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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】空調装置用中空構造体
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/044 20060101AFI20220301BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20220301BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20220301BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20220301BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20220301BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
F24F3/044
F24F5/00 K
F24F7/10 Z
F24F13/02 C
F24F13/02
E04B5/43 D
E04B9/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021116941
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2021-07-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510193256
【氏名又は名称】OMソーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161285
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正彦
(72)【発明者】
【氏名】盧 ▲ヒョン▼佑
(72)【発明者】
【氏名】野尻 新吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真弘
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-025665(JP,A)
【文献】特開2009-216339(JP,A)
【文献】特開2009-139015(JP,A)
【文献】特開2000-329373(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2021-0000159(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/044
F24F 5/00
F24F 7/10
F24F 13/02
E04B 5/43
E04B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
階下の居室と階上の居室を有し前記階下の居室と前記階上の居室の間に空間を備えた建物において、
前記空間を拡張または前記空間の内部に部材を追加した中空構造体が形成され、
前記中空構造体には前記建物内の空気に対して冷却された空気または前記建物内の空気に対して加熱された空気の何れか一方が送られる通風管が接続されており、
前記中空構造体には前記冷却された空気と前記加熱された空気とで異なる冷却風路と加熱風路が前記冷却された空気と前記加熱された空気の性質の違いで形成される構造を有し、
前記冷却風路の前記中空構造体における端部の吹出口が前記階下の居室に設けられ、
前記加熱風路の前記中空構造体における端部の吹出口が前記階上の居室に設けられ、
前記中空構造体に設けられた前記冷却された空気と前記加熱された空気とで異なる冷却風路と加熱風路が前記冷却された空気と前記加熱された空気の性質の違いで形成される構造が、
前記通風管が前記中空構造体に接続された箇所から下方に拡がる所定の周囲の前記階下の居室と前記階上の居室の間に空間を下方に拡張し、前記下方に拡張した箇所に前記冷却風路の前記中空構造体における端部の前記吹出口が設けられている構造である
ことを特徴とする空調装置用中空構造体。
【請求項2】
階下の居室と階上の居室を有し前記階下の居室と前記階上の居室の間に空間を備えた建物において、
前記空間を拡張または前記空間の内部に部材を追加した中空構造体が形成され、
前記中空構造体には前記建物内の空気に対して冷却された空気または前記建物内の空気に対して加熱された空気の何れか一方が送られる通風管が接続されており、
前記中空構造体には前記冷却された空気と前記加熱された空気とで異なる冷却風路と加熱風路が前記冷却された空気と前記加熱された空気の性質の違いで形成される構造を有し、
前記冷却風路の前記中空構造体における端部の吹出口が前記階下の居室に設けられ、
前記加熱風路の前記中空構造体における端部の吹出口が前記階上の居室に設けられ、
前記中空構造体に設けられた前記冷却された空気と前記加熱された空気とで異なる冷却風路と加熱風路が前記冷却された空気と前記加熱された空気の性質の違いで形成される構造が、
前記通風管が前記中空構造体に接続された箇所から下方に拡がる所定の周囲の前記階下の居室と前記階上の居室の間に空間に囲いを設け、前記囲いを設けた箇所の内側に前記冷却風路の前記中空構造体における端部の前記吹出口が設けられている構造である
ことを特徴とする空調装置用中空構造体。
【請求項3】
前記冷却された空気とまたは前記加熱された空気との温度の違いにより変化する風向案内板が設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の空調装置用中空構造体。
【請求項4】
前記建物内の空気に対して冷却された空気または前記建物内の空気に対して加熱された空気の何れか一方が送られる前記通風管が、1本の管で前記中空構造体の上面側に接続されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項記載の空調装置用中空構造体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階下の居室と階上の居室の間の空間を利用した空調装置用中空構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例としては、一般住宅などの建物の内部全体の空調を行う空調システムに関し、様々な構造、機能を有するものが提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された「建物の通風管レス空調システム」、特許文献2に記載された「空調システム」や特許文献3に記載された「住宅の空調システム」などがある。
【0003】
特許文献1に記載された「建物の通風管レス空調システム」は、建物本体の上下室を区画する床構成部材を、中空部を有する中空構造体とし、この中空構造体内に、空調処理された空気流を流通させて床構成部材の中空部を温度制御し、かつ所定位置に吹き出し口を開口して少なくとも上下室何れかに吐出できるようにしたことを特徴とするものである。
