(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】保存安定性が改善されたトマトケチャップ
(51)【国際特許分類】
A23L 27/60 20160101AFI20220301BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20220301BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20220301BHJP
C13K 13/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
A23L27/60 B
A23L33/10
A23L29/30
C13K13/00
(21)【出願番号】P 2019517986
(86)(22)【出願日】2017-09-12
(86)【国際出願番号】 KR2017009982
(87)【国際公開番号】W WO2018066825
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2019-04-02
(31)【優先権主張番号】10-2016-0129260
(32)【優先日】2016-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512088051
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CheilJedang Corporation
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center, 330, Dongho-ro, Jung-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】リ, イン
(72)【発明者】
【氏名】パク, スン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン, ソン ベ
(72)【発明者】
【氏名】シム, ドン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, ドン チョル
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジョン ミン
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/075473(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/168015(WO,A1)
【文献】特開2013-082639(JP,A)
【文献】特開2010-200617(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133759(WO,A1)
【文献】特開2010-119335(JP,A)
【文献】特開2006-008669(JP,A)
【文献】国際公開第2007/100102(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00-27/40
A23L 31/00-33/29
A23L 29/231-29/30
C13K 13/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマト濃縮物、酢、塩化ナトリウム及び精製水、アルロースを含む糖類を混合する段階を含む、ケチャップの保存性を向上させる方法であって、ケチャップ100重量部に対し、前記トマト濃縮物は10重量部から80重量部であり、前記糖類は20重量部から40重量部であり、前記アルロースは、乾燥固形分を基準に、糖類100重量部に対し40重量部から100重量部である、ケチャップの保存性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、保存安定性が改善されたトマトケチャップに関する。
【背景技術】
【0002】
ケチャップ(ketchup)は、トマトを挽いて濾したトマト濃縮物を高温で加熱した後、均質化したソース(sauce)であり、独特の香りと味によってハンバーガー等の洋食だけでなく各種食品に用いられている。しかし、ケチャップは、保管期間が長くなるにつれて味の品質が低下され、粘度減少、脱水現象及び微生物の生育増加によって保存安定性が低下される問題点がある。
【0003】
従来、ケチャップにイソマルトオリゴ糖を添加し、褐変を抑制することでケチャップの保存性を向上させたという報告(大韓民国特許登録第10-0108647号)があるが、アルロース添加によるケチャップの保存安定性の改善効果は、全く報告されたことがない。
【0004】
