IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタホーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ユニット建物 図1
  • 特許-ユニット建物 図2
  • 特許-ユニット建物 図3
  • 特許-ユニット建物 図4
  • 特許-ユニット建物 図5
  • 特許-ユニット建物 図6
  • 特許-ユニット建物 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】ユニット建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
E04B1/348 L
E04B1/348 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018002094
(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2019120092
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】金子 翔太
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-302780(JP,A)
【文献】特開平04-174149(JP,A)
【文献】国際公開第2013/174385(WO,A1)
【文献】特開2000-120174(JP,A)
【文献】特開平04-254645(JP,A)
【文献】特開2010-090593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水下側建物ユニットと、
前記水下側建物ユニットと離し置きされた水上側建物ユニットと、
前記水下側建物ユニットの上に設置された水下側屋根フレームと、
前記水上側建物ユニットの上に設置された水上側屋根フレームと、
前記水下側屋根フレームと前記水上側屋根フレームとの間に設置された離置部屋根フレームと、
前記水下側屋根フレーム、水上側屋根フレーム及び離置部屋根フレームの上に設置された陸屋根と、を備えるユニット建物であって、
前記水下側屋根フレームと前記水上側屋根フレームの勾配は、同一であり、
前記離置部屋根フレームの勾配は、前記水下側屋根フレームと前記水上側屋根フレームの勾配よりも急勾配であり、
前記陸屋根は、前記離置部屋根フレームに固定された離置部屋根下地材を含んで構成され、
前記離置部屋根下地材の水下側端部は、前記水下側屋根フレームの上に位置し、
前記離置部屋根下地材の水上側端部は、前記水上側屋根フレームの上に位置し、
前記離置部屋根下地材の水上側端部は、前記水上側屋根フレームに固定されている、
ユニット建物。
【請求項2】
前記陸屋根は、前記離置部屋根フレームに固定された離置部屋根下地材と、前記離置部屋根フレームの上に設置された離置部防露断熱材と、を含んで構成され、
前記離置部防露断熱材の水上側端部は、ディスク板およびネジによって前記水上側屋根フレームに固定されている、
請求項1に記載のユニット建物。
【請求項3】
前記離置部屋根下地材は、前記離置部屋根フレームの水下側端部および水上側端部に固定され、
前記離置部防露断熱材は、前記離置部屋根フレームの水下側端部および水上側端部に固定されている、
請求項2に記載のユニット建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1開示のユニット建物では、屋根の棟側から軒先への方向に複数の建物ユニットが離し置き設置された場合において、棟側屋根ユニットを支持する建物ユニットに、当該棟側屋根ユニットを嵩上げする嵩上げ部材が設置されている。これにより、棟側屋根ユニット及び軒先側屋根ユニットの屋根面を棟から軒先の方向へ段差なく設置し、この屋根面を連続した同一の勾配面にできるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-302780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1開示のユニット建物では、屋根面を連続した同一の勾配面にするものであるため、建物ユニットの離置距離(離置スパン)にあわせた嵩上げが必要となって部材のバリエーションが増加してしまう。
