(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】地下土壌浄化方法
(51)【国際特許分類】
B09C 1/02 20060101AFI20220301BHJP
B09C 1/10 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B09C1/02
B09C1/10 ZAB
(21)【出願番号】P 2018550040
(86)(22)【出願日】2017-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2017031016
(87)【国際公開番号】W WO2018087995
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2016217959
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 薫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祐二
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】奥田 信康
(72)【発明者】
【氏名】古川 靖英
(72)【発明者】
【氏名】中島 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】清塘 悠
(72)【発明者】
【氏名】向井 一洋
(72)【発明者】
【氏名】舟川 将史
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 愛
(72)【発明者】
【氏名】大村 啓介
(72)【発明者】
【氏名】田邉 康太
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-125665(JP,A)
【文献】特開2007-253059(JP,A)
【文献】特開平09-276841(JP,A)
【文献】特開2009-112933(JP,A)
【文献】特開2009-154057(JP,A)
【文献】特開2014-205087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理装置によって
、地中に設けられた揚水井戸から揚水された地下水に含まれる地下土壌中の汚染物質
を除去
した処理水を生成し、前記処理水から生成され
た洗浄液を地下水温度より高温に加温し
前記揚水井戸から離れて前記地中に設けられた注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出
して、前記地下土壌中の前記汚染物質を前記地下土壌から脱離する第一工程と、前記地下土壌から脱離された前記汚染物質が溶解した前記洗浄液を含む
前記地下水を、
前記揚水井戸から揚水する第二工程と、
前記第一工程又は前記第二工程のあとに、前記水処理装置によって
前記処理水を生成し、前記処理水から生成され
た活性液を、地下水温度より高温に加温し前記注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出
して、前記地下土壌中の前記汚染物質を分解する分解微生物を活性化するとともに、
前記注入井戸へ空気を圧入し、前記活性液が送出される前記注入井戸の位置よりも下方の前記注入井戸の位置から前記地下土壌中へ前記空気を送出する第三工程と、
を備えた地下土壌浄化方法。
【請求項2】
水処理装置によって
、地中に設けられた揚水井戸から揚水された地下水に含まれる地下土壌中の汚染物質
を除去
した処理水を生成し、前記処理水から生成され
た洗浄液を地下水温度より高温に加温し
前記揚水井戸から離れて前記地中に設けられた注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出
して、前記地下土壌中の前記汚染物質を前記地下土壌から脱離する第一工程と、前記地下土壌から脱離された前記汚染物質が溶解した前記洗浄液を含む
前記地下水を、
前記揚水井戸から揚水する第二工程と、
前記第一工程又は前記第二工程のあとに、前記水処理装置によって
前記処理水を生成し、前記処理水から生成され
た活性液を、
前記地下土壌中の前記汚染物質を分解する分解微生物と共に、地下水温度より高温に加温し前記注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出
して、前記地下土壌中の前記分解微生物を活性化するとともに、
前記注入井戸へ空気を圧入し、前記活性液が送出される前記注入井戸の位置よりも下方の前記注入井戸の位置から前記地下土壌中へ前記空気を送出する第三工程と、
を備えた地下土壌浄化方法。
【請求項3】
水処理装置によって
、地中に設けられた揚水井戸から揚水された地下水に含まれる地下土壌中の汚染物質
を除去
した処理水を生成し、前記処理水から生成され
た洗浄液を地下水温度より高温に加温し
前記揚水井戸から離れて前記地中に設けられた注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出
して、前記地下土壌中の前記汚染物質を前記地下土壌から脱離する第一工程と、前記地下土壌から脱離された前記汚染物質が溶解した前記洗浄液を含む
前記地下水を、
前記揚水井戸から揚水する第二工程と、
