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特許7031810抗PD-1/抗HER2天然抗体構造形態のヘテロダイマー系二重特異性抗体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】抗PD-1/抗HER2天然抗体構造形態のヘテロダイマー系二重特異性抗体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220301BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220301BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220301BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220301BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220301BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220301BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220301BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/46
C12P21/08
C12N5/10
C07K16/28
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 D
A61K39/395 E
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2019527168
(86)(22)【出願日】2017-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 CN2017111310
(87)【国際公開番号】W WO2018090950
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-07-28
(31)【優先権主張番号】201611016435.0
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513311664
【氏名又は名称】ベイジン・ハンミ・ファーマシューティカル・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJING HANMI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、 チアワン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ナンメン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、 ヤピン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 メンスプ
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-533243(JP,A)
【文献】特表2016-508117(JP,A)
【文献】特表2010-530753(JP,A)
【文献】特表2014-530891(JP,A)
【文献】Mol. Cancer Ther., 2013, Vol. 12, No. 12, pp. 2748-2759
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-1と特異的結合することができる第1抗原結合機能領域、及びHER2と特異的結合することができる第2抗原結合機能領域を含み、
又は複数の二硫化結合を介して連結された第1Fc鎖及び第2Fc鎖を含み、
前記第1Fc鎖と前記第2Fc鎖は、共有結又はリンカーを介して、それぞれPD-1抗原結合機能領域及びHER2抗原結合機能領域に連結されるか、あるいは前記第1Fc鎖及び前記第2Fc鎖は、共有結又はリンカーを介して、それぞれHER2抗原結合機能領域及びPD-1抗原結合機能領域に連結され、
前記第1Fc鎖及び第2Fc鎖は、以下の部位において、5個アミノ酸の置換を含む:第1Fc鎖上においては、T366番目及びD399番目のアミノ酸置換、第2Fc鎖上においては、L351番目,Y407番目及びK409番目アミノ酸の置換;ここで、前記第1Fc鎖のアミノ酸置換はT366L及びD399Rであり、前記第2Fc鎖のアミノ酸置換はL351E、Y407L、及びK409Vであり、
前記アミノ酸置換を含む前記第1Fc鎖と前記第2Fc鎖は、ホモダイマーを形成する傾向よりも、ヘテロダイマーを形成する傾向が高く
前記アミノ酸位置は、Kabat EU索引番号体系によって番号が付けられる、
ヘテロダイマー系二重特異性抗体。
【請求項2】
前記第1Fc鎖と前記第2Fc鎖は、IgG由来のものである、請求項1に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
【請求項3】
前記PD-1抗原結合機能領域及びHER2抗原結合機能領域は、Fab断片又はscFv断片である、請求項1又は2に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
【請求項4】
前記PD-1抗原結合機能領域及びHER2抗原結合機能領域は、いずれもFab断片である、請求項1~のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
【請求項5】
前記PD-1抗原結合機能領域及びHER2抗原結合機能領域のうち一つは、Fab断片であり、他の一つは、scFv断片である、請求項1~のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
【請求項6】
前記Fab断片は、互いに異なる第1重鎖可変部及び第2重鎖可変部、並びに互いに異なる第1軽鎖可変部及び第2軽鎖可変部を含むものである、請求項3~5のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
【請求項7】
D-1抗原結合機能領域と共有結合する前記第1Fc鎖、及びHER2抗原結合機能領域と共有結合する前記第2Fc鎖のそれぞれ又は
ER2抗原結合機能領域と共有結合する前記第1Fc鎖、及びPD-1抗原結合機能領域と共有結合する前記第2Fc鎖のそれぞれ、
が還元剤の存在下で単独で存在する場合、ホモダイマー構成要素の重量比率が50%未満である、請求項1~のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
【請求項8】
前記二重特異性抗体のアミノ酸配列は、配列番号2,4,6,,10,12,14,16及び18から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体をコードする、分離されたポリヌクレオチド。
【請求項10】
配列番号1,3,5,7,9,11,13,15及び17から配列が選択される、請求項に記載の分離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の分離されたポリヌクレオチドを含む、組み換え発現ベクター。
【請求項12】
前記発現ベクターが、pCDNAに基づいて改変して得られたプラスミドベクターX0GCである、請求項11に記載の組み換え発現ベクター。
【請求項13】
請求項9又は10に記載のポリヌクレオチド、あるいは請求項11又は12に記載の組み換え発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項14】
ヒト胎児腎細胞HEK293、又はHEK293細胞に由来するHEK293T、HEK293E、若しくはHEK293F;及びチャイニーズハムスター卵巣細胞CHO、又はCHO細胞に由来するCHO-S、CHO-dhfr、CHO/DG44、若しくはExpiCHOから選択される、請求項13に記載の宿主細胞。
【請求項15】
請求項1~のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、請求項9又は10に記載の分離されたポリヌクレオチド、請求項11又は12に記載の組み換え発現ベクター、あるいは請求項13又は14に記載の宿主細胞、及び薬理学的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項16】
請求項1~のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体を生産する方法であって、
1)請求項9又は10に記載の分離されたポリヌクレオチド、あるいは請求項11又は12に記載の組み換え発現ベクターを宿主細胞内で発現させることと、
2)宿主細胞内でそれぞれ発現されるタンパク質を精製及び還元させることと、
3)還元されたタンパク質を混合した後、混合物を酸化させること
を含む方法。
【請求項17】
前記宿主細胞は、ヒト胎児腎細胞HEK293、又はHEK293細胞に由来するHEK293T、HEK293F、若しくはHEK293F;及びチャイニーズハムスター卵巣細胞CHO、又はCHO細胞に由来するCHO-S、CHO-dhfr-、CHO/DG44、若しくはExpiCHOから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記還元は
1)還元剤を添加することであって前記還元剤が、2-メルカプトエチルアミン、ジチオトレイトール、トリ(2-カルボキシエチル)ホスファイン、その他の化学的誘導体、又はそれらの組み合わせから選択される、還元剤を添加することと、
2)0.1mM以上の濃度のジチオトレイトールの存在下で、4℃で、少なくとも3時間還元反応を行うことと、
)還元剤を除去すること(例えば、脱塩などによる)
を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記酸化は
1)空気中で酸化させるか、あるいは酸化剤を添加することを含み、前記酸化剤は、L-デヒドロアスコルビン酸、又はその他の化学的誘導体から選択され、かつ、
2)0.5mM以上の濃度のL-デヒドロアスコルビン酸の存在下で、4℃で、少なくとも5時間酸化反応を行うことを含む、
請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
分離及び製をさらに含む、請求項16~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
個体疾病の予防及び又は治療に使用される薬物の製造における、請求項1~のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、請求項9又は10に記載の分離されたポリヌクレオチド、請求項11又は12に記載の組み換え発現ベクター、請求項13又は14に記載の宿主細胞、又は請求項15に記載の組成物の使用
【請求項22】
個体疾病の予防及び又は治療に使用される薬物として使用される、請求項1~のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、請求項9又は10に記載の分離されたポリヌクレオチド、請求項11又は12に記載の組み換え発現ベクター、請求項13又は14に記載の宿主細胞、又は請求項15に記載の組成物。
【請求項23】
前記個体が哺乳動物(例えば、ヒト)ある、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
前記個体が哺乳動物(例えば、ヒト)である、請求項22に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、分離されたポリヌクレオチド、組み換え発現ベクター、宿主細胞、又は組成物。
【請求項25】