このような背景の下、本発明者らは、ケチャップの保存安定性を向上できる素材を開発するために鋭意努力し、その結果、アルロースをケチャップに添加する場合、ケチャップ固有の味を維持しつつ、長期間保存時にも一定の粘度を維持して脱水現象を防止し、微生物数の増加を防止して保存性を向上させることを確認したことにより、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の一つの目的は、保存性が向上されたトマト濃縮物、アルロースを含む糖類、酢、塩化ナトリウム及び精製水を含むケチャップを提供することにある。
【0006】
本出願の他の目的は、トマト濃縮物、酢、塩化ナトリウム及び精製水、アルロースを含む糖類を混合する段階を含む、ケチャップの保存性を向上させる方法を提供することにある。
【0007】
以下、本出願内容に対して、より詳しく説明する。本明細書に記載されていない内容は、本出願の技術分野又は類似分野において熟練された者であれば、充分に認識し類推できるものであるため、その説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための一つの形態として、本出願は、トマト濃縮物、アルロースを含む糖類、酢、塩化ナトリウム及び精製水を含むケチャップであり、ケチャップ100重量部に対し、前記トマト濃縮物は10重量部から80重量部で含まれ、前記糖類は10重量部から40重量部で含まれる保存性が向上されたケチャップを提供する。
【0009】
本出願の保存性の向上は、粘度変化の減少、脱水の防止及び/又は微生物安定性の向上であってよい。
【0010】
本出願のトマト濃縮物は、トマトペースト、トマトピューレ及びトマト濃縮液でなる群から選択されるものであってよく、但し、トマトを濃縮した物質であれば制限なく含まれる。本出願のトマト濃縮物は、可溶固形分重量がトマト濃縮物重量を基準に20重量%以上又は24重量%以上であってよく、具体的に、20重量%から50重量%、20重量%から40重量%、20重量%から35重量%、24重量%から50重量%、24重量%から40重量%又は24 重量%から35重量%であってよい。
【0011】
一実施形態として、本出願トマト濃縮物は、ケチャップ100重量部に対し、10重量部から50重量部、10重量部から40重量部、10重量部から30重量部、20重量部から80重量部、20重量部から50重量部、20重量部から40重量部、20重量部から30重量部、30重量部から80重量部、30重量部から50重量部、30重量部から40重量部で含まれてよい。
【0012】
他の実施形態として、本出願の糖類は、ケチャップ100重量部に対し、10重量部から40重量部、10重量部から30重量部又は20重量部から30重量部で含まれてよい。
【0013】
本出願の糖類は、アルロース以外に単糖類、二糖類、オリゴ糖類、糖アルコール、高甘味度甘味料及び液状糖でなる群から選択される一つ以上の糖類をさら含んでよいが、これに制限されない。
【0014】
本出願の用語『単糖類』は、酸、塩基及び酵素等のこれ以上加水分解できない最も簡単な構造を有する炭水化物の基本単位体を意味する。具体的に、本出願の単糖類は、アラビノース、キシロース、果糖、タガトース、アロース、ブドウ糖又はガラクトースであってよい。
【0015】
本出願の用語『二糖類』は、二つの単糖類が結合した炭水化物を意味する。具体的に、本出願の『二糖類』は、砂糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、ツラノース又はセロビオースであってよい。
【0016】
本出願の用語『オリゴ糖類』は、単糖類が3個から15個結合されている炭水化物を意味する。具体的に、本出願のオリゴ糖類は、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、マルトオリゴ糖、又はガラクトオリゴ糖であってよい。
【0017】
本出願の用語『糖アルコール』は、糖類のカルボニル基が還元された化合物を意味する。具体的に、本出願の糖アルコールは、エリトリトール、キシリトール、アラビトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトール又はラクチトールであってよい。
【0018】
本出願の用語『高甘味度甘味料』は、砂糖に比べ10倍以上の甘味を有する甘味料を意味する。具体的に、本出願の高甘味度甘味料は、アスパルテーム、アセスルファムK、レバウジオシドA又はスクラロースであってよい。
【0019】
本出願の用語『液状糖』は、液状形態の糖を意味する。例えば、本出願の液状糖は、水飴、蜂蜜、メープルシロップ及びアガベシロップであってよいが、これに制限されない。
【0020】
また他の実施形態として、本出願の糖類は、砂糖(sucrose)、果糖、水飴又はその組合せを含まなくてよい。
【0021】
また他の実施形態として、本出願のアルロースは、乾燥固形分を基準に本出願の糖類100重量部に対し、40重量部から100重量部で含まれてよく、具体的に、60重量部から100重量部又は80重量部から100重量部で含まれてよい。本出願で用いられるアルロースは、天然物から直接抽出されたものであるか、化学的合成又は生物学的方法で製造されたものであってよいが、これに限定されない。