前記第一工程又は前記第二工程のあとに、前記水処理装置によって
前記処理水を生成し、前記処理水から生成され
た活性液に
気泡を混入し、地下水温度より高温に加温し前記注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出
して、前記地下土壌中の分解微生物を活性化する第三工程と、
を備えた地下土壌浄化方法。
【請求項4】
水処理装置によって
、地中に設けられた揚水井戸から揚水された地下水に含まれる地下土壌中の汚染物質
を除去
した処理水を生成し、前記処理水から生成され
た洗浄液を地下水温度より高温に加温し
前記揚水井戸から離れて前記地中に設けられた注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出
して、前記地下土壌中の前記汚染物質を前記地下土壌から脱離する第一工程と、前記地下土壌から脱離された前記汚染物質が溶解した前記洗浄液を含む
前記地下水を、
前記揚水井戸から揚水する第二工程と、
前記第一工程又は前記第二工程のあとに、前記水処理装置によって
前記処理水を生成し、前記処理水から生成され
た活性液に
気泡を混入し、前記地下土壌中の前記汚染物質を分解する分解微生物と共に、地下水温度より高温に加温し前記注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出
して、前記地下土壌中の前記分解微生物を活性化する第三工程と、
を備えた地下土壌浄化方法。
【請求項5】
水処理装置によって
、地中に設けられた揚水井戸から揚水された地下水に含まれる地下土壌中の汚染物質
を除去
した処理水を生成し、前記処理水から生成され
た洗浄液を地下水温度より高温に加温し
前記揚水井戸から離れて前記地中に設けられた注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出
して、前記地下土壌中の前記汚染物質を前記地下土壌から脱離する第一工程と、前記地下土壌から脱離された前記汚染物質が溶解した前記洗浄液を含む
前記地下水を、
前記揚水井戸から揚水する第二工程と、
前記第一工程又は前記第二工程のあとに、前記水処理装置によって
前記処理水を生成し、前記処理水から生成され
た浄化液を、地下水温度より高温に加温し前記注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出
して、前記地下土壌中の前記汚染物質を分解するとともに、
前記注入井戸へ空気を圧入し、前記浄化液が送出される前記注入井戸の位置よりも下方の前記注入井戸の位置から前記地下土壌中へ前記空気を送出する第三工程と、
を備えた地下土壌浄化方法。
【請求項6】
水処理装置によって
、地中に設けられた揚水井戸から揚水された地下水に含まれる地下土壌中の汚染物質
を除去
した処理水を生成し、前記処理水から生成され
た洗浄液を地下水温度より高温に加温し
前記揚水井戸から離れて前記地中に設けられた注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出
して、前記地下土壌中の前記汚染物質を前記地下土壌から脱離する第一工程と、前記地下土壌から脱離された前記汚染物質が溶解した前記洗浄液を含む
前記地下水を、
前記揚水井戸から揚水する第二工程と、
前記第一工程又は前記第二工程のあとに、前記水処理装置によって
前記処理水を生成し、前記処理水から生成され
た浄化液に
気泡を混入し、前記地下土壌中の前記汚染物質を分解する浄化液を、地下水温度より高温に加温し前記注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出
して、前記地下土壌中の前記汚染物質を分解する第三工程と、
を備えた地下土壌浄化方法。
【請求項7】
前記洗浄液の温度は25~60℃であり、前記活性液の温度が20~35℃である、請求項1~4の何れか1項に記載の地下土壌浄化方法。
【請求項8】
前記浄化液は、前記処理水に鉄系スラリーを混合して生成される、請求項5又は6に記載の地下土壌浄化方法。
【請求項9】
前記第三工程は、前記第二工程のあとに実施され、
前記水処理装置は、前記揚水井戸から揚水された地下水から汚染物質を除去して、前記処理水を生成する、請求項1~8の何れか1項に記載の地下土壌浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、汚染物質で汚染された地下土壌を浄化する地下土壌浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染物質で汚染された地下土壌を浄化する方法の1つとして、バイオ浄化方法がある。この方法では、地下土壌中に存在して汚染物質を分解する分解微生物の分解活動を活性化する酵母エキス等の活性剤を含む活性液を、地下土壌の汚染領域の上流側から注入し、地下土壌中に存在し活性化された分解微生物により地下土壌中の汚染物質を分解して地下土壌を浄化する。
【0003】
例えば、特開2015-77571号公報には、注入井戸から汚染物質で汚染された地中へ微生物栄養源及び汚染物質溶出剤を含む液体を送出して、汚染物質を溶出させ回収するとともに、地中に存在する分解微生物による汚染物質の分解を促す地下土壌浄化方法が開示されている。
【0004】
