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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/068 20060101AFI20220301BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20220301BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
F24F13/068 A
F24F5/00 K
F24F7/10 101Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017107257
(22)【出願日】2017-05-30
(65)【公開番号】P2018204804
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-05-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 J-STAGEのウェブサイトの日本建築学会環境系論文集において、平成28年11月30日に、日本建築学会環境系論文集,Vol.81(2016)No.729,p.1017-1024「パッケージ型空気調和機を用いた対流・輻射併用型空調システムの計画手法と性能検証」として掲載されることによって本発明を公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(74)【代理人】
【識別番号】100103399
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 清
(72)【発明者】
【氏名】小澤 諭
(72)【発明者】
【氏名】林 一宏
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-159521(JP,A)
【文献】特開平06-174261(JP,A)
【文献】特開2013-190183(JP,A)
【文献】特開2006-132823(JP,A)
【文献】実開昭58-153941(JP,U)
【文献】実開昭64-001378(JP,U)
【文献】特開2015-218947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/068
F24F 5/00
F24F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間の天井面を形成し、多数の通気孔を穿設した天井パネルと、この天井パネルの上方空間に配設し、下面に吹出口を形成した空調ダクトと、この空調ダクトに暖気又は冷気を送風する空調機と、から構成され、
前記天井パネルは、熱伝導性の高い金属材料から成形し、前記空調ダクトの吹出口の直下部から周辺部にいくに従って、前記通気孔の開口率を漸次高めると共に、
前記空調ダクトは、その下面を前記天井パネルの上面に近接させて配設し、その基端部から先端部にいくに従って、前記吹出口の間隔を漸次広くしたことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記天井パネルを成形する金属材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記通気孔の孔径は、10~40mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記通気孔の開口率は、前記空調ダクトの吹出口の直下部から周辺部にいくに従って、 10~60%に遷移させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1に記載の空調システム。
【請求項5】
前記天井パネルの上方空間に送風機を配設し、前記空調機から供給する暖気又は冷気にこの送風機から供給する乾燥空気を混合させて、前記空調ダクトに供給することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスビル、商業施設等の室内空間における暖房又は冷房を効率的に実施することができる空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスビル、商業施設等の室内空間を暖房又は冷房するには、天井面の適宜位置に吹出口を形成し、その吹出口から室内空間へと適宜温度の暖気又は冷気を供給し、室内空間で空気を対流させて、室内空間を適宜温度に調整するようにしていた。
【0003】
しかし、室内空間で空気を対流させる空調方式では、温度センサ等によって室内空間の温度を検出して制御しても、暖気は上方に、冷気は下方に移動し易いために、室内空間を均一な温度に保持することはできなかった。
又、吹出口の直下に近い位置にいる者は、吹出口から吹出す暖気又は冷気を身体に直接受け易く、通常よりも暑く又は寒く感じたり、暖気又は冷気が身体に強く当たって、不快感を抱く場合もあった。
