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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】車両の開閉構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/12 20060101AFI20220301BHJP
   B60J 7/02 20060101ALI20220301BHJP
   B60J 10/84 20160101ALI20220301BHJP
【FI】
B60J5/12
B60J7/02 B
B60J7/02 A
B60J10/84
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018213013
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020079007
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】山田 諭
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 博隆
(72)【発明者】
【氏名】寺井 英晃
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-260935(JP,A)
【文献】特開平09-123769(JP,A)
【文献】実開昭61-051220(JP,U)
【文献】実開昭58-049792(JP,U)
【文献】特開2001-039167(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0126106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00- 7/22
B60J 10/00-10/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた開口を挟んで延在するように配置された1対のガイドレールと、
前記1対のガイドレールに摺動可能にガイドされ、前記開口を前記ガイドレールの延在方向である第1方向に開閉する樹脂製の板状の開閉部材と、
前記開口の周囲に全周にわたって前記車体に取り付けられ、前記開閉部材が閉じ切った状態のときに前記開閉部材の何れかの面に接触して前記車体と前記開閉部材との間を封止するシール部材とを備えた車両の開閉構造であって、
前記開閉部材は、
前記開閉部材が閉じ切った状態のときに前記開口を覆う主ベース部と、
前記主ベース部における前記ガイドレールの対向方向である第2方向の両端側に設けられ、前記開閉部材が閉じ切った状態のときに前記車体に重なると共に、前記シール部材が配置される側に位置する封止面を有する1対のベース端部と、
前記主ベース部の前記第1方向の開き側に前記第2方向に延在するように配置されると共に、前記シール部材が配置される側に突出する突出面を有する突出部と、
前記ベース端部と前記突出部の前記第2方向の端縁との間に配置されると共に、前記封止面と前記突出面とを繋ぐ傾斜面を有する1対の傾斜部とを有し、
前記シール部材は、前記開閉部材が閉じ切った状態のときに前記封止面、前記突出面及び前記傾斜面に接触すると共に、前記開閉部材が開いた状態では前記突出部、前記傾斜部及び前記主ベース部に接触しないように配置されており、
前記傾斜面は、前記第1方向及び前記第2方向に沿って傾斜している車両の開閉構造。
【請求項2】
前記シール部材は、前記封止面に接触する第1シール部と、前記開閉部材が閉じ切った状態のときに前記突出面に接触する第2シール部と、前記開閉部材が閉じ切った状態のときに前記傾斜面に接触する第3シール部とを有し、
前記第1シール部は、前記ガイドレールに取り付けられ、
前記第2シール部及び前記第3シール部は、前記第2方向に延在すると共に前記ガイドレールに固定された接続部材に取り付けられている請求項1記載の車両の開閉構造。
【請求項3】
前記開閉部材の前記第2方向の両端部には、摺動部がそれぞれ設けられており、
前記ガイドレールは、前記車体の外側に配置された外壁部と、前記車体の内側に配置されると共に前記外壁部と連結され、前記外壁部と協働して前記摺動部が収容される収容部を形成する内壁部とを有し、
前記第1シール部は、前記外壁部及び前記内壁部の何れか一方に取り付けられており、