【0005】
本発明の目的は、離置スパンのバリエーションが増加しても、ユニット部屋根フレームの高さバリエーションを増加させることなく対応することができるユニット建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るユニット建物は、水下側建物ユニットと、前記水下側建物ユニットと離し置きされた水上側建物ユニットと、前記水下側建物ユニットの上に設置された水下側屋根フレームと、前記水上側建物ユニットの上に設置された水上側屋根フレームと、前記水下側屋根フレームと前記水上側屋根フレームとの間に設置された離置部屋根フレームと、前記水下側屋根フレーム、水上側屋根フレーム及び離置部屋根フレームの上に設置された陸屋根と、を備えるユニット建物であって、前記水下側屋根フレームと前記水上側屋根フレームの勾配は、同一であり、前記離置部屋根フレームの勾配は、前記水下側屋根フレームと前記水上側屋根フレームの勾配と異なる。
【0007】
この態様では、互いに離置される建物ユニット(水下側建物ユニットと水上側建物ユニット)それぞれの上にユニット部屋根フレーム(水下側屋根フレームと水上側屋根フレーム)が設置される。ユニット部屋根フレームの間には、離置部屋根フレームが設置される。そして、これら3つの屋根フレーム(水下側屋根フレーム、水上側屋根フレーム及び離置部屋根フレーム)の上に陸屋根が設置される。
【0008】
ここで、仮に、ユニット部屋根フレーム(水下側屋根フレームと水上側屋根フレーム)の勾配と離置部屋根フレームの勾配とを同一の設計とする場合、離置スパン(水下側建物ユニットと水上側建物ユニットとの距離)のバリエーション増加に応じて、離置部屋根フレームのバリエーションだけでなく、ユニット部屋根フレームの高さバリエーションも増加させる必要がある。なぜなら、離置部を挟んで隣り合うユニット部屋根フレームの高低差を、離置スパンに応じた高低差に合わせる必要があるためである。
【0009】
これに対し、この態様では、ユニット部屋根フレームの勾配と、離置部屋根フレームの勾配とが異なる。
このため、例えば、離置部を挟んで隣り合うユニット部屋根フレームの高低差をそのままに、離置部屋根フレームのバリエーション(幅と勾配のバリエーション)を増加させるだけで済む。
つまり、離置スパンのバリエーションが増加しても、ユニット部屋根フレームの高さバリエーションを増加させることなく対応することができる。
【0010】
第2の態様に係るユニット建物は、第1の態様に係るユニット建物において、前記離置部屋根フレームの勾配は、前記水下側屋根フレームと前記水上側屋根フレームの勾配よりも急勾配である。
【0011】
この態様では、離置部屋根フレームの勾配は、ユニット部屋根フレーム(水下側屋根フレームと水上側屋根フレーム)の勾配よりも急勾配である。このため、離置スパンが建物ユニットの幅よりも狭い場合に好適である。
【0012】
第3の態様に係るユニット建物は、第2の態様に係るユニット建物において、前記陸屋根は、前記離置部屋根フレームに固定された離置部屋根下地材を含んで構成され、前記離置部屋根下地材の水下側端部は、前記水下側屋根フレームの上に位置し、前記離置部屋根下地材の水上側端部は、前記水上側屋根フレームの上に位置し、前記離置部屋根下地材の水上側端部は、前記水上側屋根フレームに固定されている。
【0013】
この態様では、陸屋根が、離置部屋根フレームに固定された離置部屋根下地材を含んで構成されている。そして、離置部屋根下地材の水下側端部が水下側屋根フレームの上に位置し、離置部屋根下地材の水上側端部が水上側屋根フレームの上に位置している。離置部屋根フレームの勾配が、水下側屋根フレームと水上側屋根フレームの勾配よりも急勾配であるため、離置部屋根下地材の水上側端部が浮き上がってしまうおそれがある。
ここで、この態様では、離置部屋根下地材の水上側端部が水上側屋根フレームに固定されている。このため、離置部屋根下地材の水上側端部が浮き上がることが抑制されている。
【0014】
第4の態様に係るユニット建物は、第2の態様に係るユニット建物において、前記陸屋根は、前記離置部屋根フレームに固定された離置部屋根下地材と、前記離置部屋根フレームの上に設置された離置部防露断熱材と、を含んで構成され、前記離置部防露断熱材の水上側端部は、ディスク板およびネジによって前記水上側屋根フレームに固定されている。
【0015】