一方、工場等から流出し地表面から地下土壌中に浸み込んだ油、ベンゼン等の水よりも密度の小さい汚染物質は、地下土壌中の地下水面上付近に滞留して地下汚染土壌を形成する。
【0005】
しかし、油、ベンゼン等の水よりも密度の小さい汚染物質は、地下土壌中の地下水面上付近に滞留しているので、その位置に活性液を十分に行き渡らせることが難しく、地下土壌の浄化効率が低くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は係る事実を考慮し、水よりも密度の小さい汚染物質により汚染された地下土壌の浄化効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様は、地下土壌中の汚染物質を分解する分解微生物を活性化する活性液を、地下水温度より高温に加温し地中に設けられた注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出する、地下土壌中の汚染物質を分解する分解微生物が混入され前記分解微生物を活性化する活性液を、地下水温度より高温に加温し地中に設けられた注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出する、又は地下土壌中の汚染物質を分解する浄化液を、地下水温度より高温に加温し地中に設けられた注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出する、とともに、前記注入井戸へ空気を圧入し、前記活性液又は前記浄化液が送出される前記注入井戸の位置よりも下方の前記注入井戸の位置から前記地下土壌中へ前記空気を送出する地下土壌浄化方法である。
【0008】
本開示の第1態様では、活性液や浄化液を加温することにより、活性液や浄化液の比重を地下水の比重よりも小さくし、活性液や浄化液を地下土壌の上方へ移動させて、地下土壌中の地下水面上付近に多くの活性液や浄化液を行き渡らせることができる。
【0009】
また、活性液や浄化液が送出される注入井戸の位置よりも下方の注入井戸の位置から空気を送出することにより、この空気によって活性液や浄化液を地下土壌の上方へ移動させ、地下土壌中の地下水面上付近に、より多くの活性液や浄化液を行き渡らせることができる。
【0010】
これらにより、油、ベンゼン等の水よりも密度の小さい汚染物質により汚染された地下土壌の浄化効率を向上させることができる。
【0011】
本開示の第2態様は、気泡が混入され且つ地下土壌中の汚染物質を分解する分解微生物を活性化する活性液を、地下水温度より高温に加温し地中に設けられた注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出する、気泡が混入され且つ地下土壌中の汚染物質を分解する分解微生物が混入され前記分解微生物を活性化する活性液を、地下水温度より高温に加温し地中に設けられた注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出する、又は気泡が混入され且つ地下土壌中の汚染物質を分解する浄化液を、地下水温度より高温に加温し地中に設けられた注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出する、地下土壌浄化方法である。
【0012】
本開示の第2態様では、活性液や浄化液を加温することにより、活性液や浄化液の比重を地下水の比重よりも小さくし、活性液や浄化液を地下土壌の上方へ移動させて、地下土壌中の地下水面上付近に多くの活性液や浄化液を行き渡らせることができる。
【0013】
また、気泡が混入された活性液や浄化液を注入井戸へ注入することにより地下土壌中へ送出することによって、気泡により活性液や浄化液を地下土壌の上方へ移動させ、地下土壌中の地下水面上付近により多くの活性液や浄化液を行き渡らせることができる。
【0014】
これらにより、油、ベンゼン等の水よりも密度の小さい汚染物質により汚染された地下土壌の浄化効率を向上させることができる。
【0015】
本開示の第3態様は、第1又は第2態様の地下土壌浄化方法を行う前に、前記汚染物質を前記地下土壌から脱離する洗浄液を、地下水温度より高温に加温し前記注入井戸へ注入することにより前記地下土壌中へ送出し、前記地下土壌から脱離された前記汚染物質が溶解した前記洗浄液を含む地下水を、前記注入井戸から離れて前記地中に設けられた揚水井戸から揚水する地下土壌浄化方法である。
【0016】
本開示の第3態様では、地下土壌の土粒子に固着している汚染物質を洗浄液により地下土壌から脱離することができる。そして、地下土壌から脱離された汚染物質が溶解した洗浄液を含む地下水を揚水井戸から揚水することにより、脱離した汚染物質を地下土壌から排出して地下土壌を浄化することができる。
【0017】
また、地下土壌から脱離された汚染物質が、汚染土壌中に存在し活性液により活性化された分解微生物、又は浄化液によって分解されることにより、地下土壌を浄化することができる。
【0018】
