(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】被覆切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/14 20060101AFI20220301BHJP
B23C 5/16 20060101ALI20220301BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B23B27/14 A
B23C5/16
C23C14/06 P
C23C14/06 H
(21)【出願番号】P 2021518359
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2020017962
(87)【国際公開番号】W WO2020226088
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2019089303
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233066
【氏名又は名称】株式会社MOLDINO
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】伊坂 正和
(72)【発明者】
【氏名】府玻 亮太郎
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-233260(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013645(WO,A1)
【文献】特開2011-011286(JP,A)
【文献】特開2016-124086(JP,A)
【文献】特開2009-101491(JP,A)
【文献】特開2011-025405(JP,A)
【文献】特開2013-233652(JP,A)
【文献】特開2014-076500(JP,A)
【文献】特開2015-037834(JP,A)
【文献】特開2017-159445(JP,A)
【文献】特開2019-025591(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090540(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/221355(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/150411(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/14
B23B 51/00
B23C 5/16
C23C 14/06
C23C 16/34
C23C 16/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成される硬質皮膜とを備え、
前記硬質皮膜は、
前記基材の上に配置される、窒化物または炭窒化物からなるb層と、
前記b層の上に配置され、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、アルミニウム(Al)を55原子%以上、次いでクロム(Cr)の含有比率が多く、更に、少なくともホウ素(B)を含有する窒化物または炭窒化物のc1層と、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、アルミニウム(Al)を55原子%以上、次いでチタン(Ti)を多く含有する窒化物または炭窒化物のc2層と、がそれぞれ50nm以下の膜厚で交互に積層した積層皮膜であるc層と、
を有し、
前記c層は、透過型電子顕微鏡の制限視野回折パターンから求められる強度プロファイルにおいて、六方最密充填構造のAlNの(010)面に起因するピーク強度をIhとし、面心立方格子構造の、AlNの(111)面、TiNの(111)面、CrNの(111)面、AlNの(200)面、TiNの(200)面、CrNの(200)面、AlNの(220)面、TiNの(220)面、およびCrNの(220)面に起因するピーク強度と、六方最密充填構造の、AlNの(010)面、AlNの(011)面、およびAlNの(110)面に起因するピーク強度と、の合計をIsとした場合、Ih×100/Is≦15の関係を満たすことを特徴とする被覆切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆切削工具に関する。