【0004】
かかる従来の問題点を解決するために、天井面を構成する天井パネルの裏面に暖気又は冷気を流通させ、天井パネルから輻射される温熱又は冷熱によって室内空間を暖房又は冷房する空調方式、又は、室内空間で空気を対流させると共に、天井パネルから熱を輻射する空調方式を採用することも提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0005】
【文献】特開平06-174261号公報
【文献】特開2015-064129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1及び2に記載された空調システムは、何れも、室内空間の天井裏の一端部に設置した空調機又はその吹出口から天井裏に暖気又は冷気を吹出させ、天井裏の他端部へと流通させ、その間に天井パネルに穿設した通気孔から室内空間へと暖気又は冷気を流出させるものであった。
又、特許文献1及び2に記載された空調システムでは、天井パネルに穿設した通気孔の孔径は天井パネル全面に亘って同一であり、又、通気孔の間隔も天井パネル全面に亘って同一であった。
【0007】
そのため、天井裏の他端部へと流通する間に、暖気又は冷気の流速が低下していき、他端部に行くに従って、通気孔から吹出す暖気又は冷気の流量は少なくなる。
又、天井裏の他端部へと流通する間に、暖気又は冷気はその熱量を放出して、他端部に行くに従って、通気孔から吹出す暖気又は冷気の温度は低下又は上昇する。
【0008】
よって、特許文献1及び2に記載された空調システムでは、室内空間を未だ迅速に暖房又は冷房することができないと共に、室内空間の水平方向及び垂直方向の何れにも、均一に暖房又は冷房することはできなかった。
又、吹出口の直下に近い位置にいる者は、依然として、吹出口から吹出す暖気又は冷気を身体に直接受け易く、通常よりも暑く又は寒く感じたり、暖気又は冷気が身体に強く当たって、不快感を抱く場合もあった。
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みて為されたものであって、室内空間で空気を対流させると共に、天井パネルから熱を輻射する空調方式において、室内空間を迅速に暖房又は冷房することができると共に、室内空間の水平方向及び垂直方向の何れにも、均一に暖房又は冷房することができ、しかも、暖気又は冷気が身体に当たって、通常よりも暑く又は寒く感じたり、不快感を抱くこともない空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の空調システムは、室内空間の天井面を形成し、多数の通気孔を穿設した天井パネルと、この天井パネルの上方空間に配設し、下面に吹出口を形成した空調ダクトと、この空調ダクトに暖気又は冷気を送風する空調機と、から構成され、
前記天井パネルは、熱伝導性の高い金属材料から成形し、前記空調ダクトの吹出口の直下部から周辺部にいくに従って、前記通気孔の開口率を漸次高めると共に、
前記空調ダクトは、その下面を前記天井パネルの上面に近接させて配設し、その基端部から先端部にいくに従って、前記吹出口の間隔を漸次広くしたことを特徴とする。
【0011】
前記天井パネルを成形する金属材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金であるのが好ましい。
【0012】
又、前記通気孔の孔径は、10~40mmであることが好ましく、前記通気孔の開口率は、前記空調ダクトの吹出口の直下部から周辺部にいくに従って、10~60%に遷移させるのが好ましい。
【0013】
さらに、前記天井パネルの上方空間に送風機を配設し、前記空調機から供給する暖気又は冷気に、この送風機から供給する乾燥空気を混合させて、前記空調ダクトに供給するのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空調システムによれば、室内空間を迅速に暖房又は冷房することができると共に、室内空間の水平方向及び垂直方向の何れにも、均一に暖房又は冷房することができ、しかも、暖気又は冷気が身体に当たって、通常よりも暑く又は寒く感じたり、不快感を抱くこともない。
【0015】
さらに、空調機から供給する暖気又は冷気に送風機から供給する乾燥空気を混合させて空調ダクトに供給するようにすれば、より迅速に暖房又は冷房することができると共に、冷房時には、天井パネルの上面における結露を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の空調システムの構成図である。
図2】本発明の空調システムにおける(A)は空調ダクト直下部に配置する天井パネル部材の平面図、(B)は周辺部に配置する天井パネル部材の平面図である。
図3】本発明の空調システムにおける空調ダクトの(A)は平面図、(B)は断面図である。
図4】本発明の空調システムの概念図である。
図5】本発明の空調システムを設置してその性能試験を実施した建築物のフロアの平面図である。
