(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】位置選択装置、位置選択方法、及び位置選択プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220301BHJP
【FI】
G05D1/02 S
(21)【出願番号】P 2018142823
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2020-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】巻渕 有哉
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-019920(JP,A)
【文献】特許第5687035(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定エリアに存在する障害物の形状に対応する障害物領域と、前記障害物領域の前記所定エリアにおける位置とを特定する障害物領域特定部と、
前記所定エリアを移動する複数のオブジェクトの第1時刻以前の位置を特定するオブジェクト位置特定部と、
前記第1時刻よりも後の時刻である第2時刻における前記複数のオブジェクトそれぞれに対応する複数の検出位置の候補である複数の候補位置を特定する検出位置特定部と、
特定した前記第1時刻以前の前記複数のオブジェクトの位置のそれぞれに対し、当該オブジェクトの位置と、特定した前記複数の候補位置と、特定した前記障害物領域の位置との位置関係に基づいて、当該オブジェクトが、前記複数の候補位置のそれぞれに移動するときの困難さを示す移動妨害度を特定することにより、前記複数のオブジェクトのそれぞれが前記複数の候補位置のそれぞれに移動するときの前記移動妨害度を特定する移動妨害度特定部と、
前記オブジェクト位置特定部が特定した前記第1時刻以前の前記複数のオブジェクトそれぞれの位置から、前記複数の候補位置のそれぞれに移動したときの前記移動妨害度に基づく移動コストを示すコスト値を要素とするコスト行列を生成し、生成した前記コスト行列に
ハンガリアン法を適用することにより、前記第1時刻以前の前記複数のオブジェクトそれぞれの位置から前記複数の候補位置のいずれかに移動した場合の前記コスト値の総和が相対的に小さい、前記オブジェクトと前記候補位置との複数の組み合わせを前記候補位置が重複しないように特定し、特定した前記組み合わせが示す前記複数のオブジェクトそれぞれに対応する前記候補位置を、前記第2時刻における前記複数のオブジェクトそれぞれの位置に選択する選択部と、
を備える位置選択装置。
【請求項2】
前記オブジェクト位置特定部は、前記オブジェクトの前記第1時刻以前の位置に基づいて、前記オブジェクトの前記第2時刻における位置である第1オブジェクト位置を予測し、
前記移動妨害度特定部は、前記オブジェクトに対して予測した前記第1オブジェクト位置と、前記オブジェクトに対して特定した前記複数の候補位置と、特定した前記障害物領域の位置との位置関係に基づいて、前記オブジェクトに対応する前記移動妨害度を特定する、
請求項1に記載の位置選択装置。
【請求項3】
前記オブジェクト位置特定部は、前記オブジェクトの第1時刻における位置を第1オブジェクト位置として特定し、
前記移動妨害度特定部は、前記オブジェクトに対して特定した前記第1オブジェクト位置と、特定した前記複数の候補位置と、特定した前記障害物領域の位置との位置関係に基づいて、前記オブジェクトに対応する前記移動妨害度を特定する、
請求項1に記載の位置選択装置。
【請求項4】
前記移動妨害度特定部は、前記オブジェクトに対応する前記第1オブジェクト位置と、特定した前記複数の候補位置のそれぞれとを結ぶ線分を特定し、当該線分と特定した前記障害物領域との位置関係に基づいて、前記オブジェクトに対して、特定した前記複数の候補位置のそれぞれに対応する前記移動妨害度を特定する、
請求項2又は3に記載の位置選択装置。
【請求項5】
前記移動妨害度特定部は、特定した複数の前記線分のそれぞれについて、当該線分と特定した前記障害物領域との2つの交点を特定し、特定した2つの交点と、当該障害物領域との関係に基づいて、前記オブジェクトに対応する前記移動妨害度を特定する、
請求項4に記載の位置選択装置。
【請求項6】
前記移動妨害度特定部は、特定した2つの交点により分断される前記障害物領域の2つの輪郭線のうち、相対的に短い輪郭線の長さに基づいて前記移動妨害度を特定する、
請求項5に記載の位置選択装置。
【請求項7】
前記移動妨害度特定部は、特定した複数の前記線分のそれぞれについて、当該線分と特定した前記障害物領域との交点が3つ以上存在する場合に、3つの交点の中から取り得る2つの交点のうち、相対的に距離が長い2つの交点を特定する、
請求項5又は6に記載の位置選択装置。
【請求項8】
前記移動妨害度特定部は、特定した2つの交点を結ぶ線分の長さに対する、特定した2つの交点により分断される前記障害物領域の輪郭線の長さの比率に基づいて前記移動妨害度を特定する、
請求項5から7のいずれか1項に記載の位置選択装置。
【請求項9】
前記移動妨害度特定部は、特定した2つの交点のそれぞれと、特定した前記障害物領域の基準点と結ぶ二本の線分のなす角度を特定し、当該角度に基づいて前記移動妨害度を特定する、
請求項5から8のいずれか1項に記載の位置選択装置。
【請求項10】
前記移動妨害度特定部は、特定した前記障害物領域を構成する辺のうち、特定した2つの交点のいずれかが存在する2辺を特定し、当該2辺の間に存在する2つの辺群のうち、相対的に辺の数が少ない辺群に含まれる辺の数に基づいて前記移動妨害度を特定する、
請求項5から9のいずれか1項に記載の位置選択装置。
【請求項11】
前記移動妨害度特定部は、特定した線分との交点が存在する前記障害物領域が複数存在する場合に、当該複数の障害物領域を1つの障害物領域に近似する、
請求項5から10のいずれか1項に記載の位置選択装置。
【請求項12】
前記オブジェクト位置特定部は、前記第1オブジェクト位置が前記障害物領域内に存在する場合に、当該第1オブジェクト位置を前記障害物領域外の位置に修正する、
請求項2から11のいずれか1項に記載の位置選択装置。
【請求項13】
前記障害物領域特定部は、前記障害物の形状が非凸形状の場合に、当該障害物に対応する障害物領域を、凸形状の障害物領域に近似する、
請求項1から12のいずれか1項に記載の位置選択装置。
【請求項14】
前記障害物領域特定部は、前記障害物領域を複数特定した場合において、特定した複数の障害物領域が隣接又は重複している場合に、当該複数の障害物領域を、当該複数の障害物領域の和領域に近似する、
請求項1から13のいずれか1項に記載の位置選択装置。
【請求項15】
前記検出位置特定部は、特定した前記候補位置が前記障害物領域内に存在する場合に、当該候補位置を前記障害物領域外の位置に修正する、
請求項1から14のいずれか1項に記載の位置選択装置。
【請求項16】
前記選択部は、特定した前記第1時刻以前の位置に対応するオブジェクトと、特定した前記複数の候補位置のそれぞれに対応するオブジェクトとの所定の対応関係における類似度を特定し、当該類似度と、特定した前記移動妨害度とに基づいて、前記第1時刻以前の位置から前記複数の候補位置のそれぞれへの移動コストを特定する、
請求項1から15のいずれか1項に記載の位置選択装置。
【請求項17】
前記選択部は、相対的に小さい前記移動コストが第1の閾値を超える場合に、前記候補位置を選択しないように制御する、
請求項1から16のいずれか1項に記載の位置選択装置。
【請求項18】
