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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】噴霧器
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/24 20060101AFI20220301BHJP
   B05B 17/04 20060101ALI20220301BHJP
   H05B 3/14 20060101ALI20220301BHJP
   A24F 40/44 20200101ALI20220301BHJP
   A24F 40/46 20200101ALI20220301BHJP
   A61M 15/06 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B05B1/24
B05B17/04
H05B3/14 G
A24F40/44
A24F40/46
A61M15/06 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018021687
(22)【出願日】2018-02-09
(65)【公開番号】P2019136647
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 倫寿
(72)【発明者】
【氏名】新井 勇人
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516402(JP,A)
【文献】特開2017-057246(JP,A)
【文献】特開2017-156620(JP,A)
【文献】国際公開第2016/166064(WO,A1)
【文献】特表2016-503647(JP,A)
【文献】特表2016-539773(JP,A)
【文献】特開2007-245008(JP,A)
【文献】特開平10-032080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-3/18
7/00-9/08
A24F 40/00-47/00
B05C 5/00-5/04
H05B 3/02-3/18
3/40-3/82
A61M 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部の内部において液状体を気化させ、これによって気化した前記液状体が前記筒部の外部に噴出されるように構成された噴霧器であって、
筒部と、
前記筒部内に位置し、液状体を保持する保持体と、
前記筒部内に位置し、電流の供給によって発熱する炭素繊維を備え、前記炭素繊維と前記保持体との接触を通じ、前記保持体に保持された前記液状体を気化させるための熱を前記炭素繊維から前記保持体に伝える発熱体と、を備え
前記保持体は、1つの方向に沿って延びる複数の保持繊維を束ねた集束体であり、
前記発熱体は、複数の被覆膜を含み、各被覆膜は、互いに異なる1つの前記保持繊維の外表面に接し、
各被覆膜は、隣り合う前記被覆膜に接することによって、互いに電気的に接続されている
噴霧器。
【請求項2】
前記筒部が延びる方向に沿う断面において、
前記保持体は、前記筒部が延びる方向と直交する方向に沿って延びる線状を有する
請求項1に記載の噴霧器。
【請求項3】
前記保持繊維の外表面は、前記被覆膜によって覆われた第1部分と、前記被覆膜によって覆われていない第2部分とを含む
請求項1または2に記載の噴霧器。
【請求項4】
前記第2部分は、前記保持繊維の端部に位置し、
前記噴霧器は、前記端部に接する供給体であって、前記液状体を保持し、かつ、保持した前記液状体を前記端部から前記保持体に供給する前記供給体をさらに備える
請求項に記載の噴霧器。
【請求項5】
前記保持繊維における外表面の全体が、前記被覆膜によって覆われている
請求項1または2に記載の噴霧器。
【請求項6】
前記保持繊維は、ガラス繊維である
請求項からのいずれか一項に記載の噴霧器。
【請求項7】
前記炭素繊維は、カーボンナノチューブである
請求項1からのいずれか一項に記載の噴霧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子たばこ用の噴霧器は、ウィックと、ウィックに巻き付けられた発熱体とを、円筒状の筐体内に備える(例えば、特許文献1参照)。発熱体は、金属製のワイヤであり、発熱体に電流が供給されることによって、ウィックに保持された液状体が加熱される。これにより、液状体が蒸発し、結果として、液状体に由来する気体が、筐体の内部から筐体の外部に噴出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-539773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液状体を保持したウィックに発熱体が接し続けると、発熱体の表面に錆が生じることがある。発熱体の表面に生じた錆は、液状体の加熱に要する電力や、噴出される気体の成分などを変えてしまう。