前記外壁部及び前記内壁部のうち前記第1シール部が取り付けられている壁部の前記第1方向の開き側には、前記開閉部材を開閉させるときに前記傾斜部が移動するための切欠部が設けられている請求項2記載の車両の開閉構造。
【請求項4】
前記傾斜面及び前記突出面は、前記開閉部材が熱伸縮しても、前記シール部材との接触方向の位置が変化しないような形状を呈している請求項1~3の何れか一項記載の車両の開閉構造。
【請求項5】
前記傾斜部と前記ベース端部及び前記突出部との接続部は、曲面状に形成されている請求項1~4の何れか一項記載の車両の開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における車両の開閉構造としては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の車両の開閉構造は、樹脂製の透明な板材によって構成され、窓開口部を開閉する窓板と、窓板の車外側をシールするゴム製のウインドモールとを備えている。窓板の下部側の車外側表面には、断面略台形状の凸条が一体に形成されている。ウインドモールは、中空状に形成されたモール本体を有している。
【0003】
窓板の開閉のための昇降時には、窓板の凸条がウインドモールのモール本体から離れた下方にあるため、モール本体は凸条の影響を受けない自由状態にある。従って、窓板の昇降時において、モール本体が窓板の表面に擦ることがない。一方、窓板が上昇し切った閉切り状態では、窓板の凸条がモール本体に当接して加圧するため、モール本体が弾性変形して窓板の表面に押し付けられてシールする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-39167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、以下の問題点が存在する。即ち、開閉部材である窓板は、温度変化による熱伸縮が大きな樹脂製の板材によって構成されている。このため、閉切り状態であっても温度変化により窓板の角部における凸条のシール性能が不安定になる。具体的には、窓板の熱伸縮によって、窓板の凸条がウインドモールのモール本体に接しなくなったり、或いは窓板の凸条がウインドモールのモール本体に近づき過ぎて強く干渉してしまうといった不具合が発生する。特に、窓板の凸条が設けられた角部では、窓板の高さが変化する部位をシールするため、シール性能の不具合が発生し易い。
【0006】
本発明の目的は、開閉部材が熱伸縮しても、開閉部材のシール性能を安定化させることができる車両の開閉構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、車体に設けられた開口を挟んで延在するように配置された1対のガイドレールと、1対のガイドレールに摺動可能にガイドされ、開口をガイドレールの延在方向である第1方向に開閉する樹脂製の板状の開閉部材と、開口の周囲に全周にわたって車体に取り付けられ、開閉部材が閉じ切った状態のときに開閉部材の何れかの面に接触して車体と開閉部材との間を封止するシール部材とを備えた車両の開閉構造であって、開閉部材は、開閉部材が閉じ切った状態のときに開口を覆う主ベース部と、主ベース部におけるガイドレールの対向方向である第2方向の両端側に設けられ、開閉部材が閉じ切った状態のときに車体に重なると共に、シール部材が配置される側に位置する封止面を有する1対のベース端部と、主ベース部の第1方向の開き側に第2方向に延在するように配置されると共に、シール部材が配置される側に突出する突出面を有する突出部と、ベース端部と突出部の第2方向の端縁との間に配置されると共に、封止面と突出面とを繋ぐ傾斜面を有する1対の傾斜部とを有し、シール部材は、開閉部材が閉じ切った状態のときに封止面、突出面及び傾斜面に接触すると共に、開閉部材が開いた状態では突出部、傾斜部及び主ベース部に接触しないように配置されており、傾斜面は、第1方向及び第2方向に沿って傾斜している。
【0008】
このような車両の開閉構造においては、開閉部材が閉じ切った状態では、シール部材がベース端部の封止面、傾斜部の傾斜面及び突出部の突出面に接触することで、開閉部材が封止される。開閉部材は、樹脂製の板状を呈しているため、温度変化によって第1方向及び第2方向に熱伸縮する。ここで、傾斜部は、ベース端部と突出部の第2方向の端縁との間に配置されている。そして、傾斜部の傾斜面は、第1方向及び第2方向に沿って傾斜している。このため、温度変化によって開閉部材が第1方向及び第2方向に熱伸縮すると、傾斜部も第1方向及び第2方向に熱伸縮するが、シール部材と傾斜面との接触方向には傾斜部が熱伸縮しにくい。従って、開閉部材の熱伸長時及び熱収縮時の何れにおいても、シール部材に対する傾斜面の接触方向の位置変化が少ない。これにより、開閉部材が熱伸縮しても、開閉部材のシール性能が安定化する。
