(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20220301BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220301BHJP
C08K 5/3477 20060101ALI20220301BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220301BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08K5/3477
B60C1/00 A
C08K3/04
(21)【出願番号】P 2018545509
(86)(22)【出願日】2018-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2018015566
(87)【国際公開番号】W WO2018190429
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2017080969
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉安 勇人
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057758(WO,A1)
【文献】特開2016-6139(JP,A)
【文献】特開2011-89032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L9/
B60C1/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であるゴム成分100質量部に対して、
カーボンブラックを5質量部以上、シリカを10~120質量部、下記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を0.2~10質量部、重量平均分子量が20万以下の低分子量ジエン系ポリマーを1~50質量部含有
し、
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が、15~80質量%であり、
前記低分子量ジエン系ポリマーが、スチレンブタジエン共重合体、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ミルセン重合体、ファルネセン重合体、ミルセンブタジエン共重合体、ミルセンスチレン共重合体、ファルネセンブタジエン共重合体、及び、ファルネセンスチレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【化1】
[式中、R
1及びR
2は同一でも異なっていても良く、各々水素原子、-COOR
3(R
3は水素原子またはアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R
1及びR
2は塩を形成してもよい。]
【請求項2】
前記テトラジン系化合物が、下記一般式(1-1)、(1-2)、(1-3)、又は(1-4)で表される化合物である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化2】
[式(1-1)中、R
11は、水素原子、-COOR
17(R
17は水素原子又はアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R
11は塩を形成してもよい。]
[式(1-2)中、R
12は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R
12は塩を形成してもよい。]
[式(1-3)中、R
13及びR
14は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又はアルキル基を示す。また、R
13及びR
14は塩を形成してもよい。]
[式(1-4)中、R
15及びR
16は同一でも異なっていても良く、各々水素原子、-COOR
18(R
18は水素原子又はアルキル基を示す)、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R
15及びR
16は塩を形成してもよい。]
【請求項3】
前記テトラジン系化合物が、下記式(1-1-1)、(1-1-2)、(1-2-1)、(1-3-1)、(1-4-1)又は(1-4-2)で表される化合物である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化3】
【請求項4】
ゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量が15~80質量%である請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載のゴム組成物から作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。
【請求項6】
スタッドレスタイヤである請求項
5記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スタッドレスタイヤに用いられるゴム組成物には、氷上性能と低燃費性能のバランスを改善するためにシリカが配合される(例えば、特許文献1、2)。しかし、シリカはゴムとの親和性が低いため、シリカ配合による本来の性能が得られず、従来の技術では、氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能をバランスよく改善するという点では改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-44271号公報
【文献】特開2016-94556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能をバランスよく改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であるゴム成分100質量部に対して、シリカを10~120質量部、下記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を0.2~10質量部、重量平均分子量が20万以下の低分子量ジエン系ポリマーを1~50質量部含有することを特徴とするタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化1】
[式中、R
1及びR
2は同一でも異なっていても良く、各々水素原子、-COOR
3(R
3は水素原子またはアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R
1及びR
2は塩を形成してもよい。]
【0006】
上記テトラジン系化合物が、下記一般式(1-1)、(1-2)、(1-3)、又は(1-4)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】
[式(1-1)中、R
11は、水素原子、-COOR
17(R
17は水素原子又はアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R
11は塩を形成してもよい。]
[式(1-2)中、R
12は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R
12は塩を形成してもよい。]
[式(1-3)中、R
13及びR
14は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又はアルキル基を示す。また、R
13及びR
14は塩を形成してもよい。]
[式(1-4)中、R
15及びR
16は同一でも異なっていても良く、各々水素原子、-COOR
18(R
18は水素原子又はアルキル基を示す)、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R
15及びR
16は塩を形成してもよい。]
【0007】
