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特許7031757電力変換装置、圧送装置、制御方法、診断装置及び診断方法
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  • 特許-電力変換装置、圧送装置、制御方法、診断装置及び診断方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】電力変換装置、圧送装置、制御方法、診断装置及び診断方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220301BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20220301BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20220301BHJP
   H02P 29/024 20160101ALI20220301BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M1/00 C
H02P27/08
H02P29/024
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020555596
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2019043723
(87)【国際公開番号】W WO2020096007
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/041719
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】池 英昭
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-185078(JP,U)
【文献】特開平06-165521(JP,A)
【文献】特開2016-220302(JP,A)
【文献】特開2016-211780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 1/00
H02P 27/08
H02P 29/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式の駆動対象に電力を供給する電力変換部と、
前記駆動対象の駆動速度に対応する速度データと、前記駆動対象の駆動力に対応する力データとを取得するデータ取得部と、
前記力データの振動成分の振幅に対応する振幅指標値の閾値を設定する閾値設定部と、
前記振幅指標値が前記閾値を超えるのに応じて前記駆動対象の異常を検出する異常検出部と、を備え、
前記閾値設定部は、前記速度データが大きくなるにつれて前記閾値を大きくする、電力変換装置。
【請求項2】
前記閾値設定部は、前記速度データが大きくなるにつれて、前記閾値と、平常時における前記振幅指標値との差を大きくする、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記速度データと前記閾値との関係を示すように予め設定された閾値ラインを記憶する閾値保持部を更に備え、
前記閾値設定部は、前記速度データと前記閾値ラインとに基づいて前記閾値を設定する、請求項1又は2記載の電力変換装置。
【請求項4】
平常時における前記速度データと前記力データとに基づいて前記閾値ラインを設定するライン設定部を更に備える、請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記ライン設定部は、前記平常時における前記速度データと前記力データとに基づいて、前記平常時における前記速度データと前記振幅指標値との関係を示す基準ラインを導出し、前記基準ラインに基づいて前記閾値ラインを設定する、請求項4記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電力変換部から前記駆動対象にテスト運転用の前記電力を供給させるスキャン制御部を更に備え、
前記ライン設定部は、前記テスト運転中に取得された前記速度データ及び前記力データに基づいて前記閾値ラインを設定する、請求項4又は5記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記力データの取得時よりも所定期間前から当該取得時までの間に取得された複数の前記力データに基づき前記振動成分の振幅を前記振幅指標値として導出する指標値導出部を更に備える、請求項1~6のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記力データと、当該力データの取得時よりも所定期間前から当該取得時までの間に取得された過去の前記力データに基づく前記力データのトレンド値との差を前記振幅指標値として導出する指標値導出部を更に備える、請求項1~6のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置から供給された前記電力により駆動される電動式のポンプと、を備える圧送装置。