【0009】
シール部材は、封止面に接触する第1シール部と、開閉部材が閉じ切った状態のときに突出面に接触する第2シール部と、開閉部材が閉じ切った状態のときに傾斜面に接触する第3シール部とを有し、第1シール部は、ガイドレールに取り付けられ、第2シール部及び第3シール部は、第2方向に延在すると共にガイドレールに固定された接続部材に取り付けられていてもよい。この場合には、簡単な構成で、開閉部材が閉じ切ったときに開閉部材を封止することができる。
【0010】
開閉部材の第2方向の両端部には、摺動部がそれぞれ設けられており、ガイドレールは、車体の外側に配置された外壁部と、車体の内側に配置されると共に外壁部と連結され、外壁部と協働して摺動部が収容される収容部を形成する内壁部とを有し、第1シール部は、外壁部及び内壁部の何れか一方に取り付けられており、外壁部及び内壁部のうち第1シール部が取り付けられている壁部の第1方向の開き側には、開閉部材を開閉させるときに傾斜部が移動するための切欠部が設けられていてもよい。この場合には、傾斜部を開閉部材の第1方向の開き側の角部に設けることができる。従って、開閉部材を開閉するときに、シール部材の第1方向の開き側の角部がベース端部の表面を擦ることが防止される。
【0011】
傾斜面及び突出面は、開閉部材が熱伸縮しても、シール部材との接触方向の位置が変化しないような形状を呈していてもよい。この場合には、開閉部材が熱伸縮したときに、開閉部材のシール性能がより安定化する。
【0012】
傾斜部とベース端部及び突出部との接続部は、曲面状に形成されていてもよい。この場合には、傾斜部とベース端部及び突出部との接続部が滑らかになるため、開閉部材のシール性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、開閉部材が熱伸縮しても、開閉部材のシール性能を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の開閉構造を備えた車両の後側部分を示す斜視図である。
図2図1に示された車両の後側部分においてバックドアが開いた状態を示す斜視図である。
図3】バックドアの一部を昇降ガイドレール及びリーンフォースメントと共に示す斜視図である。
図4図3に示されたバックドアの一部においてリーンフォースメントが無い状態を示す斜視図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6図3のVI-VI線断面図である。
図7】バックドアにおいて最も上側に位置するスラットを示す斜視図である。
図8図7に示されたスラットが熱伸縮したときの状態を示す部分斜視図である。
図9図7に示されたスラットが熱伸縮したときに、シール部材に対する傾斜部の位置を示す断面図である。
図10】比較例としてのスラットが熱伸縮したときの状態を示す部分斜視図である。
図11図10に示されたスラットが熱伸縮したときに、シール部材に対する段差部の位置を示す断面図である。
図12】他の比較例としてのスラットが熱伸縮したときの状態を示す部分斜視図である。
図13図12に示されたスラットが熱伸縮したときに、シール部材に対する傾斜部の位置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両の開閉構造を備えた車両の後側部分を示す斜視図である。図1において、車両1は、車体2を備えている。なお、図中の矢印FRは、車体2の前後方向における前側を示し、図中の矢印UPは、車体2の上下方向における上側を示し、図中の矢印OUTは、車体2の左右方向(車幅方向)における外側を示している。車体2の前後方向、上下方向及び左右方向は、互いに垂直な方向である。
【0017】
車体2は、ルーフパネル3と、このルーフパネル3の左右両側に配置された1対のサイドパネル4とを有している。ルーフパネル3は、車体2の上部に設けられている。サイドパネル4は、車体2の側部に設けられている。車体2の後端下部には、バンパー5が設けられている。車体2の後端上部には、スポイラー6が設けられている。
【0018】
