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特許7031924RFIDタグのリーダライタ用のスロットアンテナ、および、RFIDタグ用リーダライタ装置
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  • 特許-RFIDタグのリーダライタ用のスロットアンテナ、および、RFIDタグ用リーダライタ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】RFIDタグのリーダライタ用のスロットアンテナ、および、RFIDタグ用リーダライタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/10 20060101AFI20220301BHJP
   H01Q 11/08 20060101ALI20220301BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
H01Q13/10
H01Q11/08
G06K7/10 236
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021527909
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2020039832
(87)【国際公開番号】W WO2021145044
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2020005758
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514174213
【氏名又は名称】株式会社フェニックスソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉村 詩朗
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-533454(JP,A)
【文献】特開2008-028872(JP,A)
【文献】特開2008-236046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/10
H01Q 11/08
G06K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アンテナ基板と、
前記第1アンテナ基板に設けられ、スパイラル状のスリットを有するスロット形成用第1電極と、
前記スロット形成用第1電極のスリットの内部に設けられ、前記スロット形成用第1電極と所定の間隔を有するスパイラル状のスロット形成用第2電極と、
前記第1アンテナ基板に対向する第2アンテナ基板と、
前記第2アンテナ基板に設けられる第3電極と、
前記スロット形成用第2電極と前記第3電極との間に給電する給電線と、を備える、
RFIDタグのリーダライタ用のスロットアンテナ。
【請求項2】
前記スロット形成用第1電極のスリットの電気長が、通信周波数の波長をλとして、λ/2であり、前記スロット形成用第2電極の電気長がλ/4である、請求項1に記載のスロットアンテナ。
【請求項3】
前記スロット形成用第2電極の長手方向の一方の端部は、前記スロット形成用第1電極のスリットの長手方向の一方の端部と前記所定の間隔となるように配置される、請求項2に記載のスロットアンテナ。
【請求項4】
さらに、前記第3電極の、前記スロット形成用第2電極に対応する位置に金属のナットが固定され、前記スロット形成用第2電極に向けて金属のボルトが挿入されて、前記スロット形成用第2電極と前記第3電極との間に可変キャパシタが形成される、請求項1から3のいずれか1項に記載のスロットアンテナ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のスロットアンテナと、
前記給電線に接続されたリーダライタと、を備え、
前記第1アンテナ基板に対向する位置で、前記第2アンテナ基板と反対の方向に配置されるRFIDタグと通信する、RFIDタグ用リーダライタ装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグのリーダライタ用のスロットアンテナ、および、スロットアンテナを用いたRFIDタグ用リーダライタ装置に関する。
【0002】
