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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220301BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
A41D13/11 M
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020141152
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2020-12-04
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510171069
【氏名又は名称】やまと真空工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】岩本 策三
(72)【発明者】
【氏名】込山 茂
(72)【発明者】
【氏名】森 光太郎
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-313415(JP,A)
【文献】再公表特許第2011/040035(JP,A1)
【文献】特開平08-333271(JP,A)
【文献】登録実用新案第3128583(JP,U)
【文献】特開2006-247046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ウイルス性を有する不織布を含むマスク本体と、
前記マスク本体の側部に設けられ、前記マスク本体を着用者の顔面に固定する固定部と、
を備え、
前記固定部は、伸縮性を有する織物組織で形成されているとともに、前記織物組織に抗ウイルス性が付与されており、
さらに、積層または折り返された前記マスク本体の不織布の間に配置されるとともに、前記マスク本体の形状を保持する形状保持材を備え、
前記形状保持材は、抗ウイルス性を有する素材で形成されている、
マスク。
【請求項2】
前記マスク本体は、
複数の不織布が積層されて構成されているとともに、前記複数の不織布のうち、少なくとも着用時に使用者の顔面側とは反対側に配置される表面層に、抗ウイルス性を有する不織布を用いている、
請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記形状保持材は、
抗ウイルス性を有する金属薄膜が、真空成膜手段を用いて表面に形成されている、
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関し、特にマスクに付着したウイルスを不活性化するとともに、マスク本体以外の部位に付着したウイルスが再拡散することを抑制するマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染によって引き起こされる急性呼吸器疾患(COVID-19)が世界的に流行している。新型コロナウイルスは、咳やくしゃみなどで発生する飛沫による飛沫感染、あるいはドアノブなど手に触れるものを介する接触感染などにより、ヒトとヒトとの間で感染する。このため、新型コロナウイルスが口から人体に侵入することを抑制するとともに、咳やくしゃみなどにより発生する飛沫の拡散を抑制するためにマスクの着用が推奨されている。
【0003】
従来、インフルエンザウイルスの感染を抑制するため、マスク本体を構成する不織布にインフルエンザウイルスを捕捉させる機能を持たせたマスクが提案されている。しかしながら、インフルエンザウイルスを捕捉しただけでは、マスク本体中でインフルエンザウイルスが増殖することとなる。そして、マスク本体中で増殖したインフルエンザウイルスが咳やくしゃみなどにより再拡散する。また、マスクを取り外す際にマスク本体の不織布を手で触ることによって、増殖したインフルエンザウイルスが手に付着して口から人体に侵入したり、ドアノブなどに付着してインフルエンザウイルスが再拡散することとなる。
【0004】
このため、新型コロナウイルス対策においても、マスク本体の不織布にウイルス捕捉機能を持たせただけでは、新型コロナウイルスの再拡散を抑制できず、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制することは困難であると考えられる。
【0005】
これに対して、マスク本体の不織布にインフルエンザウイルスを不活性化させる抗インフルエンザウイルス剤を用いたマスクも提案されている(例えば特許文献1)。このようなマスクによれば、マスク本体の不織布に捕捉されたインフルエンザウイルスは、抗インフルエンザウイルス剤によって不活性化されるため、インフルエンザウイルスの感染拡大をある程度抑制することが可能である。