【0004】
特許文献2に記載された「建物の通風管レス空調システム」においては、建物本体の複数の居室を区画または連結する廊下の天井に、建物の躯体と一体となるように形成された中空構造体の中に空調機が内蔵され、この空調機器で空調処理された空気の吹き出し口が、廊下に面した壁の上部の居室側に設置している。
【0005】
特許文献3に記載された「住宅の空調システム」においては、一階の天井裏8を利用して給気通風管9を設置する発明が開示されているが、一階の天井裏8の給気通風管9は、一階の居室6に対して、ペリーメーターゾーンの空調を行うことを目的としており、冷房又は暖房の送風についても、一階の天井の壁際に吹出口が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2-242032号公報
【文献】特開平11-325508号公報
【文献】特開2011-133156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された「建物の通風管レス空調システム」は、通風管を使用しないので、通風管に起因する空調効率の悪化を回避することができるが、冷房時においては、上階室は足元から冷気があがるため、上階室の居住者は不快であるという問題があった。また、暖房時においては、天井から暖気がくるが、下階居室全体を温めようとすると、風量が多くなってしまい、気流感が生じるため居住者には不快となるという問題があった。
【0008】
特許文献2に記載された「空調システム」や特許文献3に記載された「住宅の空調システム」については、両方ともに天井から、冷風又は温風を送風するものであるため、暖冷房時での居住者の空調に対する不快を対策するものではない言う問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
第1発明の空調装置用中空構造体は、階下の居室と階上の居室を有し前記階下の居室と前記階上の居室の間に空間を備えた建物において、
前記空間を拡張または前記空間の内部に部材を追加した中空構造体が形成され、
前記中空構造体には前記建物内の空気に対して冷却された空気または前記建物内の空気に対して加熱された空気の何れか一方が送られる通風管が接続されており、
前記中空構造体には前記冷却された空気と前記加熱された空気とで異なる冷却風路と加熱風路が前記冷却された空気と前記加熱された空気の性質の違いで形成される構造を有し、
前記冷却風路の前記中空構造体における端部の吹出口が前記階下の居室に設けられ、
前記加熱風路の前記中空構造体における端部の吹出口が前記階上の居室に設けられ、
前記中空構造体に設けられた前記冷却された空気と前記加熱された空気とで異なる冷却風路と加熱風路が前記冷却された空気と前記加熱された空気の性質の違いで形成される構造が、
前記通風管が前記中空構造体に接続された箇所から下方に拡がる所定の周囲の前記階下の居室と前記階上の居室の間に空間を下方に拡張し、前記下方に拡張した箇所に前記冷却風路の前記中空構造体における端部の前記吹出口が設けられている構造であることを特徴としている。
【0012】
第2発明の空調装置用中空構造体は、階下の居室と階上の居室を有し前記階下の居室と前記階上の居室の間に空間を備えた建物において、
前記空間を拡張または前記空間の内部に部材を追加した中空構造体が形成され、
前記中空構造体には前記建物内の空気に対して冷却された空気または前記建物内の空気に対して加熱された空気の何れか一方が送られる通風管が接続されており、
前記中空構造体には前記冷却された空気と前記加熱された空気とで異なる冷却風路と加熱風路が前記冷却された空気と前記加熱された空気の性質の違いで形成される構造を有し、
前記冷却風路の前記中空構造体における端部の吹出口が前記階下の居室に設けられ、
前記加熱風路の前記中空構造体における端部の吹出口が前記階上の居室に設けられ、
前記中空構造体に設けられた前記冷却された空気と前記加熱された空気とで異なる冷却風路と加熱風路が前記冷却された空気と前記加熱された空気の性質の違いで形成される構造が、
前記通風管が前記中空構造体に接続された箇所から下方に拡がる所定の周囲の前記階下の居室と前記階上の居室の間に空間に囲いを設け、前記囲いを設けた箇所の内側に前記冷却風路の前記中空構造体における端部の前記吹出口が設けられている構造であることを特徴としている。
【0013】
第3発明の空調装置用中空構造体は、請求項1または請求項2記載の発明において前記冷却された空気とまたは前記加熱された空気との温度の違いにより変化する風向案内板が設けられていることを特徴としている。
【0014】
第4発明の空調装置用中空構造体は、請求項1から請求項3記載の何れか一項の発明において、前記建物内の空気に対して冷却された空気または前記建物内の空気に対して加熱された空気の何れか一方が送られる前記通風管が、1本の管で前記中空構造体の上面側に接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
以上のような、技術的手段を有することにより、以下の効果を有する。
【0016】
階下の居室と階上の居室を有し前記階下の居室と前記階上の居室の間に空間を有効に利用して、冷却された空気については、階下の居室の冷房に、加熱された空気については、階上の居室の暖房に使うことができるので、居住者に不快にならない冷暖房を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る空調装置用中空構造体が実施された建物の外観を表す斜視図である。
図2図1のA部拡大図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る空調装置用中空構造体における冷却風路の説明図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る空調装置用中空構造体を用いて加熱風路の説明図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る空調装置用中空構造体を説明するための建物の平面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る空調装置用中空構造体における冷却風路の説明図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る空調装置用中空構造体を用いて加熱風路の説明図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る空調装置用中空構造体における冷却風路と加熱風路の説明図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る空調装置用中空構造体を用いて冷却風路と加熱風路の説明図である。
図10】本発明の第5の実施形態に係る空調装置用中空構造体における冷却風路の説明図である。
