(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】複合シートの成形方法及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/30 20060101AFI20220301BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20220301BHJP
B32B 25/00 20060101ALI20220301BHJP
B29C 43/24 20060101ALI20220301BHJP
B29D 30/30 20060101ALI20220301BHJP
B60C 5/14 20060101ALN20220301BHJP
【FI】
B29C43/30
B29C65/02
B32B25/00
B29C43/24
B29D30/30
B60C5/14 A
(21)【出願番号】P 2018074494
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石塚 浩貴
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-126099(JP,A)
【文献】特開2016-10895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/30
B29C 65/02
B32B 25/00
B29C 43/24
B29D 30/30
B60C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ゴム組成物からなり、前記第一ゴム組成物がブチル系ゴムを主成分とする基材ゴムを含む、第一ゴムシートに、
第二ゴム組成物からなり、前記第二ゴム組成物が天然ゴムを主成分とする基材ゴムを含む、第二ゴムシートが積層された
、複合シートを成形するための複合シートの成形方法であって、
前記第一ゴム組成物を第一カレンダーロールに通して第一ゴムシートを成形し、前記第二ゴム組成物を第二カレンダーロールに通して第二ゴムシートを成形する、シート成形工程と、
前記第一ゴムシートを第一矯正ロール体に接触させて当該第一ゴムシートを幅方向に拡げ、前記第二ゴムシートを第二矯正ロール体に接触させて当該第二ゴムシートを幅方向に拡げる、シート矯正工程と、
前記シート矯正工程において幅方向に拡げられた第一ゴムシート及び第二ゴムシートをラミネートロールに通して、当該第一ゴムシートと当該第二ゴムシートとを重ね合わせて接合する、ラミネート工程と
を含んでおり、
前記第一ゴムシートに接触する前記第一矯正ロール体の当接面が当該第一ゴムシート側に膨らむように湾曲しており、
前記第二ゴムシートに接触する前記第二矯正ロール体の当接面が当該第二ゴムシート側に膨らむように湾曲しており、
前記第一カレンダーロールと前記第一矯正ロール体との間における第一ゴムシート長さLS1が、当該第一カレンダーロールと前記ラミネートロールとの間における第一ゴムシート長さLC1の半分よりも長く、
前記第二カレンダーロールと前記第二矯正ロール体との間における第二ゴムシート長さLS2が、当該第二カレンダーロールと前記ラミネートロールとの間における第二ゴムシート長さLC2の半分よりも長く、
前記第一ゴムシート長さLC1に対する前記第一ゴムシート長さLS1の比(LS1/LC1)が前記第二ゴムシート長さLC2に対する前記第二ゴムシート長さLS2の比(LS2/LC2)よりも小さい、複合シートの成形方法。
【請求項2】
前記比(LS1/LC1)が0.6以上0.7以下である、請求項1に記載の複合シートの成形方法。
【請求項3】
前記比(LS2/LC2)が0.8以上0.9以下である、請求項1又は2に記載の複合シートの成形方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の成形方法で得られる複合シートを用いて空気入りタイヤを製造するためのタイヤの製造方法であって、
前記複合シートからインナーライナー用部材を準備する工程と、
前記インナーライナー用部材を含むローカバーを成形する工程と、
前記ローカバーをモールド内で加圧及び加熱する工程と
