部10によって算出された絶対湿度であり、Hは上記したように像流れが発生しやすいと予想される所定の絶対湿度である。なお、所定の絶対湿度は予め記憶部6によって記憶されている。制御部10は、H1≧Hではないと判断すると(ステップS604:NO)、ステップS605へと移行する。
ステップS605では、制御部10は、作像部Yの各部品の交換時期であるか否かを判断する。即ち、制御部10は、クリーニング装置48のブレード交換時期や、滑剤棒102の交換時期等であるかを判断し、交換時期であると判断すると(ステップS605:YES)、制御を終了するが、交換時期ではないと判断すると(ステップS605:NO)、ステップS604へと戻る。
【0059】
ステップS604において、制御部10は、H1≧Hである、即ち像流れが発生しやすい使用環境であると判断すると(ステップS604:YES)、ブラシバイアスVBRと回収バイアスVFLをモード3の電圧に切り替える(ステップS606)。
【0060】
ステップS606の後、制御部10は、H1<Hであるか否かを判断する(ステップS607)。制御部10は、H1<Hである、即ち像流れが発生しやすい使用環境ではなくなったと判断すると(ステップS607:YES)、ステップS603へと戻るが、H<H1ではないと判断すると、交換時期か否かを判断する(ステップS608)。ステップS608において、制御部10は、交換時期であると判断すると(ステップS608:YES)、制御を終了するが、交換時期ではないと判断すると(ステップS608:NO)、ステップS607へと戻る。
【0061】
ステップS609では、制御部10は、H1≧Hであるか否かを判断し、H1≧Hではないと判断すると(ステップS609:NO)、交換時期か否かを判断し(ステップS610)、交換時期であると判断すると(ステップS610:YES)、制御を終了するが、交換時期ではないと判断すると(ステップS610:NO)、ステップS602へと戻る。
【0062】
ステップS609において、H1≧Hであると判断すると(ステップS609:YES)、ブラシバイアスVBRと回収バイアスVFLをモード3の電圧に切り替え(ステップS611)、H1<Hであるか否かを判断し(ステップS612)、H1<Hであると判断すると(ステップS612:YES)、ステップS601へと移行するが、H1<Hではないと判断すると(ステップS612:NO)、交換時期であるか否かを判断し(ステップS613)、交換時期であると判断すると(ステップS613:YES)、制御を終了するが、交換時期ではないと判断すると(ステップS613:NO)、ステップS612へと戻る。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置1は、粉体状の潤滑剤を固形化した滑剤棒102と、感光体41に供給された滑剤を押圧して被膜化するクリーニング装置48と、滑剤を感光体41に供給するとともに、感光体41に付着した残留トナーを除去する塗布ブラシ101と、塗布ブラシに付着したトナーを回収する回収ローラー104と、を備える潤滑剤塗布装置100と、塗布ブラシ101の除去性と、回収ローラー104の回収性と、をそれぞれ変更することで、感光体41上の滑剤量を制御する制御部10と、を備える。したがって、除去性及び回収性をそれぞれ独立に制御することができるため、感光体上の滑剤量を適切な量に維持することで、作像部の長期にわたる安定したクリーニング性を確保し、長寿命化を実現可能することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る画像形成装置1は、塗布ブラシ101に電圧を印加するブラシバイアス印加部101aと、回収ローラー104に電圧を印加する回収バイアス印加部104aと、を備え、制御部10によってブラシバイアスVBR及び回収バイアスVFLがそれぞれ変更されることにより、除去性及び回収性が変更される。したがって、塗布ブラシ101等の回転速度を制御する場合に比べて、塗布ブラシ101の感光体41に対する摺擦力に影響を与えることなく滑剤量を調整することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る画像形成装置1は、モード1、モード2及びモード3のいずれかを実行し、モード1におけるブラシバイアスVBRと回収バイアスVFLとの差が、モード2におけるブラシバイアスVBRと回収バイアスVFLとの差よりも大きく、モード3におけるブラシバイアスVBRがモード1及びモード2におけるブラシバイアスVBRよりも小さくなるように制御することで、モード1において除去性及び回収性を相対的に高い値とし、モード2において除去性を相対的に高い値とするとともに回収性を相対的に低い値とし、モード3において除去性を相対的に低い値とするとともに回収性を相対的に高い値とする。したがって、3つのモードのうちいずれかを選択することで、状況に応じた滑剤量の調整が可能となる。
【0066】
また、本実施形態に係る画像形成装置1は、各作像部YMCKの駆動時間が所定の駆動時間を上回った場合、または滑剤棒102の消費量が所定の消費量を上回った場合に、モード1からモード2へ切り替える。したがって、作像部の連続使用によるクリーニング不良を抑制し、作像部のライフを伸ばすことができる。
【0067】