前記選択部は、特定した前記移動妨害度が第2の閾値を超える前記候補位置について、前記移動コストを前記第1の閾値を超える値に設定する、
請求項17に記載の位置選択装置。
【請求項19】
前記オブジェクトの前記第1時刻における位置と、前記選択部が選択した前記オブジェクトの前記候補位置とを関連付けることにより、前記オブジェクトの移動動線を生成する動線生成部をさらに備える、
請求項1から18のいずれか1項に記載の位置選択装置。
【請求項20】
コンピュータが実行する、
所定エリアに存在する障害物の形状に対応する障害物領域と、前記障害物領域の前記所定エリアにおける位置とを特定するステップと、
前記所定エリアを移動する複数のオブジェクトの第1時刻以前の位置を特定するステップと、
前記第1時刻よりも後の時刻である第2時刻における前記複数のオブジェクトそれぞれに対応する複数の検出位置の候補である複数の候補位置を特定するステップと、
特定した前記第1時刻以前の前記複数のオブジェクトの位置のそれぞれに対し、当該オブジェクトの位置と、特定した前記複数の候補位置と、特定した前記障害物領域の位置との位置関係に基づいて、当該オブジェクトが、前記複数の候補位置のそれぞれに移動するときの困難さを示す移動妨害度を特定することにより、前記複数のオブジェクトのそれぞれが前記複数の候補位置のそれぞれに移動するときの前記移動妨害度を特定するステップと、
特定された前記第1時刻以前の前記複数のオブジェクトそれぞれの位置から、前記複数の候補位置のそれぞれに移動したときの前記移動妨害度に基づく移動コストを示すコスト値を要素とするコスト行列を生成するステップと、
生成された前記コスト行列に
ハンガリアン法を適用することにより、前記第1時刻以前の前記複数のオブジェクトそれぞれの位置から前記複数の候補位置のいずれかに移動した場合の前記コスト値の総和が相対的に小さい、前記オブジェクトと前記候補位置との複数の組み合わせを前記候補位置が重複しないように特定し、特定した前記組み合わせが示す前記複数のオブジェクトそれぞれに対応する前記候補位置を、前記第2時刻における前記複数のオブジェクトそれぞれの位置に選択するステップと、
を備える位置選択方法。
【請求項21】
コンピュータを、
所定エリアに存在する障害物の形状に対応する障害物領域と、前記障害物領域の前記所定エリアにおける位置とを特定する障害物領域特定部、
前記所定エリアを移動する複数のオブジェクトの第1時刻以前の位置を特定するオブジェクト位置特定部、
前記第1時刻よりも後の時刻である第2時刻における前記複数のオブジェクトそれぞれに対応する複数の検出位置の候補である複数の候補位置を特定する検出位置特定部、
特定した前記第1時刻以前の前記複数のオブジェクトの位置のそれぞれに対し、当該オブジェクトの位置と、特定した前記複数の候補位置と、特定した前記障害物領域の位置との位置関係に基づいて、当該オブジェクトが、前記複数の候補位置のそれぞれに移動するときの困難さを示す移動妨害度を特定することにより、前記複数のオブジェクトのそれぞれが前記複数の候補位置のそれぞれに移動するときの前記移動妨害度を特定する移動妨害度特定部、及び、
前記オブジェクト位置特定部が特定した前記第1時刻以前の前記複数のオブジェクトそれぞれの位置から、前記複数の候補位置のそれぞれに移動したときの前記移動妨害度に基づく移動コストを示すコスト値を要素とするコスト行列を生成し、生成した前記コスト行列に
ハンガリアン法を適用することにより、前記第1時刻以前の前記複数のオブジェクトそれぞれの位置から前記複数の候補位置のいずれかに移動した場合の前記コスト値の総和が相対的に小さい、前記オブジェクトと前記候補位置との複数の組み合わせを前記候補位置が重複しないように特定し、特定した前記組み合わせが示す前記複数のオブジェクトそれぞれに対応する前記候補位置を、前記第2時刻における前記複数のオブジェクトそれぞれの位置に選択する選択部、
として機能させる位置選択プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクトの位置を選択する位置選択装置、位置選択方法、及び位置選択プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マーケティングや監視等を目的として、店舗内等の所定エリアに滞在する人物等のオブジェクトを追跡することが行われている。所定エリア内に人物の移動を妨げる壁や什器等の障害物が存在する場合、障害物上を移動しない移動動線を生成することが期待される。また、障害物の位置が事前に得られている場合は、オブジェクトを高精度に追跡することが可能となる。
【0003】
例えば、特許文献1においては、パーティクルフィルタを利用してオブジェクトを追跡する際に、各パーティクルの予測位置が障害物領域上に存在する場合に、オブジェクトの予測位置を障害物領域以外の位置に修正する方式が開示されている。また、特許文献2においては、各パーティクルの予測位置に障害物の高さに応じたペナルティを付与することで、各パーティクルの障害物上の存在確度を低くする方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5687035号公報
【文献】特許5552069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、オブジェクト追跡を実現するには、カルマンフィルタやパーティクルフィルタ等の近似フィルタを用いるのが主流であった。近年、機械学習や深層学習技術(例えば、Support Vector MachineやConvolutional Neural Network)の発展に伴い、所定エリアを撮像した画像からオブジェクトを高精度に追跡する方式として、Tracking-by-Detection方式が注目を浴びている。Tracking-by-Detection方式は、オブジェクト検出器(Detection)を用いて各時刻で撮像した画像中のオブジェクトの位置を検出し、同一オブジェクト判定器(Re-Identification)を用いて各時刻で検出したオブジェクトを対応付けることにより、オブジェクトの追跡(Tracking)を実現する。
【0006】
図15は、障害物領域が存在する所定エリア内でTracking-by-Detection方式によりオブジェクトを追跡する場合の例を示す図である。ここで、障害物領域の位置は事前に既知であるものとする。
【0007】
時刻t-1までのオブジェクトの追跡結果は、時刻t-1以前の時刻、例えば、時刻t-4、時刻t-3、時刻t-2におけるオブジェクトの検出結果を時刻t-1におけるオブジェクトの検出結果に対応付けることで生成される。当該オブジェクトを時刻tまで追跡する場合、時刻t-1までの追跡結果を、時刻tにおける検出結果、すなわち検出結果A及び検出結果Bのいずれかに対応付ける問題を解くこととなる。
【0008】
このとき、当該追跡結果に含まれる時刻t-1におけるオブジェクト位置と、時刻tにおける検出結果A及び検出結果Bのオブジェクト位置とを結ぶ線分上には、いずれも障害物領域が存在する。しかしながら、オブジェクトの位置と障害物領域との位置関係上、当該オブジェクトは、時刻tにおいて検出結果Aとして検出されている可能性が高く、当該オブジェクトの追跡結果を検出結果Bよりも検出結果Aに優先的に対応付けることが望ましい。すなわち、追跡結果と検出結果とを時系列上で単に対応付けるだけのTracking-by-Detection方式では、その途中に存在する障害物領域を考慮していないために、追跡結果と検出結果との対応関係を正しく特定することができないという課題がある。
【0009】
これに対して、最短経路を探索する方式としてA*(エースター)アルゴリズムが知られている。
