(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】複合粉体およびこれを含有する化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20220301BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20220301BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20220301BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20220301BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220301BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20220301BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20220301BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20220301BHJP
A61Q 1/06 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/29
A61K8/25
A61K8/63
A61K8/37
A61Q1/12
A61Q17/04
A61Q1/02
A61Q1/06
(21)【出願番号】P 2021060853
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2021-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500154423
【氏名又は名称】株式会社マツモト交商
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 雄太
(72)【発明者】
【氏名】井口 里紗
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-173549(JP,A)
【文献】特開平08-059431(JP,A)
【文献】特開2010-037210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で半固形の油剤および固形の油剤から選ばれる1種または2種以上を被覆した
平均粒子径が1~20μmの球状粉体に、
平均粒子径が50μm以下の板状粉体が付着したことを特徴とする複合粉体。
【請求項2】
板状粉体のアスペクト比が2~200である請求項1記載の複合粉体。
【請求項3】
球状粉体が、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、セルロース、シルク、これらの表面に酸化チタンまたは酸化鉄が被覆されているもの、これらに酸化チタンまたは酸化鉄が内包されているもの、これらを油剤、シリコーンまたはアミノ酸で表面処理したものから選ばれる1種または2種以上であり、
板状粉体が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青、ベンガラ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、シリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン酸化スズ被覆合成金雲母、酸化亜鉛被覆雲母、硫酸バリウム被覆雲母、酸化チタン被覆ガラス末、ガラス末、アルミ末、シルク、セルロース、結晶セルロース、デンプン、ラウロイルリシン、これらを油剤、シリコーンまたはアミノ酸で表面処理したものから選ばれる1種または2種以上である、
請求項
1または2に記載の複合粉体。
【請求項4】
球状粉体、板状粉体および油剤の質量比が、99.8/0.1/0.1~1/1/1である請求項1~
3の何れか1項に記載の複合粉体。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか1項に記載の複合粉体を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項6】
マイクロプラスチックビーズを含有しないものである請求項
5記載の化粧料。
【請求項7】
以下の工程(a)および(b)、
(a)常温で半固形の油剤および固形の油剤から選ばれる1種または2種以上、
平均粒子径が1~20μmの球状粉体および分散媒を混合、加熱し、前記油剤を被覆した
平均粒子径が1~20μmの球状粉体を得る工程
(b)前記油剤を被覆した
平均粒子径が1~20μmの球状粉体と、
平均粒子径が50μm以下の板状粉体を撹拌し、前記油剤を被覆した
平均粒子径が1~20μmの球状粉体に
平均粒子径が50μm以下の板状粉体が付着した複合粉体を得る工程
を含むことを特徴とする複合粉体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプラスチックビーズの代替となる複合粉体およびこれを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な製剤で感触向上、光拡散性の付与、SPF向上効果を付与する目的でマイクロプラスチックビーズが汎用されてきた。マイクロプラスチックビーズとは5mm以下の固形の合成高分子(プラスチック)の粉末、フィルム、繊維である。
