(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】繊維強化複合材からの強化用繊維の回収
(51)【国際特許分類】
C08J 11/08 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020213105
(22)【出願日】2020-12-23
(62)【分割の表示】P 2018551943の分割
【原出願日】2016-03-30
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】518343969
【氏名又は名称】バルテガ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VARTEGA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】マクシー、アンドリュー ティ.
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-2580(JP,A)
【文献】特開2004-91719(JP,A)
【文献】特開2011-74204(JP,A)
【文献】特開2013-107973(JP,A)
【文献】特開2003-190759(JP,A)
【文献】米国特許第8877872(US,B2)
【文献】米国特許第6626193(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00-11/28
B29B 17/00-17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料またはプラスチック材料の前駆体のマトリックス中に保持された強化用繊維を含む
繊維強化複合材を、前記強化用繊維を回収するために処理する方法であって、
前記強化用繊維を含む第1の処理固形残渣を調製するために、前記マトリックスの材料のための通常液状の第1の溶媒で前記繊維強化複合材の第1の処理を行うことであって、前記繊維強化複合材と前記第1の溶媒とを接触させることと、重量基準で前記マトリックスの少なくとも大部分の、前記第1の溶媒への第1の溶解を行うこととを含む、第1の処理を行うことと、
前記第1の処理後、第2の処理固形残渣を調製するために、
第2の溶媒である通常ガス状の材料で、前記強化用繊維を含む前記第1の処理固形残渣の少なくとも一部分の第2の処理を行うことであって、前記通常ガス状の材料が液体または超臨界流体の形態である
0℃~175℃の範囲の温度および
2MPa~69MPaの範囲の圧力の条件下において、前記第1の処理固形残渣の前記少なくとも一部分と前記
第2の溶媒とを接触させることを含む、第2の処理を行うこととを含
み、
液体または超臨界流体の形態である前記第2の溶媒は、前記第1の溶媒のための溶媒であり、前記第2の処理は、前記第1の処理固形残渣由来の前記第1の溶媒の残留部分を前記第2の溶媒に溶解させることを含む方法。
【請求項2】
前記マトリックスは、未硬化熱硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記未硬化熱硬化性樹脂は、ポリイミン、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ビニルエステル、エポキシ、フェノール、シアネートエステル、ビスマレイミド、ポリイミド、ポリブタジエン、ベンゾオキサジン、フタロニトリル、上記のいずれかの前駆体およびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マトリックスは、熱可塑性組成物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記強化用繊維は、炭素繊維を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記強化用繊維は、炭素繊維、カーボンナノチューブ繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ホウ素繊維、バサルト繊維、高弾性率ポリエチレン繊維、ポリp-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール繊維、石英繊維、セラミック繊維、ステンレス鋼繊維、チタン繊維、銅繊維、ニッケル繊維、金属被覆繊維、天然繊維およびそれらの組合せからなる群から選択される繊維を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の溶媒は、メチレンクロリド、メトキシノナフルオロブタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、テトラクロロエチレン、n-プロピルブロミド、ジメチルスルホキシド、ポリオールエステル油およびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の溶媒は、エステル、エーテル、アセテート、酸、アルカリ、アミン、ケトン、グリコールエーテル、グリコールエーテルエステル、エーテルエステル、エステルアルコール、アルコール、ハロゲン化炭化水素、パラフィン系炭化水素、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素およびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記通常ガス状の材料は、二酸化炭素である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記通常ガス状の材料は、二酸化炭素、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタンおよびそれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の処理の圧力は、少なくとも5MPaである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック材料またはプラスチック材料の前駆体(例えば、プリプレグ材料)のマトリックス中に保持された強化用繊維を含む複合材から、そのような強化用繊維、例えば炭素繊維および他の繊維を回収することに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化ポリマー(CFRP:Carbon fiber-reinforced
polymer)は、マトリックス、典型的にはプラスチック組成物のマトリックス中に結合された強化剤として炭素繊維を含む複合材料である。CFRPは、さまざまな消費者製品および工業製品に使用される。工業グレードおよび商用グレードのバージン炭素繊維のコストが高いため、使用拡大の可能性がかなりある自動車分野および輸送分野でのより幅広い使用が制限されるなど、より広範囲にわたるエンドユーザ用途での利用が制限される。
【0003】
バージン炭素繊維の高いコストにもかかわらず、かなりの量のCFRPおよびその中の炭素繊維は、最終的に廃棄物となる。材料トリムおよび材料スクラップの廃棄物は、CFRP用途では完成品重量の約30%以上に達するのが一般的である。この廃棄物は、焼却されるかまたは埋立て地に送られることが多いため、追加の廃棄物処理コストおよび原料価値のかなりの損失を招く。
【0004】
かかるトリムおよびスクラップの廃棄物は、リサイクル炭素繊維用資源となる可能性があり、かかるトリムおよびスクラップの廃棄物を処理してリサイクル用炭素繊維を回収する試みがなされてきた。しかしながら、CFRPマトリックスから回収するために炭素繊維を効果的に遊離させることは困難であることが判明しており、結果として、リサイクル処理は、費用がかかりかつ/または炭素繊維の性質の有意な劣化をもたらす傾向があるため、可能性のあるさまざまな用途で炭素繊維源としてリサイクルする有用性がかなり制限される。
【0005】
CFRPリサイクル技術の1つは、廃棄物CFRPを熱分解に付すことを含む。この技術では、高温を利用して高分子マトリックスを分解し、かつ強化用繊維をインタクトな状態で残存させるように試みる。この処理から回収された炭素繊維は、新しい製品での再使用の可能性が制限される短い繊維長を有することが多い。また、プロセスオプションとしての熱分解は、エネルギー必要量がかなり多く、処理コストが高く、かつ熱分解副生成物の放出に起因して環境への悪影響の可能性があるため、かなりの制約を有する。