【0022】
また他の実施形態として、本出願の酢は、リンゴ酢、玄米酢、トウモロコシ酢、蒸留酢、発酵酢又は醸造酢であってよく、但し、食品に利用できる酢であれば、いかなる酢でも本出願のケチャップに含まれてよい。具体的に、本出願の酢は、ケチャップ100重量部に対し、5から30重量部、10から25重量部又は10から20重量部で含まれてよい。
【0023】
また他の実施形態として、本出願の塩化ナトリウムは、食品に利用できる塩化ナトリウムであれば、いかなる塩化ナトリウムでも本出願のケチャップに含まれてよい。具体的に、本出願の塩化ナトリウムは、ケチャップ100重量部に対し、0.5重量部から5重量部、0.5重量部から3重量部、0.5重量部から2.5重量部、1重量部から3重量部又は2重量部から3重量部で含まれてよい。
【0024】
また他の実施形態として、本出願の精製水は、ケチャップ100重量部に対し、20重量部から50重量部、25重量部から45重量部又は30重量部から40重量部で含まれてよい。
【0025】
本出願のケチャップは、香辛料、増粘剤、果汁又は野菜汁でなる群から選択されるものをさらに含んでよい。
【0026】
本出願の増粘剤は、例えば、澱粉又はガム類であってよく、本出願の澱粉は、米澱粉、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、サツマイモ澱粉、ジャガイモ澱粉、タピオカ澱粉、難消化性デキストリン、難消化性マルトデキストリン及び変性澱粉でなる群から選択される一つ以上であってよい。本出願のガム類は、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン又はカラギーナンであってよい。具体的に、本出願の増粘剤は、ケチャップ100重量部に対し、1から5重量部、1.5から4重量部又は2から4重量部で含まれてよい。
【0027】
本出願の香辛料は、タマネギ、ニンニク、生姜、シナモン(桂皮)、コショウ(胡椒)、クローブ及びナツメグでなる群から選択される何れか一つ以上であってよいが、これに制限されない。具体的に、本出願の香辛料は、粉末又は液状形態であってよい。より具体的に、本出願の香辛料は、ケチャップ100重量部に対し、0.1から5重量部、0.5から3重量部又は1から3重量部で含まれてよい。
【0028】
本出願の果物汁は、例えば、バナナ汁、スイカ汁、メロン汁、ブドウ汁、モモ汁、杏汁、スモモ汁、マンゴー汁、柑橘汁、ユズ汁、レモン汁、イチゴ汁又はグレープフルーツ汁であってよいが、これに制限されない。また、本出願の野菜汁は、ニンジン汁又はキャベツ汁であってよいが、これに制限されない。前記果汁又は野菜汁は、果物又は野菜の皮及び/又は種を除去し、搾汁機を用いて得た液であってよい。
【0029】
本出願のケチャップは、前記記載された成分以外に食品成分(例えば、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン及び炭酸化剤等)をさらに含んでよい。
【0030】
本出願は、他の形態として、トマト濃縮物、酢、塩化ナトリウム及び精製水、アルロースを含む糖類を混合する段階を含むケチャップの保存性を向上させる方法として、前記方法は、ケチャップ100重量部に対し、前記トマト濃縮物は10重量部から80重量部で、前記糖類は10重量部から40重量部であることを含む。
【0031】
前記ケチャップ、トマト濃縮物、酢、塩化ナトリウム、精製水、アルロースを含む糖類、本出願のケチャップに含まれ得るその他成分(等)及び保存安定性に対する説明は、前述の形態に対する説明の通りである。
【0032】
本出願の方法は、本出願の混合する段階以後、殺菌する段階をさらに含んでよい。具体的に、本出願の殺菌は、80から100℃又は90℃から100℃で実施してよい。また、本出願の殺菌は、前記温度で10分から6時間、20分から6時間、30分から6時間、10分から3時間、20分から3時間、30分から3時間、10分から1時間、20分から1時間又は30分から1時間の間実施してよい。本出願の殺菌は、直接あるいは間接加熱によって実施してよく、具体的に本出願の間接加熱は湯煎加熱であってよい。
【0033】
本出願の方法は、本出願の殺菌する段階以後、包装する段階をさらに含んでよい。具体的に、本出願の包装は、50℃から80℃、50℃から70℃、50℃から65℃、55℃から80℃、55℃から70℃又は55℃から65℃で実施してよい。
【0034】
本出願の方法は、本出願の包装する段階以後、冷却する段階をさらに含んでよい。
【0035】
また一つの形態として、本出願は、トマト濃縮物、酢、塩化ナトリウム及び精製水、アルロースを含む糖類を混合する段階を含む本出願のケチャップの製造方法を提供する。
【0036】
具体的に、本出願のケチャップの製造方法は、本出願の混合する段階以後、殺菌する段階をさらに含んでよい。また、本出願のケチャップの製造方法は、本出願の殺菌する段階以後、包装する段階をさらに含んでよい。また、本出願のケチャップの製造方法は、本出願の包装する段階以後、冷却する段階をさらに含んでよい。