図11】本発明の第5の実施形態に係る空調装置用中空構造体を用いて加熱風路の説明図である。
図12】本発明の第6の実施形態に係る空調装置用中空構造体を用いて冷却風路と加熱風路の説明図である。
図13】本発明の第7の実施形態に係る空調装置用中空構造体における冷却風路の説明図である。
図14】本発明の第7の実施形態に係る空調装置用中空構造体を用いて加熱風路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明を実施する形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
本発明の空調装置用中空構造体61の構造について図1を用いて説明する。図1は、階下空間20(図1においては1階)と階上空間30(図1においては2階)を有した建物1の斜視図である。所謂二階建ての建物1の内部が分かり易いように、手前側の建物壁16や床板21、31、天井板22、32等を除いて、建物1の内部を判るように図示している。
建物1の外観は、4方向の側面に建物壁16(建物壁の一部に窓や出入口は必要となるが、本図においては図示及び説明を省略する。)が、天面に屋根18が設けられている。そして、内部に階下空間20と階上空間30が形成されている。
【0020】
階下空間20は、床板21と天井板22で上下が仕切られ、周囲を建物壁16により囲まれている。階上空間30は、床板31と天井板32で上下が仕切られ、周囲を建物壁16により囲まれている。そして、階下空間20と階上空間30が設けられていると同時に、階下空間20の床板21の下部には基礎17との間に床下空間10が、階上空間30の天井板32と屋根18の間に天井裏空間(屋根裏空間)40が、階下空間20の天井板22と階上空間30の床板31の間に階間空間50が設けられている。
【0021】
なお、階間とは、本願の実施形態において、一階と二階の間の空間の形態のみで説明しているが、この階間については、一階と二階に限定されるものではなく、二階と三階の間の空間や、三階と四階の空間等のそれ以上の上下の階の間の空間についても本実施形態については実施できる。
【0022】
建物1の外部には、空調装置用室外機3が設けられ、建物1の天井裏空間40に空調装置用室内機4が設けられている。
空調装置用室外機3と空調装置用室内機4との間は配管5で循環回路が形成されており、
空調装置用室内機4の内部に設けた熱交換器が加熱又は冷却され、建物1の屋内の空気や、換気する場合には屋外空気を送風機で通過させることで、前記熱交換器にて加熱された空気又は冷却された空気を発生させることができる。
【0023】
なお、送風機(ファン)により加熱された空気の流れを以下、温風と略して説明し、送風機により冷却された空気の流れを以下、冷風と略して説明する。
空調装置用室外機3と空調装置用室内機4については、冷媒を圧縮して加熱や冷却に用いる方法や、不凍液を冷凍装置で冷却し、不凍液を電気、石油、ガス等で加熱する方法によって実施されている。
【0024】
空調装置用室内機4には、通風管取付口41、45、47が設けられている。空調装置用室内機4の内部で冷風又は温風を発生させるが、通風管取付口41については、温風又は冷風を送風することが出来、通風管取付口45については温風だけを、通風管取付口47については冷風だけを、送風することが出来る。
そのため、空調装置用室内機4が冷風から温風に切り換えて送風する場合には、空調装置用室内機4の内部に風路切り換え用のダンパーが設けられており、通風管取付口45と通風管取付口47の何れかを選択して、冷風又は温風を送風することができる。
また、空調装置用室内機4内に送風機(ファン)を複数設置することなどで、冷風又は温風時でも各通風管取付口での送風を切り換えることも実施されている。
なお、通風管とは、気体を運ぶ管であり、ダクト、エアダクトや風道管とも呼ばれる。また、通風管は製造が容易なことから円形の管が一般的ではあるが、方形の管の場合もある。
【0025】
通風管取付口41には、気密性を有した通風管42が接続されており、通風管42は天井裏空間40、階上空間30の天井板32、階上空間30、階上空間30の床板31通過して、階上空間30と階下空間20の間に設けられた階間空間50に連接されている。
【0026】
通風管取付口45には、気密性を有した通風管46が接続されており、通風管46は天井裏空間40、階上空間30の天井板32、階上空間30、階上空間30の床板31、階下空間20の天井板22、階下空間20、階下空間20の床板21を通過して、床下空間10に連接されている。
通風管取付口47には、気密性を有した通風管48が接続されており、通風管48は天井裏空間40の内部で複数に分岐して階上空間30に開口した複数の天井吹出口33に連接されている。
なお、階下空間20と階上空間30への冷風又は温風の吹き出し口の詳細については、後述する図3図4において、説明する。
【0027】
空調装置用室内機4については、全熱熱交換器や顕熱熱交換器を組み合わせて換気する機能を組み込むこともできる。この場合は、建物1の外部(屋外)から新鮮な空気を空調装置用室内機4に取り込み、屋内空気の熱を前記全熱熱交換器や顕熱熱交換器で回収して、建物1の室内温度が変化し難い状態を保ちながら換気しながら、温風や冷風を発生させることができる。
【0028】
なお、本願の出願人は、特開2017-172901号で冷風・暖房・換気・給湯と太陽熱を組み合わせた換気装置の発明を公開しており、本願発明の空調装置用中空構造体についても特開2017-172901号の換気装置を組み合わせることにより、実施することが出来る。このため、前記換気装置についての詳細な説明は省略する。なお、特開2017-172901号の発明は換気装置であるため吹出口については給気口呼び、として説明している。
【0029】
階下の階下空間20の天井板22と、階上空間30の床板31の間に空調装置用中空構造体61が設けられている。
【0030】
一般的な戸建て住宅の工法としては、木造軸組工法、ツーバイフォー工法、コンクリート工法、プレハブ工法等様々な工法が存在する。
【0031】
図1のA部(円の破線の箇所)の箇所について図2の木造軸組工法の場合を例として説明する。階下の居室(階下空間20)と階上の居室(階上空間30)を有した建物1を建築する場合には、階上の居室の床面を支える構造材、例えば、木造軸組工法の場合には、床梁51や根太52を用いて階上の床板31を組み付けた後に、階下空間20の天井板22を階上空間30の床板31を支える床梁51や根太52などから、吊り木53や吊り金具等を用いて野縁や野縁受け等の下地骨54を設けて天井板22を取り付ける場合が多い。そのため、階上空間30の床板31と階下空間20の天井板22の間には建物1の前記構造材により階間空間50が生じることになる。なお、建物1の構造材としては、柱もあるが、階間空間50を塞ぐ構造材ではないので説明を省略する。
一般的な戸建て住宅の工法としては、木造軸組工法以外にも、ツーバイフォー工法、コンクリート工法、プレハブ工法等様々な工法が存在するが、何れの場合にも、階間空間50は、防火、防音や階上からの振動の防止等の目的で設けられている。