【0006】
他のタイプのCFRPリサイクル技術では、化学剤を用いて化学反応で高分子マトリックスを分解および破壊して(解重合と呼ばれることもある)、溶媒への分解生成物の溶解などによって炭素繊維から分離され得る分解生成物にする。かかるプロセスは、費用がかかる傾向があり、かつ炭素繊維の性質を劣化させるおそれもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リサイクル炭素繊維が技術的かつ経済的に使用に好適であり得る用途の範囲を拡大させるために、CFRP廃棄物からリサイクル用炭素繊維を回収するための改良されたプロセスの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
CFRPのマトリックスの化学分解に依存しない溶媒系プロセスを用いて、高品質の炭素繊維を回収するために多くのCFRP形態が有利に処理され得ることが見出された。溶媒系処理の有利な変形形態は、残留溶媒の効果的な分離および除去を行うことと、例えば、残りの残留マトリックス材料を除去しかつ/または残りの繊維サイジング材料を除去するために回収炭素繊維の仕上げクリーニングを行うこととを含む。本明細書に開示される技術は、プリプレグ形態のCFRP、例えば炭素繊維が保持されている未硬化熱硬化性樹脂マトリックスを含むCFRPを処理するのに特に有用である。屑として知られるスクラップおよびトリムの廃棄物の形態で発生するかかる複合プリプレグ廃棄物は、かなりの量で存在する。余分なスクラップ廃棄物は、仕様を満たさない製品および指定の製品貯蔵寿命の範囲内で使用されない期限切れのプリプレグ複合製品の製造中に生じる。本明細書に開示される溶媒系処理では、熱分解プロセスおよび化学解重合プロセスと比べて処理複雑性およびエネルギー必要量の両方が有意に低減される。この溶媒系処理は、マトリックス中に保持された炭素繊維以外の強化用繊維を含む複合体にも適用可能であるが、本明細書の開示は、主に強化用炭素繊維を参照して行われる。ただし、本明細書に開示される原理は、他の強化用繊維の回収およびリサイクルにも当てはまる。簡潔さを期して、強化用繊維は、本明細書では単に繊維と呼ばれることが多い。
【0009】
本開示の第1の態様は、プラスチック材料またはプラスチック材料の前駆体のマトリックス中に保持された強化用繊維を含む複合材を、強化用繊維を回収するために処理する方法である。本方法は、強化用繊維を含む第1の処理固形残渣を調製するために、通常液状の第1の溶媒で繊維強化複合材の第1の処理を行うことを含む。第1の処理は、繊維強化複合材と第1の溶媒とを接触させることと、重量基準でマトリックスの少なくとも大部分の、第1の溶媒への第1の溶解を行うこととを含む。本方法は、第1の処理後、第2の処理固形残渣を調製するために、通常ガス状の材料で、強化用繊維を含む第1の処理固形残渣の少なくとも一部分の第2の処理を行うことを含む。第2の処理は、通常ガス状の材料が液体または超臨界流体の形態である温度および圧力の条件下において、第1の処理固形残渣の少なくとも一部分と通常ガス状の材料とを接触させることを含む。かかる第2の処理は、残留する第1の溶媒を第1の処理固形残渣から除去するのに特に有益であり得、かついくらかの余分な残留マトリックス材料も有利に除去し得る。
【0010】
いくつかの特徴の改良および追加の特徴は、本開示の第1の態様に適用可能である。これらの特徴の改良および追加の特徴は、本開示の第1の態様または任意の他の態様の主題の範囲内で個別にまたは任意の組合せで使用され得る。このため、以下の各特徴は、本開示の第1の態様または任意の他の態様の任意の他の特徴と共にまたは特徴の組合せで使用され得るが、それが必要とされるわけでない。
【0011】
好ましい実装形態では、マトリックスの大部分またはさらにほとんどは、第1の処理中に第1の溶媒に溶解される。例えば、第1の処理は、第1の処理中、第1の溶媒にマトリックスの少なくとも60重量パーセント、少なくとも70重量パーセント、少なくとも80重量パーセント、少なくとも90重量パーセント、少なくとも95重量パーセント、少なくとも97重量パーセント、少なくとも98重量パーセント、さらに少なくとも99重量パーセント以上を第1の溶媒に溶解させることを含み得る。いくつかの実装形態では、第1の処理は、マトリックスのすべて(100重量パーセント)または本質的にすべてを第1の溶媒に溶解させることを含み得る。いくつかの実装形態では、第1の処理は、マトリックスの99.8重量パーセントまで、99.5重量パーセントまで、99重量パーセントまで、98重量パーセントまで、97重量パーセントまで、95重量パーセントまで、または90重量パーセントまでを第1の溶媒に溶解させることを含み得る。
【0012】
第1の処理中の溶解は、任意の好都合な温度(例えば、溶解中の第1の溶媒の温度)で行われ得るが、典型的には、第1の溶媒の標準沸点未満の温度で行われ得る。いくつかの実装形態では、温度は、0℃、10℃、15℃または20℃の下限と、40℃、35℃または30℃の上限とを有する温度範囲内であり得る。いくつかの実装形態では、温度は、本質的に周囲温度であり得る。溶解は、昇圧下で行われ得るが、周囲圧力(約0.1MPa(1bar))で行われることが多い。いくつかの実装形態では、溶解中の圧力は、0.08MPa、0.1MPa、0.15MPaまたは0.2MPaの下限と、2MPa、1MPa、0.7MPa、0.5MPaまたは0.3MPaの上限とを有する範囲内であり得る。
【0013】
プラスチック材料およびプラスチック組成物という用語は、本明細書で同義的に用いられる。繊維強化複合材のマトリックスがプラスチック材料であるとは、「硬化」プラスチック組成物であることを意味し、これは、熱可塑性材料(熱処理によって可逆的に硬化されたもの)であり得るか、または硬化熱硬化性組成物(不可逆的に化学硬化されたものであり、「熱硬化物」とも呼ばれる)であり得る。プラスチック材料の「前駆体」、「前駆体組成物」、「熱硬化性前駆体組成物」などは、例えば、最終熱硬化性マトリックスの最終硬化熱硬化性組成物であり得るプラスチック材料を調製するために追加の化学反応を起こし得る予備組成物を意味する。かかる前駆体は、未硬化熱硬化性樹脂(未硬化熱硬化性樹脂組成物または熱硬化性プレポリマー組成物とも呼ばれ得る)であり得る。本明細書で用いられる場合、「未硬化」組成物とは、硬化を受けていないかまたは部分硬化されているにすぎない前駆体を意味するため、最終プラスチック組成物を調製するために(例えば、最終熱硬化物を調製するために)追加の硬化が必要とされる。これとは対照的に、「硬化」組成物とは、すべての硬化操作の終了後のかかる最終プラスチック組成物(例えば、最終熱硬化物)を意味する。かかる前駆体組成物は、典型的には、少なくともある程度展性がありかつ形状の再構成が可能であるが、硬化熱硬化性組成物は、不可逆的に化学硬化し得、かつ典型的には展性もなく形状の再構成もできない(永久形状の)ものであり得る。硬化は、典型的には、架橋を含むことが多い1つ以上の化学反応を含む。強化用繊維とプラスチック材料の前駆体のかかるマトリックスとを含む複合材は、「熱硬化性プリプレグ複合材」、「プリプレグ複合材」、さらに単に「プリプレグ」と呼ばれ得る。前駆体組成物の硬化は、組成物に依存するさまざまな刺激により、例えば熱および/または放射線の適用により誘導または惹起され得る。「プラスチック材料」または「プラスチック組成物」とは、ポリマー成分から主に構成される組成物を意味するが、副次量の各種添加剤、例えば可塑剤などの添加剤(例えば、各種処理助剤、離型剤)を含み得る。プラスチック材料の前駆体組成物は、未架橋ポリマー成分と、さまざまな他の成分、例えば硬化剤(例えば、架橋剤)、処理助剤(例えば、粘度調整剤)、可塑剤などの添加剤とを含み得る。
【0014】