この態様では、陸屋根が、離置部屋根フレームに固定された離置部屋根下地材と、離置部屋根フレームの上に設置された離置部防露断熱材と、を含んで構成されている。
ここで、この態様では、離置部防露断熱材の水上側端部がディスク板およびネジによって水上側屋根フレームに固定されている。このため、離置部防露断熱材の水上側端部が浮き上がることが抑制されている。
【0016】
第5の態様に係るユニット建物は、第3の態様に係るユニット建物において、前記陸屋根は、前記離置部屋根フレームに固定された離置部屋根下地材と、前記離置部屋根フレームの上に設置された離置部防露断熱材と、を含んで構成され、前記離置部防露断熱材の水上側端部は、ディスク板およびネジによって前記水上側屋根フレームに固定されている。
【0017】
この態様では、陸屋根が、離置部屋根フレームに固定された離置部屋根下地材を含んで構成されている。そして、離置部屋根下地材の水下側端部が水下側屋根フレームの上に位置し、離置部屋根下地材の水上側端部が水上側屋根フレームの上に位置している。
さらに、陸屋根が、離置部屋根フレームの上に設置された離置部防露断熱材を含んで構成されている。
離置部屋根フレームの勾配が、水下側屋根フレームと水上側屋根フレームの勾配よりも急勾配であるため、離置部屋根下地材と離置部防露断熱材の水上側端部が共に浮き上がってしまうおそれがある。
ここで、この態様では、離置部屋根下地材の水上側端部が水上側屋根フレームに固定されており、かつ、離置部防露断熱材の水上側端部がディスク板およびネジによって水上側屋根フレームに固定されている。このため、離置部屋根下地材および離置部防露断熱材の水上側端部が浮き上がることが抑制されている。
【0018】
第6の態様に係るユニット建物は、第5の態様に係るユニット建物において、前記離置部屋根下地材は、前記離置部屋根フレームの水下側端部および水上側端部に固定され、前記離置部防露断熱材は、前記離置部屋根フレームの水下側端部および水上側端部に固定されている。
【0019】
第6の態様に係るユニット建物では、離置部屋根下地材は、離置部屋根フレームの水下側端部および水上側端部にも固定され、離置部防露断熱材は、離置部屋根フレームの水下側端部および水上側端部にも固定されている。このため、陸屋根を構成する離置部屋根下地材および離置部防露断熱材の屋根フレームへの追従性がより一層向上されている。
【0020】
第7の態様に係るユニット建物は、第1の態様に係るユニット建物において、前記離置部屋根フレームの勾配は、ゼロである。
【0021】
この態様では、離置部屋根フレームの勾配がゼロであるため、離置スパンのバリエーションが増加しても、離置部屋根フレームの勾配バリエーションを増加させる必要がない。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したとおり、本発明に係るユニット建物は、離置スパンのバリエーションが増加しても、ユニット部屋根フレームの高さバリエーションを増加させることなく対応することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】建物ユニットを示す斜視図である。
図2】互いに離し置きされた水下側建物ユニットおよび水上側建物ユニットを水下側(ユニット部)屋根フレームと共に示す分解斜視図である。
図3】建物ユニット、ユニット部屋根フレームおよび離置部屋根フレームを示す分解側面図である。
図4図3に対応する組立状態の側面図である。
図5】陸屋根が設置された状態の離置部周辺の状態を示す断面図である。
図6】(A)は比較例のユニット建物を示す模式図、(B)は本発明のユニット建物を示す模式図である。
図7】離置部が設定されないユニット建物を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るユニット建物について、図1図7を用いて説明する。
【0025】
(建物ユニット10)
図1は、建物ユニット10を示す模式的な斜視図である。図1に示すように、建物ユニット10は、直方体形状に形成されており、柱11と床大梁12と天井大梁13とを備える。柱11は、平面視で矩形状の建物ユニット10の四隅に対応して4本設けられ、鉛直方向をその長手方向としている。床大梁12は、その長手方向を水平方向に向けており、4つの柱11の下端部同士を繋いでいる。天井大梁13は、その長手方向を水平方向に向けており、4つの柱11の上端部同士を繋いでいる。建物ユニット10は、平面視で一方の辺の長さが他方の辺の長さよりも長い長方形状とされており、4本の天井大梁13は、X方向に対向する一対の長辺天井大梁13と、Y方向に対向する一対の短辺天井大梁13と、から構成されている。