車体2の後端部には、図2に示されるように、開口2aが設けられている。開口2aは、ルーフパネル3の後端に設けられたスポイラー6と1対のサイドパネル4の後端に設けられた昇降ガイドレール13(後述)とバンパー5とにより画成されている。サイドパネル4の後端には、湾曲部4aが設けられている。開口2aにおける湾曲部4aよりも上部の領域(以下、開口2aの上部領域)は、車体2の前側に曲がるような形状を有している。
【0019】
また、車両1は、車体2の後端部の開口2aを覆う開閉式のバックドア7を備えている。バックドア7は、開口2aを上下方向(第1方向)に開閉する板状の開閉部材である。バックドア7は、開口2aに対して昇降可能である。なお、図1は、バックドア7が閉じ切った状態を示し、図2は、バックドア7が開いた状態を示している。また、以下の説明において、バックドア7に関する上下方向は、バックドア7を閉めた状態(図1参照)での方向である。
【0020】
車体2の開口2aの周囲には、バックドア7が閉じ切った状態のときに車体2とバックドア7との間を封止するシール部材15が開口2aの全周にわたって配置されている。シール部材15は、バックドア7よりも車両1の外側(車外側)に配置されている。なお、シール部材15については、後で詳述する。
【0021】
バックドア7は、車体2の上下方向に沿って配列された複数のスラット8と、隣り合うスラット8同士を接合する複数の接合部9とを有している。接合部9の車外側表面は、隣り合うスラット8の車外側表面と面一となるように設けられている。スラット8は、耐衝撃性を有する透明樹脂で形成されている。そのような透明樹脂としては、例えばポリカーボネートまたはアクリル樹脂等が挙げられる。接合部9は、スラット8を形成する透明樹脂よりも軟らかい軟質材で形成されている。そのような軟質材としては、例えばエラストマー等が挙げられる。
【0022】
スラット8は、車幅方向(第2方向)に延在している。最も上側に位置するスラット8(以下、スラット8Aという)以外のスラット8は、平板状を呈している。スラット8Aの構造については、後で詳述する。最も下側に位置するスラット8には、バックドア7の開閉操作を行うための取っ手11が設けられている。スラット8の両端部には、図3図6に示されるように、スライドシュー12(摺動部)がそれぞれ取り付けられている。
【0023】
各サイドパネル4の後端部には、バックドア7を車体2の上下方向に摺動可能にガイドする昇降ガイドレール13がそれぞれ取り付けられている。つまり、車両1は、車体2の後端部に設けられた開口2aを挟んで車体2の上下方向に延在するように配置された1対の昇降ガイドレール13を備えている。なお、車幅方向は、1対の昇降ガイドレール13の対向方向に相当する。
【0024】
上述したように、サイドパネル4の後端には湾曲部4aが設けられているため、開口2aの上部領域は車体2の前側に曲がるような形状を有している。このため、昇降ガイドレール13は、湾曲部4aに対応して昇降ガイドレール13の延在方向に沿って湾曲した湾曲部13aを有している。そして、昇降ガイドレール13の上部は、開口2aの形状に応じて車体2の前側に曲がっている。
【0025】
昇降ガイドレール13は、図5及び図6に示されるように、車外側に配置された外壁部30と、車内側に配置されると共に外壁部30と連結された内壁部31とを有している。なお、図5は、図3のV-V線断面図である。図6は、図3のVI-VI線断面図である。
【0026】
外壁部30には、段状部30aが設けられている。内壁部31には、バックドア7のスライドシュー12と係合する溝部31aが設けられている。段状部30a及び溝部31aは、協働してスライドシュー12が収容されるシュー収容部14(収容部)を形成している。バックドア7が昇降ガイドレール13に沿って開閉動作するときは、スライドシュー12がシュー収容部14を摺動する。
【0027】
シール部材15は、開口2aの周囲に全周にわたって車体2に取り付けられ、バックドア7が閉じ切った状態のときにバックドア7の車外側表面と接触することで車体2とバックドア7との間を封止する。シール部材15は、車体2の開口2aの両側に配置された1対の側シール部15a(第1シール部)と、開口2aの上側に配置された上シール部15b(第2シール部)と、開口2aの下側に配置された下シール部15cと、側シール部15aと上シール部15bとの間に配置された1対の上角シール部15d(第3シール部)とを有している。なお、上シール部15bは、開口2aに対し、常に上端側(バックドア7の開閉方向の開き側)の周囲に配置される。