前駆体組成物のいくつかの未硬化熱硬化性樹脂組成物の例は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル、ポリイミド樹脂、ポリイミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニルエステル、シアネートエステル、ビスマレイミド、ベンゾオキサジン、フタロニトリル、ポリブタジエンおよびそれらの組合せであり得るかまたはそれらを含み得る。いくつかの例示的熱硬化性マトリックス材料は、かかる例示的前駆体組成物を用いて作製される任意の硬化組成物を含む。いくつかの具体的な熱硬化性マトリックス材料、または前駆体組成物、またはかかる前駆体組成物の成分は、リサイクラミン(Recyclamine)(登録商標)(エポキシ樹脂、コロナ・テクノロジーズ(Conora Technologies))およびリサイクロセット(Recycloset)(商標)(エポキシ樹脂、アデッソ・アドバンスト・マテリアルズ(Adesso Advanced Materials))を含む。記載のように、複合材は、熱硬化性プリプレグ複合材を含み得る。かかるプリプレグは、スクラップおよび/またはトリムのプリプレグ廃棄物であり得るかまたはそれらを含み得る。
【0015】
記載のように、マトリックスは、熱可塑性組成物であり得るかまたはそれを含み得る。いくつかの例示的熱可塑性組成物は、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよび/またはプロピレン-エチレンコポリマーを含む)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアミド-イミド、ポリアリールスルホン、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、環式熱可塑性ポリエステルおよびそれらの組合せに基づくものまたはそれらを含むものを含む。
【0016】
繊維強化複合材は、マトリックスと繊維とのさまざまな割合を含み得る。いくつかの実装形態では、繊維強化複合材は、上限が下限よりも大きいことを条件として、繊維強化複合材の全重量の7重量パーセント、10重量パーセント、15重量パーセント、20重量パーセント、25重量パーセント、30重量パーセント、35重量パーセント、40重量パーセント、45重量パーセント、50重量パーセント、55重量パーセントまたは60重量パーセントの下限と、85重量パーセント、80重量パーセント、70重量パーセント、65重量パーセント、60重量パーセント、55重量パーセントまたは50重量パーセントの上限とを有する範囲内の量でマトリックスを含み得る。いくつかの実装形態では、繊維強化複合材は、繊維強化複合材の全重量の20重量パーセント、30重量パーセント、40重量パーセント、45重量パーセント、50重量パーセント、55重量パーセントまたは60重量パーセントの下限と、93重量パーセント、90重量パーセント、85重量パーセント、80重量パーセント、75重量パーセント、70重量パーセントまたは65重量パーセントの上限とを有する範囲内の量で強化用繊維を含み得る。繊維強化複合材は、副次量の追加の成分、例えば、以下:繊維サイジング剤、繊維上または繊維サイジング剤上の表面処理剤、分散剤および相溶化剤の1つ以上を含み得る。いくつかの好ましい実装形態では、強化用繊維とマトリックスとを除くすべての成分のいずれか1つ以上の量は、繊維強化複合材の10重量パーセント以下、5重量パーセント以下、3重量パーセント以下または1重量パーセント以下を占める。繊維強化複合材は、強化用繊維以外に本質的に機能的または非機能的であり得る1種以上の充填剤を含み得るが、いくつかの好ましい実装形態では、繊維強化複合材は、いずれのかかる他の充填剤も含まないかまたは本質的に含まない。
【0017】
強化用繊維は、単一のタイプの繊維を含み得るか、または複数の異なるタイプの繊維を含み得る。強化用繊維は、以下のタイプの繊維:炭素繊維(好ましい)、カーボンナノチューブ繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ホウ素繊維、バサルト繊維、高弾性率ポリエチレン繊維、ポリp-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール繊維、石英繊維、セラミック繊維、ステンレス鋼繊維、チタン繊維、銅繊維、ニッケル繊維、金属被覆繊維(例えば、銀、金、ルテニウム、ミラロイ(Miralloy)(登録商標)、合金などで被覆されたもの)、天然繊維および鉱物繊維の1つのみまたは2つ以上の任意の数を含むように限定され得る。繊維は、単一の材料相のみを含み得るか(例えば、単一の均一材料で構成された繊維)または多相構造であり得る(例えば、1つの材料相のコアと、異なる金属コーティング材料相とを含む金属被覆繊維)。かかる繊維は、典型的には、マイクロサイズ範囲(例えば、100マイクロメートル(100ミクロン)以下)、さらにナノサイズ範囲(例えば、1マイクロメートル(1ミクロン)未満)の直径を有するであろう。
【0018】
第1の溶媒は、マトリックスの材料のための溶媒である任意の液状組成物であり得、かつ強化用繊維に対して好ましくは化学的に非反応性、より好ましくは化学的に不活性である。材料が他の材料に対して化学的に非反応性であるとは、関連する処理中の温度および圧力の条件下で材料が他の材料に対して本質的に化学反応性でないことを意味する。材料が他の材料に対して化学的に不活性であるとは、関連する処理中の温度および圧力の条件下で材料が他の材料に対して本質的に化学反応性でなく、かつ本質的に他の材料のための溶媒でないことを意味する。第1の溶媒は、単一の成分であり得るか、またはマトリックスの材料を溶解するために一緒になって所望の溶媒和性を提供する複数の成分の多成分混合物であり得る。第1の溶媒は、他の追加の成分を伴ってまたは伴わずに、以下:メチレンクロリド(好ましい)、メトキシノナフルオロブタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、テトラクロロエチレン、n-プロピルブロミド、ジメチルスルホキシド、ポリオールエステル油、エステル、エーテル、アセテート、酸、アルカリ、アミン、ケトン、グリコールエーテル、グリコールエーテルエステル、エーテルエステル、エステルアルコール、アルコール、ハロゲン化炭化水素、パラフィン系炭化水素、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素およびそれらの組合せのいずれか1つまたは2つ以上の任意の組合せを含み得る。
【0019】
いくつかの好ましい実装形態では、第1の処理の結果、マトリックスの材料のほとんどは、第1の溶媒に溶解され、および第1の処理固形残渣は、主に強化用繊維で構成される。例えば、強化用繊維は、第1の処理固形残渣の少なくとも70重量パーセント、少なくとも80重量パーセント、少なくとも90重量パーセント、少なくとも95重量パーセント、少なくとも98重量パーセント、さらに少なくとも99重量パーセント以上(ただし、多くの場合に100重量パーセント未満)を構成し得る。第1の処理固形残渣は、強化用繊維以外の副次量の他の材料、例えばいくらかの残留マトリックス材料(例えば、処理中に非溶解のものもしくは再沈殿されたもの)および/または繊維サイジング材料を含み得る。
【0020】
本方法は、典型的には、第2の処理前に(すなわち、第1の処理中または第1の処理と第2の処理との間の処理の一部として)、溶解マトリックス材料がロードされた第1の溶媒(リッチな第1の溶媒)を第1の処理固形残渣から分離することを含み得る。かかる分離は、任意の液固分離技術、例えば、以下:沈降およびデカンテーション(遠心抽出を介する加速沈降を含む)、サイクロン分離ならびに/または濾過のいずれか1つ以上を含み得る。濾過は、例えば、第1の溶媒が濾液として濾過媒体を通り抜け、かつ第1の処理固形残渣が保持液と共に残留する濾過を含み得る。好ましくは、第1の溶媒の大部分またはさらにほとんどは、かかる処理によって第1の処理固形残渣から分離されるであろう。しかしながら、かかる濾過などの液固分離後でも、第1の処理固形残渣は、依然としていくらかの量の残留する第1の溶媒の存在下であり得るため、第1の処理固形残渣中の強化された繊維の実用性の点で問題がある。好ましい処理では、第2の処理中の液体形態または超臨界形態の通常ガス状の材料は、第1の処理固形残渣の存在下で残留するいくらかの、好ましくは本質的にすべてのかかる残留する第1の溶媒を溶解させるために、第2の処理中に第2の溶媒(第1の溶媒とは異なる組成のもの)として作用する。かかる液体形態または超臨界流体形態は、第1の処理固形残渣中のいくらかの量のマトリックスの材料などの材料、例えば第1の処理固形残渣中に残留し得る繊維サイジング剤の材料を溶解させるいくらかの溶媒和能も有し得る。しかしながら、典型的には、かかる液体形態または超臨界流体形態は、第1の溶媒のための良好な溶媒であることが好ましく、余分な残留マトリックス材料または繊維サイジング剤の溶解は、利用可能な場合、必要ではないが二次的な利益となる。「第1の溶媒」および「第2の溶媒」などの用語は、参照の便宜上のものであり、処理は、明記された以外の2つ以上の溶媒または任意の特定数の異なる溶媒を含むことを意味または示唆するものではないことが理解されるであろう。
