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  • 特許-飛翔体用容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】飛翔体用容器
(51)【国際特許分類】
   B64B 1/22 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
B64B1/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021153604
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2020157849
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021046076
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520365229
【氏名又は名称】株式会社岩谷技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 圭介
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特許第6932408(JP,B1)
【文献】実公昭49-44491(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体が備える容器であって、
熱発生源を収容する容器本体と、
相変化に伴い熱を吸収る熱吸収体と、
前記容器本体の外に取り付けられ、前記熱吸収体を保持する熱吸収体保持部と、
前記熱発生源が発する熱を、前記容器本体を介して、又は、前記容器本体を介さずに、前記熱吸収体に移動させる熱移動体と
を備える容器。
【請求項2】
記熱移動体は、前記容器本体内で対流する流体を含む
請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記熱移動体は、前記熱発生源と、前記容器本体又は前記熱吸収体保持部とに接するように配置された熱伝導素材で作られた熱伝導部を含む
請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記熱吸収体保持部は、熱を吸収して気体になった熱吸収体を外部に放出するための開口部を有する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の容器。
【請求項5】
前記開口部を通って前記容器本体の内部から外部へと移動する気体の流れを制御する弁を備える
請求項4に記載の容器。
【請求項6】
前記容器本体の内部の温度を測定する温度計と、
前記温度計が測定した温度に基づき前記弁の開閉を制御する弁制御部と
を備える請求項5に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気球、飛行船等の飛翔体のための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
人(搭乗員)を収容する容器であるキャビンの設けられた気球、飛行船等の飛翔体がある。そのような飛翔体によれば、人は空中を移動できる。
【0003】
人を収容するキャビンを備える飛翔体を開示している特許文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、人を収容したドローン本体を気球で吊って飛翔させる構造を備えた有人ドローンが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-97345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、地上から1万メートル以下の低高度を飛翔する飛翔体のキャビンにおいては、換気によってキャビン内で発生する熱を容易に外部に排出できる。従って、キャビン内の温度を望ましい温度帯内(例えば、搭乗員が快適に過ごせる温度帯内)に保つことはさほど難しくない。
【0006】
ガス気球等の飛翔体は、地上から5万メートル以上の高高度まで飛翔可能である。そのような高高度の空間は真空に近い。従って、そのような高高度を飛翔する飛翔体のキャビンは、飛翔中に内部の空気が意図せず外部へと漏れ出ないように、内部気密に保つ構造を持つ必要があり、換気を行うことはできない。また、真空に近い高高度の空間においては、キャビンに外側から接する空気が希薄であるため、その空気の対流によりキャビンが冷却されることはほとんどない。
【0007】