【0028】
シール部材15の側シール部15aは、図5に示されるように、昇降ガイドレール13の外壁部30におけるバックドア7の車外側表面と対向する箇所に取り付けられている。また、側シール部15aの上部は、図3及び図4に示されるように、スポイラー6内に配置されたリーンフォースメント32に取り付けられている。リーンフォースメント32は、車幅方向に延在する接続部材である。リーンフォースメント32は、各昇降ガイドレール13の外壁部30にボルトで固定されている。シール部材15の上シール部15b及び上角シール部15dは、図6に示されるように、リーンフォースメント32に取り付けられている。シール部材15の下シール部15cは、バンパー5内に配置されたフレーム(図示せず)に取り付けられている。
【0029】
バックドア7が閉じ切った状態のときには、昇降ガイドレール13の外壁部30と各スラット8の車外側表面との距離は全体的に等しい。従って、側シール部15aは、バックドア7が閉じ切った状態のときに、各スラット8の車外側表面に対して同じ距離だけオフセットした位置に設けられている。このため、側シール部15aは、バックドア7が閉じ切った状態のときには、バックドア7に対して均一の面圧で接触する。また、上シール部15b、下シール部15c及び上角シール部15dについても、バックドア7が閉じ切った状態のときに、バックドア7の車外側表面に対し、側シール部15aと同じ距離だけオフセットした位置に設けられている。これにより、シール部材15は、バックドア7が閉じ切った状態のときに、開口2aの全周に渡って均一の面圧でバックドア7に接触する。
【0030】
ルーフパネル3の車幅方向両端部の下側における内装部材(図示せず)との間には、バックドア7を車体2の前後方向に摺動可能にガイドするガイドレール(図示せず)がそれぞれ配置されている。つまり、車両1は、車体2の前後方向に延在するように配置された1対のガイドレールを備えている。当該ガイドレールは、昇降ガイドレール13に連続して配置されていてもよいし、昇降ガイドレール13と若干の間隔をもって配置されていてもよい。
【0031】
図7は、バックドア7において最も上側に位置するスラット8Aを示す斜視図である。図7において、スラット8Aは、板状を有している。スラット8Aは、バックドア7が閉じ切った状態のときに開口2aを覆う主ベース部20と、この主ベース部20の車幅方向の両端側にそれぞれ設けられ、バックドア7が閉じ切った状態のときに車体2における開口2aの両側部分に重なる1対のベース端部24と、主ベース部20の上端側(開閉方向の開き側)に配置され、車外側(シール部材15が配置される側)に突出する突出部21と、突出部21の下端側(開閉方向の閉じ側)における主ベース部20との間に配置された段差部22と、突出部21の車幅方向の両端側かつベース端部24の上端側に設けられると共に、ベース端部24と突出部21との間にそれぞれ配置された1対の傾斜部23とを有している。
【0032】
主ベース部20は、隣り合うスラット8と接合部9を介して接合されている。ベース端部24は、シール部材15の側シール部15aが接触する封止面24aを有している。封止面24aは、側シール部15aが配置される側に位置している。ベース端部24は、一定の幅を有している。主ベース部20は平板状に形成されており、ベース端部24は平板状の一部である。なお、図7における2点鎖線Wは、シール部材15とスラット8Aとの接触線を示している。また、図7では便宜上省略されているが、ベース端部24よりも車幅方向の外側には、バックドア7のスライドシュー12に支持される被支持領域が設けられている。
【0033】
突出部21は、主ベース部20と高さが異なると共に車幅方向に延在している。突出部21は、バックドア7が閉じ切った状態のときにシール部材15の上シール部15bが接触する突出面21aを有している。突出面21aは、上シール部15bが配置される側に位置している。突出面21aは、一定の幅を有している。
【0034】
段差部22は、主ベース部20と突出部21の開閉方向の閉じ側の側縁21bとの間に配置されている。段差部22は、車幅方向に延在している。段差部22は、高さが異なる突出部21と主ベース部20とを徐変して接続する。
【0035】