【0021】
通常ガス状の材料は、単一の通常ガス状の成分または複数の異なる成分の通常ガス状の混合物で構成され得、および混合物は、かかる混合物の成分のすべてが個別に通常ガス状であるか否かにかかわらず、通常ガス状である。好ましくは、かかる通常ガス状の混合物は、それぞれ個別に通常ガス状である成分のみで本質的に構成される。通常ガス状の材料とは、0.1MPaの圧力および25℃の温度の条件で材料がガスの形態であることを意味する。通常液状の材料とは、0.1MPaの圧力および25℃の温度の条件で材料が液体の形態であることを意味する。材料および物質という用語は、1つまたは2つ以上の成分を含む組成物に対する総称語であり、これらの用語は、本明細書で同義的に用いられる。参照の便宜上、本開示の異なる部分では、これらの用語のうちの異なるものを使用することもある。通常ガス状の材料であり得るかまたはその一部分であり得るいくつかの例示的材料は、1つまたは複数の任意の他の成分の存在を伴ってまたは伴わずに、以下:二酸化炭素、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタンおよびそれらの組合せのいずれか1つまたは2つ以上の任意の組合せを含む。好ましい実装形態では、通常ガス状の材料は、強化用繊維に対して化学的に非反応性、さらにより好ましくは化学的に不活性である。第2の処理に対する好ましい通常ガス状の材料は、二酸化炭素を含み、より好ましくは二酸化炭素から本質的になる。
【0022】
記載のように、第2の処理の接触中、通常ガス状の材料は、液体または超臨界流体の形態である。かかる接触が行われる圧力は、多くの場合、3MPa、3.5MPa、4MPa、5MPa、7MPa、7.39MPaまたは7.5MPaの下限と、69MPa、50MPa、40MPa、30MPa、20MPaまたは10MPaの上限とを有する範囲内であり得、かかる範囲は、通常ガス状の材料が二酸化炭素である場合に特に好ましい。第2の処理の接触温度は、多くの場合、上限が下限よりも高いことを条件として、0℃、10℃、13℃、15℃、20℃または30℃の下限と、175℃、150℃、125℃、100℃、75℃、60℃、50℃または40℃の上限とを有する範囲内であり得、かかる範囲は、通常ガス状の材料が二酸化炭素である場合に特に好ましい。理解されるように、超臨界流体とは、材料の臨界温度および臨界圧力を超える温度および圧力の流体、例えば、通常ガス状の材料が二酸化炭素である場合、31.1℃超の温度および72.9気圧(7.39MPa)超の圧力の流体を意味する。
【0023】
第1の処理中、マトリックス材料の溶解は、第1および第2の処理後に繊維がもはやマトリックス中に結合されていない遊離形態になるように、マトリックスの材料の大部分またはさらにほとんどが除去されて繊維が放出される程度まで行われ得る。しかしながら、第1および第2の処理後でも、放出された繊維のいくつかに依然として付着している残留マトリックス材料が存在し得る。
【0024】
また、炭素繊維およびまたいくつかの他の強化用繊維は、多くの場合、繊維サイジング剤または単純にサイジング剤と呼ばれる材料の層を伴って作製され、この層は、例えば、以下の機能:繊維の保護、繊維凝集の防止、繊維処理性の改善ならびにマトリックス材料への分散性および/またはそれとの結合を改善する相溶化剤としての作用の1つ以上を提供し得る。多くのリサイクル用途では、強化用繊維をクリーニングして、かかる残留マトリックス材料および/またはサイジング材料の一部または全部を除去することが望ましい。他の用途では、かかる残留マトリックス材料および/またはいくらかの保持サイジング材料は問題にならないこともある。しかしながら、より高価値のリサイクル用途では、その後、必要に応じて繊維に新しいサイジング剤を添加するために処理され得るクリーンな繊維を提供するために、残留マトリックス材料およびサイジング材料の両方を除去することが好ましいこともある。本開示の目的では、繊維サイジング剤は、強化用繊維またはマトリックスのいずれの一部分とも見なされず、それらの用語のそれぞれとは別のものである。より正確には、繊維強化組成物の強化用繊維が繊維サイジング剤で被覆される限り、たとえ繊維サイジング剤が強化用繊維とマトリックスとの間の結合中間体を提供し得るとしても、繊維サイジング剤は、強化用繊維およびマトリックスとは別の材料である。
【0025】
本方法は、第2の処理後に第3の処理を含み得る。かかる第3の処理は、第2の処理固形残渣に接触した状態で、通常ガス状の物質の流体形態から固体形態への第1の変換を行うことにより、強化用繊維を含む第2の処理固形残渣の少なくとも一部分をさらに処理することを含み得る。通常ガス状の物質が固体形態になった後、第3の処理は、通常ガス状の物質の固体形態からガス形態への第2の変換を含む。かかる第3の処理は、マトリックスの材料および/または繊維サイジング剤の材料を含み得る残留材料を強化用繊維から除去することを有意に支援し得る。第2の変換中、急速に膨張するガスは、有意な残留マトリックス材料および/またはサイジング材料を繊維から機械的に除去し得る。かかる第2の変換は、固体形態からガス形態への急速な昇華を含み得る。
【0026】
かかる第3の処理の第1の変換は、通常ガス状の物質の温度をより高い第1の温度から低下した第2の温度に低下させることを含み得る。かかるより高い温度は、多くの場合、少なくとも0℃、少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃または少なくとも20℃であり得るが、多くの場合、より高い温度は、100℃以下、50℃以下、40℃以下または30℃以下であり得る。より高い温度は、典型的には、周囲温度であり得る。かかる低下した温度は、-40℃以下、-50℃以下、-56.6℃以下、-60℃以下または-70℃以下であり得る。かかるより高い第1の温度では、通常ガス状の物質は、通常ガス状の物質がガス、液体または超臨界流体、好ましくは液体の形態である温度および圧力の条件下である。低下した温度では、通常ガス状の物質は、通常ガス状の材料が固体の形態である温度および圧力の条件下である。いくつかの実装形態では、低下した温度での条件は、周囲圧力(約0.1MPa(1bar))を含む。いくつかの実装形態では、より高い温度での条件は、周囲圧力と比べて上昇した(例えば、大気圧よりも高い)圧力を含む。
【0027】
第1の変換は、通常ガス状の物質の圧力を上昇した圧力から有意に低下させることを含み得、および通常ガス状の物質の温度を低下させることは、圧力の低下に伴うガス膨張冷却を含み得る。上昇した圧力は、少なくとも3.0MPa、少なくとも3.5MPa、少なくとも4MPa、少なくとも5MPa、少なくとも7MPa、少なくとも7.39MPaまたは少なくとも7.5MPaであり得る。上昇した圧力は、第2の処理中の接触中の圧力に対して以上に記載した圧力であり得る。圧力を低下させることは、通常ガス状の物質の圧力を上昇した圧力から1MPa以下、0.750MPa以下、0.5MPa以下、0.250MPa以下、さらに0.15MPa以下のより低い圧力またはさらにほぼ周囲圧力(約0.1MPa(1bar))に低下させることを含み得る。通常ガス状の物質として二酸化炭素を使用するいくつかの好ましい実装形態では、温度を低下させることは、温度を二酸化炭素の三重点(-56.6℃)以下の温度、好ましくはさらに低い温度(例えば、-60℃以下)またはさらに二酸化炭素の標準昇華点(-78.5℃)以下の温度に低下させることを含み得る。同様に、通常ガス状の物質として二酸化炭素を使用する場合、かかる圧力低下工程のかかるより低い圧力は、好ましくは、二酸化炭素の三重点圧力(0.518MPa)以下、より好ましくはかかる三重点圧力未満(例えば、周囲圧力またはその近傍)であり得る。
【0028】
