(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】無線通信機器
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/30 20060101AFI20220301BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20220301BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
H01Q19/30
H01Q1/12 A
G06K19/077 296
(21)【出願番号】P 2017131219
(22)【出願日】2017-07-04
【審査請求日】2020-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】土田 秀明
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-159129(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0315991(US,A1)
【文献】特開2014-230149(JP,A)
【文献】特開2005-130354(JP,A)
【文献】実開昭52-048342(JP,U)
【文献】特開2004-295466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0132591(US,A1)
【文献】特開昭64-2407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 19/30
H01Q 1/12
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッシブ型のRFタグと、
前記RFタグから離して配置された、反射器として機能する金属製の第1の丸棒材と、
前記RFタグを挟んで前記第1の丸棒材と反対側にて前記RFタグから離して配置された、導波器として機能する金属製の第2の丸棒材と、
前記RFタグと、前記第1の丸棒材と、前記第2の丸棒材とを支持する支持体とを備え、
前記第1の丸棒材と前記第2の丸棒材とが平行に配置され、
前記RFタグと、前記第1の丸棒材と、前記第2の丸棒材とは、前記第1の丸棒材の長さ方向及び前記第2の丸棒材の長さ方向に直交する直線に対して線対称に配置され、
前記RFタグの指向方向を前記第1の丸棒材の長さ方向及び前記第2の丸棒材の長さ方向に直交する方向に一致させて、前記第1の丸棒材から前記第2の丸棒材に向かう方向の指向性を強くする構成にし
、
前記支持体は、前記第1の丸棒材及び前記第2の丸棒材を、前記指向性を強くする方向にスライド可能に支持することを特徴とする無線通信機器。
【請求項2】
前記第2の丸棒材は複数本あり、前記指向性を強くする方向に所定の間隔で並べられることを特徴とする請求項1に記載の無線通信機器。
【請求項3】
前記第2の丸棒材が、前記指向性を強くする方向に対して垂直に四方向に延びるように配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信機器。
【請求項4】
前記第1の丸棒材が、前記指向性を強くする方向に対して垂直に四方向に延びるように配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線通信機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFタグを用いた無線通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
製造工場等において、製品等の識別や管理にRFタグが利用されることがある。固有情報が埋め込まれたRFタグを製品等に取り付けておき、リーダ/ライタが無線通信によりRFタグと情報をやり取りすることにより、製品等の物流管理や位置管理を実現することができる。
【0003】
RFタグとしては、内蔵電池により駆動するアクティブ型と、電池を保有せず、外部から受信する電波をエネルギー源として駆動するパッシブ型とがある。アクティブ型のRFタグは、通信距離を長距離とすることが可能であるが、単価が高く、また、内蔵電池の残容量を把握する必要があり、多数の製品等を取り扱う製造工場等ではほとんど採用されていない。それに対して、パッシブ型のRFタグは、単価が安く、電池の残容量を管理する必要がないことから、製造工場等で採用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パッシブ型のRFタグは、一般的に通信距離が5~6[m]程度であり、用途によっては通信距離を延ばすことが求められる。
