(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】抗C5抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20220301BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220301BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220301BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220301BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220301BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220301BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220301BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20220301BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220301BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20220301BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220301BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220301BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220301BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 M
A61P13/12
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P9/00
A61P13/00
A61P27/02
A61P7/04
A61P15/00
A61P29/00
A61P17/00
A61P25/00
A61P17/02
(21)【出願番号】P 2017162934
(22)【出願日】2017-08-28
(62)【分割の表示】P 2017118226の分割
【原出願日】2017-06-16
【審査請求日】2020-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2016120325
(32)【優先日】2016-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】類家 慶直
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 全次郎
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6879751(JP,B2)
【文献】特許第6088703(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態の治療における使用のための、
抗C5抗体
を含む薬学的製剤であって、
該抗体が、
(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:118~120のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) 配列番号:123または124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、薬学的製剤。
【請求項2】
血漿からのC5のクリアランスの増強における使用のための、
抗C5抗体
を含む薬学的製剤であって、
該抗体が、
(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:118~120のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) 配列番号:123または124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、薬学的製剤。
【請求項3】
前記抗体が、
(i)(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:118のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) 配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3;
(ii)(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:119のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) 配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3;
(iii)(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:118のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) 配列番号:124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3;または
(iv)(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:120のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) 配列番号:124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項1または2に記載の薬学的製剤。
【請求項4】
前記抗体が、
[I] 配列番号:33、34、35、114、115、および116のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;ならびに
[II] 配列番号:36、37、および38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項5】
前記抗体が、配列番号:114のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域および配列番号:38のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、請求項4に記載の薬学的製剤。
【請求項6】
前記抗体が、全長IgG1抗体または全長IgG4抗体である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
薬学的製剤。
【請求項7】
C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を治療するための薬学的製剤の製造における、抗C5抗体の使用であって、該抗体が、
(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:118~120のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) 配列番号:123または124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、使用。
【請求項8】
血漿からのC5のクリアランスを増強するための薬学的製剤の製造における、抗C5抗体の使用であって、該抗体が、
(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:118~120のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) 配列番号:123または124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、使用。
【請求項9】
前記抗体が、
(i)(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:118のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) 配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3;
(ii)(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:119のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) 配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3;
(iii)(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:118のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) 配列番号:124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3;または
(iv)(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:120のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e) 配列番号:124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(f) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
前記抗体が、
[I] 配列番号:33、34、35、114、115、および116のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖定常領域;ならびに
[II] 配列番号:36、37、および38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域をさらに含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記抗体が、配列番号:114のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域および配列番号:38のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記抗体が、全長IgG1抗体または全長IgG4抗体である、請求項7~11のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗C5抗体およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
補体系は、免疫複合体のクリアランスにおいて、ならびに感染性病原体、外来抗原、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞に対する免疫応答において、中心的な役割を果たしている。約25~30種の補体タンパク質が存在しており、これらは血漿タンパク質と膜補因子の複雑な集合体として見出される。補体成分は、一連の複雑な酵素切断および膜結合事象において相互作用することによって、それらの免疫防御機能を達成する。結果として生じる補体カスケードは、オプソニン機能、免疫調節機能、および細胞溶解機能を有する産物の製造を導く。
【0003】
補体系は3つの異なる経路:古典経路、レクチン経路、および副経路を介して活性化されることが、現在、広く受け入れられている。これらの経路は多くの要素を共有しており、初期の段階では異なっているが、収束し、標的細胞の活性化および破壊に関与する同じ終末補体成分(C5からC9)を共有している。
【0004】
古典経路は、通常、抗原-抗体複合体の形成によって活性化される。これとは無関係に、レクチン経路の活性化の第1段階は、マンナン結合レクチン(MBL)、H-フィコリン、M-フィコリン、L-フィコリン、およびC型レクチンCL-11などの特定のレクチンの結合である。対照的に副経路は、低レベルのターンオーバー活性化を自発的に受け、これは、外来のまたは他の異常な表面(細菌、酵母、ウイルス感染細胞、または損傷組織)上で容易に増幅され得る。これらの経路は、補体成分C3が活性プロテアーゼによって切断されてC3aとC3bをもたらす箇所で収束する。
【0005】
C3aはアナフィラトキシンである。C3bは、細菌および他の細胞だけでなく、特定のウイルスおよび免疫複合体にも結合し、循環からの除去のためにそれらをタグ付けする(オプソニンとして知られる役割)。C3bはまた、他の成分と複合体を形成してC5転換酵素を形成し、これはC5をC5aとC5bに切断する。
【0006】
C5は、約80μg/ml(0.4μM)で正常血清中に見出される190kDaのタンパク質である。C5はグリコシル化されており、その質量の約1.5~3%が炭水化物に起因する。成熟C5は、75kDaのβ鎖にジスルフィド結合された115kDaのα鎖のヘテロダイマーである。C5は、1676アミノ酸の単鎖前駆タンパク質(プロC5前駆体)として合成される(例えば、特許文献1および特許文献2を参照されたい)。プロC5前駆体は切断され、アミノ末端断片としてβ鎖を、カルボキシル末端断片としてα鎖をもたらす。α鎖およびβ鎖ポリペプチド断片は、ジスルフィド結合を介して相互に連結されて、成熟C5タンパク質を構成する。
【0007】
成熟C5は、補体経路の活性化の間にC5aおよびC5b断片に切断される。C5aは、C5転換酵素によって、α鎖の最初の74アミノ酸を含むアミノ末端断片としてC5のα鎖から切断される。成熟C5の残りの部分は断片C5bであり、これはβ鎖にジスルフィド結合されたα鎖の残部を含む。11kDa質量のC5aの約20%は炭水化物に起因する。
【0008】
C5aは別のアナフィラトキシンである。C5bは、C6、C7、C8およびC9と結合して、標的細胞の表面で膜侵襲複合体(MAC、C5b-9、終末補体複合体(TCC))を形成する。充分な数のMACが標的細胞膜に挿入されると、MAC孔が形成され、標的細胞の急速な浸透圧溶解を媒介する。
【0009】
上述したように、C3aおよびC5aはアナフィラトキシンである。これらは、マスト細胞の脱顆粒を誘発することができ、これによりヒスタミンおよび他の炎症メディエーターが放出され、このことが平滑筋の収縮、血管透過性の増加、白血球の活性化、および他の炎症現象、例えば、細胞過形成をもたらす細胞増殖をもたらす。C5aはまた、好中球、好酸球、好塩基球および単球などの顆粒球を補体活性化部位に引き寄せるのに役立つ走化性ペプチドとしても機能する。
【0010】
C5aの活性は、C5aからカルボキシ末端アルギニンを除去してC5a-des-Arg誘導体を形成する血漿酵素カルボキシペプチダーゼNによって、調節される。C5a-des-Argは、未改変C5aのアナフィラキシー活性および多形核球走化活性(polymorphonuclear chemotactic activity)のうちたった1%しか示さない。
【0011】
適切に機能する補体系は、感染微生物に対する強固な防御を提供するが、補体の不適切な調節または活性化は、例えば以下を含む、種々の障害の病因に関与している:関節リウマチ(RA);ループス腎炎;虚血再灌流障害;発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH);非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS);デンスデポジット病(DDD);黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性症(AMD)); HELLP(hemolysis, elevated liver enzymes, and low platelets)症候群;血栓性血小板減少性紫斑病(TTP);自然胎児消失;寡免疫性血管炎;表皮水疱症;習慣性流産;多発性硬化症(MS);外傷性脳損傷;ならびに、心筋梗塞、心肺バイパスおよび血液透析に起因する損傷(例えば、非特許文献1を参照されたい)。したがって、補体カスケードの過剰な活性化または制御されない活性化の抑制は、このような疾患を有する患者に臨床的恩恵をもたらすことができる。
【0012】
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)はまれな血液障害であり、この疾患では赤血球が傷つけられ、そのため正常な赤血球よりも急速に破壊される。PNHは、X染色体上に位置するPIG-A(ホスファチジルイノシトールグリカンクラスA)遺伝子の体細胞変異を有する造血幹細胞のクローン増殖に起因する。PIG-Aの変異は、多くのタンパク質を細胞表面につなぎ止めるのに必要とされる分子、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)の合成の初期阻害を導く。その結果、PNHの血液細胞は、補体調節タンパク質CD55およびCD59を含むGPIアンカー型タンパク質が不足している。正常な状況下では、これらの補体調節タンパク質は細胞表面上でのMACの形成を阻止し、それによって赤血球の溶解を防止している。GPIアンカー型タンパク質が存在しないことは、PNHにおける補体介在性溶血を引き起こす。
【0013】
PNHは、溶血性貧血(赤血球数の減少)、ヘモグロビン尿症(尿中のヘモグロビンの存在、特に睡眠後に顕著)、およびヘモグロビン血症(血流中のヘモグロビンの存在)によって特徴づけられる。PNHに罹患した個体は、暗色の尿の出現としてここでは定義される発作を有することが、知られている。溶血性貧血は、補体成分による赤血球の血管内破壊によるものである。その他の知られている症状としては、言語障害、疲労、勃起不全、血栓症および再発性腹痛が挙げられる。
【0014】
エクリズマブは、補体タンパク質C5に対するヒト化モノクローナル抗体であり、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)および非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の治療のために承認された最初の治療薬である(例えば、非特許文献2を参照されたい)。エクリズマブは、C5転換酵素によるC5のC5aおよびC5bへの切断を阻害し、これによって、終末補体複合体C5b-9の生成を防止する。C5aとC5b-9はどちらも、PNHおよびaHUSに特徴的である終末補体介在性の事象を引き起こす(さらに、特許文献3、特許文献4、特許文献5、および特許文献6も参照されたい)。
【0015】
いくつかの報告が抗C5抗体を記述している。例えば、特許文献7は、C5のα鎖に結合するがC5aには結合せず、C5の活性化を阻止する抗C5抗体を記載し、一方で、特許文献8は、C5aの形成を阻害する抗C5モノクローナル抗体を記載した。他方、特許文献9は、C5のα鎖上のC5転換酵素のためのタンパク質分解部位を認識して、C5のC5aおよびC5bへの転換を阻害する抗C5抗体を記載した。特許文献10は、少なくとも1×107M-1のアフィニティ定数を有する抗C5抗体を記載した。
【0016】
抗体(IgG)は、新生児型Fc受容体(FcRn)に結合し、長い血漿滞留時間を有する。IgGのFcRnへの結合は、典型的には酸性条件(例えば、pH6.0)下で観察され、中性条件(例えば、pH7.4)下ではめったに観察されない。典型的には、IgGは、エンドサイトーシスを介して細胞内に非特異的に取り込まれ、エンドソーム内の酸性条件下でエンドソームのFcRnに結合することによって細胞表面に戻る。その後、IgGは、血漿中の中性条件下でFcRnから解離する。FcRnに結合できなかったIgGは、リソソームで分解される。酸性条件下でのIgGのFcRn結合能が、そのFc領域に変異を導入することによって失われた場合、IgGはエンドソームから血漿中へとリサイクルされず、このことは、IgGの血漿中滞留性の著しい低下を導く。IgGの血漿中滞留性を向上させるために、酸性条件下でのそのFcRn結合を高める方法が報告されている。酸性条件下でのIgGのFcRn結合がそのFc領域にアミノ酸置換を導入することによって改善された場合、IgGはエンドソームから血漿中へとより効率的にリサイクルされ、かつそれによって、向上した血漿中滞留性を示す。その一方で、中性条件下で増強されたFcRn結合を有するIgGは、それがエンドソーム内の酸性条件下でのFcRnへのその結合を介して細胞表面に戻る場合でさえ、血漿中で中性条件下でFcRnから解離せず、かつ結果的に、その血漿中滞留性は変化しないままであるか、あるいはむしろ悪化することも、報告されている(例えば、非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5を参照されたい)。
【0017】
最近、pH依存的様式で抗原に結合する抗体が報告されている(例えば、特許文献11および特許文献12を参照されたい)。これらの抗体は、血漿中の中性条件下で抗原に強く結合し、エンドソーム中の酸性条件下で抗原から解離する。抗原から解離した後、該抗体は、FcRnを介して血漿へとリサイクルされた際に抗原に再び結合できるようになる。こうして、単一の抗体分子が、複数の抗原分子に繰り返し結合することができる。一般に、抗原の血漿中滞留性は、上述したFcRn介在性のリサイクル機構を有する抗体のそれよりもはるかに短い。したがって、抗原が抗体に結合すると、該抗原は通常、延長された血漿中滞留性を示し、これは、該抗原の血漿中濃度の増加をもたらす。一方、pH依存的様式で抗原に結合する上記の抗体は、FcRn介在性のリサイクル過程の間にエンドソーム内で抗原から解離するため、典型的な抗体よりも迅速に血漿から抗原を排除することが報告されている。特許文献13もまた、C5に対してpH依存的結合する抗体が抗原のノックダウンを引き延ばすことができることを示すコンピュータモデリング解析を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許第6,355,245号
【文献】米国特許第7,432,356号
【文献】WO2005/074607
【文献】WO2007/106585
【文献】WO2008/069889
【文献】WO2010/054403
【文献】WO95/29697
【文献】WO02/30985
【文献】WO2004/007553
【文献】WO2010/015608
【文献】WO2009/125825
【文献】WO2011/122011
【文献】WO2011/111007
【非特許文献】
【0019】
【文献】Holers et al., Immunol. Rev. 223:300-316 (2008)
【文献】Dmytrijuk et al., The Oncologist 13(9):993-1000 (2008)
【文献】Yeung et al., J Immunol. 182(12): 7663-7671 (2009)
【文献】Datta-Mannan et al., J Biol. Chem. 282(3):1709-1717 (2007)
【文献】Dall'Acqua et al., J. Immunol. 169(9):5171-5180 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、抗C5抗体およびその使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、抗C5抗体およびそれを使用する方法を提供する。
[1] C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態の治療における使用のための、C5に結合する抗体であって、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5のβ鎖内のエピトープに結合する、抗体。
[2] 血漿からのC5のクリアランスの増強における使用のための、C5に結合する抗体であって、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5のβ鎖内のエピトープに結合する、抗体。
[3] C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を治療するための医薬品の製造における、C5に結合する抗体の使用であって、該抗体が、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5のβ鎖内のエピトープに結合する、使用。
[4] 血漿からのC5のクリアランスを増強するための医薬品の製造における、C5に結合する抗体の使用であって、該抗体が、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5のβ鎖内のエピトープに結合する、使用。
[5] C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療する方法であって、C5に結合する抗体の有効量を個体に投与する工程を含み、該抗体が、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5のβ鎖内のエピトープに結合する、方法。
[6] 個体における血漿からのC5のクリアランスを増強する方法であって、血漿からのC5のクリアランスを増強するために、C5に結合する抗体の有効量を個体に投与する工程を含み、該抗体が、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5のβ鎖内のエピトープに結合する、方法。
[7] 前記抗体が、以下からなる群より選択される特性:
(a) 該抗体はC5 (配列番号:39)のアミノ酸D51およびK109と接触する;
(b) C5 (配列番号:39)に対する該抗体のアフィニティは、配列番号:39のE48A置換からなるC5変異体に対する該抗体のアフィニティよりも大きい;ならびに
(c) 該抗体は配列番号:40のアミノ酸配列からなるC5タンパク質にはpH7.4で結合するが、H72Y置換を有する配列番号:39のアミノ酸配列からなるC5タンパク質にはpH7.4で結合しない
を有する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[8] 前記抗体が、C5への結合に関して、
(a) 配列番号:1のVHおよび配列番号:11のVL;
(b) 配列番号:5のVHおよび配列番号:15のVL;
(c) 配列番号:4のVHおよび配列番号:14のVL;
(d) 配列番号:6のVHおよび配列番号:16のVL;
(e) 配列番号:2のVHおよび配列番号:12のVL;
(f) 配列番号:3のVHおよび配列番号:13のVL;
(g) 配列番号:9のVHおよび配列番号:19のVL;
(h) 配列番号:7のVHおよび配列番号:17のVL;
(i) 配列番号:8のVHおよび配列番号:18のVL;ならびに
(j) 配列番号:10のVHおよび配列番号:20のVL
から選択されるVHとVLの対を含む抗体と競合する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[9] 前記抗体が、C5のβ鎖のMG1-MG2ドメイン内のエピトープに結合する、[1]~[8]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[10] 前記抗体が、C5のβ鎖(配列番号:40)のアミノ酸33-124からなる断片内のエピトープに結合する、[1]~[9]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[11] 前記抗体が、アミノ酸47-57、70-76、および107-110からなる群より選択される少なくとも1つの断片を含む、C5のβ鎖(配列番号:40)内のエピトープに結合する、[1]~[10]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[12] 前記抗体が、Glu48、Asp51、His70、His72、Lys109、およびHis110からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む、C5のβ鎖(配列番号:40)の断片内のエピトープに結合する、[1]~[11]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[13] 前記抗体が、表2、7、または8に記載される抗体と同じエピトープに結合する、[1]~[12]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[14] 前記抗体がC5の活性化を阻害する、[1]~[13]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[15] 前記抗体が、C5変異体R885Hの活性化を阻害する、[1]~[14]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[16] 前記抗体がモノクローナル抗体である、[1]~[15]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[17] 前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、[1]~[16]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[18] 前記抗体が、C5に結合する抗体断片である、[1]~[17]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[19] 前記抗体が、(a)アミノ酸配列DX
1
GYX
2
X
3
PTHAMX
4
X
5
(ここでX
1
はGまたはA、X
2
はV、QまたはD、X
3
はTまたはY、X
4
はYまたはH、X
5
はLまたはYである)(配列番号:128)を含むHVR-H3と、(b)アミノ酸配列QX
1
TX
2
VGSSYGNX
3
(ここでX
1
はS、C、NまたはT、X
2
はFまたはK、X
3
はA、TまたはHである)(配列番号:131)を含むHVR-L3と、(c)アミノ酸配列X
1
IX
2
TGSGAX
3
YX
4
AX
5
WX
6
KG(ここでX
1
はC、AまたはG、X
2
はYまたはF、X
3
はT、DまたはE、X
4
はY、KまたはQ、X
5
はS、DまたはE、X
6
はAまたはVである)(配列番号:127)を含むHVR-H2とを含む、[1]~[18]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[20] 前記抗体が、(a)アミノ酸配列SSYYX
1
X
2
(ここでX
1
はMまたはV、X
2
はCまたはAである)(配列番号:126)を含むHVR-H1と、(b)アミノ酸配列X
1
IX
2
TGSGAX
3
YX
4
AX
5
WX
6
KG(ここでX
1
はC、AまたはG、X
2
はYまたはF、X
3
はT、DまたはE、X
4
はY、KまたはQ、X
5
はS、DまたはE、X
6
はAまたはVである)(配列番号:127)を含むHVR-H2と、(c)アミノ酸配列DX
1
GYX
2
X
3
PTHAMX
4
X
5
(ここでX
1
はGまたはA、X
2
はV、QまたはD、X
3
はTまたはY、X
4
はYまたはH、X
5
はLまたはYである)(配列番号:128)を含むHVR-H3とを含む、[1]~[18]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[21] 前記抗体が、(a)アミノ酸配列X
1
ASQX
2
IX
3
SX
4
LA(ここでX
1
はQまたはR、X
2
はN、QまたはG、X
3
はGまたはS、X
4
はD、KまたはSである)(配列番号:129)を含むHVR-L1と;(b)アミノ酸配列GASX
1
X
2
X
3
S(ここでX
1
はK、EまたはT、X
2
はLまたはT、X
3
はA、H、EまたはQである)(配列番号:130)を含むHVR-L2と;(c)アミノ酸配列QX
1
TX
2
VGSSYGNX
3
(ここでX
1
はS、C、NまたはT、X
2
はFまたはK、X
3
はA、TまたはHである)(配列番号:131)を含むHVR-L3とをさらに含む、[20]に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[22] 前記抗体が、(a)アミノ酸配列X
1
ASQX
2
IX
3
SX
4
LA(ここでX
1
はQまたはR、X
2
はN、QまたはG、X
3
はGまたはS、X
4
はD、KまたはSである)(配列番号:129)を含むHVR-L1と;(b)アミノ酸配列GASX
1
X
2
X
3
S(ここでX
1
はK、EまたはT、X
2
はLまたはT、X
3
はA、H、EまたはQである)(配列番号:130)を含むHVR-L2と;(c)アミノ酸配列QX
1
TX
2
VGSSYGNX
3
(ここでX
1
はS、C、NまたはT、X
2
はFまたはK、X
3
はA、TまたはHである)(配列番号:131)を含むHVR-L3とを含む、[1]~[18]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[23] 前記抗体が、配列番号:132~134のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインフレームワークFR1と;配列番号:135~136のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインフレームワークFR2と;配列番号:137~139のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインフレームワークFR3と;配列番号:140~141のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインフレームワークFR4とをさらに含む、[20]に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[24] 前記抗体が、配列番号:142~143のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインフレームワークFR1と;配列番号:144~145のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインフレームワークFR2と;配列番号:146~147のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインフレームワークFR3と;配列番号:148のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインフレームワークFR4とをさらに含む、[22]に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[25] 前記抗体が、(a) 配列番号:10、106~110のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列;(b) 配列番号:20、111~113のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列;または(c) (a)のVH配列および(b)のVL配列を含む、[1]~[18]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[26] 前記抗体が、配列番号:10、106~110のいずれか1つのVH配列を含む、[25]に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[27] 前記抗体が、配列番号:20、111~113のいずれか1つのVL配列を含む、[25]に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[28] 前記抗体が、配列番号:10、106~110のいずれか1つのVH配列および配列番号:20、111~113のいずれか1つのVL配列を含む、[26]または[27]に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
[29] 前記抗体が、全長IgG1抗体または全長IgG4抗体である、[1]~[28]のいずれか一項に記載の使用のための抗体、使用、または方法。
【0022】
いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、C5のβ鎖内のエピトープに結合する。いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、C5のβ鎖のMG1-MG2ドメイン内のエピトープに結合する。いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、C5のβ鎖(配列番号:40)のアミノ酸33-124からなる断片内のエピトープに結合する。いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、アミノ酸47-57、70-76、および107-110からなる群より選択される少なくとも1つの断片を含む、C5のβ鎖(配列番号:40)内のエピトープに結合する。いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、配列番号:40のGlu48、Asp51、His70、His72、Lys109、およびHis110からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、C5のβ鎖(配列番号:40)の断片内のエピトープに結合する。さらなる態様において、該抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティで、C5に結合する。さらなる態様において、該抗体は、pH5.8においてよりもpH7.4においてより高いアフィニティでC5に結合する。別の態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、表2に記載される抗体と同じエピトープに結合する。さらなる態様において、該抗体は、pH5.8においてよりもpH7.4において高いアフィニティで、表2に記載される抗体と同じエピトープに結合する。さらなる態様において、本発明の抗C5抗体は、表7または8に記載される抗体と同じエピトープに結合する。さらなる態様において、該抗体は、pH5.8においてよりもpH7.4において高いアフィニティで、表7または8に記載される抗体と同じエピトープに結合する。