第2の変換は、好ましくは、残留マトリックス材料および/またはサイジング材料を効果的に除去するために通常ガス状の物質を固体形態からガス形態に短時間で急速に変換することを含む。かかる時間は、例えば、120秒以下、60秒以下、45秒以下、30秒以下、20秒以下、15秒以下、10秒以下または5秒以下であり得るが、かかる時間は、多くの場合、少なくとも1秒であり得る。第2の変換は、第2の処理固形残渣と、通常ガス状の材料の固体形態の低下した温度よりも高い温度の熱伝達流体とを接触させることを含み得、例えば、第2の処理固形残渣と接触させる直前の熱伝達流体の温度は、低下した温度よりも少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも25℃、少なくとも50℃、少なくとも75℃、少なくとも100℃、さらに少なくとも150℃高いが、多くの場合、低下した温度よりも225℃以下だけ高い。熱伝達流体は、第2の処理固形残渣および通常ガス状の材料の固体形態との接触時、ガス、液体または超臨界流体の形態であり得る。いくつかの例示的熱伝達流体は、油、液体水、蒸気(飽和または過熱)、空気、窒素および二酸化炭素を含む。第2の変換は、固体形態からの通常ガス状の物質の急速な昇華を含み得る。
【0029】
第3の処理の通常ガス状の物質は、かかる第1および第2の変換に付され得る任意の通常ガス状の材料であり得る。第3の処理の通常ガス状の物質のいくつかの例示的材料は、第2の処理の通常ガス状の材料で特定された通常ガス状の材料のいずれかまたはそれらの組合せを含み、第2の処理および第3の処理の両方に使用するには二酸化炭素が好ましい。第3の処理の通常ガス状の物質は、第2の処理の通常ガス状の材料と同一の組成物または異なる組成物であり得る。いくつかの好ましい実装形態では、第3の処理の通常ガス状の物質は、第2の処理の通常ガス状の材料と同一であり、より好ましい実装形態では、第3の処理の通常ガス状の物質は、第2の処理の終了時に第2の処理固形残渣と接触した状態で残留する第2の処理の通常ガス状の材料の一部または全部(例えば、第2の処理から残存する二酸化炭素)で構成される。
【0030】
第2の処理から生じる第2の処理固形残渣は、好ましくは、第1の溶媒がほとんど存在しないようにすべきであり、より好ましくは、第1の溶媒が本質的に存在しないようにすべきであり、別の言い方をすれば、第2の処理固形残渣は、好ましくは、第1の溶媒に関して本質的に完全乾燥状態である。第2の処理固形残渣は、典型的には、強化用繊維の含有量が非常に高いであろうが、依然としていくらかの副次量の他の材料(例えば、残留マトリックス材料および/または繊維サイジング材料)も含有し得る。強化用繊維は、例えば、第2の処理固形残渣の少なくとも90重量パーセント、少なくとも95重量パーセント、少なくとも98重量パーセント、さらに少なくとも99重量パーセント以上(例えば、本質的に100重量パーセント)を構成し得る。例えば、通常ガス状の材料の液体形態または超臨界流体形態への残留マトリックス材料または繊維サイジング剤のいかなる有意な溶解も第2の処理に本質的に不在である場合、第2の処理固形残渣は、第1の処理固形残渣と本質的に同一の組成物を有し得るが、第1の溶媒は、乾燥除去された状態であり得る。代替的に、例えば、残留マトリックス材料または繊維サイジング剤のいくらかの部分が通常ガス状の材料の液体形態または超臨界流体形態に溶解される場合、第2の処理固形残渣は、強化用繊維の重量パーセントがより高く、それに対応して他の材料の重量パーセントがより低いものであり得る。
【0031】
本方法が第3の処理を含む場合、かかる第3の処理の生成物は、例えば、熱伝達流体、通常ガス状の物質のエフルエントまたは他のフラッシング流体でフラッシュ除去することにより、マトリックスおよび/または繊維サイジング剤の材料の除去片を分離した後のクリーニングされた生成物であり得る第3の処理固形残渣であり得る。かかるクリーニングされた生成物は、ほとんどまたはさらに本質的にすべての強化用繊維を含み得、好ましくは、マトリックスおよび/または繊維サイジング剤の残留材料は、含有量が低減されるかまたは本質的に含まれない。強化用繊維は、かかるクリーニングされた生成物の少なくとも90重量パーセント、少なくとも93重量パーセント、少なくとも96重量パーセント、少なくとも98重量パーセント、少なくとも99重量パーセント、少なくとも99.5重量パーセントまたは少なくとも99.8重量パーセントを構成し得る。
【0032】
本方法は、例えば、第1の処理前(例えば、第1の処理への繊維強化複合材の供給物を準備するために)、第1の処理と第2の処理との間(例えば、残留する第1の溶媒の一部分を気化させるための液固分離もしくは熱乾燥)または第2の処理後(例えば、第3の処理)に追加の処理工程を含み得る。同様に、第1の処理は、溶解に追加される処理を含み得、および第2の処理は、接触に追加される処理を含み得る。本方法は、逐次的であり得るかまたは1つ以上の介在処理工程によって分離され得る複数の第1の処理工程、第2の処理工程および/または第3の処理工程を含み得る。
【0033】
本方法は、例えば、以下:
第1の処理中にマトリックス材料を溶解させるために使用された第1の溶媒、
第1の処理中に第1の溶媒に溶解されたマトリックス材料、および
第2の処理に使用された通常ガス状の材料
の1つ以上を回収、処理および/またはリサイクルするための補助的操作も含み得る。
【0034】
例えば、本方法は、第1の処理からリッチな第1の溶媒を回収することであって、リッチな第1の溶媒は、マトリックスの溶解された材料に富んでいる、回収することと、リッチな第1の溶媒を蒸留して、好ましくはマトリックスの材料の固形分の沈殿を伴って第1の溶媒を気化させることとを含み得る。第1の溶媒の蒸留蒸気は、凝縮されかつ第1の処理への供給物としてリサイクルされ得る。マトリックス材料の沈澱固形分は、回収および(例えば、蒸留ボトムの濾過により)リサイクルされ得る。
【0035】
他の例として、本方法は、通常ガス状の材料の一部または全部を第2の処理から回収することと、第2の処理後、通常ガス状の材料からいずれかの溶解材料を回収すること(例えば、減圧して溶解性を低減することにより、および/または昇圧で蒸留して通常ガス状の材料をガス形態に変換することにより)または第2の処理から回収された通常ガス状の材料と混合され得るいずれかの懸濁微細固形分を通常ガス状の材料から分離することとを含み得る。次いで、クレンジングされた通常ガス状の材料は、必要に応じて圧縮および/または温度調整に付して第2の処理操作で追加的に使用するための供給物としてリサイクルされ得る。第3の処理の通常ガス状の物質も、第2の変換後に回収して同様に処理し、リサイクルすることができる。
【0036】
本開示の第2の態様は、プラスチック材料またはプラスチック材料の前駆体のマトリックス中に保持された強化用繊維を含む複合材から回収された強化用繊維を含有する粗生成物を処理する方法であって、粗生成物は、強化用繊維上にマトリックスおよび繊維サイジング剤の一方または両方のいくらかの残留材料を含む、方法に関する。本方法は、通常ガス状の物質の存在下で粗生成物を用いて、粗生成物に接触した状態で通常ガス状の物質を流体形態から固体形態に変換することであって、第1の変換は、通常ガス状の物質の温度を低下させることを含む、変換することを含む。本方法は、第1の変換後、強化用繊維から残留材料の少なくとも一部分を除去することを支援するために、固体形態の通常ガス状の物質の固体形態からガス形態への第2の変換を行うことを含む。
【0037】
いくつかの特徴の改良および追加の特徴は、本開示の第2の態様に適用可能である。これらの特徴の改良および追加の特徴は、本開示の第2の態様または任意の他の態様の主題の範囲内で個別にまたは任意の組合せで使用され得る。このため、以下の各特徴は、本開示の第2の態様または任意の他の態様の任意の他の特徴と共にまたは特徴の組合せで使用され得るが、それが必要とされるわけでない。
【0038】