【0003】
しかしながら、近年、マイクロプラスチックビーズが海洋環境に与える影響が問題視されており、マイクロプラスチックビーズの配合量を抑えたもしくは配合しない化粧料が求められている。
【0004】
マイクロプラスチックビーズを配合しない化粧料としては、例えば、球状無孔質シリカを含有する粉末と、油剤とを混合することにより調製される化粧料基材と、溶剤とを混合してスラリー状にし、容器に充填した後、該溶剤を除去することを特徴とする固形粉末化粧料が知られている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、この化粧料は、マイクロプラスチックビーズを用いた化粧料と比較して、感触が劣り、化粧料としての効果が低い問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、以上の状況を踏まえ、マイクロプラスチックビーズと同様の感触、光拡散性、SPF向上等の効果を有する複合粉体とそれを配合した化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、油剤を被覆した球状粉体に、板状粉体が付着した複合粉体が、マイクロプラスチックビーズと同様の感触、光拡散性、SPF向上等の効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、油剤を被覆した球状粉体に、板状粉体が付着したことを特徴とする複合粉体である。
【0010】
また、本発明は、上記複合粉体を含有することを特徴とする化粧料である。
【0011】
更に、本発明は、以下の工程(a)および(b)、
(a)油剤、球状粉体および分散媒を混合、加熱し、油剤を被覆した球状粉体を得る工程
(b)油剤を被覆した球状粉体と、板状粉体を撹拌し、油剤を被覆した球状粉体に板状粉体が付着した複合粉体を得る工程
を含むことを特徴とする複合粉体の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複合粉体は、マイクロプラスチックビーズと同様の感触、光拡散性、SPF向上等の効果を有する。
【0013】
そのため、本発明の複合粉体を含有させた化粧料は、従来のマイクロプラスチックビーズを配合した化粧料と同等のものとなるが、マイクロプラスチックビーズを含有させる必要がないため環境負荷が低く、より優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1で得られた複合粉体の電子顕微鏡写真である(4,000倍)。
【
図2】実施例5で得られた複合粉体の電子顕微鏡写真である(3,000倍)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の複合粉体は、油剤を被覆した球状粉体に、板状粉体が付着したものである。ここで付着したとは、走査型電子顕微鏡にて油剤を被覆した球状粉体表面に板状粉体が接している様子が確認されることをいう。また、油剤を被覆した球状粉体への板状粉体の付着は一部または全部でもよい。
【0016】
上記油剤は、球状粉体を被覆できるものであれば特に限定されないが、例えば、常温(15~25℃)で流動性のない半固形の油剤または固形の油剤が好ましい。半固形の油剤としては、例えば、炭化水素系半固形の油剤、エステル系半固形の油剤、エーテル系半固形の油剤、シリコーン系半固形の油剤等があり、例えばワセリン等の炭化水素系半固形の油剤、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート‐2、ステアリン酸硬化ヒマシ油、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、水添パーム油、水添ヤシ油、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、ヒマワリ種子油脂肪酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ペンタヒドロキシステアリン酸スクロース、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)等のエステル系半固形の油剤、ヒドロキシアルキルダイマーシリノレイルエーテル等のエーテル系半固形の油剤、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等のシリコーン系半固形の油剤が挙げられる。
【0017】