【請求項10】
前記ポンプに固定され、前記電力変換装置を保持する電装保持部を更に備える、請求項9記載の圧送装置。
【請求項11】
電動式の駆動対象に電力を供給することと、
前記駆動対象の駆動速度に対応する速度データと、前記駆動対象の駆動力に対応する力データとを取得することと、
前記力データの振動成分の振幅に対応する振幅指標値の閾値を設定することと、
前記振幅指標値が前記閾値を超えるのに応じて前記駆動対象の異常を検出することと、を含み、
前記速度データが大きくなるにつれて前記閾値を大きくする、制御方法。
【請求項12】
電力変換部が電動式の駆動対象に供給する電力に基づいて、前記駆動対象の駆動力に対応する力データを取得するデータ取得部と、
前記力データの振動成分の振幅に対応する振幅指標値の閾値を設定する閾値設定部と、
前記振幅指標値が前記閾値を超えるのに応じて前記駆動対象の異常を検出する異常検出部と、を備え、
前記閾値設定部は、前記駆動対象の駆動速度が大きくなるにつれて前記閾値を大きくする、診断装置。
【請求項13】
電力変換部が電動式の駆動対象に供給する電力に基づいて、前記駆動対象の駆動力に対応する力データを取得することと、
前記力データの振動成分の振幅に対応する振幅指標値の閾値を設定することと、
前記振幅指標値が前記閾値を超えるのに応じて前記駆動対象の異常を検出することと、を含み、
前記駆動対象の駆動速度が大きくなるにつれて前記閾値を大きくする、診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、圧送装置、制御方法、診断装置及び診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプの駆動用の電動機に出力する電動機電流が、あらかじめ設定した電動機無負荷電流値に低下して到達し、かつ、あらかじめ設定した時間が経過しても電動機電流が増加しない場合には、速やかにインバータ装置を停止させると共に、警報を出力する手段を備えるインバータ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-165521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、駆動対象の異常検出機能を容易に構築可能な電力変換装置、圧送装置、制御方法、診断装置及び診断方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る電力変換装置は、電動式の駆動対象に電力を供給する電力変換部と、駆動対象の駆動速度に対応する速度データと、駆動対象の駆動力に対応する力データとを取得するデータ取得部と、力データの振動成分の振幅に対応する振幅指標値の閾値を設定する閾値設定部と、振幅指標値が閾値を超えるのに応じて駆動対象の異常を検出する異常検出部と、を備え、閾値設定部は、速度データが大きくなるにつれて閾値を大きくする。
【0006】
本開示の他の側面に係る圧送装置は、上記電力変換装置と、電力変換装置から供給された電力により駆動される電動式のポンプと、を備える。
【0007】
本開示の更に他の側面に係る制御方法は、電動式の駆動対象に電力を供給することと、駆動対象の駆動速度に対応する速度データと、駆動対象の駆動力に対応する力データとを取得することと、力データの振動成分の振幅に対応する振幅指標値の閾値を設定することと、振幅指標値が閾値を超えるのに応じて駆動対象の異常を検出することと、を含み、速度データが大きくなるにつれて閾値を大きくする。
【0008】
本開示の更に他の側面に係る診断装置は、電力変換部が電動式の駆動対象に供給する電力に基づいて、駆動対象の駆動力に対応する力データを取得するデータ取得部と、力データの振動成分の振幅に対応する振幅指標値の閾値を設定する閾値設定部と、振幅指標値が閾値を超えるのに応じて駆動対象の異常を検出する異常検出部と、を備え、閾値設定部は、駆動対象の駆動速度が大きくなるにつれて閾値を大きくする。
【0009】
本開示の更に他の側面に係る診断方法は、電力変換部が電動式の駆動対象に供給する電力に基づいて、駆動対象の駆動力に対応する力データを取得することと、力データの振動成分の振幅に対応する振幅指標値の閾値を設定することと、振幅指標値が閾値を超えるのに応じて駆動対象の異常を検出することと、を含み、駆動対象の駆動速度が大きくなるにつれて閾値を大きくする。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、駆動対象の異常検出機能を容易に構築可能な装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】圧送装置の側面図である。
図2】電力変換装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図3】閾値ラインを例示するグラフである。
図4】電力変換装置のハードウェア構成図である。
図5】閾値ラインの設定手順を示すフローチャートである。
図6】運転状態監視手順を示すフローチャートである。
図7】閾値ラインの設定手順の変形例を示すフローチャートである。