図15中で、追跡結果に含まれる時刻t-1におけるオブジェクト位置を開始点、時刻tにおけるオブジェクト位置(検出結果A、Bのそれぞれ)を終点として、A*アルゴリズムを適用することで、開始点から障害物を回避して終点に到達する迂回路(最短経路)を特定することができる。したがって、時刻t-1におけるオブジェクト位置と、時刻tにおける検出結果A及び検出結果Bのオブジェクト位置との対応関係を特定する際のコスト値として当該迂回路の経路上の長さを用いることで、当該オブジェクトの追跡結果を検出結果Bよりも検出結果Aに優先的に対応付けることが可能となる。
【0010】
しかしながら、A*アルゴリズムは計算量が多いという課題がある。特に、Tracking-by-Detection方式において、複数のオブジェクトを同時に追跡する場合、対応関係を特定するにあたり、(時刻t-1までに追跡中のオブジェクトの数)×(時刻tで検出したオブジェクトの数)の分だけA*アルゴリズムを適用する必要があり、計算量が膨大になるという課題がある。
【0011】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、オブジェクトの対応関係を効率的に特定することができる位置選択装置、位置選択方法、及び位置選択プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様に係る位置選択装置は、所定エリアに存在する障害物の形状に対応する障害物領域と、前記障害物領域の前記所定エリアにおける位置とを特定する障害物領域特定部と、前記所定エリアを移動するオブジェクトの第1時刻以前の位置を特定するオブジェクト位置特定部と、前記第1時刻よりも後の時刻である第2時刻における前記オブジェクトの一以上の検出位置の候補である候補位置を特定する検出位置特定部と、特定した前記第1時刻以前の前記オブジェクトの位置と、特定した一以上の前記候補位置と、特定した前記障害物領域の位置との位置関係に基づいて、前記オブジェクトが一以上の前記候補位置のそれぞれに移動するときの困難さを示す移動妨害度を特定する移動妨害度特定部と、前記オブジェクトの前記第1時刻以前の位置から一以上の前記候補位置のそれぞれへの移動コストを前記移動妨害度に基づいて特定し、前記移動コストが相対的に小さい前記候補位置を、前記オブジェクトの前記第2時刻における位置に選択する選択部と、を備える。
【0013】
前記オブジェクト位置特定部は、前記オブジェクトの前記第1時刻以前の位置に基づいて、前記オブジェクトの前記第2時刻における位置である第1オブジェクト位置を予測し、前記移動妨害度特定部は、前記第1オブジェクト位置と、特定した一以上の前記候補位置と、特定した前記障害物領域の位置との位置関係に基づいて、前記移動妨害度を特定してもよい。
【0014】
前記オブジェクト位置特定部は、前記オブジェクトの第1時刻における位置を第1オブジェクト位置として特定し、前記移動妨害度特定部は、前記第1オブジェクト位置と、特定した一以上の前記候補位置と、特定した前記障害物領域の位置との位置関係に基づいて、前記移動妨害度を特定してもよい。
【0015】
前記移動妨害度特定部は、前記第1オブジェクト位置と、特定した一以上の前記候補位置のそれぞれとを結ぶ線分を特定し、当該線分と特定した前記障害物領域との位置関係に基づいて、特定した一以上の前記候補位置のそれぞれに対応する前記移動妨害度を特定してもよい。
【0016】
前記移動妨害度特定部は、特定した一以上の前記線分のそれぞれについて、当該線分と特定した前記障害物領域との2つの交点を特定し、特定した2つの交点と、当該障害物領域との関係に基づいて前記移動妨害度を特定してもよい。
【0017】
前記移動妨害度特定部は、特定した2つの交点により分断される前記障害物領域の2つの輪郭線のうち、相対的に短い輪郭線の長さに基づいて前記移動妨害度を特定してもよい。
前記移動妨害度特定部は、特定した一以上の前記線分のそれぞれについて、当該線分と特定した前記障害物領域との交点が3つ以上存在する場合に、3つの交点の中から取り得る2つの交点のうち、相対的に距離が長い2つの交点を特定してもよい。
【0018】
前記移動妨害度特定部は、特定した2つの交点を結ぶ線分の長さに対する、特定した2つの交点により分断される前記障害物領域の輪郭線の長さの比率に基づいて前記移動妨害度を特定してもよい。
前記移動妨害度特定部は、特定した2つの交点のそれぞれと、特定した前記障害物領域の基準点と結ぶ二本の線分のなす角度を特定し、当該角度に基づいて前記移動妨害度を特定してもよい。
【0019】
前記移動妨害度特定部は、特定した前記障害物領域を構成する辺のうち、特定した2つの交点のいずれかが存在する2辺を特定し、当該2辺の間に存在する2つの辺群のうち、相対的に辺の数が少ない辺群に含まれる辺の数に基づいて前記移動妨害度を特定してもよい。
前記移動妨害度特定部は、特定した線分との交点が存在する前記障害物領域が複数存在する場合に、当該複数の障害物領域を1つの障害物領域に近似してもよい。
【0020】
前記オブジェクト位置特定部は、前記第1オブジェクト位置が前記障害物領域内に存在する場合に、当該第1オブジェクト位置を前記障害物領域外の位置に修正してもよい。
前記障害物領域特定部は、前記障害物の形状が非凸形状の場合に、当該障害物に対応する障害物領域を、凸形状の障害物領域に近似してもよい。
前記障害物領域特定部は、前記障害物領域を複数特定した場合において、特定した複数の障害物領域が隣接又は重複している場合に、当該複数の障害物領域を、当該複数の障害物領域の和領域に近似してもよい。
前記検出位置特定部は、特定した前記候補位置が前記障害物領域内に存在する場合に、当該候補位置を前記障害物領域外の位置に修正してもよい。
【0021】
前記選択部は、特定した前記第1時刻以前の位置に対応するオブジェクトと、特定した一以上の前記候補位置のそれぞれに対応するオブジェクトとの所定の対応関係における類似度を特定し、当該類似度と、特定した前記移動妨害度とに基づいて、前記第1時刻以前の位置から一以上の前記候補位置のそれぞれへの移動コストを特定してもよい。
【0022】
前記選択部は、相対的に小さい前記移動コストが第1の閾値を超える場合に、前記候補位置を選択しないように制御してもよい。
前記選択部は、特定した前記移動妨害度が第2の閾値を超える前記候補位置について、前記移動コストを前記第1の閾値を超える値に設定してもよい。
【0023】
前記位置選択装置は、前記オブジェクトの前記第1時刻における位置と、前記選択部が選択した前記オブジェクトの前記候補位置とを関連付けることにより、前記オブジェクトの移動動線を生成する動線生成部をさらに備えてもよい。
【0024】
本発明の第2の態様に係る位置選択方法は、コンピュータが実行する、所定エリアに存在する障害物の形状に対応する障害物領域と、前記障害物領域の前記所定エリアにおける位置とを特定するステップと、前記所定エリアを移動するオブジェクトの第1時刻以前の位置を特定するステップと、前記第1時刻よりも後の時刻である第2時刻における前記オブジェクトの一以上の検出位置の候補である候補位置を特定するステップと、特定した前記第1時刻以前の前記オブジェクトの位置と、特定した一以上の前記候補位置と、特定した前記障害物領域の位置との位置関係に基づいて、前記オブジェクトが一以上の前記候補位置のそれぞれに移動するときの困難さを示す移動妨害度を特定するステップと、前記オブジェクトの前記第1時刻以前の位置から一以上の前記候補位置のそれぞれへの移動コストを前記移動妨害度に基づいて特定し、前記移動コストが相対的に小さい前記候補位置を、前記オブジェクトの前記第2時刻における位置に選択するステップと、を備える。
【0025】