【0023】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5への結合に関して、以下から選択されるVHとVLの対を含む抗体と競合する:(a) 配列番号:1のVHおよび配列番号:11のVL;(b) 配列番号:5のVHおよび配列番号:15のVL;(c) 配列番号:4のVHおよび配列番号:14のVL;(d) 配列番号:6のVHおよび配列番号:16のVL;(e) 配列番号:2のVHおよび配列番号:12のVL;(f) 配列番号:3のVHおよび配列番号:13のVL;(g) 配列番号:9のVHおよび配列番号:19のVL;(h) 配列番号:7のVHおよび配列番号:17のVL;(i) 配列番号:8のVHおよび配列番号:18のVL;ならびに(j) 配列番号:10のVHおよび配列番号:20のVL。さらなる態様において、抗C5抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合する。さらなる態様において、抗C5抗体は、pH5.8においてよりもpH7.4において高いアフィニティでC5に結合する。
【0024】
いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、以下からなる群より選択される特性を有する:(a)該抗体はC5 (配列番号:39)のアミノ酸D51およびK109と接触する;(b) C5 (配列番号:39)に対する該抗体のアフィニティは、配列番号:39のE48A置換からなるC5変異体に対する該抗体のアフィニティよりも大きい;または(c)該抗体は配列番号:39のアミノ酸配列からなるC5タンパク質にはpH7.4で結合するが、H72Y置換を有する配列番号:39のアミノ酸配列からなるC5タンパク質にはpH7.4で結合しない。さらなる態様において、該抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合する。さらなる態様において、該抗体は、pH5.8においてよりもpH7.4において高いアフィニティでC5に結合する。
【0025】
いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、C5の活性化を阻害する。いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、C5変異体R885Hの活性化を阻害する。いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、C5に結合する抗体断片である。いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、全長IgG1抗体または全長IgG4抗体である。
【0026】
いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、(a)アミノ酸配列DX1GYX2X3PTHAMX4X5(ここでX1はGまたはA、X2はV、QまたはD、X3はTまたはY、X4はYまたはH、X5はLまたはYである)(配列番号:128)を含むHVR-H3と、(b)アミノ酸配列QX1TX2VGSSYGNX3(ここでX1はS、C、NまたはT、X2はFまたはK、X3はA、TまたはHである)(配列番号:131)を含むHVR-L3と、 (c)アミノ酸配列X1IX2TGSGAX3YX4AX5WX6KG(ここでX1はC、AまたはG、X2はYまたはF、X3はT、DまたはE、X4はY、KまたはQ、X5はS、DまたはE、X6はAまたはVである)(配列番号:127)を含むHVR-H2とを含む。
【0027】
いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、(a)アミノ酸配列SSYYX1X2(ここでX1はMまたはV、X2はCまたはAである)(配列番号:126)を含むHVR-H1と、(b)アミノ酸配列X1IX2TGSGAX3YX4AX5WX6KG(ここでX1 はC、AまたはG、X2 はYまたはF、X3 はT、DまたはE、X4 はY、KまたはQ、X5 はS、DまたはE、X6 はAまたはVである)(配列番号:127)を含むHVR-H2と、(c)アミノ酸配列DX1GYX2X3PTHAMX4X5(ここでX1はGまたはA、X2はV、QまたはD、X3はTまたはY、X4はYまたはH、X5はLまたはYである)(配列番号:128)を含むHVR-H3とを含む。さらなる態様において、該抗体は、(a)アミノ酸配列X1ASQX2IX3SX4LA(ここでX1はQまたはR、X2はN、QまたはG、X3はGまたはS、X4はD、KまたはSである)(配列番号:129)を含むHVR-L1と;(b)アミノ酸配列GASX1X2X3S(ここでX1はK、EまたはT、X2はLまたはT、X3はA、H、EまたはQである)(配列番号:130)を含むHVR-L2と;(c)アミノ酸配列QX1TX2VGSSYGNX3(ここでX1はS、C、NまたはT、X2はFまたはK、X3はA、TまたはHである)(配列番号:131)を含むHVR-L3とを含む。
【0028】
いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、(a)アミノ酸配列X1ASQX2IX3SX4LA(ここでX1はQまたはR、X2はN、QまたはG、X3はGまたはS、X4はD、KまたはSである)(配列番号:129)を含むHVR-L1と;(b)アミノ酸配列GASX1X2X3S(ここでX1はK、EまたはT、X2はLまたはT、X3はA、H、EまたはQである)(配列番号:130)を含むHVR-L2と;(c)アミノ酸配列QX1TX2VGSSYGNX3(ここでX1はS、C、NまたはT、X2はFまたはK、X3はA、TまたはHである)(配列番号:131)を含むHVR-L3とを含む。
【0029】
いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、配列番号:132~134のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインフレームワークFR1と;配列番号:135~136のいずれか1つのアミノ酸配列を含むFR2と;配列番号:137~139のいずれか1つのアミノ酸配列を含むFR3と;配列番号:140~141のいずれか1つのアミノ酸配列を含むFR4とを含む。いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、配列番号:142~143のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインフレームワークFR1と;配列番号:144~145のいずれか1つのアミノ酸配列を含むFR2と;配列番号:146~147のいずれか1つのアミノ酸配列を含むFR3と;配列番号:148のアミノ酸配列を含むFR4とを含む。
【0030】
いくつかの態様において、本発明の単離された抗C5抗体は、(a) 配列番号:10、106~110のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列;(b) 配列番号:20、111~113のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列;または(c) (a)のVH配列および(b)のVL配列を含む。さらなる態様において、該抗体は配列番号:10、106~110のいずれか1つのVH配列を含む。さらなる態様において、該抗体は配列番号:20、111~113のいずれか1つのVL配列を含む。
【0031】
本発明は、配列番号:10、106~110のいずれか1つのVH配列および配列番号:20、111~113のいずれか1つのVL配列を含む抗体を提供する。
【0032】
本発明はまた、本発明の抗C5抗体をコードする単離された核酸を提供する。本発明はまた、本発明の核酸を含む宿主細胞を提供する。本発明はまた、抗体を製造する方法であって、抗体が製造されるように本発明の宿主細胞を培養する工程を含む方法を提供する。
【0033】
本発明はさらに、抗C5抗体を製造する方法を提供する。いくつかの態様において、前記方法は、C5のβ鎖のMG1-MG2ドメイン(配列番号:43)を含むポリペプチドに対して動物を免疫化する工程を含む。いくつかの態様において、前記方法は、C5のβ鎖(配列番号:40)の位置33-124のアミノ酸に対応する領域を含むポリペプチドに対して動物を免疫化する工程を含む。いくつかの態様において、前記方法は、C5のβ鎖(配列番号:40)のアミノ酸47-57、70-76、および107-110から選択される少なくとも1つの断片を含むポリペプチドに対して動物を免疫化する工程を含む。いくつかの態様において、前記方法は、Glu48、Asp51、His70、His72、Lys109、およびHis110から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む、C5のβ鎖(配列番号:40)の断片を含むポリペプチドに対して動物を免疫化する工程を含む。
【0034】
本発明はまた、本発明の抗C5抗体および薬学的に許容される担体を含む薬学的製剤を提供する。
【0035】
本発明の抗C5抗体は、医薬品として使用するためのものであり得る。本発明の抗C5抗体は、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態の治療において使用するためのものであり得る。本発明の抗C5抗体は、血漿からのC5のクリアランスの増強において使用するためのものであり得る。
【0036】
本発明の抗C5抗体は、医薬品の製造において使用され得る。いくつかの態様において、医薬品は、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を治療するためのものである。いくつかの態様において、医薬品は、血漿からのC5のクリアランスを増強するためのものである。
【0037】
本発明はまた、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療する方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、本発明の抗C5抗体の有効量を個体に投与する工程を含む。本発明はまた、個体における血漿からのC5のクリアランスを増強する方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、血漿からのC5のクリアランスを増強するために本発明の抗C5抗体の有効量を個体に投与する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、実施例2.2に記載されるような、抗C5抗体のエピトープビニングを示す。同じエピトープビンに分類された抗体が、太線で囲まれている。
【
図2A】
図2Aは、実施例3.2に記載されるような、pH依存性を評価するための、pH7.4(実線)およびpH5.8(破線)での抗C5抗体のBIACORE(登録商標)センサーグラムを示す。実施例2.2に記載されるように、CFA0305、CFA0307、CFA0366、CFA0501、CFA0538、およびCFA0599は、エピトープCに分類された抗体である。
【
図2B】
図2Bは、実施例3.2に記載されるような、pH依存性を評価するための、pH7.4(実線)およびpH5.8(破線)での抗C5抗体のBIACORE(登録商標)センサーグラムを示す。実施例2.2に記載されるように、CFA0666、CFA0672、およびCFA0675は、エピトープCに分類された抗体であり、CFA0330およびCFA0341はエピトープBに分類された抗体である。実施例2.3に記載されるように、305LO5は、CFA0305のヒト化抗体である。
【
図3】
図3は、実施例4.1に記載されるような、GSTタグに融合されたC5β鎖由来の断片(配列番号:40のアミノ酸19-180、161-340、321-500、および481-660)に対するウエスタンブロット分析を示す。CFA0305、CFA0307、CFA0366、CFA0501、CFA0538、CFA0599、CFA0666、CFA0672、およびCFA0675は、エピトープCに分類された抗体である。抗GST抗体を陽性対照とする。GST融合C5断片(46~49kDa)の位置が矢印でマークされる。
【
図4】
図4は、実施例4.3に記載されるような、C5β鎖のMG1-MG2ドメインに対する抗C5抗体のBIACORE(登録商標)センサーグラムを示す。上方パネルは、CFA0305(実線)、CFA0307(破線)、CFA0366(一点鎖線)、およびエクリズマブ(点線)の結果を示す。中央パネルは、CFA0501(実線)、CFA0599(破線)、CFA0538(一点鎖線)、およびエクリズマブ(点線)の結果を示す。下方パネルは、CFA0666(実線)、CFA0672(破線)、CFA0675(一点鎖線)、およびエクリズマブ(点線)の結果を示す。CFA0305、CFA0307、CFA0366、CFA0501、CFA0538、CFA0599、CFA0666、CFA0672、およびCFA0675は、エピトープCに分類された抗体である。エクリズマブは対照の抗C5抗体である。
【
図5A】
図5Aは、実施例4.4に記載されるような、GSTタグに融合されたMG1-MG2ドメイン由来のペプチド断片(配列番号:40のアミノ酸33-124、45-124、52-124、33-111、33-108、および45-111)に対するウエスタンブロット分析を示す。抗GST抗体を反応のための抗体として使用する。GST融合C5断片(35~37kDa)の位置が矢印でマークされる。
【
図5B】
図5Bは、実施例4.4に記載されるような、GSTタグに融合されたMG1-MG2ドメイン由来のペプチド断片(配列番号:40のアミノ酸33-124、45-124、52-124、33-111、33-108、および45-111)に対するウエスタンブロット分析を示す。CFA0305を反応のための抗体として使用する。
【
図5C】
図5Cは、実施例4.4に記載されるような、C5β鎖由来の断片への抗C5抗体の結合反応のまとめである。エピトープCに分類された抗C5抗体(CFA0305、CFA0307、CFA0366、CFA0501、CFA0538、CFA0599、CFA0666、CFA0672、およびCFA0675)が結合する断片は灰色で示され、それらが結合しない断片は白色で示される。
【
図6】
図6は、実施例4.5に記載されるような、β鎖のE48、D51、およびK109がアラニンで置換されたC5点変異体(それぞれE48A、D51A、およびK109A)に対するウエスタンブロット分析を示す。左のパネルでは、エクリズマブ(抗C5抗体、α鎖結合剤)が反応のための抗体として使用され、C5のα鎖(約113kDa)の位置が矢印でマークされる。右のパネルでは、CFA0305(エピトープCに分類、β鎖結合剤)が反応のための抗体として使用され、C5のβ鎖(約74kDa)の位置が矢じり形でマークされる。
【
図7】
図7は、実施例4.6に記載されるような、エクリズマブ-F760G4(上方パネル)または305LO5(下方パネル)とC5変異体との相互作用を示すBIACORE(登録商標)センサーグラムを提示する。センサーグラムは、エクリズマブ-F760G4または305LO5を固定化したセンサー表面上への、それぞれC5-wt(太い実線)、C5-E48A(短い破線)、C5-D51A(長い破線)、およびC5-K109A(細い実線)の注入により得られた。エクリズマブは対照の抗C5抗体である。305LO5は、実施例2.3に記載されるように、CFA0305(エピトープCに分類)のヒト化抗体である。
【
図8】
図8は、実施例4.7に記載されるような、pH依存性を評価するための、305LO5とC5 His変異体との相互作用を示すBIACORE(登録商標)センサーグラムを提示する。センサーグラムは、305LO5を固定化したセンサー表面上への、それぞれC5-wt(太い実線)、C5-H70Y(長い破線)、C5-H72Y(短い破線)、C5-H110Y(点線)、およびC5-H70Y+H110Y(細い実線)の注入により得られた。pH依存的相互作用を評価するために、抗体/抗原複合体を、pH7.4で解離させ、続いてpH5.8でさらに解離させた(矢印で示す)。
【
図9A】
図9Aは、実施例5.1に記載されるような、抗C5抗体による補体活性化リポソーム溶解の阻害を示す。実施例2.2に記載されるようにエピトープCに分類されたCFA0305、CFA0307、CFA0366、CFA0501、CFA0538、CFA0599、CFA0666、CFA0672、およびCFA0675の結果が示される。
【
図9B】
図9Bは、実施例5.1に記載されるような、抗C5抗体による補体活性化リポソーム溶解の阻害を示す。実施例2.2に記載されるようにエピトープBに分類された抗体CFA0330およびCFA0341の結果が示される。
【
図10A】
図10Aは、実施例5.2に記載されるような、抗C5抗体によるC5a生成の阻害を示す。C5aの濃度は、
図9Aに記載されるようなリポソーム溶解測定法の間に得られた上清において定量化された。
【
図10B】
図10Bは、実施例5.2に記載されるような、抗C5抗体によるC5a生成の阻害を示す。C5aの濃度は、
図9Bに記載されるようなリポソーム溶解測定法の間に得られた上清において定量化された。
【
図11】
図11は、実施例5.3に記載されるような、抗C5抗体による補体活性化溶血の阻害を示す。補体は古典経路を介して活性化された。
【
図12】
図12は、実施例5.4に記載されるような、抗C5抗体による補体活性化溶血の阻害を示す。補体は副経路を介して活性化された。
【
図13】
図13は、実施例6.2に記載されるような、C5クリアランスを評価するマウスにおけるヒトC5のみまたはヒトC5と抗ヒトC5抗体の静脈内投与後の血漿中ヒトC5濃度の経時変化を示す。実施例2.2に記載されるように、CFA0305、CFA0307、CFA0366、CFA0501、CFA0538、CFA0599、CFA0666、CFA0672、およびCFA0675はエピトープCに分類された抗体であり、CFA0330およびCFA0341はエピトープBに分類された抗体である。
【
図14】
図14は、実施例6.3に記載されるような、抗体の薬物動態を評価するマウスにおけるヒトC5と抗ヒトC5抗体の静脈内投与後の血漿中抗ヒトC5抗体濃度の経時変化を示す。実施例2.2に記載されるように、CFA0305、CFA0307、CFA0366、CFA0501、CFA0538、CFA0599、CFA0666、CFA0672、およびCFA0675はエピトープCに分類された抗体であり、CFA0330およびCFA0341はエピトープBに分類された抗体である。
【
図15】
図15は、実施例9.1に記載されるような、抗C5抗体による補体活性化リポソーム溶解の阻害を示す。抗体305LO15-SG422、305LO16-SG422、305LO18-SG422、305LO19-SG422、305LO20-SG422、および305LO20-SG115の結果が示される。
【
図16】
図16は、実施例9.1に記載されるような、抗C5抗体による補体活性化リポソーム溶解の阻害を示す。抗体305LO15-SG115および305LO23-SG429の結果が示される。
【
図17】
図17は、実施例9.1に記載されるような、抗C5抗体による補体活性化リポソーム溶解の阻害を示す。抗体305LO22-SG115、305LO22-SG422、305LO23-SG115、および305LO23-SG422の結果が示される。
【
図18】
図18は、実施例9.2に記載されるような、抗C5抗体によるC5a生成の阻害を示す。C5aの濃度は、
図15に記載されるようなリポソーム溶解測定法の間に得られた上清において定量化された。
【
図19】
図19は、実施例9.2に記載されるような、抗C5抗体によるC5a生成の阻害を示す。C5aの濃度は、
図16に記載されるようなリポソーム溶解測定法の間に得られた上清において定量化された。
【
図20】
図20は、実施例9.3に記載されるような、抗C5抗体によるサル血漿中の補体活性の阻害を示す。抗C5抗体をカニクイザルに投与し、サルの血漿中の補体活性を溶血測定法で測定した。
【
図21】
図21は、実施例9.4に記載されるような、抗C5抗体(エクリズマブ)による野生型C5(WT)およびC5変異体(V145I、R449G、V802I、R885H、R928Q、D966Y、S1310N、およびE1437D)の生物学的活性の阻害を示す。
【
図22】
図22は、実施例9.4に記載されるような、抗C5抗体(305変異体)による野生型C5(WT)およびC5変異体(V145I、R449G、V802I、R885H、R928Q、D966Y、S1310N、およびE1437D)の生物学的活性の阻害を示す。
【
図23】
図23は、実施例9.5に記載されるような、抗C5抗体(BNJ441および305変異体)による補体活性化リポソーム溶解の阻害を示す。
【
図24】
図24は、実施例10.2に記載されるような、C5クリアランスを評価するカニクイザルにおける抗ヒトC5抗体の静脈内投与後の血漿中カニクイザルC5濃度の経時変化を示す。
【
図25】
図25は、実施例10.3に記載されるような、抗体の薬物動態を評価するカニクイザルにおける抗ヒトC5抗体の静脈内投与後の血漿中抗ヒトC5抗体濃度の経時変化を示す。
【
図26】
図26Aおよび26Bは、実施例11.6に記載されるような、ヒトC5(hC5)-MG1ドメインに結合した305 Fabの結晶構造を示す。
図26Aは、非対称ユニットを示す。MG1は表面表現で示され、305 Fabはリボン(濃灰色:重鎖、薄灰色:軽鎖)として示される。
図26Bは、重ね合わせた分子1および分子2(濃灰色:分子1、薄灰色:分子2)を示す。
【
図27A】
図27Aは、実施例11.6に記載されるような、MG1ドメイン上の305 Fab接触領域のエピトープを示す。
図27Aは、MG1アミノ酸配列でのエピトープマッピングを示す(濃灰色:3.0Åより近い、薄灰色:4.5Åより近い)。
【
図27B】
図27Bは、実施例11.6に記載されるような、MG1ドメイン上の305 Fab接触領域のエピトープを示す。
図27Bは、結晶構造でのエピトープマッピングを示す(濃灰色の球:3.0Åより近い、薄灰色の棒:4.5Åより近い)。
【
図28A】
図28Aは、実施例11.7に記載されるような、E48、D51、およびK109(棒表現)と305 Fab(表面表現)との相互作用のクローズアップ図を示す。
【
図28B】
図28Bは、実施例11.7に記載されるような、E48とその周囲との相互作用(濃灰色の点線:Fabとの水素結合、薄灰色の点線:水を介した水素結合)を示す。
【
図28C】
図28Cは、実施例11.7に記載されるような、D51とその周囲との相互作用(濃灰色の点線:Fabとの水素結合)を示す。
【
図28D】
図28Dは、実施例11.7に記載されるような、K109とその周囲との相互作用(濃灰色の点線:Fabとの水素結合、薄灰色の点線:H-CDR3_D95との塩橋)を示す。
【
図29A】
図29Aは、実施例11.8に記載されるような、H70、H72、およびH110(棒表現)と305 Fab(表面表現)との相互作用のクローズアップ図を
図28Aと同じ方向で示す。
【
図29B】
図29Bは、実施例11.8に記載されるような、H70とその周囲との相互作用を示す。このヒスチジン残基は、棒およびメッシュ表現で示される。水素結合は点線で示される。
【
図29C】
図29Cは、実施例11.8に記載されるような、H72とその周囲との相互作用を示す。このヒスチジン残基は、棒およびメッシュ表現で示される。水素結合は点線で示される。
【
図29D】
図29Dは、実施例11.8に記載されるような、H110とその周囲との相互作用を示す。このヒスチジン残基は、棒およびメッシュ表現で示される。H110とH-CDR3_H100cの間の距離は、点線で示される。
【発明を実施するための形態】
【0039】
態様の説明
本明細書に記載または引用される手法および手順は、概して充分に理解されており、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3d edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel, et al. eds., (2003));the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987));Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, ed., 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney), ed., 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995);およびCancer: Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)に記載された広範に利用されている技法などの従来の技法を用いて、当業者により一般的に使用される。
【0040】
I.定義
別途定義しない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994)、およびMarch, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4th ed., John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992)は、本出願において使用される用語の多くに対する一般的指針を当業者に提供する。特許出願および刊行物を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0041】
本明細書を解釈する目的のために、以下の定義が適用され、該当する場合はいつでも、単数形で使用された用語は複数形をも含み、その逆もまた同様である。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、限定を意図したものではないことが、理解されるべきである。下記の定義のいずれかが、参照により本明細書に組み入れられた任意の文書と矛盾する場合には、下記の定義が優先するものとする。
【0042】
本明細書の趣旨での「アクセプターヒトフレームワーク」は、下で定義するヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン (VL) フレームワークまたは重鎖可変ドメイン (VH) フレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらの同じアミノ酸配列を含んでもよいし、またはアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの態様において、アミノ酸の変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列が同一である。
【0043】
「アフィニティ」は、分子(例えば、抗体)の結合部位1個と、分子の結合パートナー(例えば、抗原)との間の、非共有結合的な相互作用の合計の強度のことをいう。別段示さない限り、本明細書で用いられる「結合アフィニティ」は、ある結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する、固有の結合アフィニティのことをいう。分子XのそのパートナーYに対するアフィニティは、一般的に、解離定数 (Kd) により表すことができる。アフィニティは、本明細書に記載のものを含む、当該技術分野において知られた通常の方法によって測定され得る。結合アフィニティを測定するための具体的な実例となるおよび例示的な態様については、下で述べる。
【0044】
「アフィニティ成熟」抗体は、改変を備えていない親抗体と比較して、1つまたは複数の超可変領域 (hypervariable region: HVR) 中に抗体の抗原に対するアフィニティの改善をもたらす1つまたは複数の改変を伴う、抗体のことをいう。
【0045】
用語「抗C5抗体」または「C5に結合する抗体」は、充分なアフィニティでC5と結合することのできる抗体であって、その結果その抗体がC5を標的化したときに診断剤および/または治療剤として有用であるような、抗体のことをいう。一態様において、無関係な非C5タンパク質への抗C5抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法 (radioimmunoassay: RIA) により測定したとき、抗体のC5への結合の約10%未満である。特定の態様において、C5に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。特定の態様において、抗C5抗体は、異なる種からのC5間で保存されているC5のエピトープに結合する。
【0046】
本明細書で用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限りは、これらに限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を含む、種々の抗体構造を包含する。
【0047】
「抗体断片」は、完全抗体が結合する抗原に結合する当該完全抗体の一部分を含む、当該完全抗体以外の分子のことをいう。抗体断片の例は、これらに限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0048】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいてその参照抗体が自身の抗原へする結合を阻止する抗体のことをいい、かつ/または逆にいえば、参照抗体は、競合アッセイにおいて前述の抗体が自身の抗原へする結合を阻止する。例示的な競合アッセイが、本明細書で提供される。
【0049】
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なった供給源または種に由来する抗体のことをいう。
【0050】
抗体の「クラス」は、抗体の重鎖に備わる定常ドメインまたは定常領域のタイプのことをいう。抗体には5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMである。そして、このうちいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられてもよい。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ぶ。
【0051】
本明細書でいう用語「細胞傷害剤」は、細胞の機能を阻害するまたは妨げる、および/または細胞の死または破壊の原因となる物質のことをいう。細胞傷害剤は、これらに限定されるものではないが、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体);化学療法剤または化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);増殖阻害剤;核酸分解酵素などの酵素およびその断片;抗生物質;例えば、低分子毒素または細菌、真菌、植物、または動物起源の酵素的に活性な毒素(その断片および/または変異体を含む)などの、毒素;および、以下に開示される、種々の抗腫瘍剤または抗がん剤を含む。
【0052】
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する、抗体のアイソタイプによって異なる生物学的活性のことをいう。抗体のエフェクター機能の例には次のものが含まれる:C1q結合および補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity:CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity: ADCC);貪食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;および、B細胞活性化。
【0053】
ある剤(例えば、薬学的製剤)の「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために有効である、必要な用量におけるおよび必要な期間にわたっての、量のことをいう。
【0054】
用語「エピトープ」は、抗体によって結合され得る任意の決定基を含む。エピトープは、抗原を標的とする抗体によって結合される該抗原の領域であり、抗体に直接接触する特定のアミノ酸を含む。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基またはスルホニル基などの化学的に活性な表面分子群を含むことができ、かつ特異的な三次元構造特性および/または特定の電荷特性を備えることができる。一般的に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質および/または巨大分子の複雑な混合物中でその標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
【0055】
本明細書で用語「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然型配列Fc領域および変異体Fc領域を含む。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。ただし、Fc領域のC末端のリジン(Lys447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書では別段特定しない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD 1991 に記載の、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)にしたがう。
【0056】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域 (HVR) 残基以外の、可変ドメイン残基のことをいう。可変ドメインのFRは、通常4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。それに応じて、HVRおよびFRの配列は、通常次の順序でVH(またはVL)に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0057】
用語「全長抗体」、「完全抗体」、および「全部抗体」は、本明細書では相互に交換可能に用いられ、天然型抗体構造に実質的に類似した構造を有する、または本明細書で定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体のことをいう。
【0058】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は、相互に交換可能に用いられ、外来核酸を導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)のことをいう。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を含み、これには初代の形質転換細胞および継代数によらずその細胞に由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸の内容において完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。オリジナルの形質転換細胞がスクリーニングされたまたは選択された際に用いられたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書では含まれる。
【0059】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を用いる非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を備える抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒトの抗原結合残基を含むヒト化抗体を、明確に除外するものである。
【0060】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択群において最も共通して生じるアミノ酸残基を示すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。通常、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3におけるサブグループである。一態様において、VLについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループκIである。一態様において、VHについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループIIIである。
【0061】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含む、キメラ抗体のことをいう。ある態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、当該可変領域においては、すべてのもしくは実質的にすべてのHVR(例えばCDR)は非ヒト抗体のものに対応し、かつ、すべてのもしくは実質的にすべてのFRはヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化された形態」は、ヒト化を経た抗体のことをいう。
本明細書で用いられる用語「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」(complementarity determining region))、および/または構造的に定まったループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体の可変ドメインの各領域のことをいう。通常、抗体は6つのHVRを含む:VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)である。本明細書での例示的なHVRは、以下のものを含む:
(a) アミノ酸残基26-32 (L1)、50-52 (L2)、91-96 (L3)、26-32 (H1)、53-55 (H2)、および96-101 (H3)のところで生じる超可変ループ (Chothia, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b) アミノ酸残基24-34 (L1)、50-56 (L2)、89-97 (L3)、31-35b (H1)、50-65 (H2)、 および95-102 (H3)のところで生じるCDR (Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, NIH, Bethesda, MD (1991));
(c) アミノ酸残基27c-36 (L1)、46-55 (L2)、89-96 (L3)、30-35b (H1)、47-58 (H2)、および93-101 (H3) のところで生じる抗原接触 (MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996));ならびに、
(d) HVRアミノ酸残基46-56 (L2)、47-56 (L2)、48-56 (L2)、49-56 (L2)、26-35 (H1)、26-35b (H1)、49-65 (H2)、93-102 (H3)、および94-102 (H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ。
【0062】
別段示さない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabatらにしたがって番号付けされる。
【0063】
「イムノコンジュゲート」は、1つまたは複数の異種の分子にコンジュゲートされた抗体である(異種の分子は、これに限定されるものではないが、細胞傷害剤を含む)。
【0064】
「個体」または「被験体」は哺乳動物である。哺乳動物は、これらに限定されるものではないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む。特定の態様では、個体または被験体は、ヒトである。
【0065】
「単離された」抗体は、そのもともとの環境の成分から分離されたものである。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点分離法 (isoelectric focusing: IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)法で測定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評価のための方法の総説として、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007) を参照のこと。
【0066】
「単離された」核酸は、そのもともとの環境の成分から分離された核酸分子のことをいう。単離された核酸は、その核酸分子を通常含む細胞の中に含まれた核酸分子を含むが、その核酸分子は染色体外に存在しているかまたは本来の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在している。
【0067】
「抗C5抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖および軽鎖(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸分子のことをいい、1つのベクターまたは別々のベクターに乗っている核酸分子、および、宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在している核酸分子を含む。
【0068】
本明細書でいう用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことをいう。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、生じ得る変異抗体(例えば、自然に生じる変異を含む変異抗体、またはモノクローナル抗体調製物の製造中に発生する変異抗体。そのような変異体は通常若干量存在している。)を除いて、同一でありおよび/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるものである、という抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造を求めるものと解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、これらに限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含んだトランスジェニック動物を利用する方法を含む、様々な手法によって作成されてよく、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0069】
「裸抗体」は、異種の部分(例えば、細胞傷害部分)または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体のことをいう。裸抗体は、薬学的製剤中に存在していてもよい。
【0070】
「天然型抗体」は、天然に生じる様々な構造を伴う免疫グロブリン分子のことをいう。例えば、天然型IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VH) を有し、それに3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VL) を有し、それに定常軽鎖 (CL) ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプの1つに帰属させられてよい。
【0071】
用語「添付文書」は、治療用品の商用パッケージに通常含まれ、そのような治療用品の使用に関する、適応症、用法、用量、投与方法、併用療法、禁忌、および/または警告についての情報を含む使用説明書のことをいうために用いられる。
【0072】
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント (%) アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るように配列を整列させてかつ必要ならギャップを導入した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとしたときの、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の、百分率比として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決める目的のアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign (DNASTAR) ソフトウェアなどの、公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントをとるための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書の趣旨での%アミノ酸配列同一性の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて作成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、ジェネンテック社の著作であり、そのソースコードは米国著作権庁 (U.S. Copyright Office, Wasington D.C., 20559) に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社 (Genentech, Inc., South San Francisco, California) から公に入手可能であるし、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、Digital UNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされる。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
【0073】
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は、次のように計算される:分率X/Yの100倍。ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、当該プログラムのAおよびBのアラインメントにおいて同一である一致としてスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへの%アミノ酸配列同一性は、BのAへの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが、理解されるであろう。別段特に明示しない限り、本明細書で用いられるすべての%アミノ酸配列同一性値は、直前の段落で述べたとおりALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られるものである。
【0074】
用語「薬学的製剤」は、その中に含まれた有効成分の生物学的活性が効果を発揮し得るような形態にある調製物であって、かつ製剤が投与される被験体に許容できない程度に毒性のある追加の要素を含んでいない、調製物のことをいう。
【0075】
「薬学的に許容される担体」は、被験体に対して無毒な、薬学的製剤中の有効成分以外の成分のことをいう。薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または保存剤を含む。
【0076】
本明細書でいう用語「C5」は、霊長類(例えば、ヒトおよびサル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型C5を包含する。別段示さない限り、用語「C5」は、配列番号:39に示すアミノ酸配列を有しかつ配列番号:40に示すβ鎖配列を含む、ヒトC5タンパク質のことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないC5も、細胞中でのプロセシングの結果生じるいかなる形態のC5も包含する。この用語はまた、自然に生じるC5の変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。例示的なヒトC5のアミノ酸配列を、配列番号:39(「野生型」または「WT」C5)に示す。ヒトC5の例示的なβ鎖のアミノ酸配列を、配列番号:40に示す。ヒトC5のβ鎖の例示的なMG1、MG2、およびMG1-MG2ドメインのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:41、42、および43に示す。例示的なカニクイザルおよびマウスC5のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:44および105に示す。配列番号:39、40、43、44、および105のアミノ酸残基1-19は、細胞におけるプロセシングの際に除去されかつしたがって対応する例示的なアミノ酸配列からは失われている、シグナル配列に対応する。
【0077】
本明細書で用いられる「治療」(および、その文法上の派生語、例えば「治療する」、「治療すること」など)は、治療される個体の自然経過を改変することを企図した臨床的介入を意味し、予防のためにも、臨床的病態の経過の間にも実施され得る。治療の望ましい効果は、これらに限定されるものではないが、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患による任意の直接的または間接的な病理的影響の減弱、転移の防止、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅くするために用いられる。
【0078】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体を抗原へと結合させることに関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインのことをいう。天然型抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、通常、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域 (FR) および3つの超可変領域 (HVR) を含む、類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007) 参照。)1つのVHまたはVLドメインで、抗原結合特異性を与えるに充分であろう。さらに、ある特定の抗原に結合する抗体は、当該抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使ってそれぞれVLまたはVHドメインの相補的ライブラリをスクリーニングして、単離されてもよい。例えばPortolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991) 参照。
【0079】
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結されたもう1つの核酸を増やすことができる、核酸分子のことをいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および、それが導入された宿主細胞のゲノム中に組み入れられるベクターを含む。あるベクターは、自身が動作的に連結された核酸の、発現をもたらすことができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」とも称される。
【0080】
II.組成物および方法
一局面において、本発明は、抗C5抗体およびその使用に一部基づくものである。特定の態様において、C5に結合する抗体が提供される。本発明の抗体は、例えば、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態の診断または治療のために、有用である。
【0081】
A.例示的抗C5抗体
一局面において、本発明はC5に結合する、単離された抗体を提供する。特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5のβ鎖内のエピトープに結合する。特定の態様において、抗C5抗体は、C5のβ鎖のMG1-MG2ドメイン内のエピトープに結合する。特定の態様において、抗C5抗体は、C5のβ鎖のアミノ酸19-180からなる断片内のエピトープに結合する。特定の態様において、抗C5抗体は、C5のβ鎖のMG1ドメイン(配列番号:40のアミノ酸20-124(配列番号:41))内のエピトープに結合する。特定の態様において、抗C5抗体は、C5のβ鎖(配列番号:40)のアミノ酸33-124からなる断片内のエピトープに結合する。別の態様において、該抗体は、C5のβ鎖のアミノ酸33-124からなる断片より短い断片、例えば、C5のβ鎖(配列番号:40)のアミノ酸45-124、52-124、33-111、33-108、または45-111からなる断片には、結合しない。
【0082】
別の局面において、本発明は、pH依存的結合特性を示す抗C5抗体を提供する。本明細書で使用される表現「pH依存的結合」は、該抗体が、「中性pHでのC5への結合と比較して低下した、酸性pHでのC5への結合」を示すことを意味する(本開示の目的で、両表現は交換可能に使用され得る)。例えば、「pH依存的結合特性を有する」抗体には、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合する抗体が含まれる。特定の態様において、本発明の抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上高いアフィニティで、C5に結合する。いくつかの態様において、該抗体は、pH5.8においてよりもpH7.4において高いアフィニティでC5に結合する。さらなる態様において、本発明の抗体は、pH5.8においてよりもpH7.4において少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上高いアフィニティで、C5に結合する。
【0083】
C5に対する抗体の「アフィニティ」とは、本開示の目的では、抗体のKDで表される。抗体のKDとは、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。抗原に結合する抗体に関してKD値が大きければ大きいほど、該特定の抗原に対するその結合アフィニティは弱くなる。したがって、本明細書で使用される表現「酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティ」(または同等の表現「pH依存的結合」)は、酸性pHでC5に結合する抗体のKDが中性pHでC5に結合する抗体のKDよりも大きいことを意味する。例えば、本発明の文脈において、酸性pHでC5に結合する抗体のKDが中性pHでC5に結合する抗体のKDよりも少なくとも2倍大きい場合、該抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合すると考えられる。したがって、本発明は、中性pHにおいてC5に結合する抗体のKDよりも少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上大きいKDで酸性pHにおいてC5に結合する抗体を包含する。別の態様において、中性pHでの該抗体のKD値は、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、またはそれ以下であり得る。別の態様において、酸性pHでの該抗体のKD値は、10-9M、10-8M、10-7M、10-6M、またはそれ以上であり得る。
【0084】
さらなる態様において、pH5.8でC5に結合する抗体のKDが、pH7.4でC5に結合する抗体のKDよりも少なくとも2倍大きい場合、該抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合すると考えられる。いくつかの態様において、提供される抗体は、pH7.4においてC5に結合する抗体のKDよりも少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上大きいKDでpH5.8においてC5に結合する。別の態様において、pH7.4での該抗体のKD値は、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、またはそれ以下であり得る。別の態様において、pH5.8での該抗体のKD値は、10-9M、10-8M、10-7M、10-6M、またはそれ以上であり得る。
【0085】
特定の抗原に対する抗体の結合特性はまた、抗体のkdで表すことができる。抗体のkdは、特定の抗原に対する抗体の解離速度定数を指し、秒の逆数(すなわち、sec-1)の単位で表される。kd値の増加は、抗体のその抗原への結合がより弱いことを意味する。したがって、本発明は、中性pHにおいてよりも酸性pHにおいて高いkd値でC5に結合する抗体を包含する。本発明は、中性pHにおいてC5に結合する抗体のkdよりも少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上大きいkdで酸性pHにおいてC5に結合する抗体を包含する。別の態様において、中性pHでの該抗体のkd値は、10-21/s、10-31/s、10-41/s、10-51/s、10-61/s、またはそれ以下であり得る。別の態様において、酸性pHでの該抗体のkd値は、10-31/s、10-21/s、10-11/s、またはそれ以上であり得る。本発明はまた、pH7.4においてよりもpH5.8において高いkd値でC5に結合する抗体を包含する。本発明は、pH7.4においてC5に結合する抗体のkdよりも少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上大きいkdでpH5.8においてC5に結合する抗体を包含する。別の態様において、pH7.4での該抗体のkd値は、10-21/s、10-31/s、10-41/s、10-51/s、10-61/s、またはそれ以下であり得る。別の態様において、pH5.8での該抗体のkd値は、10-31/s、10-21/s、10-11/s、またはそれ以上であり得る。
【0086】
特定の例では、「中性pHでのC5への結合と比較して低下した、酸性pHでのC5への結合」とは、中性pHでC5に結合する抗体のKD値に対する酸性pHでC5に結合する抗体のKD値(またはその逆)の比で表される。例えば、抗体が2以上の酸性/中性KD比を示す場合、本発明の目的に関して、その抗体は「中性pHでのC5への結合と比較して低下した、酸性pHでのC5への結合」を示しているとみなすことができる。特定の例示的な態様において、本発明の抗体のpH5.8/pH7.4 KD比は2以上である。特定の例示的な態様において、本発明の抗体の酸性/中性KD比は、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれ以上であり得る。別の態様において、中性pHでの該抗体のKD値は、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、またはそれ以下であり得る。別の態様において、酸性pHでの該抗体のKD値は、10-9M、10-8M、10-7M、10-6M、またはそれ以上であり得る。さらなる例では、抗体が2以上のpH5.8/pH7.4 KD比を示す場合、本発明の目的に関して、その抗体は「中性pHでのC5への結合と比較して低下した、酸性pHでのC5への結合」を示しているとみなすことができる。特定の例示的な態様において、本発明の抗体のpH5.8/pH7.4 KD比は、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれ以上であり得る。別の態様において、pH7.4での該抗体のKD値は、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、またはそれ以下であり得る。別の態様において、pH5.8での該抗体のKD値は、10-9M、10-8M、10-7M、10-6M、またはそれ以上であり得る。
【0087】
特定の例では、「中性pHでのC5への結合と比較して低下した、酸性pHでのC5への結合」とは、中性pHでC5に結合する抗体のkd値に対する酸性pHでC5に結合する抗体のkd値(またはその逆)の比で表される。例えば、抗体が2以上の酸性/中性kd比を示す場合、本発明の目的に関して、その抗体は「中性pHでのC5への結合と比較して低下した、酸性pHでのC5への結合」を示しているとみなすことができる。特定の例示的な態様において、本発明の抗体のpH5.8/pH7.4 kd比は2以上である。特定の例示的な態様において、本発明の抗体の酸性/中性kd比は、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれ以上であり得る。さらなる例示的な態様において、本発明の抗体のpH5.8/pH7.4 kd比は、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれ以上であり得る。別の態様において、中性pHでの該抗体のkd値は、10-21/s、10-31/s、10-41/s、10-51/s、10-61/s、またはそれ以下であり得る。さらなる態様において、pH7.4での該抗体のkd値は、10-21/s、10-31/s、10-41/s、10-51/s、10-61/s、またはそれ以下であり得る。別の態様において、酸性pHでの該抗体のkd値は、10-31/s、10-21/s、10-11/s、またはそれ以上であり得る。さらなる態様において、pH5.8での該抗体のkd値は、10-31/s、10-21/s、10-11/s、またはそれ以上であり得る。
【0088】
本明細書で使用される表現「酸性pH」は、4.0~6.5のpHを意味する。表現「酸性pH」には、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、および6.5のいずれか1つのpH値が含まれる。特定の局面において、「酸性pH」とは5.8である。
【0089】
本明細書で使用される表現「中性pH」は、6.7~約10.0のpHを意味する。表現「中性pH」には、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、および10.0のいずれか1つのpH値が含まれる。特定の局面において、「中性pH」とは7.4である。
【0090】
本明細書で表現されるKD値およびkd値を、表面プラズモン共鳴に基づくバイオセンサーを用いて決定して、抗体-抗原相互作用を特徴付けることができる。(例えば、本明細書の実施例3を参照されたい。) KD値およびkd値は25℃または37℃で測定することができる。
【0091】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、MG1ドメイン(配列番号:41)からなる、C5のβ鎖内のエピトープに結合する。特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、アミノ酸47-57、70-76、および107-110からなる群より選択される少なくとも1つの断片を含む、C5のβ鎖(配列番号:40)内のエピトープに結合する。特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、Thr47、Glu48、Ala49、Phe50、Asp51、Ala52、Thr53、Lys57、His70、Val71、His72、Ser74、Glu76、Val107、Ser108、Lys109、およびHis110からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む、C5のβ鎖(配列番号:40)の断片内のエピトープに結合する。特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、Glu48、Asp51、His70、His72、Lys109、およびHis110からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む、C5のβ鎖(配列番号:40)の断片内のエピトープに結合する。特定の態様において、本発明の抗C5抗体のC5変異体への結合は、野生型C5へのその結合と比較して低下し、ここで該C5変異体はGlu48、Asp51、His72、およびLys109からなる群より選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。別の態様において、本発明の抗C5抗体のC5変異体へのpH依存的結合は、野生型C5へのそのpH依存的結合と比較して低下し、ここで該C5変異体は、His70、His72、およびHis110からなる群より選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。さらなる態様において、C5変異体において、Glu48、Asp51、およびLys109から選択される位置のアミノ酸はアラニンで置換され、His70、His72、およびHis110から選択される位置のアミノ酸はチロシンで置換される。
【0092】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5への結合に関して、以下から選択されるVHとVLの対を含む抗体と競合する:(a) 配列番号:1のVHおよび配列番号:11のVL;(b) 配列番号:22のVHおよび配列番号:26のVL;(c) 配列番号:21のVHおよび配列番号:25のVL;(d) 配列番号:5のVHおよび配列番号:15のVL;(e) 配列番号:4のVHおよび配列番号:14のVL;(f) 配列番号:6のVHおよび配列番号:16のVL;(g) 配列番号:2のVHおよび配列番号:12のVL;(h) 配列番号:3のVHおよび配列番号:13のVL;(i) 配列番号:9のVHおよび配列番号:19のVL;(j) 配列番号:7のVHおよび配列番号:17のVL;(k) 配列番号:8のVHおよび配列番号:18のVL;(l) 配列番号:23のVHおよび配列番号:27のVL;ならびに(m) 配列番号:10のVHおよび配列番号:20のVL。
【0093】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5に結合し、配列番号:39のアミノ酸Asp51(D51)と接触する。追加の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5に結合し、配列番号:39のアミノ酸Lys109(K109)と接触する。さらなる態様において、本発明の抗C5抗体は、C5に結合し、配列番号:39のアミノ酸Asp51(D51)およびアミノ酸Lys109(K109)と接触する。
【0094】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体のC5変異体への結合は、野生型C5へのその結合と比較して低下し、ここで該C5変異体は、配列番号:39のGlu48Ala(E48A)置換を有する。別の態様において、本発明の抗C5抗体のC5変異体へのpH依存的結合は、野生型C5へのそのpH依存的結合と比較して低下し、ここで該C5変異体は、配列番号:39のGlu48Ala(E48A)置換を有する。
【0095】
さらなる態様において、抗C5抗体は、配列番号:39のアミノ酸配列からなるC5タンパク質に結合するが、H72Y置換を有する配列番号:39のアミノ酸配列からなるC5タンパク質には結合せず、ここで、該C5タンパク質およびH72Y置換C5タンパク質は同じ条件下で調製されスクリーニングされる。さらなる態様において、抗C5抗体は、配列番号:39のアミノ酸配列からなるC5タンパク質にはpH7.4で結合するが、H72Y置換C5タンパク質にはpH7.4で結合しない。
【0096】
特定の理論に縛られるわけではないが、抗C5抗体のC5への結合は、C5上のあるアミノ酸残基が別のアミノ酸で置換された場合に低下する(またはほとんど失われる)と推測することができ、このことは、C5上の該アミノ酸残基が抗C5抗体とC5の間の相互作用にとって重要であることおよび、該抗体がC5上の該アミノ酸残基の周りのエピトープを認識しうることを意味している。
【0097】
本発明において、互いに競合するかまたは同じエピトープに結合する一群の抗C5抗体がpH依存的結合特性を示し得ることが、見出された。アミノ酸の中でも、約6.0~6.5のpKa値を有するヒスチジンは、中性pHと酸性pHの間で異なるプロトン解離状態を備えることができる。そのため、C5上のヒスチジン残基は、抗C5抗体とC5の間のpH依存的相互作用に寄与しうる。特定の理論に縛られるわけではないが、抗C5抗体は、pHに依存して変化しうる、C5上のヒスチジン残基のまわりの立体構造を認識し得ると推測できる。この推測は、以下に記載する実験結果と一致しうる:C5上のヒスチジン残基が別のアミノ酸で置換された場合に抗C5抗体のpH依存性が低下する(またはほとんど失われる)(すなわち、pH依存的結合特性を有する抗C5抗体は、中性pHでは野生型C5と類似したアフィニティでC5のヒスチジン変異体に結合するが、酸性pHでは、同一の抗体は野生型C5よりも高いアフィニティでC5のヒスチジン変異体に結合する)。
【0098】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、複数の種に由来するC5に結合する。さらなる態様において、抗C5抗体は、ヒトおよび非ヒト動物に由来するC5に結合する。さらなる態様において、抗C5抗体は、ヒトおよびサル(例えば、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、チンパンジー、またはヒヒ)由来のC5に結合する。
【0099】
一局面において、本発明は、C5の活性化を阻害する抗C5抗体を提供する。特定の態様において、C5aおよびC5bを形成するためのC5の切断を防止し、それにより、C5aに関連するアナフィラトキシン活性の発生を防止するだけでなくC5bに関連するC5b-9膜侵襲複合体(MAC)のアセンブリをも防止する、抗C5抗体が提供される。特定の態様において、C5転換酵素によるC5のC5aおよびC5bへの変換を阻止する抗C5抗体が提供される。特定の態様において、C5上の切断部位へのC5転換酵素の接近を阻止する抗C5抗体が提供される。特定の態様において、C5の活性化によって引き起こされる溶血活性を阻止する抗C5抗体が提供される。さらなる態様において、本発明の抗C5抗体は、古典経路および/または副経路を介したC5の活性化を阻害する。
【0100】
一局面において、本発明は、C5変異体の活性化を阻害する抗C5抗体を提供する。C5変異体とは、突然変異、多型または対立遺伝子変異などの遺伝的変異に起因する、C5の遺伝的変異体を意味する。遺伝的変異には、1個以上のヌクレオチドの欠失、置換または挿入が含まれうる。C5変異体はC5の1つ以上の遺伝的変異を含みうる。特定の態様において、C5変異体は、野生型C5と類似した生物学的活性を有する。このようなC5変異体は、V145I、R449G、V802I、R885H、R928Q、D966Y、S1310N、およびE1437Dからなる群より選択される少なくとも1つの変異を含むことができる。本明細書において、例えば、R885Hとは、位置885のアルギニンがヒスチジンで置換されている遺伝的変異を意味する。特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、野生型C5と、V145I、R449G、V802I、R885H、R928Q、D966Y、S1310N、およびE1437Dからなる群より選択される少なくとも1つのC5変異体との両方の活性化を阻害する。
【0101】
一局面において、本発明は、(a)配列番号:45~54のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:55~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:65~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:75~84のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:85~94のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:95~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの超可変領域(HVR)を含む、抗C5抗体を提供する。
【0102】
一局面において、本発明は、(a)配列番号:45~54のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:55~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;および、(c)配列番号:65~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、配列番号:65~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。別の態様において、抗体は、配列番号:65~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:95~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。さらなる態様において、抗体は、配列番号:65~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:95~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3と、配列番号:55~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2とを含む。さらなる態様において、抗体は、(a)配列番号:45~54のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1と;(b)配列番号:55~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2と;(c)配列番号:65~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む。
【0103】
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:75~84のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号:85~94のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(c)配列番号:95~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、(a)配列番号:75~84のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1と;(b)配列番号:85~94のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(c)配列番号:95~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。
【0104】