従って、高高度を飛翔する飛翔体のキャビンにおいては、キャビン内の温度を望ましい温度帯内に保つために、キャビン内で発生する熱を外部に排出する仕組みが必要である。
【0008】
また、高高度を飛翔する飛翔体が、撮影装置等の装置を収容した気密な容器を備える場合がある。そのような容器においても、上述したキャビンと同様に、容器内の温度を望ましい温度帯内(例えば、装置が熱暴走しない温度帯内)に保つために、容器内で発生する熱を外部に排出する仕組みが必要である。
【0009】
上記の事情に鑑み、本発明は、高高度を飛翔する飛翔体が備える気密な容器内で発生する熱を外部に排出可能とする手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、飛翔体が備える容器であって、熱発生源を収容する容器本体と、相変化に伴い熱を吸収る熱吸収体と、前記容器本体の外に取り付けられ、前記熱吸収体を保持する熱吸収体保持部と、前記熱発生源が発する熱を、前記容器本体を介して、又は、前記容器本体を介さずに、前記熱吸収体に移動させる熱移動体とを備える容器を第1の態様として提案する。
【0011】
第1の態様に係る容器において、記熱移動体は、前記容器本体内で対流する流体を含む、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0012】
第1又は第2の態様に係る容器において、前記熱移動体は、前記熱発生源と、前記容器本体又は前記熱吸収体保持部とに接するように配置された熱伝導素材で作られた熱伝導部を含む、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0013】
第1乃至第3のいずれかの態様に係る容器において、前記熱吸収体保持部は、熱を吸収して気体になった熱吸収体を外部に放出するための開口部を有する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0014】
第4の態様に係る容器において、前記開口部を通って前記容器本体の内部から外部へと移動する気体の流れを制御する弁を備える、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0015】
第5の態様に係る容器において、前記容器本体の内部の温度を測定する温度計と、前記温度計が測定した温度に基づき前記弁の開閉を制御する弁制御部とを備える、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、飛翔体が真空に近い高高度まで飛翔しても、容器本体内で発生する熱が容器本外の外にある熱吸収体により吸収されるため、容器内の温度が望ましい温度帯内に保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る飛翔体の全体構成を示した図。
図2】一実施形態に係る容器の構成を示した図。
図3】一変形例に係る容器の構成を示した図。
図4】一変形例に係る容器の構成を示した図。
図5】一変形例に係る容器の構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る飛翔体1の全体構成を示した図である。飛翔体1は、ヘリウム等の空気より軽い気体を収容する球皮11と、球皮11に吊られて飛翔する容器12と、球皮11に一方の端部が連結され容器12に他方の端部が連結されて球皮11が容器12を吊るために設けられている複数の索体である吊索13を備える。
【0019】
図2は、容器12の構成を示した図である。容器12は、内部に搭乗員H1等の収容物を収容する中空の箱体である容器本体121と、容器本体121の内部に収容されている空気122と、容器本体121の外に取り付けられた容器本体121よりも小さい容器である熱吸収体保持部123と、熱吸収体保持部123に収容されることで熱吸収体保持部123に保持される熱吸収体124と、容器本体121の内側を覆うように配置された熱伝導部125を備える。
【0020】
飛翔体1は、例えば地上から数万メートルといった高高度の空間にまで飛翔可能である。従って、容器本体121は、飛翔体1が飛翔中、内部の気圧を保ち、また、内部に収容されている空気122が外部へと意図せず漏れ出ないように、気密な構造となっている。なお、容器本体121は、飛翔体1の飛翔前に搭乗員H1が出入りするためのハッチ等を備えるが、図2においてはそれらの図示が省略されている。
【0021】
容器本体121は、例えば、繊維強化プラスチックで作られている。なお、容器本体121の素材は必要な強度が確保できれば軽量であることが望ましいが、その素材は繊維強化プラスチックに限られず、例えば、アルミ等の軽金属や、繊維強化プラスチックではないプラスチック、それらの組み合わせ等であってもよい。