上記テトラジン系化合物が、下記式(1-1-1)、(1-1-2)、(1-2-1)、(1-3-1)、(1-4-1)又は(1-4-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】
【0008】
ゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量が15~80質量%であることが好ましい。
【0009】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が15~80質量%であることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、ゴム組成物から作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【0011】
上記空気入りタイヤは、スタッドレスタイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であるゴム成分100質量部に対して、シリカを10~120質量部、下記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を0.2~10質量部、重量平均分子量が20万以下の低分子量ジエン系ポリマーを1~50質量部含有することを特徴とするタイヤ用ゴム組成物であるので、氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能をバランスよく改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であるゴム成分100質量部に対して、シリカを10~120質量部、下記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を0.2~10質量部、重量平均分子量が20万以下の低分子量ジエン系ポリマーを1~50質量部含有する。
【0014】
本発明では、以下の作用効果により、氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能がバランスよく改善されるものと推察される。
ジエン系ゴムと、テトラジン系化合物とが反応することにより、具体的には、ジエン系ゴムの2重結合に、テトラジン系化合物を反応させることにより、ジエン系ゴムの側鎖が増え、この側鎖とシリカとの作用により、シリカとの親和性が向上し、ジエン系ゴム近傍にもシリカを分散させることが可能となり、ゴム組成物中において、シリカをより均一に分散させることが可能となる。この効果は、元々シリカとの親和性が低いブタジエンゴム、特にシス含量が97質量%以上のブタジエンゴムを用いた場合により好適に得られる。
そして、本発明では、ジエン系ゴムの含有量が特定量以上のゴム成分に対して、特定量のシリカを配合し、さらに、特定量の上記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物及び低分子量ジエン系ポリマーを配合することで、ジエン系ゴムの側鎖を充分に増加させ、ジエン系ゴムのシリカとの親和性を向上させた上で、シリカによる補強効果を得ることができると共に側鎖の増加により、ジエン系ゴムと低分子量ジエン系ポリマーとの親和性も向上すると考えられ、更にはジエン系ゴムと相性の良い低分子量のジエン系ポリマーにより、テトラジン系化合物とシリカとの親和性を阻害せずに、ゴム成分間の距離を開き、氷上性能がさらに向上するため、氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能をバランスよく改善できるものと予想される。このように、本発明では、ブタジエンゴムとテトラジン系化合物とシリカと低分子量ジエン系ポリマーの相互作用により、氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能の性能バランスを相乗的に改善できる。
【0015】
本発明では、ゴム成分として、ジエン系ゴムが使用され、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)の合計含有量が80質量%以上であれば、どのような組合せであってもよい。
イソプレン系ゴム、BR、SBRの合計含有量は、ゴム成分100質量%中80質量%以上、好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0016】
本発明では、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴム、ブタジエンゴムの合計含有量が好ましくは30~100質量%である。該合計含有量は、本発明の効果がより好適に得られ、氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能がよりバランスよく改善できるという理由から、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0017】
本発明では、ゴム成分として、ブタジエンゴム(BR)を含むことが好ましく、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)を含むことが好ましい。
ここで、本発明では、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が30万以上(好ましくは35万以上)のゴムを意味する。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは150万以下、より好ましくは100万以下である。
なお、本明細書において、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0018】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0019】
イソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、上記イソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。上記範囲内にすることで、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0020】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性能が向上するという理由から、BRのシス含量は97質量%以上が好ましい。
【0021】
BRの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30万以上、より好ましくは35万以上である。上記Mwは、好ましくは55万以下、より好ましくは50万以下、更に好ましくは45万以下である。上記Mwが上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0022】
また、BRとしては、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。
変性BRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するBRであればよく、例えば、BRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性BR(末端に上記官能基を有する末端変性BR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性BRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性BR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性BR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性BR等が挙げられる。