さらに、洗浄液を加温することにより、洗浄液の比重を地下水の比重よりも小さくし、洗浄液を上方へ移動させて、地下土壌中の地下水面上付近に多くの洗浄液を行き渡らせることができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示は上記構成としたので、水よりも密度の小さい汚染物質により汚染された地下土壌の浄化効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の実施形態に係るフラッシング浄化システムを示す正面断面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る汚染物質分解浄化システムを示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図を参照しながら本開示の実施形態を説明する。まず、本開示の実施形態に係る地下土壌浄化方法について説明する。なお、複数の図面において同じ符号で表された共通の構成要素については、説明を省略する場合がある。
【0022】
本実施形態の地下土壌浄化方法では、最初にフラッシング工程を行い、次に汚染物質分解工程を行う。すなわち、汚染物質分解工程を行う前に、フラッシング工程を行う。
図1の正面断面図には、フラッシング工程を行うフラッシング浄化システム10が示され、
図2の正面断面図には、汚染物質分解工程を行う汚染物質分解浄化システム12が示されている。
【0023】
まず、フラッシング浄化システム10について説明する。
【0024】
図1に示すように、地盤14を構成する地下土壌48の地下水面S上付近に、油類(例えば重油、軽油、灯油、ガソリン等)、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの汚染物質が含まれる汚染土壌18が存在している。
【0025】
地下水面Sの下方には帯水層16が形成され、帯水層16の下方には、帯水層16よりも透水性の低い難透水層20が形成されている。
【0026】
フラッシング浄化システム10は、遮水壁22、注入井戸24、揚水井戸26、ポンプ28、水処理装置30、及び加温洗浄液調整槽としての調整槽32を有して構成されている。
【0027】
遮水壁22は、汚染土壌18を取り囲むようにして地盤14中に設けられている。また、遮水壁22の下端部は、難透水層20に根入れされている。これにより、汚染土壌18は、遮水壁22と難透水層20とで囲まれ閉鎖されている。なお、地盤14は、帯水層16の下方に難透水層20が形成されていないものであってもよい。難透水層20のない地盤14の場合、遮水壁22は、汚染土壌18に含まれる汚染物質が遮水壁22で閉鎖されるに十分な深さまで根入れをする。なお、遮水壁22は適宜省略することができる。
【0028】
注入井戸24と揚水井戸26とは、遮水壁22で囲まれた地盤14中に、汚染土壌18が間に配置されるように間隔をあけて設けられている。すなわち、揚水井戸26は、注入井戸24から離れて地盤14中に設けられている。
【0029】
揚水井戸26、ポンプ28、水処理装置30、調整槽32、及び注入井戸24は、送水管34A、34B、34C、34Dを介してこの順に繋げられている。
【0030】
調整槽32では、水処理装置30において水処理された処理水に界面活性剤を混合して洗浄液38を生成する。また、調整槽32では、調整槽32内に設けられたヒーター等によって常温の地下水温度よりも高温に加温した後に、この加温された洗浄液38を注入井戸24へ送り出す。洗浄液38の加温は、常温の地下水温度よりも高い温度にすればよく、洗浄液38の温度を20~80℃にするのが好ましく、25~60℃にするのがより好ましい。
【0031】
なお、洗浄液38は、汚染土壌18(地下土壌48)の土粒子に固着している汚染土壌18(地下土壌48)中の汚染物質を、汚染土壌18(地下土壌48)から脱離できるものであればよい。処理水に混合されて洗浄液38を生成する界面活性剤としては、陰イオン(すなわちアニオン)界面活性剤や、HLB値7~18の非イオン界面活性剤等を使用できる。
【0032】
このうち、陰イオン界面活性剤としては、脂肪酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルアミドエーテル硫酸塩、モノグリセライド硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アシル化イセチオン酸塩、アシル化アミノ酸、アルキルリン酸塩又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等を用いることができる。
【0033】
また、非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル又はアルキルグリコシド等を用いることができる。
【0034】
さらに、洗浄液38を生成するためには、界面活性剤に代えて、発泡性薬剤、混和剤又は乳化剤等を処理水に混合してもよい。
【0035】
このうち、発泡性薬剤としては、水に溶解すると過酸化水素に解離し酸素を発生させる過酸化水素発生剤(例えば過炭酸塩、過硫酸塩、過硼酸塩、過酢酸塩、硫酸アルカリ金属塩過酸化水素付加物、硫酸アルカリ土類金属塩過酸化水素付加物、尿素過酸化水素付加物、メラニン過酸化水素付加物、アミノ酸過酸化水素付加物、過酸化アルカリ金属又は過酸化アルカリ土類金属等)や過酸化水素等を用いることができる。
【0036】
また、混和剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又はアセトン等を用いることができる。
【0037】
また、乳化剤としてはステアロイル乳酸ナトリウム又はショ糖脂肪酸エステル等を用いることができる。
【0038】