を含んでいる、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合シートの成形方法及びタイヤの製造方法に関する。詳細には、本発明はタイヤのインナーライナー用部材のために準備される複合シートの成形方法、及び、この成形方法で得られる複合シートを用いたタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、空気入りタイヤ2の断面の一部を示す。通常タイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14及びインナーライナー16を備える。
【0003】
インナーライナー16は、両側のビード10に架け渡されたカーカス12の内側に位置する。インナーライナー16は通常、2層で構成される。内層18は、ブチル系ゴムを主成分とする基材ゴムを含むゴム組成物(以下、第一ゴム組成物という。)の架橋物である。この内層18はブチルゴム層とも称され、タイヤ2の内圧を保持する役割を有する。外層20は、天然ゴムを主成分とする基材ゴムを含むゴム組成物(以下、第二ゴム組成物という。)の架橋物である。外層20は、タイゴム層とも称され、ブチルゴム層18をカーカス12に接合する役割を有する。
【0004】
タイヤ2の製造では、インナーライナー16を得るためにインナーライナー16用部材が準備される。このインナーライナー16用部材は、第一ゴム組成物からなる第一ゴムシートと、第二ゴム組成物からなる第二ゴムシートとが貼り合わされた複合シートを、所定の大きさに裁断することにより得られる。
【0005】
複合シートの成形では、第一ゴム組成物をカレンダーロールに通し第一ゴムシートが得られる。第二ゴム組成物を別のカレンダーロールに通し、第二ゴムシートが得られる。第一ゴムシートと第二ゴムシートとを、ラミネートロールに通すことで、第一ゴムシートと第二ゴムシートとが圧着される。これにより、複合シートが得られる。
【0006】
成形直後の複合シートは、熱を帯びている。複合シートは冷却される。この冷却において、複合シートは縮む。この縮みの程度によっては、複合シートに皺等が生じることが懸念される。高品質なタイヤ2を安定に製造する観点から、この複合シートの成形方法について様々な検討が行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
車両の燃費性能の向上の観点から、タイヤ2には軽量化が求められている。この軽量化のために、タイヤ2のインナーライナー16においては薄肉化が検討されている。
【0009】
薄いインナーライナー16を得るには、薄い複合シートが準備される。しかしながら、薄い複合シートを得るために、この複合シートの部品であるゴムシートを薄くすると、具体的には、第一ゴムシート及び第二ゴムシートのそれぞれの厚さを0.5mm以下に設定すると、ゴムシートの弾性が低下し、周方向に伸びる皺(縦皺ともいう。)が生じやすいことが、発明者の検討により確認されている。第一ゴムシートと第二ゴムシートとを貼り合わせる前に皺が生じると、これらを重ね合わせて接合することが困難となり、タイヤ2のインナーライナー16に適用できる複合シートを成形できない恐れがある。
【0010】
皺の発生を抑えながら薄い第一ゴムシートと薄い第二ゴムシートとを重ね合わせて接合することができる技術を確立することができれば、薄く高品質な複合シートが得られ、インナーライナー16の薄肉化を達成できる見込みがある。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、薄く高品質な複合シートを成形できる、複合シートの成形方法、及びこの成形方法で得られる複合シートを用いたタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る複合シートの成形方法は、第一ゴム組成物からなり、前記第一ゴム組成物がブチル系ゴムを主成分とする基材ゴムを含む、第一ゴムシートに、第二ゴム組成物からなり、前記第二ゴム組成物が天然ゴムを主成分とする基材ゴムを含む、第二ゴムシートが積層された、複合シートの成形方法であって、
(1)前記第一ゴム組成物を第一カレンダーロールに通して第一ゴムシートを成形し、前記第二ゴム組成物を第二カレンダーロールに通して第二ゴムシートを成形する、シート成形工程、