【0022】
空気122は、搭乗員H1が呼吸をすることができるように、十分な酸素を含んだ気体である。また、容器本体121内に適正量の空気122が充填されることにより、容器本体121内の気圧は概ね大気圧に保たれている。
【0023】
熱吸収体保持部123は熱吸収体124を収容する容器であり、上面に1以上の開口部Oが設けられている。この開口部Oは、熱吸収体保持部123内で気体となった熱吸収体124を外部へ放出するための排気口である。熱吸収体保持部123は、軽量かつ熱伝導率の高い素材(例えば、アルミ等の軽金属)でできている。
【0024】
熱吸収体124は、熱を吸収して気体になる液体である。熱吸収体124は、飛翔体1が飛翔中に長時間滞在する高度における気圧下で、沸点が、例えば摂氏25度程度の液体であることが望ましい。その場合、容器本体121内の温度が摂氏25度より高くなると、熱吸収体124が沸点に達し液体になり、その際に気化熱として熱吸収体124が熱を吸収するため、容器本体121内の温度が摂氏25度より少し高い温度に保たれる。
【0025】
熱伝導部125は、容器本体121内で搭乗員H1等が発する熱を熱吸収体保持部123に伝導するための部材である。熱伝導部125は、軽量かつ熱伝導率の高い素材(例えば、アルミ等の軽金属)でできている。熱伝導部125は、容器本体121の内側を覆うと共に、その一部が、容器本体121の内外を貫通するように設けられた孔を通って熱吸収体保持部123に接している。
【0026】
容器本体121内で、熱発生源である搭乗員H1や図2において図示が省略されている装置等が発した熱の一部は、熱伝導部125のうち、それらの熱発生源に接している部分において熱伝導部125に移動し、熱伝導部125を通じて熱吸収体保持部123に移動し、熱吸収体保持部123から熱吸収体124に移動して、気化熱として熱吸収体124に吸収される。
【0027】
また、容器本体121内で熱発生源が発した熱の一部は、それらの熱発生源に接している空気122に移動し、その空気122が、例えば対流等により熱伝導部125に接する位置へと移動すると空気122から熱伝導部125に移動し、熱伝導部125を通じて熱吸収体保持部123に移動し、熱吸収体保持部123から熱吸収体124に移動して、気化熱として熱吸収体124に吸収される。
【0028】
上記のように、空気122及び熱伝導部125は、容器本体121内で熱発生源が発する熱を熱吸収体124に移動させる熱移動体の一例である。
【0029】
上記の構成の容器12によれば、飛翔体1が真空に近い空間内を飛翔する場合であっても、容器本体121の内部の温度が望ましい温度帯内に保たれる。
【0030】
[変形例]
上述した実施形態に係る飛翔体1は、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形されてよい。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下の変形例の2以上が適宜、組み合わされてもよい。
【0031】
(1)上述した実施形態に係る飛翔体1においては、熱吸収体保持部123に設けられた開口部O(排気口)は常に開放されている。これに代えて、容器12が、開口部Oを塞ぐように設けられた弁を備えてもよい。この弁は、開口部Oを通って容器本体121の内部から外部へと移動する気体の流れを制御する。
【0032】
図3は、この変形例に係る容器12の構成を示した図である。この変形例において、容器12は、上述した実施形態に係る容器12が備える構成部に加え、開口部Oを塞ぐように配置された弁126と、弁126の開閉を制御する弁制御部127と、容器本体121の内部の温度を測定する温度計128を備える。温度計128は測定した温度を示す温度データを弁制御部127に引き渡す。弁制御部127は、弁126が閉鎖されているときに温度計128から引き渡された温度データが示す温度が所定の上限の閾値を超えると、弁126を開放する。また、弁制御部127は、弁126が開放されているときに温度計128から引き渡された温度データが示す温度が所定の下限の閾値を下回ると、弁126を閉鎖する。
【0033】
この変形例に係る容器12によれば、飛翔体1が飛翔している空間の気圧における熱吸収体124の沸点が必ずしも望ましい温度帯内でなくても、容器本体121の内部の温度が望ましい温度帯内に維持される。
【0034】
この変形例において、容器12が弁制御部127及び温度計128を備えず、熱吸収体保持部123の内外圧力差が所定の下限の閾値を超えると開き、熱吸収体保持部123の内外圧力差が所定の上限の閾値を下回ると閉じる弁が、弁126として採用されてもよい。