【0032】
図3図4を用いて、冷風または温風の流れについて説明する。図3図4は、図1のB方向からみた建物1の概略の断面構造を表した説明図である。図3においては、空調装置用室内機4の通風管取付口41と通風管取付口47から、冷風を送風した場合の説明図である。図4は、空調装置用室内機4の通風管取付口41と通風管取付口45から、温風を送風した場合の説明図である。図3図4において、冷風が流れる状態と向きを白抜きの矢印として図示し、温風が流れる状態と向きを黒く塗りつぶした矢印として図示し、冷風又は温風が空調装置用室内機4に戻る風が流れる状態と向きを斜線が付された矢印として図示している。
【0033】
図3図4において、階間空間50に設けた空調装置用中空構造体61の構成を説明する。空調装置用中空構造体61は、階間空間50を構成する階下空間20の天井22板と、階上空間30の床板31と、前記の階下空間20の天井板22と、前記の階上空間30の床板31の周囲を覆う建物壁16を基本構成としている。なお、図2で説明した床板31と天井板22を支える構造材も、階間空間50を形成する部材となる。
【0034】
この基本構成に、階下空間20の天井板22の中央部の一定の範囲について、天井板22の高さより例えば階間空間50の高さ寸法(厚み寸法)に対して1倍以上、好ましくは1~2倍の高さ寸法(厚み寸法)に下げ、空調装置用中空構造体61の最も下側の面である下面62が形成されている。そして、下面62と天井板22を繋ぐ側板を備えているが、図3図4の説明図において、説明上前記側板には、下面吹出口63が設けられ、下面吹出口63だけを図示しているが、全ての側板に下面吹出口63が設けられているのではなく、階下空間20における居室の配置に合わせて適当に設置する。この下面62で下方に広げられた空間を拡張空間60と呼ぶ。よって、空調装置用中空構造体61は階間空間50と拡張空間60を形成する部材から構成されている。なお、空調装置用中空構造体61の構成範囲については、黒く塗りつぶした太線が囲った範囲となる。
【0035】
下面62が設けられている部分の略中央に対応する階上空間30の床板31には、通風管42が連接されている。この側板における下面吹出口63の配置や、通風管42の連接位置については、後述する図5の階下空間20の平面図の一例を用いて説明する。
また、階間空間50で空調装置用中空構造体61を形成する場合には、階上空間30の床板31の建物1の建物壁16の近傍には、上面吹出口64が複数設けられている。
【0036】
なお、建物壁16については、周囲の一部について、階下空間20と階上空間30を結ぶ通気路26を設けるため、階間空間側板65が設けられている。本実施例については、図上で説明し易いように通気路26を設けているが、階段室や後述する吹き抜け等の階下空間20と階上空間30を連接させる空間によっても良い。
【0037】
また、空調装置用中空構造体61は、下面吹出口63と上面吹出口64以外では、冷風または温風が漏れないように、天井板22、床板31、建物壁16、下面吹出口63、上面吹出口64、階間空間側板65、下面吹出口63を取り付けている側板の夫々や相互の接合部分については、気密性を有するように密着して接合させるか、シール材、パッキン等で結合されている。また、天井板22、床板31、建物壁16、階間空間側板65については、それ自体が気密性を有する材料が用いられている。
【0038】
前述のような空調装置用中空構造体61の構造において、空調装置用中空構造体61に空調装置用室内機4で発生させた冷風が通風管42で送られると、空調装置用中空構造体61に連接する通風管42の開口部から、略円錐状に拡がりながら、空調装置用中空構造体61(階間空間50)の中に吹き出される。空調装置用中空構造体61内部の空気に対して冷風の気体の密度は空調装置用室内機4で冷却されているため大きくなる。そのため、冷風の単位体積当たりの質量は空調装置用中空構造体61内部の空気に対して重くなる。そして、冷風は吹き出し方向の空気に阻害されることなく、空調装置用中空構造体61内部の空気に沈み、かつ下面吹出口63に空調装置用中空構造体61内部の空気を押し出すようになる。
【0039】
さらに、冷風は、空調装置用中空構造体61の下面62に向かって落ちて(下がって)行く。下面62に冷風が衝突すると、冷風は下面62に沿って拡がり、下面62の周囲に立ち上げられた下面吹出口63を取り付けている側板以外の下面吹出口63から、階下空間20に流れる。以上の冷風の流れが空調装置用中空構造体61の内部に形成される。この冷風の流れる範囲を一点鎖線で空調装置用中空構造体61の内部に図示している。
なお、図中において、下面吹出口63は側面に設置されたものとして図示されているが、下面62に設けても良い。
【0040】
次に、空調装置用中空構造体61に空調装置用室内機4で発生させた温風が通風管42で送られると、冷風と同様に空調装置用中空構造体61に連接する通風管42の開口部から、略円錐状に拡がりながら、空調装置用中空構造体61(階間空間50)の中に吹き出される。しかしながら、温風の場合は空調装置用室内機4で加熱されていることにより、空調装置用中空構造体61内部の空気に対して温風の気体の密度は小さくなる。そのため、温風の単位体積当たりの質量は、空調装置用中空構造体61内部の空気に対して軽くなる。そして、温風は空調装置用中空構造体61内部の空気に乗るようにして、周囲に拡がっていく。
【0041】
さらに、温風は空調装置用中空構造体61を形成する床板31の内面に沿ってさらに流れ、空調装置用中空構造体61を形成する建物壁16の内面や階間空間側板65の内面に衝突すると、温風は床板31に設けられた複数の上面吹出口64から、階上空間30に流れる。以上の温風の流れが空調装置用中空構造体61の内部に形成される。この温風の流れる範囲を一点鎖線で空調装置用中空構造体61の内部に図示している。
なお、図中において、上面吹出口64は床板31に設置されたものとして図示されているが、床板に段差がある場合には、段差の側面に設けても良い。
【0042】
以上のように、空調装置用中空構造体61の構造により、冷風を流した場合と温風を流した場合には、空調装置用中空構造体61内部に冷風と温風で異なる2つの風路ができることになる。具体的には、冷風の場合では、通風管42の連接された箇所から、下面62の全体に拡がり、下面吹出口63及び下面吹出口63が取り付けられた側板を越えない範囲が冷却風路となる。また、温風の場合では、通風管42の連接された箇所から、上面吹出口64が設けられた床板31の内面に沿った範囲が加熱風路となる。
【0043】
冷却風路と加熱風路については、下面吹出口63と下面吹出口63が取り付けられた側板で大まかな平面的な範囲を限定することができる。しかしながら、冷却風路と加熱風路の平面的な範囲については、冷風や温風の温度と空調装置用中空構造体61の内部の空気の温度との関係、冷風や温風の風速(風量)階間空間50の形状、下面吹出口63の開口面積、位置、数、上面吹出口64の開口面積、位置、数、等によりその範囲は変化する。
【0044】