傾斜部23は、スラット8Aの上端側(開閉方向の開き側)の角部に配置されている。傾斜部23は、ベース端部24と突出部21の車幅方向の端縁21cとの間に配置されている。傾斜部23は、ベース端部24と突出部21と段差部22とに接続されている。傾斜部23は、封止面24aと突出面21aとを繋ぐ面である傾斜面23aを有している。傾斜面23aは、バックドア7が閉じ切った状態のときにシール部材15の上角シール部15dが接触する。傾斜面23aは、上角シール部15dが配置される側に位置している。
【0036】
傾斜部23の傾斜面23aは、上下方向(開閉方向)及び車幅方向に曲面状または平面状に傾斜している。傾斜部23と主ベース部20との接続部は、例えば曲面状に形成されている。傾斜部23と突出部21との接続部も、例えば曲面状に形成されている。
【0037】
スラット8Aは、上述したように透明樹脂で形成されている。このため、スラット8Aは、温度変化によって上下方向及び車幅方向に熱伸縮する。傾斜部23の傾斜面23a及び突出部21の突出面21aは、スラット8Aが熱伸縮しても、シール部材15との接触方向の位置が変化しないような形状を呈している。シール部材15と傾斜面23aとの接触方向は、傾斜面23aに垂直な方向(図9のA方向)である。シール部材15と突出面21aとの接触方向は、突出面21aに垂直な方向である。スラット8Aの熱伸縮方向は計算により予測可能であるため、傾斜面23aの形状をシミュレーション等により決定することができる。なお、ここでいう位置が変化しないとは、見た目において位置が変化しないことであり、見た目では分からない程度の僅かな位置の変化は含んでいる。
【0038】
図4及び図6に示されるように、昇降ガイドレール13の外壁部30の上端側(開閉方向の開き側)には、バックドア7を開閉させるときに傾斜部23が移動するための切欠部33が設けられている。切欠部33は、外壁部30における車幅方向の内側に切り欠かれている。
【0039】
以上のような車両1の開閉構造において、図1に示されるようにバックドア7が閉じ切った状態では、ロック機構(図示せず)によりバックドア7がロックされている。その状態では、シール部材15が弾性変形してバックドア7の各スラット8の車外側表面を押し付けることで、シール部材15によりバックドア7が封止されている。このとき、シール部材15の上シール部15bは、最も上側に位置するスラット8Aの突出部21の突出面21aに接触している。シール部材15の上角シール部15dは、最も上側に位置するスラット8Aの傾斜部23の傾斜面23aに接触している。
【0040】
その状態からバックドア7のロックを解除し、取っ手11を持ってバックドア7を上昇させると、バックドア7が昇降ガイドレール13に沿って車体2の上側に移動すると共に、バックドア7がガイドレール(図示せず)に沿って車体2の前側に移動し、図2に示されるようにバックドア7が開くようになる。このようにバックドア7を開けるときは、シール部材15の上シール部15b及び上角シール部15dが最も上側に位置するスラット8A以外のスラット8の車外側表面を擦ることがないため、シール部材15の上シール部15b及び上角シール部15dが各スラット8の車外側表面を傷付けることが防止される。なお、バックドア7が開いたときは、スライドシュー12と昇降ガイドレール13との摺動抵抗によってバックドア7が開いた状態に保持される。
【0041】
バックドア7が開いた状態から、取っ手11を持ってバックドア7を下降させると、バックドア7が昇降ガイドレール13に沿って車体2の下側に移動すると共に、バックドア7がガイドレール(図示せず)に沿って車体2の後側に移動し、バックドア7が閉じるようになる。
【0042】
バックドア7が閉じ切った状態において、バックドア7のスラット8Aの熱伸長時には、図8(a)の破線P1で示されるように、スラット8Aが上下方向の上側及び車幅方向の外側に伸長するため、傾斜部23が上下方向の上側及び車幅方向の外側に移動する。このとき、傾斜部23の傾斜面23aは、スラット8Aが熱伸縮しても、シール部材15に対する接触方向の位置が変化しないような形状を呈している。このため、図9(a)に示されるように、シール部材15に対する傾斜面23aの接触方向(A方向)の位置は変化しない。
【0043】
バックドア7のスラット8Aの熱収縮時には、図8(b)の破線P2で示されるように、スラット8Aが上下方向の下側及び車幅方向の内側に収縮するため、傾斜部23が上下方向の下側及び車幅方向の内側に移動する。このとき、傾斜部23の傾斜面23aは、スラット8Aが熱伸縮しても、シール部材15に対する接触方向の位置が変化しないような形状を呈している。このため、図9(b)に示されるように、シール部材15に対する傾斜面23aの接触方向(A方向)の位置は変化しない。