図6】本発明の空調システムの性能試験を実施した室内空間及び装置構成を示す(A)は平面図、(B)は断面図である。
図7】冷房時における性能試験の実施条件を示す表である。
図8】冷房時における性能試験の温度変化を示す図である。
図9】冷房時における室内空間の垂直方向の温度分布を示す図である。
図10】冷房時における室内空間の水平方向の(A)は床上3000mmにおける分布図、(B)は床上1200mmにおける分布図である。
図11】暖房時における性能試験の実施条件を示す表である。
図12】暖房時における性能試験の温度変化を示す図である。
図13】暖房時における室内空間の垂直方向の温度分布を示す図である。
図14】暖房時における室内空間の水平方向の(A)は床上3000mmにおける分布図、(B)は床上1200mmにおける分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の空調システムの好適な実施形態について、以下、図面を参照して説明する。
【0018】
本発明の空調システム1は、図1乃至4に示すように、室内空間の天井面Cを形成し、多数の通気孔21aを穿設した天井パネル2と、この天井パネル2の上方空間に配設し、下面に吹出口3aを形成した空調ダクト3と、この空調ダクト3に暖気又は冷気を供給する空調機4と、から構成してある。
【0019】
天井パネル2は、図1、2及び4に示すように、複数のパネル部材21を縦横に水平方向に連結したものである。そして、パネル部材21は、熱伝導性の高い金属材料から矩形状に成形してある。
ここで、熱伝導性の高い金属材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、銅合金等を採用することができるが、軽量性、防錆性等を考慮すると、アルミニウム又はアルミニウム合金を採用するのが好ましい。
【0020】
パネル部材21としては、図2に示すように、素材に打ち抜き加工を施したパンチングメタルを採用してあり、例えば、縦(A)×横(B)を800×800mm、肉厚(T)を2.0mmに成形してある。
パネル部材21には、図2に示すように、多数の通気孔21aを穿設してあるが、この通気孔21aの孔径(D)は、10~40mm、特には、15~30mmであることが好ましい。例えば、孔径(D)を21mmとしてある。
【0021】
さらに、空調ダクト3の吹出口3aの直下部に配設するパネル部材21Aにあっては、図2(A)に示すように、横方向において、中央部から周辺部にいくに従って、通気孔21aの間隔(P0)が漸次小さくなるように形成してある。
又、空調ダクト3の吹出口3aの横方向周辺部に配設する、すなわち、パネル部材21Aより外方に配設するパネル部材21Bにあっては、図2(B)に示すように、内側部から外側部にいくに従って、通気孔21aの間隔(P1,P2)が漸次小さくなるように形成してある。
【0022】
よって、複数のパネル部材21A,21Bを縦横に水平方向に連結して天井パネル2を構成した場合には、図4に示すように、空調ダクト3の吹出口3aの直下部から周辺部にいくに従って、通気孔21aの間隔(P)は漸次小さくなる。
天井パネル2において、開口率を以下の通り、

開口率=所定範囲内の通気孔21aの面積/パネル部材の所定範囲内の表面積

と定義すれば、天井パネル2における通気孔21aの開口率は、空調ダクト3の吹出口3aの直下部から周辺部にいくに従って、漸次高くなるように設定してある。
そして、天井パネル2における通気孔21aの開口率は、空調ダクト3の吹出口3aの直下部から周辺部にいくに従って、10~60%、特には、20~50%に遷移させるのが好ましい。
【0023】
開口率を20~50%に遷移させるために、通気孔21aの孔径(D)を同一とし、空調ダクト3の吹出口3aの直下部から周辺部にいくに従って、通気孔21aの間隔(P)を漸次小さくする代わりに、通気孔21aの間隔(P)を同一とし、空調ダクト3の吹出口3aの直下部から周辺部にいくに従って、通気孔21aの孔径(D)を漸次大きくするようにしてもよい。
【0024】
空調ダクト3は、図1、3及び4に示すように、天井パネル2の上方空間に、天井パネル2に近接して、所定間隔で2基配設してある。そして、空調ダクト3は、断熱性の高い材料から構成してある。
ここで、断熱性の高い材料としては、吸音性、軽量性も考慮して、グラスウールを採用するのが好ましい。
空調ダクト3の下面と天井パネル2との上面との間隔(H)は、100~500mm、特には、200~400mmとするのが好ましい。
【0025】
空調ダクト3の下面には、図3及び4に示すように、幅方向に長い矩形状の吹出口3aを形成してあり、例えば、長さ(L)450mm、幅(W)75mmとしてある。
そして、空調ダクト3の基端部から先端部にいくに従って、吹出口3aの間隔(Q)を漸次広くしてある。例えば、基端部における吹出口3aの間隔(Q1)を450mm、先端部における吹出口3aの間隔(Q2)を900mmとしてある。