【0006】
このため、新型コロナウイルス対策においても、マスク本体の不織布に新型コロナウイルスを不活性化させる抗インフルエンザウイルス剤を用いることにより、マスク本体の不織布に捕捉された新型コロナウイルスは、抗ウイルス剤によって不活性化されるため、新型コロナウイルスの感染拡大をある程度抑制することが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平08-333271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、マスク着用時において新型コロナウイルスなどのウイルスは、使用者の呼気および吸気が通過するマスク本体の不織布に付着することが多いものの、その他の部位にも付着する可能性がある。そして、付着した部位で増殖したウイルスが咳やくしゃみなどによりマスクから飛散して、ウイルスが再拡散するおそれがある。
【0009】
また、マスクを取り外す際にウイルスが増殖した部位を手で触ることによって、増殖したウイルスが手に付着して口から人体に侵入したり、ドアノブなどに付着してウイルスが再拡散するおそれもある。
【0010】
本発明は、マスク本体の不織布に付着したウイルスを不活性化させるとともに、マスク本体の不織布以外の部位に付着したウイルスを不活性化させ、マスクに付着したウイルスが再拡散することを抑制するマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のマスクは、
抗ウイルス性を有する不織布を含むマスク本体と、
前記マスク本体の側部に設けられ、前記マスク本体を着用者の顔面に固定する固定部と、
を備え、
前記固定部は、抗ウイルス性を有する素材で形成されている、
マスクである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマスクによれば、マスク本体の不織布に付着したウイルスを不活性化させるとともに、固定部に付着したウイルスを不活性化させることができる。これにより、固定部に付着したウイルスがマスクを取り外す際などに手指に付着することを抑制し、マスクに付着したウイルスが再拡散することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態1に係るマスクの正面図である。
図2図2は、図1のA―A線における断面図である。
図3図3は、図2の領域B付近の断面図である。
図4図4は、マスク本体についての抗ウイルス性の試験結果を示すグラフである。
図5図5は、耳掛け部についての抗ウイルス性の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態にかかるマスクは、
抗ウイルス性を有する不織布を含むマスク本体と、
前記マスク本体の側部に設けられ、前記マスク本体を着用者の顔面に固定する固定部と、
を備え、
前記固定部は、抗ウイルス性を有する素材で形成されている(第1の構成)。
【0015】
上記構成によれば、マスク本体は抗ウイルス性を有する不織布を含んでおり、固定部は、抗ウイルス性を有する素材で形成されている。このため、マスク本体の不織布に付着したウイルスを不活性化させるとともに、固定部に付着したウイルスを不活性化させることができる。これにより、固定部に付着したウイルスがマスクを取り外す際などに手指に付着することを抑制し、マスクに付着したウイルスが再拡散することを抑制することができる。
【0016】
上記第1の構成において、
前記マスク本体は、
複数の不織布が積層されて構成されているとともに、前記複数の不織布のうち、少なくとも着用時に使用者の顔面側とは反対側に配置される表面層に、抗ウイルス性を有する不織布を用いてもよい(第2の構成)。
【0017】
上記構成によれば、マスク本体を構成する複数の不織布のうち、少なくとも着用時に使用者の顔面側とは反対側に配置される表面層は、抗ウイルス性を有する不織布で形成されている。このため、マスク本体の不織布に付着したウイルスを不活性化させることができる。
【0018】
上記第1または第2の構成において、
積層または折り返された前記マスク本体の不織布の間に配置されるとともに、前記マスク本体の形状を保持する形状保持材をさらに備え、
前記形状保持材は、抗ウイルス性を有する素材で形成されていてもよい(第3の構成)。
【0019】
上記構成によれば、積層または折り返された不織布の間に配置される形状保持材は、抗ウイルス性を有する素材で形成されている。このため、マスク本体の不織布を通過して形状保持材に付着したウイルスを不活性化させることができる。これにより、形状保持材に付着したウイルスが増殖することを抑制し、形状保持材に付着したウイルスが咳やくしゃみによってマスクの外部に再拡散することを抑制することができる。