RFタグの通信距離を延ばすために、例えばRFタグ内部のアンテナの面積、長さ、形状等を改良することが考えられるが、RFタグのメーカ側での対応となり、また、単価が高くなってしまう。
【0006】
通信距離を延ばすには、指向性を強くすることが考えられる。例えば特許文献1には、既存のRFIDタグの指向性を容易に可変にすることを目的として、RFIDタグを取付けるためのタグ取付け位置を予め印したベースプレートと、ベースプレート上に予め設けた無給電素子とを備えるRFIDタグ用アタッチメントが開示されている。ベースプレートをプリント基板材で形成し、該プリント基板材上に無給電素子のアンテナエレメントのパターンをエッチング加工で形成する構成になっている。しかしながら、特許文献1のようにプリント基板材上でアンテナエレメントを構築するといった二次元構造では、直線偏波(水平偏波又は垂直偏波)にしか対応できず、また、RFタグの周波数や形状によっては、対応できるRFIDタグが限定されることがあり、無線通信機能が限定的なものとなってしまう。
【0007】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、既存の一般的なRFタグを用いて、通信距離を延ばし、無線通信機能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] パッシブ型のRFタグと、
前記RFタグから離して配置された、反射器として機能する金属製の第1の丸棒材と、
前記RFタグを挟んで前記第1の丸棒材と反対側にて前記RFタグから離して配置された、導波器として機能する金属製の第2の丸棒材と、
前記RFタグと、前記第1の丸棒材と、前記第2の丸棒材とを支持する支持体とを備え、
前記第1の丸棒材と前記第2の丸棒材とが平行に配置され、
前記RFタグと、前記第1の丸棒材と、前記第2の丸棒材とは、前記第1の丸棒材の長さ方向及び前記第2の丸棒材の長さ方向に直交する直線に対して線対称に配置され、
前記RFタグの指向方向を前記第1の丸棒材の長さ方向及び前記第2の丸棒材の長さ方向に直交する方向に一致させて、前記第1の丸棒材から前記第2の丸棒材に向かう方向の指向性を強くする構成に、
前記支持体は、前記第1の丸棒材及び前記第2の丸棒材を、前記指向性を強くする方向にスライド可能に支持することを特徴とする無線通信機器。
[2] 前記第2の丸棒材は複数本あり、前記指向性を強くする方向に所定の間隔で並べられることを特徴とする[1]に記載の無線通信機器。
[3] 前記第2の丸棒材が、前記指向性を強くする方向に対して垂直に四方向に延びるように配置されることを特徴とする[1]又は[2]に記載の無線通信機器。
[4] 前記第1の丸棒材が、前記指向性を強くする方向に対して垂直に四方向に延びるように配置されることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の無線通信機器。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、既存の一般的なRFタグを用いて、通信距離を延ばし、無線通信機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る無線通信機器の構成を示す図である。
【
図2】RFタグに対する反射器の位置と通信距離との関係の一例を示す特性図である。
【
図3】実施形態に係る無線通信機器の使用例を説明するための模式図である。
【
図4】本発明を適用した無線通信機器の変形例を説明するための模式図である。
【
図5】丸棒材をクロスするように配置する構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1に、実施形態に係る無線通信機器1の構成を示す。
図1(a)は実施形態に係る無線通信機器1の平面図、(b)は左側面図である。実施形態に係る無線通信機器1は、RFタグの前後に導波器及び反射器が配置される構成になっている。本願においては、以下に詳述するようにRFタグの指向性を強くすることができるが、その指向方向D(
図1中の矢印を参照)を前方として各方向を説明する。
【0012】
図1に示すように、例えば角柱材からなる支持体2の上面にタグ用ステージ3が設けられており、このタグ用ステージ3に、固有情報が埋め込まれたRFタグ4が設置される。RFタグ4を設置する際には、その指向方向を支持体2の長手方向に一致させる。RFタグ4としては市販されている既存のものを用いればよく、本実施形態では周波数帯がUHF帯を含む全てのパッシブ型のRFタグが使用される。なお、
