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  • 特許-回転電機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
H02K9/06 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018043414
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019161792
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(72)【発明者】
【氏名】小川 裕治
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-089046(JP,A)
【文献】実開昭60-062851(JP,U)
【文献】米国特許第04442371(US,A)
【文献】実開昭63-004154(JP,U)
【文献】特開昭61-085035(JP,A)
【文献】実開昭60-147973(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0127862(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部中空のフレームと、
前記フレームに対して支持されて両端側からコイルエンドを突出させた円筒形をなす固定子と、
前記固定子の内部を貫通して前記フレームに対して回転可能に支持された回転軸と、
前記回転軸と前記固定子との間に位置するように当該回転軸に取り付けられ、内部を通る通風ダクトを有しない、円筒形をなす回転子と、
前記固定子の前記コイルエンドの当該固定子の径方向内側に位置するように前記回転軸に同軸をなして取り付けられたプロペラ形の送風ファンと
を備えている回転電機において、
前記送風ファンの径方向外側を覆うように、前記送風ファンの径方向外側の端部と隙間を有して対向させて、前記固定子の前記コイルエンドの当該固定子の径方向内側に取り付けられた環状をなすガイドリングを備えており、
前記ガイドリングが、軸方向に沿って貫通する貫通孔を周方向に沿って複数形成されていると共に、当該貫通孔に緊縛コードを挿通されて、当該緊縛コードのみにより前記コイルエンドに緊締固定されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記ガイドリングが、前記固定子の軸方向内側よりも軸方向外側を厚くするように、外周面をテーパ状に傾斜させた台形型の軸方向断面形状をなしている
ことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機や電動機等の回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機や電動機等の回転電機は、作動させると、固定子の内部やコイルエンド等の巻線部分や回転子の磁石部分等が発熱するため、回転軸に取り付けた送風ファンの回転により、固定子のコイルエンドの間隙にエアを送給して当該コイルエンドを冷却すると共に、固定子と回転子との間のギャップにエアを送給して当該ギャップ及び当該ギャップに連通する固定子のダクトに流通させて回転子の磁石部分や固定子の内部の巻線部分を冷却するようにしている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-035319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したような回転電機においては、固定子と回転子との間の前記ギャップの大きさが、コイルエンドの前記間隙の大きさよりも小さいため、送風ファンで送給されたエアが、前記間隙よりも前記ギャップへ流れ難く、回転子の磁石部分や固定子の内部の巻線部分の冷却効率が低くなっていた。
【0005】
そこで、例えば、送風ファンの複数の羽根の径方向外側の縁端同士の間を繋ぐように当該送風ファンに環状のシュラウドを同軸で取り付けることにより、エアの送給方向に指向性をもたせて、前記ギャップにエアを流れ易くすることが考えられるものの、送風ファンがかなり速く回転することから(商業周波数50~60Hzで1500~1800rpm)、回転電機が大型であると、送風ファンの羽根の径方向外側の縁端部とシュラウドとの接合部分に多大な応力が加わってしまうため、当該接合部分に過大な強度が必要となり、現実的ではなかった。
【0006】
このようなことから、本発明は、大型であっても、固定子と回転子との間のギャップへエアを効率よく送給することが容易にできる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための、本発明に係る回転電機は、内部中空のフレームと、前記フレームに対して支持されて両端側からコイルエンドを突出させた円筒形をなす固定子と、前記固定子の内部を貫通して前記フレームに対して回転可能に支持された回転軸と、前記回転軸と前記固定子との間に位置するように当該回転軸に取り付けられ、内部を通る通風ダクトを有しない、円筒形をなす回転子と、前記固定子の前記コイルエンドの当該固定子の径方向内側に位置するように前記回転軸に同軸をなして取り付けられたプロペラ形の送風ファンとを備えている回転電機において、前記送風ファンの径方向外側を覆うように、前記送風ファンの径方向外側の端部と隙間を有して対向させて、前記固定子の前記コイルエンドの当該固定子の径方向内側に取り付けられた環状をなすガイドリングを備えており、前記ガイドリングが、軸方向に沿って貫通する貫通孔を周方向に沿って複数形成されていると共に、当該貫通孔に緊縛コードを挿通されて、当該緊縛コードのみにより前記コイルエンドに緊締固定されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る回転電機は、上述した回転電機において、前記ガイドリングが、前記固定子の軸方向内側よりも軸方向外側を厚くするように、外周面をテーパ状に傾斜させた台形型の軸方向断面形状をなしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る回転電機によれば、送風ファンがかなり速く回転しても、送風ファンの羽根やガイドリングに多大な応力が加わることなく、送風ファンに取り込んだエアに対して回転軸の軸方向に沿う指向性を与えてエアを送出することができることから、その多くのエアを固定子と回転子との間のギャップに流入させることができるので、大型であっても、前記ギャップへエアを効率よく送給することが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る回転電機の主な実施形態の概略構成図である。
図2図1の回転電機のガイドリングの外観図である。
図3図2のガイドリングの一部抽出拡大図である。
図4図2のガイドリングの取付説明図である。
図5図1の回転電機のエア流れの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る回転電機の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0013】
〈主な実施形態〉
本発明に係る回転電機の主な実施形態を図1~4に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すように、内部中空のフレーム11の内側には、回転軸12が配設されており、当該回転軸12は、両端側が当該フレーム11に回転可能に支持されている。前記回転軸12の外周面の軸方向中程には、円筒形をなす回転子13が同軸をなして取り付けられている。
【0015】
前記回転子13の外周には、両端側からコイルエンド15をそれぞれ突出させた円筒形をなす固定子14が当該回転子13との間にギャップGを有するように同軸をなして配設されており、当該固定子14は、内周側と外周側とを連通するダクト14aが軸方向に沿って複数形成されると共に、前記フレーム11内に取り付けられた仕切板16により外周側を囲まれるようにして固定支持されている。
【0016】
つまり、前記回転軸12は、前記固定子14の内部を貫通するように配設され、前記回転子13は、前記回転軸12と前記固定子14との間に位置するように配設されているのである。
【0017】
前記固定子14の前記コイルエンド15の、当該固定子14の径方向で外側には、当該コイルエンド15の、当該固定子14の軸方向で中程よりも内側を覆うカバー17がそれぞれ配設されており、当該カバー17は、前記仕切板16に各々連結支持されている。
【0018】
前記回転軸12の、前記固定子14の軸方向で前記コイルエンド15の中程と対向する位置には、プロペラ形の送風ファン18が同軸をなしてそれぞれ取り付けられており、当該送風ファン18は、上記回転軸12の回転に伴って、当該回転軸12の軸方向外側から軸方向内側へ向けてエア1を各々送給することができるようになっている。つまり、前記送風ファン18は、前記固定子14の前記コイルエンド15の、当該固定子14の径方向内側に位置するように前記回転軸12に取り付けられているのである。
【0019】
前記仕切板16には、当該仕切板16の内側と外側である前記カバー17の内側との間を連通する連通穴16aが複数形成されている。前記仕切板16の上方には、熱交換器19が取り付けられている。
【0020】
前記固定子14の前記コイルエンド15の、当該固定子14の径方向で内側には、環状をなすガイドリング21(図2参照)が前記送風ファン18を内側に位置させて当該送風ファン18の径方向外側の端部と隙間を有して対向するように、当該コイルエンド15の、当該固定子14の軸方向で中程部分にそれぞれ配設されており、当該ガイドリング21は、軸方向の長さが、上記送風ファン18の軸方向の長さと略等しい長さ、言い換えれば、シュラウドとして上記送風ファン18の径方向外側を覆うのに必要十分な長さを有している。
【0021】
前記ガイドリング21には、図2,3に示すように、軸方向に沿って貫通する貫通孔21aが周方向に沿って所定の間隔で複数形成されており、当該ガイドリング21は、図4に示すように、各貫通孔21aに緊縛コード22がそれぞれ挿通されて、当該緊縛コード22が前記コイルエンド15にそれぞれ緊結されることにより、当該コイルエンド15に緊締されている。
【0022】
また、前記固定子14の前記コイルエンド15の、当該固定子14の径方向内側は、当該固定子14の軸方向内側よりも外側を拡げるようにテーパ状に傾斜(約5~15°程度)している。これに対応して、前記ガイドリング21は、前記固定子14の軸方向内側(図4中、右側)よりも軸方向外側(図4中、左側)が厚くなるように、外周面をテーパ状に傾斜(約5~15°程度)させた台形型の軸方向断面形状をなしている(図4参照)。これにより、前記ガイドリング21は、前記コイルエンド15にガタつきを生じることなく取り付くようになる。