空間的な範囲として説明すれば、空調装置用中空構造体61の内部における冷却風路については通風管42の取り付け部分を頂点とする略四角錐状(下面62が方形である場合で、下面62が円形ならば略円錐状になる。)の風路となる。そして、加熱風路については、床板31の形状が方形であれば、厚みの薄い略四角柱の区画で、最大の大きさがほぼ階間空間50と等しい大きさの風路となる。
【0045】
なお、これらの冷却風路と加熱風路の大きさについては、空調装置用室内機4の風量や、通風管42の径、空調装置用中空構造体61の内部の構造によっても異なることになるが、冷風の場合には、下面吹出口63が取り付けられた側板を越えないように空調装置用室内機4の風量を調整し、温風の場合には、下面吹出口63から温風が出ない風量に調整する。
【0046】
図3において、空調装置用室内機4で冷風を発生させる際に、通風管取付口47から、通風管48を経由して複数の天井吹出口33で階上空間30に冷風を送り、階上空間30を冷房する場合も同時に図示している。なお、空調装置用室内機4の通風管取付口47にダンパーを設けて、冷風が通風管取付口47に流れないようにしても良い。なお、階上空間30についての天井板32に通気孔36が設けられているのは、空調装置用室内機4に冷暖房をした空気を回収して、階上空間30を経た屋内空気を循環させるためである。
【0047】
図4において、空調装置用室内機4で温風を発生させる際に、通風管取付口45から、通風管46を経由して床下空間10に送り、床板21に複数設けた床吹出口23から階下空間20に温風を送風し、階下空間20を暖房する場合を図示している。なお、空調装置用室内機4の通風管取付口45にダンパーを設けて、温風が通風管取付口45に流れないようにしても良い。
【0048】
図5は、戸建て住宅の一階部分についての例示として平面図で表したものである。
図5に図示しているように、戸建て住宅の建物、特に一階部分については、居間20a、台所20b、洗面所20c、浴室20dや便所20eが配置されている。居間20aや台所20bについては、採光や屋外との出入りの機能を発揮できるように、窓や入口が取り付けられる建物の外周側に設けることが一般的である。また、台所20b、洗面所20c、浴室20dや便所20eについても、湿気や配管設備等を考慮すると建物の外周側に設ける方が好ましいことになる。
【0049】
すると、クローゼット、物置、押し入れ、棚等については、建物の中心部に配置し易い構成となる。このクローゼット、物置、押し入れ、棚等については、居室(居住、作業、娯楽などの目的のために継続的に使用する室のこと)には該当しないので、天井の高さを低くしても、前述の居住、作業、娯楽などの目的ではないので問題がない。図5の一階部分の配置においても、居間20a、台所20b、洗面所20c、浴室20dや便所20e以外の箇所に破線で囲った部分、空調装置用中空構造体61の拡張空間60を配置している。よって、破線で囲った部分が拡張空間60になるので、天井部分を低くした部分となる。
【0050】
図5の破線で囲った部分である空調装置用中空構造体61の拡張空間60には小さい破線の方形で示した下面吹出口63、63aが設けられている。下面吹出口63と下面吹出口63aの違いについては、吹出口の開口面積を下面吹出口63の略半分にしたものが、下面吹出口63aである。吹き出す方向の居室の広さにより、開口面積で調整するためである。また、空調装置用中空構造体61の拡張空間60に含まれる箇所の丸で表示した箇所の垂直上方には空調装置用室内機4からの通風管42が接続されている。通風管42の接続位置については、拡張空間60の中央部である方が好ましいが、拡張空間60の厚み(深さ)を厚く(深く)することで、破線で囲った部分の拡張空間60の範囲にあれば対応できる。
【0051】
なお、建築基準法上の居室には、「便所」、「洗面所」と「浴室」は含まれないとされているが、天井を下げることを可能かどうかとの見方から、「便所」、「洗面所」と「浴室」は居室に準ずるものとして説明している。
【0052】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態である空調装置用中空構造体66について、図6図7を用いて説明する。図5の建物の平面図で説明したように、階下空間20の居室の配置や空調装置用室内機4の設置位置によっては、拡張空間60の中央付近の上部の空調装置用中空構造体66に通風管42を連接できない場合がある。第2の実施形態においては、この拡張空間60が拡張空間60aの位置にあることで、拡張空間60aに対して通風管42の連接位置が拡張空間60aの上部にはあるが拡張空間60aの範囲の外周に近接した上部、言い換えると拡張空間60aの中央から偏った場合の実施形態である。
【0053】
第2の実施形態を説明するための図として、第1の実施形態の図3図4に対応する図である図6図7を用いて説明する。第2の実施形態の図6図7については、階間空間50における拡張空間60aの位置を、図6図7において向かって左方向に移動させて、通風管42の建物1における位置は変更してない。第2の実施形態において第1の実施形態と異なるのは、前述の階間空間50における拡張空間60aの位置だけであり、他の部分については第1の実施形態と同様であるので同じ符号を附して、説明を省略する。
【0054】
なお、今後の実施形態において、通風管取付口47からの冷風の流れと、通風管取付口45からの温風の流れについては、第1の実施形態と同様であるので、白抜きの矢印(冷風)と黒塗りつぶしの矢印(温風)については図示を省略する。さらに、この偏った階間空間について、説明を容易にするため、図6図7において向かって右の広い方の階間空間を階間空間50aとして別の符号を附している。
【0055】
空調装置用中空構造体66の構造において、空調装置用中空構造体66に空調装置用室内機4で発生させた冷風が通風管42で送られると、空調装置用中空構造体66に連接する通風管42の開口部から、略円錐状に拡がりながら、空調装置用中空構造体66(階間空間50a、50b)の中に吹き出される。空調装置用中空構造体66内部の空気に対して冷風の気体の密度は空調装置用室内機4で冷却されているため大きくなる。そのため、冷風の単位体積当たりの質量は空調装置用中空構造体66内部の空気に対して重くなる。そして、冷風は吹き出し方向の空気に阻害されることなく、空調装置用中空構造体66内部の空気に沈み、かつ下面吹出口63に空調装置用中空構造体66内部の空気を押し出すようになる。
【0056】
拡がって下降する冷風の内、階間空間50aに衝突する部分については、階間空間50aの下面62に沿って向かって右方向に拡がるが、冷風の大部分は拡張空間60aの下面62まで下降し、下面62に冷風が衝突すると、冷風は下面62に沿って拡がり、下面62の周囲に立ち上げられた下面吹出口63を取り付けている側板以外の下面吹出口63から、階下空間20に流れる。すると、階間空間50aに拡がった冷風についても、階間空間50aを右方向に向かって流れることは、冷風よりも温度が高い空気に阻害され、下面吹出口63に向かって流れる冷風に引きずられて下面吹出口63に向かって流れる。以上の冷風の流れが、冷却風路となって、空調装置用中空構造体66の内部に形成される。