前記疾病が、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平細胞癌、非小細胞肺癌、鼻咽頭癌腫、食道癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、大腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、及びメラノーマから選択される、請求項21又は23に記載の使用
【請求項26】
前記疾病が、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平細胞癌、非小細胞肺癌、鼻咽頭癌腫、食道癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、大腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、及びメラノーマから選択される、請求項22又は24に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、分離されたポリヌクレオチド、組み換え発現ベクター、宿主細胞、又は組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗PD-1/抗HER2天然抗体構造形態のヘテロダイマー系二重特異性抗体及びその製造に関する。具体的には、本発明によれば、天然IgGの特性を有している上に、重鎖と軽鎖とのミスマッチングがない、高度に安定したヘテロダイマー系抗PD-1/抗HER2二重特異性抗体及びその製造方法が提供される。
【0002】
本出願は、2016年11月18日提出された中国特許出願番号201611016435.0の優先権を主張し、その全ての内容は、引用として本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
単一クローン抗体は、単一抗原決定基にのみ作用する高特異性抗体であり、癌、炎症及び自家免疫疾患、感染性疾患などにすでに広範囲に利用されている。しかし、そのような治療分子は、単独で使用された場合には、十分な薬効を示すことができない。それは、疾病の複雑性によるものであり、例えば、癌または炎症性疾病は、通常、多様な疾病を媒介させる分子経路と信号経路との相互作用と係わりがある。その場合、単一標的を有する分子は、最適の治療効果を提供することができず、同時に、多数の標的、または同一標的中の多くのサイトに位置した分子を遮断することにより、治療効果を改善させることができる。同時に、二重特異性分子のような多特異性を利用する二重標的治療は、二重特異性分子が単一分子であるので、新薬開発過程を簡素化させることができる。多数の単一特異性分子の組み合わせを使用することと比較すると、それは、患者と医療提供者とのいずれにおいても、さらに便利な方法である。
【0004】
多くの異なる形式の二重特異性抗体または二重機能分子が、当該分野において、すでに知られている。最初の二重特異性抗体は、化学的方法を応用し、二重機能カップリング試薬を使用し、従来のIgG分子、Fab’断片または(Fab’)2断片の二つを連結したものである。しかし、そのように化学的にカップリングされた二重特異性抗体には、生産作業の強度、異種カップリング産物の精製、同種カップリング産物、及び本来の単一特異性抗体または断片の除去における複雑性、及び低い効率など多くの制限がある。
【0005】
二重特異性抗体生産に使用される他の方法は、ハイブリッド・ハイブリドーマ(または、クアドローマ)技術を使用するものであり、それは、異なる抗体を分泌する2種のハイブリドーマ細胞株を体細胞融合し、二重特異性抗体を生産する方法である。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖との任意的ペアリングにより、抗体混合物の1/10のみが必要とされる機能性二重特異性抗体であるので、精製過程が複雑になり、生産収率が減少する。
【0006】
WO2013060867においては、ヘテロダイマー二重特異性抗体の大規模生産方法を記述している。前記方法においては、まず、2種の混合されたホモダイマー系抗体を還元させた後、前記2種のホモダイマー抗体のCH3区域に、非対称アミノ酸突然変異を導入することにより、異なる抗体のFabアームの交換を促進させた後、最後に、ヒンジ領域の鎖間の二硫化結合を酸化させ、安定した二重特異性抗体を形成する。
【0007】
WO2009089004は、ヘテロダイマータンパク質製造方法を記述している。前記方法は、CH3-CH3界面に位置するアミノ酸を、電荷を帯びるアミノ酸に突然変異させることにより、静電作用を介して、ヘテロダイマー形成を促進させ、ホモダイマー形成を不利にさせるのである。
【0008】
US5731168は、「杵(突起)-臼(空洞)」戦略を利用し、ヘテロダイマーIgGを製造する方法を記述している。前記方法は、第1鎖CH3領域の界面にある小さいアミノ酸を大きいアミノ酸に置き換え、「杵」を形成し、同時に第2鎖CH3領域の、それに対応する大きいアミノ酸を小さいアミノ酸に突然変異させ、「臼」を形成するのである。杵と臼との相互作用は、ヘテロダイマーIgG形成には有利であるが、ホモダイマー形成には不利である。
【0009】
WO2012058768は、安定した高特異性ヘテロダイマーIgGの製造方法を記述している。前記方法においては、陰性及び陽性の設計及び構造と、コンピュータモデル志向タンパク質工程技術を組み合わせて使用し、IgG1 CH3構造領域の多数のアミノ酸を突然変異させることにより、安定しており、ホモダイマー不純物含量が低いヘテロダイマーIgGを形成する。
【0010】
プログラムされた細胞死滅受容体(PD-1: programmed death receptor-1)は、近来脚光を浴びている免疫チェックポイント(immune checkpoint)であり、主に、T細胞の活性化制御に関与し、免疫反応の強度及び持続時間を調節することができる。正常な状況において、PD-1は、身体組織の自家免疫寛容を媒介させて維持し、炎症反応過程において、免疫系統が過度に活性化されて自家組織を損傷させることを防止し、自家免疫性疾病を発生させないところに肯定的な作用を行う。病理状況において、PD-1は、腫瘍免疫、及び多様な自家免疫疾患の発生過程及び発展過程に関与する(Anticancer Agents Med Chem. 2015; 15(3): 307-13. Hematol Oncol Stem Cell Ther. 2014 Mar; 7(1): 1-17. Trends Mol Med. 2015 Jan; 21(1): 24-33. Immunity. 2013 Jul 25; 39(1): 61-73. J Clin Oncol. 2015 Jun 10; 33(17): 1974-8)。
【0011】
PD-1は、CD28ファミリーに属するが、CTLA4などのCD28科の他の構成要素とは異なり、二硫化結合により共有ダイマーを形成することができる。PD-1は、モノマー形態で存在する。PD-1の構造は、主に、細胞外免疫グロブリン可変部位構造領域と、疎水性の膜貫通領域と細胞内領域とを含み、細胞内領域は、2つの独立したリン酸化作用サイトを含む。リン酸化作用サイトは、それぞれ免疫受容体チロシン抑制性モチーフ(ITIM)と、免疫受容体チロシン転移モチーフ(ITSM)である。PD-1の誘導性は、主に、活性化されたT細胞表面に発現され、B細胞、NK細胞、単核細胞、DC細胞にも発現される。PD-1のリガンドは、PD-L1(programmed death ligand 1)、PD-L2(programmed death ligand 2)を含み、前記リガンドは、B7ファミリーに属する。そのうち、PD-L1は、T細胞、B細胞、単核細胞、大食細胞、DC細胞、内皮細胞、表皮細胞などの多様な免疫細胞表面で誘導性発現を行うが、PD-L2は、大食細胞、DC細胞、B細胞などの一部免疫細胞でのみ誘導性発現を行う(Autoimmun Rev, 2013, 12(11): 1091-1100. Front Immunol, 2013, 4: 481. Nat Rev Cancer, 2012, 12(4): 252-264. Trends Mol Med. 2015 Jan; 21(1): 24-33)。
【0012】
1980年代に、Denis Slamonが、最初に189の原発性乳腺癌病例から、HER2(ヒト上皮細胞増殖因子受容体2型)遺伝子が、30%の病例において、いずれも過度に増加することを発見し、HER2が、全体生存率及び再発時期と密接に係わっているということを明らかにした(Salman DJ et al., Science, 235: 177-182, 1985)。現在の研究によれば、およそ25~30%の乳腺癌患者のうち、HER2がいずれも過多発現され(Revillion F et al., Eur J Cancer, 34: 791-808, 1998)、それは、いずれも腫瘍の悪性増殖の程度と係わりがある(Wright C et al., Cancer Res, 49: 2087-2090, 1989)。
【0013】
トラスツズマブ(Trastuzumab)は、抗HER2細胞外領域のヒト化単一クローン抗体(Carter P et al., PNAS, 89(10): 4285-4289, 1992)である。しかし、トラスツズマブが臨床に応用されたときの抗癌効果は、臨床前実験に比べ、低い場合が多いので、一般的に、化学治療剤などと組み合わせて使用しなければならない(Slamon DJ et al., N Engl J Med, 344: 783-792, 2001)。
【0014】
エフェクター細胞をリクルートすることができる二重機能抗体の設計は、抗体の効能を向上させる効果的手段である。現在まで、最も多くの研究がなされているのは、CD3分子の機能を利用するものである。CD3分子によるキラーT細胞の活性化を介して、標的腫瘍を効果的に除去することができる(Haas C et al., Immunobiology, 214:441-453, 2009)。そのうち、Micromet社で開発された組み換え二重機能T細胞刺激抗体は、BiTEとして非常に有望であるが、最大の問題点は、血漿半減期が非常に短く、人体での半減期が1時間に過ぎないという点である(Loffler A et al.,Blood, 95: 2098-2103)。それは、BiTE自体の構造によるものであり、BiTEは、2つの単一鎖型抗体断片によって形成され、分子量は、60kDaに過ぎないだけではなく、抗体分子内において、半減期延長に重要な役割を行うFc断片が欠失されている。
【0015】
カツマキソマブ(Catumaxomab)は、他の有望な多機能性抗体であり、CD3及びEpCAMを標的にするヘテロIg分子であり、現在、前記製品は、腹水癌の治療において、使用を許可された状態である(Jager M et al., Cancer Res, 72: 24-32, 2012)。臨床第II相にある他の多機能性抗体は、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)であり、CD3及びHER2を標的にする。そのようなヘテロ抗体の一本の重鎖及び軽鎖は、ラットのIgGに由来したものであり、CD3を標的にし、他の一本の重鎖及び軽鎖は、マウスのIgGに由来したものであり、HER2を標的にする。それによって伴う問題は、そのような製品生産が非常に困難であるということである。二重機能性エルツマキソマブが発現されるクローンを獲得するためには、まず、CD3抗体を発現する1つの二倍体ハイブリドーマ、及びHER2抗体を発現する1つの二倍体ハイブリドーマを獲得した後、2つのハイブリドーマをさらにハイブリッドさせて、抗CD3及び抗HER2を発現することができる二重機能抗体である四倍体ハイブリドーマを獲得しなければならないからである。しかし、普通の単一標的抗体を生産するためには、二倍体ハイブリドーマ1個の獲得だけが必要であるので、それと比較すると、二重機能抗体の生産過程がはるかに複雑であり、また四倍体ハイブリドーマの獲得がさらに困難であり、前述のマウス起源により、免疫原性が非常に高い結果となる。
【0016】
