(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】バックアップ材およびその設置方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/682 20060101AFI20220301BHJP
E04B 1/684 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
E04B1/682 A
E04B1/684 B
(21)【出願番号】P 2022001372
(22)【出願日】2022-01-07
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】522009868
【氏名又は名称】笹崎 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100143096
【氏名又は名称】山岸 忠義
(72)【発明者】
【氏名】笹崎 勝也
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-59706(JP,A)
【文献】特開2009-263870(JP,A)
【文献】特開2008-184896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04F 13/08-13/18
E04F 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に長尺な発泡体から形成されるバックアップ材であって、
前記一方向に沿う第1面と、前記第1面に対向する第2面と、前記一方向に沿う第3面と、前記第3面に対向する第4面とを備え、
前記一方向と直交する断面視において、前記第1面および前記第2面は、前記第1面から前記第2面に向かう方向に凸となるように湾曲しており、かつ、前記第2面の長さは、前記第1面の長さよりも長く、
前記第1面を下方にして前記バックアップ材を水平面に載置した際に、前記断面視において、前記水平面と直交する垂線と前記第3面とのなす角が40°以下であり、かつ、前記垂線と前記第4面とのなす角度が、40°以下であることを特徴とする、バックアップ材。
【請求項2】
前記垂線と前記第3面とのなす角度、および、前記垂線と前記第4面とのなす角度が、ともに、25°以下であることを特徴とする、請求項1に記載のバックアップ材。
【請求項3】
前記断面視において、前記第2面の長さと前記第1面の長さとの差が、3mm以上、7mm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のバックアップ材。
【請求項4】
前記断面視において、前記第1面の長さは、10mm以上、35mm以下であり、
前記第2面の長さは、15mm以上、40mm以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のバックアップ材。
【請求項5】
前記第2面における発泡体の密度が、前記第1面における発泡体の密度よりも小さいことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のバックアップ材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のバックアップ材を用意する工程、および、
前記第1面が目地に対向するように前記バックアップ材を配置し、前記第2面を押圧する工程
を備えることを特徴とする、バックアップ材の設置方法。
【請求項7】
一方向に延びる円筒状の発泡体を用意する工程、
前記一方向に沿って前記円筒状の発泡体を切断して、複数のバックアップ材を得る工程、および、
前記円筒状の発泡体の内周面に対応する面が目地に対向するように前記バックアップ材を配置し、前記円筒状の発泡体の外周面に対応する面を押圧する工程
を備え、
前記複数のバックアップ材が、請求項1~5のいずれか一項に記載のバックアップ材を含むことを特徴とする、バックアップ材の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックアップ材およびその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外壁、内装、室内設備、ガラス周りなどの他部材取り合い目地のシーリングには、シーリング材の充填前に、シーリング材の厚みや目地深さを調製するために、弾性体などからなるバックアップ材が設置される。具体的には、目地と同幅のバックアップ材を選択して、目地内にその長手方向に沿って押し込んでいき、押し込んだバックアップ材の表面にシーリング材を充填する。
【0003】
ところが、目地は、一般的に、その長手方向長さが数mに及び、また、職人による手作業で形成されるため、目地幅にばらつきが生じる場合がある。例えば、目地幅が10mmであっても、ところどころ12~13mmに広がる箇所が数か所に生じる。そうすると、当該箇所では、幅10mmのバックアップ材では幅方向に隙間が空いてしまうため、別の幅のバックアップ材を別途用意する必要が生じる。その結果、従来のバックアップ材では、数種の幅のバックアップ材を切り替える作業が多くなっており、不便である。