本発明は、発熱体における錆の発生を抑えることを可能とした噴霧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための噴霧器は、液状体を保持する保持体と、電流の供給によって発熱する炭素繊維を備え、前記炭素繊維と前記保持体との接触を通じ、前記保持体に保持された前記液状体を気化させるための熱を前記炭素繊維から前記保持体に伝える発熱体と、を備える。
【0006】
上記構成によれば、液状体を気化するための熱が、炭素繊維の発熱によって得られる。液状体を保持した保持体に炭素繊維が接し続けるとしても、炭素繊維の表面には錆が生じがたいため、液状体を気化するうえで発熱体に錆が生じることを抑えられる。
【0007】
上記噴霧器において、前記発熱体は、前記保持体の外表面を覆う膜状を有してもよい。上記構成によれば、発熱体が保持体を周回するコイルのように複雑な形状を有しないため、発熱体の形状が、設計された形状からずれることを抑え、これによって、噴霧器の不良率を下げることができる。
【0008】
上記噴霧器において、前記保持体は、保持繊維の集束体であり、前記発熱体は、前記保持繊維の外表面を覆う膜状を有してもよい。上記構成によれば、保持繊維の外表面が発熱体によって加熱されるため、保持繊維や保持繊維間に保持された液状体が気化されやすい。
【0009】
上記噴霧器において、前記保持繊維の外表面は、前記発熱体によって覆われた第1部分と、前記発熱体によって覆われていない第2部分とを含んでもよい。上記構成によれば、液状体が、保持繊維の第1部分から優先的に気化するため、第2部分に液状体を保持させつつ、第1部分から液状体を気化させることができる。
【0010】
上記噴霧器において、前記第2部分は、前記保持繊維の端部に位置し、前記噴霧器は、前記端部に接する供給体であって、前記液状体を保持し、かつ、保持した前記液状体を前記端部から前記保持体に供給する前記供給体をさらに備えてもよい。
【0011】
上記構成によれば、液状体を供給する供給体が、保持繊維の端部に接し、保持繊維の端部が、発熱体に覆われていない。そのため、供給体に保持される液状体が供給体で気化されることを抑え、また、保持体に供給される液状体が保持繊維の端部で気化されることが抑えられる。結果として、供給体は、所望される量の液状体を保持体に供給しやすい。
【0012】
上記噴霧器において、前記保持繊維における外表面の全体が、前記発熱体によって覆われていてもよい。上記構成によれば、外表面の全体が発熱体によって覆われた保持繊維を保持体の製造に用いることができる。すなわち、保持体の製造に際して、保持繊維における発熱体の位置や長さに制約を受けにくいため、保持繊維を用いた保持体の製造が容易である。
【0013】
上記噴霧器において、前記保持繊維は、ガラス繊維であってもよい。上記構成によれば、綿などに比べて耐熱性が高いガラス繊維によって保持繊維が構成されるため、発熱体の発熱によって保持繊維が焦げ付くことが抑えられる。
【0014】
上記噴霧器において、前記炭素繊維は、カーボンナノチューブであってもよい。上記構成によれば、発熱体における機械的な耐性や化学的な耐性を高めることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発熱体における錆の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】噴霧器を含む噴霧装置の構造を模式的に示す断面図。
図2】保持体および発熱体の構造を示す斜視図。
図3】噴霧器が延びる方向に沿う断面における噴霧器の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から図3を参照して、噴霧器を具体化した一実施形態を説明する。以下では、噴霧器を噴霧装置の一部として具体化した例を説明する。
【0018】
[噴霧装置の構成]
図1を参照して噴霧装置の構成を説明する。
図1が示すように、噴霧装置10は、噴霧器11、電源部12、および、カートリッジ13を備えている。噴霧器11は、通路11aを区画する筒状を有し、保持体21と発熱体22とを備えている。保持体21は液状体を保持し、保持体21によって保持される液状体は、噴霧器11によって気化される。液状体は、液体のみから構成されてもよいし、液体と固体とから構成されてもよい。発熱体22は、電流の供給によって発熱する炭素繊維を備え、炭素繊維と保持体21との接触を通じ、保持体21に保持された液状体を気化させるための熱を炭素繊維から保持体21に伝える。噴霧装置10では、液状体を気化するための熱が、炭素繊維の発熱によって得られる。液状体を保持した保持体21に炭素繊維が接し続けるとしても、炭素繊維の表面には錆が生じがたいため、液状体を気化するうえで発熱体22に錆が生じることを抑えられる。
【0019】
電源部12は、電池、電子回路、および、電池と電源回路とが収容される筐体を備えている。電池は、発熱体22に電流を供給する。電池は、一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。電子回路は、電池から発熱体22への電流の供給を制御する。