【0037】
前記ケチャップ、トマト濃縮物、酢、塩化ナトリウム、精製水、アルロースを含む糖類、本出願のケチャップに含まれ得るその他成分(等)、保存安定性、混合、殺菌、包装及び冷却に対する説明は、前述の形態に対する説明の通りである。
【発明の効果】
【0038】
本出願のケチャップは、従来のケチャップより、低カロリーでありつつも官能特性が類似しており、保管中(例えば、製造後12ヶ月までの保管)に味の品質の変化がない。
【0039】
また、保管中に粘度の変化が少なく、脱水現象が防止され、製品利用上の便利さ及び品質が均一に維持されるため賞味期限が延長される。ひいては、微生物の生育を低下させることができる。したがって、本出願は、保存安定性が向上されたケチャップを提供できるとの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本出願の一実施形態等と比較例によるケチャップの14日間の微生物安定性の比較結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本出願を下記の実施例によって詳しく説明する。但し、下記の実施例は、本出願を例示するためだけのものであり、下記の実施例によって本出願の範囲が制限されるのではない。
【0042】
本出願の明細書全体にかけて、特定物質の濃度を表すために用いられる『%』は、別途の言及がない場合、固体/固体は(重量/重量)%、固体/液体は(重量/体積)%、そして液体/液体は(体積/体積)%である。
【0043】
製造例1.アルロース含有のケチャップの製造
糖類としてアルロース単独又はアルロース及び高果糖を用い、下記表1の配合比で原料を添加した後、50℃で均質化した(Mazela-Z、Eyela Co.,Ltd.、日本)。その次に、恒温水槽(WCB-22、DAIHAN Scientific Co.,Ltd.、大韓民国)を利用して95℃で均質化し(Eyela Co.,Ltd.、Mazela-Z)、30分以上静置させて殺菌処理した。2次汚染を防ぐために60℃で容器に充填した後、常温で冷却し、実施例1から実施例7のケチャップを製造した。
【0044】
製造例2.高果糖含有のケチャップの製造
糖類として高果糖のみを用い、下表1の配合比率で原料を添加した後、以後の処理は前記製造例1と同一に実施し、比較例1から3のケチャップを製造した。
【0045】
【0046】
実験例1.アルロース含有ケチャップの官能品質の確認
官能品質は、高果糖のみを添加したケチャップ(比較例1)と、前記比較例 1において高果糖を同量のアルロースに代替したケチャップ(実施例5)を比較して確認した。
【0047】
具体的に、訓練されたパネル要員20人にケチャップ試料とともにミニホットドッグを提供し、各自ケチャップを自由にかけて摂取した後、与えられた属性[外観の好み度(色相)、甘味の強度、酸味の強度、苦味の強度、異味/異臭の強度、口触りの好み度、全般の好み度]に対し評価させた[5:強度が非常に強い又は好み度が非常に良い、4:強度が強い又は好み度が良い、3:強度が普通又は好み度が普通、2:強度が弱い又は好み度が底い、1:強度が非常に弱い又は好み度が非常に底い]。評価の結果は、t-test方法を用いて分析し、有意水準p<0.05の水準で検定した。
【0048】
その結果、全ての属性において、比較例1と実施例5との間の統計的な有意差がない同等な官能品質を有することを確認できた(表2)。
【0049】
【0050】
実験例2.アルロース含有ケチャップの保管期間中の官能品質変化の確認
ケチャップの製造後、0ヶ月から12ヶ月まで3ヶ月おきに三点試験法の方法を介して各試料の保管期間中の官能品質変化を評価した。
【0051】
三点試験法は、2個の検査物間に官能品質の差があるのか否かを調査するために用いられる総合的な差の検査のうち最も広く利用される方法である。三点試験法の方法は、次の通りである:同一の検査物(A)2個及びそれと異なる検査物(B)1個(全て3個)をパネル要員に提示し、試料を味わって異なる検査物を選択するように指示した後、2個のB及び1個のAを提示し、それを味わった後、異なる検査物を選択するよう指示する。検査結果、正解数を数え3点検査の有意性検定表と対照して結果を解釈する。
【0052】
本実験例では、先ず、各実施例及び比較例の0ヶ月と12ヶ月とのケチャップ間の三点試験法を実施し、二つのケチャップ間の官能品質に有意的な差が表れる場合、0ヶ月と9ヶ月とのケチャップで三点試験法を実施した。その結果、有意的な差が表れる場合、0ヶ月と6ヶ月とのケチャップの三点試験法を実施し、また有意的な差が表れる場合、0ヶ月と3ヶ月とのケチャップで三点試験法を反復実施した。このような方法を反復し、各実施例及び比較例の官能品質において有意的な差が表れない最小保管期間(月数)を導出しており、これを官能品質の差が表れる賞味期限に判断した。三点試験法は、訓練されたパネル要員20人にケチャップ試料とともにミニホットドッグを提供し、各自ケチャップを自由にかけて摂取した後で実施した。パネルの評価結果に基づいて、下記のRoesslerの三点試験法の有意性検定表(表3)によって分析した。