【0004】
そこで、例えば、バックアップ体の外周面の一箇所に長手方向に沿って開口する溝部が形成され、この溝部の形成領域以外のバックアップ体の外周面が、前記溝部の開口側とは反対側ほど先細りとなる輪郭形状に形成されている目地用耐火バックアップ材が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のU字形状のバックアップ材は、U字の閉口部分(湾曲部分)が目地奥側となるように、U字の開口部分(特許文献1では両受け面)を押圧して、目地内に設置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のバックアップ材は、U字形状の熱膨張性ゴムであるため、目地穴側面との抵抗(摩擦力)が強く働き、目地内部に押し込みにくい。また、バックアップ材のU字構造の2つの受け面(上端の平坦面)を均等に押圧しないと、すなわち、一方の受け面に圧力が偏ってしまうと、バックアップ材が捻転してしまい、所望の形でバックアップ材を設置することができない。このため、作業効率が著しく低下する不具合が生じている。また、設置後、U字の湾曲部分(下端の曲面)に負荷がかかりやすいため、当該部分に集中して経年劣化し、当該部分のゴムが痩せ細り、バックアップ材の幅方向の応力が減少して、バックアップ材が目地底へと脱落する不具合も生じている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、目地幅にばらつきがある目地に対して簡便に設置することができるバックアップ材、および、その設置方法を提供する。
【0008】
本発明[1]のバックアップ材は、一方向に長尺な発泡体から形成されるバックアップ材であって、前記一方向に沿う第1面と、前記第1面に対向する第2面と、前記一方向に沿う第3面と、前記第3面に対向する第4面とを備え、前記一方向と直交する断面視において、前記第1面および前記第2面は、前記第1面から前記第2面に向かう方向に凸となるように湾曲しており、かつ、前記第2面の長さは、前記第1面の長さよりも長く、前記第1面を下方にして前記バックアップ材を水平面に載置した際に、前記断面視において、前記水平面と直交する垂線と前記第3面とのなす角が40°以下であり、かつ、前記垂線と前記第4面とのなす角度が、40°以下である。
【0009】
このような発明によれば、第2面が第1面よりも長く、第3面および第4面が、目地の押込み方向(第1面と第2面とが対向する方向)に対して、所望の角度で傾いているため、幅にばらつきがある目地に対しても、バックアップ材を設置することができる。また、発泡体からなり、幅方向に縮むことができるため、第3面および第4面が目地穴側面に摺接しながら、目地内部へとスムーズに押し込みやすい。加えて、第1面および第2面が第1面から第2面に向かう方向に凸となるように湾曲しているため、第2面から押し込む際に、バックアップ材が第1面側に過度に撓むことを抑制し、安定して目地内部へと押し込みやすい。したがって、バックアップ材を簡便に設置することができる。また、設置後では、バックアップ材の幅方向外側に向かう応力が発生するため、加えて、第1面から第2面に向かう方向に凸となるように湾曲しているため、経年劣化によるバックアップ材の脱落が生じにくい。
【0010】
本発明[2]のバックアップ材は、本発明[1]に加えて、前記垂線と前記第3面とのなす角度、および、前記垂線と前記第4面とのなす角度が、ともに、25°以下である。
【0011】
このような発明によれば、より確実に目地穴側面に摺接しながらスムーズに目地内部に設置することができる。
【0012】
本発明[3]のバックアップ材は、本発明[1]または[2]に加えて、前記断面視において、前記第2面の長さと前記第1面の長さとの差が、3mm以上、7mm以下である。
【0013】
このような発明によれば、幅3~7mmほどのばらつきがある目地に対しても、バックアップ材を設置することができる。
【0014】
本発明[4]のバックアップ材は、本発明[1]~[3]のいずれか一項に加えて、前記断面視において、前記第1面の長さは、10mm以上、35mm以下であり、第2面の長さは、15mm以上、40mm以下である。
【0015】
このような発明によれば、10~40mm幅の目地に対して、バックアップ材を設置することができる。
【0016】
本発明[5]のバックアップ材は、本発明[1]~[4]のいずれか一項に加えて前記第2面における発泡体の密度が、前記第1面における発泡体の密度よりも小さい。
【0017】
このような発明によれば、第2面側がより一層収縮しやすいため、よりスムーズにバックアップ材を設置することができる。
【0018】
本発明[6]のバックアップ材の設置方法は、本発明[1]~[5]のいずれか一項に記載のバックアップ材を用意する工程、および、前記第1面が目地に対向するように前記バックアップ材を配置し、前記第2面を押圧する工程を備える。