【0020】
カートリッジ13は、フランジ部13aと収容部13bとを備えている。収容部13bは、噴霧器11の通路11aに嵌ることが可能な筒状を有している。収容部13bが備える2つの筒端のうち、一方の端部にはフランジ部13aが位置し、他方の端部には複数の貫通孔が形成されている。フランジ部13aは、収容部13bの筒端から収容部13bにおける径方向の外側に向けて延びる形状を有している。フランジ部13aは、収容部13bが噴霧器11の通路11aに嵌め込まれたときに、噴霧器11の筒端に接する。これにより、カートリッジ13が噴霧器11に固定される。
【0021】
収容部13bには、噴霧装置10の用途に応じた内容物が収容される。噴霧装置10が加熱式たばことして用いられるときには、内容物として、例えばたばこ葉を挙げることができる。噴霧装置10が吸入器として用いられる場合には、内容物として、例えば各種の薬剤を挙げることができる。
【0022】
噴霧装置10では、電源部12から発熱体22が備える炭素繊維に電流が供給されることによって、炭素繊維が発熱する。炭素繊維が発した熱によって保持体21に保持された液状体が加熱され、液状体が気化される。気化した液状体は、噴霧器11の通路11a、および、カートリッジ13の収容部13bを通って噴霧装置10の外部に噴出される。なお、噴霧装置10の使用者は、カートリッジ13の一部、および、噴霧器11の筒端を口にくわえることによって、噴霧装置10から噴出された気体を吸入することができる。
【0023】
噴霧装置10において、カートリッジ13を省略することができる。カートリッジ13を省略した構成では、噴霧装置10の使用者は、噴霧器11の筒端を口にくわえることによって、噴霧装置10から噴出された気体を吸入することができる。
【0024】
[噴霧器の構成]
図2および図3を参照して噴霧器11の構成をより詳しく説明する。以下では、噴霧器11の全体を説明する前に、噴霧器11が備える保持体21および発熱体22をより詳しく説明する。
【0025】
図2が示すように、発熱体22は、保持体21の外表面を覆う膜状を有している。保持体21は、複数の保持繊維21Aの集束体であり、発熱体22は、保持繊維21Aの外表面を覆う膜状を有している。本実施形態では、発熱体22は複数の被覆膜22Aから構成され、各被覆膜22Aは、互いに異なる1つの保持繊維21Aの外表面を覆っている。複数の被覆膜22Aは互いに接することによって、互いに電気的に接続されている。
【0026】
このように、発熱体22が保持体21を周回するコイルのように複雑な形状を有しないため、発熱体22の形状が、設計された形状からずれることを抑え、これによって、噴霧器11の不良率を下げることができる。なお、発熱体がコイルのように複雑な形状を有する場合には、発熱体が接する保持体の変形によって、発熱体の機能が損なわれる程度に発熱体が変形する可能性が高い。これに対して、本実施形態の発熱体22は膜状であるため、保持体21が変形しても発熱体22の機能が損なわれにくくなる。また、保持繊維21Aの外表面が発熱体22によって加熱されるため、保持繊維21Aや保持繊維21A間に保持された液状体が気化されやすい。
【0027】
保持繊維21Aは、1つの方向に沿って延びる線状を有している。保持繊維21Aの外表面は、被覆膜22Aによって覆われた第1部分21A1と、被覆膜22Aによって覆われていない第2部分21A2とを含んでいる。第2部分21A2は、保持繊維21Aの各端部に位置している。そのため、液状体が、保持体21の第1部分21A1から優先的に気化し、これによって、第2部分21A2に液状体を保持させつつ、第1部分21A1から液状体を気化させることができる。
【0028】
保持繊維21Aは、ガラス繊維であることが好ましい。綿などに比べて耐熱性が高いガラス繊維によって保持繊維21Aが構成されるため、発熱体22の発熱によって保持繊維21Aが焦げ付くことが抑えられる。なお、保持繊維21Aには、ガラス繊維に限らず、例えば、綿製の繊維や合成樹脂製の繊維などの各種の繊維を用いることが可能ではある。
【0029】
発熱体22において炭素繊維が占める割合は、例えば60質量%以上100質量%以下である。発熱体22は、炭素繊維以外に、例えば、炭素繊維同士を接着する接着剤などを含むことができる。発熱体22の主成分である炭素繊維は、カーボンナノチューブである。これにより、発熱体22における機械的な耐性や化学的な耐性を高めることが可能である。カーボンナノチューブには、単層構造のカーボンナノチューブ、および、多層構造のカーボンナノチューブの両方を用いることが可能である。なお、炭素繊維には、カーボンナノチューブに限らず、カーボンナノホーン、および、カーボンナノファイバなどの各種の炭素繊維を用いることができる。
【0030】
発熱体22において、各被覆膜22Aを構成するカーボンナノチューブには、他のいずれかのカーボンナノチューブに電気的に接続するカーボンナノチューブが含まれている。そのため、発熱体22に電力が供給されたときには、すべての被覆膜22Aに電力が供給される。
【0031】