【0053】
【0054】
その結果、同量の糖を用いた場合、高果糖だけ用いた場合より、アルロースを添加したケチャップの味の品質の変化が少ないことを確認し、アルロースを添加した糖類を全体重量の20重量%以上に用いた場合、製造後12ヶ月まで味の品質をそのまま維持することを確認した(表4)。
【0055】
【0056】
実験例3.アルロース含有ケチャップの保管期間中の粘度変化の評価
ケチャップの保管期間中の粘度変化は、製造後に冷蔵(4℃)保管された実施例1から5及び比較例1の各試料をラピッド・ビスコ・アナライザー(Rapid Visco-Analyzer、RVA)で測定(単位:cps)した。具体的に、冷蔵保管された各試料を採取し、ラピッド・ビスコ・アナライザー用の容器に28gずつ入れた後、160RPM及び25℃の条件で測定した。製造日から3ヶ月おきで計5回測定しており、各回に3回反復して測定した後、平均値を利用した。測定された結果の統計処理は、分散分析(ANOVA)と事後検定によって、Duncanの多重範囲検定(multiple range test)を用い、保管期間による結果値の有意性を分析した。
【0057】
その結果、比較例1は、保管中の粘度が著しく減少した。一方、実施例1は、9ヶ月から12ヶ月経過後、粘度が小幅減少しており、実施例2から5は、保管期間中に有意的な粘度変化を見せなかった。したがって、アルロースを添加したケチャップは、保存安定性が向上され、特に、アルロース添加量が全体糖類添加量の40%以上の場合、保存安定性が著しく向上されることを確認できた(表5、粘度単位:cps)。
【0058】
【0059】
実験例4.アルロース含有ケチャップの脱水防止効果の評価
製造後、常温(25℃)で保管された実施例1から5及び比較例1の各試料を4000rpmで10分間遠心分離し、分離されて出た水の量から保管による脱水の程度を確認した。具体的に、常温で保管された各試料を5gずつ採取して、常圧加熱乾燥法を用いて水分の含量を測定し、含量が確認された容器に広く塗布した後、103℃で常圧乾燥させて減少される水分の量を測定した。その後、各試料を遠心分離機用の容器に50gずつ入れた後、4000RPM及び25℃の条件で10分間遠心分離した。脱水率の計算は、遠心分離の前と後の重さを比較して下記式1のように計算した。測定された結果の統計処理は、分散分析(ANOVA)と事後検定によって、Duncanの多重範囲検定(multiple range test)を用い、保管期間による結果値の有意性を分析した。
【0060】
【0061】
その結果、実施例1から5のケチャップは、比較例1のケチャップに比べ脱水量が有意的に低いことを確認した。特に、製造後の保管期間が長くなるほど脱水量の差は急激に増加され、12ヶ月経過時の実施例と比較例の脱水量の差が2倍以上に増加することを確認した(表6)。
【0062】
【0063】
実験例5.アルロース含有ケチャップの保管期間中の微生物安定性の評価
ケチャップの主な汚染菌として知られたラクトバチルス・フルクティヴォランス(Lactobacillus fructivorans)の生育阻害効果を確認することで、ケチャップに添加した糖類及びその含量によるケチャップの微生物安定性を評価した。
【0064】
具体的に、ラクトバチルス・フルクティヴォランス(韓国微生物保存センター、KCCM40758)を購入し、MRS培地(表7)で3回継代培養して活性を増進した。培養された菌株を再び液状のMRS培地に接種した後、最小107CFU/mL以上になるように過培養を誘導して菌株母液を用意した。実施例1、3、5及び比較例1のケチャップ300gに、前記菌株母液3gを植菌(inoculation)した後、30℃の恒温培養器に保管した。保管開始日から0日、7日及び14日の経過時にサンプリングし、MRS agar培地に塗抹後、単一の菌体集落(single colony)を計測した。菌体集落数の測定は、各ケチャップ1gを0.9%の滅菌生理食塩水9 gに混合し、10倍希釈法で段階的に希釈して試料として用い、これをMRS agar培地の表面に100μgずつ塗抹して30℃で3日間培養した後、菌体集落数を測定した。菌体量は、測定された菌体集落数に希釈倍数を掛け、試料g当たりCFU(colony forming unit)で表した。
【0065】
【0066】
その結果、比較例1において、14日保管後の菌体量が初期値(保管0日の菌体量:5.3x10
7CFU/ml)対比158%(8.3x10
7CFU/g)増加した反面、実施例1、3及び5では、14日培養後の菌体量が初期値対比17%から132%で、比較例1に比べ微生物の生育が抑制されたことを確認した。特に、実施例5では、14日培養後の菌体量(9.0x10
6CFU/g)が初期値(5.3x10
7CFU/g)対比1log水準減少され、糖類としてアルロースのみを添加したケチャップは、微生物安定性が有意的に優れることを確認した(
図1)。