【0019】
このようなバックアップ材の設置方法によれば、幅にばらつきがある目地に対しても、バックアップ材を簡便に設置することができる。また、設置後は、経年劣化によるバックアップ材の脱落が生じにくい。
【0020】
本発明[7]のバックアップ材の設置方法は、一方向に延びる円筒状の発泡体を用意する工程、前記一方向に沿って前記円筒状の発泡体を切断して、複数のバックアップ材を得る工程、および、前記円筒状の発泡体の内周面に対応する面が目地に対向するように前記バックアップ材を配置し、前記円筒状の発泡体の外周面に対応する面を押圧する工程を備え、前記複数のバックアップ材が、本発明[1]~[5]のいずれか一項に記載のバックアップ材を含む。
【0021】
このようなバックアップ材の設置方法によれば、幅にばらつきがある目地に対しても、バックアップ材を簡便に設置することができる。また、設置後は、経年劣化によるバックアップ材の脱落が生じにくい。さらに、切断工程において、切断するバックアップ材の周方向幅を調整することにより、広い範囲の幅の目地に対応してバックアップ材を設置することができ、幅が異なる数種のバックアップ材を予め用意して、現場に持っていく必要が無く、非常に便利である。また、幅が異なるバックアップ材の在庫を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のバックアップ材およびその設置方法は、目地幅にばらつきがある目地に対して簡便に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明のバックアップ材の一実施形態の斜視図を示す。
【
図2】
図2Aは、
図1に示すバックアップ材の断面図を示し、
図2Bは、
図1に示すバックアップ材を水平面に載置した際の断面図を示す。
【
図4】
図4は、
図1に示すバックアップの設置方法を示し、
図4Aは、バックアップ材を目地と対向配置する工程、
図4Bは、バックアップ材の外側面を押圧する直前の工程、
図4Cは、バックアップ材を目地内部に押し込んでいる工程、
図4Dは、バックアップ材が目地内に設置されている工程を示す。
【
図5】
図5は、本発明のバックアップ材の変形例の断面図を示す。
【
図6】
図6は、本発明のバックアップ材の設置方法の他の実施形態を示し、
図6Aは、円筒状の発泡体を用意する工程、
図6Bは、円筒状を一方向に切断する工程、
図6Cは、複数のバックアップ材を得る工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<一実施形態>
1.バックアップ材
本発明のバックアップ材の一実施形態として、
図1~
図4に示すバックアップ材10を説明する。
図1において、第1方向に直交する方向を第2方向とし、第1方向および第2方向に直交する方向を第3方向とする。第1方向は、バックアップ材が伸びる一方向であって、長尺方向である。第2方向は、内外方向であり、第2方向一方側が外側、第2方向他方側が内側である。第3方向は左右方向であり、第3方向一方側が左側であり、第3方向他方側が右側である。
【0025】
図1に示すバックアップ材10は、長尺方向(一方向の一例)に延びており、長尺方向に沿うように、内側方向端面に内側面(第1面の一例)1を、外側方向端面に外側面(第2面の一例)2を、左方向端面に左側面(第3面の一例)3を、右方向端面に右側面(第4面の一例)4を備える。バックアップ材10は、略左右対称である。また、長尺方向に直交する断面視(以下、単に「断面視」と略す。)が、長尺方向において略同一である形状を有する。
【0026】
内側面1および外側面2は、内外方向において互いに対向配置される長尺方向に長尺な曲面である。内側面1は、目地の奥側に設置される面である。外側面2は、バックアップ材10を目地内に設置する際に、手や治具などによって直接押圧される面であって、設置後にシーリング材を充填および接触する面である。内側面1および外側面2は、断面視において(または、長尺方向を向くように目視した際において)、外側(内側面1から外側面2に向かう方向)に向かって凸となるように湾曲している。すなわち、バックアップ材10は、内外方向に所定の幅を持ち、内外方向を径方向とする円弧形状(アーチ形状)である。断面視において、内側面1の円弧および外側面2の円弧は、互いに同心円である。
【0027】
左側面3および右側面4は、左右方向において互いに対向配置される長尺方向に長尺な平面である。左側面3および右側面4は、バックアップ材10を目地内に設置する際に、目地穴側面と接触する摺接面である。左側面3の断面視長さと右側面4の断面視長さとは、略同一である。
【0028】
バックアップ材10をその内側面1が下方となるように水平面Xに載置した際に、左側面3および右側面4は、それぞれ、断面視において、水平面Xと直交する垂直線Yと40°以下の鋭角をなす(
図2B参照)。換言すれば、左側面3および右側面4は、左側面3と内側面1との交点Mと、右側面4と内側面1との交点Nとを結ぶ仮想線に対して直交する垂直線Yと、40°以下の鋭角をなす。
【0029】