【0057】
次に、空調装置用中空構造体66に空調装置用室内機4で発生させた温風が通風管42で送られると、空調装置用中空構造体66内部の空気に対して温風の気体の密度は小さくなるので、温風の単位体積当たりの質量は、空調装置用中空構造体66内部の空気に対して軽くなる。そのため、温風は空調装置用中空構造体66内部の空気に乗るようにして、周囲に拡がっていく。そして、温風は空調装置用中空構造体66を形成する床板31の内面に沿ってさらに流れ、空調装置用中空構造体66を形成する建物壁16の内面や階間空間側板65の内面に衝突すると、温風は床板31に設けられた複数の上面吹出口64から、階上空間30に流れる。
【0058】
温風の場合についても、階間空間50aに衝突する部分があるが、拡張空間60aの温風よりも温度の低い空気によって阻害され、温風の流れに引きずられて、上面吹出口64の方向に流れる。以上の温風の流れが、加熱風路として、空調装置用中空構造体66の内部に形成される。
【0059】
以上の冷風と温風の流れについて、一点鎖線を附して冷却風路と温風風路として図示している。冷却風路と加熱風路についてのその他の部分についての説明は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0060】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態である空調装置用中空構造体67ついて、図8を用いて説明する。空調装置用中空構造体67と、第1の実施形態の空調装置用中空構造体61との違いは、空調装置用中空構造体67の内部に案内板68が設けられているだけであり、他の部分については第1の実施形態と同様であるので同じ符号を附して、説明を省略する。また、図8において、空調装置用中空構造体67の構造をほぼ線対称として説明するので、図8の通風管42の断面図に破線の垂直に記した中央線を付して、向かって左側が冷却された空気が送られている状態を、向かって右が加熱された空気が送られている状態を図示して説明する。
【0061】
案内板68は、空調装置用中空構造体67に連接された通風管42の開口部の下方に、前記開口部から所定の間隔を明けて空調装置用中空構造体67の内部に設置したものである。案内板68の通風管42の開口部の下方には、通風管42の開口部の直径に対して、1~3倍の直径の孔が開け、前記孔の周囲を斜め5~30度に上昇するようにし、その外周は拡張空間60の範囲を越えない、略漏斗状に形成されている。
【0062】
案内板68を設けることによって、冷風の場合は、拡張空間60の中央部に冷風を集めることができ、温風の場合には、拡張空間60に向かう温風を阻害することが可能となる。そのため、案内板68を設けることによって、拡張空間60の下面62の下げる割合(拡張空間60の容積)を小さくすることができるので、階下空間20に張り出す容積を小さくすることができるので、階下空間20を有効に利用することが可能となる。
【0063】
冷却風路については、案内板68までの冷風の流れは、第1の実施形態とほぼ同じであり、案内板68を過ぎて下降する冷風は拡張空間60の中央に集められることになる。そして、中央に集められた冷風は拡張空間60の下面62に衝突し、左右に分かれて下面吹出口63に向かう。
【0064】
また、加熱風路については、案内板68までの温風の流れは、第1の実施形態とほぼ同じであり、案内板68に温風が衝突するとより、温風は、下降から上昇方向により変化し易くなり、下降から上昇方向により変化し、上昇方向から水平方向に変化した温風は空調装置用中空構造体67の外周にある階間空間50の方向に拡がり、上面吹出口64に向かう。
【0065】
案内板68の形状については、空調装置用中空構造体67の形状により、これ以外の形状にすることができる。目的としては、拡張空間60の容積を小さくすることが出来ればこれ以外の形状でも良い。例えば、網目板や複数の孔を開けた板を用いて、冷風や温風の風速や風向を制御する方法や、複数の羽根(整流板)を設けて、冷風や温風の風向を変化させる方法などである。
【0066】
以上の冷風と温風の流れについて、一点鎖線を附して冷却風路と温風風路として図示している。冷却風路と加熱風路についてのその他の部分についての説明は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0067】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態である空調装置用中空構造体69ついて、図9を用いて説明する。空調装置用中空構造体69と、第1の実施形態の空調装置用中空構造体61との違いは、空調装置用中空構造体69については、拡張空間60は無く、階間空間50だけで、階間空間50の内部に囲い71が設けられているだけであり、他の部分については第1の実施形態と同様であるので同じ符号を附して、説明を省略する。また、図9において、空調装置用中空構造体69の構造をほぼ線対称として説明するので、図9の通風管42の断面図に破線の垂直に記した中央線を付して、向かって左側が冷却された空気が送られている状態を、向かって右が加熱された空気が送られている状態を図示して説明する。
【0068】
囲い71は、空調装置用中空構造体69に連接された通風管42の開口部の下方で、前記開口部から所定の範囲広げ、その範囲の境界に塀状に空調装置用中空構造体69の下面である天井板22から立ち上げ、空調装置用中空構造体69の上面である床板31とは所定の間隔を開けて設置させたものである。囲い71の範囲については、通風管42の開口部から、冷風または温風が拡がる範囲を考慮し、特に冷風が天井板22に所定の角度で衝突する範囲に、若干の余裕を持たせた範囲に設置する。よって、空調装置用中空構造体69の天井板22から床板31までの距離や、冷風や温風の風速を考慮して定められる。また、本実施形態の囲い71においては、上端に通風管42の開口部の方向に向かい、前記向かう方向に従って斜め0~30度下がる案内板72が取り付けられている。第3の実施形態と同様に、冷風や温風の風向を調整するためである。また、囲い71の内側で囲い71の近傍には、下面吹出口63aが適当な個所に複数個配置されている。なお、上面吹出口64については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
囲い71を設けることによって、第1の実施形態の拡張空間60と同様の効果を得ることができる。そして、拡張空間60がないことで、階下空間20を有効に利用することが可能となる。ただし、空調装置用中空構造体69の階間空間50の天井板22と床板31までの距離が短い場合や、冷風や温風の風速を早くする場合には、さらに第3の実施形態の案内板68を合わせて実施することや、後述する冷却された空気と加熱された空気との温度の違いにより変化する風向案内板を設置することにより実施する。
【0070】