【0023】
このような本実施形態に係る回転電機10においては、前記回転軸12を回転させると共に、前記熱交換器19を作動させると、前記送風ファン18が回転して、図5に示すように、当該熱交換器19で熱交換されて冷却されたエア1を取り込む。このとき、前記エア1は、前記コイルエンド15の先端側の間隙を流通してから前記送風ファン18に取り込まれるので、当該コイルエンド15の先端側を効果的に冷却する。
【0024】
そして、前記送風ファン18に取り込まれたエア1は、前記ガイドリング21の内側を流通することにより、前記回転軸12の軸方向に沿った指向性を有して送出されるため、その多くが前記回転子13と前記固定子14とのギャップGに流入し、当該ギャップG内及び当該固定子14の前記ダクト14a内を流通することにより、当該回転子13の磁石部分や当該固定子14の内部の巻線部分を冷却して、当該ダクト14a内から送出される一方、前記ギャップG内に流入しなかった残りが前記コイルエンド15の基端側の間隙を流通することにより、当該コイルエンド15の基端側を冷却して、前記カバー17の内側へ流出して前記仕切板16の前記連通穴16aを介して当該仕切板16の内側へ流入し、前記ダクト14a内を流通した多くと合流して前記熱交換器19で冷却された後、前記仕切板16の外側へ送出され、前記送風ファン18に再び取り込まれるように循環流通する。
【0025】
つまり、本実施形態に係る回転電機10では、前記送風ファン18の径方向外側をシュラウドとして覆うように前記ガイドリング21を前記コイルエンド15の内側に取り付けるようにしたのである。
【0026】
このため、本実施形態に係る回転電機10においては、前記送風ファン18がかなり速く回転しても、当該送風ファン18の羽根や前記ガイドリング21に多大な応力が加わることなく、当該送風ファン18に取り込んだエア1に対して前記回転軸12の軸方向に沿う指向性を与えてエア1を送出することができるので、その多くのエア1を前記ギャップGに流入させることができる。
【0027】
したがって、本実施形態に係る回転電機10によれば、大型であっても、前記ギャップGへエア1を効率よく送給することが容易にできる。
【0028】
また、前記緊縛コード22を前記ガイドリング21の前記貫通孔21aに挿通して前記コイルエンド15に緊結することにより、当該緊締コード22を当該ガイドリング21の内周面に露出させることなく当該ガイドリング21を当該コイルエンド15に緊締することができるので、当該ガイドリング21の内周面側を平滑にすることができ、当該ガイドリング21内を流通するエア1が乱流や変流等を生じてしまうことを大きく抑制できる。
【0029】
なお、前記ガイドリング21としては、前記コイルエンド15に機械的振動や電磁力的振動等の応力が常時加わることから、アルミニウムや鉄やこれらの合金等の金属からなる中空や中実の円環体にガラス基材テープやガラス基材マイカテープ等の絶縁性テープを巻回したもの(磁気損失の発生影響を考慮したもの)や、熱可塑性樹脂や熱可塑性樹脂やアルミナやシリカ等の充填材を添加した上記樹脂等のプラスチックスにガラス繊維やアラミド樹脂繊維等のファイバを添加した繊維強化樹脂(FRP)からなるものであると好ましく、特に、経年劣化等の各種使用条件等を考慮して、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を使用したFRPからなるものであると、非常に好ましい。
【0030】
また、前記緊縛コード22としては、ガラス繊維を束ねた芯材をガラス織クロスやガラスポリエステル織クロスからなるスリーブで包囲したガラス繊維ロープが好ましく、緊結したガラス繊維ロープに樹脂を含浸させることにより強固に固着させることができる。このようなガラス繊維ロープであると、柔軟性と樹脂浸透性とを具えつつ、前記コイルエンド15に機械的振動や電磁力的振動等の応力が常時加わっても、当該振動による緩みを生じないように強固に固定することができると共に、緩み振動による表面の摩擦磨耗を生じ難くすることができる。
【0031】
〈他の実施形態〉
なお、前述した実施形態においては、外周面をテーパ状に傾斜(約5~15°程度)させた台形型の軸方向断面形状をなすガイドリング21を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、固定子のコイルエンドの、当該固定子の径方向内側が、当該固定子の軸方向に対して傾斜せずに平行となっている場合には、これに対応して、外周面を内周面と平行にした直方型の軸方向断面形状をなすガイドリングを適用して、コイルエンドにガタつきを生じることなく取り付けるようにするとよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る回転電機は、大型であっても、固定子と回転子との間のギャップへエアを効率よく送給することが容易にできるので、産業上、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 エア
10 回転電機
11 フレーム
12 回転軸
13 回転子
14 固定子
14a ダクト
15 コイルエンド
16 仕切板
16a 連通穴
17 カバー
18 送風ファン
19 熱交換器
21 ガイドリング
21a 貫通孔
22 緊縛コード
G ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5