図8】診断装置の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
〔圧送装置〕
(全体構成)
図1に示す圧送装置1は、液体を圧送するポンプ20と、ポンプ20を駆動するポンプ駆動装置10と、これらを一体的に保持するユニットベース2とを備える。
【0014】
ポンプ20は、非容積型の回転式ポンプである。例えばポンプ20は、渦巻ポンプ等の遠心ポンプであり、遠心力により液体を圧送するインペラ21を有する。なお、ポンプ20は、容積型のポンプであってもよいし、ダイヤフラム式又はベローズ式等の往復式ポンプであってもよい。ポンプ20は、定常運転時における駆動速度と駆動力との関係が定まるものであればいかなるポンプであってもよい。
【0015】
ポンプ駆動装置10は、モータ11と、電力変換装置100と、電装保持部13とを有する。モータ11は、ポンプ20の駆動用の動力源である。モータ11の具体例としては、回転型の同期電動機又は誘導電動機等が挙げられる。
【0016】
電力変換装置100は、上位コントローラ300(図2参照)から受信した周波数指令(速度指令)にモータ11の回転速度を追従させるための交流電力を生成する。なお、電力変換装置100は、上位コントローラ300からの受信に代えて周波数指令を内部演算で生成してもよいし、予め設定された周波数指令を内部に保持していてもよい。電力変換装置100の構成については後に詳述する。
【0017】
電装保持部13は、モータ11に固定され、電力変換装置100を保持する。例えば電装保持部13は、モータ11のフレーム外周に固定されたケースであり、その内部に電力変換装置100を保持する。
【0018】
(電力変換装置)
電力変換装置100は、圧送装置1(電動式の駆動対象)に電力を供給することと、圧送装置1の駆動速度に対応する速度データと、圧送装置1の駆動力に対応する力データとを取得することと、力データの振動成分の振幅に対応する振幅指標値の閾値を設定することと、振幅指標値が閾値を超えるのに応じて圧送装置1の異常を検出することと、を実行するように構成されている。例えば図2に示すように、電力変換装置100は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、電力変換部111と、速度制御部112と、電流制御部113と、電流検出部114と、データ取得部121と、運転データ保持部122と、指標値導出部123と、閾値保持部124と、閾値設定部125と、異常検出部126とを有する。
【0019】
電力変換部111は、圧送装置1のモータ11に駆動電力を出力する。例えば電力変換部111は、電圧指令に応じた電圧振幅にて、モータ11の磁極に追従可能な周波数の交流電圧をモータ11に出力する。例えば電力変換部111は、PWM(Pulse Width Modulation)方式により上記交流電圧を生成する。電力変換部111は、直流母線の直流電力を交流電力に変換して駆動電力を生成するインバータであってもよいし、交流電源側の交流電力とモータ11側の交流電力との間で双方向の電力変換を行うマトリクスコンバータであってもよい。
【0020】
速度制御部112は、ポンプ20の駆動速度が目標速度に追従するように、電力変換部111に駆動電力を出力させる。目標速度は、例えば上位コントローラ300から受信した周波数指令である。目標速度は、電力変換装置100の内部演算により生成された周波数指令であってもよいし、予め設定され電力変換装置100の内部に保持された周波数指令であってもよい。速度制御部112は、速度偏差を縮小するための電流指令(トルク指令)を算出する。
【0021】
電流制御部113は、速度制御部112により算出された電流指令と、モータ11に出力中の電流(以下、「出力電流」という。)との偏差を縮小するための電圧指令を算出し、電力変換部111に出力する。これにより、電力変換部111は、ポンプ20の駆動速度を目標速度に追従させる駆動電力をモータ11に出力する。電流検出部114は、電力変換部111からモータ11への出力電流を検出する。
【0022】
データ取得部121は、圧送装置1の駆動速度に対応する速度データと、圧送装置1の駆動力に対応する力データとを取得する。速度データは、圧送装置1の駆動速度(例えばモータ11の回転速度)に対応する限りいかなるデータであってもよい。ここでの「対応」は、駆動速度の増減に応じて速度データが増減することを意味する。速度データの具体例としては、モータ11の回転速度の指令値、モータ11に供給される交流電力の周波数指令値等が挙げられる。速度データは、パルスジェネレータ等のセンサにより検出されるモータ11の回転速度の検出値であってもよい。
【0023】
力データは、圧送装置1の駆動力(例えばモータ11のトルク)に対応する限りいかなるデータであってもよい。ここでの「対応」は、駆動力の増減に応じて力データが増減する相関関係を意味する。力データの具体例としては、モータ11に供給される電流の検出値(例えば電流検出部114による検出値)が挙げられる。力データは、モータ11に供給される電流の指令値であってもよいし、力センサによるトルク検出値であってもよい。
【0024】
運転データ保持部122は、データ取得部121により取得された速度データ及び力データを時系列で記憶する。