図1に示すRFタグは一例に過ぎず、その形状や大きさ等は限定されるものではなく、多種多様なRFタグの形状や大きさの相違に対応可能である。また、タグ用ステージ3にRFタグ4を設置するときは、ネジ等を用いてRFタグ4を固定すればよいが、その設置の仕方も限定されるものではない。
【0013】
RFタグ4の後方には、反射器として機能する金属製の丸棒材5が配置される。丸棒材5は、支持体2の上面に装着された保持部材6によって保持されて、
図1(a)に示すように、平面視において支持体2に直交する。丸棒材5は、RFタグ4から所定の距離L
1だけ離して配置される。丸棒材5としては、例えばアルミニウム合金製のパイプ材が用いられ、適宜な長さH
1及び径を有する。なお、丸棒材5が本発明でいう第1の丸棒材に相当する。
【0014】
また、RFタグ4を挟んで丸棒材5と反対側、すなわちRFタグ4の前方には、導波器として機能する2本の金属製の丸棒材7a、7bが配置される。丸棒材7a、7bは、支持体2の上面に装着された保持部材8によってそれぞれ保持されて、
図1(a)に示すように、平面視において支持体2に直交する。すなわち、丸棒材7a、7bは、丸棒材5と平行に配置される。丸棒材7aは、RFタグ4から所定の距離L
2だけ離して配置される。また、丸棒材7bは、丸棒材7aから所定の距離L
2だけ離して配置される。このように複数本の丸棒材7a、7b、・・・が配置される場合、RFタグ4から指向方向Dに距離L
2の間隔で並べられる。丸棒材7a、7bとしては、例えばアルミニウム合金製のパイプ材が用いられ、適宜な長さH
2(<丸棒材5の長さH
1)及び径を有する。なお、丸棒材7a、7bが本発明でいう第2の丸棒材に相当する。
【0015】
図1(b)に示すように、側面視において丸棒材5及び丸棒材7a、7bは同程度の高さ位置となるように、また、RFタグ4に対して適宜な高さ位置となるように配置される。
【0016】
次に、無線通信機器1の構造設計パラメータについて詳述する。無線通信機器1の構造設計パラメータは、RFタグ4の周波数帯λに応じて設定される。なお、以下では、丸棒材5を反射器5と呼び、丸棒材7a、7bを導波器7a、7bと呼ぶこともある。また、導波器をまとめて符号7を用いて説明することもある。
RFタグ4と反射器5との距離L
1は、λ/4波長程度に設定される。例えばRFタグ4の周波数帯が920MHzであれば、L
1=80[mm]±許容誤差となる。
図2に、RFタグに対する反射器の位置と通信距離との関係の一例を示す。
図2は、920MHz帯のRFタグに対して、金属製の丸棒材からなる反射器の位置を変えときの通信距離を実験的に得た結果を表わす(特性線201を参照)。なお、特性線202は、RFタグだけ(反射器なし)の場合の距離を表わす。この結果からもわかるように、距離L
1を80[mm]前後に設定すれば、通信距離を最も延ばすことができる。
また、RFタグ4と導波器7aとの距離L
2、及び、導波器7aと導波器7bとの距離L
2も、λ/4波長程度(L
2=80[mm]±許容誤差)に設定される。
【0017】
反射器5の長さH1は、λ/2波長(160[mm])よりも長く設定され、本実施形態では175[mm]に設定されている。それに対して、導波器7a、7bの長さH2は、λ/2波長(160[mm])よりも短く設定され、本実施形態では137[mm]に設定されている。
なお、反射器5の径及び導波器7a、7bの径は、本実施形態ではいずれも直径4[mm]に設定されている。
【0018】
このようにした無線通信機器1では、反射器5及び導波器7a、7bを備えることにより、既存のRFタグ4を用いて、指向性を強くして通信距離を延ばすことができる。
図1に矢印Dで示すように、反射器5からRFタグ4、導波器7a、7bに向かう方向、別の言い方をすれば支持体2の長手方向が指向方向Dになる。
本発明者が実験したところ、反射器5及び導波器7a、7bをいずれも設置しない場合、すなわちRFタグ4そのものの通信距離を1とすると、反射器5を設置する場合(
図1において導波器7a、7bを省略した場合)、通信距離は約1.5倍となった。また、反射器5及び1本の導波器7aを設置する場合(
図1において導波器7bを省略した場合)、通信距離は約2.0倍となった。また、
図1に示すように反射器5及び2本の導波器7a、7bを設置する場合、通信距離は約3.0倍となった。このようにRFタグ4の通信距離が5~6[m]程度であれば、通信距離が10[m]を超えるようにすることも可能となり、通信距離を飛躍的に延ばすことができる。