本発明の第3の態様に係る位置選択プログラムは、コンピュータを、所定エリアに存在する障害物の形状に対応する障害物領域と、前記障害物領域の前記所定エリアにおける位置とを特定する障害物領域特定部、前記所定エリアを移動するオブジェクトの第1時刻以前の位置を特定するオブジェクト位置特定部、前記第1時刻よりも後の時刻である第2時刻における前記オブジェクトの一以上の検出位置の候補である候補位置を特定する検出位置特定部、特定した前記第1時刻以前の前記オブジェクトの位置と、特定した一以上の前記候補位置と、特定した前記障害物領域の位置との位置関係に基づいて、前記オブジェクトが一以上の前記候補位置のそれぞれに移動するときの困難さを示す移動妨害度を特定する移動妨害度特定部、及び、前記オブジェクトの前記第1時刻以前の位置から一以上の前記候補位置のそれぞれへの移動コストを前記移動妨害度に基づいて特定し、前記移動コストが相対的に小さい前記候補位置を、前記オブジェクトの前記第2時刻における位置に選択する選択部、として機能させる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、オブジェクトの対応関係を効率的に特定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態に係る動線生成装置の概要を説明する図である。
【
図2】本実施形態に係る動線生成装置の構成を示す図である。
【
図3】第1時刻におけるオブジェクトの位置及び候補位置が特定された例を示す図である。
【
図4】第1オブジェクト位置と、一以上の候補位置のそれぞれとを結ぶ線分が特定された例を示す図である。
【
図5】第1オブジェクト位置と候補位置とを結ぶ線分と、矩形として特定された障害物領域との交点が特定された例を示す図である。
【
図6】特定した2点の交点により分断される障害物領域の2つの輪郭線の例を示す図である。
【
図7】2つの交点を結ぶ線分の長さに対する輪郭線の長さの比率を算出する例を示す図である。
【
図8】特定した2つの交点のそれぞれと、特定した障害物領域の基準点と結ぶ二本の線分のなす角度を特定する例を示す図である。
【
図9】辺の数に基づいて移動妨害度を特定する例を示す図である。
【
図10】複数の障害物領域を1つの障害物領域に近似する例を示す図である。
【
図11】第1時刻以前のオブジェクトの位置と、候補位置との対応関係を特定した例を示す図である。
【
図12】2つの交点を結ぶ線分の長さに対する輪郭線の長さの比率に基づいて移動妨害度を算出する例を示す図である。
【
図13】第2時刻に対応する確定位置を特定した例を示す図である。
【
図14】本実施形態に係る動線生成装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】障害物領域が存在する所定エリア内でTracking-by-Detection方式によりオブジェクトを追跡する場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[動線生成装置1の概要]
図1は、本実施形態に係る動線生成装置1の概要を説明する図である。動線生成装置1は、所定エリアを移動するオブジェクトの各時刻における位置を示す動線情報を生成するコンピュータであり、オブジェクトの候補位置から、オブジェクトの位置を選択する位置選択装置として機能する。
【0029】
ここで、所定エリアは、例えば店舗のフロアである。所定エリアには、動きを分析する対象の所定のオブジェクトとして、店員等の人物が存在する。なお、以下の説明では、所定のオブジェクトを単にオブジェクトという。
【0030】
動線生成装置1は、所定エリアに存在する障害物の形状に対応する障害物領域と、障害物領域の所定エリアにおける位置とを特定する。動線生成装置1は、所定エリアを移動するオブジェクトの第1時刻以前の位置を特定し、第1時刻よりも後の時刻である第2時刻におけるオブジェクトの一以上の検出位置の候補である候補位置を特定する。
図1では、動線生成装置1が、2つの候補位置P2A及びP2Bを特定した例が示されている。
【0031】
動線生成装置1は、特定した第1時刻以前のオブジェクトの位置と、特定した一以上の候補位置と、特定した障害物領域の位置との位置関係に基づいて、オブジェクトが第1時刻以前における位置から一以上の候補位置のそれぞれに移動するときの困難さを示す移動妨害度を特定する。
図1に示す例では、動線生成装置1は、候補位置P2Aの移動妨害度を、候補位置P2Bの移動妨害度よりも低いものと特定する。
【0032】
そして、動線生成装置1は、第1時刻における位置から一以上の候補位置のそれぞれへの移動コストを移動妨害度に基づいて特定し、移動コストが相対的に小さい候補位置を、オブジェクトの第2時刻における位置に選択する。
図1に示す例では、動線生成装置1は、候補位置P2Aへの移動コストを、候補位置P2Bへの移動コストよりも低く特定し、候補位置P2Aを、オブジェクトの第2時刻における位置として選択する。このようにすることで、動線生成装置1は、A*等の追跡アルゴリズムを使用して第1時刻における位置から複数の候補位置のそれぞれへの最短経路を特定する場合に比べて効率的に候補位置を選択することができる。
【0033】
[動線生成装置1の構成]
続いて、動線生成装置1の構成を説明する。
図2は、本実施形態に係る動線生成装置1の構成を示す図である。
図2に示すように、動線生成装置1は、記憶部11と、制御部12とを備える。
【0034】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を含む記憶媒体である。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶している。例えば、記憶部11は、動線生成装置1を、障害物領域特定部121、オブジェクト位置特定部122、検出位置特定部123、移動妨害度特定部124、選択部125、及び動線生成部126として機能させる、位置選択プログラムとしての動線生成プログラムを記憶している。
【0035】
制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部12は、記憶部11に記憶された動線生成プログラムを実行することにより、障害物領域特定部121、オブジェクト位置特定部122、検出位置特定部123、移動妨害度特定部124、選択部125、及び動線生成部126として機能する。
【0036】
障害物領域特定部121は、所定エリアに存在する障害物の形状に対応する障害物領域と、障害物領域の所定エリアにおける位置とを特定する。例えば、記憶部11には、障害物領域の形状及び障害物領域の所定エリアにおける位置を示す障害物領域情報が一以上記憶されている。障害物領域情報は、例えば、障害物領域の形状を示す多角形の各頂点の、所定エリアにおける位置(グローバル位置)を示す情報である。多角形領域が矩形の場合には、障害物領域情報は、矩形領域の中央位置を示す位置座標と、横幅及び縦幅とを示す情報であってもよい。障害物領域特定部121は、障害物領域情報を参照することにより、障害物領域と、障害物領域の所定エリアにおける位置とを特定する。
【0037】
障害物領域特定部121は、特定した障害物の形状が非凸形状の場合に、当該障害物に対応する障害物領域を、凸形状の障害物領域に近似してもよい。また、障害物領域特定部121は、障害物領域を複数特定した場合において、特定した複数の障害物領域が隣接又は重複している場合に、当該複数の障害物領域を、当該複数の障害物領域の和領域に近似してもよい。ここで、障害物領域特定部121は、壁も障害物として特定してもよい。そして、壁とその他の障害物とが接している場合、障害物領域特定部121は、これらの障害物領域を、これらの障害物領域の和領域である1つの障害物領域に近似してもよい。このようにすることで、動線生成装置1は、障害物領域の形状を単純化することができ、処理負荷を軽減できる。