噴霧器11は、さらに2本の配線23を備えている。各配線23における2つの端部のうち、一方の端部は発熱体22の一部に電気的に接続され、他方の端部は電源部12が有する端子に電気的に接続されている。各配線23は、発熱体22に接合されることによって発熱体22に電気的に接続されてもよいし、発熱体22に巻かれることによって発熱体22に接合されてもよい。各配線23は、発熱体22を構成するすべての被覆膜22Aに接していてもよいし、一部の被覆膜22Aにのみ接していてもよい。配線23には、導電体を用いることができ、例えば金属製のワイヤを用いることができる。なお、各配線23は、絶縁物から形成された絶縁膜によって被覆されていることが好ましい。
【0032】
発熱体22の抵抗値は、例えば3Ω以上3.3Ω以下である。発熱体22の抵抗値は、2本の配線23間における抵抗値として測定することができる。発熱体22の抵抗値は、発熱体22を構成する各被覆膜22Aの厚さ、各被覆膜22Aの長さ、各被覆膜22Aにおける炭素繊維の割合、および、発熱体22を構成する被覆膜22Aの数などによって調整することができる。発熱体22が上述したような抵抗値を有するため、配線23を通じて発熱体22に電流が供給されることによって、発熱体22が、例えば200℃以上300℃以下の温度に加熱される。
【0033】
発熱体22は、例えば、以下の方法によって形成することができる。すなわち、発熱体22を形成するときには、まず、保持体21を構成する複数の保持繊維21Aを準備する。そして、各保持繊維21Aの一部に炭素繊維を含む塗液を塗布する。本実施形態の発熱体22を得るためには、保持繊維21Aのなかで、保持繊維21Aが延びる方向における中央を含む部分に塗液を塗布する。そして、塗液を乾燥させることによって、発熱体22を構成する被覆膜22Aによって覆われた保持繊維21Aを得ることができる。複数の保持繊維21Aを縒り合わせることによって、保持体21と、保持体21の一部を覆う発熱体22とを得ることができる。
【0034】
図3は、噴霧装置10が延びる方向に沿う断面における噴霧器11の構造を示している。なお、図3では、図示の便宜上、複数の保持繊維が1つのブロックで示され、かつ、複数の被覆膜22Aが1つのブロックで示されている。
【0035】
図3が示すように、噴霧器11は、供給体24、外側筒部25、内側筒部26、および、蓋部27を備えている。外側筒部25および内側筒部26の各々は、噴霧装置10が延びる方向に沿う筒状を有し、外側筒部25が区画する空間内に内側筒部26が位置している。外側筒部25を形成する材料には、例えば、合成樹脂または金属を用いることができる。内側筒部26を形成する材料には、例えば、合成樹脂またはガラス繊維を用いることができる。内側筒部26を形成する材料は、絶縁性を有することが好ましい。
【0036】
保持体21および発熱体22は、外側筒部25が区画する空間内に位置している。保持体21は、外側筒部25の内部において、外側筒部25が延びる方向とほぼ直交する方向に沿って延び、かつ、保持体21が延びる方向において内側筒部26を貫通している。発熱体22は、保持体21が延びる方向において、内側筒部26が区画する空間内に位置し、内側筒部26を貫通していない。言い換えれば、発熱体22の両端部は、内側筒部26よりも内側に位置している。さらに言い換えれば、保持体21において、各第2部分21A2は内側筒部26よりも外側にまで位置し、かつ、第1部分21A1における両端部は、内側筒部26よりも内側に位置している。
【0037】
各配線23は、内側筒部26の内部に位置する発熱体22の一部から、電源部12に向けて延びる形状を有している。
【0038】
供給体24は、発熱体22よりも外側において保持繊維21Aの端部である第2部分21A2に接している。供給体24は液状体を保持し、かつ、保持した液状体を保持繊維21Aの端部から保持体21に供給する。供給体24は、外側筒部25と内側筒部26との間に位置している。供給体24は、外側筒部25と内側筒部26との間において、保持体21が含む第2部分21A2の一部に接している。
【0039】
供給体24は、例えば外側筒部25と内側筒部26との間に位置する繊維層である。シート状を有する繊維層が筒状に成形されることによって、供給体24が構成されている。供給体24を形成する材料には、例えば綿や合成樹脂を用いることができる。供給体24は単層構造でもよいし、多層構造でもよい。供給体24が多層構造であるときには、複数の層には、互いに異なる材料によって形成された層が含まれてもよい。
【0040】
供給体24は、発熱体22によって気化される液状体を保持している。供給体24は、内側筒部26と外側筒部25との間に形成される空間のほぼ全体を埋めている。そのため、保持体21のなかで内側筒部26から突き出た部分が、供給体24に接する。しかも、上述したように、保持体21のなかで内側筒部26から突き出た部分には、保持繊維21Aの端部が含まれる。これにより、液状体を供給する供給体24が、保持繊維21Aの端部に接し、保持繊維21Aの端部が発熱体22によって覆われていない。そのため、供給体24に保持される液状体が供給体24で気化されることを抑え、また、保持体21に供給される液状体が保持繊維21Aの端部で気化されることが抑えられる。結果として、供給体24は、所望される量の液状体を保持体21に供給しやすい。