冷却風路については、囲い71までの冷風の流れは、第1の実施形態とほぼ同じであり、囲い71の内部に入って下降する冷風は囲い71の内側の範囲に拡がるようにながれる。そして、囲い71の内側の冷風は、左右に分かれて下面吹出口63aに向かう。
【0071】
また、加熱風路については、囲い71までの温風の流れは、第1の実施形態とほぼ同じであり、囲い71の案内板72に沿って、温風は、下降から上昇方向により変化し易くなり、下降する温風は空調装置用中空構造体69の外周にある階間空間50の方向に拡がり、上面吹出口64に向かう。
【0072】
以上の冷風と温風の流れについて、一点鎖線を附して冷却風路と温風風路として図示している。冷却風路と加熱風路についてのその他の部分についての説明は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0073】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態である空調装置用中空構造体73ついて、図10図11を用いて説明する。空調装置用中空構造体73と、第1の実施形態の空調装置用中空構造体61を一部変更した第4の実施形態の空調装置用中空構造体69との違いは、空調装置用中空構造体69に設けられている案内板72が取り付けられた囲い71を、上側の案内板の大きさを大きくして開口部の面積を小さくした囲い74とし、囲い74の開口部に風向案内板75を設けられているだけであり、他の部分については第1の実施形態や第4の実施形態と同様であるので同じ符号を附して、説明を省略する。なお、囲い74の内側で囲い74の近傍には、下面吹出口63aが適当な個所に複数個配置されている。また、上面吹出口64については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
風向案内板75は、空調装置用中空構造体73に連接された通風管42の開口部の下方に、前記開口部から所定の間隔を明けて空調装置用中空構造体73の内部で、囲い74の上面側の開口部に設置したものである。風向案内板75は、通風管42の開口部の直径に対して、1~3倍の直径の大きさであり、囲い74の上面開口部とほぼ同じ大きさか、若干小さい大きさにしている。また、囲い74については、第4の実施形態と前述の上面の開口部大きさ以外の構造に形成されている。風向案内板75については、水平に軸支されており、冷却された空気、例えば空気の温度が摂氏14~10度以下になると、形状が変形し、空気の温度が摂氏16~20度になると元の形状に戻る。所謂、形状記憶合金で形成された駆動部材が取り付けられている。この駆動部材により、風向案内板75は冷風が当たると垂直に動き、温風が当たると水平に動いて、囲い74の開口部を塞ぐ。
【0075】
空調装置用中空構造体73に風向案内板75が設けられた囲い74が設けられているとで、図10のように、囲い74の内側に冷風を集めることができ、温風の場合に図11のように、囲い74の外側に流すことができる。そのため、空調装置用中空構造体73に風向案内板75が設けられた囲い74が設けられていることで、冷風と温風の風路を確実に分離できると共に、拡張空間60を無くすことができ、階下空間20を有効に利用することが可能となる。
【0076】
図10における冷却風路については、風向案内板75までの冷風の流れは、第4の実施形態とほぼ同じであり、風向案内板75が設けられた囲い74の中に下降する冷風を集めることができる。そして、中央に集められた冷風は階間空間50の天井板22に衝突し、左右に分かれて下面吹出口63aに向かう。
【0077】
また図11における加熱風路については、風向案内板75までの温風の流れは、第4の実施形態とほぼ同じであり、風向案内板75で閉じられた囲い74に温風が衝突するとより、温風は、下降から上昇方向により変化し、上昇方向から水平方向に変化した温風は空調装置用中空構造体73の外周にある階間空間50の方向に拡がり、上面吹出口64に向かう。
【0078】
以上の冷風と温風の流れについて、一点鎖線を附して冷却風路と温風風路として図示している。冷却風路と加熱風路についてのその他の部分についての説明は、第1の実施形態や第4の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0079】
(第6の実施形態)
本発明の空調装置用中空構造体77ついて、図12を用いて説明する。空調装置用中空構造体77と、第1の実施形態の空調装置用中空構造体61を一部変更した第4の実施形態の空調装置用中空構造体61との違いは、空調装置用中空構造体77については、拡張空間60は無く、階間空間50だけで、階間空間50の内部に囲い78が設けられ、囲い78の中央部のみを覆う風向案内板79を設けられているだけであり、他の部分については第1の実施形態や第4の実施形態と同様であるので同じ符号を附して、説明を省略する。
また、図12において、空調装置用中空構造体77の構造をほぼ線対称として説明するので、図12の通風管42の断面図に破線の垂直に記した中央線を付して、向かって左側が冷却された空気が送られている状態を、向かって右が加熱された空気が送られている状態を図示して説明する。
【0080】
囲い78は、空調装置用中空構造体77に連接された通風管42の開口部の下方で、前記開口部から所定の範囲広げ、その範囲の境界に塀状に空調装置用中空構造体77の下面である天井板22から立ち上げ、空調装置用中空構造体77の上面である床板31とは所定の間隔を開けて設置させたものである。囲い78の範囲については、通風管42の開口部から、冷風または温風が拡がる範囲を考慮し、特に冷風が天井板22に所定の角度で衝突する範囲に、若干の余裕を持たせた範囲に設置する。よって、空調装置用中空構造体77の天井板22から床板31までの距離や、冷風や温風の風速を考慮して定められる。また、本実施形態の囲い78においては、上端に案内板が取り付けられていないが、取り付けるものとしても良い。なお、囲い78の内側で囲い78の近傍には、下面吹出口63aが適当な個所に複数個配置されている。上面吹出口64については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0081】
風向案内板79は、空調装置用中空構造体77に連接された通風管42の開口部の下方に、前記開口部から所定の間隔を明けて空調装置用中空構造体77の内部で、囲い78の上面側の開口部の一部を塞ぐように設置したものである。風向案内板79は、通風管42の開口部の直径に対して、4~5倍の直径の大きさである。また、囲い78については、第4の実施形態とは違い塀状に立ち上げただけの大きさに形成されている。風向案内板79については、水平に2分割して蝶の羽根形状に軸支されており、冷却された空気、例えば空気の温度が摂氏14~10度以下になると、形状が変形し、空気の温度が摂氏16~20度になると元の形状に戻る。所謂、形状記憶合金で形成された駆動部材が2枚の羽根の夫々に取り付けられている。この駆動部材により、風向案内板79は冷風が当たると斜め下方に動き、温風が当たると斜め上方動いて、風の向きを変える。
【0082】