粗生成物は、本開示の第1の処理に基づく処理による第1の処理固形残渣であり得るかもしくはそれを含み得、かつ/または本開示の第1の態様の第2の処理に基づく処理による第2の処理固形残渣を含み得、あるいは粗生成物は、回収のためにマトリックスから強化用繊維を放出させる繊維強化複合材の代替処理によって調製された生成物であり得るかまたはそれを含み得る。かかる代替処理は、例えば、マトリックス材料の材料を除去する熱分解処理、マトリックスの材料を化学分解もしくは解重合する化学処理、またはマトリックスの材料が溶媒に溶解される処理を含み得る。強化用繊維、マトリックスの材料および繊維サイジング剤のいずれか1つ以上は、第1の態様との関連で本明細書に記載した通りであり得る。第2の態様の方法は、本開示の第1の態様の第3の処理オプションのいずれかの特徴または特徴の組合せであり得るかまたはそれを含み得る。例えば、第1の変換、第2の変換および第2の態様の方法の通常ガス状の物質のいずれか1つ以上は、第1の態様の方法のかかる第3の処理の同様に指定された特徴との関連で記載した通りであり得る。第2の態様の方法は、第1の処理、第2の処理または任意の補助的処理を含めて、本開示の第1の態様のいずれかの特徴またはいずれかの特徴の任意の組合せを含み得る。本方法の生成物は、主に強化用繊維で構成され、かつ粗生成物中で強化用繊維に付着していた残留マトリックス材料および/または繊維サイジング材料の少なくとも一部分がクリーニングによって除去されたクリーニングされた生成物であり得る。かかるクリーニングされた生成物は、第1の態様に関連して記載した第3の処理によってクリーニングされた生成物に対して以上に記載したいずれかの性質または性質の組合せであり得るかまたはそれを有し得る。
【0039】
本開示の第3の態様は、熱可塑性ポリマー組成物または未硬化熱硬化性樹脂組成物を含むマトリックス中に強化用繊維を含む繊維強化複合材から強化用繊維をリサイクルする方法に関する。本方法は、メチレンクロリドを含む溶媒で繊維強化複合材を処理することを含み、処理は、繊維強化複合材と溶媒とを接触させることと、重量基準でマトリックスの少なくとも大部分を溶媒に溶解させることとを含む。
【0040】
いくつかの特徴の改良および追加の特徴は、本開示の第3の態様に適用可能である。これらの特徴の改良および追加の特徴は、本開示の第3の態様または任意の他の態様の主題の範囲内で個別にまたは任意の組合せで使用され得る。このため、以下の各特徴は、本開示の第3の態様または任意の他の態様の任意の他の特徴と共にまたは特徴の組合せで使用され得るが、それが必要とされるわけでない。
【0041】
第3の態様の方法は、メチレンクロリド(ジクロロメタンとしても知られる)を含む第1の溶媒による本開示の第1の態様の第1の処理であり得るかまたはそれを含み得る。いくつかの好ましい実装形態では、メチレンクロリドは、重量基準で溶媒の少なくとも大部分を構成し、溶媒は、メチレンクロリドから本質的になることがより好ましい。第3の態様の方法は、リッチ溶媒の回収に関して第1の態様との関連で記載したいずれかの補助的処理ならびにかかるリッチ溶媒の処理、例えば溶媒のリサイクルおよび/またはマトリックスの沈澱固形材料の回収を含み得る。
【0042】
他の態様、特徴の改良および追加の特徴は、以上に提供される概要および以下の説明と組み合わせた図面ならびに添付の特許請求の範囲に開示され、かつ/またはそれらから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本開示の態様の処理の例を示す一般化プロセスブロック図。
【
図2】本開示の態様の処理の他の例を示す一般化プロセスブロック図。
【
図3】本開示の態様の処理の他の例を示す一般化プロセスブロック図。
【
図4】本開示の態様の処理の他の例を示す一般化プロセスブロック図。
【
図5】それぞれ以下に提示された実施例1~11で回収された炭素繊維のSEM画像。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、強化用繊維を回収するために繊維強化複合材を処理する方法のいくつかの例示的実施形態を例示する一般化プロセスブロック図を示す。
図1に示される一般化処理では、繊維強化複合材102の供給物は、重量基準で複合材102のマトリックスの少なくとも大部分を第1の溶媒106に溶解させる条件下において、複合材102と第1の溶媒106とを接触させる間に第1の処理104に付される。第1の処理104からのマトリックスの溶解された材料を含むリッチな第1の溶媒108は、例えば、マトリックスの材料を回収するために、かつリサイクルして第1の溶媒106の供給物の一部として第1の処理104に戻すためのリーンな第1の溶媒を準備するために必要に応じて回収および処理され得る。第1の処理の結果は、第1の処理固形残渣110であり、少なくともその一部分は、第2の処理112に付される。第1の処理固形残渣110は、複合材102のマトリックスから遊離された強化用繊維を含むが、依然として残留する第1の溶媒の存在下である。第2の処理112中、第1の処理固形残渣110の少なくとも一部分、好ましくは第1の処理固形残渣110のすべてまたは本質的にすべては、第2の溶媒114に接触される。第2の処理112中に第1の処理固形残渣110の存在から切り離されて溶解された第1の溶媒106を含有するリッチな第2の溶媒116は、第2の処理112から回収され、かつ必要に応じて処理され得る。また、第2の溶媒114は、第1の処理104後、第1の処理固形残渣110に残留し得るマトリックスの残留材料の一部を溶解させ得、かつ/またはマトリックスの残留材料のいくつかの微粒子を搬出し得る。第2の処理112の結果は、第1の処理後、第1の処理固形残渣110に伴って残留する第1の溶媒106の少なくとも一部分、好ましくは本質的にすべてがクレンジング除去された第2の処理固形残渣118であり、好ましくは、第2の処理固形残渣118はまた、第1の処理104後、第1の処理固形残渣110に残留し得るマトリックスの残留材料の少なくとも一部分がクレンジング除去されている。好ましくは、第2の処理固形残渣118は、ほぼ全部が強化用繊維で構成されるが、強化用繊維が複合材102の製造前にサイジング材料のコーティングで元々保護されたタイプである場合、かかる強化用繊維は、強化用繊維上の薄いコーティングの形態で少ない残留量のマトリックス材料およびおよび/またはいくらかの繊維サイジング材料を依然として伴い得る。
【0045】
引き続き
図1を参照すると、第1の溶媒106は、マトリックスの材料を溶解して複合材102を搬出するための有意な溶媒和能を有する通常液状の材料(例えば、メチレンクロリド)であり、第1の溶媒は、第1の溶媒106が液体形態である温度および圧力の条件下で複合材102に接触される。これとは対照的に、第2の溶媒114は、第2の溶媒114が液体または超臨界流体の形態である温度および圧力の条件下で第1の処理固形残渣110に接触される通常ガス状の材料(例えば、二酸化炭素)である。いくつかの実装形態では、第2の処理固形残渣118は、いくらかの第2の溶媒114との混合物で残留し得、これは、第2の処理固形残渣の何らかのさらなる任意選択的処理、例えば以下で考察される
図2または3に例示されるタイプの処理に有益であり得る。
【0046】
次に、強化用繊維を含む複合材の事前処理から回収された強化用繊維を含有する粗生成物を処理する方法のいくつかの例示的実施形態を例示した一般化プロセスブロック図を示す
図2が参照される。
図2に示されるように、かかる粗生成物120の供給物および通常ガス状の物質の流体形態124の供給物は、第1の変換工程122に付され、この工程では、粗生成物の存在下において、通常ガス状の物質は、粗生成物に接触した状態で流体形態124(すなわち、液体、ガスまたは超臨界流体)から固体形態に変換される。粗生成物120の供給物は、好ましくは、ほとんどが遊離した強化用繊維で構成されるが、典型的には、いくらかの残留マトリックス材料および/または繊維サイジング材料を含み得る。第1の変換工程122中、通常ガス状の物質の温度が低下され、それは、通常ガス状の物質の圧力変化に伴い得る。例示的実施形態では、第1の変換工程は、通常ガス状の物質の圧力を高圧状態から低圧状態に低下させることに伴うガス膨張冷却を含み得る。例えば、第1の変換工程122中、粗生成物と通常ガス状の物質との混合物は、最初に圧力槽に閉じ込められ得る。この場合、通常ガス状の物質は、非常に高い圧力下で高圧のガス、液体または超臨界流体の形態をとる。次いで、圧力槽は、最初に圧力槽内の通常ガス状の物質の少なくとも一部分が、減圧された圧力槽内で粗生成物に接触して固体形態に変換するのに十分な程度に冷却される温度まで圧力槽内の温度を低下させるために、十分に急速に通常ガス状の物質の一部分またはさらにほとんどを圧力槽からベントストリーム125としてベントすることによって減圧され得る。通常ガス状の物質のかかるベント部分は、破線で示されたベントストリーム125によって
図2に例示される。
【0047】