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:45~54のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) 配列番号:55~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:65~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:75~84のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:85~94のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:95~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
【0105】
別の局面において、本発明は(a)配列番号:45~54のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1と; (b) 配列番号:55~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2と; (c)配列番号:65~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3と; (d)配列番号:75~84のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1と; (e)配列番号:85~94のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(f)配列番号:95~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗体を提供する。
【0106】
一局面において、本発明は、(a)配列番号:45、54、117、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:55、64、118~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:65、74、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:75、84、122、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:85、94、123~124、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:95、104、125、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗C5抗体を提供する。
【0107】
一局面において、本発明は、(a)配列番号:45、54、117、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:55、64、118~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2;および、(c)配列番号:65、74、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、配列番号:65、74、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。別の態様において、抗体は、配列番号:65、74、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:95、104、125、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。さらなる態様において、抗体は、配列番号:65、74、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3と、配列番号:95、104、125、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3と、配列番号:55、64、118~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2とを含む。さらなる態様において、抗体は、(a)配列番号:45、54、117、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1と;(b)配列番号:55、64、118~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2と;(c)配列番号:65、74、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含む。
【0108】
別の局面において、本発明は、(a)配列番号:75、84、122、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号:85、94、123~124、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(c)配列番号:95、104、125、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、抗体を提供する。一態様において、抗体は、(a)配列番号:75、84、122、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1と;(b)配列番号:85、94、123~124、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(c)配列番号:95、104、125、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む。
【0109】
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:45、54、117、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) 配列番号:55、64、118~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:65、74、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:75、84、122、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:85、94、123~124、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:95、104、125、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
【0110】
別の局面において、本発明は(a)配列番号:45、54、117、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1と; (b) 配列番号:55、64、118~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2と; (c)配列番号:65、74、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3と; (d)配列番号:75、84、122、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1と; (e)配列番号:85、94、123~124、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(f)配列番号:95、104、125、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗体を提供する。
【0111】
特定の態様において、以下のHVRポジションのところで、上述の抗C5抗体の任意の1つまたは複数のアミノ酸が置換されている:(a) HVR-H1(配列番号:45)において、ポジション5および6で;(b) HVR-H2(配列番号:55)において、ポジション1、3、9、11、13、および15で;(c) HVR-H3(配列番号:65)において、ポジション2、5、6、12、および13で;(d) HVR-L1(配列番号:75)において、ポジション1、5、7、および9で;(e) HVR-L2(配列番号:85)において、ポジション4、5、および6で;ならびに(f) HVR-L3(配列番号:95)において、ポジション2、4、および12で。
【0112】
特定の態様において、本明細書で提供される置換は、保存的置換である。特定の態様において、以下のいずれか1つまたは複数の置換が、任意の組み合わせで行われてもよい:(a) HVR-H1(配列番号:45)において、M5VまたはC6A; (b) HVR-H2(配列番号:55)において、C1AもしくはG、Y3F、T9DもしくはE、Y11KもしくはQ、S13DもしくはE、またはA15V; (c) HVR-H3(配列番号:65)において、G2A、V5QもしくはD、T6Y、Y12H、またはL13Y; (d) HVR-L1(配列番号:75)において、Q1R、N5QもしくはG、G7S、D9KもしくはS; (e) HVR-L2(配列番号:85)において、K4TもしくはE、L5T、またはA6H、A6E、もしくはA6Q; (f) HVR-L3(配列番号:95)において、C2S、C2N、もしくはC2T、F4K;またはA12TもしくはA12H。
【0113】
上述の置換の可能なすべての組み合わせは、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3について、それぞれ配列番号:126、127、128、129、130、および131のコンセンサス配列に包含される。
【0114】
上述の態様の任意のものにおいて、抗C5抗体は、ヒト化されている。一態様において、抗C5抗体は、上述の態様の任意のものにおけるHVRを含み、かつさらに、アクセプターヒトフレームワーク(例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク)を含む。別の態様において、抗C5抗体は上述の態様の任意のものにおけるHVRを含み、かつさらに、以下のようなFR配列を含むVHまたはVLを含む。重鎖可変ドメインについて、FR1は、配列番号:132~134のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、FR2は、配列番号:135~136のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、FR3は、配列番号:137~139のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、FR4は、配列番号:140~141のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。軽鎖可変ドメインについて、FR1は、配列番号:142~143のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、FR2は、配列番号:144~145のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、FR3は、配列番号:146~147のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、FR4は、配列番号:148のアミノ酸配列を含む。
【0115】
別の局面において、抗C5抗体は、配列番号:1~10のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン (VH) 配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:1~10のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:1~10のいずれか1つにおけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VHは、(a)配列番号:45~54のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、 (b)配列番号:55~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:65~74のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0116】
別の局面において、配列番号:11~20のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン (VL) を含む、抗C5抗体が提供される。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:11~20のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:11~20のいずれか1つにおけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VLは、(a)配列番号:75~84のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:85~94のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:95~104のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0117】
別の局面において、上述の態様の任意のものにおけるVH、および上述の態様の任意のものにおけるVLを含む、抗C5抗体が提供される。一態様において、抗体はそれぞれ配列番号:1~10のいずれか1つおよび配列番号:11~20のいずれか1つ中のVHおよびVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。
【0118】
別の局面において、抗C5抗体は、配列番号:10、106~110のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン (VH) 配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:10、106~110のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:10、106~110のいずれか1つにおけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VHは、(a)配列番号:45、54、117、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、 (b)配列番号:55、64、118~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:65、74、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0119】
別の局面において、抗C5抗体は、配列番号:10、106~110のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:10、106~110のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:10、106~110のいずれか1つにおけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VHは、(a)配列番号:45、54、117、126のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H1、 (b)配列番号:55、64、118~120、127のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:65、74、121、128のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0120】
別の局面において、抗C5抗体は、配列番号:10のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の態様において、VH配列は、配列番号:10のアミノ酸配列である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:10において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:10におけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VHは、(a)配列番号:54のアミノ酸配列を含むHVR-H1、 (b)配列番号:64のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0121】
別の局面において、抗C5抗体は、配列番号:106のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の態様において、VH配列は、配列番号:106のアミノ酸配列である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:106において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:106におけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VHは、(a)配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、 (b)配列番号:118のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0122】
別の局面において、抗C5抗体は、配列番号:107のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の態様において、VH配列は、配列番号:107のアミノ酸配列である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:107において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:107におけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VHは、(a)配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、 (b)配列番号:119のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0123】
別の局面において、抗C5抗体は、配列番号:108のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の態様において、VH配列は、配列番号:108のアミノ酸配列である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:108において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:108におけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VHは、(a)配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、 (b)配列番号:118のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0124】
別の局面において、抗C5抗体は、配列番号:109のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の態様において、VH配列は、配列番号:109のアミノ酸配列である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:109において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:109におけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VHは、(a)配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、 (b)配列番号:118のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0125】
別の局面において、抗C5抗体は、配列番号:110のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の態様において、VH配列は、配列番号:110のアミノ酸配列である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:110において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:110におけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VHは、(a)配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、 (b)配列番号:120のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(c)配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0126】
別の局面において、配列番号:20、111~113のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン (VL) を含む、抗C5抗体が提供される。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:20、111~113のいずれか1つにおいて、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:20、111~113のいずれか1つにおけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VLは、(a)配列番号:75、84、122、129のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:85、94、123~124、130のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:95、104、125、131のいずれか1つのアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0127】
別の局面において、配列番号:20のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLを含む、抗C5抗体が提供される。特定の態様において、VL配列は、配列番号:20のアミノ酸配列である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:20において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:20におけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VLは、(a)配列番号:84のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:94のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:104のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0128】
別の局面において、配列番号:111のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLを含む、抗C5抗体が提供される。特定の態様において、VL配列は、配列番号:111のアミノ酸配列である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:111において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:111におけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VLは、(a)配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0129】
別の局面において、配列番号:112のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLを含む、抗C5抗体が提供される。特定の態様において、VL配列は、配列番号:112のアミノ酸配列である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:112において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:112におけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VLは、(a)配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0130】
別の局面において、配列番号:113のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するVLを含む、抗C5抗体が提供される。特定の態様において、VL配列は、配列番号:113のアミノ酸配列である。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗C5抗体は、C5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:113において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗C5抗体は、配列番号:113におけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。ある特定の態様では、VLは、(a)配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号:124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0131】
別の局面において、上述の態様の任意のものにおけるVH、および上述の態様の任意のものにおけるVLを含む、抗C5抗体が提供される。一態様において、抗体はそれぞれ配列番号:10、106~110のいずれか1つおよび配列番号:20、111~113のいずれか1つ中のVHおよびVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。。一態様において、抗体は配列番号:10のVH配列および配列番号:20のVL配列を含む。一態様において、抗体は配列番号:106のVH配列および配列番号:111のVL配列を含む。別の態様において、抗体は配列番号:107のVH配列および配列番号:111のVL配列を含む。さらなる態様において、抗体は配列番号:108のVH配列および配列番号:111のVL配列を含む。別の態様において、抗体は配列番号:109のVH配列および配列番号:111のVL配列を含む。別の態様において、抗体は配列番号:109のVH配列および配列番号:112のVL配列を含む。別の態様において、抗体は配列番号:109のVH配列および配列番号:113のVL配列を含む。別の態様において、抗体は配列番号:110のVH配列および配列番号:113のVL配列を含む。
【0132】
一局面において、(a) 配列番号:54のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:64のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および (c) 配列番号:74のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含有するVH配列と、(a) 配列番号:84のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b) 配列番号:94のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および (c) 配列番号:104のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含有するVL配列とを含む、抗C5抗体が提供される。
【0133】
別の局面において、(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:118のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および (c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含有するVH配列と、(a) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b) 配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および (c) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含有するVL配列とを含む、抗C5抗体が提供される。
【0134】
別の局面において、(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:119のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および (c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含有するVH配列と、(a) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b) 配列番号:123のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および (c) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含有するVL配列とを含む、抗C5抗体が提供される。
【0135】
別の局面において、(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:118のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および (c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含有するVH配列と、(a) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b) 配列番号:124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および (c) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含有するVL配列とを含む、抗C5抗体が提供される。
【0136】
別の局面において、(a) 配列番号:117のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b) 配列番号:120のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および (c) 配列番号:121のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含有するVH配列と、(a) 配列番号:122のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b) 配列番号:124のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および (c) 配列番号:125のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含有するVL配列とを含む、抗C5抗体が提供される。
【0137】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、上述の態様のいずれかにおけるVHと、配列番号:33、34、35、114、115、および116のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖定常領域とを含む。特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、上述の態様のいずれかにおけるVLと、配列番号:36、37、および38のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域とを含む。
【0138】
別の局面において、本発明は、本明細書で提供される抗C5抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。例えば、特定の態様において、表2に記載される抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。後述の実施例により実証されるように、表2に記載される全ての抗C5抗体は、C5の同じエピトープビンに分類されており、pH依存的結合特性を示す。
【0139】
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。さらなる局面において、本発明は、表7または8に記載される抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。特定の態様において、C5のβ鎖(配列番号:40)のアミノ酸33-124からなる断片中のエピトープに結合する抗体が提供される。特定の態様において、アミノ酸47-57、70-76、および107-110からなる群より選択される少なくとも1つの断片を含む、C5のβ鎖(配列番号:40)中のエピトープに結合する抗体が提供される。特定の態様において、Thr47、Glu48、Ala49、Phe50、Asp51、Ala52、Thr53、Lys57、His70、Val71、His72、Ser74、Glu76、Val107、Ser108、Lys109、およびHis110からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む、C5のβ鎖(配列番号:40)の断片中のエピトープに結合する抗体が提供される。別の態様において、本発明の抗C5抗体のエピトープは、立体構造エピトープである。
【0140】
本発明のさらなる局面において、上述の態様の任意のものによる抗C5抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一態様において、抗C5抗体は、例えば、Fv、Fab、Fab'、scFv、ダイアボディ、またはF(ab')2断片などの、抗体断片である。別の態様において、抗体は、例えば、完全IgG1抗体または完全IgG4抗体や、本明細書で定義された他の抗体クラスまたはアイソタイプの、全長抗体である。
【0141】
さらなる局面において、上述の態様の任意のものによる抗C5抗体は、単独または組み合わせで、以下の項目1~7に記載の任意の特徴を取り込んでもよい。
【0142】
1.抗体のアフィニティ
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。
【0143】
一態様において、Kdは、放射性標識抗原結合測定法 (radiolabeled antigen binding assay: RIA) によって測定される。一態様において、RIAは、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液中結合アフィニティは、非標識抗原の漸増量系列の存在下で最小濃度の (125I) 標識抗原によりFabを平衡化させ、次いで結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングされたプレートにより捕捉することによって測定される。(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999) を参照のこと)。測定条件を構築するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート (Thermo Scientific) を50mM炭酸ナトリウム (pH9.6) 中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体 (Cappel Labs) で一晩コーティングし、その後に室温(およそ23℃)で2~5時間、PBS中2% (w/v) ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着プレート (Nunc #269620) において、100 pMまたは26 pMの [125I]-抗原を、(例えば、Presta et al., Cancer Res. 57:4593-4599 (1997) における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と同じように)目的のFabの段階希釈物と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が確実に達成されるよう、より長時間(例えば、約65時間)継続され得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移す。次いで溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター (Packard) においてプレートを10分間カウントする。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選択する。
【0144】
別の態様によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000 (BIACORE(登録商標), Inc., Piscataway, NJ) を用いる測定法が、およそ10反応単位 (response unit: RU) の抗原が固定されたCM5チップを用いて25℃で実施される。一態様において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ (CM5、BIACORE(登録商標), Inc.) は、供給元の指示にしたがいN-エチル-N'- (3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド (EDC) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS) を用いて活性化される。抗原は、およそ10反応単位 (RU) のタンパク質の結合を達成するよう、5μl/分の流速で注入される前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈される。抗原の注入後、未反応基をブロックするために1Mエタノールアミンが注入される。キネティクスの測定のために、25℃、およそ25μl/分の流速で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤含有PBS (PBST) 中のFabの2倍段階希釈物 (0.78nM~500nM) が注入される。結合速度 (kon) および解離速度 (koff) は、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、結合および解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数 (Kd) は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999) を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによってオン速度が106M-1s-1を超える場合、オン速度は、分光計(例えばストップフロー式分光光度計 (Aviv Instruments) または撹拌キュベットを用いる8000シリーズのSLM-AMINCO(商標)分光光度計 (ThermoSpectronic))において測定される、漸増濃度の抗原の存在下でのPBS、pH7.2中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、バンドパス16nm)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いることによって決定され得る。
【0145】
2.抗体断片
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片は、これらに限定されるものではないが、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、Fv、および scFv断片、ならびに、後述する他の断片を含む。特定の抗体断片についての総説として、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003) を参照のこと。scFv断片の総説として、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp.269-315 (1994);加えて、WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および第5,587,458号を参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含みインビボ (in vivo) における半減期の長くなったFabおよびF(ab')2断片についての論説として、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
【0146】
ダイアボディは、二価または二重特異的であってよい、抗原結合部位を2つ伴う抗体断片である。例えば、EP404,097号; WO1993/01161; Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993) 参照。トリアボディ (triabody) やテトラボディ (tetrabody) も、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003) に記載されている。
【0147】
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分、または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、抗体断片である。特定の態様において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516号参照)。
【0148】
抗体断片は、これらに限定されるものではないが、本明細書に記載の、完全抗体のタンパク質分解的消化、組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌 (E. coli) またはファージ)による産生を含む、種々の手法により作ることができる。
【0149】
3.キメラおよびヒト化抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号;および、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984) に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、親抗体のものからクラスまたはサブクラスが変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片も含む。
【0150】
特定の態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティを維持したままでヒトへの免疫原性を減少させるために、ヒト化される。通常、ヒト化抗体は1つまたは複数の可変ドメインを含み、当該可変ドメイン中、HVR(例えばCDR(またはその部分))は非ヒト抗体に由来し、FR(またはその部分)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性またはアフィニティを回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)からの対応する残基で置換されている。
【0151】
ヒト化抗体およびその作製方法は、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)において総説されており、また、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、および第7,087,409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005)(特異性決定領域 (specificity determining region: SDR) グラフティングを記載);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (リサーフェイシングを記載); Dall'Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (FRシャッフリングを記載);ならびに、Osbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) およびKlimka et al., Br. J. Cancer 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングのための「ガイドセレクション」アプローチを記載)において、さらに記載されている。
【0152】
ヒト化に使われ得るヒトフレームワーク領域は、これらに限定されるものではないが:「ベストフィット」法(Sims et al., J. Immunol. 151:2296 (1993) 参照)を用いて選択されたフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992) および Presta et al., J. Immunol. 151:2623 (1993) 参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008) 参照);および、FRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997) および Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996) 参照)を含む。
【0153】
4.ヒト抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られる種々の手法によって製造され得る。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharma. 5:368-74 (2001) および Lonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008) に、概説されている。
【0154】
ヒト抗体は、抗原チャレンジ(負荷)に応答して完全ヒト抗体またはヒト可変領域を伴う完全抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物へ免疫原を投与することにより、調製されてもよい。そのような動物は、典型的にはヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分を含み、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分は、内因性の免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または、染色体外にもしくは当該動物の染色体内にランダムに取り込まれた状態で存在する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性の免疫グロブリン遺伝子座は、通常不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005) を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載した米国特許第6,075,181号および第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載した米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許第7,041,870号;ならびに、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許出願公開第2007/0061900号を、併せて参照のこと。このような動物によって生成された完全抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせるなどして、さらに修飾されてもよい。
【0155】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づいた方法でも作ることができる。ヒトモノクローナル抗体の製造のための、ヒトミエローマおよびマウス‐ヒトヘテロミエローマ細胞株は、既に記述されている。(例えば、Kozbor, J. Immunol. 133:3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Dekker, Inc., New York, 1987);およびBoerner et al., J. Immunol. 147:86 (1991) 参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:3557-3562 (2006) に述べられている。追加的な方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の製造を記載)、および、Ni, Xiandai Mianyixue 26(4):265-268 (2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されたものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers, Histology and Histopathology 20(3):927-937 (2005) およびVollmers, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27(3):185-191 (2005)に記載されている。
【0156】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することでも生成できる。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する手法を、以下に述べる。
【0157】
5.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の1つまたは複数の活性を伴う抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離してもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリの生成や、所望の結合特性を備える抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための、様々な方法が当該技術分野において知られている。そのような方法は、Hoogenboom et al., Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001) において総説されており、さらに例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554;Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1992); Marks, Meth. Mol. Biol. 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2):299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5):1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004); Lee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132(2004) に記載されている。
【0158】
特定のファージディスプレイ法において、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction: PCR) により別々にクローニングされ、無作為にファージライブラリ中で再結合され、当該ファージライブラリは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol. 12:433-455 (1994) に述べられているようにして、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv (scFv) 断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築することを要さずに、免疫源に対する高アフィニティ抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al., EMBO J, 12:725-734 (1993) に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、免疫化することなしに、広範な非自己および自己抗原への抗体の単一の供給源を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom, J. Mol. Biol. 227:381-388 (1992) に記載されるように、幹細胞から再編成前のV-遺伝子セグメントをクローニングし、超可変CDR3領域をコードしかつインビトロ (in vitro) で再構成を達成するための無作為配列を含んだPCRプライマーを用いることにより、合成的に作ることもできる。ヒト抗体ファージライブラリを記載した特許文献は、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに、米国特許出願公開第2005/0079574号、2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、および第2009/0002360号を含む。
【0159】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片と見なす。
【0160】
6.多重特異性抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に結合特異性を有する、モノクローナル抗体である。特定の態様において、結合特異性の1つは、C5に対するものであり、もう1つは他の任意の抗原へのものである。特定の態様において、二重特異性抗体は、C5の異なった2つのエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体は、C5を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化するために使用されてもよい。二重特異性抗体は、全長抗体としてまたは抗体断片として調製され得る。
【0161】
多重特異性抗体を作製するための手法は、これらに限定されるものではないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組み換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305:537 (1983)、WO93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J. 10:3655 (1991) 参照)、および「knob-in-hole」技術(例えば、米国特許第5,731,168号参照)を含む。多重特異性抗体は、Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果 (electrostatic steering effect) を操作すること (WO2009/089004A1);2つ以上の抗体または断片を架橋すること(米国特許第4,676,980号およびBrennan et al., Science 229:81 (1985)参照);ロイシンジッパーを用いて2つの特異性を有する抗体を作成すること(Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992) 参照);「ダイアボディ」技術を用いて二重特異性抗体断片を作製すること(Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993) 参照);および、単鎖Fv (scFv) 二量体を用いること(Gruber et al., J. Immunol. 152:5368 (1994) 参照);および、例えばTutt et al., J. Immunol. 147:60 (1991) に記載されるように三重特異性抗体を調製すること、によって作製してもよい。
【0162】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を伴う改変抗体も、本明細書では含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号参照)。
【0163】
本明細書で抗体または断片は、C5と別の異なる抗原とに結合する1つの抗原結合部位を含む、「デュアルアクティングFab」または「DAF」も含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号参照)。
【0164】
7.抗体変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体も、考慮の内である。例えば、抗体の結合アフィニティおよび/または他の生物学的特性を改善することが、望ましいこともある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入すること、または、ペプチド合成によって、調製されてもよい。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列中への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列中の残基の置換を含む。最終構築物が所望の特徴(例えば、抗原結合性)を備えることを前提に、欠失、挿入、および置換の任意の組合せが、最終構築物に至るために行われ得る。
【0165】
a.置換、挿入、および欠失変異体
特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換的変異導入の目的部位は、HVRおよびFRを含む。保存的置換を、表1の「好ましい置換」の見出しの下に示す。より実質的な変更を、表1の「例示的な置換」の見出しの下に提供するとともに、アミノ酸側鎖のクラスに言及しつつ下で詳述する。アミノ酸置換は目的の抗体に導入されてもよく、産物は、例えば、保持/改善された抗原結合性、減少した免疫原性、または改善したADCCまたはCDCなどの、所望の活性についてスクリーニングされてもよい。
【0166】
【0167】
アミノ酸は、共通の側鎖特性によって群に分けることができる:
(1) 疎水性:ノルロイシン、メチオニン (Met)、アラニン (Ala)、バリン (Val)、ロイシン (Leu)、イソロイシン (Ile);
(2) 中性の親水性:システイン (Cys)、セリン (Ser)、トレオニン (Thr)、アスパラギン (Asn)、グルタミン (Gln);
(3) 酸性:アスパラギン酸 (Asp)、グルタミン酸 (Glu);
(4) 塩基性:ヒスチジン (His)、リジン (Lys)、アルギニン (Arg);
(5) 鎖配向に影響する残基:グリシン (Gly)、プロリン (Pro);および、
(6) 芳香族性:トリプトファン (Trp)、チロシン (Tyr)、フェニルアラニン (Phe)。
【0168】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、別のクラスのものに交換することをいう。
【0169】
置換変異体の1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基の置換を含む。通常、その結果として生じ、さらなる研究のために選ばれた変異体は、親抗体と比較して特定の生物学的特性における修飾(例えば、改善)(例えば、増加したアフィニティ、減少した免疫原性)を有する、および/または親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換変異体は、アフィニティ成熟抗体であり、これは、例えばファージディスプレイベースのアフィニティ成熟技術(例えば本明細書に記載されるもの)を用いて適宜作製され得る。簡潔に説明すると、1つまたは複数のHVR残基を変異させ、そして変異抗体をファージ上に提示させ、特定の生物学的活性(例えば、結合アフィニティ)に関してスクリーニングを行う。
【0170】
改変(例えば、置換)は、例えば抗体のアフィニティを改善するために、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008) を参照のこと)および/または抗原に接触する残基において行われ得、得られた変異VHまたはVLが結合アフィニティに関して試験され得る。二次ライブラリからの構築および再選択によるアフィニティ成熟が、例えば、Hoogenboom et al., in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001)) に記載されている。アフィニティ成熟のいくつかの態様において、多様性は、任意の様々な方法(例えば、エラープローンPCR、チェーンシャッフリングまたはオリゴヌクレオチド指向変異導入)によって成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリは、所望のアフィニティを有する任意の抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)を無作為化するHVR指向アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング変異導入またはモデリングを用いて、具体的に特定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3がしばしば標的化される。
【0171】
特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に減少させない限り、1つまたは複数のHVR内で行われ得る。例えば、結合アフィニティを実質的に減少させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)が、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、例えば、HVRの抗原接触残基の外側であり得る。上記の変異VHおよびVL配列の特定の態様において、各HVRは改変されていないか、わずか1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含む。
【0172】
変異導入のために標的化され得る抗体の残基または領域を同定するのに有用な方法は、Cunningham, Science 244:1081-1085(1989)によって記載される、「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれるものである。この方法において、一残基または一群の標的残基(例えば、荷電残基、例えばアルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、およびグルタミン酸)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンもしくはポリアラニン)で置き換えられ、抗体と抗原の相互作用が影響を受けるかどうかが決定される。この初期置換に対して機能的感受性を示したアミノ酸位置に、さらなる置換が導入され得る。あるいはまたは加えて、抗体と抗原の間の接触点を同定するために、抗原抗体複合体の結晶構造を解析してもよい。そのような接触残基および近隣の残基を、置換候補として標的化してもよく、または置換候補から除外してもよい。変異体は、それらが所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされ得る。
【0173】
アミノ酸配列の挿入は、配列内部への単一または複数のアミノ酸残基の挿入と同様、アミノ末端および/またはカルボキシル末端における1残基から100残基以上を含むポリペプチドの長さの範囲での融合も含む。末端の挿入の例は、N末端にメチオニル残基を伴う抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体のN-またはC-末端に、酵素(例えば、ADEPTのための)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドを融合させたものを含む。
【0174】
b.グリコシル化変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加させるまたは減少させるように改変されている。抗体へのグリコシル化部位の追加または削除は、1つまたは複数のグリコシル化部位を作り出すまたは取り除くようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成可能である。
【0175】
抗体がFc領域を含む場合、そこに付加される炭水化物が改変されてもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然型抗体は、典型的には、枝分かれした二分岐のオリゴ糖を含み、当該オリゴ糖は通常Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-リンケージによって付加されている。例えば、Wright et al., TIBTECH 15:26-32 (1997) 参照。オリゴ糖は、例えば、マンノース、N‐アセチルグルコサミン (GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸などの種々の炭水化物、また、二分岐のオリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに付加されたフコースを含む。いくつかの態様において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を伴う抗体変異体を作り出すために行われてもよい。
【0176】
一態様において、Fc領域に(直接的または間接的に)付加されたフコースを欠く炭水化物構造体を有する抗体変異体が提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されるようにMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に付加されたすべての糖構造体(例えば、複合、ハイブリッド、および高マンノース構造体)の和に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域の297位のあたりに位置するアスパラギン残基を表す(Fc領域残基のEUナンバリング)。しかし、複数の抗体間のわずかな配列の多様性に起因して、Asn297は、297位の±3アミノ酸上流または下流、すなわち294位~300位の間に位置することもあり得る。そのようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号 (Presta, L.) ;第2004/0093621号 (Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd) を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例は、US2003/0157108; WO2000/61739; WO2001/29246; US2003/0115614; US2002/0164328; US2004/0093621; US2004/0132140; US2004/0110704; US2004/0110282; US2004/0109865; WO2003/085119; WO2003/084570; WO2005/035586; WO2005/035778; WO2005/053742; WO2002/031140; Okazaki et al., J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004); Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng. 87:614 (2004) を含む。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例は、タンパク質のフコシル化を欠くLec13 CHO細胞(Ripka et al., Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);US2003/0157108、Presta, L;およびWO2004/056312、Adams et al.、特に実施例11)およびノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng. 87:614 (2004);Kanda et al., Biotechnol. Bioeng. 94(4):680-688 (2006);およびWO2003/085107を参照のこと)を含む。
【0177】
例えば抗体のFc領域に付加された二分枝型オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異体がさらに提供される。そのような抗体変異体は、減少したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体変異体の例は、例えば、WO2003/011878 (Jean-Mairet et al.) ;米国特許第6,602,684号 (Umana et al.);およびUS2005/0123546 (Umana et al.) に記載されている。Fc領域に付加されたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体変異体は、例えば、WO1997/30087 (Patel et al.);WO1998/58964 (Raju, S.); およびWO1999/22764 (Raju, S.) に記載されている。
【0178】
c.Fc領域変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入して、それによりFc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸ポジションのところでアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含んでもよい。
【0179】
特定の態様において、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を備える抗体変異体も、本発明の考慮の内であり、当該エフェクター機能は、抗体を、そのインビボでの半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体およびADCCなど)は不要または有害である場合の適用に望ましい候補とするものである。CDCおよび/またはADCC活性の減少/欠乏を確認するために、インビトロ および/またはインビボ の細胞傷害測定を行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合測定は、抗体がFcγR結合性を欠く(よってADCC活性を欠く蓋然性が高い)一方でFcRn結合能を維持することを確かめるために行われ得る。ADCCを媒介するプライマリ細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、一方単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991) の第464頁のTable 3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロ測定法(アッセイ)の非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986) 参照)および Hellstrom et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987) 参照)に記載されている。あるいは、非放射性の測定法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリー用のACT1(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);および、CytoTox 96(登録商標)non-radioactive cytotoxicity assays 法 (Promega, Madison, WI) 参照)。このような測定法に有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞 (peripheral blood mononuclear cell: PBMC) およびナチュラルキラー (natural killer: NK) 細胞を含む。あるいはまたは加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998) に記載されるような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。また、抗体がC1qに結合できないこと、よってCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合測定を行ってもよい。例えば、WO2006/029879 および WO2005/100402のC1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと。また、補体活性化を評価するために、CDC測定を行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg et al., Blood 101:1045-1052 (2003);およびCragg et al., Blood 103:2738-2743 (2004) 参照)。さらに、FcRn結合性およびインビボでのクリアランス/半減期の決定も、当該技術分野において知られた方法を用いて行い得る(例えばPetkova et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006) 参照)。
【0180】
減少したエフェクター機能を伴う抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329の1つまたは複数の置換を伴うものを含む(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体は、残基265および297のアラニンへの置換を伴ういわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸ポジション265、269、270、297、および327の2つ以上の置換を伴うFc変異体を含む。