【0038】
オブジェクト位置特定部122は、所定エリアを移動するオブジェクトの第1時刻以前の位置を特定する。例えば、記憶部11には、所定エリアを移動するオブジェクトの各時刻における位置を示す動線情報が一以上記憶されている。動線情報は、時刻と、当該時刻におけるオブジェクトの所定エリアにおける位置を示す位置情報とを関連付けた時系列情報である。位置情報は、例えば、メートルやセンチメートルを単位とした2次元座標である。
【0039】
なお、動線情報に含まれる位置情報は、所定エリアの位置を示すグローバル位置を特定することが可能な情報であってもよく、例えば、所定エリアを撮像した撮像画像における位置を示すローカル位置情報と、当該位置をグローバル位置に変換するための変換用情報とを含むものであってもよい。ローカル位置情報は、例えば、ピクセルを単位としたオブジェクトの位置を示す2次元座標と、オブジェクトの幅及び高さとから構成される矩形情報である。
【0040】
オブジェクト位置特定部122は、第1時刻までの位置情報を含む一以上の動線情報を特定し、当該動線情報において第1時刻に関連付けられている位置情報を特定することにより、一以上のオブジェクトの第1時刻における位置を特定する。なお、オブジェクト位置特定部122は、第1時刻を含まず、第1時刻よりも前の時刻に対応する位置情報のみを含む動線情報を特定してもよい。そして、オブジェクト位置特定部122は、特定した動線情報において最も新しい時刻に関連付けられている位置情報を特定することにより、オブジェクトの第1時刻以前の位置を特定してもよい。
【0041】
また、オブジェクト位置特定部122は、所定エリアを撮像する撮像装置が第1時刻に撮像した撮像画像に基づいて、第1時刻におけるオブジェクトの位置を特定してもよい。この場合、オブジェクト位置特定部122は、撮像画像に基づいてオブジェクトの位置を検出するオブジェクト検出装置に、第1時刻に撮像された撮像画像を入力する。そして、オブジェクト位置特定部122は、オブジェクト検出装置から、第1時刻に撮像された撮像画像に写る一以上のオブジェクトの位置を示す位置情報を取得し、取得した位置情報が示す位置を、第1時刻におけるオブジェクトの位置として特定する。ここで、オブジェクト検出装置は、機械学習や深層学習を用いたものであってもよい。また、オブジェクト検出装置は、赤外線を利用した3Dセンサ等を用いたものであってもよい。
【0042】
検出位置特定部123は、第1時刻よりも後の時刻である第2時刻におけるオブジェクトの一以上の検出位置の候補である候補位置を特定する。例えば、検出位置特定部123は、オブジェクト検出装置に、第2時刻に撮像された撮像画像を入力する。そして、検出位置特定部123は、オブジェクト検出装置から、第2時刻に撮像された撮像画像に写る一以上のオブジェクトの位置を示す位置情報を取得することにより、一以上の候補位置を特定する。
【0043】
検出位置特定部123は、特定した候補位置が障害物領域内に存在する場合に、当該候補位置を障害物領域外の位置に修正してもよい。例えば、検出位置特定部123は、特定した候補位置が障害物領域内に存在する場合に、障害物領域の輪郭を示す複数の位置のうち、当該候補位置に最も近い位置を、修正後の候補位置とする。なお、動線生成装置1は、オブジェクト検出装置が、オブジェクトの位置として障害物領域の内部の位置を検出しないようにオブジェクト検出装置を制御するようにしてもよい。
【0044】
図3は、第1時刻以前のオブジェクトの位置及び候補位置が特定された例を示す図である。
図3に示す例では、動線T1に対応する最新のオブジェクト位置P1Aと、動線T2に対応する最新のオブジェクト位置P1Bとが特定され、候補位置P2A、P2B及びP2Cが特定されていることが確認できる。動線T1に対応する最新のオブジェクト位置P1Aは、第1時刻におけるオブジェクトの位置であり、動線T2に対応する最新のオブジェクト位置P1Bは、第1時刻以前の時刻におけるオブジェクトの位置である。
【0045】
移動妨害度特定部124は、オブジェクト位置特定部122が特定した第1時刻以前のオブジェクトの位置と、検出位置特定部123が特定した一以上の候補位置と、障害物領域特定部121が特定した障害物領域の位置との位置関係に基づいて、オブジェクトが一以上の候補位置のそれぞれに移動するときの困難さを示す移動妨害度を特定する。
【0046】
まず、オブジェクト位置特定部122は、特定した動線情報が示すオブジェクトの第1時刻以前の位置に基づいて、当該オブジェクトの第2時刻における位置である第1オブジェクト位置を予測する。例えば、オブジェクト位置特定部122は、カルマンフィルタやパーティクルフィルタ等の近似フィルタを用いて第1オブジェクト位置を予測する。
【0047】
そして、移動妨害度特定部124は、第1オブジェクト位置と、特定した一以上の候補位置と、特定した障害物領域の位置との位置関係に基づいて移動妨害度を特定する。具体的には、移動妨害度特定部124は、特定した第1オブジェクト位置と、特定した一以上の候補位置のそれぞれとを結ぶ線分を特定し、当該線分と特定した障害物領域との位置関係に基づいて、オブジェクトが第1オブジェクト位置から、特定した一以上の候補位置のそれぞれに移動するときの移動妨害度を特定する。
【0048】
なお、オブジェクト位置特定部122は、第1オブジェクト位置を、第1時刻以前の位置に基づいて予測された第2時刻におけるオブジェクトの位置であることとしたが、これに限らない。例えば、オブジェクト位置特定部122は、オブジェクトの第1時刻における位置を第1オブジェクト位置として特定してもよい。そして、移動妨害度特定部124は、オブジェクト位置特定部122が特定した第1オブジェクト位置と、特定した一以上の候補位置と、特定した障害物領域の位置との位置関係に基づいて移動妨害度を特定してもよい。このようにすることで、動線生成装置1は、第2時刻におけるオブジェクトの位置を予測することなく、第2時刻におけるオブジェクトの位置を特定することができる。
【0049】
また、オブジェクト位置特定部122は、特定した第1オブジェクト位置が障害物領域内に存在する場合に、当該第1オブジェクト位置を障害物領域外の位置に修正してもよい。このようにすることで、動線生成装置1は、第1オブジェクトの位置が障害物領域内に存在することにより移動妨害度の特定精度が落ちることを防止することができる。
【0050】
図4は、第1オブジェクト位置と、一以上の候補位置のそれぞれとを結ぶ線分が特定された例を示す図である。
図4では、動線T1及び動線T2のそれぞれに対して、第2時刻に対応する第1オブジェクト位置PPA及びPPBが特定され、これらの第1オブジェクト位置から、一以上の候補位置P2A、P2B及びP2Cに対する6本の線分が特定されていることが確認できる。
【0051】
以下、移動妨害度特定部124による移動妨害度の特定方法を複数説明する。移動妨害度特定部124は、一以上の特定方法の少なくともいずれかに基づいて、一以上の第1オブジェクト位置のそれぞれから、一以上の候補位置のそれぞれに移動するときの移動妨害度を特定する。例えば、移動妨害度特定部124は、複数の特定方法の少なくともいずれかを組み合わせることにより、1つの第1オブジェクト位置から1つの候補位置に移動するときに対応する1つの移動妨害度を特定してもよい。移動妨害度特定部124は、1つの第1オブジェクト位置から1つの候補位置に移動するときに対応する1つの移動妨害度を特定する場合に、複数の特定方法のそれぞれに従って複数の移動妨害度を特定し、各々の処理方法により特定した複数の移動妨害度の積や重み付き和等を用いて、1つの移動妨害度を特定してもよい。