【0019】
なお、
図1に示す無線通信機器1の構成は一例であり、各部の形状等は限定されるものではない。反射器5だけでも通信距離を延ばすことができるので、導波器7を省いてもよい。また、通信距離をより延ばしたいときには、導波器7を3本以上としてもよい。
【0020】
また、
図1では支持体2の上面に保持部材6、8を装着して丸棒材5、7a、7bを保持する構成例としたが、その構成は限定されるものではない。例えば支持体2の左右側面を貫通させるようにして丸棒材5、7a、7bを保持する構成にしてもよい。
【0021】
また、反射器5を保持する保持部材6を支持体2の長手方向にスライド可能として、反射器5の位置(距離L1)を可変とする構成にしてもよい。同様に、導波器7を保持する保持部材8を支持体2の長手方向にスライド可能として、導波器7の位置(距離L2)を可変とする構成にしてもよい。この場合、搭載するRFタグ4の周波数帯に合わせて反射器5や導波器7の位置を任意に変えることができるので、使用可能なRFタグ4の種類に係らず、製造工場等の要求事項に適することが可能となる。
【0022】
次に、
図3を参照して、無線通信機器1の使用例を説明する。無線通信機器1では、指向性を強くして通信距離を延ばすことができるので、例えば一列に並ぶ対象物を識別するのに好適に利用することができる。
図3の例は、レール上を走行する貨車101の連結、切り離しを識別できるようにした使用例である。
各貨車101に、無線通信機器1を設置する。貨車101が前後いずれでも連結可能である場合、一台の貨車101に一対の無線通信機器1を設置し、一方を前方向に指向性を持たせるようにし、他方を後方向に指向性を持たせるようにする。また、牽引車102に、リーダ103を設置する。リーダ103のアンテナ104としては、指向性を持たせるために例えば八木・宇田アンテナを用いる。無線通信機器1とアンテナ104とは、相互に通信可能な高さ位置となるようにそれぞれ設置される。
【0023】
このようにした使用例では、リーダ103が無線通信により各無線通信機器1のRFタグ4と情報をやり取りすることにより、牽引車102に連結する(或いは連結しようとする)貨車101を識別することができる。この場合に、上述したように一台の貨車101に一対の無線通信機器1を設置しておけば、貨車101ごとにその前後いずれが牽引車102の方向に向いているかまで識別することができる。
また、リーダ103と無線通信機器1とが無線通信する電波の強度に基づいて、その間の距離を推定することも可能であり、牽引車102に対してどういった順番で貨車101が並んでいるかまで識別することができる。
【0024】
以下、本発明を適用した無線通信機器の無線通信機能について説明する。なお、各構成要素には、実施形態の無線通信機器1と共通の符号を付して説明する。
まず、本発明を適用した無線通信機器1では、無線通信機器1やアンテナ104の傾きに対応可能となる。この点について説明する。
RFタグ4の偏波特性が直線偏波(水平偏波又は垂直偏波)である場合、
図4(a)に示すように、水平方向に延出する反射器5及び水平方向に延出する導波器7を備える無線通信機器1では、アンテナ104との間で偏波方向が合っていれば、RFタグ4を確実に検知することができる。
しかしながら、
図4(b)に示すように、指向方向Dを軸とする回転方向に無線通信機器1とアンテナ104とが相対的に傾くと、無線通信機器1とアンテナ104との間で偏波方向がずれて、通信距離が徐々に短くなる。このように無線通信機器1とアンテナ104との相対的な傾きによっては、RFタグ4の未検知が発生するおそれがある。
【0025】
そこで、
図4(c)に示すように、RFタグ4の偏波特性を円偏波とするとともに、反射器5及び導波器7をそれぞれクロスするように配置する、すなわち反射器5及び導波器7をそれぞれ指向方向Dに対して垂直に四方向に延びるように配置する。なお、クロスするように配置する場合も、反射器5及び導波器7は相互に平行に配置する。このようにクロスアンテナ化することにより、指向方向Dを軸とする回転方向に無線通信機器1とアンテナ104とが相対的に傾いたとしても(例えば
図4(c)に示すように、アンテナ104が傾いたとしても)、すなわち無線通信機器1とアンテナ104との間で偏波方向がずれても、RFタグ4を確実に検知することができる。
【0026】