【0181】
FcRへの改善または減弱した結合性を伴う特定の抗体変異体が、記述されている。(米国特許第6,737,056号;WO2004/056312、およびShields et al., J. Biol. Chem. 9(2):6591-6604 (2001) を参照のこと。)
【0182】
特定の態様において、抗体変異体は、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換(例えば、Fc領域のポジション298、333、および/または334(EUナンバリングでの残基)のところでの置換)を伴うFc領域を含む。
【0183】
いくつかの態様において、例えば米国特許第6,194,551号、WO1999/51642、およびIdusogie et al., J. Immunol. 164:4178-4184 (2000) に記載されるように、改変された(つまり、改善したか減弱したかのいずれかである)C1q結合性および/または補体依存性細胞傷害 (CDC) をもたらす改変が、Fc領域においてなされる。
【0184】
増加した半減期、および新生児型Fc受容体(FcRn:母体のIgG類を胎児に移行させる役割を負う(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994)))に対する改善した結合性を伴う抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号(Hinton et al.) に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合性を改善する1つまたは複数の置換をその中に伴うFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の1つまたは複数のところでの置換(例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号))を伴うものを含む。
【0185】
Fc領域変異体の他の例については、Duncan, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO1994/29351も参照のこと。
【0186】
d.システイン改変抗体変異体
特定の態様において、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換された、システイン改変抗体(例えば、「thioMAb」)を作り出すことが望ましいだろう。特定の態様において、置換を受ける残基は、抗体の、アクセス可能な部位に生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基が抗体のアクセス可能な部位に配置され、当該反応性のチオール基は、当該抗体を他の部分(薬剤部分またはリンカー‐薬剤部分など)にコンジュゲートして本明細書でさらに詳述するようにイムノコンジュゲートを作り出すのに使用されてもよい。特定の態様において、以下の残基の任意の1つまたは複数が、システインに置換されてよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるようにして生成されてもよい。
【0187】
e.抗体誘導体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野において知られておりかつ容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように、さらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分は、これに限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、これらに限定されるものではないが、ポリエチレングリコール (PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ1,3ジオキソラン、ポリ1,3,6,トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれでも)、および、デキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、および、これらの混合物を含む。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水に対する安定性のために、製造において有利であるだろう。ポリマーは、いかなる分子量でもよく、枝分かれしていてもしていなくてもよい。抗体に付加されるポリマーの数には幅があってよく、2つ以上のポリマーが付加されるならそれらは同じ分子であってもよいし、異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、これらに限定されるものではないが、改善されるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下での療法に使用されるか否か、などへの考慮に基づいて、決定することができる。
【0188】
別の態様において、抗体と、放射線に曝露することにより選択的に熱せられ得る非タンパク質部分との、コンジュゲートが提供される。一態様において、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:11600-11605 (2005))。放射線はいかなる波長でもよく、またこれらに限定されるものではないが、通常の細胞には害を与えないが抗体‐非タンパク質部分に近接した細胞を死滅させる温度まで非タンパク質部分を熱するような波長を含む。
【0189】
B.組み換えの方法および構成
例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるとおり、抗体は組み換えの方法や構成を用いて製造することができる。一態様において、本明細書に記載の抗C5抗体をコードする、単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードしてもよい。さらなる態様において、このような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる態様において、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。このような態様の1つでは、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または、(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクターと抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のベクターを含む(例えば、形質転換されている)。一態様において、宿主細胞は、真核性である(例えば、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞)またはリンパ系の細胞(例えば、Y0、NS0、SP20細胞))。一態様において、抗C5抗体の発現に好適な条件下で、上述のとおり当該抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること、および任意で、当該抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することを含む、抗C5抗体を作製する方法が提供される。
【0190】
抗C5抗体の組み換え製造のために、(例えば、上述したものなどの)抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のために、1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を用いて容易に単離および配列決定されるだろう(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることで)。
【0191】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合は、細菌で製造してもよい。細菌での抗体断片およびポリペプチドの発現に関して、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照のこと。(加えて、大腸菌における抗体断片の発現について記載したCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性フラクション中に単離されてもよく、またさらに精製することができる。
【0192】
原核生物に加え、部分的なまたは完全なヒトのグリコシル化パターンを伴う抗体の産生をもたらす、グリコシル化経路が「ヒト化」されている菌類および酵母の株を含む、糸状菌または酵母などの真核性の微生物は、抗体コードベクターの好適なクローニングまたは発現宿主である。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)および Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006) を参照のこと。
【0193】
多細胞生物(無脊椎生物および脊椎生物)に由来するものもまた、グリコシル化された抗体の発現のために好適な宿主細胞である。無脊椎生物細胞の例は、植物および昆虫細胞を含む。昆虫細胞との接合、特にSpodoptera frugiperda細胞の形質転換に用いられる、数多くのバキュロウイルス株が同定されている。
【0194】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するための、PLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照のこと。
【0195】
脊椎動物細胞もまた宿主として使用できる。例えば、浮遊状態で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は、有用であろう。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換されたサル腎CV1株 (COS-7);ヒト胎児性腎株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977) などに記載の293または293細胞);仔ハムスター腎細胞 (BHK);マウスセルトリ細胞(Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980) などに記載のTM4細胞);サル腎細胞 (CV1);アフリカミドリザル腎細胞 (VERO-76);ヒト子宮頸部癌細胞 (HELA);イヌ腎細胞 (MDCK);Buffalo系ラット肝細胞 (BRL 3A);ヒト肺細胞 (W138);ヒト肝細胞 (Hep G2);マウス乳癌 (MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982) に記載);MRC5細胞;および、FS4細胞などである。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR- CHO細胞 (Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)) を含むチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞;およびY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の総説として、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003) を参照のこと。
【0196】
ポリクローナル抗体は好ましくは、関連する抗原およびアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により動物において産生される。関連する抗原を、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質に、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害因子に、二官能性物質または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR(ここでRおよびR1は異なるアルキル基である)を用いて、コンジュゲートすることが有用であり得る。
【0197】
動物(通常は非ヒト哺乳動物)は、例えば、(ウサギまたはマウスについてそれぞれ)100μgまたは5μgのタンパク質またはコンジュゲートを3倍容量のフロイント完全アジュバントと組み合わせてその溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、または誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後、複数部位に皮下注射することによって、最初の量の1/5~1/10の、フロイント完全アジュバント中のペプチドまたはコンジュゲートで該動物を追加免疫する。7~14日後、該動物から採血し、血清を抗体力価についてアッセイする。力価がプラトーに達するまで動物を追加免疫する。好ましくは、同一抗原であるが別のタンパク質にコンジュゲートされたおよび/または別の架橋試薬を介してコンジュゲートされたコンジュゲートを用いて、該動物を追加免疫する。コンジュゲートは、組み換え細胞培養物中でタンパク質融合体として調製することも可能である。また、免疫応答を増強するために、ミョウバンなどの凝集剤も好適に使用される。
【0198】
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られ、すなわち、該集団を構成する個々の抗体は、若干量存在しうる自然に生じる潜在的な突然変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。したがって、修飾語「モノクローナル」は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示している。
【0199】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al. Nature 256(5517):495-497 (1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製することができる。ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターを本明細書に上記したように免疫化して、免疫化に使用されたタンパク質に特異的に結合する抗体を製造するか製造する能力があるリンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
【0200】
免疫化剤は、典型的には、抗原タンパク質またはその融合変異体を包含する。一般的に、ヒト起源の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(PBL)が使用され、非ヒト哺乳動物源が望まれる場合には脾臓細胞またはリンパ節細胞が使用される。その後、リンパ球は、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて不死化細胞株と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press (1986), pp. 59-103)。
【0201】
不死化細胞株は通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシおよびヒト起源のミエローマ細胞である。通常は、ラットまたはマウスのミエローマ細胞株が利用される。このようにして作製されたハイブリドーマ細胞を、未融合の親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1種以上の物質を好ましくは含有する適切な培養培地中に播種して増殖させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)を含むであろう。
【0202】
好ましい不死化ミエローマ細胞とは、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの製造を補助し、かつHAT培地のような培地に対して感受性である、細胞である。これらの中でも、マウスミエローマ株、例えば、米国カリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerから入手できるMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍に由来するもの、ならびに米国バージニア州マナッサスのAmerican Type Culture Collectionから入手できるSP-2細胞(およびその誘導体、例えばX63-Ag8-653)が好ましい。ヒトモノクローナル抗体の製造について、ヒトミエローマ細胞株およびマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株もまた、記載されている(Kozbor et al., J Immunol. 133(6):3001-3005 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York (1987), pp. 51-63)。
【0203】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の製造についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により製造されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはインビトロ結合測定法、例えば放射免疫測定法(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって決定される。このような技術および測定法は当技術分野で公知である。例えば、結合アフィニティは、Munson, Anal Biochem. 107(1):220-239 (1980)のスキャッチャード(Scatchard)解析によって求めることができる。
【0204】
所望の特異性、アフィニティ、および/または活性の抗体を製造するハイブリドーマ細胞が特定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングして、標準的な方法(Goding、前掲)により増殖させることができる。この目的のための適切な培養培地としては、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が挙げられる。また、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物内の腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0205】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、培養培地、腹水、または血清から、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製法によって、適切に分離される。
【0206】
抗体は、適切な宿主動物を抗原に対して免疫化することによって製造してもよい。一態様において、抗原は全長C5を含むポリペプチドである。一態様において、抗原はC5のβ鎖(配列番号:40)を含むポリペプチドである。一態様において、抗原はC5のβ鎖のMG1-MG2ドメイン(配列番号:43)を含むポリペプチドである。一態様において、抗原はC5のβ鎖のMG1ドメイン(配列番号:41)を含むポリペプチドである。一態様において、抗原はC5のβ鎖の位置19-180のアミノ酸に対応する領域を含むポリペプチドである。一態様において、抗原はC5のβ鎖の位置33-124のアミノ酸に対応する領域を含むポリペプチドである。一態様において、抗原は、C5のβ鎖(配列番号:40)のアミノ酸47-57、70-76、および107-110から選択される少なくとも1つの断片を含むポリペプチドである。一態様において、抗原は、Thr47、Glu48、Ala49、Phe50、Asp51、Ala52、Thr53、Lys57、His70、Val71、His72、Ser74、Glu76、Val107、Ser108、Lys109、およびHis110からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む、C5のβ鎖の断片を含むポリペプチドである。一態様において、抗原は、Glu48、Asp51、His70、His72、Lys109、およびHis110からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む、C5のβ鎖の断片を含むポリペプチドである。抗原に対して動物を免疫化することによって製造された抗体も本発明に含まれる。抗体には、上記の「例示的な抗C5抗体」に記載された任意の特徴を、単独でまたは組み合わせて、組み入れることができる。
【0207】
C.測定法(アッセイ)
本明細書で提供される抗C5抗体は、当該技術分野において知られている種々の測定法によって、同定され、スクリーニングされ、または物理的/化学的特性および/または生物学的活性について明らかにされてもよい。
【0208】
1.結合測定法およびその他の測定法
一局面において、本発明の抗体は、例えばELISA、ウエスタンブロット、BIACORE(登録商標)等の公知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。
【0209】
別の局面において、C5への結合に関して、本明細書に記載される抗C5抗体と競合する抗体を同定するために、競合アッセイが使用され得る。特定の態様において、そのような競合抗体が過剰に存在する場合、これは、C5に対する参照抗体の結合を少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、またはそれ以上阻止する(例えば低減させる)。いくつかの態様において、結合は少なくとも80%、85%、90%、95%、またはそれ以上阻害される。特定の態様において、そのような競合抗体は、本明細書に記載される抗C5抗体(例えば、表2に記載される抗C5抗体)によって結合されるのと同じエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングする、詳細な例示的方法は、Morris, "Epitope Mapping Protocols," in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ) (1996)に提供されている。
【0210】
例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたC5は、C5に結合する第1の標識された(参照)抗体およびC5への結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験される第2の未標識の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清に存在し得る。対照として、固定化されたC5が、第1の標識された抗体を含むが第2の未標識の抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のC5に対する結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、余分な未結合の抗体が除去され、固定化されたC5に結合した標識の量が測定される。固定化されたC5に結合した標識の量が対照サンプルと比較して試験サンプルにおいて実質的に減少している場合、それは第2の抗体がC5への結合に関して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY) (1988)を参照のこと。
【0211】
別の例示的な競合測定法では、BIACORE(登録商標)解析を用いて、試験抗C5抗体が第2(参照)抗C5抗体によるC5への結合と競合する能力を決定する。BIACORE(登録商標)機器(例えば、BIACORE(登録商標)3000)をメーカーの推奨にしたがって操作する更なる局面において、当技術分野で公知の標準的な技術を用いてC5タンパク質をCM5 BIACORE(登録商標)チップ上に捕捉し、C5でコーティングされた表面を作成する。典型的には、200~800共鳴単位のC5をチップに結合させる(容易に測定可能なレベルの結合をもたらすが、使用される試験抗体の濃度で容易に飽和可能な量)。互いと競合する能力について評価される2つの抗体(すなわち、試験抗体と参照抗体)を、適切な緩衝液中に結合部位のモル比1:1で混合して、試験混合物を生成する。結合部位に基づいて該濃度を算出する場合、試験抗体または参照抗体の分子量は、対応する抗体の総分子量を該抗体上のC5結合部位の数で割ったものとする。試験混合物中の各抗体(すなわち、試験抗体と参照抗体)の濃度は、BIACORE(登録商標)チップ上に捕捉されたC5分子上の該抗体の結合部位を容易に飽和するように充分に高くなければならない。混合物中の試験抗体と参照抗体は、(結合に基づいて)同じモル濃度であり、典型的には(結合部位に基づいて)1.00~1.5マイクロモルである。試験抗体だけ、および参照抗体だけを含有する別個の溶液も調製する。これらの溶液中の試験抗体および参照抗体は、試験混合物と同じ緩衝液中にあり、同じ濃度および条件とすべきである。試験抗体と参照抗体を含有する試験混合物に、C5でコーティングしたBIACORE(登録商標)チップ上を通過させて、結合の総量を記録する。次いで、チップに結合したC5に損傷を与えることなく結合した試験抗体または参照抗体を除去するように、チップを処理する。典型的には、これは、チップを30mM HClで60秒間処理することによって行われる。その後、試験抗体だけの溶液に、C5でコーティングした表面上を通過させて、結合の量を記録する。再度、チップに結合させたC5に損傷を与えることなく結合した抗体の全てを除去するように、チップを処理する。その後、参照抗体だけの溶液に、C5でコーティングした表面上を通過させて、結合の量を記録する。次に、試験抗体と参照抗体の混合物の結合の理論上の最大値を算出するが、これは、C5表面上を単独で通過したときの各抗体(すなわち、試験および参照)の結合の合計である。該混合物の実際の記録された結合がこの理論上の最大値よりも小さい場合には、試験抗体と参照抗体がC5への結合に関して互いと競合している。したがって、一般的に、競合する試験抗C5抗体には、上記のBIACORE(登録商標)ブロッキング測定法の間に、参照抗C5抗体の存在下で、記録される結合が、組み合わせた試験抗体と参照抗体の理論上の結合最大値(上記で定義した通り)の80%と0.1%の間(例えば、80%>~4%)、特に、理論上の結合最大値の75%と0.1%の間(例えば、75%~4%)、より具体的には理論上の結合最大値の70%と0.1%の間(例えば、70%~4%)となるように該測定法においてC5に結合する、抗体である。
【0212】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5への結合に関して、抗体CFA0341およびCFA0330から選択される、VHとVLの対を含む抗体と競合する。いくつかの態様において、抗C5抗体は、C5への結合に関して、CFA0538、CFA0501、CFA0599、CFA0307、CFA0366、CFA0675、およびCFA0672から選択される抗体と競合する。いくつかの態様において、抗C5抗体は、C5への結合に関して、抗体CFA0329と競合する。いくつかの態様において、抗C5抗体は、C5への結合に関して、抗体CFA0666と競合する。
【0213】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5への結合に関して、抗体CFA0305または305LO5のVHとVLの対を含む抗体と競合する。
【0214】
さらなる態様において、抗C5抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合する。特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5への結合に関して、CFA0538、CFA0501、CFA0599、CFA0307、CFA0366、CFA0675、およびCFA0672から選択されるVHとVLの対を含む抗体と競合する。いくつかの態様において、抗C5抗体は、C5への結合に関して、抗体CFA0666と競合する。さらなる態様において、抗C5抗体は、pH5.8においてよりもpH7.4において高いアフィニティでC5に結合する。
【0215】
さらなる態様において、抗C5抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合する。特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5への結合に関して、抗体CFA0305または305LO5のVHとVLの対を含む抗体と競合する。さらなる態様において、抗C5抗体は、pH5.8においてよりもpH7.4において高いアフィニティでC5に結合する。
【0216】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5への結合に関して、配列番号:22のVHおよび配列番号:26のVL、または配列番号:21のVHおよび配列番号:25のVLから選択されるVHとVLの対を含む抗体と競合する。いくつかの態様において、抗C5抗体は、C5への結合に関して、以下から選択されるVHとVLの対を含む抗体と競合する:(a) 配列番号:5のVHおよび配列番号:15のVL;(b) 配列番号:4のVHおよび配列番号:14のVL;(c) 配列番号:6のVHおよび配列番号:16のVL;(d) 配列番号:2のVHおよび配列番号:12のVL;(e) 配列番号:3のVHおよび配列番号:13のVL;(f) 配列番号:1のVHおよび配列番号:11のVL;(g) 配列番号:9のVHおよび配列番号:19のVL;(h) 配列番号:7のVHおよび配列番号:17のVL;ならびに (i) 配列番号:8のVHおよび配列番号:18のVL。いくつかの態様において、抗C5抗体は、C5への結合に関して、配列番号:23のVHおよび配列番号:27のVLを含む抗体と競合する。いくつかの態様において、抗C5抗体は、C5への結合に関して、配列番号:7のVHおよび配列番号:17のVLを含む抗体と競合する。
【0217】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5への結合に関して、以下から選択されるVHとVLの対を含む抗体と競合する:(a) 配列番号:1のVHおよび配列番号:11のVL;(b) 配列番号:22のVHおよび配列番号:26のVL;(c) 配列番号:21のVHおよび配列番号:25のVL;(d) 配列番号:5のVHおよび配列番号:15のVL;(e) 配列番号:4のVHおよび配列番号:14のVL;(f) 配列番号:6のVHおよび配列番号:16のVL;(g) 配列番号:2のVHおよび配列番号:12のVL;(h) 配列番号:3のVHおよび配列番号:13のVL;(i) 配列番号:9のVHおよび配列番号:19のVL;(j) 配列番号:7のVHおよび配列番号:17のVL;(k) 配列番号:8のVHおよび配列番号:18のVL;(l) 配列番号:23のVHおよび配列番号:27のVL;ならびに (m) 配列番号:10のVHおよび配列番号:20のVL。
【0218】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5への結合に関して、以下から選択されるVHとVLの対を含む抗体と競合する:(a) 配列番号:22のVHおよび配列番号:26のVL;(b) 配列番号:21のVHおよび配列番号:25のVL;(c) 配列番号:5のVHおよび配列番号:15のVL;(d) 配列番号:4のVHおよび配列番号:14のVL;(e) 配列番号:6のVHおよび配列番号:16のVL;(f) 配列番号:2のVHおよび配列番号:12のVL;(g) 配列番号:3のVHおよび配列番号:13のVL;(h) 配列番号:9のVHおよび配列番号:19のVL;(i) 配列番号:7のVHおよび配列番号:17のVL;(j) 配列番号:8のVHおよび配列番号:18のVL;(k) 配列番号:23のVHおよび配列番号:27のVL。
【0219】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体は、C5への結合に関して、配列番号:1のVHおよび配列番号:11のVL、または配列番号:10のVHおよび配列番号:20のVLから選択されるVHとVLの対を含む抗体と競合する。
【0220】
さらなる態様において、抗C5抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合する。特定の態様において、抗C5抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合し、かつC5への結合に関して、以下から選択されるVHとVLの対を含む抗体と競合する:(a) 配列番号:1のVHおよび配列番号:11のVL;(b) 配列番号:5のVHおよび配列番号:15のVL;(c) 配列番号:4のVHおよび配列番号:14のVL;(d) 配列番号:6のVHおよび配列番号:16のVL;(e) 配列番号:2のVHおよび配列番号:12のVL;(f) 配列番号:3のVHおよび配列番号:13のVL;(g) 配列番号:9のVHおよび配列番号:19のVL;(h) 配列番号:7のVHおよび配列番号:17のVL;(i) 配列番号:8のVHおよび配列番号:18のVL;ならびに(j) 配列番号:10のVHおよび配列番号:20のVL。さらなる態様において、抗C5抗体は、pH5.8においてよりもpH7.4において高いアフィニティでC5に結合する。
【0221】
いくつかの態様において、抗C5抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合し、かつC5への結合に関して、以下から選択されるVHとVLの対を含む抗体と競合する:(a) 配列番号:5のVHおよび配列番号:15のVL;(b) 配列番号:4のVHおよび配列番号:14のVL;(c) 配列番号:6のVHおよび配列番号:16のVL;(d) 配列番号:2のVHおよび配列番号:12のVL;(e) 配列番号:3のVHおよび配列番号:13のVL;(f) 配列番号:1のVHおよび配列番号:11のVL;(g) 配列番号:9のVHおよび配列番号:19のVL;(h) 配列番号:7のVHおよび配列番号:17のVL;ならびに(i) 配列番号:8のVHおよび配列番号:18のVL。さらなる態様において、抗C5抗体は、pH5.8においてよりもpH7.4において高いアフィニティでC5に結合する。
【0222】
いくつかの態様において、抗C5抗体は、酸性pHにおいてよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC5に結合し、かつC5への結合に関して、以下から選択されるVHとVLの対を含む抗体と競合する:配列番号:1のVHおよび配列番号:11のVL、または配列番号:10のVHおよび配列番号:20のVL。さらなる態様において、抗C5抗体は、pH5.8においてよりもpH7.4において高いアフィニティでC5に結合する。
【0223】
特定の態様において、本発明の抗C5抗体が特定のエピトープに結合するかどうかを、次のように判定することができる:C5のアミノ酸(アラニンを除く)がアラニンで置換されたC5点変異体を293細胞において発現させ、抗C5抗体の該C5変異体への結合をELISA、ウエスタンブロットまたはBIACORE(登録商標)により試験し;ここで、抗C5抗体の野生型C5への結合と比べた、抗C5抗体の該C5変異体への結合の実質的な低下または消失は、抗C5抗体がC5上の該アミノ酸を含むエピトープに結合することを示す。特定の態様において、アラニンで置換されるC5上のアミノ酸は、C5のβ鎖(配列番号:40)のGlu48、Asp51、His70、His72、Lys109、およびHis110からなる群より選択される。さらなる態様において、アラニンで置換されるC5上のアミノ酸は、C5のβ鎖(配列番号:40)のAsp51またはLys109である。
【0224】
別の態様において、pH依存的結合特性を有する抗C5抗体が特定のエピトープに結合するかどうかを、次のように判定することができる:C5上のヒスチジン残基が別のアミノ酸(例えば、チロシン)で置換されたC5点変異体を293細胞において発現させ、抗C5抗体の該C5変異体への結合をELISA、ウエスタンブロットまたはBIACORE(登録商標)により試験し;ここで、酸性pHでの抗C5抗体の該C5変異体への結合と比べた、酸性pHでの抗C5抗体の野生型C5への結合の実質的な低下は、抗C5抗体がC5上の該ヒスチジン残基を含むエピトープに結合することを示す。さらなる態様において、中性pHでの抗C5抗体の野生型C5への結合は、中性pHでの抗C5抗体の該C5変異体への結合と比べて、実質的に低下しない。特定の態様において、別のアミノ酸で置換されるC5上のヒスチジン残基は、C5のβ鎖(配列番号:40)のHis70、His72、およびHis110からなる群より選択される。さらなる態様において、ヒスチジン残基His70がチロシンで置換される。
【0225】
2.活性測定法
一局面において、生物学的活性を有する抗C5抗体のそれを同定するための測定法が提供される。生物学的活性は、例えば、C5の活性化を阻害すること、C5aおよびC5bを形成するためのC5の切断を防止すること、C5上の切断部位へのC5転換酵素の接近を阻止すること、C5の活性化によって引き起こされる溶血活性を阻止することなどを含んでよい。また、このような生物学的活性をインビボおよび/またはインビトロで有する抗体が、提供される。
【0226】