また、固形の油剤としては、例えば、炭化水素系固形の油剤、エステル系固形の油剤、高級アルコール系固形の油剤、シリコーン系固形の油剤等が使用できる。例えばパラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系固形の油剤、水添ホホバ油、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー、α-オレフィン・ビニルピロリドン共重合体、トリベヘン酸グリセリル等のエステル系固形の油剤、ステアリルアルコール、セタノール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール系固形の油剤、トリメチルシロキシケイ酸、ポリシルセスキオキサン、(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸ベヘニル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、アルキル(C30-45)メチコン、ステアリルジメチコン、ステアロキシトリメチルシラン、アルキル(C30-45)ジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサン等のシリコーン系固形の油剤等が挙げられる。
【0018】
これらの油剤の中でもエステル系半固形の油剤、エステル系の固形油剤が好ましく、エステル系の半固形の油剤がより好ましい。また、これらの油剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記球状粉体は、本発明の複合粉体がマイクロプラスチックビーズの代替技術であることから、プラスチック以外であれば特に限定されないが、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、セルロース、シルク等が挙げられ、これらの表面に酸化チタン、酸化鉄等が被覆されているもしくは内包されているものを用いても良く、油剤、シリコーン、アミノ酸等で表面処理されていてもよい。これらの中でもシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好ましく、シリカがより好ましい。これら球状粉体は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、球状粉体の大きさも特に限定されないが、平均粒子径が1~20μm、好ましくは3~10μmである。なお、この平均粒子径は電子顕微鏡観察、レーザー回折/散乱法による粒度分布測定にて測定される値である。
【0020】
上記板状粉体は、本発明の複合粉体がマイクロプラスチックビーズの代替技術であることから、プラスチック以外であれば特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青、ベンガラ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、シリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン酸化スズ被覆合成金雲母、酸化亜鉛被覆雲母、硫酸バリウム被覆雲母、酸化チタン被覆ガラス末、ガラス末、アルミ末、シルク、セルロース、結晶セルロース、デンプン、ラウロイルリシン等が挙げられ、これらは油剤、シリコーン、アミノ酸等で表面処理されていてもよい。これらの中でもタルク、マイカ、合成雲母、窒化ホウ素が好ましく、合成雲母、窒化ホウ素がより好ましい。これら板状粉体は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
また、板状粉体の大きさも特に限定されないが、平均粒子径が50μm以下、好ましくは1~20μmである。更に、板状粉体のアスペクト比も特に限定されないが、2~200、好ましくは10~200である。なお、この平均粒子径は電子顕微鏡観察、レーザー回折/散乱法による粒度分布測定にて測定される値である。また、アスペクト比は板状粉体の長径を厚みで除した値であり、一般的には粉体の電子顕微鏡観察から求められ、例えば電子顕微鏡写真10~20サンプルの平均値を用いて計算することができる。
【0022】
本発明の複合粉体における、球状粉体、板状粉体および油剤の質量比は特に限定されないが、例えば、99.8/0.1/0.1~1/1/1、好ましくは98/1/1~75/20/5である。
【0023】
なお、本発明の複合粉体は、マイクロプラスチックビーズと同様の感触、光拡散性、SPF向上等の効果を有する。具体的に、ナイロン、ポリアクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、オルガノポリシロキサン等の粉末の感触、光拡散性、SPF向上等の効果である。
【0024】
また、本発明の複合粉体は、実施例に記載の感触の官能評価試験結果を主成分分析して得られた、第1主成分得点が-4.5以下、好ましくは-5.5以下、第2主成分得点が7.5以下、好ましくは6.0以下である。なお、主成分分析とは感触評価項目ごとの要因の中から最も相関の高い2つの説明成分を抽出する分析手法のことをいい、第1主成分得点とは主成分分析によって得られた第1主成分に個々の感触評価値を代入した数値をいい、第2主成分得点とは主成分分析によって得られた第2主成分に個々の感触評価値を代入した値をいう。
【0025】
本発明の複合粉体は、例えば、以下の工程(a)および(b)を含むこと、好ましくは工程(a)、(b)の順で製造することができるが、本発明の複合粉体を製造することができるのであれば、以下の工程以外の製法を用いても構わない。
(a)油剤、球状粉体および分散媒を混合、加熱し、油剤を被覆した球状粉体を得る工程