【0020】
上記第3の構成において、
前記形状保持材は、
抗ウイルス性を有する金属薄膜が、真空成膜手段を用いて表面に形成されていてもよい(第4の構成)。
【0021】
上記構成によれば、形状保持材には、金属薄膜によって、マスク本体の不織布が有する抗ウイルス性とは異なる抗ウイルス性を持たせることができる。このため、例えば形状保持材の表面形状が平坦であって、マスク本体の不織布を通過したウイルスが付着しやすい表面形状であっても、ウイルスを不活性化しやすく、抗ウイルス性の高いマスクとすることができる。
【0022】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係るマスク100を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0023】
以下の図では、説明の便宜のため、矢印Uはマスクの上方向を示し、矢印Dは下方向を示す。矢印Fは前方向、矢印Bは後方向を示す。矢印Rは右方向、矢印Lは左方向を示す。
【0024】
[マスク]
まず、マスク100の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係るマスク100の正面図である。図2は、図1のA―A線における断面図である。図3は、図2の領域B付近の断面図である。図1に示すように、マスク100は、マスク本体10、形状保持材30、および耳掛け部50を備えている。
【0025】
本実施形態のマスク100は、いわゆるプリーツマスクである。マスク本体10は、プリーツ(ひだ)25を広げて使用することで、使用者の顔面の所定の範囲(例えば、鼻と口とを含む範囲)を覆う部材である。
【0026】
マスク本体10は、表面層21、中間層22、および裏面層23の3層の不織布が積層されて構成されている(図3参照)。表面層21、中間層22、および裏面層23は、積層された状態で左右方向に延びるプリーツ25が複数形成されている。表面層21、中間層22、および裏面層23の上辺、下辺、左辺および右辺は、溶着部27によって固定されている。
【0027】
使用者がマスク100を顔面に装着する場合には、マスク100の表面層21を顔面と反対側に配置し、マスク100の裏面層23を顔面側に配置するように装着するものとする。
【0028】
表面層21は、使用者がマスク100を着用した状態において、使用者の顔面側と反対側に配置される不織布の層である。表面層21は、抗ウイルス性を有する不織布で形成されている。
【0029】
抗ウイルス性を有する不織布は、基材に抗ウイルス剤をコーティング等したものでもよく、不織布の素材自体に抗ウイルス剤を含有するものであってもよい。本実施形態では、不織布の基材に抗ウイルス剤をコーティングしたものを用いている。
【0030】
中間層22は、表面層21の内側においてウイルス、細菌等を捕集する層である。中間層22として、メルトブローン不織布を用いることができる。
【0031】
裏面層23は、使用者がマスク100を着用した状態において、使用者の顔面に配置される不織布の層である。裏面層23は、使用者の顔面に接触するため、柔軟性に富む不織布を用いることが好ましい。
【0032】
表面層21、中間層22、および裏面層23を構成する不織布の厚さ等は特に限定するものではないが、マスク本体10のバリア性について、PFE、BFE、VFEがそれぞれ99%以上となるように表面層21、中間層22、および裏面層23を構成する不織布を選択することが好ましい。なお、PFEは、約0.1μmサイズの粒子の捕集率、BFEは、約0.3μmの細菌を含む粒子の捕集率、VFEは、約0.1μm~5.0μmのウイルスが含まれた粒子の捕集率を示している。
【0033】
形状保持材30は、マスク本体10の形状を保持する部材である。本実施形態では、形状保持材30として、第1形状保持材31および第2形状保持材32を設けている。
【0034】
第1形状保持材31は、マスク本体10の上辺付近に配置されており、折り返された不織布(表面層21、中間層22、および裏面層23)の間に保持されている(図2参照)。第1形状保持材31は、ノーズフィッターとも呼ばれる部材である。使用者がマスク本体10を顔面に配置した状態で、第1形状保持材31を鼻の形状に合わせて屈曲させることにより、マスク本体10をより使用者の顔面に沿わせることができる。
【0035】