なお、処理水にこれらの界面活性剤、発泡性薬剤、混和剤又は乳化剤等を混合することは必須ではなく、洗浄液38は、処理水を常温の地下水温度より高温に加温した温水としてもよい。洗浄液38は、常温の地下水温度よりも高い温度に加温されることで、汚染土壌18(地下土壌)の土粒子に固着している汚染土壌18(地下土壌48)中の汚染物質を、汚染土壌18(地下土壌)から脱離することができる。
【0039】
注入井戸24には、洗浄液38が注入されてこの洗浄液38を地下土壌48中へ送出する第1送出管(不図示)と、空気36が圧入されてこの空気36を地下土壌48中へ送出する第2送出管(不図示)とが備えられている。
【0040】
第1送出管の送出口は、帯水層16の深さ方向略中間位置に設けられており、第2送出管の送出口は、第1送出管の送出口よりも下方の位置に設けられている。すなわち、洗浄液38が地下土壌48中へ送出される注入井戸24の位置よりも下方の注入井戸24の位置から地下土壌48中へ空気36が送出される。
【0041】
水処理装置30では、ポンプ28により揚水井戸26から揚水されて送り込まれた、汚染物質が溶解した洗浄液38を含む地下水44から汚染物質を除去して水処理を行う。
【0042】
フラッシング浄化システム10により行うフラッシング工程では、最初に、調整槽32で生成され常温の地下水温度より高温に加温された洗浄液38を注入井戸24へ注入することによりこの洗浄液38を注入井戸24から地下土壌48中へ送出し、汚染土壌18(地下土壌48)の土粒子に固着している汚染物質を、汚染土壌18(地下土壌48)から脱離する(第1工程)。
【0043】
また、第1工程とともに、空気36を注入井戸24へ圧入することによりこの空気36を地下土壌48中へ送出する(第2工程)。
【0044】
そして、汚染土壌18(地下土壌48)から脱離された汚染物質が溶解した洗浄液38を含む地下水44を、揚水井戸26から揚水する(第3工程)。
【0045】
次に、汚染物質分解浄化システム12について説明する。以下、フラッシング浄化システム10(
図1)で説明したものと同様のものについては説明を省略する。
【0046】
図2に示すように、汚染物質分解浄化システム12は、遮水壁22、注入井戸24、揚水井戸26、ポンプ28、水処理装置30、及び加温活性液調整槽としての調整槽40を有して構成されている。汚染土壌18は、フラッシング浄化システム10により行われたフラッシング工程により土壌の浄化が進められた状態になっているが、汚染土壌18(地下土壌48)中には、まだ汚染物質が含まれている。
【0047】
揚水井戸26、ポンプ28、水処理装置30、調整槽40、及び注入井戸24は、送水管34A、34B、34C、34Dを介してこの順に繋げられている。
【0048】
水処理装置30では、ポンプ28により揚水井戸26から揚水されて送り込まれた地下水46から汚染物質を除去して水処理を行う。
【0049】
調整槽40では、水処理装置30において水処理された処理水に活性剤を混合して活性液42を生成するとともに、調整槽40内に設けられたヒーター等によって常温の地下水温度よりも高温に加温した後に、この加温された活性液42を注入井戸24へ送り出す。
【0050】
活性液42は、汚染土壌18(地下土壌48)中に存在して汚染物質を分解する分解微生物の分解活動を活性化するものであればよい。例えば、処理水に混合されて活性液42を生成する活性剤として、水素徐放剤、有機物、PH調整剤、微量栄養素又は微量元素等を用いることができる。
【0051】
このうち、有機物としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸若しくはクエン酸又はそれらのナトリウム塩、カリウム塩若しくはカルシウム塩、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ペプトン、トリプトン、酵母エキス、フミン酸又は植物油等を用いることができる。
【0052】
また、PH調整剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等のナトリウム、カリウムの炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム又はリン酸三ナトリウム等を用いることができる。
【0053】
また、微量栄養素としては、ビタミンB12、ビタミンB1、パントテン酸、ビオチン、葉酸等を用いることができる。
【0054】
さらに、微量元素としては、Co、Zn、Fe、Mg、Ni、Mo、B等を用いることができる。
【0055】
なお、活性液42は、活性剤として上記の有機物及び微量栄養素をそれぞれ少なくとも一種類含む配合を基本とするが、さらに他の公知の浄化剤を添加してもよい。この際の浄化剤の培養液中TOC濃度としては、50mg/L~5000mg/Lが好ましく、100mg/L~300mg/Lがさらに好ましい。但し、TOC濃度をこれらの値とすることは必須ではない。
【0056】
また、活性液42の加温は、常温の地下水よりも高い温度にすればよく、活性液42の温度を20~60℃にするのが好ましく、25~35℃にするのがより好ましい。
【0057】
注入井戸24には、活性液42が注入されて地下土壌48中へ送出する第3送出管(不図示)と、空気36が圧入されて地下土壌48中へ送出する第4送出管(不図示)とが備えられている。
【0058】