例えば、特許文献1(特開2004-199226号公報)には、交信不可能エリアを減少させ、タグとの安定した交信を行うことができ、かつ、アンテナ近傍に設置される機器への影響を抑制することができるリーダ/ライタアンテナ及び該アンテナを備えたRFIDシステムについて開示されている。
特許文献1(特開2004-199226号公報)記載のリーダ/ライタアンテナ及び該アンテナを備えたRFIDシステムは、複数のループアンテナにより構成されるリーダ/ライタアンテナにおいて、前記複数のループアンテナの各々は、他の少なくとも一つのループアンテナと相隣り合うように配置され、少なくとも相隣り合う2つのループアンテナに供給される電流の位相が相異なるものである。
【0003】
また、特許文献2(特開2009-159240号公報)には、ラベルプリンタなどの筐体内にて無線ICタグとの双方向通信を行う際に、同時に所定の1つの無線ICタグとアンテナとの間のみで確実な無線通信を実施することのできる、筐体組み込み用のアンテナと、それを用いたラベルプリンタについて開示されている。
特許文献2(特開2009-159240号公報)の筐体組み込み用アンテナは、双方向の無線通信により、無線ICタグの記憶領域に格納された情報の読み出しおよび書き込みを非接触にて行うRFIDリーダライタに接続される、筐体内に配置されたアンテナであって、前記アンテナがホーンアンテナであり、前記ホーンアンテナが、給電素子と、ホーン形状を有する金属体と、前記金属体のホーン形状の内部に充填された誘電体とを含むことを特徴とするものである。
【0004】
また、特許文献3(特開2009-273011号公報)には、コストの増大や筐体サイズの大型化や信頼性の低下を招くことなく、利得や指向性を適切に制御する携帯型RFIDリーダライタについて開示されている。
特許文献3(特開2009-273011号公報)の携帯型RFIDリーダライタは、筐体にRFタグとの間で電波を送受信するダイポールアンテナが設けられている携帯型RFIDリーダライタであって、 前記筐体に、前記ダイポールアンテナのエレメントに対して八木アンテナの導波器を形成する位置及び前記ダイポールアンテナのエレメントに対して八木アンテナの反射器を形成する位置のうち少なくともいずれかに無給電素子を着脱可能な着脱機構が設けられていることを特徴とするものである。
【0005】
さらに、特許文献4(特開2019-161490号公報)には、RFIDタグ等の小型の通信端末に適用可能なキャビティスロットアンテナを実現し、小型化及び高性能化について開示されている。
特許文献4(特開2019-161490号公報)記載のアンテナ装置は、 グランド導体を有する基板と、前記グランド導体と略平行に空気層又は誘電体層を介して配置され、少なくとも一部が屈折した閉多角形状のスロットを有する平板状のアンテナ導体と、前記アンテナ導体と前記グランド導体とを接続する複数の短絡導体と、前記複数の短絡導体のうちのいずれかの短絡導体の近傍に配置され、前記アンテナ導体に給電する給電導体と、を有し、使用する周波数の波長をλとしたとき、前記スロットの外周の長さは略1λ~2λ、前記スロットの幅は0.005λ~0.05λであり、前記複数の短絡導体の間隔はλ/2以下であり、前記アンテナ導体と前記グランド導体との間の距離は、0.005λ~0.05λである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-199226号公報
【文献】特開2009-159240号公報
【文献】特開2009-273011号公報
【文献】特開2019-161490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
RFIDタグ用リーダライタは、複数のRFIDタグが周囲に存在する環境において、そのうちの1つ、または一部のRFIDタグと通信し、他のRFIDタグとは通信しないことが必要な場合がある。
例えば、RFIDタグの製造ラインにおいて、RFIDタグをベルトコンベア等を用いて流れ作業で検査、およびエンコード、デコードをする場合には、対象となるRFIDタグの前後に対象外のRFIDタグが存在している。この場合、対象となるRFIDタグの前後に存在する対象外のRFIDタグの影響を受けることなく対象となるRFIDタグと通信を行う必要がある。しかし、従来の、リーダライタ用アンテナではRFIDタグの前後に存在する対象外のRFIDタグの影響を受けるため、RFIDタグの検査を正確に、かつ効率的に行うことができなかった。
【0008】
また、最近、商品に付されたRFIDタグを読み取ることにより、店舗における会計を自動化するシステムが使われはじめているが、この会計システムにおいては、リーダライタは、商品を収納する筐体の中にある商品に付されたRFIDタグのみと通信する必要がある。