第2形状保持材32は、マスク本体10の上下方向の中央付近に配置されており、表面層21と中間層22の間に保持されている(図2図3参照)。第2形状保持材32は、使用者がマスク本体10を顔面に配置した状態で、マスク本体10の中央部が顔面に接触しにくいようにマスク本体10の形状を湾曲した状態に保つための部材である。
【0036】
形状保持材30は、ポリプロピレンなどの樹脂や、アルミニウムなどの金属、あるいは樹脂と金属の組み合わせによって構成されているとともに、抗ウイルス性を有している。
【0037】
本実施形態では、形状保持材30の基材に対して、真空成膜手段を用いた金属薄膜を表面に形成することにより抗ウイルス性を付与している。金属薄膜としては、例えば酸化チタンや一価銅化合物を用いることができ、真空成膜手段として例えば、公知のスパッタリング法などの真空成膜技術を用いることができる。
【0038】
なお、形状保持材30の抗ウイルス性は、真空成膜手段に限定されない。例えば、基材に抗ウイルス剤をコーティング等したものでもよく、形状保持材30の素材自体に抗ウイルス剤を含有するものであってもよい。
【0039】
耳掛け部50は、使用者がマスク100を顔面に装着する場合に、耳(耳介)に掛けて、マスク本体10を着用者の顔面に固定する部材である。耳掛け部50は、抗ウイルス性を有する素材で形成されている。耳掛け部50の端部は、マスク本体10の側部において溶着部28によって取り付けられている。なお、耳掛け部50は、本発明の固定部に相当する。
【0040】
耳掛け部50は、例えば伸縮性を有する織物組織で形成することができる。例えば、経糸と緯糸を袋織で製織し、表裏組織をゴム糸で連結した織物組織を用いることができる。経糸にハイカウント糸を用いた織物組織を採用することにより、軟らかく肌触りのよい耳掛け部50となるため、長時間マスクを着用しても耳が痛くなりにくいマスク100とすることができる。
【0041】
耳掛け部50の抗ウイルス性は、基材となる織物組織に抗ウイルス剤をコーティング等したものでもよく、織物組織を構成する糸自体に抗ウイルス剤を含有するものであってもよい。本実施形態では、織物組織に抗ウイルス剤をコーティングしたものを用いている。
【0042】
[抗ウイルス性評価]
実施形態に係るマスク100の抗ウイルス性を評価するため、マスク本体10の表面層21に用いられている不織布、および耳掛け部50に用いられている織物組織を用いて、新型コロナウイルスに対する不活化効果の評価を行った。
【0043】
試験微生物として、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を使用した。
・ウイルスは精製したものを使用
・感染価は、接種時に10^5PFU/mL(もしくは10^5TCID50/mL)以上
【0044】
(試験方法)
・ISO18184(JIS L 1922)「繊維製品の抗ウイルス試験」を参考に実施する。
・試験品に新型コロナウイルスを接種し、2時間静置する。
・反応後回収液に混ぜて繊維からウイルスを洗い出す。
・回収液を用いてウイルス感染価を測定する。
・感染価の測定はプラーク法にて実施する。
・実施数は規格に従い、3回実施する。
【0045】
(試験品)
・未加工標準不織布(マスク本体)
・抗ウイルス加工不織布(マスク本体)
・未加工標準織物組織(耳掛け部)
・抗ウイルス加工織物組織(耳掛け部)
【0046】
(条件温度)
・25℃
【0047】
(作用時間)
・0時間(測定4ポイント×実施3回)
・2時間(測定4ポイント×実施3回)
【0048】
(抗ウイルス活性値の計算)
・抗ウイルス活性値 Mv=lg(Vb)-lg(Vc)
・lg(Vb):標準布の2時間放置後の3検体の感染価の常用対数値の平均値
・lg(Vc):加工試料の2時間放置後の3検体の感染価の常用対数値の平均値
・Mv≧3.0は十分な効果ありと見なされる。
【0049】
(減少率(%)の計算)
・0時間と比較したときの2時間後の感染価の減少率:(1-1/10^(対数減少値))×100%
【0050】
上記試験による試験結果を以下に示す。図4は、マスク本体についての抗ウイルス性の試験結果を示すグラフである。図5は、耳掛け部についての抗ウイルス性の試験結果を示すグラフである。図4および図5の縦軸は、ウイルス感染価を示している。
【0051】
未加工標準不織布(マスク本体)および、抗ウイルス加工不織布(マスク本体)の感染価は下記の通りである(図4参照)。
・未加工標準不織布(マスク本体)
0時間:6.3E+05
2時間:4.3E+05
・抗ウイルス加工不織布(マスク本体)
0時間:6.3E+05
2時間:2.5E+02(検出限界)
【0052】
未加工標準織物組織(耳掛け部)および、抗ウイルス加工織物組織(耳掛け部)の感染価は下記の通りである(図5参照)。