図5に、反射器5や導波器7をクロスするように配置する構成例を示す。支持体2の左右側面を貫通させるようにして反射器5(又は導波器7)を配設し、また、支持体2の上下面を貫通させるようにして反射器5(又は導波器7)を配設する。クロスさせる位置は指向方向Dの同位置であるのが好ましいが、
図5に示すように、略同位置とみなせる範囲であれば、指向方向Dでずれがあってもよい。
図2に示すように、RFタグに対する反射器の位置がわずかにずれたとしても、通信距離に影響はないからである(導波器についても同様である)。
【0027】
以上のとおり、丸棒材からなる反射器5や導波器7を用いる構造により、特許文献1にあるような二次元構造では困難であった円偏波にも対応でき、無線通信機器1やアンテナ104の傾きに対応可能となる。無線通信機器1やアンテナ104の傾きが変動するような使用環境下であれば、
図4(c)で説明したようにクロスアンテナ化すればよい。なお、
図3で説明した使用例の場合は、貨車101や牽引車102に設置される無線通信機器1やアンテナ104が指向方向Dを軸とする回転方向に大きく傾くことはないので、
図1や
図4(a)で説明した形態で対応できる。
【0028】
次に、本発明を適用した無線通信機器1では、対応できる周波数の帯域幅を広くして、使用可能なRFIDタグ4が限定されないようにすることができる。この点について説明する。
RFタグ4は、混信防止目的のため、周波数に幅を持っており、例えばf0=920MHz帯のRFタグでは910MHz~922MHzの幅がある。
ここで、共振条件(回路を流れる電流が最も大きくなる=RFタグ4からの電波が最も大きくなる条件)は、下記のとおりである。なお、√(LC)の表記は(LC)の上に√が付されているものとする。
f0(共振周波数)=1/2π√(LC)
ω0(共振角周波数)=2πf0
このように共振周波数f0は、インダクタンス分L及びキャパシタンス分Cとで決まる。インダクタンス分Lは、電磁エネルギーを貯める能力の大きさを示すものであり、物質の性質から決まる。キャパシタンス分Cは、電気エネルギーを貯める能力の大きさを示すものであり、物質の性質から決まる。
【0029】
特許文献1にあるような二次元構造でも、本発明のように丸棒材からなる反射器5や導波器7を用いる構造でも、長さが同一であれば、そのインダクタンス分Lは同一とみなされる。その一方で、丸棒材からなる反射器5や導波器7を用いる構造では、その径又は表面積を大きくすると、インダクタンス分Lが持つキャパシタンス分が浮遊静電容量等のストレーキャパシティによって大きくなり、その結果、キャパシタンス分Cが増加方向となる。二次元構造と比べて、丸棒材からなる反射器5や導波器7を用いる構造の場合、同一の幅であれば表面積は3.14倍になり、より大きい静電容量を持つことができる。
【0030】
ここで、Q値は下記のように表わされ、キャパシタンス分Cの増加がある場合にQ値は低下する。抵抗分Rは、電気エネルギーを消費する能力の大きさを示すものであり、物質の性質から決まる。なお、√(L/C)の表記は(L/C)の上に√が付されているものとする。
Q=ω0L/R=1/ω0CR=1/R・√(L/C)
【0031】
また、Q値は下記のように表わされる。
Q=ω0/ω2-ω1
ω0:中心角周波数(共振角周波数)
ω2:上限角周波数
ω1:下限角周波数
Q値の低下は、上限角周波数ω2と下限角周波数ω1の差(半値幅と呼ばれる)が大きいことに等価であることから、帯域幅が広くなることになる。
【0032】
以上のとおり、二次元構造では、上限角周波数ω2と下限角周波数ω1の差が小さく、対応できる周波数の帯域幅が狭くなって、使用可能なRFIDタグが限定される。上述したように、例えば920MHz帯のRFタグであっても910MHz~922MHzの幅があるが、その幅での周波数の違いでも無線通信機能が悪くなってしまうおそれがある。
それに対して、丸棒材からなる反射器5や導波器7を用いる構造により、キャパシタンス分Cが増加し、その結果、Q値が小さくなる。換言すれば、上限角周波数ω2と下限角周波数ω1の差が大きくなるので、対応できる周波数の帯域幅を広くして、使用可能なRFIDタグ4が限定されないようにすることができる。
【0033】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
例えば
図3で説明した使用例は一例に過ぎず、本発明を適用した無線通信機器は、製品等の物流管理や位置管理に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1:無線通信機器、2:支持体、3:タグ用ステージ、4:RFタグ、5:反射器(丸棒材)、6:保持部材、7、7a、7b:導波器(丸棒材)、8:保持部材