(b)油剤を被覆した球状粉体と、板状粉体を撹拌し、油剤を被覆した球状粉体に板状粉体が付着した複合粉体を得る工程
【0026】
工程(a)においては、まず、油剤、球状粉体および分散媒を容器に入れ、ディスパーミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー等で混合する。これによりスラリーとなる。
【0027】
上記分散媒は特に限定されないが、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール等のアルコール類、水、n-ヘキサン、イソパラフィン等が挙げられる。これらの分散媒の中でもアルコール類が好ましく、イソプロピルアルコールがより好ましい。また、分散媒の量は特に限定されないが、例えば、球状粉体と同程度の量であればよい。
【0028】
混合した後は、加熱する。加熱の際には、ディスパーミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー等で混合することが好ましい。加熱する温度や時間は特に限定されないが、スラリーから分散媒が蒸発するのに適した温度や時間が好ましく、例えば、分散媒がイソプロピルアルコールであれば80℃で20分程度である。これにより球状粉体が油剤で被覆される。
【0029】
工程(b)において、油剤を被覆した球状粉体と板状粉体を撹拌する方法は、油剤を被覆した球状粉体に板状粉体を物理的に付着させることができるものであれば特に限定されないが、例えば、乳鉢、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、ピンミル、ハンマーミル等の物理的な力を撹拌と同時に加えられる方法が好ましい。撹拌の時間は特に限定されないが、5~60分であり、好ましくは30~60分である。
【0030】
工程(a)および(b)を行った後は、更に減圧乾燥、解砕、分級等をしてもよい。
【0031】
本発明の複合粉体は、従来のマイクロプラスチックビーズが使用されていた化粧料においてマイクロプラスチックビーズと置き換えて利用可能である。本発明の複合粉体を含有する化粧料にはマイクロプラスチックビーズを含有させる必要がなく、マイクロプラスチックビーズを含有しない化粧料となるため環境負荷が低いものとなる。ただし、本発明の複合粉体はマイクロプラスチックビーズと併用して化粧料に利用可能なことはいうまでもない。
【0032】
本発明の化粧料のうち好ましいものとしては、複合粉体の感触向上、光拡散性等を生かしたパウダーファンデーション、リキッドファンデーション、チーク、アイシャドウ、リップ等のメイクアップ化粧料、SPF向上を生かしたサンケア、下地等の日焼け止め用化粧料等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0034】
実施例1~18および比較例1~15
複合粉体の調製:
(1)実施例1~18
表1に記載の処方に併せて、以下の製法で実施例1~18の複合粉体を調製した。
A)球状粉体と同質量のイソプロピルアルコール(IPA:分散媒)と、球状粉体(成分(A))を均一に混合する。
B)Aに油剤(成分(C))を添加し、均一に混合する。
C)Bを80℃以上に加熱混合し、スラリーが粉体状になるまでIPA(分散媒)を揮発させた。
D)Cを減圧乾燥させ油剤で被覆された球状粉体を得た。
E)油剤で被覆された球状粉体と板状粉体(成分(B))を30分乳鉢ですりつぶし、物理的に付着させる。
【0035】
(2)比較例1~3
表1に記載の処方に併せて、以下の製法で比較例1~4の粉体を調製した。
A)球状粉体と同質量 のイソプロピルアルコール(IPA:分散媒)と、球状粉体(成分(A))を均一に混合する。
B)Aに油剤(成分(C))を添加し、均一に混合する。
C)Bを80℃以上に加熱混合し、スラリーが粉体状になるまでIPA(分散媒)を揮発させた。
D)Cを減圧乾燥させ油剤で被覆された球状粉体を得た。
E)油剤で被覆された球状粉体と板状粉体(成分(B))を30分乳鉢ですりつぶし、物理的に付着させる。
【0036】
(3)比較例4~6
表1に記載の処方に併せて、以下の製法で比較例4~6の粉体を調製した。
A)球状粉体と同質量 のイソプロピルアルコール(IPA:分散媒)と、球状粉体(成分(A))を均一に混合する。
B)Aに油剤(成分(C))を添加し、均一に混合する。
C)Bを80℃以上に加熱混合し、スラリーが粉体状になるまでIPA(分散媒)を揮発させた。
D)Cを減圧乾燥させ油剤で被覆された球状粉体を得た。
【0037】
(4)比較例14
表1に記載の処方に併せて、以下の製法で比較例14の粉体を調製した。
A)球状粉体と、板状粉体を均一に混合する。
B)油剤を70℃以上に加熱し、Aに添加する。
C)Bをミキサーにて30秒混合する。
【0038】
(5)比較例15
表1に記載の処方に併せて、以下の製法で比較例15の粉体を調製した。
A)球状粉体と、板状粉体を均一に混合する。
B)Bをミキサーで30秒混合する。
【0039】
なお、比較例7~13については球状粉体(比較例7~10はマイクロプラスチックビーズに該当)をそのまま使用した。
【0040】
【0041】
<感触評価>
上記で得られた実施例1~18の複合粉体および比較例1~15の粉体の感触評価を、化粧品専門パネル7名に