第3送出管の送出口は、帯水層16の深さ方向略中間位置に設けられており、第4送出管の送出口は、第3送出管の送出口よりも下方の位置に設けられている。すなわち、活性液42が地下土壌48中へ送出される注入井戸24の位置よりも下方の注入井戸24の位置から地下土壌48中へ空気36が送出される。
【0059】
汚染物質分解浄化システム12により行う汚染物質分解工程では調整槽40で生成され常温の地下水温度より高温に加温された活性液42を注入井戸24へ注入し活性液42を地下土壌48中へ送出して、汚染土壌18(地下土壌)に存在する分解微生物を活性液42によって活性化する。そして活性液42により活性化された分解微生物によって、第1工程において汚染土壌18(地下土壌48)から脱離した汚染物質を分解する(第4工程)。
【0060】
また、第4工程とともに、空気36を注入井戸24へ圧入することによりこの空気36を地下土壌48中へ送出する(第5工程)。
【0061】
そして、汚染土壌18(地下土壌48)から脱離された汚染物質が溶解した活性液42を含む地下水46を、揚水井戸26から揚水する(第6工程)。
【0062】
次に、本開示の実施形態に係る地下土壌浄化方法の作用と効果について説明する。
【0063】
本実施形態のフラッシング浄化システム10によるフラッシング工程では、
図1に示すように、洗浄液38を注入井戸24へ注入し、この洗浄液38を注入井戸24から地下土壌48中へ送出して汚染土壌18中に流すことにより、汚染土壌18(地下土壌48)の土粒子に固着している汚染物質を汚染土壌18(地下土壌48)から脱離することができる。そして、汚染土壌18(地下土壌48)から脱離された汚染物質が溶解した洗浄液38を含む地下水44を揚水井戸26から揚水することにより、脱離した汚染物質を汚染土壌18(地下土壌48)から排出して汚染土壌18(地下土壌48)を浄化することができる。また、洗浄液38を常温の地下水温度より高温に加温することにより、洗浄液38への汚染物質の溶解度を上げ、汚染土壌18(地下土壌48)からの汚染物質の脱離を促進することができる。これらにより、汚染土壌18(地下土壌48)の浄化効率を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態のフラッシング浄化システム10によるフラッシング工程では、洗浄液38を加温することにより、洗浄液38の比重を地下水の比重よりも小さくし、洗浄液38を上方へ移動させて、地下土壌48の地下水面S上付近に多くの洗浄液38を行き渡らせることができる。
【0065】
さらに、本実施形態のフラッシング浄化システム10によるフラッシング工程では、洗浄液38を加温することにより、洗浄液38の粘性を低下させることができ、これによって、洗浄液38を汚染領域(すなわち汚染土壌18)の広い範囲に到達し易くすることができる。
【0066】
また、本実施形態のフラッシング浄化システム10によるフラッシング工程では、洗浄液38が送出される注入井戸24の位置よりも下方の注入井戸24の位置から空気36を送出することにより、この空気36によって洗浄液38を上方へ移動させ、地下土壌48の地下水面S上付近に多くの洗浄液38を行き渡らせることができる。これにより、油、ベンゼン等の水より密度の小さい汚染物質により汚染された地下土壌48の洗浄効率を向上させることができる。
【0067】
さらに、本実施形態のフラッシング浄化システム10によるフラッシング工程では、洗浄液38が送出されるよりも下方の注入井戸24の位置から空気36を送出することにより、後の汚染物質分解工程で油類(例えば重油、軽油、灯油、ガソリン等)、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの汚染物質を分解微生物が分解する際に必要な酸素を、地下土壌48の地下水面S上付近に供給して好気状態(すなわち酸素が十分にある状態)にしておくことができる。
【0068】
また、本実施形態のフラッシング浄化システム10によるフラッシング工程では、このフラッシング工程によって地下土壌48の地下水面S上付近に行き渡らせた洗浄液38の効果(界面活性効果、混和効果又は乳化効果)により、地下土壌48中の地下水面S上付近に移動してきた空気36が地下土壌48の地下水面S上付近から上方へ散逸するのを抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態の汚染物質分解浄化システム12による汚染物質分解工程では、
図2に示すように、フラッシング工程(
図1を参照のこと)における第1工程によって汚染土壌18(地下土壌48)から脱離した汚染物質が、活性液42により活性化された分解微生物によって分解されることにより、汚染土壌18(地下土壌48)を浄化することができる。さらに、常温の地下水温度より高温に加温された活性液42を注入井戸24へ注入し、この活性液42を注入井戸24から地下土壌48中へ送出することにより、常温の地下水温度以下の温度の活性液42を注入井戸24へ注入する場合と比べて分解微生物がより活性化され、汚染物質の分解を促進することができる。これらにより、汚染土壌18(地下土壌48)の浄化効率を向上させることができる。
【0070】
また、本実施形態の汚染物質分解浄化システム12による汚染物質分解工程では、活性液42を加温することにより、活性液42の粘性を低下させることができ、これによって、活性液42を汚染領域(汚染土壌18)の広い範囲に到達し易くすることができる。