【0026】
柱11は、断面矩形の閉断面構造とされている。一方、床大梁12と天井大梁13の断面形状は、水平方向内側(建物ユニット10の内側)に開放された略コ字形状(所謂溝型)とされている。すなわち、図3に示すように、天井大梁13は、上板部13aと、下板部13Bと、上板部13aと下板部13Bとの外側端部を上下方向に連結するウェブ13cと、から構成されている。
【0027】
図2図3に示すように、互いに同様の構成とされた建物ユニット10(水下側建物ユニット10Aと水上側建物ユニット10B)とが離し置きされている。水下側建物ユニット10Aと水上側建物ユニット10Bは、互いの長辺天井大梁13を平行に対向させて設置されている。水下側建物ユニット10Aと水上側建物ユニット10Bとの離間距離D(すなわち、互いに対向する長辺天井大梁13のウェブ13c同士の距離D、図3参照)は、建物ユニット10自体のX方向(短辺方向)の寸法W(すなわち、X方向に対向する長辺天井大梁13のウェブ13c同士の距離W、図3参照)よりも小さい。水下側建物ユニット10Aの天井大梁13の上板部13aと、水上側建物ユニット10Bの天井大梁13の上板部13aの高さ位置は同一となっている。
【0028】
(ユニット部屋根フレーム20A、20B)
水下側建物ユニット10Aと水上側建物ユニット10Bとの上には、それぞれユニット部屋根フレーム20Aとユニット部屋根フレーム20Bとが設置される。ユニット部屋根フレーム20Aとユニット部屋根フレーム20Bは、互いに類似した構成とされている。
【0029】
ユニット部屋根フレーム20A、20Bは、屋根小梁21と水下側ブラケット22と水上側ブラケット23とを備える。
【0030】
屋根小梁21は、後述する陸屋根40を支持する長尺部材である。屋根小梁21の長手方向水下側(以下、単に水下側という。)の端部に水下側ブラケット22が設けられ、屋根小梁21の長手方向水上側(以下、単に水上側という。)の端部に水上側ブラケット23が設けられている。水下側ブラケット22が、建物ユニット10の互いに対向する長辺天井大梁13のうち水下側に固定され、水上側ブラケット23が、建物ユニット10の互いに対向する長辺天井大梁13のうち水上側に固定される。これにより、図4に示すように、互いに対向する長辺天井大梁13、13の間に屋根小梁21が配置される。
【0031】
屋根小梁21は、具体的には矩形断面の鋼管である。屋根小梁21の上面21aが陸屋根40を支持する「陸屋根支持部」とされている。
【0032】
水下側ブラケット22は、L形断面の長尺部材である。水下側ブラケット22は、板厚方向を鉛直方向に向ける平板状の第1板部22aと、板厚方向を水平方向(具体的にはX方向)に向ける平板状の第2板部22bと、から構成されている。第1板部22aは、建物ユニット10に固定される「ユニット固定部」とされている。第2板部22bは、屋根小梁21の長手方向端部に接合される「小梁接合部」とされている。ユニット固定部である第1板部22aは、建物ユニット10の大梁13の上板部13aの上面に載置され、載置された状態で締結部材F1(図5参照)により上板部13aに固定される。小梁接合部である第2板部22bは、屋根小梁21に溶接により接合されている。
【0033】
ユニット部屋根フレーム20A、20Bのうち、水下側のユニット部屋根フレーム20Aの水下側ブラケット22は、第1板部22aの小梁側の端部から下方に向けて略90度の角度に屈曲されて第2板部22bが形成された所謂下向きブラケットとされている。
一方、水上側のユニット部屋根フレーム20Bの水下側ブラケット22は、第1板部22aの小梁側の端部から上方に向けて略90度の角度に屈曲されて第2板部22bが形成された所謂上向きブラケットとされている。
【0034】