【0052】
移動妨害度特定部124は、特定した一以上の線分のそれぞれについて、当該線分と、特定された障害物領域との2つの交点を特定する。
図5は、第1オブジェクト位置と候補位置とを結ぶ線分と、矩形として特定された障害物領域との交点が特定された例を示す図である。
図5に示すように、第1オブジェクト位置PPAと候補位置P2A及びP2Bとを結ぶ2つの線分と、矩形として特定された障害物領域の辺(輪郭)との交点として、交点i1A、i1B、i2A、及びi2Bが特定されていることが確認できる。障害物領域が凸形状の場合、第1オブジェクト位置と候補位置とを通る1つの線分と、障害物領域の輪郭との交点は2点となる。なお、線分が障害物領域の頂点と交差する場合には、交点は1点となるが、この場合には、移動妨害度特定部124は、2点の交点を同一の点として特定してもよい。
【0053】
また、障害物領域が非凸形状の場合、特定した一以上の線分のそれぞれについて、当該線分と障害物領域との交点が3つ以上存在する場合がある。この場合、移動妨害度特定部124は、3つの交点の中から取り得る2つの交点のうち、相対的に距離が長い2つの交点を、移動妨害度の特定に用いる2つの交点として特定する。このようにすることで、動線生成装置1は、障害物領域が非凸形状であっても、移動妨害度を精度良く特定することができる。
【0054】
移動妨害度特定部124は、特定した2つの交点と、当該障害物領域との関係に基づいて移動妨害度を特定する。例えば、移動妨害度特定部124は、特定した2点の交点により分断される障害物領域の2つの輪郭線のうち、相対的に短い輪郭線の長さに基づいて移動妨害度を特定する。
【0055】
図6は、特定した2点の交点により分断される障害物領域の2つの輪郭線の例を示す図である。
図6には、第1オブジェクト位置PPAと候補位置P2Aとを結ぶ線分により障害物領域が分断されたときの2つの輪郭線LA及びLBが示されていることが確認できる。
図6に示す例では、輪郭線LAが、輪郭線LBに比べて短いことが確認できる。移動妨害度特定部124は、
図6に示す例において、輪郭線LAの長さに基づいて、オブジェクトが第1オブジェクト位置PPAから候補位置P2Aに移動するときの移動妨害度を特定する。例えば、移動妨害度特定部124は、輪郭線LAの長さを移動妨害度として算出する。同様に、移動妨害度特定部124は、第1オブジェクト位置PPAと候補位置P2Bとを結ぶ線分により障害物領域が分断されたときの短い方の輪郭線を求め、オブジェクトが第1オブジェクト位置PPAから候補位置P2Bに移動するときの移動妨害度を特定する。
【0056】
また、移動妨害度特定部124は、特定した2つの交点を結ぶ線分の長さに対する、特定した2つの交点により分断される障害物領域の輪郭線の長さの比率に基づいて移動妨害度を特定してもよい。例えば、移動妨害度特定部124は、第1オブジェクト位置と、1つの候補位置とを結ぶ線分により障害物領域が分断されたときの2つの輪郭線のうち、相対的に短い輪郭線を特定する。そして、移動妨害度特定部124は、例えば、当該輪郭線に対応する2つの交点を結ぶ線分の長さに対する当該輪郭線の長さの比率を移動妨害度として算出する。
【0057】
図7は、2つの交点を結ぶ線分の長さに対する輪郭線の長さの比率を算出する例を示す図である。
図7には、第1オブジェクト位置PPAと候補位置P2Aとを結ぶ線分により障害物領域が分断されたときの相対的に短い輪郭線LAと、第1オブジェクト位置PPAと候補位置P2Bとを結ぶ線分により障害物領域が分断されたときの相対的に短い輪郭線LCとが示されている。
【0058】
図7に示す例において、移動妨害度特定部124は、輪郭線LAに対応する2つの交点i1A及びi2Aを結ぶ線分の長さに対する輪郭線LAの長さの比率を、オブジェクトが第1オブジェクト位置PPAから候補位置P2Aに移動するときの移動妨害度として特定する。また、移動妨害度特定部124は、輪郭線LCに対応する2つの交点i1B及びi2Bを結ぶ線分の長さに対する輪郭線LCの長さの比率を、オブジェクトが第1オブジェクト位置PPAから候補位置P2Bに移動するときの移動妨害度として特定する。
【0059】
また、移動妨害度特定部124は、特定した2つの交点のそれぞれと、特定した障害物領域の基準点と結ぶ二本の線分のなす角度を特定し、当該角度に基づいて移動妨害度を特定してもよい。ここで、障害物領域の基準点は、例えば、障害物領域の中心点である。
【0060】
図8は、特定した2つの交点のそれぞれと、特定した障害物領域の基準点とを結ぶ二本の線分のなす角度を特定する例を示す図である。
図8には、第1オブジェクト位置PPAと候補位置P2Aとを結ぶ線分により障害物領域を分断したときの2つの交点i1A及びi2Aと、第1オブジェクト位置PPAと候補位置P2Bとを結ぶ線分により障害物領域を分断したときの2つの交点i1B及びi2Bとが示されている。
【0061】
図8に示す例において、移動妨害度特定部124は、候補位置P2Aに対応する2つの交点i1A及びi2Aと、中心点Oとの角度θAを特定する。そして、移動妨害度特定部124は、当該角度θAを、オブジェクトが第1オブジェクト位置PPAから候補位置P2Aに移動するときの移動妨害度とする。また、移動妨害度特定部124は、候補位置P2Bに対応する2つの交点i1B及びi2Bと、中心点Oとの角度θBを特定する。そして、移動妨害度特定部124は、当該角度θBを、オブジェクトが第1オブジェクト位置PPAから候補位置P2Bに移動するときの移動妨害度とする。
【0062】
また、移動妨害度特定部124は、特定した障害物領域を構成する辺のうち、特定した2つの交点のいずれかが存在する2辺を特定し、当該2辺の間に存在する2つの辺群のうち、相対的に辺の数が少ない辺群に含まれる辺の数に基づいて移動妨害度を特定してもよい。
【0063】
図9は、辺の数に基づいて移動妨害度を特定する例を示す図である。
図9に示す障害物領域は八角形であり、辺E1~E8を備える。
図9には、第1オブジェクト位置PPAと候補位置P2Aとを結ぶ線分により障害物領域を分断したときの2つの交点i1A及びi2Aが示されている。
図9に示す例では、移動妨害度特定部124は、2つの交点i1A及びi2Aのいずれかが存在する2辺として、辺E3及びE6を特定する。当該辺E3及びE6の間には、辺E4及びE5を含む第1の辺群と、辺E1、E2、E7及びE8を含む第2の辺群とが存在する。移動妨害度特定部124は、相対的に辺の数が少ない第1の辺群に含まれる辺の数(2個)に基づいて、オブジェクトが第1オブジェクト位置PPAから候補位置P2Aに移動するときの移動妨害度を特定する。例えば、移動妨害度特定部124は、相対的に辺の数が少ない第1の辺群に含まれる辺の数を移動妨害度とする。
【0064】
また、移動妨害度特定部124は、特定した線分との交点が存在する障害物領域が複数存在する場合に、当該複数の障害物領域を1つの障害物領域に近似してもよい。
【0065】
図10は、複数の障害物領域を1つの障害物領域に近似する例を示す図である。
図10では、複数の障害物領域として、障害物領域X、Y、Zが存在しており、第1オブジェクト位置PPAと候補位置P2Aとを結ぶ線分によりこれらの障害物領域を分断したときの6つの交点i1A~i6Aが示されている。この場合、移動妨害度特定部124は、3つの障害物領域を1つの障害物領域SAに近似する。このようにすることで、移動妨害度特定部124は、これらの障害物領域を1つの障害物領域として扱うことができるので、移動妨害度を特定するときの負荷を削減することができる。