本願は、2019年5月9日に、日本に出願された特願2019-089303号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、切削工具の寿命を向上させる技術として、各種セラミックスからなる硬質皮膜を切削工具の表面に被覆する表面処理技術が採用されている。硬質皮膜の中でもAlとCrを主体とする窒化物は耐熱性に優れる膜種であり被覆切削工具に広く適用されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、AlとCrの窒化物にBとW、Mo、Ta、Nbの少なくとも1種を添加した硬質被膜を設けた被覆切削工具を開示している。また、特許文献2は、AlCrBの窒化物とTiAlの窒化物を交互積層した硬質皮膜を設けた被覆切削工具を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2010-504439号公報
【文献】特表2013-518987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によると、従来から提案されているAlCr系の窒化物を設けた被覆切削工具について、耐久性に改善の余地があることを確認した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
基材と、前記基材上に形成される硬質皮膜とを備え、
前記硬質皮膜は、前記基材の上に配置される、窒化物または炭窒化物からなるb層と、
前記b層の上に配置され、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、アルミニウム(Al)を55原子%以上、次いでクロム(Cr)の含有比率が多く、更に、少なくともホウ素(B)を含有する窒化物または炭窒化物のc1層と、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、アルミニウム(Al)を55原子%以上、次いでチタン(Ti)を多く含有する窒化物または炭窒化物のc2層と、がそれぞれ50nm以下の膜厚で交互に積層した積層皮膜であるc層と、
を有し、
前記c層は、透過型電子顕微鏡の制限視野回折パターンから求められる強度プロファイルにおいて、六方最密充填構造のAlNの(010)面に起因するピーク強度をIhとし、面心立方格子構造の、AlNの(111)面、TiNの(111)面、CrNの(111)面、AlNの(200)面、TiNの(200)面、CrNの(200)面、AlNの(220)面、TiNの(220)面、およびCrNの(220)面に起因するピーク強度と、六方最密充填構造の、AlNの(010)面、AlNの(011)面、およびAlNの(110)面に起因するピーク強度と、の合計をIsとした場合、Ih×100/Is≦15の関係を満たす被覆切削工具である。
【0007】
また、c層の上にTiとSiを含有する窒化物または炭窒化物を有する構成としてもよい。また、c層の上にAlCr系の窒化物または炭窒化物、あるいは、AlTi系の窒化物または炭窒化物を有する構成としてもよい。
また、前記硬質皮膜の総膜厚に対して、前記c層が最も厚い膜であることが好ましい。
また、前記c層は、柱状粒子から構成されており、前記柱状粒子の平均幅は90nm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐久性に優れる被覆切削工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の被覆切削工具の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者は、AlCrB系の窒化物または炭窒化物を設けた被覆切削工具について、工具寿命を改善する手法について検討した。本発明者は、AlリッチなAlCr系の窒化物または炭窒化物(以下、AlCrN系と記載する場合がある。)とAlリッチなAlTi系の窒化物または炭窒化物(以下、AlTiN系と記載する場合がある。)とがナノレベルで交互に積層した積層皮膜を設けて、更にその積層皮膜のミクロ組織に含有されるhcp構造のAlNを低減させることで、被覆切削工具がより優れた耐久性を示すことを見出して、本発明に到達した。以下、本実施形態の詳細について説明する。
【0011】
本実施形態の被覆切削工具は、例えば、
図1に示す断面構造を有する。本実施形態の被覆切削工具は、基材と、基材上に形成される硬質皮膜とを有する。硬質皮膜は、基材側から順に、必要に応じて設けられるa層と、窒化物または炭窒化物からなるb層と、積層皮膜からなるc層と、必要に応じて設けられる上層のd層と、を有する。以下、各層について詳細に説明する。
【0012】
≪基材≫
本実施形態の被覆切削工具においては、基材は特段限定されないが、強度と靭性に優れるWC-Co基超硬合金を基材とすることが好ましい。
【0013】
≪b層≫