(2)前記第一ゴムシートを第一矯正ロール体に接触させて当該第一ゴムシートを幅方向に拡げ、前記第二ゴムシートを第二矯正ロール体に接触させて当該第二ゴムシートを幅方向に拡げる、シート矯正工程、及び、
(3)前記シート矯正工程において幅方向に拡げられた第一ゴムシート及び第二ゴムシートをラミネートロールに通して、当該第一ゴムシートと当該第二ゴムシートとを重ね合わせて接合する、ラミネート工程
を含んでいる。前記第一ゴムシートに接触する前記第一矯正ロール体の当接面は当該第一ゴムシート側に膨らむように湾曲しており、前記第二ゴムシートに接触する前記第二矯正ロール体の当接面は当該第二ゴムシート側に膨らむように湾曲している。前記第一カレンダーロールと前記第一矯正ロール体との間における第一ゴムシート長さLS1は当該第一カレンダーロールと前記ラミネートロールとの間における第一ゴムシート長さLC1の半分よりも長く、前記第二カレンダーロールと前記第二矯正ロール体との間における第二ゴムシート長さLS2は当該第二カレンダーロールと前記ラミネートロールとの間における第二ゴムシート長さLC2の半分よりも長い。前記第一ゴムシート長さLC1に対する前記第一ゴムシート長さLS1の比(LS1/LC1)は前記第二ゴムシート長さLC2に対する前記第二ゴムシート長さLS2の比(LS2/LC2)よりも小さい。
【0013】
好ましくは、この複合シートの成形方法では、前記比(LS1/LC1)は0.6以上0.7以下である。
【0014】
好ましくは、この複合シートの成形方法では、前記比(LS2/LC2)は0.8以上0.9以下である。
【0015】
本発明に係るタイヤの製造方法は、前述の複合シートの成形方法で得られる複合シートを用いて空気入りタイヤを製造するためのタイヤの製造方法であって、
(1)前記複合シートからインナーライナー用部材を準備する工程、
(2)前記インナーライナー用部材を含むローカバーを成形する工程、及び、
(3)前記ローカバーをモールド内で加圧及び加熱する工程
を含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る複合シートの成形方法は、皺の発生を効果的に抑えながら薄い第一ゴムシートと薄い第二ゴムシートとを重ね合わせて十分に接合することができるので、薄く高品質な複合シートを成形できる。本発明に係るタイヤの製造方法では、この成形方法で得られる複合シートを用いることにより、インナーライナーの薄肉化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る複合シートの成形方法で用いる成形装置の概要が示された概略側面図である。
【
図2】
図2は、矯正ロール体が示された正面図である。
【
図3】
図3は、空気入りタイヤの一例が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1には、本発明の一実施形態に係る複合シートFの成形方法で用いる成形装置32の概要が示されている。この成形装置32では、2種類のゴム組成物をシート状に成形した後、これらを貼り合わせることにより、複合シートFが成形される。
【0020】
この成形装置32では、例えば、
図3に示されたタイヤ2のインナーライナー16の部品としてのインナーライナー16用部材のための複合シートFが成形される。この複合シートFの成形のために、この成形装置32では、2種類のゴム組成物が用いられる。一方のゴム組成物(以下、第一ゴム組成物という。)は、インナーライナー16の内層18、すなわち、ブチルゴム層18のためのゴム組成物である。この第一ゴム組成物は、ブチル系ゴムを主成分とする基材ゴムを含む。このブチル系ゴムとしては、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムが例示される。ハロゲン化ブチルゴムとしては、クロロブチルゴム及びブロモブチルゴムが例示される。他方のゴム組成物(以下、第二ゴム組成物という。)は、インナーライナー16の外層20、すなわち、タイゴム層20のためのゴム組成物である。この第二ゴム組成物は、天然ゴムを主成分とする基材ゴムを含む。本発明においては、第一ゴム組成物に特に制限はない。ブチルゴム層18のために一般的に用いられるゴム組成物が第一ゴム組成物として用いられる。第二ゴム組成物にも特に制限はない。タイゴム層20のために一般的に用いられるゴム組成物が第二ゴム組成物として用いられる。