【0066】
選択部125は、オブジェクトの第1時刻以前の位置から一以上の候補位置のそれぞれへの移動コストを移動妨害度に基づいて特定し、移動コストが相対的に小さい候補位置を、当該オブジェクトの第2時刻における位置に選択する。
【0067】
選択部125は、オブジェクト位置特定部122が特定した第1時刻以前の位置に対応するオブジェクトと、検出位置特定部123が特定した一以上の候補位置のそれぞれに対応するオブジェクトとの所定の対応関係における類似度を示す類似度コストを特定する。そして、選択部125は、当該類似度コストと、移動妨害度特定部124が特定した移動妨害度とに基づいて、第1時刻以前の位置から一以上の候補位置のそれぞれへの移動コストを特定する。
【0068】
選択部125は、第1時刻におけるオブジェクトの位置を特定できた場合には、当該位置に対応するオブジェクトと、一以上の候補位置のそれぞれに対応するオブジェクトとの類似度コストを特定し、第1時刻におけるオブジェクトの位置を特定できなかった場合には、第1時刻よりも前のうち、最新の時刻に対応するオブジェクトの位置に対応するオブジェクトと、一以上の候補位置のそれぞれに対応するオブジェクトとの類似度コストを特定する。
【0069】
本実施形態では、類似度コストが小さければ小さいほど、第1時刻以前のオブジェクトと、候補位置に対応するオブジェクトとが類似しているものとする。選択部125は、例えば、所定エリアの位置に対応するグローバル座標系における第1時刻以前のオブジェクトの位置と、一以上の候補位置のそれぞれとの直線距離又は最短距離を類似度コストとして算出する。また、選択部125は、撮像部が撮像した撮像画像上の位置に対応する座標系であるローカル座標系における、オブジェクトに対応する投影領域間の重複率(IoU:Intersection over Union)を算出し、重複率を1から引いた値を類似度コストとして特定してもよい。
【0070】
また、選択部125は、撮像装置により撮像された所定エリアの撮像画像から抽出されたオブジェクトを示すオブジェクト画像が存在する場合には、オブジェクト画像の類似度に基づいて類似度コストを特定してもよい。
【0071】
例えば、撮像装置により第1時刻に撮像された所定エリアの撮像画像から特定した、第1時刻におけるオブジェクトの位置に対応するオブジェクト画像を第1オブジェクト画像とし、第2時刻に撮像された所定エリアの撮像画像から特定した、一以上の候補位置のそれぞれに対応するオブジェクト画像を第2オブジェクト画像とする。この場合、選択部125は、第1オブジェクト画像と、一以上の第2オブジェクト画像のそれぞれとを、同一人物判定装置(不図示)に入力し、同一人物判定装置から判定スコアを取得する。ここで、第1オブジェクト画像に対応する人物と、第2オブジェクト画像に対応する人物とが同一である可能性が高ければ高いほど、判定スコアの値が高くなるものとする。選択部125は、例えば、同一人物判定装置から取得した判定スコアの逆数を類似度コストと特定してもよい。
【0072】
また、選択部125は、第1オブジェクト画像の特徴を示す特徴ベクトルと第2オブジェクト画像の特徴を示す特徴ベクトルに基づいて、類似度コストを特定してもよい。例えば、選択部125は、特徴量抽出装置(不図示)に、第1オブジェクト画像と、一以上の第2オブジェクト画像とを入力し、特徴量抽出装置から、これらのオブジェクト画像の特徴ベクトルを示す情報を取得する。そして、選択部125は、第1オブジェクト画像の特徴ベクトルと、一以上の第2オブジェクト画像のそれぞれに対応する特徴ベクトルとのなす角度により定まるコサイン類似度を算出する。選択部125は、一以上の第2オブジェクト画像のそれぞれについて、算出したコサイン類似度を1から引いた値を、当該第2オブジェクト画像に対応する類似度コストとして特定する。
【0073】
ここで、同一人物判定装置や特徴量抽出装置には、機械学習や深層学習を用いることができる。なお、選択部125は、上述した複数の類似度コストの特定方法の少なくともいずれかを組み合わせることにより、第1時刻以前の位置に対応するオブジェクトと、1つの候補位置に対応するオブジェクトとの類似度コストを特定してもよい。
【0074】
例えば、選択部125は、第1時刻以前の位置に対応するオブジェクトと、1つの候補位置に対応するオブジェクトとについて、複数の類似度コストの特定方法のそれぞれに従って類似度コストを特定する。そして、選択部125は、各々の特定方法により特定した類似度コストの積や重み付き和等を用いて、第1時刻以前の位置に対応するオブジェクトと、1つの候補位置に対応するオブジェクトとに対応する1つの類似度コストを特定する。
【0075】
選択部125は、特定した類似度コストと、移動妨害度特定部124が特定した移動妨害度と少なくともいずれかに基づいて、移動コストを特定する。選択部125は、例えば、類似度コストと移動妨害度との積や重み付き和を算出することにより移動コストを特定する。
【0076】
選択部125は、オブジェクト位置特定部122が特定した一以上のオブジェクトと、検出位置特定部123が検出した一以上の候補位置のそれぞれに対応するオブジェクトとの対応関係を特定するにあたり、移動コストを要素とするコスト行列を生成する。
【0077】
図4に示す例の場合、選択部125は、オブジェクト位置特定部122が特定した動線T1及びT2に対応する最新のオブジェクト位置P1A及びP1Bを各行とし、候補位置P2A、P2B及びP2Cを各列とした、2行3列のコスト行列を生成する。行列の各要素には、
図4中の各線分が示す対応関係から特定される移動コスト値を含む。選択部125は、当該行列にハンガリアン法を適用することにより、コスト値が最小となる第1時刻以前のオブジェクトの位置と、候補位置との対応関係を特定する。
【0078】
図11は、第1時刻以前のオブジェクトの位置と、候補位置との対応関係を特定した例を示す図である。
図11は、
図4に示される最新のオブジェクト位置P1A及びP1Bと、候補位置P2A、P2B及びP2Cとに対して、ハンガリアン法を適用したときの位置の対応関係として、最新のオブジェクト位置P1Aと候補位置P2A、最新のオブジェクト位置P1Bと候補位置P2Bという2つの対応関係が特定された場合の例を示している。なお、候補位置P2Cは、複数の最新のオブジェクトの位置のいずれとも対応関係が得られていないことが確認できる。
【0079】
上述した例では、コスト行列として非正方行列(2行3列の行列)を用いるため、候補位置P2Cのように対応関係が特定されない候補位置が生じるが、正方行列を用いる場合には、全ての最新のオブジェクトの位置及び候補位置について対応関係が得られる。このような場合でも、得られた対応関係が必ずしも正しいものとは限らない。
【0080】
また、移動妨害度は、障害物に基づく移動コストを簡易的に特定した値であることから、例えば、移動距離という観点では、移動妨害度の大小関係は常に正しいとは限らない。これに対し、移動距離の観点から最適な対応関係を特定するためには、計算量の多い最短経路探索アルゴリズムを用いる必要がある。また、コスト行列に含める移動コストを特定するにあたり、類似度コストに移動妨害度を反映させる必要があるが、重み付き和を用いる場合は、適切な重みパラメータの事前設定が困難な場合が多い。
【0081】
そこで、選択部125は、得られた対応関係に対応する移動コストに対して閾値処理を施すことにより、対応関係を高精度に特定してもよい。具体的には、選択部125は、最新のオブジェクトの位置と、一以上の候補位置のそれぞれとの移動コストのうち、相対的に小さい移動コストが第1の閾値を超える場合に、当該オブジェクトに対応する候補位置を選択しないように制御してもよい。