特定の態様において、本発明の抗体は、このような生物学的活性について試験される。
【0227】
特定の態様において、試験抗体がC5のC5aおよびC5bへの切断を阻害するかどうかを、例えば、Isenman et al., J Immunol. 124(1):326-331 (1980)に記載される方法により判定する。別の態様において、これを、切断されたC5aおよび/またはC5bタンパク質を特異的に検出するための方法、例えばELISAまたはウエスタンブロットにより、判定する。C5の切断産物(すなわち、C5aおよび/またはC5b)の量の減少が試験抗体の存在下で(または該抗体との接触後に)検出される場合、該試験抗体は、C5の切断を阻害し得る抗体として同定される。特定の態様において、C5aの濃度および/または生理学的活性は、例えば走化性測定法、RIA、またはELISAなどの方法により測定することができる(例えば、Ward and Zvaifler J. Clin. Invest. 50(3):606-616 (1971)を参照されたい)。
【0228】
特定の態様において、試験抗体がC5へのC5転換酵素の接近を阻止するかどうかを、C5転換酵素とC5の間のタンパク質相互作用を検出するための方法、例えばELISAまたはBIACORE(登録商標)により、判定する。該相互作用が試験抗体の存在下で(または該抗体との接触後に)低下する場合、該試験抗体は、C5へのC5転換酵素の接近を阻止し得る抗体として同定される。
【0229】
特定の態様において、C5活性は、対象者の体液中でのその細胞溶解能力の関数として測定され得る。C5の細胞溶解能力またはその低下は、当技術分野で周知の方法により測定することができ、例えば、従来の溶血測定法、例えばKabat and Mayer(編), Experimental Immunochemistry, 第2版, 135-240, Springfield, IL, CC Thomas (1961), 135-139ページに記載される溶血測定法、または該測定法の通常の変法、例えばHillmen et al., N. Engl. J. Med. 350(6): 552-559 (2004)に記載されるようなニワトリ赤血球溶血法により測定される。特定の態様において、C5活性またはその阻害は、CH50eq測定法を用いて定量される。CH50eq測定法は、血清中の総古典的補体活性を測定するための方法である。この試験は、溶解測定法であって、古典的補体経路の活性化因子としての抗体感作赤血球と、50%溶解(CH50)を与えるのに必要な量を決定するための試験血清の種々の希釈物とを使用する。溶血のパーセンテージは、例えば、分光光度計を用いて、決定することができる。測定される溶血の直接の原因が終末補体複合体(TCC)それ自体であるため、CH50eq測定法は、TCC形成の間接的な尺度を提供する。C5活性化の阻害はまた、実施例に記載され例示された方法を用いて検出および/または測定することもできる。これらのまたは他の適切なタイプの測定法を用いて、C5の活性化を阻害することができる候補抗体がスクリーニングされ得る。特定の態様において、C5活性化の阻害は、類似条件下での陰性対照の効果と比較して、測定法におけるC5活性化の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、もしくは40%、またはそれ以上の減少を含む。いくつかの態様において、それは、C5活性化の少なくとも45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、またはそれ以上の阻害を指す。
【0230】
D.イムノコンジュゲート
本発明はまた、1つまたは複数の細胞傷害剤(例えば化学療法剤または化学療法薬、増殖阻害剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物もしくは動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性な毒素、もしくはそれらの断片)または放射性同位体)にコンジュゲートされた本明細書の抗C5抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0231】
一態様において、イムノコンジュゲートは、抗体が、これらに限定されるものではないが以下を含む1つまたは複数の薬剤にコンジュゲートされた、抗体-薬剤コンジュゲート (antibody-drug conjugate: ADC) である:メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、第5,416,064号、および欧州特許第0,425,235号B1参照);例えばモノメチルオーリスタチン薬剤部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(米国特許第5,635,483号および第5,780,588号および第7,498,298号参照)などのオーリスタチン;ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、第5,714,586号、第5,739,116号、第5,767,285号、第5,770,701号、第5,770,710号、第5,773,001号、および第5,877,296号;Hinman et al., Cancer Res. 53:3336-3342 (1993);ならびにLode et al., Cancer Res. 58:2925-2928 (1998) 参照);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al., Current Med. Chem. 13:477-523 (2006);Jeffrey et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006);Torgov et al., Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005);Nagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834 (2000);Dubowchik et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532 (2002);King et al., J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002);および米国特許第6,630,579号参照);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065。
【0232】
別の態様において、イムノコンジュゲートは、これらに限定されるものではないが以下を含む酵素的に活性な毒素またはその断片にコンジュゲートされた、本明細書に記載の抗体を含む:ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) 由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ (Aleurites fordii) タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ (Phytolacca americana) タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ツルレイシ (momordica charantia) 阻害剤、クルシン (curcin)、クロチン、サボンソウ (saponaria officinalis) 阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン (mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、ならびにトリコテセン。
【0233】
別の態様において、イムノコンジュゲートは、放射性コンジュゲートを形成するために放射性原子にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗体を含む。様々な放射性同位体が放射性コンジュゲートの製造に利用可能である。例は、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体を含む。放射性コンジュゲートを検出のために使用する場合、放射性コンジュゲートは、シンチグラフィー検査用の放射性原子(例えばtc99mもしくはI123)、または、核磁気共鳴 (NMR) イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られる)用のスピン標識(例えばここでもヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、または鉄)を含み得る。
【0234】
抗体および細胞傷害剤のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質連結剤を用いて作製され得る。例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート (SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート (SMCC)、イミノチオラン (IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)である。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science 238:1098 (1987) に記載されるようにして調製され得る。炭素-14標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸 (MX-DTPA) は、抗体への放射性核種のコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照のこと。リンカーは、細胞内での細胞傷害薬の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0235】
本明細書のイムノコンジュゲートまたはADCは、(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aから)市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない架橋試薬を用いて調製されるコンジュゲートを明示的に考慮するが、これらに限定されない。
【0236】
E.診断および検出のための方法および組成物
特定の態様において、本明細書で提供される抗C5抗体のいずれも、生物学的サンプルにおけるC5の存在を検出するのに有用である。本明細書で用いられる用語「検出」は、定量的または定性的な検出を包含する。特定の態様において、生物学的サンプルは、細胞または組織、例えば、血清、全血、血漿、生検サンプル、組織サンプル、細胞懸濁物、唾液、痰、口腔液、脳脊髄液、羊水、腹水、母乳、初乳、乳腺分泌物、リンパ液、尿、汗、涙液、胃液、滑液、腹水、眼用レンズ液、および粘液を含む。
【0237】
一態様において、診断方法または検出方法において使用するための抗C5抗体が提供される。さらなる局面において、生物学的サンプル中のC5の存在を検出する方法が提供される。特定の態様において、この方法は、C5への抗C5抗体の結合が許容される条件下で本明細書に記載の抗C5抗体と生物学的サンプルを接触させること、および抗C5抗体とC5の間で複合体が形成されたかどうかを検出することを含む。そのような方法は、インビトロの方法またはインビボの方法であり得る。一態様において、抗C5抗体は、例えばC5が患者を選択するためのバイオマーカーである場合、抗C5抗体を用いる治療に適合する被験体を選択するために使用される。
【0238】
別の態様において、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を有する個体を、本発明の抗C5抗体を含む治療法に好適であると選択する方法が提供される。特定の態様において、方法は、(a)個体由来のC5における遺伝的変異を検出する工程、および(b)個体由来のC5において遺伝的変異が検出された場合に、個体を、本発明の抗C5抗体を含む治療法に好適であると選択する工程を含む。別の態様において、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を有する個体のための治療法を選択する方法が提供される。特定の態様において、方法は、(a)個体由来のC5における遺伝的変異を検出する工程、および(b)個体由来のC5において遺伝的変異が検出された場合に、本発明の抗C5抗体を含む治療法を個体のために選択する工程を含む。
【0239】
別の態様において、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療する方法が提供される。特定の態様において、方法は、(a)個体由来のC5における遺伝的変異を検出する工程、(b)個体由来のC5において遺伝的変異が検出された場合に、個体を、本発明の抗C5抗体を含む治療法に好適であると選択する工程、および(c)本発明の抗C5抗体を個体に投与する工程を含む。
【0240】
別の態様において、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を有する個体の治療において使用するための、本発明の抗C5抗体が提供される。特定の態様において、個体は、個体由来のC5において遺伝的変異が検出された場合に、本発明の抗C5抗体を用いて治療される。
【0241】
別の態様において、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を有する個体を、本発明の抗C5抗体を含む治療法に好適であると選択するための、C5における遺伝的変異のインビトロでの使用が提供される。特定の態様において、個体は、個体由来のC5において遺伝的変異が検出された場合に、治療法に好適であると選択される。別の態様において、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を有する個体のための治療法を選択するための、C5における遺伝的変異のインビトロでの使用が提供される。特定の態様において、個体由来のC5において遺伝的変異が検出された場合に、本発明の抗C5抗体を含む治療法が個体のために選択される。
【0242】
C5に遺伝的変異を有する一部の患者は、既存の抗C5抗体を含む治療法に対して応答不良を示すことが報告されている(Nishimura et al., N. Engl. J. Med. 370:632-639 (2014))。そのような患者は、本発明の抗C5抗体を含む治療法を用いて治療されることが推奨される。というのも、本発明の抗C5抗体は、後述の実施例で実証されるように、野生型C5だけでなくC5変異体の活性化に対しても阻害活性を有するためである。
【0243】
C5における遺伝的変異の検出は、先行技術において公知の方法を用いることにより行うことができる。このような方法には、これに限定されるものではないが、配列決定法、PCR、RT-PCR、およびハイブリダイゼーションに基づく方法、例えばサザンブロットまたはノーザンブロットが含まれ得る。C5変異体は少なくとも1つの遺伝的変異を含み得る。遺伝的変異は、V145I、R449G、V802I、R885H、R928Q、D966Y、S1310N、およびE1437Dからなる群より選択され得る。本明細書において、例えば、R885Hとは、位置885のアルギニンがヒスチジンで置換されている遺伝的変異を意味する。特定の態様において、C5変異体は、野生型C5と類似の生物学的活性を有する。
【0244】
本発明の抗体を用いて診断され得る例示的な障害は、関節リウマチ(RA);全身性エリテマトーデス(SLE);ループス腎炎;虚血再灌流障害(IRI);喘息;発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH);溶血性尿毒症症候群(HUS)(例えば、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS));デンスデポジット病(DDD);視神経脊髄炎(NMO);多巣性運動ニューロパチー(MMN);多発性硬化症(MS);全身性硬化症;黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性症(AMD));HELLP(hemolysis, elevated liver enzymes, and low platelets)症候群;血栓性血小板減少性紫斑病(TTP);自然流産;表皮水疱症;習慣性流産;子癇前症;外傷性脳損傷;重症筋無力症;寒冷凝集素症;シェーグレン症候群;皮膚筋炎;水疱性類天疱瘡;光毒性反応;志賀毒素大腸菌関連溶血性尿毒症症候群;定型または感染性溶血性尿毒症症候群(tHUS);C3糸球体腎炎;抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎;体液性および血管性移植拒絶反応;急性抗体媒介性拒絶反応(AMR);移植片機能不全;心筋梗塞;同種移植;敗血症;冠動脈疾患;遺伝性血管性浮腫;皮膚筋炎;グレーブス病;アテローム性動脈硬化症;アルツハイマー病(AD);ハンチントン病;クロイツフェルト・ヤコブ病;パーキンソン病;癌;創傷;敗血症性ショック;脊髄損傷;ぶどう膜炎;糖尿病性眼疾患;未熟児網膜症;糸球体腎炎;膜性腎炎;免疫グロブリンA腎症;成人呼吸窮迫症候群(ARDS);慢性閉塞性肺疾患(COPD);嚢胞性線維症;溶血性貧血;発作性寒冷ヘモグロビン尿症;アナフィラキシーショック;アレルギー;骨粗鬆症;変形性関節症;橋本甲状腺炎;I型糖尿病;乾癬;天疱瘡;自己免疫性溶血性貧血(AIHA);特発性血小板減少性紫斑病(ITP);グッドパスチャー症候群;デゴス病;抗リン脂質抗体症候群(APS);劇症型APS(CAPS);心血管疾患;心筋炎;脳血管障害;末梢血管障害;腎血管障害;腸間膜/腸血管障害;血管炎;ヘノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎;高安病;拡張型心筋症;糖尿病性血管障害;川崎病(動脈炎);静脈ガス塞栓(VGE)、ステント留置後の再狭窄;回転式粥腫切除;膜性腎症;ギラン・バレー症候群(GBS);フィッシャー症候群;抗原誘導関節炎;滑膜炎;ウイルス感染症;細菌感染症;真菌感染症;ならびに、心筋梗塞、心肺バイパスおよび血液透析に起因する損傷を含む。
【0245】
特定の態様において、標識された抗C5抗体が提供される。標識は、直接的に検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色標識、高電子密度標識、化学発光標識、および放射性標識)ならびに、例えば酵素反応または分子間相互作用を通じて間接的に検出される部分(例えば酵素またはリガンド)を含むが、これらに限定されない。例示的な標識は、これらに限定されるものではないが、以下を含む:放射性同位体32P、14C、125I、3Hおよび131I、希土類キレートなどの発蛍光団またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)などのルシフェラーゼ、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ (horseradish peroxidase: HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、単糖オキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素(例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼ)と連結された、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなどの複素環オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカル類、ならびにこれらに類するもの。
【0246】
F.薬学的製剤
本明細書に記載の抗C5抗体の薬学的製剤は、所望の純度を有する抗体を、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体 (Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)) と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。薬学的に許容される担体は、概して、用いられる際の用量および濃度ではレシピエントに対して非毒性であり、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む、抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどの、砂糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン類;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール (PEG) などの非イオン系表面活性剤。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体は、さらに、可溶性中性活性型ヒアルロニダーゼ糖タンパク質 (sHASEGP)(例えば、rHuPH20 (HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.) などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質)などの間質性薬剤分散剤を含む。特定の例示的sHASEGPおよびその使用方法は(rHuPH20を含む)、米国特許出願公開第2005/0260186号および第2006/0104968号に記載されている。一局面において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つまたは複数の追加的なグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0247】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水溶液抗体製剤は、米国特許第6,171,586号およびWO2006/044908に記載のものを含み、後者の製剤はヒスチジン-アセテート緩衝液を含んでいる。
【0248】
本明細書の製剤は、治療される特定の適応症のために必要であれば1つより多くの有効成分を含んでもよい。互いに悪影響を与えあわない相補的な活性を伴うものが好ましい。このような有効成分は、意図された目的のために有効である量で、好適に組み合わせられて存在する。
【0249】
有効成分は、例えば液滴形成(コアセルベーション)手法によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル)に取り込まれてもよいし、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)に取り込まれてもよいし、マクロエマルションに取り込まれてもよい。このような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) に開示されている。
【0250】
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含んだ固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、当該マトリクスは例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態である。
【0251】
生体内 (in vivo) 投与のために使用される製剤は、通常無菌である。無菌状態は、例えば滅菌ろ過膜を通して濾過することなどにより、容易に達成される。
【0252】
G.治療的方法および治療用組成物
本明細書で提供される抗C5抗体のいずれも、治療的な方法において使用されてよい。
【0253】
一局面において、医薬品としての使用のための、抗C5抗体が提供される。さらなる局面において、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態の治療における使用のための、抗C5抗体が提供される。特定の態様において、治療方法における使用のための、抗C5抗体が提供される。特定の態様において、本発明は、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療する方法であって、当該個体に抗C5抗体の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、抗C5抗体を提供する。このような態様の1つにおいて、方法は、当該個体に少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
【0254】
抗原が可溶性タンパク質である場合、抗体のその抗原への結合は、抗体自身が比較的長い血漿中半減期を有しかつ抗原のキャリアとして働くため、抗原の血漿中半減期の延長(すなわち、血漿からの抗原のクリアランスの低減)をもたらし得る。これは、細胞中のエンドソーム経路を介した、FcRnによる抗原-抗体複合体のリサイクルに起因する(Roopenian, Nat. Rev. Immunol. 7(9):715-725 (2007))。しかしながら、中性の細胞外環境では抗原に結合するが細胞内に侵入した後に酸性のエンドソーム区画内に抗原を放出する、pH依存的結合特性を有する抗体は、pH非依存的様式で結合する対応物に比べて抗原の中和およびクリアランスの点で優れた特質を有することが予想される(Igawa et al., Nat. Biotech.. 28(11):1203-1207 (2010);Devanaboyina et al., mAbs 5(6):851-859 (2013);WO 2009/125825)。
【0255】
さらなる態様において、本発明は、血漿からのC5のクリアランスの増強において使用するための、抗C5抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、個体における血漿からのC5のクリアランスを増強する方法であって、血漿からのC5のクリアランスを増強するために抗C5抗体の有効量を個体に投与する工程を含む方法において使用するための、抗C5抗体を提供する。一態様において、抗C5抗体は、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿からのC5のクリアランスを増強する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
【0256】
さらなる態様において、本発明は、血漿中のC5の蓄積の抑制において使用するための、抗C5抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、個体における血漿中のC5の蓄積を抑制する方法であって、血漿中のC5の蓄積を抑制するために抗C5抗体の有効量を個体に投与する工程を含む方法において使用するための、抗C5抗体を提供する。一態様において、血漿中のC5の蓄積は抗原-抗体複合体の形成の結果である。別の態様において、抗C5抗体は、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿中のC5の蓄積を抑制する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
【0257】
本発明の抗C5抗体は、C5の活性化を阻害し得る。さらなる態様において、本発明は、C5の活性化の阻害において使用するための、抗C5抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、個体におけるC5の活性化を阻害する方法であって、C5の活性化を阻害するために抗C5抗体の有効量を個体に投与する工程を含む方法において使用するための、抗C5抗体を提供する。一態様において、C5によって媒介される細胞傷害は、C5の活性化を阻害することによって抑制される。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
【0258】
さらなる局面において、本発明は医薬品の製造または調製における抗C5抗体の使用を提供する。一態様において、医薬品は、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態の治療のためのものである。さらなる態様において、医薬品は、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を治療する方法であって、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を有する個体に医薬品の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。このような態様の1つにおいて、方法は、当該個体に少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
【0259】
さらなる態様において、医薬品は、血漿からのC5のクリアランスを増強するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体における血漿からのC5のクリアランスを増強する方法であって、血漿からのC5のクリアランスを増強するために医薬品の有効量を個体に投与する工程を含む方法において使用するためのものである。一態様において、抗C5抗体は、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿からのC5のクリアランスを増強する。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0260】
さらなる態様において、医薬品は、血漿中のC5の蓄積を抑制するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体における血漿中のC5の蓄積を抑制する方法であって、血漿中のC5の蓄積を抑制するために医薬品の有効量を個体に投与する工程を含む方法において使用するためのものである。一態様において、血漿中のC5の蓄積は抗原-抗体複合体の形成の結果である。別の態様において、抗C5抗体は、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿中のC5の蓄積を抑制する。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0261】
本発明の抗C5抗体は、C5の活性化を阻害し得る。さらなる態様において、医薬品は、C5の活性化を阻害するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体におけるC5の活性化を阻害する方法であって、C5の活性化を阻害するために医薬品の有効量を個体に投与する工程を含む方法において使用するためのものである。一態様において、C5によって媒介される細胞傷害は、C5の活性化を阻害することによって抑制される。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであり得る。
【0262】
さらなる局面において、本発明はC5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を治療する方法を提供する。一態様において、方法は、そのようなC5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を有する個体に抗C5抗体の有効量を投与する工程を含む。そのような態様の1つにおいて、方法は、当該個体に少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってもよい。
【0263】
さらなる局面において、本発明は、個体における血漿からのC5のクリアランスを増強するための方法を提供する。一態様において、方法は、血漿からのC5のクリアランスを増強するために抗C5抗体の有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、抗C5抗体は、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿からのC5のクリアランスを増強する。一態様において、「個体」はヒトである。
【0264】
さらなる局面において、本発明は、個体における血漿中のC5の蓄積を抑制するための方法を提供する。一態様において、方法は、血漿中のC5の蓄積を抑制するために抗C5抗体の有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、血漿中のC5の蓄積は抗原-抗体複合体の形成の結果である。別の態様において、抗C5抗体は、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿中のC5の蓄積を抑制する。一態様において、「個体」はヒトである。
【0265】
本発明の抗C5抗体は、C5の活性化を阻害し得る。さらなる局面において、本発明は、個体におけるC5の活性化を阻害するための方法を提供する。一態様において、方法は、C5の活性化を阻害するために抗C5抗体の有効量を個体に投与する工程を含む。一態様において、C5によって媒介される細胞傷害は、C5の活性化を阻害することによって抑制される。一態様において、「個体」はヒトである。
【0266】
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される抗C5抗体の任意のものを含む、薬学的製剤を提供する(例えば上述の治療的方法の任意のものにおける使用のための)。一態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗C5抗体の任意のものと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗C5抗体の任意のものと、少なくとも1つの追加治療剤とを含む。
【0267】
さらなる局面において、薬学的製剤は、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を治療するためのものである。さらなる態様において、薬学的製剤は、血漿からのC5のクリアランスを増強するためのものである。一態様において、抗C5抗体は、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿からのC5のクリアランスを増強する。さらなる態様において、薬学的製剤は、血漿中のC5の蓄積を抑制するためのものである。一態様において、血漿中のC5の蓄積は抗原-抗体複合体の形成の結果である。別の態様において、抗C5抗体は、pH依存的結合特性を有さない従来の抗C5抗体と比較して、血漿中のC5の蓄積を抑制する。本発明の抗C5抗体は、C5の活性化を阻害し得る。さらなる態様において、薬学的製剤は、C5の活性化を阻害するためのものである。一態様において、C5によって媒介される細胞傷害は、C5の活性化を阻害することによって抑制される。一態様において、薬学的製剤は、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態を有する個体に投与される。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
【0268】
一局面において、個体は野生型C5を有する。別の局面において、個体はC5変異体を有する。特定の態様において、C5変異体は、野生型C5と類似の生物学的活性を有する。このようなC5変異体は、V145I、R449G、V802I、R885H、R928Q、D966Y、S1310N、およびE1437Dからなる群より選択される少なくとも1つの変異を含み得る。本明細書において、例えば、R885Hとは、位置885のアルギニンがヒスチジンで置換されている遺伝的変異を意味する。
【0269】
さらなる局面において、本発明は、本明細書に提供される任意の抗C5抗体を薬学的に許容される担体と混合する工程を含む、例えば上記の治療法のいずれかにおいて使用するための医薬品または薬学的製剤を調製するための方法を提供する。一態様において、医薬品または薬学的製剤を調製するための方法は、少なくとも1つの追加治療剤を医薬品または薬学的製剤に添加する工程をさらに含む。
【0270】
特定の態様において、C5の過剰な活性化または制御されない活性化を伴う補体介在性の疾患または状態は、以下からなる群より選択される:関節リウマチ(RA);全身性エリテマトーデス(SLE);ループス腎炎;虚血再灌流障害(IRI);喘息;発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH);溶血性尿毒症症候群(HUS)(例えば、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS));デンスデポジット病(DDD);視神経脊髄炎(NMO);多巣性運動ニューロパチー(MMN);多発性硬化症(MS);全身性硬化症;黄斑変性症(例えば、加齢性黄斑変性症(AMD));HELLP(hemolysis, elevated liver enzymes, and low platelets)症候群;血栓性血小板減少性紫斑病(TTP);自然流産;表皮水疱症;習慣性流産;子癇前症;外傷性脳損傷;重症筋無力症;寒冷凝集素症;シェーグレン症候群;皮膚筋炎;水疱性類天疱瘡;光毒性反応;志賀毒素大腸菌関連溶血性尿毒症症候群;定型または感染性溶血性尿毒症症候群(tHUS);C3糸球体腎炎;抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎;体液性および血管性移植拒絶反応;急性抗体媒介性拒絶反応(AMR);移植片機能不全;心筋梗塞;同種移植;敗血症;冠動脈疾患;遺伝性血管性浮腫;皮膚筋炎;グレーブス病;アテローム性動脈硬化症;アルツハイマー病(AD);ハンチントン病;クロイツフェルト・ヤコブ病;パーキンソン病;癌;創傷;敗血症性ショック;脊髄損傷;ぶどう膜炎;糖尿病性眼疾患;未熟児網膜症;糸球体腎炎;膜性腎炎;免疫グロブリンA腎症;成人呼吸窮迫症候群(ARDS);慢性閉塞性肺疾患(COPD);嚢胞性線維症;溶血性貧血;発作性寒冷ヘモグロビン尿症;アナフィラキシーショック;アレルギー;骨粗鬆症;変形性関節症;橋本甲状腺炎;I型糖尿病;乾癬;天疱瘡;自己免疫性溶血性貧血(AIHA);特発性血小板減少性紫斑病(ITP);グッドパスチャー症候群;デゴス病;抗リン脂質抗体症候群(APS);劇症型APS(CAPS);心血管疾患;心筋炎;脳血管障害;末梢血管障害;腎血管障害;腸間膜/腸血管障害;血管炎;ヘノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎;高安病;拡張型心筋症;糖尿病性血管障害;川崎病(動脈炎);静脈ガス塞栓(VGE)、ステント留置後の再狭窄;回転式粥腫切除;膜性腎症;ギラン・バレー症候群(GBS);フィッシャー症候群;抗原誘導関節炎;滑膜炎;ウイルス感染症;細菌感染症;真菌感染症;ならびに、心筋梗塞、心肺バイパスおよび血液透析に起因する損傷。