また、抗CD3抗体の最も明白な副作用は、体内サイトカインの短時間での増加をもたらすことであり、それは、サイトカインストームとも称する。したがって、免疫細胞を腫瘍細胞表面にリクルートする新たな二重機能抗体を開発する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様は、PD-1と特異的結合することができる第1抗原結合機能領域、及びHER2と特異的結合することができる第2抗原結合機能領域を含むヘテロダイマー系二重特異性抗体に関する。前記二重特異性抗体は、1または複数の二硫化結合を介して連結された第1Fc鎖及び第2Fc鎖を含み、前記第1Fc鎖と第2Fc鎖は、それぞれPD-1抗原結合機能領域及びHER2抗原結合機能領域に連結され、前記第1Fc鎖と第2Fc鎖は、以下の位置において、5個アミノ酸の置換を含む:
1)第1Fc鎖上においては、366番目及び399番目のアミノ酸置換、第2Fc鎖上においては、351番目、407番目及び409番目のアミノ酸置換;または
2)第1Fc鎖上においては、366番目及び409番目のアミノ酸置換、第2Fc鎖上においては、351番目、399番目及び407番目のアミノ酸置換。
【0018】
前記アミノ酸置換を含む第1Fc鎖と第2Fc鎖は、それぞれホモダイマーを形成する傾向なしに、互いにヘテロダイマーを形成する傾向がさらに強く、
前記アミノ酸位置は、Kabat EU索引番号体系によって番号が付けられる。
【0019】
ある実施形態において、第1Fc鎖と第2Fc鎖とのアミノ酸置換は、以下の通りである:
a)351番目において、グリシン、チロシン、バリン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシンまたはトリプトファンに置換され、
b)366番目において、ロイシン、プロリン、トリプトファン、バリンに置換され、
c)399番目において、システイン、アスパラギン、イソロイシン、グリシン、アルギニン、トレオニンまたはアラニンに置換され、
d)407番目において、ロイシン、アラニン、プロリン、フェニルアラニン、トレオニンまたはヒスチジンに置換され、
e)409番目において、システイン、プロリン、セリン、フェニルアラニン、バリン、グルタミンまたはアルギニンに置換される。
【0020】
ある実施形態において、アミノ酸置換は、
a)第1Fc鎖のT366L及びD399R置換、第2Fc鎖のL351E,Y407L及びK409V置換;
b)第1Fc鎖のT366L及びD399C置換、第2Fc鎖のL351G,Y407L及びK409C置換;
c)第1Fc鎖のT366L及びD399C置換、第2Fc鎖のL351Y,Y407A及びK409P置換;
d)第1Fc鎖のT366P及びD399N置換、第2Fc鎖のL351V,Y407P及びK409S置換;
e)第1Fc鎖のT366W及びD399G置換、第2Fc鎖のL351D,Y407P及びK409S置換;
f)第1Fc鎖のT366P及びD399I置換、第2Fc鎖のL351P,Y407F及びK409F置換;
g)第1Fc鎖のT366V及びD399T置換、第2Fc鎖のL351K,Y407T及びK409Q置換;
h)第1Fc鎖のT366L及びD399A置換、第2Fc鎖のL351W,Y407H及びK409R置換を含む。
【0021】
ある実施形態において、アミノ酸置換は、
a)第1Fc鎖のT366L及びK409V置換、第2Fc鎖のL351E,Y407L及びD399R置換;
b)第1Fc鎖のT366L及びK409C置換、第2Fc鎖のL351G,Y407L及びD399C置換;
c)第1Fc鎖のT366L及びK409P置換、第2Fc鎖のL351Y,Y407A及びD399C置換;
d)第1Fc鎖のT366P及びK409S置換、第2Fc鎖のL351V,Y407P及びD399N置換;
e)第1Fc鎖のT366W及びK409S置換、第2Fc鎖のL351D,Y407P及びD399G置換;
f)第1Fc鎖のT366P及びK409F置換、第2Fc鎖のL351P,Y407F及びD399I置換;
g)第1Fc鎖のT366V及びK409Q置換、第2Fc鎖のL351K,Y407T及びD399T置換;
h)第1Fc鎖のT366L及びK409R置換、第2Fc鎖のL351W,Y407H及びD399A置換を含む。
【0022】
ある実施形態において、第1Fc鎖のアミノ酸は、T366LとD399Rとに置換され、第2Fc鎖のアミノ酸は、L351E、Y407L及びK409Vに置換される。
【0023】
ある実施形態において、Fc鎖は、IgGに由来する。
【0024】
ある実施形態において、PD-1抗原結合機能領域及びHER2抗原結合機能領域は、Fab断片またはscFv断片である。
【0025】
ある実施形態において、PD-1抗原結合機能領域及びHER2抗原結合機能領域は、いずれもFab断片である。
【0026】
ある実施形態において、PD-1抗原結合機能領域及びHER2抗原結合機能領域のうち一つは、Fab断片であり、他の一つは、scFv断片である。
【0027】
ある実施形態において、Fab断片は、異なる第1重鎖可変部位及び第2重鎖可変部位、並びに異なる第1軽鎖可変部位及び第2軽鎖可変部位を含む。
【0028】
ある実施形態において、二重特異性抗体のアミノ酸配列は、配列番号2,4,6,8,10,12,14,16及び18から選択される。
【0029】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体をコードする分離されたポリヌクレオチドに関する。
【0030】
ある実施形態において、該ポリヌクレオチドの配列は、配列番号1,3,6,7,9,13,15及び17から選択される。
【0031】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の分離されたポリヌクレオチドを含む組み換えプラスミドに関する。
【0032】
ある実施形態において、発現ベクターは、pCDNAを改変して得られたプラスミドベクターX0GCである。
【0033】
本発明の第4の態様は、第2の態様に記載の分離されたポリヌクレオチド、または第3の態様に記載の組み換え発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0034】
ある実施形態において、該宿主細胞は、ヒト胎児腎細胞HEK293、またはHEK293細胞を基に改変して得たHEK293T、HEK293F、HEK293E、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO、またはCHO細胞を基に改変して得たCHO-S、CHO-dhfr-、CHO/DG44、ExpiCHOから選択される。
【0035】
本発明の第5の態様は、第1の態様に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、第2の態様に記載の分離されたポリヌクレオチド、第3の態様に記載の組み換え発現ベクター、または第4の態様に記載の宿主細胞、及び薬理学的に許容可能な担体(carrier)を含む組成物に関する。
【0036】
本発明の第6の態様は、第1の態様に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体を生産する方法に関し、次のような段階を含む:
1)第2の態様に記載の分離されたポリヌクレオチド、または第3の態様に記載の組み換え発現ベクターをそれぞれ宿主細胞内で発現させる段階;
2)宿主細胞内でそれぞれ発現されるタンパク質を還元させる段階;及び
3)還元されたタンパク質を混合した後、混合物を酸化させる段階。
【0037】
ある実施形態において、前記宿主細胞は、ヒト胎児腎細胞HEK293、またはHEK293を基に改変して得たHEK293T、HEK293F、HEK293F、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO、またはCHO細胞を基に改変して得たCHO-S、CHO-dhfr-、CHO/DG44、ExpiCHOから選択される。
【0038】
ある実施形態において、前記還元段階は、1)還元剤を添加し、前記還元剤が、2-メルカプトエチルアミン、ジチオトレイトール、トリ(2-カルボキシエチル)ホスファイン、その他の化学誘導体、またはその組み合わせを含む段階、2)0.1mM以上の濃度のジチオトレイトールの存在下で、4℃条件下で、少なくとも3時間還元反応を行う段階、3)脱塩などを介して、還元剤を除去する段階を含む。
【0039】
ある実施形態において、前記酸化段階は、1)空気中で酸化させるか、あるいは酸化剤を添加することを含み、前記酸化剤は、L-デヒドロアスコルビン酸、またはその他の化学的誘導体から選択される段階、2)0.5mM以上の濃度のL-デヒドロアスコルビン酸の存在下で、4℃条件下で、少なくとも5時間酸化反応を行う段階を含む。
【0040】
ある実施形態において、分離精製段階をさらに含む。
【0041】
本発明の第7の態様は、第1の態様に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、および/または第2の態様に記載の分離されたポリヌクレオチド、および/または第3の態様に記載の組み換え発現ベクター、および/または第4の態様に記載の宿主細胞、および/または第5の態様に記載の組成物の、個体の疾患を予防および/または治療する薬物の製造での用途に関する。
【0042】
本発明の第8の態様は、個体の疾患予防および/または疾患治療に利用される、第1の態様に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、および/または第2の態様に記載の分離されたポリヌクレオチド、および/または第3の態様に記載の組み換え発現ベクター、および/または第4の態様に記載の宿主細胞、および/または第5の態様に記載の組成物に関する。
【0043】
本発明の第9の態様は、疾病を予防および/または治療する方法に関し、第1の態様に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、および/または第2の態様に記載の分離されたポリヌクレオチド、および/または第3の態様に記載の組み換え発現ベクター、および/または第4の態様に記載の宿主細胞、および/または第5の態様に記載の組成物をそれを必要とする個体に投与することを含む。
【0044】
ある実施形態において、前記個体は、哺乳動物、望ましくは、ヒト個体である。
【0045】
ある実施形態において、前記疾病は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平細胞癌、非小細胞性肺癌、鼻咽頭癌腫、食道癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、大腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、メラノーマなどの腫瘍から選択される。
【0046】
本発明は、PD-1を免疫細胞をリクルートする分子とし、HER2を腫瘍細胞の標的分子として、完全に新たな抗PD-1/抗HER2天然抗体構造形態のヘテロダイマー系二重特異性抗体を設計した。前記二重特異性抗体は、天然IgGの特性を有する上に、重鎖と軽鎖とのミスマッチングがなく、高度に安定したヘテロダイマー系の抗PD-1/抗HER2二重特異性抗体である。前記二重特異性抗体は、同時に2種の標的分子PD-1及びHER-2に結合することができ、複合病治療分野でさらに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】ヘテロダイマー抗体分子のモノマーの溶出ピークを示す図である。
図2】抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子の構造を示す図である。
図3】重鎖と軽鎖とのハーフ抗体分子を図示した構造図である。
図4】重鎖と軽鎖とのハーフ抗体分子のSEC分析結果を図示したものである。AとBは、それぞれ抗HER2ハーフ抗体分子と、抗PD-1ハーフ抗体分子との分析結果を示す図である。
図5】抗PD-1抗体と抗HER2抗体とのハーフ抗体分子酸化物のSDS-PAGE分析結果を示す図である。