【0071】
さらに、本実施形態の汚染物質分解浄化システム12による汚染物質分解工程では、活性液42を加温することにより、活性液42の比重を地下水の比重よりも小さくし、活性液42を上方へ移動させて、地下土壌48の地下水面S上付近に多くの活性液42を行き渡らせることができる。また、活性液42が送出される位置よりも下方の注入井戸24の位置から空気36を送出することにより、この空気36によって活性液42を上方へ移動させ、地下土壌48の地下水面S上付近により多くの活性液42を行き渡らせることができる。これらにより、油、ベンゼン等の水よりも密度の小さい汚染物質により汚染された地下土壌48の浄化効率を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態の汚染物質分解浄化システム12による汚染物質分解工程では、注入井戸24から地下土壌48中へ空気36を送出することにより、地下土壌48の地下水面S上付近に酸素を供給して好気状態(すなわち酸素が十分にある状態)にし、汚染物質の分解効率(地下土壌48の浄化効率)を向上させることができる。
【0073】
さらに、本実施形態の地下土壌浄化方法では、
図1及び
図2に示すように、フラッシング浄化システム10によるフラッシング工程を行った後に、汚染物質分解浄化システム12による汚染物質分解工程を行うことにより、汚染物質分解工程による汚染土壌18(地下土壌48)の浄化効率を向上させることができ、汚染土壌18(地下土壌48)の浄化期間を短くすることができる。また、フラッシング工程を行って汚染物質濃度を下げた後に汚染物質分解工程を行うことにより、汚染物質の毒性による分解微生物の作用阻害が起こりにくくなる。したがって、従来のバイオ浄化方法では土壌浄化が困難であった、高濃度の汚染土壌の浄化を行うことができる。
【0074】
以上、本開示の実施形態に係る地下土壌浄化方法について説明した。
【0075】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、フラッシング浄化システム10によるフラッシング工程において、第1送出管の送出口から地下土壌48中へ洗浄液38を送出するとともに、第1送出管の送出口よりも下方に位置する第2送出管の送出口から地下土壌48中へ空気36を送出する例を示したが、気泡が混入された洗浄液38を注入井戸24へ注入することによりこの洗浄液38を注入井戸24から地下土壌48中へ送出するようにしてもよい。例えば、超微細気泡を多数有する水(例えば、マイクロバブル水)に界面活性剤等を混入させた洗浄液を、注入井戸24から地下土壌48中へ送出するようにしてもよい。この場合、注入井戸24から地下土壌48中へ洗浄液を送出する注入井戸24の位置は、地下土壌48の地下水面S上付近に気泡が混入された洗浄液を行き渡らせることができる位置であればよい。例えば、第1送出管の送出口や第2送出管の送出口が配置されている注入井戸24の位置から地下土壌48中へ洗浄液を送出するようにしてもよい。
【0076】
このように、気泡が混入された洗浄液を注入井戸24から地下土壌48中へ送出するようにしても、
図1で説明した洗浄液38と空気36を別々に注入井戸24から地下土壌48中へ送出する方法とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0077】
すなわち、洗浄液に混入された気泡により洗浄液を上方へ移動させて地下土壌48の地下水面S上付近に多くの洗浄液を行き渡らせることができ、汚染物質分解浄化システム12による汚染物質分解工程で必要な酸素を地下土壌48の地下水面S上付近に供給して好気状態にしておくことができる。
【0078】
また、本実施形態では、
図2に示すように、汚染物質分解浄化システム12による汚染物質分解工程において、常温の地下水温度より高温に加温された活性液42を注入井戸24へ注入してこの活性液42を注入井戸24から地下土壌48中へ送出する例を示したが、調整槽40で、汚染土壌18(地下土壌48)に含まれる汚染物質を分解する分解微生物を活性液42に混合するとともにこの活性液42を常温の地下水温度より高温に加温して、注入井戸24へ注入するようにしてもよい。すなわち、汚染土壌18(地下土壌48)に含まれる汚染物質を分解する分解微生物を活性液42とともに注入井戸24へ注入してこの活性液42を注入井戸24から地下土壌48中へ送出してもよい。
【0079】
このようにすれば、フラッシング工程(
図1を参照のこと)中の第1工程によって汚染土壌18(地下土壌)から脱離した汚染物質が、活性液42に混合され活性液42により活性化された分解微生物によって分解されることにより、汚染土壌18(地下土壌48)を浄化することができる。
【0080】
また、注入井戸24から活性液42とともに分解微生物を注入することにより、汚染土壌18(地下土壌48)中の分解微生物の数を増やして汚染物質の分解を促進することができる。例えば、フラッシング工程(
図1を参照のこと)において、加温された洗浄液38の熱によって減少した汚染土壌18(地下土壌48)中の分解微生物を補うことができる。
【0081】
さらに、本実施形態では、