ここで、基端部から先端部にいくに従って、吹出口3aの間隔(Q)を漸次広くしてあるのは、先端部にいくに従って空調ダクト3内を流通する暖気又は冷気の速度(m/s)が速くなるので、空調ダクト3の長さ方向に亘って、極力均一速度で吹出口3aから暖気又は冷気を吹出させるためである。
【0026】
空調機4は、図1に示すように、天井パネル2の上方空間に配設してあり、給気供給管5,連結ダクト6を介して、2基の空調ダクト3,3に暖気又は冷気を供給するようになっている。
又、空調機4は、外気導入管7によって外気を導入すると共に、還気吸引管8によって室内空間の空気を吸引、回収し、空気を冷却又は加熱する。
尚、空調機4としては、風量1,500m/hの天井隠蔽型パッケージ空調機の屋内機を採用することができる。
【0027】
さらに、天井パネル2の上方空間には、図1に示すように、空調機4と対向する位置に送風機9を配設してあり、給気供給管5,連結ダクト6を介して、2基の空調ダクト3,3に乾燥した空気を供給する。
又、送風機9は、外気導入管10によって外気を導入すると共に、還気吸引管11によって室内空間の空気を吸引、回収し、空気に含まれる水分を除去し、乾燥させる。
尚、送風機9としては、風量1,800m/hの消音ストレートシロッコファンから成る還気送風機を採用することができる。
【0028】
空調機4から供給する暖気又は冷気に送風機9から供給する乾燥空気を混合させて空調ダクトに供給することによって、給気される空気の風量が大きくなって、室内空間を迅速に暖房又は冷房することができる。
又、冷房時には、天井パネル2の上面に沿って多量の空気が流通することによって、天井パネル2の上面に水分が付着するのを阻止して、結露をより効果的に防止することができる。
【0029】
次に、本発明の空調システム1の作用、効果について、以下、図4を参照して、詳細に説明する。
【0030】
先ず、空調機4から吹出された暖気又は冷気は、給気供給管5,連結ダクト6を通過して、2基の空調ダクト3,3に供給される。
【0031】
次に、空調ダクト3を流通する暖気又は冷気は、基端部から先端部に至る間に、図4に示すように、吹出口3aから下方に吹出され、天井パネル2の上面に衝突する。
【0032】
空調ダクト3の吹出口3aの直下部における天井パネル2の通気孔21aの開口率は低いから、天井パネル2の上面に衝突した暖気又は冷気の殆どは、天井パネル2の上面に沿ってその周辺部へと流動していく。
【0033】
よって、吹出口3aの直下部における天井パネル2の通気孔21aからは殆ど暖気又は冷気が下方に流出されず、専ら天井パネル2を加熱又は冷却することになる。
従って、図4に示すように、吹出口3aの直下部における天井パネル2の下面からは輻射によって室内が加熱又は冷却されることになる。
【0034】
一方、空調ダクト3の吹出口3aの周辺部における天井パネル2の通気孔21aの開口率は高いから、天井パネル2の上面に沿って流動していく暖気又は冷気は、周辺部にいくに従って通気孔21aから下方に流出される。
【0035】
よって、吹出口3aの周辺部における天井パネル2の通気孔21aからは殆どの暖気又は冷気が下方に流出され、対流によって室内が加熱又は冷却されることになる。
【0036】
以上のように、本発明の空調システム1は、空調ダクト3の吹出口3aの直下部から周辺部にいくに従って、天井パネル2の通気孔21aの開口率を漸次高めてあるから、空気の対流と熱の輻射とを適切に調和することができて、室内空間の水平方向及び垂直方向の何れにも、均一に暖房又は冷房することができる。
【0037】
さらに、空調機4から供給する暖気又は冷気に送風機9から供給する乾燥空気を混合させて空調ダクト3に供給すれば、給気される空気の風量が大きくなって、室内空間をより迅速に暖房又は冷房することができる。
【0038】
又、冷房時には、天井パネル2の上面に沿って多量の空気が流通するので、天井パネル2の上面に水分が付着するのを阻止することができ、結露をより効果的に防止することができる。
【0039】
次に、本発明の空調システム1を建築物のフロアの一部に模擬的に設置して、性能試験を実施したので、以下、その実施方法及び結果について説明する。
【0040】
性能試験を実施した建築物のフロアの概要は、図5に示す通りであって、一点鎖線で囲んだ斜線の空間領域に本発明の空調システム1を設置した。
図6に示すように、空調システム1を構成する各装置を配設し、天井パネル2、空調ダクト3は、上階の床スラブS2から吊下部材によって吊下し、所定高さに配置した。
【0041】
天井パネル2は、図6に示すように、複数のパネル部材21を縦横に水平方向に連結したものであって、パネル部材21としては、アルミニウム製の縦(A)×横(B)を800×800mm、肉厚(T)を2.0mmとしたパンチングメタルを使用した。
パネル部材21には、孔径(D)を21mmとした通気孔21aを多数穿設してあり、天井パネル2における通気孔21aの開口率は、空調ダクト3の吹出口3aの直下部から周辺部にいくに従って、20~50%に遷移させた。
【0042】
空調ダクト3は、図6に示すように、天井パネル2の上方空間に、天井パネル2に近接して、所定間隔で2基配設した。そして、空調ダクト3としては、グラスウール製の矩形断面状を呈するものを使用した。