図6】抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子の溶出ピークを示す図である。
図7】抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子のSDS-PAGE分析結果を示す図である。
図8】抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子のSEC分析結果を示す図である。
図9】抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子の安定性実験を示す図である。
図10】抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子の安定性実験を示す図である。
図11】抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子のHER2結合活性とPD-1結合活性とを示す図である。AとBは、それぞれHER2結合活性及びPD-1結合活性を示す。
図12】抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子が、PD-1高発現のCHO/PD-1細胞、及びHER2高発現のSK-BR-3細胞と同時に結合することを示す図である。A~Dは、それぞれHER2単一クローン抗体、PD-1単一クローン抗体、HER2単一クローン抗体+PD-1単一クローン抗体、及び抗PD-1BJHM/抗HER2の同時結合を示す。
図13】抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子が、PD-1/PD-L1結合と、PD-1/PD-L2結合との活性を遮断することを示す図である。A及びBは、それぞれPD-1/PD-L1及びPD-1/PD-L2の結合遮断活性を示す。
図14】抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子がサイトカインIL-2の分泌を促進することを示す図である。
図15】抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子の曲線下面積(AUC:area under the curve)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
定義:
共有原子の連結とは、ヘテロダイマー系二重特異性抗体において、2つのFc鎖の間;並びにいずれか1つのFc鎖、及びそれと連結された抗原結合機能領域の間;が共有結合によって1つの分子に連結されていることである。そのうちFc鎖は、1または複数の共有原子が、連結(または、二硫化結合鎖)を介して連結された第1抗原結合機能領域及び第2抗原結合機能領域を含み、前記第1Fc鎖及び第2Fc鎖は、それぞれ共有原子が、連結(イミン結合またはペプチド結合などの結合)を介して、1つの抗原結合機能領域に連結され、
該抗原結合機能領域は、抗原などの標的分子との特異性相互作用が発生する区域であり、その作用は、高度の選択性を有しており、1つの標的分子を識別する配列は、一般的に、他の分子配列を識別することができない。代表的な抗原結合機能領域は、抗体の可変部、抗体可変部の構造変異体、受容体の結合領域、リガンド結合領域、または酵素結合領域を含む。
【0049】
1または複数の二硫化結合鎖間の連結は、第1Fc鎖と第2Fc鎖とが、1または複数の二硫化結合鎖間の連結を介して、ヘテロダイマー断片を形成することを示す。本発明において、1または複数の二硫化結合の形成は、第1Fc鎖及び第2Fc鎖、あるいは第1Fc鎖、第2Fc鎖、及びそれと連結された抗原結合機能領域が同一細胞内で合成される場合に形成されるものでもあり、また第1Fc鎖及び第2Fc鎖、あるいは第1Fc鎖、第2Fc鎖、及びそれと連結された抗原結合機能領域が異なる細胞内でそれぞれ形成された後、in vitro還元方法によって形成されるものでもある。
【0050】
第1Fc鎖及び第2Fc鎖は、共有原子が、連結を介して結合断片を構成し、共有原子の連結は、二硫化結合を含み、各鎖は、少なくとも、免疫グロブリン重鎖不変部の一部分を含み、前述の第1鎖及び第2鎖は、アミノ酸配列上で異なり、少なくとも1桁のアミノ酸が同一ではないものを含む。本発明における第1Fc鎖及び第2Fc鎖において、同一鎖間には、強力な相互排斥作用が存在し、異なる鎖間には、吸引作用が存在する。したがって、細胞内で共同発現されるとき、第1Fc鎖及び第2Fc鎖、あるいは第1Fc鎖及び第2Fc鎖、並びにそれらと連結される抗原結合機能領域は、ヘテロダイマーを形成する傾向性がさらに強い。第1Fc鎖及び第2Fc鎖、あるいは第1Fc鎖及び第2Fc鎖、並びにそれらと互いに連結された抗原結合機能領域が、それぞれ2つの宿主細胞内で発現されるとき、第1Fc鎖、あるいは第1Fc鎖、及びそれと連結された抗原結合機能領域は、ホモダイマーを形成する傾向性を有さず、第2Fc鎖、あるいは第2Fc鎖、及びそれと連結された抗原結合機能領域も、ホモダイマーを形成する傾向性を有さない。本発明において、第1Fc鎖及び第2Fc鎖、あるいは第1Fc鎖及び第2Fc鎖、並びにそれらと連結された抗原結合機能構造が、それぞれ2つの宿主細胞内で発現されるだけではなく、還元剤が存在する場合、ホモダイマーの比率は、50%未満であり、すなわち、モノマー(一本Fc鎖、あるいは一本Fc鎖、及びそれと連結された抗原結合機能領域)の比率は、50%より高い。
【0051】
免疫グロブリンは、4本のポリペプチド鎖を有する対称構造であり、そのうち2本は、比較的長い長さであり、相対分子量も、比較的大きい同一の重鎖であり、450~550個のアミノ酸残基を含み、相対分子量は、55,000~70,000Daである。他の2本は、比較短く、相対分子量が比較的小さい互いに同一の軽鎖(L鎖)であり、210個のアミノ酸残基を含み、相対分子質量は、約24,000Daである。異なる免疫グロブリンの重鎖と軽鎖とのうち、N末端に近接した約110個のアミノ酸配列は、変化が非常に大きく、それを可変部(V区域:variable region)と称し、C末端に近接したその残余アミノ酸の配列は、相対的に安定しており、それを不変部(C区域:constant region)と称する。重鎖において可変部は、およそ重鎖長の1/4を占め、不変部は、およそ重鎖長の3/4を占める。すでに知られた5種のIgの種類は、IgG(γ)、IgA(α)、IgD(δ)、IgM(μ)及びIgE(ε)であり、このうち、前の3種IgのH鎖内には、CH1、CH2及びC3によって構成された3個の不変部がある。後ろの2つ(IgM及びIgE)のH鎖には、1つのVH部位と、4つの不変部、すなわち、CH1~CH4がある。該不変部は、免疫グロブリン分子の骨格でもあり、免疫反応を活性化させる部位の一つでもある。
【0052】
本発明における不変部一部分は、少なくとも、第1Fc鎖と第2Fc鎖との相互作用領域を含み、前記領域は、IgGの場合、CH3領域の一部分アミノ酸に位置するものであり、少なくとも、GLN347、TYR349、THR350、LEU351、SER354、ARG355、ASP356、GLU357、LYS360、SER364、THR366、LEU368、LYS370、ASN390、LYS392、THR394、PRO395、VAL397、ASP399、SER400、PHE405、TYR407、LYS409、LYS439を含む。
【0053】
第1Fc鎖及び第2Fc鎖が、それぞれ共有結合またはリンカーを介して、1つの抗原結合機能領域に連結されるということは、第1Fc鎖及び第2Fc鎖が、それぞれ共有結合またはリンカーを介して、1つの抗体の抗原結合断片、または抗原を識別することができる一本鎖抗体、または抗原を識別することができるその他の抗体断片変異体、またはリガンドを識別することができる受容体、または受容体を識別することができるリガンドに連結されることを示す。そのうち、前記共有結合は、化学的結合の一種であり、2またはそれ以上の原子が共同して外層電子を使用し、理想的な状況において、電子飽和状態に逹し、比較的安定した化学的構造を構成することを示すか、あるいは原子間に電子対を共有することによって形成される相互作用である。同一元素の原子、または異なる元素の原子は、いずれも共有結合を介しても結合される。本発明の第1Fc鎖及び第2Fc鎖の共有結合の場合、1分子アミノ酸のアミノ基が、他分子アミノ酸のカルボン酸基と脱水反応を起こして形成されたアミド結合、またはエチレングリコールまたはポリエチレングリコール、あるいはその他の化合物またはその重合基のアルデヒド基が1分子アミノ酸のアミノ基と、アミド結合またはイミン結合を形成することを含むが、それに制限されるものではない。そのうちリンカーは、二本鎖ポリペプチドを、共有結合を介して連結することができる1つのアミノ酸配列、1種の化合物、または1種の化合物の重合体であり、そのうち1つのアミノ酸配列は、GGGGSGGGGSGGGGSなどの小さいペプチドを含むが、それに制限されるものではなく、アミド結合を介して、第1Fc鎖または第2Fc鎖、及び抗原を識別することができる一本鎖抗体、または抗原を識別することができるその他の抗体の断片構造変異体を連結する。
【0054】
第1Fc鎖と第2Fc鎖は、ヘテロダイマーを形成する傾向性がさらに強く、それぞれホモダイマーを形成する傾向性を有さないことは、第1Fc鎖と第2Fc鎖とのうち、互いに同じポリペプチド鎖間では、相互排斥作用が存在し、異なるポリペプチド鎖間では、吸引作用が存在するので、細胞内で共同発現されるとき、第1Fc鎖及び第2Fc鎖、あるいは第1Fc鎖及び第2Fc鎖、並びにそれらと連結される抗原結合機能領域は、ヘテロダイマーを形成する傾向性がさらに強いということを意味する。第1Fc鎖及び第2Fc鎖、あるいは第1Fc鎖及び第2Fc鎖、並びにそれらと互いに連結された抗原結合機能領域が、それぞれ2つの宿主細胞内で発現されるとき、第1Fc鎖、あるいは第1Fc鎖、及びそれと連結された抗原結合機能領域は、ホモダイマーを形成する傾向性を有さず、第2Fc鎖、あるいは第2Fc鎖、及びそれと連結された抗原結合機能領域も、ホモダイマーを形成する傾向性を有さない。
【0055】
Kabat EU索引番号体系は、Kabatが、1つの番号を、抗体配列の全てのアミノ酸に指定したことを意味し、そのように各残基の番号を指定する方法は、本分野においては、すでに標準的な方法である。Kabat方法は、その研究がなされていないその他の抗体にも適用され、保存的なアミノ酸に基づいて、標的抗体と、Kabat鑑定されたコンセンサス配列(共有配列)とのうち一つに対して比較を行う。
【0056】
Fc断片区域は、結晶可能断片(Fc:fragment crystallizable)を示し、それは、IgのCH2構造区域とCH3構造区域とに該当し、Igと、エフェクター分子または細胞とが相互作用を行う部位である。
【0057】
IgGは、免疫グロブリンG(IgG:immunoglobulin G)の略語であり、血清の主な抗体成分であり、IgG分子中のr鎖の抗原性の差により、ヒトIgGは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の4種の亜型を有する。
【0058】
ハーフ抗体分子は、抗体の一本重鎖と一本軽鎖とが形成した構造である。前述の重鎖と軽鎖とは、共有結合を介して連結され、また共有結合なしでも連結される、抗原を識別する単一価抗体構造である。
【0059】