【0025】
指標値導出部123は、運転データ保持部122が記憶する力データに基づいて、上記振幅指標値を導出する。上記振幅指標値は、力データの振動成分の振幅に対応していればいかなるデータであってもよい。ここでの「対応」は、振幅の増減に応じて振幅指標値が増減する相関関係を意味する。
【0026】
例えば指標値導出部123は、力データの取得時よりも所定期間前から当該取得時までの間に取得された複数の力データに基づき、力データの振動成分の振幅を振幅指標値として導出する。振幅は、負側のピークから正側のピークまでの幅であってもよいし、負側のピークから正側のピークまでの幅の半分であってもよい。振動成分は、圧送装置1の定常運転における力データの振動成分である。定常運転とは、圧送対象の液体(以下、単に「液体」という。)がポンプ20内に充填され、ポンプ20の駆動速度が目標速度に実質的に一致した運転状態を意味する。実質的に一致とは、駆動速度と目標速度との差異が無視可能な誤差範囲内であることを意味する。振幅は、例えば所定時間内の最大値と最小値の差から求めてもよいし、そのほか高速フーリエ変換(FFT)でも導出可能である。例えば指標値導出部123は、FFTにより所定の周波数成分の振幅を振幅指標値として導出してもよいし、所定帯域の周波数成分における振幅の平均値又は最大値等を振幅指標値として導出してもよい。
【0027】
指標値導出部123は、力データと、当該力データの取得時よりも所定期間前から当該取得時までの間に取得された過去の力データに基づく力データのトレンド値との差を振幅指標値として導出してもよい。例えば指標値導出部123は、運転データ保持部122内の最新の力データに対して、過去の力データを用いたローパス型のフィルタリングを施してトレンド値を算出する。
【0028】
ローパス型のフィルタリングの具体例としては、有限インパルス応答方式のフィルタリングが挙げられる。有限インパルス応答方式の一次フィルタリングを用いる場合、トレンド値は次式により導出される。
Y=A・X[k]+(1-A)・X[k-1]・・・(1)
Y:トレンド値
X[k]:最新の力データ
X[k-1]:一つ前に取得された力データ
A:フィルタ係数
【0029】
有限インパルス応答方式の二次フィルタリングを用いる場合、トレンド値は次式により導出される。
Y=A・X[k]+B・X[k-1]+(1-A-B)・X[k-2]・・・(2)
Y:トレンド値
X[k]:最新の力データ
X[k-1]:一つ前に取得された力データ
X[k-2]:二つ前に取得された力データ
A,B:フィルタ係数
【0030】
なお、指標値導出部123は、必ずしも最新の力データをトレンド値の算出に用いなくてもよく、過去の力データのみに基づいてトレンド値を算出してもよい。例えば、上記X[k]が、最新に対していくつか(例えば一つ)前に取得された力データであってもよい。
【0031】
閾値保持部124は、速度データと振幅指標値の閾値との関係を示すように予め設定された閾値ラインを記憶する。以下、振幅指標値の閾値を「振幅閾値」という。振幅閾値は、例えばその値を超えたら正常ではないと判断できる程度の大きさに設定された上限値である。閾値保持部124は、閾値ラインを当該ライン上に並ぶ点列のデータとして記憶していてもよいし、閾値ラインを関数として記憶していてもよい。
【0032】
図3は、閾値ラインを例示するグラフであり、横軸は速度データの大きさを示し、縦軸は振幅指標値の大きさを示している。ラインL21は、平常時における速度データと振幅指標値との関係を模式的に示している。平常時とは、装置の故障又は圧送対象の流体(例えば液体)不足等の異常が生じていない時、あるいは、軸受が劣化・損傷せず、または、回転軸の軸心がずれていない時等を意味する。以下、ラインL21を「平常ラインL21」という。ラインL11は閾値ラインを示している。図3の(a)に示すように、閾値ラインL11は、速度データの値ごとの振幅閾値が平常時における振幅指標値よりも大きくなるように設定されている。換言すると、閾値ラインL11は、平常ラインL21よりも高位に設定されている。
【0033】
また、図3に示すように、ラインL11は、速度データが大きくなるにつれて振幅閾値が大きくなるように設定されている。図3の(b)に示すように、閾値ラインL11は、速度データが大きくなるにつれて、振幅閾値と、平常時における振幅指標値との差が大きくなるように設定されていてもよい。換言すると、速度データが大きくなるにつれて、閾値ラインL11と平常ラインL21との間隔が大きくなっていてもよい。図3の(c)に示すように、閾値ラインは、速度データとの関係が曲線状となるように設定されていてもよい。
【0034】
閾値設定部125は、速度データに基づいて振幅閾値を設定する。閾値設定部125は、速度データが大きくなるにつれて振幅閾値を大きくする。閾値設定部125は、速度データが大きくなるにつれて、振幅閾値と、平常時における振幅指標値との差を大きくしてもよい。例えば閾値設定部125は、データ取得部121が取得した最新の速度データと、閾値保持部124が記憶する閾値ラインとに基づいて、当該最新の速度データに対応する振幅閾値を設定する。
【0035】