図2に示すように、汚染物質分解浄化システム12による汚染物質分解工程において、常温の地下水温度より高温に加温された活性液42を注入井戸24へ注入してこの活性液42を注入井戸24から地下土壌48中へ送出する例を示したが、調整槽40において、水処理装置30で水処理された処理水に浄化剤を混合して浄化液を生成するとともに、この浄化液を調整槽40内に設けられたヒーター等によって常温の地下水温度よりも高温に加温した後に、この加温された浄化液を注入井戸24へ注入するようにしてもよい。すなわち、常温の地下水温度より高温に加温され、汚染土壌18(地下土壌48)に含まれる汚染物質を分解する浄化液を注入井戸24へ注入してこの浄化液を注入井戸24から地下土壌48中へ送出してもよい。
【0082】
このようにすれば、フラッシング工程(
図1を参照のこと)中の第1工程によって汚染土壌18(地下土壌)から脱離した汚染物質が、浄化液によって分解されることにより、汚染土壌18(地下土壌48)を浄化することができる。
【0083】
また、常温の地下水温度より高温に加温された浄化液を注入井戸24へ注入することにより、常温の地下水温度以下の温度の浄化液を注入井戸へ注入する場合と比べて浄化液中の浄化剤と汚染物質との反応速度を向上させ、汚染物質の分解を促進することができる。処理水に混合されて浄化液を生成する浄化剤としては、過酸化水素水、鉄系スラリー等が挙げられる。
【0084】
また、本実施形態では、
図2に示すように、汚染物質分解浄化システム12による汚染物質分解工程において、第3送出管の送出口から地下土壌48中へ活性液42を送出するとともに、第3送出管の送出口よりも下方に位置する第4送出管の送出口から地下土壌48中へ空気36を送出する例を示したが、気泡が混入された活性液42を常温の地下水温度より高温に加温して注入井戸24へ注入することにより、この活性液42を注入井戸24から地下土壌48中へ送出するようにしてもよい。また、気泡が混入され、且つ汚染土壌18(地下土壌48)に含まれる汚染物質を分解する分解微生物が混合された活性液42を常温の地下水温度より高温に加温して注入井戸24へ注入することにより、この活性液42を注入井戸24から地下土壌48中へ送出するようにしてもよい。さらに、気泡が混入された浄化液を常温の地下水温度より高温に加温して注入井戸24へ注入することにより、この浄化液を注入井戸24から地下土壌48中へ送出するようにしてもよい。
【0085】
例えば、超微細気泡を多数有する水(例えば、マイクロバブル水)に活性剤を混入させた活性液又は界面活性剤を混入させた浄化液を、注入井戸24から地下土壌48中へ送出するようにしてもよい。この場合、注入井戸24から地下土壌48中へ活性液又は浄化液を送出する注入井戸24の位置は、地下土壌48の地下水面S上付近に活性液又は浄化液を行き渡らせることができる位置であればよい。例えば、第3送出管の送出口や第4送出管の送出口が配置されている注入井戸24の位置から地下土壌48中へ活性液又は浄化液を送出するようにしてもよい。
【0086】
このように、気泡が混入された活性液や浄化液を注入井戸24から地下土壌48中へ送出するようにしても、
図2で説明した活性液42と空気36を別々に注入井戸24から地下土壌48中へ送出する方法とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0087】
すなわち、活性液や浄化液に混入された気泡により活性液や浄化液を地下土壌48の上方へ移動させて地下土壌48の地下水面S上付近により多くの活性液や浄化液を行き渡らせることができ、汚染物質分解浄化システム12による汚染物質分解工程で必要な酸素を地下土壌48の地下水面S上付近に供給して好気状態にしておくことができる。
【0088】
さらに、本実施形態では、汚染物質を油類(重油、軽油、灯油、ガソリン等)やベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどとした例を示したが、本実施形態の地下土壌浄化方法は、地下土壌48の地下水面S上付近に滞留して地下汚染土壌を形成する汚染物質に対して特に有効な浄化方法であり、汚染物質としては、有機化合物(例えば塗料、印刷インキ、接着剤、洗浄剤、ガソリン、シンナーなどに含まれる酢酸エチルや、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、クロロエチレン(塩化ビニルモノマー)などの揮発性有機化合物)、金属化合物、無機化合物、油類等が挙げられる。
【0089】
さらに、本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、最初にフラッシング工程(第1工程、第2工程、第3工程)を行い、次に汚染物質分解工程を行う例を示したが、汚染物質分解工程は、第1工程、第2工程の後に行ってもよい。また、汚染物質分解工程のみによって、汚染土壌18(地下土壌48)を浄化することができれば、フラッシング工程は行わなくてもよい。さらに、フラッシング工程と、汚染物質分解工程との浄化対象とする汚染物質は異なっていてもよい。
【0090】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0091】
2016年11月8日に出願された日本国特許出願2016-217959号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載されたすべての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。