【0023】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0024】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0025】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。また、上記BRの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。上記範囲内にすることで、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0026】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
SBRの結合スチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。下限以上にすることで、優れたウェットグリップ性能が充分に得られる傾向がある。また、該結合スチレン量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。上限以下にすることで、優れた耐摩耗性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRの結合スチレン量は、H1-NMR測定により算出される。
【0028】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0029】
また、SBRとしては、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、変性BRと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。
【0030】
上記イソプレン系ゴム、BR、SBR以外に使用できるゴム成分としては、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴムの他、ブチル系ゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明のゴム組成物は、下記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を含む。
【化4】
[式中、R
1及びR
2は同一でも異なっていても良く、各々水素原子(-H)、-COOR
3(R
3は水素原子(-H)またはアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R
1及びR
2は塩を形成してもよい。]
【0032】
上記ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
R1及びR2の炭化水素基の炭素数は1~11であり、好ましくは2~9、より好ましくは4~7である。
【0033】
R1及びR2としては、補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用が生じやすいと考えられ、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られるという理由から、-COOR3又はヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましく、R1及びR2が共にヘテロ原子を有する炭化水素基であることがより好ましい。
【0034】
R1及びR2の炭化水素基としては、特に限定されないが、補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用が生じやすいと考えられ、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られるという理由から、単素環基、複素環基が好ましく、少なくとも一方が複素環基であることがより好ましく、双方が複素環基であることが更に好ましい。
なお、本明細書において、単素環基とは、環構造が炭素原子のみによって構成される基を意味し、複素環基とは、環構造が炭素原子を含む2種類以上の元素によって構成される基を意味する。
【0035】
単素環基としては、例えば、アリール基、シクロアルキル基等が挙げられる。なかでも、アリール基が好ましい。
【0036】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。なかでも、フェニル基が好ましい。
【0037】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0038】
複素環基としては、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を含有する含窒素複素環基が好ましく、環を構成するヘテロ原子として窒素原子のみを含有する含窒素複素環基がより好ましい。
【0039】
含窒素複素環基としては、例えば、アジリジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ヘキサメチレンイミノ基、イミダゾリジル基、ピペラジニル基、ピラゾリジル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等が挙げられる。なかでも、ピリジル基、ピリミジル基が好ましく、ピリジル基が更に好ましい。
【0040】
上記単素環基、上記複素環基が有する水素原子は、置換基により置換されていてもよい。補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用が生じやすいと考えられ、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られるという理由から、置換基により置換されていることが好ましい。
【0041】
置換基としては、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基、スルホン酸基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、更に上記置換基を有していてもよく、上記置換基以外にも例えば、アルキレン基、アルキル基等を有していてもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、カルボキシル基、上記-COOR
3、アミノ基(好ましくは下式(A)で表される基、下式(B)で表される基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【化5】
【0042】
なお、置換基は、上式(A)、(B)で表される基のように、塩を形成してもよい。塩を形成する例としては、例えば、アミノ基とハロゲン原子との塩、カルボキシル基とNa、K等の1価の金属との塩、スルホン酸基と上記1価の金属との塩等が挙げられる。
【0043】
上記-COOR3のR3は水素原子又はアルキル基を示す。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~8、より好ましくは1~3である。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
R3としては、アルキル基が好ましい。
【0044】
上記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物としては、ジエン系ゴムと反応可能なものであれば特に限定されない。テトラジン系化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、下記一般式(1-1)、(1-2)、(1-3)、又は(1-4)で表される化合物(特に、下記一般式(1-1)又は(1-4)で表される化合物)が好ましく、下記式(1-1-1)、(1-1-2)、(1-2-1)、(1-3-1)、(1-4-1)又は(1-4-2)で表される化合物(特に、下記式(1-1-1)又は(1-4-1)で表される化合物)がより好ましい。
上記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物は、市販品を用いてもよく、公知の方法により合成してもよい。
【化6】
[式(1-1)中、R
11は、水素原子(-H)、-COOR
17(R
17は水素原子(-H)又はアルキル基を示す)又は炭素数1~11の一価の炭化水素基を示し、該炭化水素基はヘテロ原子を有してもよい。また、R
11は塩を形成してもよい。]
[式(1-2)中、R