【0021】
[成形装置32]
この成形装置32は、カレンダーロール34を備えている。このカレンダーロール34は、2本のカレンダーロール体36を備えている。これらカレンダーロール体36は、円柱状である。このカレンダーロール34では、カレンダーロール体36はそれぞれ、回転駆動するように構成されている。
【0022】
カレンダーロール34には、未加硫のゴム組成物G、すなわち生のゴム組成物Gが、熱入れロール(図示されず)において熱入れされた後、供給される。このカレンダーロール34において、ゴム組成物Gは、2本のカレンダーロール体36の間を通過させられ、シート状に成形される。本発明においては、カレンダーロール34においてシート状に成形されたゴム組成物GがゴムシートSと称される。
【0023】
図示されていないが、カレンダーロール34には、一方のカレンダーロール体36に対する他方のカレンダーロール体36の位置を調整できる調整手段が設けられている。このカレンダーロール34では、この調整手段により、2本のカレンダーロール体36の間隔、すなわち、カレンダーロール34の間隙が調整される。この調整により、ゴムシートSの厚さが制御される。
【0024】
図1に示されているように、この成形装置32は2基のカレンダーロール34を有している。この成形装置32では、下側のカレンダーロール34a(以下、第一カレンダーロール34a)に第一ゴム組成物G1が通される。これにより、この第一ゴム組成物G1がシート状に成形され、第一ゴムシートS1が得られる。上側のカレンダーロール34b(以下、第二カレンダーロール34b)には、第二ゴム組成物G2が通される。これにより、この第二ゴム組成物G2がシート状に成形され、第二ゴムシートS2が得られる。
【0025】
この成形装置32は、ラミネートロール38を備えている。このラミネートロール38は、2本のラミネートロール体40を備えている。これらラミネートロール体40は、円柱状である。このラミネートロール38では、ラミネートロール体40はそれぞれ、回転駆動するように構成されている。
【0026】
ラミネートロール38には、第一ゴムシートS1と第二ゴムシートS2とが供給される。この成形装置32では、ラミネートロール38において、第一ゴムシートS1及び第二ゴムシートS2が重ね合わされ2本のラミネートロール体40の間を通過させられる。これにより、第一ゴムシートS1及び第二ゴムシートS2が接合される。本発明においては、第一ゴムシートS1と第二ゴムシートS2とを重ね合わせ接合することにより得られるシートが複合シートFである。
【0027】
図示されていないが、ラミネートロール38には、一方のラミネートロール体40に対する他方のラミネートロール体40の位置を調整できる調整手段が設けられている。このラミネートロール38では、この調整手段により、2本のラミネートロール体40の間隔、すなわち、ラミネートロール38の間隙が調整される。この調整により、第一ゴムシートS1に第二ゴムシートS2を押し付ける力、そして、複合シートFの厚さが制御される。なお、この
図1において、ラミネートロール38の下流側に位置するロール体44は、ラミネートロール38で形成された複合シートFに所定のテンションをかけるためのロール体44、すなわち、テンションロール体44である。このテンションロール体44は、円柱状である。このテンションロール体44は、図示されない支持手段により、回転可能に支持されている。
【0028】
この成形装置32は、矯正ロール体46を備えている。矯正ロール体46は、カレンダーロール34とラミネートロール38との間に位置する。
【0029】
図2には、矯正ロール体46が、この矯正ロール体46と当接するゴムシートSとともに示されている。この
図2において、左右方向はこのゴムシートSの幅方向に相当する。この紙面に対して垂直な方向は、このゴムシートSの移動方向に相当する。
【0030】
図2に示されているように、矯正ロール体46は弓状に湾曲している。図示されていないが、矯正ロール体46の軸心に対して垂直な面に沿った、この矯正ロール体46の断面の輪郭は円である。この成形装置32では、矯正ロール体46は、この湾曲状態を保持しつつ回転するように構成されている。このような矯正ロール体46としては、カンセンエキスパンダー工業社製の商品名「エキスパンダーロール」が例示される。