しかし、従来のリーダライタでは、筐体および/または筐体を閉じるふたをシールドしなければ、筐体の外にある商品に付されたRFIDタグとも通信してしまうとの課題があった。
【0009】
特許文献1に記載のリーダ/ライタアンテナは複数のループアンテナを備え、かつ、それらのループアンテナの間の位相を調整する必要があり、アンテナおよび周辺回路の構成が複雑になるとの課題がある。
また、特許文献2に記載の筐体組み込み用アンテナではホーン形状を有する金属体を備える必要があり、やはり構成が複雑になる。
また、引用文献3に記載の携帯型RFIDリーダライタの場合も、八木アンテナの導波器および/または八木アンテナの反射器を備える必要があり、やはり構成が複雑になる。
【0010】
一方、特許文献4に記載のアンテナ装置は、少なくとも一部が屈折した閉多角形状のスロットを有する平板状のアンテナ導体を備えることによって、スロットの形成されている面に垂直な方向(+Z方向)に指向性を持たせたものであるが、図3図7図8等に記載されているように、X方向ではφ方向の回転を持つ電波の指向性が比較的大きく、またY方向ではθ方向の回転を持つ電波の指向性が比較的大きいとの課題がある。
【0011】
本発明の目的は、水平面上で離れた位置にあるRFIDタグの影響を防ぐために、水平面の放射利得と水平波の放射とを抑え、垂直波をアンテナ面に垂直な一方向に均一に放射する、RFIDタグのリーダライタ用のスロットアンテナを提供することにある。
本発明の第2の目的は、上記指向性を備えたアンテナと、アンテナに接続されたリーダライタとを備え、アンテナ面に垂直な方向にRFIDタグを配置することによって、近傍にある別のRFIDの影響を防ぐことのできるRFIDタグ用リーダライタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)
一局面に従うスロットアンテナは、RFIDタグのリーダライタ用のスロットアンテナであって、第1アンテナ基板と、第1アンテナ基板に設けられ、スパイラル状のスリットを有するスロット形成用第1電極と、スロット形成用第1電極のスリットの内部に設けられ、スロット形成用第1電極と所定の間隔を有するスパイラル状のスロット形成用第2電極と、第1アンテナ基板に対向する第2アンテナ基板と、第2アンテナ基板に設けられる第3電極と、スロット形成用第2電極と第3電極との間に給電する給電線と、を備える。
【0013】
この場合、スロット形成用第1電極とスロット形成用第2電極の間のスリットをスロットとするキャビティ付きのスロットアンテナが形成される。通常、スロットアンテナのスリットは直線形状であるが、一局面に従うスロットアンテナでは、スロット形成用第1電極とスロット形成用第2電極との間のスリットがスパイラル状になっている。
キャビティ付きで直線形状のスロットアンテナの場合、スロットの長手方向に直交する面内においてθ方向の放射電波(垂直波)が大きく、スロットの長手方向は放射電波が小さい傾向がある。したがって、キャビティ付きで直線形状のスロットアンテナを用いたリーダライタ装置はスロットの長手方向に対して垂直な方向にRFIDタグが存在する場合、このRFIDタグの影響を受ける。
これに対して、一局面に従うスロットアンテナでは、スロット形成用第1電極とスロット形成用第2電極との間のスリットをスパイラル状とすることによって、スリットの長手方向が一定の方向に固定されず、その結果、水平面方向の放射利得と水平波の放射とを抑え、垂直波を第1アンテナ面に垂直な方向に均一に放射する。そして、一局面に従うスロットアンテナは、第1アンテナ基板に垂直な方向に配置されたRFIDタグに効率よく垂直波のみを与え、水平面上でその他の位置に存在するRFIDタグの影響を受けにくいとの効果を奏する。
なお、第1アンテナ基板と、第2アンテナ基板とは、対向することが好ましく、平行な状態で対向することが、より好ましい。
本明細書において、水平面とは第1アンテナ基板および第2アンテナ基板に平行な面を意味する。
【0014】
(2)
第2の発明にかかるスロットアンテナは、一局面に従うスロットアンテナにおいて、スロット形成用第1電極のスリットの電気長が、通信周波数の波長をλとしてλ/2であり、スロット形成用第2電極の電気長がλ/4であってもよい。
【0015】
この場合、スロットアンテナの共振周波数を通信周波数と合わせることで、アンテナの利得を上げることができ、好ましい。