本実施形態に係るb層は、基材の上に配置される窒化物または炭窒化物である。b層は、基材と積層皮膜であるc層との密着性を高める下地層である。基材の上に配置されるb層が窒化物または炭窒化物であることで、基材と硬質皮膜の密着性が優れる被覆切削工具となる。b層は、金属(半金属を含む。以下、同様。)元素の総量に対して、Alを55原子%以上で含有することが好ましい。更には、b層のAlは60原子%以上が好ましい。b層をAlリッチとすることで、後述するAlリッチの積層皮膜からなるc層との組成差が小さくなり密着性が向上する。また、b層をAlリッチとすることで、硬質皮膜の全体で耐熱性が高まる。更には、b層は、耐熱性と耐摩耗性に優れる窒化物であることが好ましい。但し、b層のAlの含有比率が大きくなり過ぎると脆弱なhcp構造のAlNが多くなる。そのため、b層のAlは75原子%以下が好ましい。また、積層皮膜であるc層との密着性をより高めるため、b層は後述するc1層またはc2層が含有する金属元素を含有することが好ましい。また、b層は、X線回折または透過型電子顕微鏡の制限視野回折パターンから求められる強度プロファイルにおいて、fcc構造に起因するピーク強度が最大を示すことが好ましい。これにより、b層の上に設けられるAlリッチの積層皮膜であるc層において、c層のミクロ組織に含有される脆弱なhcp構造のAlNが低減されることにより、被覆切削工具の耐久性が向上する。b層は窒化物または炭窒化物であれば、組成が異なる複数の層から構成されてもよい。
【0014】
b層の膜厚が薄くなり過ぎると、基材またはc層との密着性が低下し易くなる。一方、b層の膜厚が厚くなり過ぎるとチッピングが発生し易くなる。被覆切削工具がより優れた耐久性を実現するには、b層の膜厚は0.1μm以上5.0μm以下が好ましい。更には、b層の膜厚は0.2μm以上が好ましい。更には、b層の膜厚は3.0μm以下が好ましい。b層の膜厚の上限値および下限値は適宜組合せ可能である。
【0015】
≪c層≫
本実施形態に係るc層は、上述した下地層であるb層と、後述するd層との間に設けられるAlリッチな積層皮膜である。
具体的には、c層は、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、アルミニウム(Al)を55原子%以上、次いでクロム(Cr)の含有比率が多く、更に、少なくともホウ素(B)を含有する窒化物または炭窒化物のc1層と、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、アルミニウム(Al)を55原子%以上、次いでチタン(Ti)を多く含有する窒化物または炭窒化物のc2層と、がそれぞれ50nm以下の膜厚で交互に積層した積層皮膜である。
更には、c層は、金属元素の総量に対して、アルミニウム(Al)を55原子%以上、クロム(Cr)を20原子%以上、ホウ素(B)を1原子%以上、を含有する窒化物または炭窒化物のc1層と、金属部分の総量に対して、アルミニウム(Al)を55原子%以上、チタン(Ti)を20原子%以上、を含有する窒化物または炭窒化物のc2層とが50nm以下の膜厚で交互に積層した積層皮膜であることが好ましい。組成系が互いに異なるAlリッチなAlCrN系の硬質皮膜とAlリッチなAlTiN系の硬質皮膜とがナノレベルで交互に積層されることで、皮膜破壊の進展が抑制され易くなる。また、c層中にhcp構造のAlNを含有し難くなり、硬質皮膜の全体で耐熱性が高まり被覆切削工具の耐久性が向上する。
c層の平均組成は、Alの含有比率が55原子%以上75原子%以下であることが好ましく、Alの含有比率が73原子%以下であることがより好ましい。更には、c層の平均組成は、Alの含有比率が60原子%以上70原子%以下であることが好ましい。また、c層の平均組成は、CrとTiの合計の含有率が20原子%以上40原子%以下であることが好ましい。また、c層の平均組成は、Bの含有比率が0.5原子%以上5原子%以下であることが好ましい。更には、c層の平均組成は、Bの含有比率が1原子%以上3原子%以下であることが好ましい。なお、c層の平均組成は、500nm×500nm以上の範囲を測定して算出すればよい。
更には、c層はミクロ組織に含有されるhcp構造のAlNが少ないことが必要である。本発明者は、c層の評価においてX線回折ではhcp構造のAlNのピーク強度が確認されない場合でも、ミクロ組織には脆弱なhcp構造のAlNを含有する場合があることを知見した。そして、本発明者は、c層のミクロ組織に含まれる脆弱なhcp構造のAlNを低減することで、被覆切削工具の耐久性が向上することを確認した。
【0016】
硬質皮膜のミクロ組織に存在するhcp構造のAlNの量を定量的に評価するには、硬質皮膜の加工断面について、透過型電子顕微鏡を用いて制限視野回折パターンを求め、制限視野回折パターンから求められる強度プロファイルを用いる。具体的には、透過型電子顕微鏡の制限視野回折パターンの強度プロファイルにおいて、Ih×100/Isの関係を評価する。IhおよびIsは以下のように定義される。
【0017】
Ih:hcp構造のAlNの(010)面に起因するピーク強度。