具体的には、左側面3は、第1垂直線Y1(点Mを通り、水平面Xと直交する仮想線)と、40°以下の鋭角をなす。左側面3は、垂直線Y1に対して左側に位置する。左側面3と第1垂直線Y1とのなす角度θ1は、40°以下であり、好ましくは、30°以下、より好ましくは、25°以下である。また、下限は、例えば、5°以上、好ましくは、10°以上、より好ましくは、15°以上である。
【0030】
右側面4は、第2垂直線Y2(点Nを通り、水平面Xと直交する仮想線)と、40°以下の鋭角をなす。右側面4は、第2垂直線Y2に対して右側に位置する。右側面4と第2垂直線Y2とのなす角度θ2は、40°以下であり、好ましくは、30°以下、より好ましくは、25°以下である。また、下限は、例えば、5°以上、好ましくは、10°以上、より好ましくは、15°以上である。
【0031】
外側面2の断面視長さ(円弧長さ)L2は、内側面1の断面視長さL1よりも長く、その差は、例えば、2mm以上、好ましくは、3mm以上であり、また、例えば、10mm以下、好ましくは、7mm以下である。内側面1の断面視長さL1は、例えば、10mm以上、35mm以下である。外側面2の断面視長さL2は、例えば、15mm以上、40mm以下である。バックアップ材10の厚み(内外方向長さ)L3は、例えば、5mm以上、20mm以下である。バックアップ材10の長尺方向長さは、例えば、50cm以上、500cm以下である。バックアップ材10は、長尺方向が短くなるように切断して、所望の目地に設置される。
【0032】
バックアップ材10は、単一の発泡体から形成されている。発泡体を構成する発泡樹脂の種類としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレンなどが挙げられ、好ましくは、ポリエチレンが挙げられる。発泡体の密度としては、伸縮性の観点から、例えば、10kg/m3以上、100kg/m3以下である。
【0033】
バックアップ材10は、例えば、押出形成にて、円筒状に長尺に形成された発泡体を形成し、次いで、上記断面視形状の切断金型に発泡体を通過させて、長尺方向に連続して発泡体を切断すればよい。また、断面視長方形状の発泡体を形成し、内側面1を加熱押圧することにより製造してもよい。
【0034】
バックアップ材10は、他部材取り合い目地の内部に設置するための部材として好適に用いられる。目地の種類としては限定的でなく、例えば、石、レンガ、コンクリート、外装壁タイルなどから構成される外装の隙間;例えば、内壁、内装壁タイルなどから構成される内装の隙間;給排水設備、エレベーター設備などから構成される室内設備の隙間;窓ガラス、サッシなどから構成されるガラス周りの隙間などが挙げられる。
【0035】
2.バックアップ材の設置方法
バックアップ材10の設置方法は、用意工程および押圧工程を順に備える。
【0036】
用意工程では、バックアップ材10を用意する。具体的には、バックアップ材10を設置する目地5の目地幅を測定し、その目地幅に対応する幅のバックアップ材10を用意する。この際、目地幅が内側面1の長さL1と外側面2の長さL2との間に位置するバックアップ材10を用意する。好ましくは、内側面1の長さL1と外側面2の長さL2との平均が、目地幅と略一致するバックアップ材10を用意する。
【0037】
押圧工程では、内側面1が目地5と対向するようにバックアップ材10を配置する(
図4A参照)。具体的には、内側面1が目地5の内部(奥側)となるように、外側面2が目地5の露出側となるように配置する。
【0038】
続いて、バックアップ材10の外側面2を押圧して、バックアップ材10を目地5の内部に押し込む。バックアップ材10の押圧には、直接手で外側面2に接触して押圧してもよく、また、バックアップ材10を目地に押し込むための治具6を介して押圧してもよい(
図4B参照)。そして、所望の目地深さに達したときに、押圧を解除する。
【0039】
これにより、バックアップ材10は、目地5内に設置される。この設置方法では、目地の押込み方向(
図4では、内外方向)に対して、摺接面である左側面3および右側面4が40度以下の角度で傾いているため、幅にばらつきがある目地に対しても、バックアップ材10を設置することができる。具体的には、内側面1の左右方向長さから外側面2の左右方向長さのばらつきがある目地5に対して設置することができる。
【0040】
また、押圧工程では、バックアップ材10の左側面3および右側面4は、目地穴側面の側面に摺接しながら、目地5内部に向かって移動する。この際、バックアップ材10は、発泡体からなり、目地5の幅方向(左右方向)に縮むため、左側面3および右側面4が目地穴側面に摺接しながら、目地内部へと押し込みやすい。加えて、発泡体からなり、外側に凸となるアーチ形状であるため、外側面2を押し込んでいる際に、バックアップ材10が内側面1側に過度にたわみにくく(例えば、内側に凸となるアーチ形状になりにくく)、安定して押圧できるため、目地5内部へと押し込みやすい。また、外側面2の押圧により、発泡体である外側面部分が圧縮して、その幅方向長さが僅かに縮むため、目地穴側面との摩擦力を低減できる。したがって、バックアップ材を簡便に設置することができる。さらには、バックアップ材10が上記断面視形状を有するため、押圧工程時の捻転も生じにくい。