異常検出部126は、振幅指標値が閾値を超えるのに応じて圧送装置1の異常を検出する。ここでの異常検出は、あくまで振幅閾値が平常とは異なっていることを判定することを意味するに過ぎず、必ずしも実際の異常発生の検出を意味するわけではない。異常検出部126は、異常を検出したことを上位コントローラ300に報知してもよいし、電力変換装置100に設けられた表示部(例えば液晶モニタ又は警告灯等)に表示してもよい。
【0036】
電力変換装置100は、ユーザの入力に基づいて閾値ラインを設定することを更に実行するように構成されていてもよい。例えば電力変換装置100は、図2に示すように、入力データ取得部131と、入力データ保持部132と、ライン設定部133とを更に有してもよい。入力データ取得部131は、一つの速度データとこれに対応する振幅閾値との対応を示す入力データ(以下、「閾値入力データ」という。)を設定用コンピュータ200から取得する。入力データ取得部131は、互いに速度データの異なる複数(例えば三つ以上)の閾値入力データを取得するように構成されていてもよい。入力データ取得部131は、入力可能な速度データの範囲を制限するように構成されていてもよい。入力データ保持部132は、入力データ取得部131が取得した閾値入力データを記憶する。
【0037】
ライン設定部133は、入力データ取得部131により取得された複数の閾値入力データの間を補間するように閾値ラインを設定する。例えばライン設定部133は、複数の閾値入力データ同士の間を、線形関数、多項式関数、又はスプライン関数等により関数化してもよいし、これらの関数を用いて閾値入力データ同士の間に点列を補ってもよい。また、ライン設定部133は、複数の閾値入力データの範囲外を、線形関数、多項式関数、又はスプライン関数等により外挿してもよい。外挿とは、複数の閾値入力データの範囲内の関数を拡張して関数化するか、拡張した関数を用いて点列を補うことを意味する。
【0038】
電力変換装置100は、平常時における速度データと力データとに基づいて閾値ラインを設定することを更に実行するように構成されていてもよい。この場合、電力変換装置100は、モータ11にテスト運転用の電力を供給し、テスト運転中に取得された速度データと力データとに基づいて閾値ラインを設定するように構成されていてもよい。例えば電力変換装置100は、スキャン指令保持部141と、スキャン制御部142と、テストデータ保持部144と、ライン設定部145とを更に有する。
【0039】
スキャン指令保持部141は、閾値ラインを設定するための上記テスト運転用の速度指令を記憶する。速度指令は、複数の速度指令値を含んでいる。スキャン制御部142は、電力変換部111からモータ11にテスト運転用の電力を供給させる。例えばスキャン制御部142は、スキャン指令保持部141が記憶する速度指令に従ってモータ11を動作させるための電力を電力変換部111からモータ11に供給させる。テストデータ保持部144は、テスト運転中に取得された速度データと、テスト運転中に取得された力データに基づき指標値導出部123が導出した振幅指標値とを、上記複数の速度指令値ごとに記憶する。
【0040】
ライン設定部145は、平常時における速度データと力データとに基づいて閾値ラインを設定する。例えばライン設定部145は、平常時にテストデータ保持部144に保存された速度データと振幅指標値とに基づいて、平常時における速度データと振幅指標値との関係を示す基準ライン(例えば図3のラインL21)を導出し、基準ラインに基づいて閾値ラインを設定する。例えばライン設定部145は、基準ラインに所定のマージンを加算したラインを閾値ラインとする。ライン設定部145は、速度データが大きくなるにつれて上記マージンを大きくしてもよい。これにより、速度データが大きくなるにつれて、振幅閾値と、平常時における振幅指標値との差が大きくなる。
【0041】
図4は、電力変換装置100のハードウェア構成を例示するブロック図である。図4に示すように、電力変換装置100は、制御回路190と、スイッチング回路181と、電流センサ182とを有する。
【0042】
制御回路190は、一つ又は複数のプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、通信ポート195とを含む。ストレージ193は、例えば不揮発性の半導体メモリ等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、上述した電力変換装置100の各機能モジュールを構成するためのプログラムを記憶している。メモリ192は、ストレージ193の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ191による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行することで、電力変換装置100の各機能モジュールを構成する。入出力ポート194は、入力電源の端子台があるほか、プロセッサ191からの指令に従って、スイッチング回路181及び電流センサ182との間で電気信号の入出力を行う。通信ポート195は、プロセッサ191からの指令に従って、設定用コンピュータ200及び上位コントローラ300との間で情報通信を行う。
【0043】