Is:fcc構造の、AlNの(111)面、TiNの(111)面、CrNの(111)面、AlNの(200)面、TiNの(200)面、CrNの(200)面、AlNの(220)面、TiNの(220)面、およびCrNの(220)面に起因するピーク強度と、hcp構造の、AlNの(010)面、AlNの(011)面、およびAlNの(110)面に起因するピーク強度と、の合計。
【0018】
上記IhとIsの関係を評価することで、X線回折によりhcp構造のAlNに起因するピーク強度が確認されない硬質皮膜において、ミクロ組織に含まれるhcp構造のAlNを定量的に評価することができる。Ih×100/Isの値がより小さいことは、c層のミクロ組織に存在する脆弱なhcp構造のAlNがより少ないことを意味する。本発明者は、c層におけるIh×100/Isの値が15よりも大きい場合、過酷な使用環境下においては被覆切削工具の耐久性が低下し易くなることを確認した。本実施形態においては、c層がIh×100/Is≦15を満たす構成とすることで、良好な耐久性を有する被覆切削工具を実現した。更には、本実施形態の被覆切削工具は、c層がIh×100/Is≦10を満たす構成であることが好ましい。更には、本実施形態の被覆切削工具は、c層がIh×100/Is≦5を満たす構成であることが好ましい。更には、本実施形態の被覆切削工具は、c層においてhcp構造のAlNの(010)面に起因するピーク強度が確認されない構成、すなわち、c層がIh×100/Is=0を満たす構成であることが好ましい。なお、制限視野回折パターンにおいて、hcp構造のAlNの回折パターンが確認される場合でも、その量が微量であれば、強度プロファイルにはピークが現れずIh×100/Isの値は0になる場合がある。c層の制限視野回折パターンにおいて、hcp構造のAlNが確認されないことが、被覆切削工具の耐久性をより高めるために好ましい。
【0019】
≪c1層≫
c1層は、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、アルミニウム(Al)を55原子%以上、次いでクロム(Cr)の含有比率が多く、更に、少なくともホウ素(B)を含有する窒化物または炭窒化物である。更には、c1層は、金属元素の総量に対して、アルミニウム(Al)を55原子%以上、クロム(Cr)を20原子%以上、ホウ素(B)を1原子%以上、を含有する窒化物または炭窒化物であることが好ましい。
AlとCrをベースとする窒化物または炭窒化物は耐熱性に優れる膜種である。特にAlの含有比率が大きくなると硬質皮膜の耐熱性が向上する傾向にあり、被覆切削工具の耐久性が向上する。更には、c1層は、耐熱性と耐摩耗性に優れる窒化物であることが好ましい。硬質皮膜に高い耐熱性を付与するために、c1層はAlを55原子%以上で含有する。更にはc1層のAl含有比率は60原子%以上が好ましい。但し、Alの含有比率が大きくなり過ぎると、ミクロ組織に含有される脆弱なhcp構造のAlNが多くなるため、硬質皮膜の耐久性が低下する。そのため、c1層のAl含有比率は75原子%以下、あるいは73原子%以下、更には70原子%以下が好ましい。
【0020】
AlとCrをベースとする窒化物または炭窒化物は、Crの含有比率が小さくなり過ぎると耐摩耗性が低下する。硬質皮膜に高い耐摩耗性を付与するために、c1層はCrを20原子%以上で含有することが好ましい。c1層はAlCr系の窒化物または炭窒化物とするために、Alに次いでCrを多く含有する。但し、c1層においてCrの含有比率が大きくなり過ぎると、相対的にAlの含有比率が低下するため、耐熱性が低下する。そのため、c1層のCr含有比率は40原子%以下、更には35原子%以下が好ましい。
【0021】
c1層は、積層皮膜の耐熱性と耐摩耗性をより高めるために、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、AlとCrの含有比率の合計が85原子%以上であることが好ましい。
【0022】
AlとCrの窒化物または炭窒化物はB元素を含有することで、皮膜組織が微細となり耐摩耗性がより向上する。また、皮膜中にBNが形成され、潤滑性が向上する。そのため、c1層がBを含有することで、積層皮膜の全体の耐摩耗性と潤滑性が向上する。Bの添加効果を十分に奏するには、c1層はBを1原子%以上で含有することが好ましい。但し、Bの含有比率が大きくなり過ぎると、ミクロ組織に含まれるhcp構造のAlNや非晶質相が増加するため耐久性が低下する。そのため、c1層のB含有比率は5原子%以下、更には3原子%以下が好ましい。
【0023】
c1層とc2層はナノレベルで交互に積層しているため、被覆時に互いの組成が混ざる。また、互いの組成が拡散し得る。そのため、c1層にはc2層に必須で含まれるTiを含有し得る。但し、組成系が異なるAlリッチなAlCrN系の硬質皮膜とAlリッチなAlTiN系の硬質皮膜を積層させるために、c1層のTiの含有比率はc2層のTiの含有比率よりも少なくする。