【0082】
また、選択部125は、移動妨害度特定部124が特定した移動妨害度が第2の閾値を超える候補位置について、当該候補位置に対応する移動コストを、第1の閾値を超える値に設定してもよい。
【0083】
図12は、2つの交点を結ぶ線分の長さに対する輪郭線の長さの比率に基づいて移動妨害度を算出する例を示す図である。例えば、
図12に示すように、第1オブジェクト位置PPAと、候補位置P2A、P2B、P2C及びP2Dとが特定された場合に、移動妨害度特定部124が、2つの交点を結ぶ線分の長さに対する輪郭線の長さの比率により移動妨害度を特定したとする。
【0084】
候補位置P2Aに対応する移動妨害度をDA、候補位置P2Bに対応する移動妨害度をDB、候補位置P2Cに対応する移動妨害度をDC、候補位置P2Dに対応する移動妨害度をDDとすると、DA<DB<<DD<DCという大小関係となる。当該大小関係に従うと、候補位置P2Aは候補位置P2Bに比べて優先的に第1オブジェクト位置PPAに対応付けられ、候補位置P2Dは候補位置P2Cに比べて優先的に第1オブジェクト位置PPAに対応付けられることとなる。しかしながら、対応付けを行うにあたり、必ずしも当該大小関係が正しいとはいえない。
【0085】
選択部125は、移動妨害度が第2の閾値を超える候補位置について、移動コストを第1の閾値を超える値に設定する。例えば、選択部125は、移動妨害度が第2の閾値以下の場合は、類似度コストを移動コストとし、第2の閾値を超える場合は、第1の閾値を超える値を移動コストとする。
【0086】
また、選択部125は、移動妨害度が第2の閾値以下の場合は、移動妨害度を1とし、移動妨害度が第2の閾値を超える場合には、移動妨害度を著しく大きい値としてもよい。そして、選択部125は、移動妨害度と類似度コストとの積を、移動コストとしてもよい。このようにすることで、第1オブジェクト位置に対する候補位置の移動妨害度が第2の閾値を超える場合は、当該第1オブジェクトに対応する候補位置として、当該候補位置が選択されないように制御することができる。
【0087】
図12に示す例では、選択部125は、第2の閾値を、移動妨害度DBよりも大きく、移動妨害度DDよりも小さい値に設定する。このようにすることで、選択部125は、
図12に示す例において、第1オブジェクト位置PPAに対して、候補位置P2C及び候補位置P2Dが選択されないようにし、第1オブジェクト位置PPAに対して、候補位置P2A及びP2Bのうち、類似度コストが小さい候補位置を対応付けることができる。
【0088】
動線生成部126は、オブジェクトの第1時刻における位置と、選択部125が選択した当該オブジェクトの候補位置とを関連付けることにより、当該オブジェクトの移動動線を生成する。例えば、動線生成部126は、オブジェクト位置特定部122が特定した動線情報に、第2時刻と、選択部125が選択した候補位置を示す位置情報と関連付けて追加することにより、当該動線情報を更新する。
【0089】
なお、動線生成部126は、選択部125が選択した候補位置を近似フィルタの観測値として用いてもよい。すなわち、動線生成部126は、第2時刻における予測位置としての第1オブジェクト位置を、選択部125が選択した候補位置に基づいて修正することにより、第2時刻におけるオブジェクトの確定位置としてもよい。
図13は、第2時刻に対応する確定位置を特定した例を示す図である。
図13では、第1オブジェクト位置PPAと、候補位置P2Aとの関係に基づいて、第2時刻tにおける確定位置PFAが特定され、第1オブジェクト位置PPBと、候補位置P2Bとの関係に基づいて、第2時刻tにおける確定位置PFBが特定されていることが確認できる。このようにすることで、動線生成装置1は、第2時刻tにおけるオブジェクトの位置を精度良く特定することができる。
【0090】
[動線生成装置1における処理の流れ]
続いて、動線生成装置1における処理の流れについて説明する。
図14は、本実施形態に係る動線生成装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
【0091】
まず、障害物領域特定部121は、所定エリアに存在する障害物の形状に対応する障害物領域と、障害物領域の所定エリアにおける位置とを特定する(S1)。
続いて、オブジェクト位置特定部122は、所定エリアを移動する一以上のオブジェクトの第1時刻以前の位置を特定する(S2)。具体的には、オブジェクト位置特定部122は、第1時刻までの位置情報又は第1時刻以前の時刻までの位置情報を含む一以上の動線情報を特定し、当該動線情報において最新の時刻に関連付けられている位置情報を特定することにより、一以上のオブジェクトの第1時刻以前の位置を特定する。
【0092】
続いて、検出位置特定部123は、第1時刻よりも後の時刻である第2時刻におけるオブジェクトの一以上の検出位置の候補である候補位置を特定する(S3)。
続いて、移動妨害度特定部124は、一以上の第1オブジェクト位置の、一以上の候補位置のそれぞれに対する移動妨害度を特定する(S4)。
【0093】
続いて、選択部125は、一以上のオブジェクトの、一以上の候補位置のそれぞれに対応するオブジェクトとの類似度を特定する(S5)。
続いて、選択部125は、S4において特定された移動妨害度と、S5において特定された類似度とに基づいて、一以上のオブジェクトの、一以上の候補位置のそれぞれに対応する移動コストを特定する(S6)。
【0094】
続いて、選択部125は、S6において特定された、一以上のオブジェクトの、一以上の候補位置のそれぞれに対応する移動コストに基づいて、一以上のオブジェクトと、一以上の候補位置との対応関係を特定する(S7)。
【0095】
続いて、動線生成部126は、S2において特定した一以上の動線情報のそれぞれに、第2時刻と、当該動線情報が示すオブジェクトに対して特定された候補位置が示す位置情報とを関連付けて格納することにより、当該動線情報を更新する(S8)。
【0096】
[本実施形態における効果]
以上説明したように、本実施形態に係る動線生成装置1は、所定エリアに対応する障害物領域の所定エリアにおける位置を特定し、所定エリアを移動するオブジェクトの第1時刻以前の位置を特定するとともに、第1時刻よりも後の時刻である第2時刻における当該オブジェクトの一以上の候補位置を特定する。動線生成装置1は、特定した第1時刻以前のオブジェクトの位置と、特定した一以上の候補位置と、特定した障害物領域の位置との位置関係に基づいて、オブジェクトが一以上の候補位置のそれぞれに移動するときの移動妨害度を特定する。そして、動線生成装置1は、当該オブジェクトの第1時刻以前の位置から一以上の候補位置のそれぞれへの移動コストを移動妨害度に基づいて特定し、移動コストが相対的に小さい候補位置を、当該オブジェクトの第2時刻における位置に選択する。このようにすることで、動線生成装置1は、オブジェクトの対応関係を効率的に特定することができる。
【0097】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。
【0098】
また、特に、装置の分散・統合の具体的な実施形態は以上に図示するものに限られず、その全部又は一部について、種々の付加等に応じて、又は、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0099】
1・・・動線生成装置、11・・・記憶部、12・・・制御部、121・・・障害物領域特定部、122・・オブジェクト位置特定部、123・・・検出位置特定部、124・・・移動妨害度特定部、125・・・選択部、126・・・動線生成部