水上側ブラケット23は、L形断面の長尺部材である。水上側ブラケット23は、板厚方向を鉛直方向に向ける平板状の第1板部23aと、板厚方向を水平方向(具体的にはX方向)に向ける平板状の第2板部23bと、から構成されている。第1板部23aは、建物ユニット10に固定される「ユニット固定部」とされている。第2板部23bは、屋根小梁21の長手方向端部に接合される「小梁接合部」とされている。ユニット固定部である第1板部23aは、建物ユニット10の大梁13の上板部13aの上面に載置され、載置された状態で締結部材F1(図5参照)により上板部13aに固定される。小梁接合部である第2板部23bは、屋根小梁21に溶接により接合されている。
【0035】
ユニット部屋根フレーム20A、20Bのうち、水下側のユニット部屋根フレーム20Aの水上側ブラケット23は、第1板部23aの小梁側の端部から下方に向けて略90度の角度に屈曲されて第2板部23bが形成された所謂下向きブラケットとされている。
一方、水上側のユニット部屋根フレーム20Bの水上側ブラケット23は、第1板部23aの小梁側の端部から上方に向けて略90度の角度に屈曲されて第2板部23bが形成された所謂上向きブラケットとされている。
【0036】
図2に示すように、屋根小梁21は、Y方向に複数本並列に設けられる。ユニット部屋根フレーム20A、20Bは、複数の屋根小梁21と水下側ブラケット22と水上側ブラケット23とで梯子状に形成されている。
【0037】
図4に示すように、ユニット部屋根フレーム20A、20Bが建物ユニット10A,10Bに固定された状態において、屋根小梁21、21は、その長手方向が水平方向に対して傾斜した角度になり、水上側から水下側にかけて若干の下り勾配となる。したがって、屋根小梁21の上面21a(陸屋根支持部)の水上側端部は、屋根小梁21の上面21a(陸屋根支持部)の水下側端部よりも高い位置となる。水下側屋根フレーム20Aの屋根小梁21の勾配と、水上側屋根フレーム20Bの屋根小梁21の勾配とは、同一の勾配aである。また、屋根小梁21、21の長手方向は、平面視で、建物ユニット10A,10Bの短辺天井大梁13と平行であり、建物ユニット10A,10Bの長辺天井大梁13に垂直である。
【0038】
(離置部屋根フレーム30)
水下側屋根フレーム20Aと水上側屋根フレーム20Bとの間には、離置部屋根フレーム30が設置される。
【0039】
離置部屋根フレーム30は、繋ぎ屋根小梁31と、水下側ブラケット32と、水上側ブラケット33と、を備えている。
【0040】
繋ぎ屋根小梁31は、長尺部材であり、具体的には矩形断面の鋼管である。繋ぎ屋根小梁31の上面31aが、陸屋根40を支持する「屋根支持部」として機能する。
【0041】
繋ぎ屋根小梁31の水下側の端部に水下側ブラケット32が設けられ、繋ぎ屋根小梁31の水上側の端部に水上側ブラケット33が設けられている。水下側ブラケット32が水下側建物ユニット10Aの大梁13に固定されると共に、水上側ブラケット33が水上側建物ユニット10Bの大梁13に固定される。これにより、繋ぎ屋根小梁31は、その長手方向を略X方向に向けた状態で配置される。詳細には、繋ぎ屋根小梁31の長手方向は、平面視でX方向と平行で、側面視でX方向に対して傾斜した角度、具体的には水下側が低く水上側が高くなる角度に設定される。
【0042】
図3に示すように、水下側ブラケット32は、水下側支持ブラケット34と水下側受けブラケット35とを含んで構成されている。また、水上側ブラケット33は、水上側支持ブラケット36と水上側受けブラケット37と水を含んで構成されている。
【0043】
支持ブラケット(水下側支持ブラケット34、水上側支持ブラケット36)は、建物ユニット10の天井大梁13に固定される大梁固定部34b、36bと、受けブラケット(水下側受けブラケット35、水上側受けブラケット37)に固定されるブラケット固定部34a、36aと、を有する。
【0044】
大梁固定部34b、36bおよびブラケット固定部34a、36aは、共に平板状とされている。大梁固定部34b、36bの上端とブラケット固定部34a、36aの端部とが略90度に屈曲された屈曲部を介して接続されている。これにより、支持ブラケット34、36は、断面L字状の長尺部材とされている。大梁固定部34b、36bは、天井大梁13のウェブ13cの外面(建物ユニット10外側の面)に重ね合わされた状態で当該ウェブ13cに締結部材F2(図5参照)によって固定されている。水下側支持ブラケット34のブラケット固定部34aと水上側支持ブラケット36のブラケット固定部36aとは、共に鉛直方向を板厚方向としており、同じ高さに位置している。
【0045】