【0024】
c1層はAlとCrとB以外の金属元素を含有することができる。c1層は、例えば、硬質皮膜の耐摩耗性や耐熱性や潤滑性などの向上を目的として、周期律表の4a族、5a族、6a族の元素およびSi、Yから選択される1種または2種以上の元素を含有することができる。これらの元素は、硬質皮膜の特性を改善するために、AlTiN系やAlCrN系の硬質皮膜には一般的に添加されている元素であり、含有比率が過多にならなければ被覆切削工具の耐久性を著しく低下させることはない。
但し、c1層がAlとCrとB以外の金属元素を多く含有するとAlCrN系の硬質皮膜としての基礎特性が損なわれ被覆切削工具の耐久性が低下する。そのため、c1層はAlとCrとB以外の金属元素の合計が、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、25原子%以下、更には20原子%以下、更には15原子%以下であることが好ましい。
【0025】
≪c2層≫
c2層は、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、アルミニウム(Al)を55原子%以上、次いでチタン(Ti)を多く含有する窒化物または炭窒化物である。更には、c2層は、金属元素の総量に対して、アルミニウム(Al)を55原子%以上、チタン(Ti)を20原子%以上、で含有する窒化物または炭窒化物であることが好ましい。AlとTiを主体とする窒化物または炭窒化物は、耐摩耗性および耐熱性に優れる膜種である。特に、Alの含有比率が大きくなると硬質皮膜の耐熱性が向上する傾向にあり、被覆切削工具の耐久性が向上する。更には、耐熱性と耐摩耗性に優れる窒化物であることが好ましい。硬質皮膜に高い耐熱性を付与するために、c2層はAlを55原子%以上で含有する。更にはc2層のAlは60原子%以上が好ましい。但し、Alの含有比率が大きくなり過ぎると、hcp構造のAlNが多くなるため、硬質皮膜の耐久性が低下する。そのため、c2層のAlの含有比率は75原子%以下、あるいは73原子%以下、更には70原子%以下が好ましい。
【0026】
AlとTiをベースとする窒化物または炭窒化物はTiの含有比率が小さくなり過ぎると耐摩耗性が低下する。そのため、c2層はTiを20原子%以上で含有することが好ましい。c2層はAlTi系の窒化物または炭窒化物とするために、Alに次いでTiを多く含有する。但し、Tiの含有比率が大きくなり過ぎると、相対的にAlの含有比率が低下するため、耐熱性が低下する。そのため、c2層のTiの含有比率は40原子%以下、更には35原子%以下が好ましい。
【0027】
c2層は、積層皮膜の耐熱性と耐摩耗性をより高めるために、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、AlとTiの含有比率の合計が80原子%以上であることが好ましい。
【0028】
c1層とc2層はナノレベルで交互に積層しているため、被覆時に互いの組成が混ざる。また、互いの組成が拡散し得る。そのため、c2層はc1層に必須で含まれるCrとBを含有し得る。但し、組成系が異なるAlリッチなAlCrN系の硬質皮膜とAlリッチなAlTiN系の硬質皮膜を積層させるために、c2層のCrの含有比率はc2層のCr含有比率よりも少なくする。なお、c1層において含有比率が小さいBはc2層には含有されない場合もある。
【0029】
c2層は、AlとTiと以外の金属元素を含有することができる。c2層は、例えば、硬質皮膜の耐摩耗性や耐熱性や潤滑性などの向上を目的として、周期律表の4a族、5a族、6a族の元素およびSi、B、Yから選択される1種または2種以上の元素を含有することができる。これらの元素は、硬質皮膜の特性を改善するために、AlTiN系やAlCrN系の硬質皮膜には一般的に添加されている元素であり、含有比率が過多にならなければ被覆切削工具の耐久性を著しく低下させることはない。特にAlTiN系の硬質皮膜がW(タングステン)の元素を含有することで、より過酷な使用環境下において耐久性が優れる傾向にあり好ましい。
但し、c2層がAlとTi以外の金属元素を多く含有すると、AlTiN系の硬質皮膜としての基礎特性が損なわれ被覆切削工具の耐久性が低下する。そのため、c2層はAlとTi以外の金属元素の合計が、金属(半金属を含む)元素の総量に対して、25原子%以下、更には20原子%以下、更には15原子%以下であることが好ましい。
【0030】
下地層であるb層と、積層皮膜であるc層との密着性をより高めるためには、c層のb層側の部分では、b層と同一組成系の硬質皮膜がより厚い膜であることが好ましい。具体的には、b層がAlTiN系の硬質皮膜であれば、c層のb層側の部分では、c1層の方がc2層よりも厚膜であることが好ましい。また、b層がAlCrN系の硬質皮膜であれば、c層のb層側の部分では、c2層の方がc1層よりも厚い膜であることが好ましい。