なお、電気長とは、長さを、物理的な長さではなく電波の遅延時間を基準に表したものであって、本発明の場合、第1アンテナ基板と第2アンテナ基板との間を空気層とした場合は電気長は物理的な長さとほぼ同一であるが、第1アンテナ基板と第2アンテナ基板との間を誘電体層とした場合には電気長は物理的な長さより長くなる。
【0016】
(3)
第3の発明にかかるスロットアンテナは、第2の発明にかかるスロットアンテナにおいて、スロット形成用第2電極の長手方向の一方の端部が、スロット形成用第1電極のスリットの長手方向の一方の端部と所定の間隔となるように配置されてもよい。
【0017】
この場合、スロット形成用第2電極をスロット形成用第1電極のスリットの端部に寄せることにより、それぞれ、スロット形成用第2電極とスロット形成用第1電極との間のスリットの長さをλ/4、スロット形成用第1電極単独のスリットの長さをλ/4とすることにより、アンテナの利得を上げることができて、好ましい。
【0018】
(4)
第4の発明にかかるスロットアンテナは、一局面から第3の発明にかかるスロットアンテナにおいて、さらに、第3電極の、スロット形成用第2電極に対応する位置に金属のナットが固定され、スロット形成用第2電極に向けて金属のボルトが挿入されて、スロット形成用第2電極と第3電極との間に可変キャパシタが形成されてもよい。
【0019】
この場合、スロット形成用第2電極と第3電極との間にキャパシタを形成し、キャパシタの容量値を調整することで、スロットアンテナの共振周波数を微調することができる。
【0020】
(5)
他の局面にかかるRFIDタグ用リーダライタ装置は、一局面から第4の発明にかかるスロットアンテナと、スロットアンテナの給電線に接続されたリーダライタとを備え、第1アンテナ基板に対向する位置で、前記第2アンテナ基板と反対の方向に配置されるRFIDタグと通信する。
【0021】
この場合、スロットアンテナは水平面方向の放射利得と水平波の放射を抑え、垂直波をアンテナ面に垂直な方向に均一に放射することから、RFIDタグ用リーダライタ装置は、第1アンテナ基板に対向する位置で、前記第2アンテナ基板と反対の方向に配置されるRFIDタグと効率よく通信することができ、水平面上でその他の位置に存在するRFIDタグの影響を受けにくい。
そして、RFIDタグ用リーダライタ装置をRFIDタグの検査、およびエンコード、デコードに用いた場合、正確でかつ効率よく、RFIDタグの検査、およびエンコード、デコードを行うことができる。
また、商品に付されたRFIDタグを読み取ることにより、店舗における会計を自動化するシステムにこのリーダライタ装置を用いた場合には、スロットアンテナの上方向に配置されたRFIDタグとのみ通信することができ、他の商品に付されたRFIDタグの影響を避けるための筐体などのシールドを不要とする、または簡易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】スロットアンテナを水平方向から見た模式的図面である。
図2】第1アンテナ基板を第2アンテナ基板の方向から見た模式的図面である。
図3】第2アンテナ基板を第1アンテナ基板と反対の方向から見た模式的図面である。
図4】スロットアンテナのYZ面内の指向性の測定結果を示すグラフである。
図5】スロットアンテナの水平方向の指向性を示す模式的説明図である。
図6】リーダライタ装置とRFIDタグからなるシステムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0024】
[第1の実施形態]
図1はスロットアンテナ150を水平方向から見たときの模式的図面であり、図2は第1アンテナ基板10を第2アンテナ基板50の方向から見た模式的図面であり、図3は第2アンテナ基板50を第1アンテナ基板10と反対の方向から見た模式的図面である。なお、水平方向とは、第1アンテナ基板10および第2アンテナ基板50と平行な方向を意味する。
【0025】
スロットアンテナ150は、第1アンテナ基板10と第2アンテナ基板50とを備える。第1アンテナ基板10の第2アンテナ基板50側の面には、スパイラル状のスリットを有するスロット形成用第1電極20と、スロット形成用第1電極20のスリットの内部に設けられ、スロット形成用第1電極20と所定の間隔を有するスパイラル状のスロット形成用第2電極30とを備える。第2アンテナ基板50の第1アンテナ基板10と反対側の面には、第3電極55を備える。