・未加工標準織物組織(耳掛け部)
0時間:1.2E+07
2時間:6.5E+06
・抗ウイルス加工織物組織(耳掛け部)
0時間:1.2E+07
2時間:2.5E+03(検出限界)
【0053】
上記試験による抗ウイルス加工不織布(マスク本体)および、抗ウイルス加工織物組織(耳掛け部)の抗ウイルス活性値および感染価の減少率は下記の通りである。
・抗ウイルス加工不織布(マスク本体)
抗ウイルス活性値(Mv):3.24
感染価の減少率:‐99.96%
・抗ウイルス加工織物組織(耳掛け部)
抗ウイルス活性値(Mv):3.41
感染価の減少率:‐99.98%
【0054】
以上説明した新型コロナウイルスに対する不活化効果の評価により、抗ウイルス活性値(Mv)は、抗ウイルス加工不織布(マスク本体)については3.24、抗ウイルス加工織物組織(耳掛け部)については3.41となり、いずれもMv≧3.0であるため、十分な効果があると見なすことができる。
【0055】
また、ウイルス感染価の減少率は、抗ウイルス加工不織布(マスク本体)については‐99.96%、抗ウイルス加工織物組織(耳掛け部)については‐99.98%となり、いずれも2時間で‐99.9%以上の減少率となった。
【0056】
以上説明した本実施形態に係るマスク100によれば、マスク本体10は抗ウイルス性を有する不織布を含んでおり、耳掛け部50は、抗ウイルス性を有する素材で形成されている。このため、マスク本体10の不織布に付着した新型コロナウイルスを不活性化させるとともに、耳掛け部50に付着した新型コロナウイルスを不活性化させることができる。これにより、耳掛け部50に付着した新型コロナウイルスがマスク100を取り外す際などに手指に付着することを抑制し、マスク100に付着した新型コロナウイルスが再拡散することを抑制することができる。
【0057】
また、マスク本体10を構成する不織布の間に配置される形状保持材30は、抗ウイルス性を有する素材で形成されている。このため、形状保持材30に付着した新型コロナウイルスを不活性化させることができる。これにより、形状保持材30に付着した新型コロナウイルスが増殖することを抑制し、形状保持材30に付着した新型コロナウイルスが咳やくしゃみによってマスク100の外部に再拡散することを抑制することができる。
【0058】
上記試験では、新型コロナウイルスに対する不活化効果の評価を行ったが、他のウイルスや細菌類に対しても効果が期待できる。また、抗菌防臭効果、制菌効果、抗かび効果も備えている。
【0059】
[変形例]
本発明に係るマスクは、上記説明した本実施形態に限定されない。例えば、マスク本体の形状は、本実施形態の形状に限定されない。例えば、本実施形態ではプリーツマスクとしたが、平型マスクや立体マスクであってもよい。
【0060】
マスク本体を構成する不織布は3層構造としたが、3層構造に限定されない。2層以下または4層以上であってもよい。また、複数の不織布を固定する手段として溶着手段を用いたが、接着などの他の手段を用いてもよい。
【0061】
本実施形態では、マスク本体の表面層21のみに抗ウイルス性を有する不織布を用いたが、表面層21以外にも抗ウイルス性を有する不織布を用いてもよい。
【0062】
マスク本体に用いる抗ウイルス剤と固定部に用いる抗ウイルス剤は、同一でもよく異なる種類であってもよい。マスク本体を構成する複数層の不織布にそれぞれ抗ウイルス剤を用いる場合、全て同一であってもよく、層ごとに異なる抗ウイルス剤を用いてもよい。
【0063】
耳掛け部の素材として織物組織を用いたが、他の素材を用いてもよい。例えば、ゴム状の素材や、マスク本体を構成する素材と一体に耳掛け部を構成してもよい。また、耳掛け部は固定部の一例であり、固定部を頭部に掛けてマスクを使用者の顔面に固定するようにしてもよい。
【0064】
形状保持材を設置する位置や数は本実施形態における位置や数に限定されない。
【0065】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
100 マスク
10 マスク本体
50 固定部
【要約】
【課題】マスク本体の不織布に付着したウイルスを不活性化させるとともに、マスク本体の不織布以外の部位に付着したウイルスを不活性化させ、マスクに付着したウイルスが再拡散することを抑制するマスクを提供することを目的とする。
【解決手段】抗ウイルス性を有する不織布を含むマスク本体10と、マスク本体10の側部に設けられ、マスク本体10を着用者の顔面に固定する固定部50と、を備え、固定部50は、抗ウイルス性を有する素材で形成されているマスク100とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5