このような皮膜構造とすることで、下地層であるb層と積層皮膜であるc層との密着性が高まる傾向になり、工具形状や使用環境によっては、被覆切削工具の耐久性がより向上する場合もある。
【0031】
本実施形態では、硬質皮膜の総膜厚に対して、c層を最も厚い膜とすることが好ましい。c層が硬質皮膜の主層であることで、密着性および耐摩耗性が高いレベルで両立されて被覆切削工具の耐久性が向上する。
各層の最適な膜厚は、工具の種類、工具径および被削材等により異なるが、何れもc層が最も厚い膜となることで優れた耐久性を実現し易い。そして、b層、c層、d層の合計の膜厚を100%とした場合、c層の膜厚比が50%以上、更には60%以上、更には70%以上が好ましい。但し、c層の膜厚比が大きくなり過ぎると、b層とd層の膜厚が小さくなるため、密着性や耐摩耗性が低下する。そのため、c層の膜厚比は90%以下、更には85%以下が好ましい。
b層の膜厚比は5%以上が好ましい。d層の膜厚比は10%以上が好ましい。
【0032】
積層皮膜の密着性を高めるためには、c1層とc2層のそれぞれの膜厚は20nm以下が好ましい。また、c1層およびc2層の個々の膜厚が小さ過ぎると、組成系が異なる積層皮膜を形成することが困難になるため、c1層とc2層のそれぞれの膜厚は2nm以上が好ましい。更にはc1層とc2層のそれぞれの膜厚は5nm以上が好ましい。c1層およびc2層の膜厚の上限値および下限値は適宜組合せ可能である。
【0033】
≪d層≫
本実施形態では、積層皮膜であるc層の上層に、必要に応じて、保護皮膜としてd層を設けてもよい。例えば、d層として、耐摩耗性に優れる膜種であるTiとSiを含有する窒化物または炭窒化物を設けても良い。また、d層として、AlCr系やAlTi系の窒化物または炭窒化物を設けても良い。また、d層として、TiSi系、AlCr系およびAlTi系以外の組成系の窒化物や炭窒化物を設けても良い。また、d層として、窒化物や炭窒化物以外の金属、炭化物あるいはホウ化物等を設けても良い。
【0034】
本実施例に係る硬質皮膜のb層、c層、d層は、耐熱性と耐摩耗性に優れる窒化物であることが好ましい。硬質皮膜の全体が窒化物であることで、被覆切削工具の耐久性がより向上する。なお、一般的に、窒化物であっても微小の酸素と炭素を含有する。つまり、金属窒化物は、ミクロ解析において、金属元素と酸素や炭素が結合しているピーク強度を有する。本実施形態に係る硬質皮膜は、窒化物が主体であれば、一部に炭窒化物や酸窒化物を含有してもよい。上述した組成および皮膜構造を満たす範囲であれば、硬質皮膜を構成する窒化物の一部に炭窒化物や酸窒化物が含まれても、被覆切削工具の耐久性を著しく低下させることはない。なお、本実施形態に係る硬質皮膜を、炭窒化物とする場合にも、硬質皮膜の耐熱性と耐摩耗性をより高めるために、炭素よりも窒素の含有比率が大きいことが好ましい。炭窒化物とする場合でも、窒素の含有比率に対して、炭素の含有比率を20原子%以下とすることが好ましく、更には10原子%以下とすることが好ましい。
【0035】
≪a層≫
本実施形態では、必要に応じて、基材と下地層であるb層との間に、ナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされるa層を有してもよい。a層は金属イオンボンバードにより基材の表面に形成される。a層は金属イオンボンバードに用いた金属元素が拡散して形成される層であるため、WC-Co基超硬合金を基材とする場合、金属元素の総量でW(タングステン)を最も多く含有しており、次いで金属イオンボンバードに用いた金属元素を含有する。このようなa層を有することで、基材とその上に設ける下地層との密着性が著しく改善する傾向にある。
但し、工具径が小さくなると、刃先が鋭角になり易いスクエアエンドミルやラジアスエンドミルにおいては、金属イオンボンバードにより、刃先が溶損する場合があり、刃先稜線が破壊され易くなる。そのため、a層は、金属イオンボンバードにより刃先稜線が破壊され難い、鋭角な刃先が形成されないボールエンドミルに設けることが好ましい。a層の膜厚が薄すぎる場合や、厚すぎる場合には密着性の改善効果が得られない。そのため、a層の膜厚は1nm以上10nm以下が好ましい。
【0036】
a層はナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされる層であるため、主に炭化物から構成される。a層はナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされる層であれば、一部に、窒素や酸素を含有してもよい。また、a層は、一部に金属層やfcc構造の結晶相を含有する場合もある。特に、金属TiやTiを主体とする合金ターゲットを用いたボンバード処理は密着性の改善効果が大きい。そのため、a層は金属元素の含有比率で、WについでTiを多く含有することが好ましい。但し、a層に含有されるTiの含有比率が多くなり過ぎたり、少なくなり過ぎると密着性の向上効果が得られ難い。