12は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R
12は塩を形成してもよい。]
[式(1-3)中、R
13及びR
14は同一でも異なっていても良く、各々水素原子(-H)又はアルキル基を示す。また、R
13及びR
14は塩を形成してもよい。]
[式(1-4)中、R
15及びR
16は同一でも異なっていても良く、各々水素原子(-H)、-COOR
18(R
18は水素原子(-H)又はアルキル基を示す)、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を示す。また、R
15及びR
16は塩を形成してもよい。]
【化7】
【0045】
R11のヘテロ原子としては、R1及びR2のヘテロ原子と同様の原子が挙げられる。
R11の炭化水素基の炭素数はR1及びR2の炭化水素基と同様であり、好適な態様も同様である。
【0046】
R11としては、補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用が生じやすいと考えられ、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られるという理由から、-COOR17又はヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましい。
【0047】
R11の炭化水素基としては、R1及びR2の炭化水素基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
【0048】
上記-COOR17のR17は水素原子又はアルキル基を示す。該アルキル基としては、R3のアルキル基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
R17としては、アルキル基が好ましい。
【0049】
R12の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基としては、上記置換基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
【0050】
R12は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であってもよいが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、パラ位が好ましい。
【0051】
R13及びR14のアルキル基は、R3のアルキル基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。R13及びR14としては、アルキル基が好ましい。
【0052】
R15及びR16としては、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られるという理由から、水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基が好ましい。
【0053】
-COOR18のR18は水素原子又はアルキル基を示す。該アルキル基としては、R3のアルキル基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
R18としては、アルキル基が好ましい。
【0054】
R15及びR16の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子およびケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基としては、上記置換基と同様の基が挙げられ、好適な態様も同様である。
【0055】
R15及びR16は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であってもよいが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、パラ位が好ましく、R15及びR16共にパラ位がより好ましい。
【0056】
上記テトラジン系化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。下限以上にすることで、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。また、上記含有量は、10質量部以下、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下、特に好ましくは1.5質量部以下である。上限以下にすることで、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
ここで、本明細書において、上記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物の含有量とは、2種以上のテトラジン系化合物を含有する場合はその合計含有量を意味する。
【0057】
本発明のゴム組成物は、補強性充填剤としてシリカを含む。
シリカ以外の補強性充填剤としては、特に限定されないが、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、カーボンブラックが好ましい。
【0058】
補強性充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。下限以上にすることで、十分な補強性を得ることができ、より良好な耐摩耗性能、氷上性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは250質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。上限以下にすることで、より良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0059】
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0060】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは90m2/g以上、より好ましくは120m2/g以上、更に好ましくは150m2/g以上である。下限以上にすることで、より良好な耐摩耗性能、氷上性能が得られる。上記N2SAは、好ましくは400m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下、更に好ましくは180m2/g以下である。上限以下にすることで、より良好な低燃費性能が得られる。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0061】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0062】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。下限以上にすることで、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られる。また、上記含有量は、120質量部以下、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。上限以下にすることで、ゴム組成物中において、シリカが均一に分散することが容易となり、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られる。
【0063】
補強性充填剤100質量%中のシリカの含有量は好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0064】
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、5m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上が更に好ましい。下限以上にすることで、より良好な耐摩耗性能、氷上性能が得られる傾向がある。また、上記N2SAは、300m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、130m2/g以下が更に好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られやすく、より良好な耐摩耗性能、氷上性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0066】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0067】
カーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。下限以上にすることで、十分な補強性を得ることができ、より良好な耐摩耗性能、氷上性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上限以下にすることで、より良好な低燃費性能が得られる傾向がある。
【0068】
カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20~130質量部、より好ましくは40~100質量部、更に好ましくは50~80質量部である。
【0069】
本発明のゴム組成物は、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、スルフィド系又はメルカプト系が好ましい。
【0070】
シランカップリング剤としては、式(2)で表されるシランカップリング剤を使用することが好ましい。これにより、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られる。
【化8】
(式(2)中、pは1~3の整数、qは1~5の整数、kは5~12の整数である。)
【0071】
式(2)において、pは1~3の整数であるが、2が好ましい。pが3以下であると、カップリング反応が速い傾向がある。
qは1~5の整数であるが、2~4が好ましく、3がより好ましい。qが1~5であると合成が容易である傾向がある。
kは5~12の整数であるが、5~10が好ましく、6~8がより好ましく、7が更に好ましい。
【0072】
式(2)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0073】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0074】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。3質量部以上であると、シランカップリング剤を配合したことによる効果が得られる傾向がある。また、上記含有量は、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。20質量部以下であると、配合量に見合った効果が得られ、良好な混練時の加工性が得られる傾向がある。
【0075】
本発明では、重量平均分子量が20万以下の低分子量ジエン系ポリマーを含有する。
【0076】
低分子量ジエン系ポリマーを構成するモノマー成分としては、ジエン系モノマーであれば特に限定されず、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエンなどの共役ジエン化合物、ミルセン、ファルネセンなどの分枝共役ジエン化合物が挙げられる。また、ジエン系モノマーと共に、スチレン、α-メチルスチレン、α-ビニルナフタレン、β-ビニルナフタレンなどのビニル化合物がモノマー成分として使用されてもよい。
【0077】
低分子量ジエン系ポリマーとしては、例えば、スチレンブタジエン共重合体、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ミルセン重合体、ファルネセン重合体、ミルセンブタジエン共重合体、ミルセンスチレン共重合体、ファルネセンブタジエン共重合体、ファルネセンスチレン共重合体等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スチレンブタジエン共重合体、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、ミルセン重合体、ファルネセン重合体、ミルセンブタジエン共重合体、ミルセンスチレン共重合体、ファルネセンブタジエン共重合体、ファルネセンスチレン共重合体が好ましい。
【0078】
低分子量ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の低分子量ジエン系ポリマーが好ましい。また、低分子量ジエン系ポリマーの共役ジエン部の二重結合は、水素添加されていてもよい。
【0079】
低分子量ジエン系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上である。また、低分子量ジエン系ポリマーのMwは、好ましくは15万以下、より好ましくは10万以下、更に好ましくは5万以下、特に好ましくは2万以下、最も好ましくは1.5万以下である。Mwが上記範囲内であると、本発明の効果(特に、氷上性能の改善効果)がより好適に得られる。
【0080】
低分子量ジエン系ポリマーを含有する場合、低分子量ジエン系ポリマーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記含有量が上記範囲内であると、本発明の効果(特に、氷上性能の改善効果)がより好適に得られる。
【0081】
本発明では、樹脂を含有してもよい。
樹脂としては、タイヤ工業において一般的に用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、クマロン系樹脂、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、樹脂とテトラジン系化合物との反応性を下げ、氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能をよりバランス良く向上させるという観点から、樹脂は、ベンゼン環以外の構造における不飽和結合の数が少ないことが好ましい。このような樹脂は、H1-NMR測定により判別可能である。H1-NMR測定によって厳密にベンゼン環以外の不飽和結合を定量することは難しいものの、化学シフト値が4ppm以上6ppm以下の範囲にある水素原子の数が全水素原子数に対して5%以下である樹脂は、不飽和結合が少ない樹脂といえる。
【0082】
ベンゼン環以外の不飽和結合が少ない樹脂としては、水添テルペン系樹脂、水添ジシクロペンタジエン系樹脂(水添DCPD系樹脂)、水添C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、クマロン系樹脂、スチレン系樹脂が挙げられ、なかでも、H1-NMR測定における化学シフト値が4ppm以上9ppm以下の範囲にある水素原子の数が全水素原子数に対して15%以下である樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、水添テルペン系樹脂や水添DCPD系樹脂などが挙げられる。
【0083】
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物に由来する単位を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリテルペン(テルペン化合物を重合して得られる樹脂)、テルペン芳香族樹脂(テルペン化合物と芳香族化合物とを共重合して得られる樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂(テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂)などが挙げられる。
【0084】
上記テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。上記テルペン化合物としてはまた、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、ピマール酸、イソピマール酸などの樹脂酸(ロジン酸)なども挙げられる。すなわち、上記テルペン系樹脂には、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とするロジン系樹脂も含まれる。なお、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの天然産のロジン樹脂(重合ロジン)の他、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などの変性ロジン樹脂、ロジングリセリンエステルなどのロジンエステル、ロジン樹脂を不均化することによって得られる不均化ロジン樹脂などが挙げられる。