なお、制御回路190は、必ずしもプログラムにより各機能を構成するものに限られない。例えば制御回路190は、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により少なくとも一部の機能を構成してもよい。
【0044】
スイッチング回路181は、制御回路190からの指令(例えば入出力ポート194からの電気信号)に従って動作し、上記電力変換部111として機能する。例えばスイッチング回路181は、入出力ポート194からの電気信号(例えばゲート信号)に従って複数のスイッチング素子のオン、オフを切り替えることにより、上記駆動電力をモータ11に出力する。スイッチング素子は、例えばパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等である。
【0045】
電流センサ182は、制御回路190からの指令(例えば入出力ポート194からの電気信号)に従って動作し、上述した電流検出部114として機能する。電流センサ182は、スイッチング回路181からモータ11への出力電流を検出する。
【0046】
〔制御方法〕
続いて、制御方法の一例として、電力変換装置100が実行する制御手順を例示する。この制御手順は、を含む。以下、この制御手順を、閾値ラインの設定手順と、運転状態監視手順とに分けて詳細に例示する。
【0047】
(閾値ラインの設定手順)
図5に示すように、電力変換装置100は、まずステップS01,S02,S03を実行する。ステップS01では、入力データ取得部131が、上記閾値入力データの取得用の画面(以下、「閾値入力画面」という。)を設定用コンピュータ200に表示させる。ステップS02では、入力データ取得部131が、閾値入力画面に入力された閾値入力データの登録指示を待機する。この登録指示は、例えば設定用コンピュータ200において、閾値入力画面のボタンの操作(例えばクリック又はタップ)により入力される。ステップS03では、入力データ取得部131が、閾値入力画面に入力された閾値入力データを設定用コンピュータ200から取得して入力データ保持部132に保存する。
【0048】
次に、電力変換装置100はステップS04を実行する。ステップS04では、閾値ラインの設定に必要な数の閾値入力データが取得されたか否かをライン設定部133が確認する。
【0049】
ステップS04において、閾値ラインの設定に必要な数の閾値入力データは取得されていないと判定した場合、電力変換装置100は処理をステップS01に戻す。以後、閾値ラインの設定に必要な数の閾値入力データが取得されるまで、入力データ取得部131による閾値入力データの取得が繰り返される。
【0050】
ステップS04において、閾値ラインの設定に必要な数の閾値入力データが取得されたと判定した場合、電力変換装置100はステップS05を実行する。ステップS05では、ライン設定部133が、入力データ取得部131により取得された複数の閾値入力データの間を補間するように閾値ラインを設定し、設定した閾値ラインを閾値保持部124に保存する。以上で閾値ラインの設定手順が完了する。
【0051】
(運転状態監視手順)
図6に示すように、電力変換装置100は、ステップS11,S12を実行する。ステップS11では、速度制御部112が、上位コントローラ300等からのモータ11の運転開始指令を待機する。ステップS12では、速度制御部112が、上位コントローラ300からの指令等に応じて電力変換部111を制御して、モータ11を起動させる。例えば速度制御部112は、電力変換部111からモータ11への駆動電力の出力を開始させる。以後、速度制御部112は、ポンプ20の駆動速度が目標速度に追従するように、電力変換部111に駆動電力を出力させる。
【0052】
次に、電力変換装置100は、ステップS13,S14を実行する。ステップS13では、データ取得部121が上記速度データと上記力データとを取得し、運転データ保持部122に保存する。ステップS14では、振幅指標値の導出に必要な数(以下、単に「必要数」という。)のデータが運転データ保持部122に蓄積されたか否かを指標値導出部123が確認する。運転データ保持部122に蓄積されたデータの数が必要数に達していないと判定した場合、電力変換装置100は処理をステップS13に戻す。以後、必要数のデータが運転データ保持部122に蓄積されるまでは、速度データ及び力データの取得と保存が繰り返される。
【0053】
ステップS14において、必要数のデータが運転データ保持部122に蓄積されたと判定した場合、電力変換装置100はステップS15,S16を実行する。ステップS15では、指標値導出部123が、運転データ保持部122に蓄積された力データに基づいて振幅指標値を導出する。ステップS16では、データ取得部121が取得した最新の速度データと、閾値保持部124が記憶する閾値ラインとに基づいて、当該最新の速度データに対応する振幅閾値を閾値設定部125が設定する。
【0054】
次に、電力変換装置100はステップS17を実行する。ステップS17では、異常検出部126が、ステップS15において導出された振幅指標値がステップS16において設定された振幅閾値を超えているか否かを確認する。振幅指標値が振幅閾値を超えていると判定した場合、電力変換装置100はステップS18を実行する。ステップS18では、異常検出部126が、異常を検出したことを上位コントローラ300に報知する。