a層はTiを10原子%以上30原子%以下で含有することが好ましい。
【0037】
以上に説明した本実施形態の被覆切削工具によれば、AlCr系の硬質皮膜からなるc1層とAlTi系の硬質皮膜からなるc2層との積層皮膜であり、かつhcp構造のAlNの含有量が低減されたc層を設けたことで、従来のAlCr系の硬質皮膜に対して、耐熱性と耐摩耗性を向上させることができる。さらに、Bを含有するc1層を備えることで、硬質皮膜の潤滑性を向上させることができる。したがって本実施形態によれば、耐久性に優れる被覆切削工具が提供される。
【0038】
≪製造方法≫
本実施形態に係る硬質皮膜は、ターゲットのイオン化率が高いアークイオンプレーティング法で被覆することが好ましい。また、ターゲットのイオン化率が高い高出力スパッタリング法で被覆してもよい。そして、Alリッチの積層皮膜について、結晶性を高めてミクロ組織に含有されるhcp構造のAlNを低減するために、ターゲット中心付近の垂直方向における磁束密度が10mT以上のカソードを用いることが好ましい。
【0039】
また、AlCr系の硬質皮膜を形成するためのカソードでは、カソード電圧が20V以上35V以下の範囲で成膜することが好ましい。カソード電圧が低すぎると、積層皮膜はhcp構造のAlNが多くなり耐久性が低下する。また、カソード電圧が高くなり過ぎると、積層皮膜の皮膜組織が粗大になり過ぎて耐久性が低下し易くなる。
【0040】
AlTi系の硬質皮膜を形成するためのカソードでは、カソード電圧が20V以上30V以下の範囲で成膜することが好ましい。カソード電圧が低くなり過ぎると、積層皮膜はhcp構造のAlNが多くなり耐久性が低下する。また、カソード電圧が高くなり過ぎると、積層皮膜の皮膜組織が粗大になり過ぎて耐久性が低下し易くなる。カソード電流はそれぞれ120A以上200A以下が好ましい。
【0041】
本実施形態の製造方法では、ターゲット中心付近の垂直方向における磁束密度とカソード電圧を上述した範囲になる成膜装置を選定した上で、基材に印加する負のバイアス電圧の絶対値を大きくすることが好ましい。この製造方法によれば、ミクロ組織においてhcp構造のAlNの生成が抑制される。これにより、c層におけるIh×100/Isの値を15よりも小さくすることができる。
【0042】
基材に印加する負のバイアス電圧は-200V以上-100V未満が好ましい。更には、-120V以下が好ましい。バイアス電圧の絶対値が大きくなり過ぎると、成膜が安定し難く膜厚を調整することが困難となる。また、バイアス電圧の絶対値が小さくなり過ぎると、積層皮膜はhcp構造のAlNが多くなり耐久性が低下する。被覆温度は400℃以上600℃以下が好ましい。窒化物を被覆する場合、炉内に窒素ガスを導入して被覆する。また、被覆時の窒素ガス圧力は2.0Pa以上8.0Pa以下が好ましい。炭窒化物を被覆する場合には、窒素ガスの一部をメタンガスに置換すればよい。
【実施例】
【0043】
<成膜装置>
成膜には、アークイオンプレーティング法を利用した成膜装置を用いた。この成膜装置は、複数のカソード(アーク蒸発源)、真空容器、および基材回転機構を備えている。カソードとしては、ターゲットの外周にコイル磁石が配備されたカソードを1基(以下、「C1」という。)と、ターゲットの背面および外周に永久磁石が配備され、ターゲット表面に垂直方向の磁束密度を有し、ターゲット中央付近における垂直方向の磁束密度が14mTであるカソードを3基(以下、「C2、C3、C4」という。)と、が搭載されている。
C1~C4は基材が配置される領域の周囲に約90°間隔に配置されており、C1とC4、C2とC3とが対向するように設けられている。
【0044】
真空容器は、内部が真空ポンプにより排気され、ガスが供給ポートより導入されるようになっている。真空容器内に設置された各基材には、バイアス電源が接続され、各基材に対してそれぞれ独立に負のDCバイアス電圧を印加することができる。
【0045】
基材回転機構は、プラネタリーと、プラネタリー上に配置されたプレート状治具と、プレート状治具上に配置されたパイプ状治具と、を備え、プラネタリーは毎分3回転の速さで回転し、プレート状治具およびパイプ状治具はそれぞれ自公転するようになっている。
【0046】
実施例では、以下のボールエンドミルを基材に用いた。
組成:WC(bal.)-Co(8質量%)-Cr(0.5質量%)-V(0.3質量%)
硬度:94.0HRA
刃径:1mm、刃数:2枚
【0047】
C1に金属チタンターゲット、C2にAlTi系合金ターゲット、C3にAlCrB系合金ターゲット、C4にAlCrB系合金ターゲットを設置した。表1に使用したターゲット組成を示す。
【0048】
【0049】