【0031】
この成形装置32では、カレンダーロール34にて形成されたゴムシートSはこの矯正ロール体46に押し当てられる。
図2に示されているように、ゴムシートSに接触する矯正ロール体46の当接面48は、ゴムシートS側に膨らむように湾曲している。この
図2において、符号PTは湾曲している当接面48の頂の位置である。この頂PTは、矯正ロール体46の軸心を含む平面における当接面48の輪郭に基づいて特定される。
【0032】
図2において、矢印Rは矯正ロール体46の当接面48の曲率半径である。この成形装置32では、この曲率半径Rは900mm以上1800mm以下である。なお、この曲率半径Rは、頂PTを含む当接面48の輪郭に基づいて特定される。
【0033】
図1に示されているように、この成形装置32は2本の矯正ロール体46を有している。この成形装置32では、第一カレンダーロール34aにて成形された第一ゴムシートS1は下側の矯正ロール体46a(以下、第一矯正ロール体46a)に押し当てられる。詳細には、この第一ゴムシートS1は、その第二ゴムシートS2との接合面の側から、この第一矯正ロール体46aに押し当てられる。第二カレンダーロール34bにて成形された第二ゴムシートS2は上側の矯正ロール体46b(以下、第二矯正ロール体46b)に押し当てられる。詳細には、この第二ゴムシートS2は、その第一ゴムシートS1との接合面の側から、この第二矯正ロール体46bに押し当てられる。この成形装置32では、第二矯正ロール体46bは、第一矯正ロール体46aの構成と同じ構成を有している。
【0034】
この
図1において、第一カレンダーロール34aと第一矯正ロール体46aとの間、そしてこの第一矯正ロール体46aとラミネートロール38との間に位置するロール体50はそれぞれ、第一ゴムシートS1に所定のテンションをかけるためのロール体50、すなわち、テンションロール体50である。このテンションロール体50は、円柱状である。このテンションロール体50は、図示されない支持手段により、回転可能に支持されている。なお、前述のテンションロール体44との区別のために、このテンションロール体50はサブテンションロール体50とも称される。
【0035】
図1において、符号PA1は第一カレンダーロール34aを通過する第一ゴムシートS1の基準位置である。この基準位置PA1は、第一カレンダーロール34aの間隙が最小となる位置で特定される。符号PA2は、第一矯正ロール体46aと当接する第一ゴムシートS1の基準位置である。この基準位置PA2は、湾曲している当接面48aの頂PTaの位置により特定される。符号PA3は、ラミネートロール38を通過する第一ゴムシートS1の基準位置である。この基準位置PA3は、ラミネートロール38の間隙が最小となる位置で特定される。
【0036】
図示されていないが、この成形装置32では、第一カレンダーロール34aと第一矯正ロール体46aとの間における第一ゴムシートS1の長さLS1は基準位置PA1から基準位置PA2までの第一ゴムシートS1の長さで表される。第一カレンダーロール34aとラミネートロール38との間における第一ゴムシートS1の長さLC1は、基準位置PA1から基準位置PA3までの第一ゴムシートS1の長さで表される。
【0037】
この成形装置32では、第一カレンダーロール34aと第一矯正ロール体46aとの間における第一ゴムシートS1の長さLS1が、第一カレンダーロール34aとラミネートロール38との間における第一ゴムシートS1の長さLC1の半分よりも長くなるように、第一矯正ロール体46aは第一カレンダーロール34aとラミネートロール38との間に配置される。
【0038】
この
図1において、符号PB1は第二カレンダーロール34bを通過する第二ゴムシートS2の基準位置である。この基準位置PB1は、第二カレンダーロール34bの間隙が最小となる位置で特定される。符号PB2は、第二矯正ロール体46bと当接する第二ゴムシートS2の基準位置である。この基準位置PB2は、湾曲している当接面48bの頂PTbの位置により特定される。符号PB3は、ラミネートロール38を通過する第二ゴムシートS2の基準位置である。この基準位置PB3は、ラミネートロール38の間隙が最小となる位置で特定される。