Fab断片は、分子識別配列であり、抗原結合断片(Fab:fragment of antigen binding)であり、抗体分子の両アームに該当し、完全な軽鎖と重鎖とのVH構造領域及びCH1構造領域によって構成される。scFvは、分子識別配列であり、抗体の軽鎖可変部と重鎖可変部との遺伝子組み換えを介して得られた抗体断片の構造異性体である。細胞膜受容体の細胞外部位は、分子識別配列であり、細胞膜受容体は、一般的に、細胞外部に位置し、対応する抗原またはリガンドを識別及び結合することができる細胞外部位、受容体を細胞表面に固定させることができる膜貫通領域、及び細胞内のキナーゼ活性を有するか、あるいは信号を伝達することができる経路を有する細胞内領域を含む。細胞膜受容体のリガンドは、細胞膜受容体細胞外領域により、識別及び結合されるタンパク質、小さいペプチドまたは化合物を意味する。サイトカインは、免疫源、マイトジェン、またはその他の刺激剤が誘導した多様な細胞によって生産される低分子量の可溶性タンパク質であり、自然免疫、適応免疫、造血発生、細胞増殖、APSC多機能細胞及び損傷組織回復などの多様な機能を有する。該サイトカインは、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍懐死因子スーパーファミリー、コロニー刺激因子、走化性因子(ケモカイン)、成長因子などにも区分される。タンパク質発現タグとは、標的タンパク質のN末端またはC末端に添加される1つのアミノ酸配列を意味し、小さいペプチドまたは長いアミノ酸でもある。該タグの添加は、タンパク質の正確なフォールディングに有利であり、タンパク質の分離及び精製に有利であり、細胞内タンパク質の分解の低減にも有利である。頻繁に使用されるタグとしては、HA、SUMO、His、GST、GFP、Flagを含むが、それらに制限されるものはない。
【0060】
本発明のヘテロダイマー系二重特異性抗体に応用される抗体には、いかなる制限もない。望ましくは、従来技術において、すでに疾病の治療および/または予防に使用される抗体は、いずれも本発明に応用されるのである。
【0061】
本発明のヘテロダイマー系二重特異性抗体は、1または複数の置換、欠失、添加および/または挿入を有することができる。例えば、一部アミノ酸が、タンパク質構造中のその他のアミノ酸を置換するにしても、その他のポリペプチド(例えば、抗原)または細胞と結合する能力は明らかに損失されない。結合能とタンパク質の性質とが、タンパク質の生物機能的活性を決定するので、タンパク質配列上において、一部アミノ酸配列の置換を行っても、それらに対する生物学的な効用または活性を明らかに損失させない。
【0062】
さまざまな場合において、ポリペプチド変異体は、1または複数の保存的置換を含む。「保存的置換」とは、そのうちのアミノ酸が、類似性質を有した他のアミノ酸に置換されることを意味するので、ペプチド化学分野の当業者であるならば、ペプチドの二次構造及び親水性に基本的な変化が生じないということを予測することができるであろう。
【0063】
アミノ酸置換は、一般的に、疎水性、親水性、電荷、大きさなどの、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性に基づく。前述の多様な特徴を考慮した例示的置換は、本分野の当業者に周知であり、アルギニン及びリシン、グルタミン酸及びアスパラギン酸、セリン及びトレオニン、グルタミン及びアスパラギン、並びにバリン、ロイシン及びイソロイシンを含む。
【0064】
本発明で使用された用語である「同一性」は、本分野の公知の含意を有し、本分野の当業者も、異なる配列間の同一性を測定する規則と標準とが、配列を比較してギャップを導入(必要な場合、最大%の相同性を獲得するため)した後、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列変異体の残基と、非変異体配列との相同性百分率を意味するということを熟知している。本発明において、同一性限定を満足する状況において獲得された変異体配列は、母体配列が有する生物的活性を有さなければならない。本分野の当業者であるならば、前記活性を利用し、変異体配列を選別する方法及び手段を知っているであろう。本分野の当業者であるならば、本出願で公開された内容の教示下で、そのような変異体配列を容易に獲得することができるであろう。具体的な実施形態において、ポリヌクレオチドとポリペプチドの変異体は、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの同一性を有する。遺伝暗号の重複性のために、互いに同一アミノ酸配列をコードするそのような配列の変異体が存在することになる。
【0065】
本発明の他の実施形態においては、中程度あるいは高度にストリンジェントな条件下において、本発明が提供するポリヌクレオチドの配列またはその断片、あるいはその相補的配列とハイブリダイゼーションされるポリヌクレオチド組成物を提供する。該ハイブリダイゼーション技術は、分子生物学分野においては、公知の技術である。前述の目的のために、本発明のポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを試験するために使用される適切な中間ストリンジェント条件は、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液で前洗浄すること;50~65℃、5×SSCに一晩置く条件下でハイブリダイゼーションすること;次に、65℃で20分間、0.1%のSDSを含む2×、0.5×及び0.2×のSSCで、それぞれ2回ずつ洗浄することを含む。本分野の当業者であるならば、例えば、ハイブリダイゼーション溶液の塩含量、および/またはハイブリダイゼーションを行う温度を変更することにより、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを容易に操作することができるということを理解するであろう。例えば、他の実施形態において、適する高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、前述の条件を含むが、ハイブリダイゼーション温度を、例えば、60~65℃または65~70℃まで上昇させる点において異なっている。
【0066】
本発明の宿主細胞は、外来遺伝子発現に使用される全ての細胞でもあってもよく、大腸菌、酵母、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物細胞を含むが、それらに制限されるものではない。
【0067】
本発明のベクターは、いかなる類型の細胞または生物体においても、複製を行うことができるベクターであり、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド及びミニ染色体(minichromosome)を含む。ある実施形態において、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターは、ポリヌクレオチドの伝播または複製に適するベクターであるか、あるいは本発明のポリペプチド発現に適するベクターである。そのようなベクターは、本分野で公知であり、購入も可能である。
【0068】
「ベクター」は、シャトルベクターと発現ベクターとを含む。一般的に、プラスミド構造体は、それぞれ細菌において、プラスミドの複製と選択とに使用される複製原点(例えば、複製のColE1原点)及び選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性またはテトラサイクリン耐性)も含む。「発現ベクター」とは、細菌内または真核細胞内において、抗体断片を含む本発明の抗体発現に必要な制御配列または調節エレメントを含むベクターを意味する。
【0069】
本発明のベクターは、外来遺伝子発現に使用される全てのベクターであり、プラスミドベクターを含むが、それらに制限されるものではない。このとき、該プラスミドベクターは、少なくとも、複製開始サイト、プロモーター、標的遺伝子、マルチクローニングサイト、選抜マーカー遺伝子を含み、望ましくは、本発明の前記ベクターは、X0GCベクターのように、pCDNAを基に改変して得たプラスミドベクターを含むが、それに制限されるものではない。
【0070】
本発明の個体は、鳥類、爬虫類動物、哺乳類動物などを含む。望ましくは、哺乳類動物は、齧歯類動物、霊長類動物を含み、望ましくは、該霊長類動物は、ヒトを含む。
【0071】
本発明に係る疾病の範囲は、腫瘍を含むが、それに制限されるものではない。適する例としては、前記腫瘍は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平細胞癌、非小細胞性肺癌、鼻咽頭癌腫、食道癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、大腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、腎細胞癌、メラノーマなどの疾病を含む。
【0072】
薬理学的に許容可能な担体とは、薬理学分野の一般的な薬物担体を意味し、例えば、希釈剤、賦形剤及び水など、デンプンなどの充填剤、ショ糖、乳糖、微結晶性セルロースなど;セルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン及びポリビニルピロリドンなどの接着剤;グリセリンなどの湿潤剤;カボキシメチル澱粉ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロース、寒天、炭酸カルシウム及び炭酸水素ナトリウムなどの崩壊剤、四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;セタノール、ドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤;熟成土壌及びベントナイトなどの吸着担体;滑石粉、ステアリン酸カルシウム、マグネシウム、微粉末シリカゲル及びポリエチレングリコールなどの潤滑剤などである。それ以外にも、組成物に、香味剤、甘味料などの他の補助剤を添加することができる。
【0073】
以下では、後述される非制限的な実施例を介して、本発明についてさらに詳細に説明する。本分野の当業者であるならば、本発明の趣旨を外れずに、本発明に対して多様な改変を実施することができ、そのような改変も、本発明の範囲に該当するということを熟知しているであろう。
【0074】
後述される実験方法は、別段の説明がない限り、いずれも一般的な方法であり、使用された実験材料も、別段の説明がない限り、商社やメーカーから容易に購入することができるものである。本発明の後述の実施例で使用される各種抗体は、いずれも商業的ルートから求めた標準抗体である。
【実施例
【0075】
実施例1:抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子のベクター構造構築
それぞれヒト抗PD-1(Pem)抗体の重鎖と軽鎖とを含むX0GC発現ベクターを構築する。前記抗体可変部の配列は、http://www.imgt.org/3Dstructure-DB/cgi/details.cgi?pdbcode=9798に由来する。軽鎖可変部のヌクレオチド配列は、配列番号9に示されている通りであり、アミノ酸配列は、配列番号10に示されている通りである。軽鎖不変部のヌクレオチド配列は、配列番号3に示されている通りであり、アミノ酸配列は、配列番号4に示されている通りである。重鎖可変部のヌクレオチド配列は、配列番号11に示されている通りであり、アミノ酸配列は、配列番号12に示されている通りである。重鎖不変部のヌクレオチド配列は、配列番号13に示されている通りであり、アミノ酸配列は、配列番号14に示されている通りである。PCR方法により、軽鎖可変部及び軽鎖不変部、重鎖可変部及び重鎖不変部をそれぞれ増幅させる。本発明の全てのPCR反応において、NEB社のPhusionハイフィデリティーDNAポリメラーゼ(F-530L)を使用した。PCRプライマーは、相補的塩基配列の原則及び制限酵素サイトの必要に基づいて、一般的な設計を行う。反応系は、いずれもHO 8.9μl、5×PhusionハイフィデリティーDNAポリメラーゼ緩衝液4μl、1mMのdNTP 4μl、フォワードプライマー1μl、リバースプライマー1μl、PhusionハイフィデリティーDNAポリメラーゼ0.1μl、テンプレート1μlで構成される。可変部と不変部とのPCR産物を、1.5%のアガロースゲルを介して、電気移動させた後、DNA回収キット(Promega、A9282、以下同一)を使用し、対応する断片を回収した。回収された可変部断片及び不変部断片をテンプレートにし、可変部のフォワードプライマー及び不変部のリバースプライマーを使用し、PCR反応をさらに一回行った後、対応する断片をさらに回収し、重鎖と軽鎖との全体長断片を得た。X0GCベクター及び全体長断片を、EcoRI(NEB、製品コードR3101L)及びHindIII(NEB、製品コードR3104L)を使用して酵素切断し、酵素制限反応系は、10×緩衝液32μl、EcoRI及びHindIIIそれぞれ0.5μl、ゲル回収で得た全体長断片3μl、HO 14.5μlである。該制限酵素系を、37℃条件下で、3時間反応させた。制限酵素産物を、T4DNA連結酵素(NEB、製品コードM0202V)を利用して連結し(以下、同一)、反応系は、10×連結酵素緩衝液2μl、連結酵素0.5μl、ゲル回収で得た全体長断片3μl、ゲル回収で得たX0GCベクター3μl、HO 11.5μlであった。それを室温で連結し、12時間反応させた。連結産物を、大腸菌コンピテント細胞DH5α(Tiangen、CB104、以下同一)に形質転換した。真核細胞において、抗体の重鎖と軽鎖とをそれぞれ発現させるための抗体重鎖と抗体軽鎖とのX0GC発現ベクターを獲得した。