【0085】
上記芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
【0086】
樹脂の軟化点は、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましく、100℃以上が特に好ましい。30℃以上であると、より良好な耐摩耗性能、氷上性能が得られる傾向がある。また、上記軟化点は、160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。160℃以下であると、樹脂の分散性が良好となり、より良好な耐摩耗性能、氷上性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、本発明において、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0087】
樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0088】
樹脂を含有する場合、樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。3質量部以上であると、より良好な氷上性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。150質量部以下であると、より良好な耐摩耗性能、低燃費性能が得られる傾向がある。
【0089】
ゴム成分100質量部に対する前記テトラジン系化合物の含有量をX、ゴム成分100質量部に対する樹脂(好ましくは上記ベンゼン環以外の不飽和結合を有する樹脂)の含有量をYとしたときに、Y/X=5~100であることが好ましく、より好ましくは5~60、更に好ましくは10~30である。Y/Xが上記範囲内であると、より良好な氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能が得られる。
【0090】
本発明のゴム組成物は、オイルを含んでもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0092】
オイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0093】
本発明のゴム組成物は、ワックスを含むことが好ましい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0095】
ワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0096】
本発明のゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。
【0097】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0098】
老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0099】
本発明のゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0100】
ステアリン酸を含有する場合、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0101】
本発明のゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0102】
酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0103】
本発明のゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0105】
硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0106】
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0107】
加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0108】
前記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、可塑剤、滑剤などの加工助剤;硫黄以外の加硫剤(例えば、有機架橋剤、有機過酸化物);等を例示できる。
【0109】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。本発明のテトラジン系化合物は補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)との相互作用や分散性への寄与が期待されるため、補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)よりも前に、もしくは補強性充填剤(特に、カーボンブラック、シリカ)とともにゴム成分(特に、ブタジエンゴム)と混練を行い、ゴム成分中にテトラジン系化合物を分散させておくことが好ましい。
【0110】
ジエン系ゴム(特に、ブタジエンゴム)とテトラジン系化合物との反応を充分に行うために、ジエン系ゴム(特に、ブタジエンゴム)とテトラジン系化合物とを混練することによりマスターバッチを調製し、該マスターバッチを、シリカと混練することが好ましい。すなわち、本発明の空気入りタイヤは、ジエン系ゴム(特に、ブタジエンゴム)とテトラジン系化合物とを混練することによりマスターバッチを調製するマスターバッチ調製工程と、マスターバッチ調製工程により得られたマスターバッチとシリカとを混練する混練工程とを含む製造方法により製造されることが好ましい。ここで、ジエン系ゴム(特に、ブタジエンゴム)とテトラジン系化合物との反応を充分に行うことができ、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、マスターバッチ調製工程において混練されるゴム成分100質量%中ジエン系ゴム(特に、ブタジエンゴム)の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%(マスターバッチ調製工程において混練されるゴム成分がジエン系ゴム(特に、ブタジエンゴム)のみ)である。また、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、マスターバッチ調製工程においてシリカは混練されないことが好ましく、マスターバッチ調製工程において混練されるゴム成分100質量部に対して、マスターバッチ調製工程において混練されるシリカの含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以下、最も好ましくは0質量部である。また、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、マスターバッチ調製工程において混練されるゴム成分100質量部に対して、マスターバッチ調製工程において混練されるテトラジン系化合物の含有量は、0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上であり、3.0質量部以下、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。
【0111】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を配合する場合、混練温度は、通常50~200℃であり、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分であり、好ましくは1分~30分である。