また、本実施形態に係る画像形成装置1は、各作像部YMCKの近傍の絶対湿度が所定の絶対湿度を上回った場合にモード1又はモード2からモード3に切り替え、絶対湿度が所定の絶対湿度を下回った場合に、モード3からモード1又はモード2に切り替える。したがって、高温高湿条件下のように像流れが発生しやすい環境で、滑剤量を少なくすることで像流れを効果的に抑制することが可能である。
【0068】
なお、上記実施形態においては、除去性、回収性を制御する方法として主に塗布ブラシ101、回収ローラー104への印加電圧を調整することで説明をしたが、この他にもそれぞれの回転数を変更することでも制御可能である。特に塗布ブラシ101、回収ローラー104の回転方向がウィズ回転(回収ローラー104の表面が、回収ローラー104と塗布ブラシ101との接触部において塗布ブラシ101と同一方向に進行する)の場合、線速比θが1以上の領域では、回転数で大きく除去性、回収性を調整することができる。なお、回転数は塗布ブラシ駆動部101b又は回収ローラー駆動部104bによって、各々変更される。
たとえば3つのモードに対して以下のような線速比θの設定が考えられる。なお、感光体41に対する塗布ブラシ101の線速比をθBR、塗布ブラシ101に対する回収ローラー104の線速比をθFLとする。
モード1:θBR=1.5、θFL=1.5 (θFL=θBR>1.0)
モード2:θBR=1.5、θFL=1.0 (θBR>θFL=1.0)
モード3:θBR=1.0、θFL=1.5 (θFL>θBR=1.0)
モード1では、感光体41に対する塗布ブラシ101の線速が大きく、また塗布ブラシ101に対する回収ローラー104の線速が大きいため、除去性及び回収性が相対的に高い値となる。モード2では、感光体41に対する塗布ブラシ101の線速が大きいため、除去性が比較的高い値となる一方で、塗布ブラシ101と回収ローラー104との線速が同一であるため回収性が相対的に低い値となる。モード3では、感光体41と塗布ブラシ101との線速が同一であるため除去性が相対的に低い値となる一方で、塗布ブラシ101に対する回収ローラー104の線速が大きいため回収性が相対的に高い値となる。
【0069】
[他の実施形態]
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、上記の実施形態は本発明の好適な例であり、これに限定されない。
【0070】
例えば、上記実施形態においては、表面に感圧式導電性ゴムを有した感光体41を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、カーボンブラック等の導電性粒子を配合した電子導電系の導電性ゴムを利用することも可能であり、この場合もゴムの体積変化で抵抗値が変化するため、本発明の効果を得ることができる。
【0071】
また、上記実施形態においては、滑剤棒102を塗布ブラシ101に対して押圧保持する押圧部材103を備える構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。即ち、押圧部材103は本発明に必須の構成ではなく、例えば、滑剤棒102を塗布ブラシ101に対して上方に配置するようにし、滑剤棒102の自重により塗布ブラシ101に対して押圧力を与えるようにしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態においては、回収部材として回収ローラー104を用いるものとしたが、これに限定されない。例えば、スクレーパー等の金属板を塗布ブラシ101に当接させ、当該金属板に電圧を印加する構成としてもよい。この場合は塗布ブラシの回転数による制御はできないが、塗布ブラシ101及び金属板に印加する電圧を制御することによって、上記実施形態と同様の効果を得られる。
【0073】
また、上記実施形態においては、感光体41及び現像装置44をYMCK各色用に4組用意してそれぞれにYMCKの各色の画像を形成させ、中間転写ベルトT上で重ね合わせるカラーの画像形成装置を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、感光体41と現像装置44とを1組のみ有する単色の画像形成装置に対しても、本発明を適用することができる。
また、中間転写ベルトTや一次転写ローラー45、二次転写対向ローラー461等を省略して、感光体41から直接用紙Pに転写する直接転写方式の画像形成装置に対しても、本発明を適用することができる。
その他、従来から用いられる電子写真各プロセス技術は、画像形成装置の目的に応じて任意の構成と組み合わせることができる。
【0074】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、画像形成装置を構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の主旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 画像形成装置
4 画像形成部
41 感光体(像担持体)
42 帯電装置
43 露光装置
44 現像装置
47 除電装置
48 クリーニング装置(クリーニング部)
100 潤滑剤塗布装置
101 塗布ブラシ(塗布部材)
101a ブラシバイアス印加部(第1電圧印加部)
102 滑剤棒
103 押圧部材
104 回収ローラー(回収部材)
104a 回収バイアス印加部(第2電圧印加部)
105 スクレーパー
106 回収スクリュー
8 温湿度検出部
10 制御部
Y イエロー作像部(作像部)
M マゼンタ作像部(作像部)
C シアン作像部(作像部)
K ブラック作像部(作像部)