【0039】
図示されていないが、この成形装置32では、第二カレンダーロール34bと第二矯正ロール体46bとの間における第二ゴムシートS2の長さLS2は基準位置PB1から基準位置PB2までの第二ゴムシートS2の長さで表される。第二カレンダーロール34bとラミネートロール38との間における第二ゴムシートS2の長さLC2は、基準位置PB1から基準位置PB3までの第二ゴムシートS2の長さで表される。
【0040】
この成形装置32では、第二カレンダーロール34bと第二矯正ロール体46bとの間における第二ゴムシートS2の長さLS2が、第二カレンダーロール34bとラミネートロール38との間における第二ゴムシートS2の長さLC2の半分よりも長くなるように、第二矯正ロール体46bは第二カレンダーロール34bとラミネートロール38との間に配置される。
【0041】
[成形方法]
以上説明した成形装置32を用いて、第一ゴム組成物G1からなる第一ゴムシートS1に、第二ゴム組成物G2からなる第二ゴムシートS2が積層された複合シートFが成形される。以下に、この複合シートFの成形方法について説明する。
【0042】
この成形方法は、ゴム組成物GからゴムシートSを得るためのシート成形工程と、ゴムシートSの形状を矯正するためのシート矯正工程と、2種類のゴムシートSを重ね合わせて接合するためのラミネート工程とを含んでいる。
【0043】
シート成形工程では、熱入れされた第一ゴム組成物G1が第一カレンダーロール34aに通される。これにより、第一ゴムシートS1が成形される。熱入れされた第二ゴム組成物G2が、第二カレンダーロール34bに通される。これにより、第二ゴムシートS2が成形される。
【0044】
この成形方法では、皺の発生が懸念されるが、インナーライナー16の薄肉化のために、第一ゴムシートS1の厚さは0.5mm以下に設定され、第二ゴムシートS2の厚さは0.5mm以下に設定される。なお、この成形方法では、厚さの計測が可能でしかもカレンダーロール34に近い位置で測定されるゴムシートSの厚さが、ゴムシートSの厚さとして用いられる。
【0045】
シート矯正工程では、第一ゴムシートS1は第一矯正ロール体46aに接触させられる。これにより、第一ゴムシートS1の形状が矯正され、第一ゴムシートS1は幅方向に拡げられる。第二ゴムシートS2は、第二矯正ロール体46bに接触させられる。これにより、第二ゴムシートS2の形状が矯正され、この第二ゴムシートS2は幅方向に拡げられる。
【0046】
ラミネート工程では、シート矯正工程において、幅方向に拡げられた第一ゴムシートS1及び第二ゴムシートS2がラミネートロール38に通される。これにより、第一ゴムシートS1と第二ゴムシートS2とが重ね合わされ接合され、複合シートFが得られる。
【0047】
この成形方法では、インナーライナー16の薄肉化のために、複合シートFの厚さは1.0mm以下に設定される。なお、この成形方法では、厚さの計測が可能でしかもラミネートロール38に近い位置で測定される複合シートFの厚さが、複合シートFの厚さとして用いられる。
【0048】
この成形方法では、第一ゴムシートS1の幅方向において、この第一ゴムシートS1に接触する第一矯正ロール体46aの当接面48aがこの第一ゴムシートS1側に膨らむように湾曲している。このため、シート矯正工程において、第一ゴムシートS1は幅方向に効果的に拡げられる。さらにこの成形方法では、第二ゴムシートS2の幅方向において、この第二ゴムシートS2に接触する第二矯正ロール体46bの当接面48bがこの第二ゴムシートS2側に膨らむように湾曲している。このため、このシート矯正工程においては、第二ゴムシートS2も幅方向に効果的に拡げられる。この成形方法では、第一ゴムシートS1及び第二ゴムシートS2のそれぞれにおいて、皺の発生が抑えられる。
【0049】