第1の変換122の結果は、粗生成物と通常ガス状の物質の固体形態とを含む混合物126である。好ましくは、かかる固体形態は、残留マトリックス材料および繊維サイジング材料の位置およびその近傍の空隙空間内に存在し、固体形態の一部分は、残留マトリックス材料および繊維サイジング材料を含浸する。かかる含浸は、通常ガス状の物質の流体形態がかかる残留マトリックス材料および繊維サイジング材料に拡散などによって浸透することから生じ得、かかる浸透性流体の一部分は、その後、圧力および温度の低下に伴ってマトリックス材料および繊維サイジング材料内で固体形態に変換される。
【0048】
第1の変換工程122後、粗生成物と通常ガス状の物質の固体形態とを含む混合物126は、第2の変換工程128に付され、その際、混合物126の通常ガス状の物質は、好ましくは、非常に速い速度で固体形態からガス形態に変換される。それに関連して、第2の変換工程128は、固体形態からガス形態への急速な昇華を含み得る。
図2に示される第2の変換工程128中、混合物126と熱伝達流体130とを接触させることによって熱を供給して通常ガス状の物質の固体形態をガス形態に急速に変換する。これは、混合物126を急速に加温する任意の方法で達成され得る。
図2に示される例では、熱は、混合物126と混合物126の温度よりも高い温度の熱伝達流体130とを接触させることによって供給される。
図2に示されるように、熱伝達流体130の供給物は、混合物126に接触させて加温することによって通常ガス状の物質の固体形態からガス形態への変換を引き起こすために第2の変換に供給される。熱伝達流体130のかかる供給物は、例えば、液体(例えば、加熱水、加熱油)、ガス(例えば、蒸気、二酸化炭素、窒素)または多相(例えば、飽和蒸気/水混合物)の形態であり得る。
図2に示される例では、ガス形態における通常ガス状の物質のエフルエント132および熱伝達流体のエフルエント134は、第2の変換128から除去され、個別にまたは第2の変換128からの混合物として回収され得る。クリーニングされた生成物136は、第2の変換128から回収される。クリーニングされた生成物136は、粗生成物120の供給物中に存在するマトリックスの残留材料および/またはサイジング材料の少なくとも一部分をクリーニング除去した強化用繊維を含む。除去されたマトリックス材料および/またはサイジング材料の粒子は、通常ガス状の物質のエフルエント132および/または熱伝達流体のエフルエント134と共に回収され得る。
図2の処理への粗生成物120の供給物は、任意の事前処理から得られ得る。いくつかの実装形態では、
図2の処理に供給される粗生成物120は、
図1に示される処理で調製された第1の処理固形残渣110または第2の処理固形残渣118によって提供され得る。
【0049】
図3は、
図2の第1の変換122と第2の変換128とを含む第3の処理140と組み合わせて
図1の第1の処理104と第2の処理112とを含む処理のいくつかの例示的実施形態を示す一般化プロセスブロック図であり、第2の処理112の第2の処理固形残渣118は、粗生成物120の供給物として第1の変換122で使用される。特に明記されている場合を除いて、
図1および2との関連で示されかつ記載された同じ特徴を参照するために、同一の参照数字が
図3で使用される。
図3の処理では、第2の処理112の第2の溶媒114の一部分は、通常ガス状の物質の流体形態124の供給物として第1の変換122で使用される。通常ガス状の物質の流体形態124のかかる供給物は、例えば、第2の処理112中、第1の処理固形残渣110から残留する第1の溶媒106のほとんどをフラッシュ除去した後の、リッチな第2の溶媒116に回収される比較的クリーンな流体であり得る。
図3の例示的処理では、第1の処理104、第2の処理112、第1の変換122および第2の変換128は、
図1および2を参照して既に記載した通りであり得る。
【0050】
図1および3に示される処理では、第1の処理104および第2の処理112は、単一のプロセス槽内で行われ得るか、または個別のプロセス容器で行われ得る。第1の処理104は、圧力槽である必要がない液体格納槽内で行われ得るが、第2の処理112は、典型的には圧力槽内で行われるであろう。第1の処理104および第2の処理112は、バッチ、連続または半連続の操作で行われ得る。
図2および3の処理では、第1の変換122および第2の変換128は、それぞれ典型的には、圧力槽内で行われるであろう。また、単一の圧力槽または個別の圧力槽であり得る。第1の変換122および第2の変換128は、バッチ、連続または半連続の操作で行われ得る。連続または半連続の処理では、第1の変換122および第2の変換128は、典型的には、個別の圧力槽内で行われるであろう。バッチ処理では、第1の変換122および第2の変換128は、便宜上、単一の圧力槽内で行われ得る。
【0051】
図4は、
図3に示されるのと同一の例示的処理を示すだけでなく、リッチな第1の溶媒108を処理してマトリックス材料を回収し、リーンな第1の溶媒をリサイクルして再使用し、かつ第2の溶媒を再生するためのいくらかの補助的処理の例も示す一般化プロセスブロック図である。
図1~3との関連で示されかつ記載された同じ特徴を特定するために同一の参照数字が
図4で使用される。
図4に示される例示的処理では、リッチな第1の溶媒108は、溶解されたマトリックス材料を除去してクリーンな第1の溶媒を再生および再使用するために蒸留142に付される。蒸留142中、第1の溶媒蒸気144を含むオーバーヘッドは、第1の溶媒蒸気を凝縮し、かつ第1の処理104に対する第1の溶媒106の追加の供給物の調製に使用するためにリサイクルされ得る再生されたリーンな第1の溶媒148を液体形態で調製するために、捕集されかつ凝縮操作146に付される。
図4は、必要に応じて第1の溶媒を除去するための任意選択的なブリード150も示す。任意選択的に、いくらかの凝縮された第1の溶媒152は、還流として蒸留142に戻され得る。液状の第1の溶媒とマトリックスの沈殿材料とを含有する蒸留ボトム154は、濾過操作156に付される。マトリックス材料の沈澱固形分を含む保持液部分158は回収され、および濾液部分160は、第1の溶媒を気化させて蒸留142に戻すために再沸騰162に付される。
【0052】
通常ガス状の物質(第2の溶媒)のエフルエント132および第2の変換128からの熱伝達流体のエフルエント134は、分離操作164で処理される。エフルエント132および134は、部分的または完全に組合せストリームであり得る。分離操作164では、第2の溶媒は、回収された通常ガス状の物質166を調製するために熱伝達流体からフラッシュされ得、および固形分(例えば、マトリックス材料および/または繊維サイジング剤)は、回収された熱伝達流体168および回収された固形分170を調製するために熱伝達流体から濾過され得る。第1の変換122からの通常ガス状の物質(第2の溶媒)のベント125、回収された通常ガス状の物質166およびリッチな第2の溶媒116は、第2の溶媒再生操作172によって処理され得る。第2の溶媒のブリード186は、任意選択的に必要に応じてシステムから第2の溶媒を除去し得る。第2の溶媒再生操作172では、リッチな第2の溶媒116に溶解された第1の溶媒106は、例えば、リッチな第2の溶媒116を蒸留してリッチな第2の溶媒116をガス形態に変換しかつ第1の溶媒を沈殿させることにより、回収された第1の溶媒174として回収され得る。第2の溶媒再生操作172中、第2の溶媒蒸気182を含むオーバーヘッドは、第2の溶媒蒸気を凝縮させ、かつ第2の処理112に対する第2の溶媒114の追加の供給物の調製に使用するためにリサイクルされ得る再生されたリーンな第2の溶媒176を液体形態で調製するために、捕集されかつ凝縮操作180に付される。
図4は、必要に応じて第2の溶媒を除去するための任意選択的なブリード178も示す。任意選択的に、いくらかの凝縮された第2の溶媒184は、還流として第2の溶媒再生172に戻され得る。回収された第1の溶媒174は、蒸留142でさらに処理され得る。
【0053】
(実施例)
以下の実施例は、本開示の種々の態様をさらに例示および説明する。