受けブラケット35、37は、長手方向をY方向に向けて配置される長尺部材であり、L形断面の長尺部材である。
【0046】
具体的には、水下側受けブラケット35は、板厚方向を鉛直方向に向ける平板状の第1板部35aと、板厚方向を水平方向(具体的にはX方向)に向ける平板状の第2板部35bと、から構成されている。第1板部35aの小梁側の端部に形成された屈曲部を介して、第1板部35aと第2板部35bとが接続されている。第1板部35aが、水下側支持ブラケット34に固定される「ブラケット固定部」とされている。第2板部35bが、繋ぎ屋根小梁31が接合される「小梁接合部」とされている。第1板部35aは、支持ブラケット34の第1板部34aに載置された状態で、支持ブラケット34の第1板部34aに締結部材F3(図5参照)によって固定される。水下側受けブラケット35は、所謂下向きブラケットとされている。
また、具体的には、水上側受けブラケット37は、板厚方向を鉛直方向に向ける平板状の第1板部37aと、板厚方向を水平方向(具体的にはX方向)に向ける平板状の第2板部37bと、から構成されている。第1板部37aの小梁側の端部に形成された屈曲部を介して、第1板部37aと第2板部37bとが接続されている。第1板部37aが、水下側支持ブラケット36に固定される「ブラケット固定部」とされている。第2板部37bが、繋ぎ屋根小梁31が接合される「小梁接合部」とされている。第1板部37aは、水上側支持ブラケット36の第1板部36aに載置された状態で、水上側支持ブラケット36の第1板部36aに締結部材F3(図5参照)によって固定される。水上側受けブラケット37は、所謂上向きブラケットとされている。
【0047】
水下側受けブラケット35の第1板部35aと、水上側受けブラケット37の第1板部37aとは、共に鉛直方向を板厚方向としており、同じ高さに位置する。
一方、離置部屋根フレーム30の繋ぎ屋根小梁31は、側面視でその長手方向をX方向に対して傾斜した角度に向けている。これにより、繋ぎ屋根小梁31の上面31aである陸屋根支持部は、水上側から水下側に向けて若干の下り勾配となっている。離置部屋根フレーム30の繋ぎ屋根小梁31の勾配bは、勾配aよりも急勾配となっている。
【0048】
(陸屋根40)
図5に示すように、ユニット部屋根フレーム20および離置部屋根フレーム30の上には、陸屋根40が設置されている。陸屋根40は、屋根下地材50と防露断熱材60とを含んで構成されている。屋根下地材50は、ユニット部屋根フレーム20および離置部屋根フレーム30の屋根小梁21および繋ぎ屋根小梁31の上面21a,31aである陸屋根支持部に支持されている。防露断熱材60は、屋根下地材50の上に配置されている。
【0049】
屋根下地材50は、互いに分割された複数の屋根下地材50を含んで構成されている。具体的には、屋根下地材50は、離置部Dに対応する離置部屋根下地材50Cと、水下側建物ユニット10Aに対応する水下側屋根下地材50Aと、水上側建物ユニット10Bに対応する水上側屋根下地材50Bと、を含んで構成されている。
【0050】
離置部屋根下地材50Cの水下側端部(図5の左側端部)は、水下側屋根フレーム20Aの屋根小梁21の上方に位置している。つまり、離置部屋根下地材50Cの水下側端部は、水下側屋根フレーム20Aの屋根小梁21の水上側端部よりも水下側に位置している。離置部屋根下地材50Cの水上側端部は、水上側屋根フレーム20Bの屋根小梁21の上方に位置している。つまり、離置部屋根下地材50Cの水上側端部は、水上側屋根フレーム20Bの屋根小梁21の水下側端部よりも水上側に位置している。
【0051】
離置部屋根下地材50Cは、離置部屋根フレーム30に固定されている。この固定は、図示しないネジなどの固定部材によって離置部屋根フレーム30の繋ぎ屋根小梁31に対して行われている。離置部屋根下地材50Cの繋ぎ屋根小梁31に対する固定の位置は、繋ぎ屋根小梁31の長手方向両端部付近(水下側端部付近と水下側端部付近)と長手方向中央部を含む位置とされている。
【0052】
離置部屋根下地材50Cの固定は、離置部屋根フレーム30に対する固定だけでなく、水下側屋根フレーム20Aに対する固定および水上側屋根フレーム20Bに対する固定も行われている。水下側屋根フレーム20Aに対する固定は、離置部屋根下地材50Cの水下側端部付近でネジなどの固定部材80(図5参照)により行われている。水上側屋根フレーム20Bに対する固定は、離置部屋根下地材50Cの水上側端部付近でネジなどの固定部材80(図5参照)により行われている。