【0041】
なお、供給体24を液状体中に漬けること、供給体24に液状体を滴下すること、または、供給体24に液状体を塗ることなどによって、供給体24に液状体を保持させることができる。
【0042】
蓋部27は、閉環状を有している。蓋部27は、外側筒部25および内側筒部26の筒端のうち、カートリッジ13が嵌め込まれる端部に位置し、外側筒部25と内側筒部26との間の空間を封止している。蓋部27を形成する材料は、金属であってもよいし、各種の合成樹脂であってもよい。
【0043】
以上説明したように、噴霧器の一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)液状体を気化するための熱が、炭素繊維の発熱によって得られる。液状体を保持した保持体21に炭素繊維が接し続けるとしても、炭素繊維の表面には錆が生じがたいため、液状体を気化するうえで発熱体22に錆が生じることを抑えられる。
【0044】
(2)発熱体22が保持体21を周回するコイルのように複雑な形状を有しないため、発熱体22の形状が、設計された形状からずれることを抑え、これによって、噴霧器11の不良率を下げることができる。
【0045】
(3)保持繊維21Aの外表面が発熱体22によって加熱されるため、保持繊維21Aや保持繊維21A間に保持された液状体が気化されやすい。
【0046】
(4)液状体が、保持繊維21Aの第1部分21A1から優先的に気化するため、第2部分21A2に液状体を保持させつつ、第1部分21A1から液状体を気化させることができる。
【0047】
(5)液状体を供給する供給体24が、保持繊維21Aの端部に接し、保持繊維21Aの端部が、発熱体22に覆われていない。そのため、供給体24に保持される液状体が供給体24で気化されることを抑え、また、保持体21に供給される液状体が保持繊維21Aの端部で気化されることが抑えられる。結果として、供給体24は、所望される量の液状体を保持体21に供給しやすい。
【0048】
(6)綿などに比べて耐熱性が高いガラス繊維によって保持繊維21Aが構成されるため、発熱体22の発熱によって保持繊維21Aが焦げ付くことが抑えられる。
【0049】
(7)発熱体22における機械的な耐性や化学的な耐性を高めることが可能である。
【0050】
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することができる。
[保持体21]
・保持繊維21Aにおける外表面の全体が、発熱体22を構成する被覆膜22Aによって覆われていてもよい。こうした構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
【0051】
(8)外表面の全体が発熱体22によって覆われた保持繊維21Aを保持体21の製造に用いることができる。すなわち、保持体21の製造に際して、保持繊維21Aにおける発熱体22の位置や長さに制約を受けにくいため、保持繊維21Aを用いた保持体21の製造が容易である。
【0052】
・第2部分21A2は、各保持繊維21Aにおける一方の端部にのみ位置してもよい。こうした構成においても、保持繊維21Aの第2部分21A2によれば、上述した(5)に準じた効果を得ることはできる。
【0053】
・保持体21は複数の保持繊維21Aから構成されていなくてもよく、例えば、1本の保持繊維から構成されてもよい。あるいは、保持体は、例えば、綿や合成樹脂から形成された不織布であってもよいし、液状体を保持することが可能な多孔質の部材であってもよい。
【0054】
[発熱体22]
・発熱体22は、各保持繊維21Aにおける外表面の一部に接する筒状を有してもよい。言い換えれば、発熱体22が区画する空間内に全ての保持繊維21Aが通されていてもよい。こうした構成であっても、発熱体22が各保持繊維21Aに接するため、保持繊維21Aに保持された液状体が、発熱体22が発した熱によって加熱される。
【0055】
・発熱体22は、各保持繊維21Aの外表面を覆う複数の被覆膜22Aと、各保持繊維21Aにおける外表面の一部に接する筒状を有し、かつ、全ての保持繊維21Aが通る膜との両方を備えてもよい。
【0056】
・発熱体22は、膜状以外の形状を有してもよい。発熱体22は、例えば保持体21の外周面に巻き付けられたコイル状を有してもよい。
【0057】
[その他の変形例]
・供給体24は省略されてもよい。こうした構成では、外側筒部25と内側筒部26との間に液状体が充填されていればよい。
【符号の説明】
【0058】
10…噴霧装置、11…噴霧器、11a…通路、12…電源部、13…カートリッジ、13a…フランジ部、13b…収容部、21…保持体、21A…保持繊維、21A1…第1部分、21A2…第2部分、22…発熱体、22A…被覆膜、23…配線、24…供給体、25…外側筒部、26…内側筒部、27…蓋部。
図1
図2
図3