図3に記載の評価シートを用いて以下の方法で評価した。この結果についても表1に記載した。
【0042】
(評価方法)
上記で調製した粉体をブラインドでランダムに触ってもらい「さらさら」、「ざらざら」、「つるつる」、「するする」、「なめらかさ」、「がさがさ」、「すべすべ」、「ぬめぬめ」、「かさかさ」、「しっとり」の10項目についてSD法を用いて1点~7点の7段階で評価し、7名分の評価の平均値にて主成分分析を実施した。
【0043】
各サンプルの評価結果の平均スコアを用い、主成分分析をした。得られた第1主成分、第2主成分の累積寄与率が86%と2成分で十分な説明力があることが分かった。マイクロプラスチックビーズに該当する粉体(比較例7~10)は第1主成分得点が-4.5以下かつ第2主成分得点が7.5以下であり、本発明の実施例は全てこの範囲内に入るものであった(つまり、マイクロプラスチックビーズと同等の感触であった)。一方、油剤を被覆しただけの球状粉体であったり、複合化しなかったり、単に混合した場合にはこの範囲内に入れなかった。
【0044】
<外観写真>
上記で得られた実施例1の複合粉体の電子顕微鏡写真を
図1に、実施例6の複合粉体の電子顕微鏡写真を
図2に示した。この複合粉体は、油剤を被覆した球状粉体に、板状粉体が一部付着したものであった。
【0045】
本発明の複合粉体は、何れも油剤を被覆した球状粉体に、板状粉体が付着したものであった。
【0046】
実施例19および比較例16~18
パウダーファンデーション:
以下の表2に記載の処方を用い、以下の製法に従ってパウダーファンデーションを調製した。
A)1~14をミキサーで混合する。
B)15~18を加熱溶解し、均一に混合する。
C)AにBを添加し、ミキサーで混合する。
D)Cを解砕し、容器に充填後成型する。
【0047】
【0048】
<使用感評価>
これらのパウダーファンデーションについて、化粧品専門パネル5名に使用してもらい、塗布時ののび、塗布時のなめらかさ、塗布後のしっとり感、しわぼかし効果について、評価が悪い場合を1点、評価が良い場合を5点として評価をしてもらった。パネルの平均点数を算出して以下に示す判定基準に従って判定した。この結果についても表2に記載した。
【0049】
(判定基準)
〔評点の平均点〕 〔判定〕
4.5以上 : ◎
3.5以上4.5未満 : ○
2以上3.5未満 : △
2未満 : ×
【0050】
得られたパウダーファンデーションは塗布時ののび、なめらかさ、しっとり感に優れ、しわぼかし効果が良好なものであった。
【0051】
実施例20および比較例19
サンケア:
以下の表3に記載の処方を用い、以下の製法に従ってサンケアを調製した。
A)1~4を加熱し、均一に混合する。
B)5~8をホモミキサーで均一に混合する(5000rpm、3分)。
C)9~12を均一に混合する。
D)AにBを添加し均一に混合する。
E)DにCを徐々に添加し、ホモミキサーで乳化する(5000rpm、3分)
F)Eに13~14を添加し、均一に混合する。
【0052】
【0053】
<使用感評価>
これらのサンケアについて、上記実施例と同様に塗布時ののび、塗布時のなめらかさを評価し、更に以下の方法でSPFを測定した。これらの結果についても表3に記載した。
【0054】
(SPF測定方法>
これらのサンケアを、アクリル樹脂(PMMA)板に塗布し、乾燥後、PMMA板上の試料の所定5箇所をSPFアナライザー(Labsphere UV―2000S、Labsphere社製)を用いて測定し、平均値を算出した。
【0055】
得られたサンケアは塗布時ののびとなめらかさに優れ、SPF向上効果が良好なものであった。
【0056】
実施例21
リキッドファンデーション:
以下の表4に記載の処方を用い、以下の製法に従ってリキッドファンデーションを調製した。
A)1~5をロールミルで混錬する。
B)6~11を均一に混合する。
C)12~15を均一に混合する。
D)AとBを均一に混合する。
E)DにCを徐々に添加しホモミキサーで乳化する(5000rpm、3分)。
【0057】
【0058】
得られたリキッドファンデーションは塗布時ののびとなめらかさに優れ、しわぼかし効果が良好なものであった。
【0059】
実施例22
リップスティック:
以下の表5に記載の処方を用い、以下の製法に従ってリップスティックを調製した。
A)1~12を90℃以上に加熱溶解し、均一に混合する。
B)Aに13~17を加え、均一に混合分散する。
C)Bを90℃以上で加熱溶解させ、金型に流し込み5℃で冷却する。
D)スティック状容器へ装填する。
【0060】
【0061】
得られたリップスティックは塗布時ののびとなめらかさに優れ、しわぼかし効果が良好なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の複合粉体は、マイクロプラスチックビーズと同様の感触、光拡散性、SPF向上等の効果を有するため、従来のマイクロプラスチックビーズが使用されていた化粧料においてマイクロプラスチックビーズと置き換えて利用可能である。
【要約】
【課題】マイクロプラスチックビーズと同様の感触、光拡散性、SPF向上等の効果を有する複合粉体とそれを配合した化粧料を提供する。
【解決手段】油剤を被覆した球状粉体に、板状粉体が付着したことを特徴とする複合粉体およびこれを含有することを特徴とする化粧料。
【選択図】
図1