【0053】
防露断熱材60は、互いに分割された複数の防露断熱材60を含んで構成されている。具体的には、防露断熱材60は、離置部Dに対応する離置部防露断熱材60Cと、水下側建物ユニット10Aに対応する水下側防露断熱材60Aと、水上側建物ユニット10Bに対応する水上側防露断熱材60Bと、を含んで構成されている。
【0054】
離置部防露断熱材60Cは、固定部材70によって繋ぎ屋根小梁31に固定されている。固定部材70は、ディスク板71とネジ72とで構成されている。ディスク板71は、防露断熱材60の上面に配置され、ネジ72は、防露断熱材60と屋根下地材50を貫通してFR繋ぎ小梁31に螺合されている。固定部材70による繋ぎ屋根小梁31に対する固定は、繋ぎ屋根小梁31の長手方向両端部と長手方向中央部を含む位置で行われている。
【0055】
離置部防露断熱材60Cの水下側端部は、水下側屋根フレーム20Aの屋根小梁21の上方に位置しており、また、水下側屋根下地材50Aの上方に位置している。離置部防露断熱材60Cの水上側端部は、水上側屋根フレーム20Bの屋根小梁21の上方に位置しており、また、水上側屋根下地材50Bの上方に位置している。これにより、離置部防露断熱材60Cが配置された領域(図5の左右方向の領域)は、離置部屋根下地材50Cが配置された領域よりも広い領域とされている。
【0056】
また、離置部防露断熱材60Cの水上側端部付近は、固定部材70(図5の右側の符号70参照)によって水上側屋根フレーム20Bの屋根小梁21に固定されている。
【0057】
(手順)
建物ユニット10A,10Bに対するユニット部屋根フレーム20A、20Bの固定は、現場で行われてもよいが、通常、工場で行われる。一方、互いに離置された2つの建物ユニット10A、10Bに対する離置部屋根フレーム30の固定は、現場で行われる。なお、このとき、建物ユニット10A、10Bに対する支持ブラケット34、36の固定は工場で行い、支持ブラケット34、36に対する受けブラケット35,37及び繋ぎ屋根小梁31の固定は現場で行ってもよい。この場合、繋ぎ屋根小梁31と受けブラケット35,37との接合は予め工場で行われる。
【0058】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0059】
本実施形態では、互いに離置される建物ユニット10(水下側建物ユニット10Aと水上側建物ユニット10B)それぞれの上にユニット部屋根フレーム20(水下側屋根フレーム20Aと水上側屋根フレーム20B)が設置される。ユニット部屋根フレーム20A、20Bの間には、離置部屋根フレーム30が設置される。そして、これら3つの屋根フレーム(水下側屋根フレーム20A、水上側屋根フレーム20Bおよび離置部屋根フレーム30)の上に陸屋根40が設置される。
【0060】
ここで、仮に、図6(a)に示すように、ユニット部屋根フレーム20の勾配と離置部屋根フレーム30の勾配とを同一の設計とする場合、離置スパンD(水下側建物ユニットと水上側建物ユニットとの距離D)のバリエーション増加に応じて、離置部屋根フレーム30のバリエーション(符号30’、30’’参照)だけでなく、ユニット部屋根フレーム20の高さバリエーション(符号20B’、20B’’参照)も増加させる必要がある。なぜなら、離置部Dを挟んで隣り合うユニット部屋根フレーム20A、20B(20B’、20B’’)の高低差を、離置スパンDに応じた高低差に合わせる必要があるためである。
【0061】
これに対し、本実施形態では、図6(b)に示すように、ユニット部屋根フレーム20の勾配aと、離置部屋根フレーム30の勾配bとが異なる。
このため、例えば、離置部Dを挟んで隣り合うユニット部屋根フレーム20A、20Bの高低差をそのままに、離置部屋根フレーム30のバリエーション(幅と勾配のバリエーション、符号30、30’参照)を増加させるだけで済む。
つまり、離置スパンDのバリエーションが増加しても、ユニット部屋根フレーム20の高さバリエーション(符号20A、20B)を増加させることなく対応することができる。
【0062】
また、本実施形態では、離置部屋根フレーム30の勾配bは、ユニット部屋根フレーム20(水下側屋根フレーム20Aと水上側屋根フレーム20B)の勾配aよりも急勾配である。このため、離置スパンDが建物ユニットの幅Wよりも狭い場合に好適である。