この成形方法では、前述したように、第一カレンダーロール34aと第一矯正ロール体46aとの間における第一ゴムシートS1の長さLS1は第一カレンダーロール34aとラミネートロール38との間における第一ゴムシートS1の長さLC1の半分よりも長く、第二カレンダーロール34bと第二矯正ロール体46bとの間における第二ゴムシートS2の長さLS2は第二カレンダーロール34bとラミネートロール38との間における第二ゴムシートS2の長さLC2の半分よりも長い。特に、この成形方法では、第一ゴムシートS1の長さLC1に対する第一ゴムシートS1の長さLS1の比(LS1/LC1)が第二ゴムシートS2の長さLC2に対する第二ゴムシートS2の長さLS2の比(LS2/LC2)よりも小さくなるように、第一矯正ロール体46a及び第二矯正ロール体46bが配置されている。このため、この成形方法は、皺の発生を効果的に抑えながら薄い第一ゴムシートS1と薄い第二ゴムシートS2とを重ね合わせて十分に接合することができる。この成形方法では、薄く高品質な複合シートFが成形される。
【0050】
この成形方法では、第一カレンダーロール34aとラミネートロール38との間における第一ゴムシートS1の長さLC1に対する第一カレンダーロール34aと第一矯正ロール体46aとの間における第一ゴムシートS1の長さLS1の比(LS1/LC1)は、0.6以上が好ましく、0.7以下が好ましい。これにより、第一ゴムシートS1において、皺の発生が効果的に抑えられる。
【0051】
この成形方法では、第二カレンダーロール34bとラミネートロール38との間における第二ゴムシートS2の長さLC2に対する第二カレンダーロール34bと第二矯正ロール体46bとの間における第二ゴムシートS2の長さLS2の比(LS2/LC2)は、0.8以上が好ましく、0.9以下が好ましい。これにより、第二ゴムシートS2において、皺の発生が効果的に抑えられる。
【0052】
前述したように、この成形方法で用いられる成形装置32においては、第一カレンダーロール34aと第一矯正ロール体46aとの間、そしてこの第一矯正ロール体46aとラミネートロール38との間には、第二ゴムシートS2に比して縮みやすい第一ゴムシートS1に所定のテンションをかけるために、
図1に示されているように、サブテンションロール体50が設けられている。このサブテンションロール体50は、第一ゴムシートS1の縮みに伴う皺の発生を効果的に抑制する。
【0053】
図1において、符号PS1は、第一カレンダーロール34aと第一矯正ロール体46aとの間に位置するサブテンションロール体50a(以下、第一サブテンションロール体50aという。)と当接する第一ゴムシートS1の基準位置である。この基準位置PS1は、第一サブテンションロール体50aを側面から見た場合における、当接面52aの長さの中心位置により特定される。符号PS2は、第一矯正ロール体46aとラミネートロール38との間に位置するサブテンションロール体50b(以下、第二サブテンションロール体50bという。)と当接する第一ゴムシートS1の基準位置である。この基準位置PS2は、第二サブテンションロール体50bを側面から見た場合における、当接面52bの長さの中心位置により特定される。
【0054】
この成形方法では、第一サブテンションロール体50aと第一矯正ロール体46aとの間における第一ゴムシートS1の長さLT1が、
図1における基準位置PS1から基準位置PA2までの第一ゴムシートS1の長さで表される。第一矯正ロール体46aと第二サブテンションロール体50bとの間における第一ゴムシートS1の長さLT2が、この
図1における基準位置PA2から基準位置PS2までの第一ゴムシートS1の長さで表される。そして、第一矯正ロール体46aとラミネートロール38との間における第一ゴムシートS1の長さLCSが、この
図1における基準位置PA2から基準位置PA3までの第一ゴムシートS1の長さで表される。
【0055】
この成形方法では、第一ゴムシートS1の縮みに伴う皺の発生が効果的に抑制される観点から、第一サブテンションロール体50aと第一矯正ロール体46aとの間における第一ゴムシートS1の長さLT1は、第一カレンダーロール34aと第一矯正ロール体46aとの間における第一ゴムシートS1の長さLS1の半分よりも短くなるように、第一カレンダーロール34aと第一矯正ロール体46aとの間に第一サブテンションロール体50aが配置されるのが好ましい。この観点から、長さLS1に対する長さLT1の比は0.1以上が好ましく、0.4以下が好ましい。これにより、皺の発生を効果的に抑えながら、高品質な複合シートFが成形される。
【0056】