【0055】
次に、電力変換装置100はステップS19を実行する。ステップS17において振幅指標値が振幅閾値を超えていないと判定した場合、電力変換装置100はステップS18を実行することなくステップS19を実行する。ステップS19では、上位コントローラ300等からのモータ11の停止指令があるか否かを速度制御部112が確認する。ステップS19において停止指令はないと判定した場合、電力変換装置100は処理をステップS13に戻す。以後、モータ11の停止指令があるまでは、圧送装置1の運転状態の監視が継続される。ステップS19において停止指令があると判定した場合、電力変換装置100はステップS21を実行する。ステップS21では、速度制御部112が電力変換部111にモータ11を停止させる。例えば速度制御部112は、電力変換部111からモータ11への駆動電力の出力を停止させる。以上で運転状態監視手順が完了する。
【0056】
(閾値ラインの設定手順の変形例)
続いて閾値ラインの設定手順の変形例を示す。図7に示すように、電力変換装置100は、まずステップS31,S32,S33を実行する。ステップS31では、スキャン制御部142が、上位コントローラ300等からのモータ11のテスト運転開始指令を待機する。ステップS32では、スキャン制御部142がモータ11の目標速度を初期速度に設定する。例えばスキャン制御部142は、スキャン指令保持部141が記憶する上記複数の速度指令値の最小値を目標速度とする。ステップS33では、スキャン制御部142が、モータ11の速度制御の開始を速度制御部112に要求する。速度制御部112は、電力変換部111からモータ11への駆動電力の出力を開始させる。以後、速度制御部112は、ポンプ20の駆動速度が目標速度に追従するように、電力変換部111に駆動電力を出力させる。
【0057】
次に、電力変換装置100は、上記必要数のデータが運転データ保持部122に蓄積されるまで、ステップS13,S14と同様のステップS34,S35を繰り返す。次に、電力変換装置100はステップS36を実行する。ステップS36では、指標値導出部123が、運転データ保持部122に蓄積された力データに基づいて振幅指標値を導出する。
【0058】
次に、電力変換装置100はステップS37を実行する。ステップS37では、所定のサンプリング期間が経過したか否かをスキャン制御部142が確認する。サンプリング期間は経過していないと判定した場合、電力変換装置100は処理をステップS34に戻す。以後、サンプリング期間が経過するまでは、一定の目標速度においてデータの取得と振幅指標値の導出とが繰り返される。
【0059】
次に、電力変換装置100はステップS38を実行する。ステップS38では、指標値導出部123が、サンプリング期間中に算出した振幅指標値の最大値と、速度データとを対応付けてテストデータ保持部144に保存する。
【0060】
次に、電力変換装置100はステップS39を実行する。ステップS39では、モータ11の目標速度が最終速度に達しているか否かをスキャン制御部142が確認する。最終速度は、例えばスキャン指令保持部141が記憶する上記複数の速度指令値の最大値である。モータ11の目標速度は最終速度に達していないと判定した場合、電力変換装置100はステップS41を実行する。ステップS41では、スキャン制御部142が目標速度を変更する。例えばスキャン制御部142は、現在目標速度とされている速度指令値の次に大きな速度指令値を次の目標速度とする。その後、電力変換装置100は処理をステップS34に戻す。以後、目標速度が最終速度に達したと判定されるまで、振幅指標値と速度データとが速度指令値ごとにテストデータ保持部144に保存される。
【0061】
ステップS41において、目標速度が最終速度に達していると判定した場合、電力変換装置100はステップS42,S43を実行する。ステップS42では、スキャン制御部142がモータ11の停止を速度制御部112に要求する。速度制御部112は、電力変換部111からモータ11への駆動電力の出力を停止させる。ステップS43では、ライン設定部145が、テストデータ保持部144に保存された速度データと振幅指標値とに基づいて上記基準ラインを導出し、基準ラインに基づいて閾値ラインを設定する。ライン設定部145は、設定した閾値ラインを閾値保持部124に保存する。以上で閾値ラインの設定が完了する。
【0062】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、電力変換装置100は、圧送装置1に電力を供給する電力変換部111と、圧送装置1の駆動速度に対応する速度データと、圧送装置1の駆動力に対応する力データとを取得するデータ取得部121と、力データの振動成分の振幅に対応する振幅指標値の閾値を設定する閾値設定部125と、振幅指標値が閾値を超えるのに応じて駆動対象の異常を検出する異常検出部126と、を備え、閾値設定部125は、速度データが大きくなるにつれて閾値を大きくする。
【0063】