第1アンテナ基板10と第2アンテナ基板50とは、例えば、通常のガラスエポキシ基板(FR-4)を使用することができる。また、スロット形成用第1電極20、スロット形成用第2電極30、および第3電極55は、例えば、銅などの金属をメッキし、エッチングすることで形成することができる。
【0026】
第2アンテナ基板50の端部にはSMCコネクタ80が配置され、SMCコネクタ80のGND側は第3電極55に接続され、信号側はストリップライン70(図3参照)、給電線40を経由してスロット形成用第2電極30に接続される。
第1アンテナ基板10と第2アンテナ基板50は固定用ボルト90、固定用ナット100、およびスペーサ110で互いにほぼ平行になるように固定されている。第1アンテナ基板10と第2アンテナ基板50の間は本実施形態では空気層であるが、第1アンテナ基板10と第2アンテナ基板50の間に誘電体層を挟んだ構造としてもよい。
スロットアンテナ150は、スロット形成用第1電極20とスロット形成用第2電極30の間のスリットをスロットとするキャビティ付きのスロットアンテナである。
【0027】
スロット形成用第1電極20のスリットの長さは、スロットアンテナ150の通信周波数の波長をλとして、電気長λ/2とするのが好ましい。また、スロット形成用第2電極30の長さは電気長λ/4とするのが好ましい。これは、スリットおよびスロットの長さをこのように設定することによって、スロットアンテナ150の共振周波数を通信周波数と一致させることができるからである。また、本実施形態ではスロット形成用第1電極20のスリットの幅は、約0.016λ、スロット形成用第2電極30の幅は、約0.003λである。
なお、電気長とは、長さを、物理的な長さではなく電波の遅延時間を基準に表したものである。本発明の場合、第1アンテナ基板10と第2アンテナ基板50との間を空気層とした場合は電気長は物理的な長さとほぼ同一であるが、第1アンテナ基板10と第2アンテナ基板50との間を誘電体層とした場合には電気長は物理的な長さより長くなる。
スロット形成用第2電極30は図2に示したように、スロット形成用第1電極20のスリットの中心側の端部付近からスロット形成用第1電極20と所定の間隔を保持してスパイラル状に形成されている。したがって、スロット形成用第1電極20のスリットの反対側の端部付近にはスロット形成用第2電極30は存在しない。また、所定の間隔は本実施形態では約0.06λである。
なお、スロット形成用第1電極20のスリットの幅は、0.015λから0.022λの範囲、スロット形成用第2電極30の幅は、0.002λから0.003λの範囲であることが好ましい。
【0028】
図1から図3に示すように、第2アンテナ基板50には第3電極55に接続された導電性のナット65が固定され、導電性のボルト60が差し込まれている。さらにボルト60は第1アンテナ基板10の近傍まで伸びて、スロット形成用第2電極30の直上に位置している(図1図2参照)。したがって、ボルト60とスロット形成用第2電極30とはキャパシタを構成し、ボルト60を回し、ボルト60とスロット形成用第2電極30との間隔を調整することによって、スロット形成用第2電極30とボルト60(すなわち第3電極55)との間の容量値を調整することができる。そして、スロット形成用第2電極30とボルト60(すなわち第3電極55)との間の容量値を調整することによって、スロットアンテナ150の共振周波数を微調することができる。
【0029】
図4にスロットアンテナ150の垂直波の垂直面での指向性の測定結果のグラフを示す。図4においては、第1アンテナ基板10に垂直で、第2アンテナ基板50と反対の方向を+Z軸とし、+Z軸からの角度をθとしている。スロットアンテナ150は+Z軸方向において電波の強度が最大となり、θ=30度で-1dB、θ=60度で-5dB、θ=90度(±Y軸方向)では-14dB以上減衰している。
したがって、例えばRFIDタグをベルトコンベア等を用いて流れ作業で検査、およびエンコード、デコードをする場合、+Z軸方向(スロットアンテナ150の真上)にRFIDタグを置くことにより、対象のRFIDタグ120とは良好な通信特性を示し、対象でないRFIDタグ(例えばθ=60度方向にあるRFIDタグ)に対しては、その影響を最小限とすることができる。
【0030】
図5は、スロットアンテナ150の垂直波の水平面方向での指向性を示す模式的説明図である。図5では+Z軸との角度θ=0度(+Z軸方向)、30度、60度、90度(XY平面)の方向の電波の強度がXY平面内の方向によってどのように変化するかを示している。