炭素繊維を回収してリサイクルするために、14002-D炭素繊維一方向プリプレグ複合材(ロック・ウェスト・コンポジット(Rock West Composites))のサンプルがさまざまな処理の組合せの試験に付される。14002-Dは、ニューポート301エポキシ樹脂(ミツビシ・レイヨン・カーボン・ファイバー・インク(Mitsubishi Rayon Carbon Fiber&Composites,Inc.)、以前のニューポート・アドヒシブ・アンド・コンポジッツ・インク(Newport Adhesives and Composites,Inc.))のマトリックス中にパイロフィル(登録商標)TR50S炭素繊維(三菱レイヨン株式会社)を含む繊維強化複合材プリプレグである。14002-Dの試験サンプルは、14002-Dのシートからカットした約15×2.5センチメートルのサイズおよび約0.8グラムの重量のピースである。試験は、高圧に耐えるように設計された約0.25リットルの内部流体閉じ込め体積を有する管状試験槽内のサンプルで行われる。以下に記載の実施例では、サンプルへの参照は、試験処理に付されるサンプル固体を意味し、例えば、試験開始時の14002-Dプリプレグ複合材の初期サンプルまたは試験期間中のより後のある時点での炭素繊維含有固形残渣を意味し得る。試験は、試験槽内で行われる以下の処理工程の1つ以上を含む。
【0054】
溶媒洗浄(SW):約15分間の滞留時間にわたり一般的に室温でメチレンクロリド溶媒浴にサンプルを浸漬して、サンプルからマトリックスの材料を溶解させ、その後、溶解されたマトリックス材料を有するメチレンクロリド溶媒を試験槽から除去する。
【0055】
液体CO2リンス(LCO2):約57分間の滞留時間にわたり約5.5MPaの圧力および約18℃の温度で液体二酸化炭素にサンプルを浸漬する。
超臨界CO2リンス(SCCO2):約5分間の滞留時間にわたり約10MPaの圧力および少なくとも31.1℃の温度(臨界温度)で超臨界二酸化炭素にサンプルを浸漬する。
【0056】
熱水リンス(HWR):熱上水(温度約60℃~75℃)を試験槽に導入して、サンプルに接触した状態で約5分間放置することによってサンプルを熱上水でリンスする。
急速CO2昇華(RSub):CO2リンス(ここに提示された実施例では液体CO2リンス)後、二酸化炭素を急速にベントすることによって試験槽を高圧から本質的に周囲圧力に急速に減圧し、これは、ガス膨張冷却に起因してサンプルの存在下における試験槽内での固体二酸化炭素の生成を伴う。試験槽を減圧した後、固体二酸化炭素の存在下でサンプルを熱水リンスに付すことにより(以上に記載のHWRと同一の手順)、固体二酸化炭素を急速に昇華させる。
【0057】
表1は、7つの実施例のそれぞれで行われた処理工程をまとめており、処理工程は、実施例のそれぞれに対する試験槽内での実行順序で列挙されている。参照の便宜上、処理工程は、以上の括弧内に提供された簡略表記によって指定される。
【0058】
【表1】
図5~11は、それぞれ実施例1~7のそれぞれで回収された炭素繊維の走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)画像を示す。
図5および6に見られるように、実施例1および2(溶媒洗浄を含むが二酸化炭素リンスを含まない)で回収された炭素繊維は、ほとんどマトリックス材料を含まないが、いくらかのマトリックス材料および炭素繊維に装着されたままのサイジング材料が見られる。
図7に見られるように、実施例3で液体CO
2リンスを追加すると、実施例1および2と比べて少なくともいくらかのさらなるマトリックス材料の除去が支援されるように思われる。
図8に見られるように、実施例3の液体CO
2リンスの代わりに実施例4で超臨界CO
2リンスを用いると、実施例3と比べていくらかのさらなるマトリックス材料および/またはサイジング材料が除去されるよう思われる。同様に、
図9に見られるように、実施例5の処理で液体CO
2リンス後の急速なCO
2昇華工程を追加すると、実施例4と比べていくらかのさらなるマトリックス材料および/またはサイジング材料が除去されるように思われる。
図10に見られるように、実施例6で2回の液体CO
2リンス工程後に急速な昇華工程を行うと、実施例5と比べていくらかのさらなるマトリックス材料および/またはサイジング材料の炭素繊維がさらにクリーニングされるように思われる。
図11に見られるように、実施例7で2回目の液体CO
2リンス前に追加の急速な昇華工程を行うと、実施例6と比べてマトリックス材料および/またはサイジング材料の炭素繊維がさらにクリーニングされるように思われる。
図11に示される回収された炭素繊維は、非常に高度にマトリックス材料およびサイジング材料がクリーニング除去されているように思われる。
【0059】
本発明の上記の考察および本発明のさまざまな態様は、例示および説明の目的で提示されてきた。上記は、本明細書に具体的に開示された1つまたは複数の形態のみに本発明を限定することを意図したものではない。したがって、以上の教示に対応する変更形態および修正形態ならびに関連する技術分野の技能または知識は、本発明の範囲内である。以上に記載の実施形態は、本発明を実施するための既知の最良形態を説明することがさらに意図され、および当業者がかかる実施形態または他の実施形態において、かつ本発明の特定の用途または使用に必要とされる各種変更を加えて本発明を利用できるようにすることがさらに意図される。添付の特許請求の範囲は、先行技術で認められた範囲内の代替実施形態を含むものと解釈されることが意図される。本発明の説明は、1つ以上の可能な実施形態ならびに特定の変更形態および修正形態の説明を含んでいるが、他の変更形態および修正形態は、本発明の範囲内であり、例えば、本開示を理解した後の当業者の技能および知識の範囲内であり得る。代替的、互換的および/または均等な構造、機能、範囲または工程が本明細書に開示されているか否かにかかわらず、特許請求されるものに対する代替的、互換的および/または均等な構造、機能、範囲または工程を含めて、かついずれの特許性のある主題も公的に特化、放棄または否認することを意図することなく、許容範囲内で代替実施形態を含む権利を得ることが意図される。さらに、いずれかの開示された変更形態に対して記載または特許請求されるいずれの特徴も、特徴が必ずしも技術的に適合しない程度まで、いずれかの他の1つまたは複数の変更形態のいずれかの他の特徴の1つ以上との任意の組合せで組み合わされ得、すべてのかかる組合せは、本発明の範囲内である。1つの特徴または特定の組合せの複数の特徴の説明は、さらなる1つまたは複数の特徴の包含を除外しない。処理工程および順序付けは、単に例示する目的であるにすぎず、かかる例示は、他の工程または工程の他の順序付けの包含を除外しない。追加の工程は、例示された処理工程間またはいずれかの処理工程前もしくは後に含められ得る。例示された処理工程は、例示された処理工程に対して例示または考察された特定の処理操作に追加される処理操作(例えば、サブ工程)を含み得る。
【0060】
「含む」、「含有する」、「包含する」および「有する」という用語ならびにそれらの用語の文法的変化形は、かかる用語の使用が何らかの条件または特徴の存在を示唆するが、いずれの他の条件または特徴の存在も何ら除外しないという点で包括的かつ非限定的であることが意図される。1つ以上の成分、副成分または材料の存在を意味する「含む」、「含有する」、「包含する」および「有する」という用語ならびにそれらの用語の文法的変化形の使用は、場合により「含む」、「含有する」、「包含する」または「有する」という用語(またはかかる用語の変化形)が、「~から本質的になる」、または「~からなる」、または「~のみからなる」というより狭義の用語(またはかかるより狭義の用語の適切な文法的変化形)のいずれかによって置き換えられたより具体的な実施形態も含み、それらを開示することが意図される。例えば、あるものが明記された1つまたは複数の要素「含む」という記載は、明記された1つまたは複数の要素「から本質的になる」もの、および明記された1つまたは複数の要素「からなる」もののより具体的なより狭義の実施形態を包含および開示することも意図される。各種特徴の例は、例示の目的で提供されており、「例」、「例えば」などの用語は、1つまたは複数の特徴をいずれかの特定の例に限定せず、かつ限定すると見なされないかまたは解釈されない例示的実施例を示唆する。「少なくとも」という用語に続く数(例えば、「少なくとも1つ」)は、その数またはその数よりも大きいことを意味する。「少なくとも一部分」という用語は、全部または一部分(すなわち、すべてに満たない)を意味する。「少なくとも一部」という用語は、全部または一部(すなわち、すべてに満たない)を意味する。本明細書に開示される圧力は、特に指定がない限り、ゲージ圧力ではなく絶対圧力である。パーセントは、本明細書に開示される液体および固体の組成物との関連において、特に指定がない限り重量パーセントであり、本明細書に開示されるガスの組成物との関連において、特に指定がない限り体積パーセントである。