【0044】
図10は、比較例としてのスラット50の一部を示す斜視図である。図10において、本比較例のスラット50は、ベース部51と、このベース部51の上端側に配置され、ベース部51と高さが異なると共に車幅方向に延在する突出部52と、ベース部51と突出部52との間に配置された段差部53とを有している。シール部材15は、ベース部51、段差部53及び突出部52に接触している(2点鎖線W参照)。
【0045】
スラット50の熱伸長時には、図10(a)の破線Q1で示されるように、スラット50が上下方向の上側及び車幅方向の外側に伸長するため、段差部53が上側に移動する。このため、図11(a)の破線Q1で示されるように、段差部53の段差面53aがシール部材15から離れ、シール部材15が段差面53aに接しない状態となり得る。スラット50の熱収縮時には、図10(b)の破線Q2で示されるように、スラット50が上下方向の下側及び車幅方向の内側に収縮するため、段差部53が下側に移動する。このため、図11(b)の破線Q2で示されるように、段差面53aがシール部材15に近づき過ぎて、シール部材15と段差面53aとが強く干渉した状態となり得る。以上により、シール部材15によるスラット50のシール性能が不安定となる。
【0046】
図12は、他の比較例としてのスラット60の一部を示す斜視図である。図12において、本比較例のスラット60は、ベース部61と、このベース部61の上端側に配置され、ベース部61と高さが異なると共に車幅方向に延在する突出部62と、ベース部61と突出部62との間に配置された段差部63と、突出部62の車幅方向の両側に配置され、車幅方向に沿って傾斜した傾斜面64aを有する傾斜部64とを有している。シール部材15は、ベース部61、傾斜部64及び突出部62に接触している(2点鎖線W参照)。
【0047】
スラット60の熱伸長時には、図12(a)の破線R1で示されるように、スラット60が上下方向の上側及び車幅方向の外側に伸長するため、傾斜部64が車幅方向の外側に移動する。このため、図13(a)の破線R1で示されるように、傾斜面64aがシール部材15に近づき過ぎて、シール部材15と傾斜面64aとが強く干渉した状態となり得る。スラット60の熱収縮時には、図12(b)の破線R2で示されるように、スラット60が上下方向の下側及び車幅方向の内側に収縮するため、傾斜部64が車幅方向の内側に移動する。このため、図13(b)の破線R2で示されるように、傾斜面64aがシール部材15から離れ、シール部材15が傾斜面64aに接しない状態となり得る。以上により、シール部材15によるスラット60のシール性能が不安定となる。
【0048】
そのような不具合に対し、本実施形態では、バックドア7のスラット8Aは、バックドア7が閉じ切った状態のときに車体2の開口2aを覆う主ベース部20と、この主ベース部20の車幅方向の両端側に設けられ、バックドア7が閉じ切った状態のときに車体2に重なる1対のベース端部24と、主ベース部20の上端側に配置され、車外側に突出する突出部21と、ベース端部24と突出部21の車幅方向の端縁21cとの間に配置された1対の傾斜部23とを有している。シール部材15は、バックドア7が閉じ切った状態のときにベース端部24の封止面24a、突出部21の突出面21a及び傾斜部23の傾斜面23aに接触すると共に、バックドア7が開いた状態では突出部21、傾斜部23及び主ベース部20に接触しないように配置されている。そして、傾斜面23aは、開閉方向及び車幅方向に沿って傾斜している。
【0049】
このため、温度変化によってスラット8Aが開閉方向及び車幅方向に熱伸縮すると、傾斜部23も開閉方向及び車幅方向に熱伸縮するが、シール部材15と傾斜部23の傾斜面23aとの接触方向には傾斜部23が熱伸縮しにくい。従って、スラット8Aの熱伸長時及び熱収縮時の何れにおいても、シール部材15に対する傾斜面23aの接触方向の位置変化が少ない。これにより、バックドア7が熱伸縮しても、バックドア7のシール性能が安定化する。その結果、スラット8Aが熱伸縮してもスラット8Aの広範囲を封止できるように、シール部材15を必要以上に大きくする必要がないため、シール部材15の質量、コスト及びスペースを節約することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、昇降ガイドレール13の外壁部30の開閉方向の開き側には、バックドア7を開閉させるときに傾斜部23が移動するための切欠部33が設けられているので、傾斜部23をバックドア7の開閉方向の開き側の角部に設けることができる。従って、バックドア7を開閉するときに、シール部材15の上角シール部15dが主ベース部20の車外側表面を擦ることが防止される。