従来のキャビティ付きのスロットアンテナでは、直線状のスリットが形成されており、スロットの長手方向に直交する面内においてθ方向の放射電波(垂直波)が大きく、スロットの長手方向は放射電波が小さい傾向がある。この場合、スロットアンテナは、水平面方向で、スロットの長手方向に直交する方向に位置するRFIDタグの影響を受けることになる。
これに対して、本発明のスパイラル状のスリットを備えたスロットアンテナ150では、電界が印加されるスリットの向きがスパイラルの中心から放射線状に形成されており、このため、図5に示すように、XY平面内の方向による指向性はほとんどなく、すべての方向において+Z軸との角度θが小さい方が電波の強度が大きく、θが大きくなると電波の強度が小さくなっている。
したがって、本発明のスパイラル状のスリットを備えたスロットアンテナ150では通信相手のRFIDタグ120をスロットアンテナ150の上方向に配置することにより、RFIDタグ120に対して水平方向にあるRFIDタグの影響を受けることなく、通信相手のRFIDタグ120に効率よく垂直波のみを与えることができる。
【0031】
[第2の実施形態]
図6に、第2の実施形態のリーダライタ装置160とRFIDタグ120とからなるシステムの構成図を示す。
リーダライタ装置160はリーダライタ140とスロットアンテナ150とから構成され、RFIDタグアンテナ125を備えたRFIDタグ120と通信する。そして、第2の実施形態のリーダライタ装置160ではRFIDタグ120をスロットアンテナ150の上方向に配置することにより水平方向にあるRFIDタグの影響を受けることなく、通信相手のRFIDタグ120に効率よく垂直波のみを与えることができる。
例えば、RFIDタグを、ベルトコンベア等を用いて流れ作業で検査、およびエンコード、デコードをする場合には、対象となるRFIDタグ120の前後に対象外のRFIDタグが存在している。そして、RFIDタグ検査用のリーダライタ装置160は、対象外のRFIDタグの影響を受けることなく、対象となるRFIDタグ120と通信できることが必要である。
このような場合に、本願発明のスロットアンテナ150を備えたリーダライタ装置160を用いることで、対象外のRFIDタグの影響を受けることなく、対象となるRFIDタグ120と通信することができる。
【0032】
また、最近、商品に付されたRFIDタグを読み取ることにより、店舗における会計を自動化するシステムが使われはじめている。この会計システムにおいては、商品を収納する筐体の中にある商品に付されたRFIDタグのみと通信する必要がある。しかし、商品に付されたRFIDタグを読み取るリーダライタ装置の近辺には、別の商品に付されたRFIDタグが存在しており、従来のリーダライタでは、筐体および/またはふたをシールドすることにより、筐体の外にある商品に付されたRFIDタグとの通信を妨害することが必要であった。
これに対して、本願発明のスロットアンテナ150を用いたリーダライタ装置160ではスロットアンテナ150の上方向に配置されたRFIDタグ120とのみ通信することができるため、筐体および/または筐体を閉じるふたのシールドをなくする、またはより簡易なものにすることができる。
【0033】
本発明において、第1アンテナ基板10が『第1アンテナ基板』に相当し、スロット形成用第1電極20が『スロット形成用第1電極』に相当し、スロット形成用第2電極30が『スロット形成用第2電極』に相当し、第2アンテナ基板50が『第2アンテナ基板』に相当し、第3電極55が『第3電極』に相当し、給電線40が『給電線』に相当し、RFIDタグ120が『RFIDタグ』に相当し、リーダライタ140が『リーダライタ』に相当し、スロットアンテナ150が『スロットアンテナ』に相当し、可変キャパシタ用のボルト60が『ボルト』に相当し、可変キャパシタ用のナット65が『ナット』に相当し、リーダライタ装置160が『RFIDタグ用リーダライタ装置』に相当する。
【0034】
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0035】
10 第1アンテナ基板
20 スロット形成用第1電極
30 スロット形成用第2電極
40 給電線
50 第2アンテナ基板
55 第3電極
60 可変キャパシタ用ボルト
65 可変キャパシタ用ナット
70 ストリップライン
80 SMCコネクタ
90 固定用ボルト
100 固定用ナット
110 スペーサ
120 RFIDタグ
125 RFIDタグアンテナ
130 電波の放射方向
140 リーダライタ
150 スロットアンテナ
160 リーダライタ装置


図1
図2
図3
図4
図5
図6