そして、空調ダクト3の下面には、長さ(L)450mm、幅(W)75mmの矩形状の吹出口3aを形成し、空調ダクト3の基端部から先端部にいくに従って、吹出口3aの間隔(Q)を450~900mmへと漸次広くさせた。
【0043】
一点鎖線で囲んだ斜線の空間領域の周囲は、断熱材料から成る壁部材によって、下階の床スラブS1から上階の床スラブS2まで完全に包囲し、空気及び熱量がこの空間領域外に流出しない状態に保持した。
尚、図6に示される4本の支柱P,P,・・・は、建築物のフロアに既に設置されているものである。
【0044】
又、図6に示すように、室内空間及び天井空間の適宜位置(●の位置)に熱電対を配置して、その位置における温度を測定できるようにした。
ここで、床上100mm(以下、FL100と記載)は人間の足元の位置、FL800はテーブル上面の位置、FL1200は着席した時の人間の頭部の位置、FL1800は直立した時の人間の頭部の位置、FL2500は天井パネル直下の位置、FL2700は天井パネル上面の位置、FL3000は空調ダクト直下の位置を示している。
さらに、室内空間の中央部に、熱線式風速計を配置して、その位置における風速を測定できるようにした。
【0045】
[性能試験1]
先ず、冷房時における空調システム1の性能試験を実施した。冷房開始時における外気温度は25.0°C、室内温度は27.5°C(FL1200にて)であった。
そして、図7に示すように、空調機4の室内設定温度を24.0°Cに設定して、9:00に冷房動作を開始した。
【0046】
性能試験は、8:00から18:00に亘って実施したが、その間における外気、天井パネル上面、露点温度、室内空間の所定高さ位置の温度は、図8に示す通りであった。
尚、図7に示すように、13:00、15:00の時刻には、それぞれ、室内設定温度を28.0°C、26.0°Cに変更して、冷房動作を継続した。
【0047】
図8に示すように、冷房動作を開始して30分後には、室内温度は24.0°C(FL1200にて)に低下した。
【0048】
又、図9に示すように、FL1800とFL100における温度差は、1.0°C程度に過ぎず、室内空間の垂直方向において、均一性のある冷房を行うことができることがわかった。
【0049】
又、図10に示すように、FL1200における水平方向の温度差も、1.0°C程度に過ぎず、室内空間の水平方向においても、均一性のある冷房を行うことができることがわかった。
【0050】
さらに、室内空間の中央部における風速は、0.5m/s以下と小さく、冷気が身体に強く当たって、不快感を抱くほどのものではなかった。
【0051】
以上の試験結果から、本発明の空調システム1によれば、室内空間を迅速に冷房することができると共に、室内空間の水平方向及び垂直方向の何れにも、均一に冷房することができることがわかった。
【0052】
又、8:00から18:00に亘って、天井パネル上面の温度は露点温度以上にあったから、結露が発生しないこともわかった。
【0053】
[性能試験2]
次に、暖房時における空調システム1の性能試験を実施した。暖房開始時における外気温度は2.0°C、室内温度は19.2°C(FL1200にて)であった。
そして、図11に示すように、空調機4の室内設定温度を22.0°Cに設定して、8:00に暖房動作を開始した。
【0054】
性能試験は、8:00から18:00に亘って実施したが、その間における外気、天井パネル上面、室内空間の所定高さ位置の温度は、図12に示す通りであった。
【0055】
図12に示すように、暖房動作を開始して1時間後には、室内温度は21.4°C(FL1200にて)に上昇した。そして、1時間10分後には、室内温度は22.0°C(FL1200にて)を超えた。
【0056】
又、図13に示すように、FL1800とFL100における温度差は、1.9°C程度に過ぎず、室内空間の垂直方向において、均一性のある暖房を行うことができることがわかった。
【0057】
又、図14に示すように、FL1200における水平方向の温度差は、0.5°C程度に過ぎず、室内空間の水平方向において、極めて均一性のある暖房を行うことができることがわかった。
【0058】
以上の試験結果から、本発明の空調システム1によれば、室内空間を迅速に暖房することができると共に、室内空間の水平方向及び垂直方向の何れにも、均一に暖房することができることがわかった。
【0059】
尚、本発明の空調システム1の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限りにおいて種々変更できること、勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 空調システム
2 天井パネル
21a 通気孔
3 空調ダクト
3a 吹出口
4 空調機
9 送風機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14