【0051】
また、本実施形態では、傾斜面23a及び突出面21aは、スラット8Aが熱伸縮しても、シール部材15との接触方向の位置が変化しないような形状を呈している。従って、バックドア7が熱伸縮したときに、バックドア7のシール性能がより安定化する。
【0052】
また、本実施形態では、傾斜部23とベース端部24及び突出部21との接続部は、曲面状に形成されている。従って、傾斜部23とベース端部24及び突出部21との接続部が滑らかになるため、バックドア7のシール性が向上する。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、バックドア7は、車体2の上下方向に沿って配列された複数の樹脂製のスラット8と、隣り合うスラット8同士を接合する複数の接合部9とを有しているが、特にその形態には限られず、バックドア7は、1枚の樹脂製の板状部材から構成されていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、傾斜部23の傾斜面23aは、スラット8Aが熱伸縮しても、シール部材15との接触方向の位置が変化しないような形状を呈しているが、特にその形態には限られず、バックドア7のシール性能に影響を与えることが殆ど無ければ、スラット8Aが熱伸縮したときに、傾斜面23aの接触方向の位置が多少変化してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、シール部材15は、バックドア7よりも車両1の外側(車外側)に配置されているが、特にその形態には限られず、シール部材15は、バックドア7よりも車両1の内側(車内側)に配置されていてもよい。この場合には、シール部材15は、バックドア7の車内側表面に接触する。
【0056】
また、上記実施形態では、昇降ガイドレール13には、サイドパネル4の湾曲部4aに対応した湾曲部13aが設けられているが、特にその形態には限られず、そのような湾曲部13aが昇降ガイドレール13に設けられていなくてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、スラット8は透明樹脂で形成されているが、スラット8を形成する樹脂としては、透明樹脂以外であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、バックドア7の最も下側に位置するスラット8に開閉操作を行うための取っ手11を設けることで、バックドア7を手動で開閉させているが、特にその形態には限られず、バックドア7を電動で開閉させてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、バックドア7が車体2の後端部に設けられた開口2aに対して昇降可能となっているが、本発明は、特にバックドア7には限られず、サイドドアにも適用可能である。また、本発明は、車両に搭載されていれば、ドア以外の開閉構造にも適用可能である。さらに、本発明は、特に上下方向の摺動を行う開閉構造には限られず、車両に設けられた開口を挟むように1対のガイドレールを配置することが可能であれば、前後方向または左右方向の摺動を行う開閉構造にも適用可能である。そのような開閉構造としては、例えばサンルーフ等が挙げられる。
【符号の説明】
【0060】
1…車両、2a…開口、7…バックドア(開閉部材)、12…スライドシュー(摺動部)、13…昇降ガイドレール(ガイドレール)、14…シュー収容部(収容部)、15…シール部材、15a…側シール部(第1シール部)、15b…上シール部(第2シール部)、15d…上角シール部(第3シール部)、20…主ベース部、21…突出部、21a…突出面、21c…端縁、23…傾斜部、23a…傾斜面、24…ベース端部、24a…封止面、30…外壁部、31…内壁部、32…リーンフォースメント(接続部材)、33…切欠部。
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