この電力変換装置100によれば、力データの振動成分の振幅に基づいて異常が検出される。速度データと力データとの関係は、圧送装置1の設置環境等に応じて大きく変わり得る。これに対し、速度データと振動成分の振幅との関係には、圧送装置1の設置環境等によらない法則性を見出しやすい。例えば、平常時においては、速度データが大きくなるにつれて振動成分の振幅が大きくなる傾向がある。これに応じ、閾値設定部125は、速度データが大きくなるにつれて振幅閾値を大きくする。これにより、高速域における異常の誤検出を抑制しつつ、低速域における異常の検出感度を高めることができる。このように、設置環境等によらない汎用的なロジックが予め組み込まれることによって、設置環境等に応じた個別の設定作業を削減することができる。従って、異常検出機能を容易に構築可能である。
【0064】
閾値設定部125は、速度データが大きくなるにつれて、閾値と、平常時における振幅指標値との差を大きくしてもよい。この場合、高速域における異常の誤検出抑制と、低速域における検出感度向上との両立をより確実に図ることができる。
【0065】
電力変換装置100は、速度データと閾値との関係を示すように予め設定された閾値ラインを記憶する閾値保持部124を更に備え、閾値設定部125は、速度データと閾値ラインL11とに基づいて閾値を設定してもよい。この場合、閾値ラインに基づくことによって、小さな演算負荷で迅速に振幅閾値を設定することができる。
【0066】
電力変換装置100は、平常時における速度データと力データとに基づいて閾値ラインL11を設定するライン設定部145を更に備えていてもよい。この場合、閾値ラインL11の設定も電力変換装置100により実行される。このため、異常検出機能を更に容易に構築可能である。
【0067】
ライン設定部145は、平常時における速度データと力データとに基づいて、平常時における速度データと振幅指標値との関係を示す基準ラインL21を導出し、基準ラインL21に基づいて閾値ラインL11を設定してもよい。この場合、各速度域において、異常の誤検出抑制と、検出感度向上との両立をより確実に図ることができる。
【0068】
電力変換装置100は、電力変換部111から駆動対象にテスト運転用の電力を供給させるスキャン制御部142を更に備え、ライン設定部145は、テスト運転中に取得された速度データ及び力データに基づいて閾値ラインL11を設定してもよい。この場合、閾値ラインL11の設定用に予め設定されたテスト運転が電力変換装置100によって自動実行される。このため、異常検出機能を更に容易に構築可能である。
【0069】
電力変換装置100は、力データの取得時よりも所定期間前から当該取得時までの間に取得された複数の力データに基づき振動成分の振幅を振幅指標値として導出する指標値導出部123を更に備えていてもよい。この場合、振幅自体を導出した上で振幅閾値との関係が確認される。従って、駆動対象の異常をより高い信頼性で検出可能である。
【0070】
電力変換装置100は、力データと、当該力データの取得時よりも所定期間前から当該取得時までの間に取得された過去の力データに基づく力データのトレンド値との差を振幅指標値として導出する指標値導出部123を更に備えていてもよい。この場合、異常が突発した状況等においても、駆動対象の異常を迅速に検出し得る。
【0071】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。上述の実施形態においては、電力変換部111が圧送装置1に供給する電力に基づいて、圧送装置1の駆動力に対応する力データを取得することと、力データの振動成分の振幅に対応する振幅指標値の閾値を設定することと、振幅指標値が閾値を超えるのに応じて圧送装置1の異常を検出することと、を含み、圧送装置1の駆動速度が大きくなるにつれて閾値を大きくする診断手順を実行する診断装置が、圧送装置1の電力変換装置100に組み込まれた構成を例示したが、診断装置は圧送装置1の外部に設けられていてもよい。例えば、図8に示す診断装置400は、圧送装置1の外部に構成されており、データ取得部121と、運転データ保持部122と、指標値導出部123と、閾値保持部124と、閾値設定部125と、異常検出部126と、入力データ取得部131と、入力データ保持部132と、ライン設定部133と、スキャン指令保持部141と、スキャン制御部142と、テストデータ保持部144とを有する。診断装置は上位コントローラ300に組み込まれていてもよい。また、電動式の駆動対象は圧送装置1に限られない。電動式の駆動対象は、ファン及び撹拌機等、電動式のモータを動力源とするものであればよい。また、モータ自体が電動式の駆動対象であってもよい。この場合、モータ自体の軸受の劣化・損傷等の異常検出が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…圧送装置(電動式の駆動対象)、13…電装保持部、20…ポンプ、100…電力変換装置、111…電力変換部、121…データ取得部、123…指標値導出部、124…閾値保持部、125…閾値設定部、126…異常検出部、145…ライン設定部、142…スキャン制御部、400…診断装置、L11…閾値ライン、L21…平常ライン(基準ライン)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8