各基材をそれぞれ真空容器内のパイプ状冶具に固定し、成膜前に以下のプロセスを実施した。まず、真空容器内を5×10-2Pa以下に真空排気した。その後、真空容器内に設置したヒーターにより、基材を温度500℃まで加熱し、真空排気を行った。そして、基材の設定温度を500℃とし、真空容器内の圧力を5×10-2Pa以下とした。
【0050】
<Arボンバード>
その後、真空容器内にArガスを導入し、容器内圧を0.67Paとした。その後、フィラメント電極に35Aの電流を供給し、基材に-200Vの負圧のバイアス電圧を印加し、Arボンバードを15分間実施した。
【0051】
<Tiボンバード工程>
その後、真空容器内の圧力が8×10-3Pa以下になるように真空排気した。続いて、C1に120Aのアーク電流を供給し、基材に-800Vの負圧のバイアス電圧を印加し、Tiボンバード処理を15分実施した。
【0052】
<成膜工程>
その後、基材の設定温度を480℃として、真空容器内に窒素ガスを導入して、炉内圧力を3.2Paとした。
b層の被覆では、何れの試料も基材に印加する負のバイアス電圧を-120V、C2に印加する電流を200Aとした。b層は約0.5μm設けた。
c層の被覆では、試料により基材に印加する負のバイアス電圧を変化させた。また、C2に投入する電力は一定として、C3に投入する電力を徐々に増加させていき、c層のb層側の部分ではc2層(AlTiN系)の方がc1層(AlCrN系)よりも厚い膜になるよう被覆した。なお、被覆時の、C2のカソード電圧は20V以上30V以下、C3のカソード電圧は20V以上35V以下であった。
d層の被覆では、何れの試料も基材に印加する負のバイアス電圧を-120V、C4に印加する電流を150Aとした。d層は約1.5μm設けた。
表2にc層の成膜条件を示す。
【0053】
【0054】
作製した被覆切削工具について、以下に示す切削条件にて切削試験を行った。
表3に切削試験結果を示す。切削条件の詳細は、以下の通りである。
<加工条件>
・切削方法:側面切削
・被削材:STAVAX(52HRC)
・使用工具:2枚刃ボールエンドミル(工具径1mm)
・切り込み:軸方向、0.04mm、径方向、0.04mm
・主軸回転数:24000min-1
・送り速度: 860mm/min
・クーラント:ドライ加工(エアーブロー)
・切削距離:90m
【0055】
【0056】
本実施例1は、最大摩耗幅が小さく、安定した摩耗形態を示し、継続して切削加工が可能な状態であった。比較例1は、本実施例1と同様の皮膜組成であるが、最大摩耗幅が大きくなった。比較例2は、本実施例1よりも積層皮膜のAlの含有比率が少ない組成であり、最大摩耗幅が大きくなった。
本実施例1について耐久性が優れた要因を解明するために積層皮膜のミクロ解析を行った。
なお、b層とd層については、株式会社日本電子製の電子プローブマイクロアナライザー装置(型番:JXA-8500F)を用いて、付属の波長分散型電子プローブ微小分析(WDS-EPMA)で組成分析を行い、ターゲットの合金組成とほぼ同一の窒化物であることが確認された。
【0057】
本実施例1について、物性評価用のボールエンドミルを加工して、加工断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。積層皮膜であるc層は、平均幅が50~70nmの微細な柱状粒子から形成されていることが確認された。
積層皮膜の全体の組成分析の結果の一例を表4に示す。c1層とc2層の組成は、エネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて、分析領域をφ1nmとして、各層の中心部分を分析することで求めた。小数点以下の値は四捨五入して求めた。
本実施例1のc層は、積層皮膜の全体でAlリッチであり、少なくともBとTiとCrを含有していた。本実施例1では、c1層とc2層の組成は相互に混ざっており、c1層はTiとWの合計を10原子%以下で含有していた。また、本実施例1のc2層はCrを10原子%以下で含有していた。
【0058】
【0059】
続いて、積層皮膜の制限視野回折パターンを、加速電圧120kV、制限視野領域φ750nm、カメラ長100cm、入射電子量5.0pA/cm2(蛍光板上)の条件にて求めた。求めた制限視野回折パターンの輝度を変換し、強度プロファイルを求めた。分析箇所は、膜厚方向における中間部分とした。
本発明例1はhcp構造のAlN(010)に起因するピークは確認されず、Ih×100/Isは0であった。一方、比較例1には、hcp構造のAlN(010)に起因するピークがあり、Ih×100/Isは19となった。
本実施例1および比較例1について、X線回折では、hcp構造のAlNに起因するピーク強度は確認されなかったが、制限視野回折パターンにおいては、hcp構造のAlNに起因するピーク強度に差異が生じた。本実施例1は、ミクロ組織に含有されるhcp構造のAlNが少ないために、耐久性が著しく改善されたと推定される。