【0076】
本発明は、同時に、他の抗ヒトPD-1(BJHM)の抗体重鎖と抗体軽鎖とのX0GC発現ベクターをそれぞれ構築した。そのうち、軽鎖可変部のヌクレオチド配列は、配列番号15に示されている通りであり、アミノ酸配列は、配列番号16に示されている通りであり、る。軽鎖不変部のヌクレオチド配列は、配列番号3に示されている通りであり、アミノ酸配列は、配列番号4に示されている通りである。重鎖可変部のヌクレオチド配列は、配列番号17に示されている通りであり、アミノ酸配列は、配列番号18に示されている通りである。重鎖不変部のヌクレオチド配列は、配列番号13に示されている通りであり、アミノ酸配列は、配列番号14に示されている通りである。真核細胞において、抗体の重鎖と軽鎖とをそれぞれ発現させるための抗体重鎖と抗体軽鎖とのX0GC発現ベクターを獲得した。
【0077】
抗ヒトHER2抗体の重鎖と軽鎖とのX0GC発現ベクターをそれぞれ構築し、そのうち抗体可変部の配列は、http://www.drugbank.ca/drugs/DB00072に由来にし、重鎖不変部は、ヒトIgG1(Fc2)である。軽鎖可変部のヌクレオチド配列は、配列番号1に示されている通りであり、アミノ酸配列は、配列番号2に示されている通りである。軽鎖不変部のヌクレオチド配列は、配列番号3に示されている通りであり、アミノ酸配列は、配列番号4に示されている通りである。重鎖可変部のヌクレオチド配列は、配列番号5に示されている通りであり、アミノ酸配列は、配列番号6に示されている通りである。重鎖不変部のヌクレオチド配列は、配列番号7に示されている通りであり、アミノ酸配列は、配列番号8に示されている通りである。真核細胞において、抗体の重鎖と軽鎖とをそれぞれ発現させるための抗体重鎖と抗体軽鎖とのX0GC発現ベクターを獲得した。
【0078】
実施例2:抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子の発現
抗ヒトPD-1抗体の重鎖と軽鎖とを含む発現ベクターそれぞれを、293F細胞にトランスフェクションし(FreeStyle(登録商標)293-F Cells、製品コードR79007、invitrogen)、また抗ヒトHER2抗体の重鎖と軽鎖とを含む発現ベクターもそれぞれ293F細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションの1日前に細胞を播種し、トランスフェクションの当日には、細胞を、遠心分離によって収集し、細胞を新鮮なFreeStyle(登録商標)293発現培地(FreeStyle(登録商標)293 Expression Medium、製品コード12338001、Gibco)に再懸濁させ、細胞密度は、200*10細胞/mLであった。トランスフェクション体積によってプラスミドを添加し、最終濃度が36.67μg/mLになれば、軽く均一混合し、次に、線形PEI(ポリエチレンイミン、線形、M.W.25000、製品コード43896、Alfa Aesar)を添加し、最終濃度が55μg/mLになれば、軽く均一混合した。その後、細胞培養器に添加し、120rpm速度の振盪器で37℃で1時間培養した。その後、トランスフェクション体積の19倍の新鮮な培地を添加した。続けて、120rpm速度の振盪器で、37℃で培養した。5~6日間トランスフェクションした細胞培養上澄み液を、遠心分離によって収集した。
【0079】
ELISA方法で、発現量を測定した。クロマトグラフィーカラムを応用して精製する前に、0.2μmの濾過膜で濾過して沈殿物を除去した。この段階は、4℃の温度で行われた。
【0080】
実施例3:抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子発現物の精製
AKTA explorer 100型タンパク質精製システム(GE Healthcare)及び親和性クロマトグラフィーrProtein A Sepharose Fast Flow(16mm I.D.、22mL、GE Healthcare)を使用し、4℃で精製を行った。まず、移動相A(20mMリン酸ナトリウム緩衝液、150mM塩化ナトリウム、pH7.4)で、クロマトグラフィーカラムの平衡化を行い、基線が安定化された後、前述の処理過程を経た細胞上澄み液をローディングした。流速は、5mL/minであった。サンプルをローディングした後には、移動相Aで平衡化を行った。該サンプルは、それぞれ抗PD-1発現物及び抗HER2発現物である。その後、まず、移動相B1で(0.5Mアルギニンを含む移動相A)、カラム体積の5倍を溶出させ、移動相B2で(100mMクエン酸、pH3.0)、カラム体積の5倍で洗浄し、溶出ピーク、すなわち、目的タンパク質のピークを収集した。前記洗浄段階の流速は、いずれも5mL/minであった。抗PD-1-Fc1の溶出ピーククロマトグラムは、図1に示されている通りであり、抗HER2-Fc2の溶出ピークも、それと類似している(結果は含まず)。表示された溶出ピーク(灰色領域で表示)を収集し、1Mの酢酸ナトリウム溶液を滴下し、5.0に調節した。
【0081】
実施例4.抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子の精製
抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子の構造は、図2に示されている通りである。
【0082】
前述のrProtein A Sepharose Fast Flow(16mm I.D.、22ml、GE Healthcare)方法で獲得した抗PD-1及び抗HER2発現物に、in vitro組み換えを行い、ヘテロダイマーを獲得した。まず、精製して収集した前述のタンパク質溶液を、限外濾過濃縮チューブを介して限外濾過濃縮し(標準カットオフ分子量10kDa)、溶液をリン酸塩緩衝液(PBS:phosphate buffer saline)(pH=7.4)に置き換えた。獲得した抗PD-1及び抗HER2の発現物に、それぞれ前記PBSを添加し、1mg/mlに調節し、1/200倍の最終体積の1M DTTを添加し、DTT最終濃度が、各5mMになるようにした。4℃条件下において還元を行い(3~8時間)、還元過程を介して、二硫化結合が開放され、抗PD-1及び抗HER2の発現物に含有された少量の抗体ホモダイマー分子ヒンジ領域の二硫化結合も開放され、一本重鎖と一本軽鎖とを含んだハーフ抗体分子を形成し、その構造は、図3に図示されている通りである。還元された試料は、移動相緩衝液において、1mMのDTT還元剤を含むSEC-HPLCによって分析され、該分析結果は、図4に図示されている通りである。抗PD-1及び抗HER2のホモダイマー重量比は、いずれも10%未満であり、それに対応し、ハーフ抗体分子の重量比は、いずれも90%を超えた。
【0083】
その後、還元された抗PD-1及び抗HER2のハーフ抗体分子などを、モル比率によって混合し、4℃の条件下において、24時間組み換え反応を行った。該組み換え過程において、抗PD-1及び抗HER2のハーフ抗体分子は、CH2及びCH3の非共有相互作用を介して、同時に、抗PD-1及び抗HER2のハーフ抗体分子を含むヘテロダイマー系二重特異性抗体を形成した。その後、タンパク質溶液を、限外濾過濃縮チューブで限外濾過濃縮(標準カットオフ分子量10kDa)し、溶液をリン酸塩溶液(PBS、pH=7.4)に置き換えて還元を終了し、空気または酸化剤で酸化反応を行い、ヘテロダイマー系二重特異性抗体の二硫化結合がさらに形成されるようにした。該酸化反応の条件は、酸化剤である100mM L-デヒドロアスコルビン酸を添加し、タンパク質最終濃度が1mg/mlになり、酸化剤最終濃度が1mMになれば、4℃条件下で酸化を進め、24時間反応を行う。前述の酸化反応において獲得したサンプルに対して、SDS-PAGE分析を行い、結果は、図5に図示されている通りであった。
【0084】
前述の抗PD-1及び抗HER2のハーフ抗体分子の還元酸化を経て得たヘテロダイマー分子を、限外濾過濃縮チューブを介して限外超濾過濃縮し(標準カットオフ分子量10kDa)、溶液を、pH5.8のリン酸ナトリウム緩衝液10mMに置き換えた。AKTA explorer 100型タンパク質精製システム(GE Healthcare)及びイオンクロマトグラフィーカラムSource 15S(16mm I.D.、17ml、GE Healthcare)を使用し、4℃下で精製を行った。まず、移動相A(10mMリン酸ナトリウム、pH7.0)を使用し、クロマトグラフィーカラムを平衡化し、基線が安定化された後、前述の処理を経たタンパク質溶液をローディングした。流速は、3ml/minであった。サンプルのローディング後、移動相Aを使用して平衡化を行い、その後、A(10mMリン酸ナトリウム、pH5.8)を使用し、B(10mMリン酸ナトリウム、pH5.8)まで、段階的にカラム体積の20倍(0% B~100% B、170min、流速2ml/min)で洗浄し、表示された溶出メインピークを収集した(図6参照)。収集したタンパク質溶液は、限外濾過濃縮チューブを介して限外濾過濃縮し(標準カットオフ分子量10kDa)、溶液をリン酸塩溶液(PBS、pH=7.4)に置き換えて濾過殺菌し、4℃の温度で保存した。精製物をSDS-PAGE方法によって分析した。結果は、図7に図示されている通りである。SEC-HPLC純度分析の結果、図8に図示されているように、純度は97.3%である。
【0085】
実施例5:抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子の安定性
十分に密封した10mg/mLのPD-1/HER2ヘテロダイマーサンプルを、40℃の恒温器(BINDER KBF240)に放置し、対応する時間ポイントに(基線(第0日)、1日後、3日後、5日後、7日後、14日後)、20μgのサンプルを取り、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)を行って分離させた。前記SEC-HPLCの条件は、次の通りである:(1)排除クロマトグラフィーカラム:TSKgel G3000SWxl(Tosoh Bioscience)、5μm、7.8mm×30cm;(2)移動相:5mM PBS、150mM NaCl、pH6.7;(3)流速:0.6mL/min;(4)紫外線探知波長:280nm;(5)収集時間:30min。使用した測定器は、Agilent 1200 Infinityクロマトグラフィー装置であり、Agilent ChemStationを利用し、クロマトグラフ記録を行い、余剰モノマーの比率を計算した。図9(10mg/mL)及び図10(1mg/mL)に示されているように、40℃の実験条件下で、前記ダイマーは、明らかな凝集が起こらないので、前記PD-1/HER2ヘテロダイマーは、比較的優秀な熱安定性を有すると見られる。
【0086】
実施例6:抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子の体外結合活性