【0035】
(2)上述した実施形態において、容器本体121は人を収容するキャビンであるが、容器本体121の収容物は人でなくてもよい。図4は、容器本体121が撮影装置H2を収容する場合を例示した図である。撮影装置H2は、画像の撮影中に容器本体121の内部で熱を発する熱発生源である。
【0036】
この変形例において、容器本体121の壁面のうち、撮影装置H2の撮影領域(画角)内の部分には開口部が設けられており、その開口部を塞ぐように光透過板1211が設置されている。撮影装置H2が光透過板1211を透過して外部から入ってくる光を感知し画像の撮影を行う。
【0037】
図4の例では、容器本体121(光透過板1211以外の部分)は、例えばアルミ等の熱伝導率の高い素材でできており、容器本体121が、上述した実施形態に係る容器12が備える熱伝導部125の役割を兼ねている。そのため、この例では、容器12は熱伝導部125に代えて、撮影装置H2と容器本体121の各々に接し、撮影装置H2の台の役割を兼ねる高い熱伝導率の素材(例えば、アルミ)で作られたヒートシンク129を備える。
【0038】
この例において、撮影装置H2が発した熱の一部は、ヒートシンク129、容器本体121、熱吸収体保持部123を介して熱吸収体124に移動して、気化熱として熱吸収体124に吸収される。
【0039】
また、撮影装置H2が発した熱の一部は、撮影装置H2に接している空気122に移動し、その空気122が、例えば対流等により容器本体121に接する位置へと移動すると空気122から容器本体121に移動し、その後、容器本体121、熱吸収体保持部123を介して熱吸収体124に移動して、気化熱として熱吸収体124に吸収される。
【0040】
なお、撮影装置H2に代えて、もしくは加えて、撮影装置以外の種類の装置が容器本体121に収容されてもよい。
【0041】
図5は、この変形例の他の例に係る容器12を示した図である。図5の例では、容器本体121(光透過板1211以外の部分)と熱吸収体保持部123は、例えば繊維強化プラスチック等の熱伝導率の低い素材でできている。
【0042】
また、この例の容器12は、一部が撮影装置H2に接し、一部が、容器本体121に内外に貫通するように開けられた孔を通って熱吸収体124に接するように配置された熱伝導性の高い銅等の素材(熱伝導素材)で作られたヒートシンク129を備える。ヒートシンク129は、撮影装置H2(熱発生源)が発する熱を、容器本体121を介さずに熱吸収体124に移動させる熱移動体の一例である。
【0043】
なお、熱吸収体124がアルミ等の熱伝導性の高い素材で作られており、ヒートシンク129の一部が熱吸収体124にではなく熱吸収体保持部123に接していてもよい。
【0044】
(3)上述した実施形態において、飛翔体はガス気球であるものとしたが、飛翔体の種類はガス気球に限られず、熱気球や飛行船等の他の種類の飛行体であってもよい。
【0045】
(4)上述した実施形態において、熱吸収体124は熱を吸収して気体になる液体であるものとしたが、熱吸収体124が熱を吸収して液体になる固体であってもよい。その場合、気化熱を吸収して固体から液体になった熱吸収体124が、さらに気化熱を吸収して気体になってもよい。
【0046】
熱吸収体124が熱を吸収して液体になり、その後は気体にならない場合、熱吸収体保持部123は開口部Oを備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…飛翔体、11…球皮、12…容器、13…吊索、121…容器本体、122…空気、123…熱吸収体保持部、124…熱吸収体、125…熱伝導部、126…弁、127…弁制御部、128…温度計、129…ヒートシンク、1211…光透過板。
【要約】
【課題】高高度を飛翔する飛翔体が備える気密な容器内で発生する熱を外部に排出可能とする手段を提供する。
【解決手段】容器12はガス気球のキャビンであり、搭乗員H1を収容し空気122の充填された気密な容器である容器本体121と、容器本体121の内側を覆うとともに一部が熱吸収体保持部123に接しているアルミ等の熱伝導率の高い素材で作られた熱伝導部125と、容器本体121の外に配置されアルミ等の熱伝導率の高い素材で作られた容器である熱吸収体保持部123と、熱吸収体保持部123に収容された熱吸収体124を備える。搭乗員H1が発した熱は、直接、又は空気122を介して熱伝導部125に移動し、その後、熱吸収体保持部123へと移動して、熱吸収体124が液体から気体へと変化する際に吸収される気化熱となる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5