この成形方法では、第一ゴムシートS1の縮みに伴う皺の発生が効果的に抑制される観点から、第一矯正ロール体46aと第二サブテンションロール体50bとの間における第一ゴムシートS1の長さLT2は、第一矯正ロール体46aとラミネートロール38との間における第一ゴムシートS1の長さLCSの半分よりも短くなるように、第一矯正ロール体46aとラミネートロール38との間に第二サブテンションロール体50bが配置されるのが好ましい。この観点から、長さLCSに対する長さLT2の比は0.1以上が好ましく、0.4以下が好ましい。これにより、皺の発生を効果的に抑えながら、高品質な複合シートFが成形される。
【0057】
この成形方法では、第一ゴムシートS1の縮みに伴う皺の発生が効果的に抑制される観点から、第一矯正ロール体46aと第二サブテンションロール体50bとの間における第一ゴムシートS1の長さLT2は、第一サブテンションロール体50aと第一矯正ロール体46aとの間における第一ゴムシートS1の長さLT1よりも短いのが好ましい。これにより、皺の発生をより効果的に抑えながら、高品質な複合シートFが成形される。
【0058】
以上の説明から明らかなように、本発明の複合シートFの成形方法は皺の発生を効果的に抑えながら薄い第一ゴムシートS1と薄い第二ゴムシートS2とを重ね合わせて十分に接合することができる。この成形方法によれば、薄く高品質な複合シートFが成形されうる。この成形方法は、第一ゴムシートS1の厚さが0.5mm以下に設定され、第二ゴムシートS2の厚さが0.5mm以下に設定された場合、さらにはこの第一ゴムシートS1の厚さが0.4mm以下に設定され、第二ゴムシートS2の厚さが0.4mm以下に設定された場合、さらにはこの第一ゴムシートS1の厚さが0.3mm以下に設定され、第二ゴムシートS2の厚さが0.3mm以下に設定された場合に、顕著な効果を奏する。
【0059】
[タイヤ2の製造方法]
この成形方法で成形された複合シートFは、例えば、
図3に示されたタイヤ2の製造のために用いられる。このタイヤ2の製造方法では、複合シートFが所定の長さに裁断され、インナーライナー16用部材が準備される。成形機(図示されず)において、このインナーライナー16用部材は、カーカス12、ビード10等のタイヤ2の構成部材と組み合わされる。これにより、インナーライナー16用部材を含む、未加硫状態の生タイヤ2、すなわちローカバーが成形される。この製造方法では、ローカバーはモールド(図示されず)に投入される。モールド内で、ローカバーは加圧及び加熱される。これにより、ローカバーを構成するゴム組成物Gが加硫し、
図3に示されたタイヤ2が得られる。つまりこのタイヤ2の製造方法は、前述の複合シートFの成形方法で得られる複合シートFを用いて空気入りタイヤ2を製造するためのタイヤ2の製造方法であって、
(1)複合シートFからインナーライナー16用部材を準備する工程、
(2)インナーライナー16用部材を含むローカバーを成形する工程、及び、
(3)ローカバーをモールド内で加圧及び加熱する工程
を含んでいる。
【0060】
前述したように、本発明の複合シートFの成形方法によれば、薄く高品質な複合シートFが成形されうる。このため、この製造方法は、この複合シートFを用いることにより、インナーライナー16の薄肉化を達成することができる。この製造方法により得られるタイヤ2は、従来のインナーライナーを有するタイヤに比して軽い。この成形方法は、タイヤ2の軽量化に貢献する。
【0061】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明された複合シートの成形方法は、種々のタイプの複合シートの成形に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・クリンチ
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
16・・・インナーライナー
18・・・内層(ブチルゴム層)
20・・・外層(タイゴム層)
32・・・成形装置
34、34a、34b・・・カレンダーロール
36・・・カレンダーロール体
38・・・ラミネートロール
40・・・ラミネートロール体
46、46a、46b・・・矯正ロール体
48・・・矯正ロール体46の当接面
48a・・・第一矯正ロール体46aの当接面
48b・・・第二矯正ロール体46bの当接面