囲い78と風向案内板79を設けることによって、第1の実施形態の拡張空間60と同様の効果を得ることができる。そして、拡張空間60がないことで、階下空間20を有効に利用することが可能となる。
【0083】
冷却風路については、囲い78までの冷風の流れは、第1の実施形態とほぼ同じであり、風向案内板79に沿いながら、囲い78の内部に入って囲い78の内側の範囲に拡がるように流れる。そして、囲い78の内側の冷風は、左右に分かれて下面吹出口63aに向かう。
【0084】
また、加熱風路については、風向案内板79により、第1の実施形態よりもさらに、温風は、下降から上昇方向により変化し易くなり、空調装置用中空構造体77の床板31に沿って流れる。そして、水平方向に流れる温風は空調装置用中空構造体77の外周にある階間空間50の方向に拡がり、上面吹出口64に向かう。
【0085】
以上の冷風と温風の流れについて、一点鎖線を附して冷却風路と温風風路として図示している。冷却風路と加熱風路についてのその他の部分についての説明は、第1の実施形態や第4の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0086】
(第7の実施形態)
本発明の空調装置用中空構造体81ついて、図13図14を用いて説明する。空調装置用中空構造体81と、第1の実施形態の空調装置用中空構造体61との違いは、空調装置用中空構造体81が、階下空間20と階上空間30との間に吹き抜け27が設けられており、そのため、吹き抜け27が設けられた側の階間空間が狭くなり、階間空間50cとなっている。また、拡張空間についても吹き抜け27が設けられた側の下方への拡張は斜めに下側に狭くなる形状の拡張空間60bとなり、下面吹出口も斜めに下側に狭くなる形状に取り付けられた下面吹出口63bとなっている。そして、拡張空間60bの階間空間50に接する側だけの境界には、壁82が設けられている。他の部分については第1の実施形態と同様であるので同じ符号を附して、説明を省略する。
【0087】
壁82は、拡張空間60bと階間空間50cとの境界に設けて、拡張空間60bの側に倒れる(階間空間50cから拡張空間60bの方向に向かって斜め上方向に向かう)形状であり、壁82の上端は、空調装置用中空構造体81の床板31と所定の隙間を設けている。また、壁82の上端には、拡張空間60bの側に倒れる(壁82の上端から拡張空間60bの方向に向かって斜め下方向に向かう)形状の案内板83が設けられている。拡張空間60bは、空調装置用中空構造体81に連接された通風管42の開口部の下方で、前記開口部から所定の範囲に広げられている。そして、拡張空間60bと階間空間50cの境界に設けられた案内板83が取り付けられた壁82についても、通風管42の開口部よりも所定の距離離れた外側に設けられている。
【0088】
壁82を設けることによって、冷風の場合は、拡張空間60bに冷風を集め易くすると共に、拡張空間60bから階間空間50cへの冷風を阻害することができ、温風の場合には、階間空間50cに温風を集め易くすると共に、拡張空間60bに向かう温風を阻害することが可能となる。そのため、壁82を設けることによって、吹き抜け27が設けられた場合に階間空間50cが小さくなった場合でも、階間空間50と階間空間50cとの形状が異なることによって生じる、冷風と温風の流れのバランスとることが可能となる。
【0089】
図13を用いて、冷風の流れについて説明すると、冷風の流れである冷却風路については、壁82の無い側や壁の有る側での壁82までの冷風の流れは、第1の実施形態とほぼ同じである。壁の有る側での壁82の上端に設けた案内板83に衝突する冷風は、下面吹出口63b方向に流れる冷風に吸い込まれて、階間空間50c側には流れず、集まって下降し、直接、下面吹出口63と下面吹出口63bに向かう冷風と、拡張空間60bの下面62に衝突し、左右に分かれて下面吹出口63に向かう冷風とにより、階下空間20に流れる。
【0090】
図14を用いて、温風の流れについて説明すると、温風の流れである加熱風路については、壁82の無い側や壁の有る側での壁82までの温風の流れは、第1の実施形態とほぼ同じである。壁の有る側での壁82の上端に設けた案内板83に温風が衝突するとより、温風は、下降から上昇方向により変化し易くなり、上昇した後に水平に流れた温風は空調装置用中空構造体81の外周にある階間空間50cの方向に拡がり、上面吹出口64に向かう。
【0091】
壁82の形状については、空調装置用中空構造体81の形状により、これ以外の形状にすることができる。目的としては、階間空間50cが小さくなったことによる他の階間空間50とのバランスや、階間空間50cと拡張空間60bとの関係を調整することであり、前述までの、第3の実施形態の案内板68、第4の実施形態の囲い71と案内板72や、第5または第6の実施形態の風向案内板75、79等によっても良い。
【0092】
以上の冷風と温風の流れについて、一点鎖線を附して冷却風路と温風風路として図示している。冷却風路と加熱風路についてのその他の部分についての説明は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0093】
なお、前述の各実施形態については、これらを組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1:建物
3:空調装置用室外機
4:空調装置用室内機
5:配管
10:床下空間
16:建物壁
17:基礎
18:屋根
20:階下空間、20a:居間、20b:台所、20c:洗面所、20d:浴室、
20e:便所
21、31:床板
22、32:天井板
23:床吹出口
26:通気路
27:吹き抜け
30:階上空間
33:天井吹出口
36:通気孔
40:天井裏空間
41、45、47:通風管取付口
42、46、48:通風管
50、50a、50b、50c:階間空間
51:床梁
52:根太
53:吊り木
54:下地骨
60、60a、60b:拡張空間
61、66、67、69、73、77、81:空調装置用中空構造体
62:下面
63、63a、63b:下面吹出口
64:上面吹出口
65:階間空間側板
68、72、83:案内板
71、74、78:囲い
75、79:風向案内板
82:壁
【要約】
【課題】
従来の技術では、冷房時における上階室では足元に冷気が漂い、暖房時における階下室では天井から暖気が来るので、居住者には不快になるという問題があった。
【解決手段】
空調装置用中空構造体61は、階間空間50を備えた建物1において、階間空間50を拡張した中空構造体50、60が形成され、中空構造体50、60には空調装置用室内機4で冷却された空気または加熱された空気の何れか一方が送られる通風管42が接続されており、中空構造体50、60には前記冷却された空気と前記加熱された空気とで異なる冷却風路と加熱風路が前記冷却された空気と前記加熱された空気の性質の違いで形成される構造を有し、前記冷却風路の下面吹出口63が階下空間20に設けられ、前記加熱風路の上面吹出口64が階上空間30に設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14