【0041】
また、設置後(押圧の解除後)では、発泡体の外側面2側の部分が、幅方向外側に向かう応力(発泡体の圧縮状態から戻る復元力:
図4Dの仮想線参照)が発生して、目地内側面を押圧し続けるため、バックアップ材10は、目地5内に確実に固定される。加えて、外側に凸となるアーチ形状であるため、内側面1が鉛直下向きに設置した際には、自重やその上に充填されるシーリング材の重みに強い。したがって、経年劣化によるバックアップ材の脱落が生じにくい。
【0042】
また、粘着剤や粘着シールなどを必要とせずに、バックアップ材1を目地5に設置することができるため、離型紙などの廃棄品が生じない。
【0043】
<バックアップ材の変形例>
図5を用いて、
図1に示すバックアップ材10の変形例を説明する。なお、
図1に示すバックアップ材10と同様の構成については説明を省略する。
【0044】
図5に示すバックアップ材10は、外側面2における発泡体の密度が、内側面1における発泡体の密度よりも小さい。具体的には、
図5に示すように、バックアップ材10は、内側発泡層11と、その外側に配置される外側発泡層12とを備える多層(2層)構造であり、外側発泡層12の密度は、内側発泡層11の密度よりも小さくなるように構成されている。また、図示しないが、層構造ではなく、内側面1から外側面2に向かうに従って徐々に発泡密度が小さくなるグラデーション構造であってもよい。
【0045】
この変形例によれば、上記
図1に示すバックアップ材10の作用効果に加えて、外側面2がより一層左右方向に収縮しやすいため、よりスムーズにバックアップ材10を設置することができる。
【0046】
<設置方法の他の実施形態>
図6を用いて、本発明のバックアップ材10の設置方法の他の実施形態を説明する。なお、上記一実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0047】
図6に示す設置方法では、用意工程、切断工程、および、押圧工程を備える。
【0048】
用意工程では、
図6Aに示すように、長尺方向に延びる円筒状の発泡体9を用意する。用意する円筒状の発泡体9は、上記一実施形態のバックアップ材10の前駆体であり、公知の押出形成などにより製造することができる。
【0049】
切断工程では、
図6Bに示すように、カッターやハサミなどの一般的な切断手段により、発泡体9の長尺方向に沿って、発泡体9の周方向(
図6Bに示す破線)を複数に切断する。これにより、
図6Cに示すように、複数のバックアップ材10が複数得られる。この際、複数のバックアップ材10における内側面1の長さL
1または外側面2の長さL
2は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。設置する目地の幅の種類に応じて適宜決定すればよい。
【0050】
押圧工程は、
図4A~Dに示す設置方法と同様である。具体的には、円筒状の発泡体9の内周面に対応する内側面1が目地5に対向するように複数のバックアップ材10を配置し、続いて、円筒状の発泡体9の外周面に対応する外側面2を押圧する。
【0051】
このような設置方法によれば、上記一実施形態の作用効果に加えて、切断工程において、切断するバックアップ材10の周方向幅を調整することにより、幅広い範囲の目地に対してバックアップ材10を設置することができる。その結果、幅が異なる数種のバックアップ材を予め用意して、現場に持っていく必要が無く、非常に便利である。また、幅が異なるバックアップ材の在庫を少なくすることができる。
【0052】
また、この設置方法では、用意工程において、円筒状の発泡体9は、予め長尺方向に沿う切断箇所(スリット)13(
図6Aで示す一点鎖線)が形成されていてもよい。これにより、一つ目のバックアップ材10を作製する際に、切断作業を一工程減らすことができ、作業を効率化することができる。また、円筒を展開して、円筒状の発泡体9を重ねることができるため、保管や搬送に便利である。
【符号の説明】
【0053】
1 内側面 2 外側面 3 左側面 4 右側面 5 目地 6 治具 9 発泡体 10 バックアップ材 11 内側発泡層 12 外側発泡層 13 スリット
【要約】
【課題】目地幅にばらつきがある目地に対して簡便に設置することができるバックアップ材、および、その設置方法を提供する。
【解決手段】バックアップ材10は、一方向に長尺な発泡体から形成されるバックアップ材であって、内側面1と、外側面2と、左側面3と、右側面4とを備え、一方向と直交する断面視において、内側面1および外側面2は、外側に向かう方向に凸となるように湾曲しており、かつ、外側面2の長さは、内側面1の長さよりも長く、内側面1を下方にしてバックアップ材10を水平面に載置した際に、断面視において、水平面と直交する垂線Y
1と左側面3とのなす角が40°以下であり、かつ、垂線Y
2と右側面4とのなす角度が、40°以下である。
【選択図】
図1