【0063】
また、本実施形態では、陸屋根40が、離置部屋根フレーム30に固定された離置部屋根下地材50Cを含んで構成されている。そして、離置部屋根下地材50Cの水下側端部が水下側屋根フレーム20Aの上に位置し、離置部屋根下地材50Cの水上側端部が水上側屋根フレーム20Bの上に位置している。離置部屋根フレーム30の勾配bが、水下側屋根フレーム20Aと水上側屋根フレーム20Bの勾配aよりも急勾配であるため、離置部屋根下地材50Cの水上側端部(図5の右側端部)が浮き上がってしまうおそれがある。
ここで、本実施形態では、離置部屋根下地材50Cの水上側端部が水上側屋根フレーム20Bに固定されている(図5の固定部材80参照)。このため、離置部屋根下地材50Cの水上側端部が浮き上がることが抑制されている。
【0064】
また、本実施形態では、陸屋根40が、離置部屋根フレーム30に固定された離置部屋根下地材50Cと、離置部屋根フレーム30の上に設置された離置部防露断熱材60Cと、を含んで構成されている。
ここで、離置部防露断熱材60Cの水上側端部がディスク板71およびネジ72によって水上側屋根フレーム20Bに固定されている。このため、離置部防露断熱材60Cの水上側端部が浮き上がることが抑制されている。
なお、本実施形態では、離置部防露断熱材60Cの水下側端部(図5の左側端部)を水下側屋根フレーム20Aに固定せずに施工を簡易化しているが、これに代えて水下側端部の固定も行ってもよい。
【0065】
また、本実施形態では、離置部屋根下地材50Cは、離置部屋根フレーム30の水下側端部および水上側端部に固定され(図示省略)、離置部防露断熱材60Cは、離置部屋根フレーム30の水下側端部および水上側端部に固定されている(図5の符号70参照)。このため、陸屋根40を構成する離置部屋根下地材50Cおよび離置部防露断熱材60Cの屋根フレーム20、30への追従性がより一層向上されている。
【0066】
また、図7に示すように、水下側から水上側にかけて3つの建物ユニット10A,10C,10Bを離し置きせずに設置した場合、最も水下側の水下側建物ユニット10Aの上に本実施形態の水下側屋根フレーム20Aを設置し、最も水上側の水上側建物ユニット10Bの上に本実施形態の水上側屋根フレーム20Bを設置すると共に、中間の建物ユニット10Cに異なる設計とされたユニット部屋根フレーム20C(但し勾配a)を設置することで、水上側から水下側にかけて同一の水勾配とされた陸屋根を形成できる。
すなわち、離置部Dを設定しないユニット建物(図7参照)に使用するユニット部屋根フレーム20A,20C,20Bの設計をそのまま本実施形態のユニット建物(離置部Dが設定された建物ユニット)に使用できる。
【0067】
〔上記実施形態の補足説明〕
なお、上記実施形態では、水下側建物ユニット10Aと水上側建物ユニット10Bとの離間距離D(離置スパンD)が建物ユニット10自体の幅寸法Wよりも小さい例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0068】
また、上記実施形態では、離置部屋根フレーム30の繋ぎ屋根小梁31の勾配bが、ユニット部屋根フレーム20の屋根小梁21の勾配aよりも急勾配である例を説明したが、本発明はこれに限定されず、勾配bが勾配aよりも緩やかであってもよい。
更に、勾配bをゼロとしてもよい。この場合、互いに離置される水下側建物ユニットおよび水上側建物ユニットにそれぞれ設置されるユニット部屋根フレームは、図7に示す符号20A、20Cの組合せや符号20C、20Bの組合せをそのまま利用できる。
【符号の説明】
【0069】
10 建物ユニット
10A 水下側建物ユニット
10B 水上側建物ユニット
20 ユニット部屋根フレーム
20A 水下側屋根フレーム
20B 水上側屋根フレーム
30 離置部屋根フレーム
40 陸屋根
50 屋根下地材
50A 水下側屋根下地材
50B 水上側屋根下地材
50C 離置部屋根下地材
60 防露断熱材
60A 水下側防露断熱材
60B 水上側防露断熱材
60C 離置部防露断熱材
D 離置部
a 水下側屋根フレームと水上側屋根フレームの勾配
b 離置部屋根フレームの勾配
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7