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用し、PD-1/HER2ヘテロダイマー抗体と、1つの抗原との結合能を測定した。
【0087】
その具体的な実施過程は、次の通りである:pH9.6の炭酸塩緩衝溶液において、96ウェル高吸着ELISAプレート上で組み換えられたヒトPD-1(Beijing Yiqiao Shenzhou、製品コード10377-H08H)またはヒトHER2(Beijing Yiqiao Shenzhou、製品コード10004-H08H)でコーティングを行った。コーティング濃度は、1μg/mLであり、コーティング量は、ウェル当たり100μLであった。該コーティングは、4℃で一晩行われた。PBST洗浄を5回行った。1%のBSAを含むPBSTを利用し、ウェル当たり300μLになった時点で密封し、25℃で1時間培養させた。PBST洗浄を5回行った。1%のBSAを含むPBSTにおいて、連続希釈したヘテロダイマー抗体サンプル、及び対照群を、ウェル当たり100μLずつ添加し、25℃で1時間培養させた。PBST洗浄を5回行った。その後、1%のBSAを含んだPBSTにおいて、1:2,000に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ標識された抗ヒトIgG抗体(Chemicon、製品コードAP309P)を添加し、ウェル当たり100μL添加し、25℃で1時間培養した。PBST洗浄を5回行った。表色基質TMBを、ウェル当たり100μLずつ添加し、室温で10分間発色させた。1MのHSOを、ウェル当たり100μLずつ添加し、発色を終了させた。マイクロプレート読取り機で、450nmの吸光度を読み取った。
【0088】
その結果、図11に図示されているように、抗PD-1pem/抗HER2及び抗PD-1BJHM/抗HER2は、いずれもPD-1及びHER2に対する高い親和力を有し、二価単一クローン抗体の抗原親和的活性を比較的良好に保存した。そのうち、抗PD-1BJHM/抗HER2は、PD-1pem/抗HER2に比べ、さらに強いPD-1親和力を有する。
【0089】
実施例7:抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子の二重標的抗原との同時結合活性
フローサイトメトリー(FACS)を使用し、PD-1高発現のCHO/PD-1(GenScript、製品コードM00529)細胞上と、HER2高発現のSK-BR-3細胞上とにおいて、PD-1/HER2ヘテロダイマー抗体と二重標的抗原との同時結合能を測定した。
【0090】
PKH26試薬キット(Sigma、製品コードSLBH4568V)の使用マニュアルを参照し、CHO/PD-1細胞を染色した。要約すると、CHO/PD-1細胞を収集し、無血清培地において1回洗浄した後、PKH26試薬キットのDiluent Cを利用し、CHO/PD-1をそれぞれ2×10/mLの細胞懸濁液に製造し、PKH26染料を4μMまで希釈した後、1:1で混合する。本混合懸濁液の細胞密度は、1×10/mLであり、PKH26の濃度は、2μMであった。室温において1時間培養させた後、同等な体積を有するFBSを利用し、1分間培養させた後、染色を終了させる。400gで10分間遠心分離させた後、完全培地を利用して2回洗浄し、完全培地にさらに懸濁させて準備する。CFSE試薬キット(Life technology、製品コードC34554)の使用マニュアルを参照し、SK-BR-3細胞を染色した。要約すれると、PBSでCFSEを、作業濃度0.5まで希釈し、37℃で予熱し、1,000rpmの速度で5分間遠心分離し、SK-BR-3細胞を収集し、予熱されたCFSE作業溶液を、SK-BR-3に再懸濁させ、37℃で15分間培養し、1,000rpm速度で5分間細胞を収集した後、さらに完全培地に再懸濁させて30分間培養し、完全培地を利用して1回洗浄した後、完全培地に懸濁させて準備する。
【0091】
前記染色された細胞を、遠心分離によって収集し、2%のFBSを含む冷PBSで1回洗浄した。2%のFBSを含む冷PBSに、細胞を再懸濁させれば、細胞密度は、5×10/mLになる。SK-BR-3及びCHO/PD-1を、1:1で混合した後、各フローパイプから100μLずつ取り(すなわち、2.5×10のSK-BR-3、及び2.5×10のCHO/PD-1)、さらに2%のFBSを含んだ冷PBSに希釈させたヘテロダイマー抗体サンプル100μL、対照群及び同型対照群(ヒト免疫グロブリン、Jiangxi Boya Bio-pharmaceutical Co.,Ltd、国家医薬品許可番号S19993012)を添加した。最終濃度は、5nMである。フローパイプは、氷上で30分間培養させた。2%のFBSを含むPBSで2回洗浄した。細胞を500μLの冷PBSに再懸濁させ、該細胞懸濁液をフローサイトメトリーで解析した。
【0092】
その結果、表1及び図12に示されているように、ヘテロダイマー抗体が、同時にPD-1高発現CHO/PD-1細胞及びHER2高発現SK-BR-3細胞と結合することにより、PD-1/HER2ヘテロダイマー抗体が、SK-BR-3細胞及びCHO/PD-1細胞の密接な関連を誘発し、それは、腫瘍細胞に対するT細胞の殺傷を媒介する基になる。
【0093】
【表1】
【0094】
実施例8.抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子のPD-1と、リガンドPD-L1,PD-L2との結合に対する遮断活性
pH9.6のリン酸塩緩衝溶液を利用し、96ウェル高吸着ELISAプレート上において、組み換えヒトPD-1-Fcコーティングを行った。コーティング濃度は、1μg/mL、コーティング量は、ウェル当たり100μLであり、該コーティングは、4℃で一晩行われた。PBST洗浄を5回行った。1%のBSAを含むPBSTを利用し、ウェル当たり300μLになった時点で密封し、25℃で1時間培養させた。PBST洗浄を5回行った。1%のBSAを含んだPBSTで配列希釈したヘテロダイマーサンプル及び対照群を添加し、同時に、最終濃度1μg/mLであるビオチン標識のPD-L1-Fc、または最終濃度4μg/mLであるビオチン標識のPD-L2をウェル当たり100μLずつ添加し、25℃で1時間培養した。PBST洗浄を5回行った。その後、1%のBSAを含んだPBSTにおいて、1:1,000に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ標識のストレプトアビジン(BD、製品コード554066)を、ウェル当たり100μL添加し、25℃で1時間培養した。PBST洗浄を5回行った。表色基質TMBを、ウェル当たり100μLずつ添加し、室温で10分間発色させた。1MのHSOを、ウェル当たり100μLずつ添加し、発色を終了させた。マイクロプレート読取り機で、450nmの吸光度を読み取った。
【0095】
その結果、図13に示されているように、抗PD-1pem/抗HER2及び抗PD-1BJHM/抗HER2は、いずれもPD-1/PD-L1結合、PD-1/PD-L2結合を遮断し、二価単一クローン抗体の遮断活性を比較的良好に保存した。そのうち、抗PD-1BJHM/抗HER2は、PD-1pem/抗HER2に比べ、さらに強いPD-1遮断活性を有する。
【0096】
実施例9.抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子のT細胞サイトカイン分泌増強活性
ヒトPBMC細胞(Lonza、製品コードCC-2702)を収集した。ヒトPBMC細胞を、細胞密度2×10/mLで、完全培地(10%のFBSを含むRPMI 1640)に再懸濁させた。ウェル当たり100μL(ウェル当たり2×10個の細胞)で96ウェルプレートに接種した後、完全培地を使用して希釈したPD-1/HER2ヘテロダイマー抗体サンプル及び対照群を、ウェル当たり50μLずつ添加した。完全培地で希釈した、最終濃度1μg/mLのPHA(Sigma、製品コードL-2769)を、ウェル当たり50μLずつ添加した。培養プレートを、37℃の二酸化炭素恒温器に配置して培養した。3日間培養させた後、50μLの上澄み液を抽出し、サイトカインIL-2(RayBiotech、製品コードELH-IL2)の検出に利用した。
【0097】
図14に示されているように、ヒトT細胞がPHAの刺激を受けると、IL-2の分泌が活性化される。PD-1抗体を添加すると、T細胞の活性化が増大され、サイトカインの分泌が促進される。PD-1/HER2ヘテロダイマー抗体は、PD-1単一クローン抗体に対応する効果を有し、濃度依存的に、サイトカインIL-2の分泌を促進させる。
【0098】
実施例10.ラット体内での抗PD-1/抗HER2ヘテロダイマー抗体分子に対する薬物動態学的研究
実験材料としては、Beijing Huafukang Biotechnologyから購入した、6~8週齢メスSDラットを使用した。ラットを環境に1週間適応させた後、任意にグループに分け、グループごとに3匹のラットが含まれる。全てのグループに、それぞれPD-1単一クローン抗体、HER2単一クローン抗体、PD-1/HER2ヘテロダイマー抗体を投与した。用量は、いずれも20nmol/kgであり、静脈注射で1回投与した。投与直後、投与後5分、30分、1時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、168時間、216時間、264時間、312時間、360時間、408時間、480時間ごとに、眼瞼から、0.2mL~0.3mLの血液を採取した。抗凝固剤を使用せず、血液サンプルを、室温で30分~1時間放置し、血液凝固後には、3000rpmの速度で10分間遠心分離た。得られた血清サンプルを-80℃で冷凍し、テストのために保管した。
【0099】
ELISA方法で、血清中のPD-1単一クローン抗体、HER2単一クローン抗体、PD-1/HER2ヘテロダイマー抗体の濃度を測定した。簡略に述べれば、pH9.6の炭酸塩緩衝液を使用し、4℃でヒト組み換えHER2タンパク質(Beijing Yiqiao Shenzhou、製品コード10004-H08H)または組み換えPD-1タンパク質(Beijing Yiqiao Shenzhou、製品コード10377-H08H)を、高吸着ELISAプレートで一晩コーティングした。PBSTで洗浄した。非特異的結合を防止するために、5%の脱脂粉乳を含むPBSTで、前記プレートを密閉し、PBST洗浄を行った。その後、10%の混合ラット血清と、1%のBSAを含むPBSTに希釈したテスト用保管血清サンプルとを投入し、25℃で1時間培養した後、PBSTで前記プレートを洗浄した。5%の脱脂粉乳を含むPBSTで希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ標識の抗ヒトIgG抗体(Chemicon、製品コードAP309P)を添加し、25℃で1時間培養した後、PBSTで前記プレートを洗浄した。最後に、表色基質TMBを使用し、室温で10分間発色を行った。1MのHSOを添加し、発色を終了させた。マイクロプレート読取り機で、450nmの吸光度を読み取った。
【0100】
その結果、図15に示されているように、1回静脈注射に利用された20nmol/kgのPD-1/HER2ヘテロダイマー抗体は、ラットの体内で、良好な薬物動態学的特徴を示した。抗PD-1BJHM/抗HER2ヘテロダイマー抗体の薬物動態学的媒介変数は、以下の通りである:半減期(t1/2)は、207時間であり、血中濃度曲線下面積(AUClast)は、33,448nM.hrであり、C0は、534nMであり、見かけ体積(Vd)は、148mL/Kgであり、除去率(CL)は、0.50mL/hr/kgであり、平均残留時間(MRTlast)は、159時間である。
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
付記1:PD-1と特異的結合することができる第1抗原結合機能領域、及びHER2と特異的結合することができる第2抗原結合機能領域を含み、1又は複数の二硫化結合を介して連結された第1Fc鎖及び第2Fc鎖を含み、前記第1Fc鎖と前記第2Fc鎖は、共有原子が結合又はリンカーを介して、それぞれPD-1抗原結合機能領域及びHER2抗原結合機能領域に連結されるか、あるいは前記第1Fc鎖及び前記第2Fc鎖は、共有原子が結合又はリンカーを介して、それぞれHER2抗原結合機能領域及びPD-1抗原結合機能領域に連結され、前記第1Fc鎖及び第2Fc鎖は、以下の部位において、5個アミノ酸の置換を含む:
1)第1Fc鎖上においては、T366番目及びD399番目のアミノ酸置換、第2Fc鎖上においては、L351番目,Y407番目及びK409番目アミノ酸の置換;又は
2)第1Fc鎖上においては、T366番目及びK409番目のアミノ酸置換、第2Fc鎖上においては、L351番目,D399番目及びY407番目のアミノ酸置換;
前記アミノ酸置換を含む第1Fc鎖と第2Fc鎖は、それぞれホモダイマーを形成する傾向なしに、互いにヘテロダイマーを形成する傾向がさらに強く、
前記アミノ酸位置は、Kabat EU索引番号体系によって番号が付けられる、
ヘテロダイマー系二重特異性抗体。
付記2:前記第1Fc鎖及び第2Fc鎖のアミノ酸置換は、
a)L351G、L351Y、L351V、L351P、L351D、L351E、L351K又はL351W;
b)T366L、T366P、T366W又はT366V;
c)D399C、D399N、D399I、D399G、D399R、D399T又はD399A;
d)Y407L、Y407A、Y407P、Y407F、Y407T又はY407H;及び
e)K409C、K409P、K409S、K409F、K409V、K409Q又はK409R;
である、付記1に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
付記3:前記アミノ酸置換は、
第1Fc鎖のT366L及びD399R置換、第2Fc鎖のL351E,Y407L及びK409V置換;
b)第1Fc鎖のT366L及びD399C置換、第2Fc鎖のL351G,Y407L及びK409C置換;
c)第1Fc鎖のT366L及びD399C置換、第2Fc鎖のL351Y,Y407A及びK409P置換;
d)第1Fc鎖のT366P及びD399N置換、第2Fc鎖のL351V,Y407P及びK409S置換;
e)第1Fc鎖のT366W及びD399G置換、第2Fc鎖のL351D,Y407P及びK409S置換;
f)第1Fc鎖のT366P及びD399I置換、第2Fc鎖のL351P,Y407F及びK409F置換;
g)第1Fc鎖のT366V及びD399T置換、第2Fc鎖のL351K,Y407T及びK409Q置換;
h)第1Fc鎖のT366L及びD399A置換、第2Fc鎖のL351W,Y407H及びK409R置換
を含む、付記1又は2に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
付記4:前記アミノ酸置換は、
a)第1Fc鎖のT366L及びK409V置換、第2Fc鎖のL351E,Y407L及びD399R置換;
b)第1Fc鎖のT366L及びK409C置換、第2Fc鎖のL351G,Y407L及びD399C置換;
c)第1Fc鎖のT366L及びK409P置換、第2Fc鎖のL351Y,Y407A及びD399C置換;
d)第1Fc鎖のT366P及びK409S置換、第2Fc鎖のL351V,Y407P及びD399N置換;
e)第1Fc鎖のT366W及びK409S置換、第2Fc鎖のL351D,Y407P及びD399G置換;
f)第1Fc鎖のT366P及びK409F置換、第2Fc鎖のL351P,Y407F及びD399I置換;
g)第1Fc鎖のT366V及びK409Q置換、第2Fc鎖のL351K,Y407T及びD399T置換;
h)第1Fc鎖のT366L及びK409R置換、第2Fc鎖のL351W,Y407H及びD399A置換
を含む、付記1~3のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
付記5:前記第1Fc鎖のアミノ酸置換は、T366L及びD399Rであり、第2Fc鎖のアミノ酸置換は、L351E、Y407L及びK409Vである、付記1に記載のヘロダイマー系二重特異性抗体。
付記6:前記Fc鎖は、IgG由来のものである、付記1~5のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
付記7:前記PD-1抗原結合機能領域及びHER2抗原結合機能領域は、Fab断片又はscFv断片である、付記1~6のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
付記8:前記PD-1抗原結合機能領域及びHER2抗原結合機能領域は、いずれもFab断片である、付記1~7のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
付記9:前記PD-1抗原結合機能領域及びHER2抗原結合機能領域のうち一つは、Fab断片であり、他の一つは、scFvである、付記1~7のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
付記10:前記Fab断片は、異なる第1重鎖可変部及び第2重鎖可変部、並びに異なる第1軽鎖可変部及び第2軽鎖可変部を含むものである、付記7~9のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
付記11:前記第1Fc鎖、及びそれと連結されるPD-1抗原結合機能領域、並びに前記第2Fc鎖、及びそれと連結されるHER2抗原結合機能領域、又は第1Fc鎖、及びそれと連結されるHER2抗原結合機能領域、並びに第2Fc鎖、及びそれと連結されるPD-1抗原結合機能領域は、単独で存在するか、あるいは還元剤と同時に存在する場合、ホモダイマーを形成する重量比率が、いずれも50%未満である、付記1~10のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
付記12:前記二重特異性抗体のアミノ酸配列は、配列番号2,4,6,18,10,12,14,16及び18から選択されるものである、付記1~11のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体。
付記13:付記1~12のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体をコードする、分離されたポリヌクレオチド。
付記14:配列番号1,3,5,7,9,11,13,15及び17から配列が選択される、付記13に記載の分離されたポリヌクレオチド。
付記15:付記13又は14に記載の分離されたポリヌクレオチドを含む、組み換え発現ベクター。
付記16:前記発現ベクターが、pCDNAに基づいて改変して得られたプラスミドベクターX0GCである、付記15に記載の組み換え発現ベクター。
付記17:付記13又は14に記載のポリヌクレオチド、あるいは付記15又は16に記載の組み換え発現ベクターを含む宿主細胞。
付記18:ヒト胎児腎細胞HEK293、又はHEK293細胞を基に改変して得たHEK293T、HEK293E、HEK293F;チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO、又はCHO細胞を基に改変して得たCHO-S、CHO-dhfr、CHO/DG44、ExpiCHOから選択される、付記17に記載の宿主細胞。
付記19:付記1~12のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、付記13又は14に記載の分離されたポリヌクレオチド、付記15又は16に記載の組み換え発現ベクター、あるいは付記17又は18に記載の宿主細胞、及び薬理学的に許容可能な担体を含む組成物。
付記20:付記1~12のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体を生産する方法であって、
1)付記13又は14に記載の分離されたポリヌクレオチド、あるいは付記15又は16に記載の組み換え発現ベクターをそれぞれ宿主細胞内で発現させる段階と、
2)宿主細胞内でそれぞれ発現されるタンパク質を精製及び還元させる段階と、
3)還元されたタンパク質を混合した後、混合物を酸化させる段階と
を含む方法。
付記21:前記宿主細胞は、ヒト胎児腎細胞HEK293、又はHEK293細胞を基に改変して得たHEK293T、HEK293F、HEK293F;チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO、又はCHO細胞を基に改変して得たCHO-S、CHO-dhfr-、CHO/DG44、ExpiCHOから選択される、付記20に記載の方法。
付記22:前記還元段階は、1)還元剤を添加する段階として、該還元剤が、2-メルカプトエチルアミン、ジチオトレイトール、トリ(2-カルボキシエチル)ホスファイン、又はその他の化学的誘導体から選択される段階と、2)0.1mM以上の濃度のジチオトレイトールの存在下で、4℃条件下で、少なくとも3時間還元反応を行う段階と、3)脱塩などを介して、還元剤を除去する段階とを含む、付記20又は21に記載の方法。
付記23:前記酸化段階は、1)空気中で酸化させるか、あるいは酸化剤を添加することを含み、前記酸化剤は、L-デヒドロアスコルビン酸、又はその他の化学的誘導体から選択され、2)0.5mM以上の濃度のL-デヒドロアスコルビン酸の存在下で、4℃条件下で、少なくとも5時間酸化反応を行う段階を含む、付記20~22のいずれか1項に記載の方法。
付記24:分離精製段階をさらに含む、付記20~23のいずれか1項に記載の方法。
付記25:個体疾病の予防及び/又は治療に使用される薬物の製造における、付記1~12のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、及び/又は付記13又は14に記載の分離されたポリヌクレオチド、及び/又は付記15又は16に記載の組み換え発現ベクター、及び/又は付記17又は18に記載の宿主細胞、又は付記19に記載の組成物の用途。
付記26:個体疾病の予防及び/又は治療に使用される薬物として使用される、付記1~12のうちいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、及び/又は付記13又は14に記載の分離されたポリヌクレオチド、及び/又は付記15又は16に記載の組み換え発現ベクター、及び/又は付記17又は18に記載の宿主細胞、及び/又は付記19に記載の組成物。
付記27:付記1~12のいずれか1項に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、及び/又は付記13又は14に記載の分離されたポリヌクレオチド、及び/又は付記15又は16に記載の組み換え発現ベクター、及び/又は付記17又は18に記載の宿主細胞、及び/又は付記19に記載の組成物をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、疾病を予防及び/又は治療する方法。
付記28:前記個体が哺乳動物であり、望ましくは、ヒト個体である、付記25に記載の用途、付記26に記載のヘテロダイマー系二重特異性分子、分離されたポリヌクレオチド、組み換え発現ベクター、宿主細胞又は組成物、又は付記27に記載の方法。
付記29:前記疾病が、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平細胞癌、非小細胞肺癌、鼻咽頭癌腫、食道癌、胃癌、膵臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、大腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、メラノーマなどの疾病から選択される、付記25に記載の用途、付記26に記載のヘテロダイマー系二重特異性抗体、分離されたヌクレオチド、組み換え発現ベクター、宿主細胞又は組成物、又は付記27に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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