加硫剤、加硫促進剤を配合する場合、混練温度は、通常100℃以下であり、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を配合した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0112】
本発明のゴム組成物は、トレッド(キャップトレッド)に好適に用いられるが、トレッド以外のタイヤ部材、例えば、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチエイペックス、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層に用いてもよい。
【0113】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0114】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、ランフラットタイヤに好適に使用可能である。特に、氷上性能に優れるため、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)としてより好適に使用できる。
【実施例】
【0115】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
BR:ハイシスBR(シス含量:97質量%、Mw:40万)
SBR:JSR(株)製のNS116(スチレン含量20重量%)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(N220、N2SA:111m2/g)
シリカ:デグッサ社製のUltrasil VN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤:モメンティブ社製のNXT(3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン)
テトラジン系化合物A:上記式(1-1-1)で表される化合物
テトラジン系化合物B:上記式(1-2-1)で表される化合物
テトラジン系化合物C:上記式(1-3-1)で表される化合物
テトラジン系化合物D:上記式(1-4-1)で表される化合物
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスP523
低分子量ジエン系ポリマー(1):下記製造例1で調製した低分子量ジエン系ポリマー
低分子量ジエン系ポリマー(2):下記製造例2で調製した低分子量ジエン系ポリマー
低分子量ジエン系ポリマー(3):下記製造例3で調製した低分子量ジエン系ポリマー
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
老化防止剤:精工化学(株)製のオゾノン6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
【0116】
製造例1(低分子量ジエン系ポリマー(1)の合成)
乾燥し窒素置換した3Lの耐圧ステンレス容器に、ヘキサン 2000ml、ブタジエン 110g、スチレン 90gとともにテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA) 0.22mmolを加え、さらにn-ブチルリチウム(n-BuLi)35mmolを加えた後、50℃で5時間重合反応を行った。5時間後、1Mイソプロパノール/ヘキサン溶液を1.15ml滴下し、反応を終了させた。冷却後、反応液を1晩風乾し、さらに2日間減圧乾燥を行い、低分子量ジエン系ポリマー(1) 200gを得た。重合添加率(「乾燥重量/仕込量」)は、ほぼ100%であった。低分子量ジエン系ポリマー(1)は、ブタジエン55質量%、スチレン45質量%のポリマー(スチレンブタジエン共重合体)であり、Mwは5000であった。
【0117】
製造例2(低分子量ジエン系ポリマー(2)の合成)
乾燥し窒素置換した1Lのガラス容器にヘキサン 500ml、テトラヒドロフラン(THF) 46g、n-ブチルリチウム(n-BuLi)40mmolを加えた後、反応容器にヘキサン 100ml、ミルセン 150g、スチレン 125gの混合液を2時間かけて滴下しながら重合反応をおこなった。滴下終了後直ちに、2Mイソプロパノール/ヘキサン溶液を10ml滴下して反応を終了させた。冷却後、反応液を1晩風乾し、さらに2日間減圧乾燥を行い、低分子量ジエン系ポリマー(2) 275gを得た。重合転化率はほぼ100%であった。低分子量ジエン系ポリマー(2)は、ミルセン55質量%、スチレン45質量%のポリマー(ミルセンスチレン共重合体)であり、Mwは5320であった。
【0118】
製造例3(低分子量ジエン系ポリマー(3)の合成)
乾燥し窒素置換した1Lのガラス容器にヘキサン 500ml、THF 46g、n-ブチルリチウム(n-BuLi)40mmolを加えた後、反応容器にヘキサン 100ml、ファルネセン 150g、スチレン 125gの混合液を2時間かけて滴下しながら重合反応をおこなった。滴下終了後直ちに、2Mイソプロパノール/ヘキサン溶液を10ml滴下して反応を終了させた。冷却後、反応液を1晩風乾し、さらに2日間減圧乾燥を行い、低分子量ジエン系ポリマー(3) 275gを得た。重合転化率はほぼ100%であった。低分子量ジエン系ポリマー(3)は、ファルネセン55質量%、スチレン45質量%のポリマー(ファルネセンスチレン共重合体)であり、Mwは5420であった。
【0119】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合内容に従い、各材料を混練し、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、加圧加熱を行って、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。得られた試験用タイヤを用いて下記の評価を行い、結果を表1に示した。
【0120】
(シリカの分散性)
トレッドから切り出したゴムから、測定用試験片を切り出し、JIS K 6812「ポリオレフィン管、継手及びコンパウンドの顔料分散又はカーボン分散の評価方法」に準じて、各試験片中のシリカの凝集塊をカウントして、分散率(%)をそれぞれ算出して、比較例1の分散率を100として、各配合のシリカ分散率を指数表示した。シリカ分散指数が大きいほどシリカが分散し、優れることを示す。
【0121】
(氷上性能)
試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、下記条件下で氷上を実車走行し、氷上性能を評価した。氷上性能評価としては、具体的には、上記車両を用いて氷上を走行し、時速30km/hでロックブレーキを踏み、停止させるまでに要した停止距離(氷上制動停止距離)を測定し、比較例1を100とした時の指数で表示した。指数が大きいほど、氷上性能(氷上でのグリップ性能)が良好である。
(氷上)
試験場所:北海道名寄テストコ-ス
気温 :-1~-6℃
【0122】
(低燃費性能)
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1を100とした時の指数で表示した(低燃費性能指数)。指数が大きいほど、低燃費性能に優れることを示す。
【0123】
(耐摩耗性能)
各試験用タイヤを国産FF車に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、比較例1を100とした時の指数で表示した(耐摩耗性能指数)。指数が大きいほど、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離が長く、耐摩耗性能に優れることを示す。
【0124】
【0125】
表1から、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であるゴム成分100質量部に対して、シリカを10~120質量部、下記一般式(1)で表されるテトラジン系化合物を0.2~10質量部、重量平均分子量が20万以下の低分子量ジエン系ポリマーを1~50質量部含有する実施例の空気入りタイヤは、氷上性能、低燃費性能、耐摩耗性能がバランスよく改善されていた。