【0271】
特定の態様において、補体介在性の疾患または状態は、眼疾患状態である。さらなる態様において、眼疾患状態は黄斑変性症である。さらなる態様において、黄斑変性症はAMDである。さらなる態様において、AMDは乾燥型AMDである。
【0272】
特定の態様において、補体介在性の疾患または状態は、PNHである。
【0273】
特定の態様において、補体介在性の疾患または状態は、心筋梗塞である。
【0274】
特定の態様において、補体介在性の疾患または状態は、RAである。
【0275】
特定の態様において、補体介在性の疾患または状態は、骨粗鬆症または変形性関節症である。
【0276】
特定の態様において、補体介在性の疾患または状態は、炎症である。
【0277】
特定の態様において、補体介在性の疾患または状態は、癌である。
【0278】
本発明の抗体は、療法において、単独または他の剤との組み合わせのどちらでも使用され得る。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。
【0279】
上述したような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同じまたは別々の製剤に含まれる)、および個別投与を包含し、個別投与の場合、本発明の抗体の投与が追加治療剤の投与に先立って、と同時に、および/または、続いて、行われ得る。一態様において、抗C5抗体の投与および追加治療剤の投与は、互いに、約1か月以内、または約1、2、または3週間以内、または約1、2、3、4、5、または6日以内に行われる。
【0280】
本発明の抗体(および、任意の追加治療剤)は、非経口投与、肺内投与、および経鼻投与、また局所的処置のために望まれる場合は病巣内投与を含む、任意の好適な手段によって投与され得る。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。投薬は、投与が短期か長期かに一部応じて、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によるなど、任意の好適な経路によってなされ得る。これらに限定されるものではないが、単回投与または種々の時点にわたる反復投与、ボーラス投与、および、パルス注入を含む、種々の投薬スケジュールが本明細書の考慮の内である。
【0281】
本発明の抗体は、優良医療規範 (good medical practice) に一致したやり方で、製剤化され、投薬され、また投与される。この観点から考慮されるべきファクターは、治療されているその特定の障害、治療されているその特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、障害の原因、剤を送達する部位、投与方法、投与のスケジュール、および医療従事者に公知の他のファクターを含む。抗体は、必ずしもそうでなくてもよいが、任意で、問題の障害を予防するまたは治療するために現に使用されている1つまたは複数の剤とともに、製剤化される。そのような他の剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または治療のタイプ、および上で論じた他のファクターに依存する。これらは通常、本明細書で述べたのと同じ用量および投与経路で、または本明細書で述べた用量の約1から99%で、または経験的/臨床的に適切と判断される任意の用量および任意の経路で、使用される。
【0282】
疾患の予防または治療のために、本発明の抗体の適切な用量(単独で用いられるときまたは1つまたは複数の他の追加治療剤とともに用いられるとき)は、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度および経過、抗体が予防的目的で投与されるのか治療的目的で投与されるのか、薬歴、患者の臨床歴および抗体に対する応答、ならびに、主治医の裁量に依存するだろう。抗体は、患者に対して、1回で、または一連の処置にわたって、好適に投与される。疾患のタイプおよび重症度に応じて、例えば、1回または複数回の別々の投与によるにしても連続注入によるにしても、約1μg/kgから15 mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体が、患者に対する投与のための最初の候補用量とされ得る。1つの典型的な1日用量は、上述したファクターに依存して、約1μg/kgから100mg/kg以上まで、幅があってもよい。数日またはより長くにわたる繰り返しの投与の場合、状況に応じて、治療は通常疾患症状の所望の抑制が起きるまで維持される。抗体の1つの例示的な用量は、約0.05mg/kg から約 10mg/kgの範囲内である。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、もしくは 10mg/kgの1つまたは複数の用量(またはこれらの任意の組み合わせ)が、患者に投与されてもよい。このような用量は、断続的に、例えば1週間毎にまたは3週間毎に(例えば、患者が約2から約20、または例えば約6用量の抗体を受けるように)、投与されてもよい。高い初回負荷用量の後に、1回または複数回の低用量が投与されてもよい。この療法の経過は、従来の手法および測定法によって、容易にモニタリングされる。
【0283】
上述の製剤または治療的方法のいずれについても、抗C5抗体の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを用いて実施してもよいことが、理解されよう。
【0284】
H.製品
本発明の別の局面において、上述の障害の治療、予防、および/または診断に有用な器材を含んだ製品が、提供される。製品は、容器、および当該容器上のまたは当該容器に付属するラベルまたは添付文書を含む。好ましい容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器類は、ガラスやプラスチックなどの、様々な材料から形成されていてよい。容器は組成物を単体で保持してもよいし、症状の治療、予防、および/または診断のために有効な別の組成物と組み合わせて保持してもよく、また、無菌的なアクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって突き通すことのできるストッパーを有する静脈内投与用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの有効な剤は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選ばれた症状を治療するために使用されるものであることを示す。さらに製品は、(a)第一の容器であって、その中に収められた本発明の抗体を含む組成物を伴う、第一の容器;および、(b)第二の容器であって、その中に収められたさらなる細胞傷害剤またはそれ以外で治療的な剤を含む組成物を伴う、第二の容器を含んでもよい。本発明のこの態様における製品は、さらに、組成物が特定の症状を治療するために使用され得ることを示す、添付文書を含んでもよい。あるいはまたは加えて、製品はさらに、注射用制菌水 (BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含む、第二の(または第三の)容器を含んでもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジなどの、他の商業的観点またはユーザの立場から望ましい器材をさらに含んでもよい。
【0285】
上述の製品のいずれについても、抗C5抗体の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを含んでもよいことが、理解されよう。
【実施例】
【0286】
実施例
以下は、本発明の方法および組成物の実施例である。上述の一般的な記載に照らし、種々の他の態様が実施され得ることが、理解されるであろう。
【0287】
実施例1
C5の調製
1.1.組み換えヒトおよびカニクイザルC5の発現および精製
組み換えヒトC5 (NCBI GenBankアクセッション番号: NP_001726.2、配列番号:39)を、FreeStyle293-F細胞株(Thermo Fisher, Carlsbad, CA, USA)を用いて一過性に発現させた。ヒトC5を発現する馴化培地を等量のmilliQ水で希釈し、次にQセファロースFFまたはQセファロースHPアニオン交換カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)にアプライし、続いてNaCl勾配で溶出させた。ヒトC5を含む画分をプールし、その後塩濃度とpHをそれぞれ80mM NaClおよびpH6.4に調整した。得られたサンプルをSPセファロースHPカチオン交換カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)にアプライして、NaCl勾配で溶出させた。ヒトC5を含む画分をプールし、CHTセラミックハイドロキシアパタイトカラム(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)に供した。その後、ヒトC5溶出物をSuperdex 200ゲル濾過カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)にアプライした。ヒトC5を含む画分をプールして、-150℃で保存した。
【0288】
組み換えカニクイザルC5 (NCBI GenBankアクセッション番号: XP_005580972、配列番号:44)の発現および精製は、ヒト対応物と同じ方式で行った。
【0289】
1.2.血漿からのカニクイザルC5(cynoC5)の精製
カニクイザルからの血漿サンプルをSSL7-アガロース(Invivogen, San Diego, CA, USA)にアプライし、続いて100mM酢酸Na、pH3.5で溶出させた。cynoC5を含む画分を直ちに中和し、ペプチドMアガロース(Invivogen, San Diego, CA, USA)とタンデムに連結されたプロテインA HPカラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)に供した。その後、フロースルー画分をSuperdex 200ゲル濾過カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)にアプライした。cynoC5を含む画分をプールして、-80℃で保存した。
【0290】
実施例2
抗C5抗体の作製
2.1.抗体スクリーニング
抗C5抗体を次のように調製し、選択し、アッセイした。
【0291】
12~16週齢のNZWウサギをヒトC5および/またはサルC5(50~100μg/用量/ウサギ)で皮内免疫化した。この用量を2ヶ月間にわたって4~5回繰り返した。最終免疫化の1週間後、脾臓と血液を免疫化ウサギから採取した。抗原特異的B細胞を標識抗原で染色し、FCMセルソーター(FACS aria III、BD)で選別し、細胞1個/ウェルの密度で、細胞25,000個/ウェルのEL4細胞(European Collection of Cell Cultures)および20倍希釈した活性化ウサギT細胞馴化培地と共に96ウェルプレートに播種し、7~12日間培養した。EL4細胞は、マイトマイシンC(Sigma、カタログ番号M4287)で2時間処理し、事前に3回洗浄した。活性化ウサギT細胞馴化培地は、ウサギ胸腺細胞を、フィトヘマグルチニンM(Roche、カタログ番号11082132-001)、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(Sigma、カタログ番号P1585)および2%FBSを含有するRPMI-1640中で培養することにより、調製した。培養後、B細胞培養上清をさらなる分析のために回収し、ペレットを凍結保存した。
【0292】
ELISA測定法を用いて、B細胞培養上清中の抗体の特異性を試験した。ストレプトアビジン(GeneScript、カタログ番号Z02043)を384ウェルMAXISorp(Nunc、カタログ番号164688)上にPBS中50nMにて室温で1時間コーティングした。次にプレートを、5倍希釈したBlocking One (Nacalai Tesque、カタログ番号03953-95)でブロッキングした。ヒトまたはサルC5をNHS-PEG4-ビオチン(PIERCE、カタログ番号21329)で標識し、ブロッキングしたELISAプレートに添加し、1時間インキュベートして洗浄した。B細胞培養上清をELISAプレートに添加し、1時間インキュベートして洗浄した。結合を、ヤギ抗ウサギIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(BETHYL、カタログ番号A120-111P)に続いてABTS (KPL、カタログ番号50-66-06)を添加することにより検出した。
【0293】
ELISA測定法を用いて、C5に対する抗体のpH依存的結合を評価した。PBS(-)で1μg/mlに希釈したヤギ抗ウサギIgG-Fc (BETHYL、カタログ番号A120-111A)を384ウェルMAXISorp (Nunc、カタログ番号164688)に添加し、室温で1時間インキュベートして、5倍希釈したBlocking One (Nacalai Tesque、カタログ番号03953-95)でブロッキングした。インキュベーション後、プレートを洗浄し、B細胞培養上清を添加した。プレートを1時間インキュベートし、洗浄し、500pMのビオチン化ヒトC5またはサルC5を添加して1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄し、pH7.4のMES緩衝液(20mM MES、150mM NaClおよび1.2mM CaCl2)またはpH5.8のMES緩衝液(20mM MES、150mM NaClおよび1mM EDTA)のいずれかと室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、ビオチン化C5の結合を、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(Thermo Scientific、カタログ番号21132)に続いてABTS (KPL、カタログ番号50-66-06)を添加することにより検出した。
【0294】
Octet RED384システム(Pall Life Sciences)を使用して、C5に対する抗体のアフィニティおよびpH依存的結合を評価した。B細胞培養上清中に分泌された抗体をプロテインAバイオセンサーチップ(Pall Life Sciences)上にロードし、pH7.4のMES緩衝液中50nMのヒトまたはサルC5中に浸漬させて、結合反応速度を解析した。解離反応速度は、pH7.4のMES緩衝液とpH5.8のMES緩衝液の両方において解析した。
【0295】
合計41,439種のB細胞株をヒトまたはサルC5に対するアフィニティおよびpH依存的結合についてスクリーニングし、677種の細胞株を選択してCFA0001~0677と命名した。選択された細胞株のRNAを、ZR-96 Quick-RNAキット(ZYMO RESEARCH、カタログ番号R1053)を用いて凍結保存細胞ペレットから精製した。選択された細胞株中の抗体重鎖可変領域をコードするDNAを逆転写PCRにより増幅し、F760G4(配列番号:33)またはF939G4(配列番号:34)重鎖定常領域をコードするDNAと再結合させた。抗体軽鎖可変領域をコードするDNAを逆転写PCRにより増幅し、k0MTC軽鎖定常領域(配列番号:36)をコードするDNAと再結合させた。これとは別に、既存のヒト化抗C5抗体であるエクリズマブの重鎖および軽鎖遺伝子(EcuH-G2G4、配列番号:29およびEcuL-k0、配列番号:30)を合成した。VH(EcuH、配列番号:31)をコードするDNAを、改変したヒトIgG4 CH(F760G4、配列番号:33)をコードするDNAにインフレームで融合させ、かつVL(EcuL、配列番号:32)をコードするDNAを、k0軽鎖定常領域(配列番号:37)をコードするDNAにインフレームで融合させた。融合したコード配列の各々を発現ベクターにクローニングした。抗体をFreeStyle(商標)293-F細胞(Invitrogen)において発現させ、培養上清から精製して機能的活性を評価した。抗体の中和活性は、実施例5.1に記載するように、リポソーム溶解測定法を用いて補体活性の阻害を試験することによって評価した。
【0296】
2.2.サンドイッチELISAによるエピトープビニング
高いアフィニティ、pH依存性または中和活性を有する抗C5抗体を、さらなる解析のために選択した。選択された抗体を、サンドイッチELISA測定法を用いて、C5タンパク質の同一のエピトープまたは重複するエピトープに結合する様々なエピトープビンに分類した。未標識の捕捉抗体をPBS(-)で1μg/mlに希釈し、384ウェルMAXISorpプレート(Nunc、カタログ番号164688)に添加した。プレートを室温で1時間インキュベートして、5倍希釈したBlocking One (Nacalai Tesque、カタログ番号03953-95)でブロッキングした。プレートを1時間インキュベートし、洗浄し、2nMのヒトC5を添加して1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄し、標識した検出抗体(1μg/mL、NHS-PEG4-ビオチンでビオチン化した)を添加した。1時間のインキュベーション後、ビオチン化抗体の結合を、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(Thermo Scientific、カタログ番号21132)に続いてABTS (KPL、カタログ番号50-66-06)を添加することにより検出した。
【0297】
全ての抗C5抗体を、捕捉抗体と検出抗体の両方として使用し、網羅的に対にした。
図1に示すように、互いに競合する抗体を、7つのエピトープビンに分類した:CFA0668、CFA0334およびCFA0319はエピトープAに分類され、CFA0647、CFA0589、CFA0341、CFA0639、CFA0635、CFA0330およびCFA0318はエピトープBに分類され、CFA0538、CFA0501、CFA0599、CFA0307、CFA0366、CFA0305、CFA0675、CFA0666およびCFA0672はエピトープCに分類され、エクリズマブおよびCFA0322はエピトープDに分類され、CFA0329はエピトープEに分類され、CFA0359およびCFA0217はエピトープFに分類され、CFA0579、CFA0328およびCFA0272はエピトープGに分類された。
図1は、いくつかの抗C5キメラ抗体のエピトープビニングを示す。エピトープCに分類された抗C5抗体のVHおよびVLの配列は、表2に示される。
【0298】
【0299】
2.3.ヒト化および最適化
いくつかの抗C5抗体の可変領域のヒト化を、該抗体の潜在的免疫原性を低下させるために実施した。抗C5ウサギ抗体の相補性決定領域(CDR)を、従来のCDRグラフティング手法(Nature 321:522-525 (1986))を用いて、相同なヒト抗体フレームワーク(FR)にグラフティングした。ヒト化VHおよびVLをコードする遺伝子を合成し、それぞれ、改変ヒトIgG4 CH(SG402、配列番号:35)およびヒトCL(SK1、配列番号:38)と結合させ、結合した配列の各々を発現ベクターにクローニングした。
【0300】
いくつかのリード抗体の結合特性を改善する変異および変異の組み合わせを同定するために、多くの変異および変異の組み合わせを検討した。次に、中性pHでのC5に対する結合アフィニティを増強するため、または酸性pHでのC5に対する結合アフィニティを低下させるために、ヒト化可変領域に複数の変異を導入した。かくして、最適化された変異体の1つである305LO5 (VH、配列番号:10;VL、配列番号:20;HVR-H1、配列番号:54;HVR-H2、配列番号:64;HVR-H3、配列番号:74;HVR-L1、配列番号:84;HVR-L2、配列番号:94;およびHVR-L3、配列番号:104)が、CFA0305から作製された。
【0301】
抗体は、重鎖および軽鎖の発現ベクターの混合物で同時トランスフェクトされたHEK293細胞において発現させ、プロテインAにより精製した。
【0302】
実施例3
抗C5抗体の結合特徴決定
3.1.組み換え抗体の発現および精製
組み換え抗体を、FreeStyle293-F細胞株(Thermo Fisher, Carlsbad, CA, USA)を用いて一過性に発現させた。抗体を発現する馴化培地からの精製を、プロテインAを用いた従来の方法により行った。必要に応じて、ゲル濾過をさらに実施した。
【0303】
3.2.pH依存性の評価
組み換えヒトC5に対する抗C5抗体の反応速度パラメータを、BIACORE(登録商標)T200機器(GE Healthcare)を用いて、37℃でpH7.4およびpH5.8にて評価した。アミンカップリングキット(GE Healthcare)をGE Healthcareにより推奨された設定にしたがって用いて、ProA/G (Pierce) をCM4センサーチップ上に固定化した。抗体と分析物を、それぞれのランニング緩衝液であるACES pH7.4およびpH5.8 (20mM ACES、150mM NaCl、1.2mM CaCl
2、0.05%Tween 20、0.005%NaN
3)中に希釈した。各抗体をProA/Gによりセンサー表面上に捕捉した。抗体の捕捉レベルは、概して60~90共鳴単位(RU)であった。次に、組み換えヒトC5を10および20nMまたは20および40nMの濃度で注入し、続いて解離させた。表面は25mM NaOHを用いて再生させた。両方のpH条件での反応速度パラメータを、BIACORE(登録商標)T200 Evaluationソフトウェア、バージョン2.0 (GE Healthcare)を用いて、1:1結合モデルでセンサーグラムをフィッティングすることによって決定した。全ての抗体のセンサーグラムは、
図2Aおよび2Bに示される。抗体の結合速度(ka)、解離速度(kd)、および結合アフィニティ(KD)は、表3に示される。CFA0330(VH、配列番号:21およびVL、配列番号:25)とCFA0341(VH、配列番号:22およびVL、配列番号:26)を除く全ての抗体は、pH7.4よりもpH5.8で比較的速い解離速度を示した。
【0304】
【0305】
3.3.交差反応性調査
ヒトC5(hC5)とカニクイザルC5(cynoC5)に対する抗C5抗体の交差反応性を観察するために、BIACORE(登録商標)反応速度解析を行った。アッセイ設定は実施例3.2に記載したのと同じであった。組み換えcynoC5を2、10、および50nMの濃度で注入した。反応速度パラメータを、実施例3.2に記載したのと同じデータフィッティングにより決定した。pH7.4での結合反応速度およびアフィニティは、表4に示される。表4に示したhC5に対する反応速度パラメータは、実施例3.2の結果である。CFA0672を除く全ての抗C5抗体は、hC5とcynoC5に対して同程度のKDを示した。CFA0672のcynoC5に対するKDは、hC5に対するKDよりも8倍弱かった。
【0306】
【0307】
実施例4
抗C5抗体のエピトープマッピング
4.1.C5β鎖由来ペプチドへの抗C5 MAbの結合
抗C5モノクローナル抗体(MAb) を、ウエスタンブロット分析においてC5β鎖由来ペプチドへの結合について試験した。GSTタグ(pGEX-4T-1、GE Healthcare Life Sciences、28-9545-49)に融合させたC5ペプチド:19-180、161-340、321-500、および481-660を、大腸菌(E. coli)(DH5α、TOYOBO、DNA-903)において発現させた。1mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)との37℃で5時間のインキュベーション後に大腸菌サンプルを回収し、20000×gで1分間遠心分離してペレットを得た。このペレットをサンプル緩衝液(2ME+)(Wako、191-13272)で懸濁し、ウエスタンブロット分析に使用した。各ペプチドの発現を、抗GST抗体(Abcam、ab9085)を用いて確認した(
図3)。矢印は、GST融合C5ペプチド(46~49kDa)を示す。抗C5 MAb:CFA0305、CFA0307、CFA0366、CFA0501、CFA0538、CFA0599、CFA0666、CFA0672、およびCFA0675は、C5の19-180に結合した(
図3)。
【0308】
4.2.ヒトC5のMG1-MG2ドメイン(1-225)の発現および精製
ヒトC5のβ鎖の組み換えMG1-MG2ドメイン(配列番号:43) を、FreeStyle293-F細胞株(Thermo Fisher, Carlsbad, CA, USA)を用いて一過性に発現させた。MG1-MG2ドメインを発現する馴化培地を1/2容量のmilliQ水で希釈し、続いてQセファロースFFアニオン交換カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)にアプライした。アニオン交換カラムからのフロースルー画分をpH5.0に調整し、SPセファロースHPカチオン交換カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)にアプライして、NaCl勾配で溶出させた。MG1-MG2ドメインを含む画分を溶出物から回収し、続いて1×PBSで平衡化したSuperdex 75ゲル濾過カラム(GE healthcare, Uppsala, スウェーデン)に供した。その後、MG1-MG2ドメインを含む画分をプールして、-80℃で保存した。
【0309】
4.3.MG1-MG2ドメインへの結合能力
MG1-MG2ドメインに対する抗C5抗体の結合能力は、測定をpH7.4の条件下でしか行わなかったことを除いて、実施例3.2に記載したのと同じアッセイ設定を用いて測定した。MG1-MG2ドメインを20nMおよび40nMの濃度で注入した。
図4に示すように、エクリズマブ-F760G4を除く全ての抗体が結合応答の増加を示し、このことは、これらの抗体がMG1-MG2結合剤であることを示している。公知のα鎖結合剤であるエクリズマブ-F760G4は、MG1-MG2ドメインへの結合を示さなかった。
【0310】
4.4.C5のMG1-MG2ドメイン由来ペプチドへの抗C5 MAbの結合
抗C5 MAbを、ウエスタンブロット分析においてMG1-MG2ドメイン由来ペプチドへの結合について試験した。GSTタグに融合させたC5ペプチド:33-124、45-124、52-124、33-111、33-108、および45-111(配列番号:40)を大腸菌において発現させた。大腸菌サンプルを1mM IPTGとの37℃で5時間のインキュベーション後に回収し、20000×gで1分間遠心分離してペレットを得た。このペレットをサンプル緩衝液(2ME+)で懸濁し、ウエスタンブロット分析に使用した。C5由来ペプチドの発現を抗GST抗体により確認した(
図5A)。CFA0305は33-124のペプチドのみに結合した(
図5B)。CFA0305は組み換えヒトC5 (rhC5)のβ鎖(約70kDa)に結合し、これを対照として使用した。
図5Cには、C5由来ペプチドに対する抗C5 MAbの反応をまとめる。
【0311】
4.5.C5変異体への抗C5 MAbの結合
C5のβ鎖中の3つのアミノ酸残基:E48、D51、およびK109は、結晶構造解析によりC5と抗C5 MAbとの結合に関与することが予測されたので、抗C5 MAbを、ウエスタンブロット分析においてヒトC5点変異体への結合について試験した。E48、D51、およびK109のいずれか1つがアラニンで置換されたC5点変異体を、リポフェクションによりFS293細胞において発現させた。リポフェクションの5日後に培養培地を回収し、その後ウエスタンブロットのために使用した。SDS-PAGEを還元条件下で実施した。結果は
図6に示される。エクリズマブが野生型(WT)C5のα鎖および3つのC5点変異体に結合したのに対して、CFA0305は、WT C5のβ鎖に強く、E48A C5変異体に弱く結合し、D51Aおよび K109A C5変異体のβ鎖には結合しなかった。このことは、これら3つのアミノ酸残基が抗体/抗原相互作用に関与していることを示す。表5は、抗C5 MAb (CFA0305、CFA0307、CFA0366、CFA0501、CFA0538、CFA0599、CFA0666、CFA0672、およびCFA0675)のウエスタンブロット分析の概要を示す。これらの抗C5 MAbは同じエピトープCに分類されているが、結合パターンは抗体間でわずかに異なり、このことは、これら抗C5 MAbへのC5の結合領域は互いに近接しているが同一ではないことを示唆している。
【0312】
【0313】
4.6.抗C5抗体とC5変異体とのBIACORE(登録商標)結合解析
残基E48、G51、およびK109が抗体/抗原相互作用に実際に関与しているかどうかを試験するために、BIACORE(登録商標)結合解析を行った。3つのC5変異体:E48A、G51A、およびK109Aを、実施例4.5に記載したように調製した。FS293細胞において過剰発現させた変異型C5を含む培養上清サンプルを、40μg/mlの変異型C5に調製した。BIACORE(登録商標)結合解析のために、サンプルをBIACORE(登録商標)ランニング緩衝液(ACES pH7.4、10mg/ml BSA、1mg/mlカルボキシメチルデキストラン)で10倍に希釈して、4μg/mlの変異型C5という最終サンプル濃度にした。
【0314】
抗C5抗体と3つのC5変異体との相互作用を、実施例3.2に記載したアッセイ条件を用いて、BIACORE(登録商標)T200機器(GE Healthcare)により37℃で評価した。10mg/mlのBSA、1mg/mlのカルボキシメチルデキストランを含有するACES pH7.4緩衝液をランニング緩衝液として使用した。エクリズマブ-F760G4および305LO5を、Fc断片特異的抗体であるモノクローナルマウス抗ヒトIgG (GE Healthcare)により、異なるフローセル上に捕捉した。フローセル1を参照表面として使用した。野生型および変異型C5タンパク質を4μg/mlの濃度でセンサー表面上に注入し、捕捉された抗体と相互作用させた。各解析サイクルの終了時に、センサー表面を3M MgCl2で再生させた。結果は、Bia Evaluationソフトウェア、バージョン2.0(GE Healthcare)を用いて解析した。参照フローセル(フローセル1)およびランニング緩衝液のブランク注入のカーブを、捕捉された抗体を有するフローセルのカーブから差し引いた。
【0315】
図7に示すように、3つのC5変異体は全て、野生型C5と比べて類似した結合プロファイルで、エクリズマブに結合することができた。305LO5に関しては、3つの変異体の全てが、野生型C5と比べて、305LO5に対するより低い結合応答を示した。D51AおよびK109A変異体は、305LO5によるC5の結合をベースラインレベルまで減少させた。
【0316】
4.7.抗C5抗体とC5の間のpH依存的相互作用に寄与する、C5上のHis残基の同定
結晶構造解析は、ヒトC5上の3個のヒスチジン残基が抗体/抗原界面に位置することを明らかにした。約6.0の典型的pKaを有するヒスチジン残基は、pH依存的なタンパク質-タンパク質相互作用に寄与することが知られている(Igawa et al., Biochim Biophys Acta 1844(11):1943-1950 (2014))。抗体/抗原界面上のどのHis残基が抗C5抗体とC5の間のpH依存的相互作用に寄与するのかを調べるために、BIACORE(登録商標)結合解析を行った。単一His変異を有する3つのヒトC5変異体(H70Y、H72Y、およびH110Y)と、二重His変異を有する1つの変異体(H70Y+H110Y)を次のように作製した:H70、H72、およびH110のいずれか1つがチロシンで置換された単一His変異体、ならびにH70とH110の両方がチロシンで置換された二重His変異体を、リポフェクションによりFS293細胞において発現させた。pH依存的な抗C5抗体である305LO5へのC5 His変異体の抗原結合特性を、実施例4.6に記載したように、改変BIACORE(登録商標)測定法によって測定した。簡単に述べると、pH7.4で形成された複合体由来の抗体と抗原の間のpH依存的解離を評価するために、BIACORE(登録商標)測定法に、pH5.8での追加の解離段階を、pH7.4での解離段階(dissociation phase)の直後に組み入れた。pH5.8での解離速度は、Scrubber 2.0(BioLogic Software)カーブフィッティングソフトウェアを用いてデータを処理し、フィッティングを行うことによって決定した。
【0317】
図8に示すように、C5のH70またはH110での単一His変異および二重His変異(H70+H110)は、中性pHでの305LO5へのC5の結合に影響を及ぼさなかった。一方、H72での単一His変異は、305LO5へのC5の結合の著しい低下を示した。C5 His変異体およびC5-wtタンパク質のpH5.8での解離速度が、表6に示される。表6に示すように、C5-wtは、試験したC5抗原の中で、pH5.8で305LO5からの最速の解離を示した。C5-wtと比べて、H70での単一His変異は、pH5.8でほぼ2倍遅い解離速度を示し、H110での単一His変異は、pH5.8でわずかに遅い解離速度をもたらした。H70とH110の両方での二重His変異は、pH依存的結合に比較的大きな影響を与え、pH5.8での解離速度はC5-wtよりもほぼ3倍遅かった。
【0318】
【0319】
実施例5
C5活性化に対する抗C5抗体の阻害活性
5.1.抗C5 MAbによる補体活性化リポソーム溶解の阻害
抗C5 MAbを、リポソーム溶解測定法により補体活性の阻害について試験した。30μLの正常ヒト血清(6.7%)(Biopredic、SER018)を96ウェルプレートにおいて20μLの希釈MAbと混合し、25℃で30分間シェーカー上でインキュベートした。ジニトロフェニルに対する抗体で感作したリポソーム(Autokit CH50、Wako、995-40801)を各ウェルに移し、プレートを25℃で2分間シェーカー上に置いた。50μLの基質溶液(Autokit CH50)を各ウェルに添加し、25℃で2分間振とうすることにより混合した。最終混合物を37℃で40分間インキュベートし、その後、該混合物の340nmでのODを測定した。リポソーム溶解パーセントは、100×[(OD
MAb - OD
血清およびリポソームバックグラウンド)]/[(OD
MAbなし - OD
血清およびリポソームバックグラウンド)]と定義された。
図9Aは、抗C5 MAb:CFA0305、CFA0307、CFA0366、CFA0501、CFA0538、CFA0599、CFA0666、CFA0672、およびCFA0675がリポソーム溶解を阻害したことを示す。2つのpH非依存的抗体:CFA0330およびCFA0341もまた、該溶解を阻害した(
図9B)。
【0320】
5.2.抗C5 MAbによるC5a生成の阻害
抗C5 MAbがC5aおよびC5bへのC5の切断を阻害することを確認するために、リポソーム溶解の際のC5a生成について抗C5 MAbを試験した。リポソーム溶解測定法由来の上清中のC5aレベルを、C5a ELISAキット(R&D systems、DY2037)を用いて定量した。全てのMAbが、上清中のC5a生成を用量依存的に阻害した(
図10Aおよび10B)。
【0321】
5.3.抗C5 MAbによる補体活性化溶血の阻害
抗C5 MAbを、溶血測定法において古典的補体活性の阻害について試験した。ニワトリ赤血球細胞(cRBC)(Innovative research、IC05-0810)を、0.5mM MgCl
2および0.15mM CaCl
2を含有するゼラチン/ベロナール緩衝生理食塩水(GVB++)(Boston BioProducts、IBB-300X)で洗浄し、その後1μg/mlの抗ニワトリRBC抗体(Rockland 103-4139)を用いて4℃で15分間感作した。次いで、該細胞をGVB++で洗浄し、同じ緩衝液中に細胞5×10
7個/mlで懸濁した。別の丸底96ウェルマイクロテストプレートにおいて、50μlの正常ヒト血清(20%)(Biopredic、SER019)を50μlの希釈MAbと混合し、37℃で30分間シェーカー上にてインキュベートした。次に、60μlの感作cRBC懸濁液を、該血清を含むウェルに添加し、この抗体混合物を37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを1000×g、4℃で2分間遠心分離した。630nmの参照波長を用いて415nmでODを測定するために、上清(100μl)を平底96ウェルマイクロテストプレートのウェルに移した。溶血パーセントは、100×[(OD
MAb - OD
血清およびcRBC)]/[(OD
MAbなし - OD
血清およびcRBCバックグラウンド)]と定義された。
図11は、抗C5 MAb:CFA0305および305LO5がcRBCの溶血を阻害したことを示している。
【0322】
5.4.抗C5 MAbによる副補体経路の阻害
副経路のための溶血測定法は、古典経路の溶血測定法と類似の方式で行った。ニュージーランド白ウサギ(InVivos)から採取した血液を同量のAlsever's溶液(Sigma、A3551)と混合し、混合物をウサギRBC(rRBC)として使用した。rRBCを、2mM MgCl
2および10mM EGTAを補充したGVBで洗浄し、同じ緩衝液中に細胞7×10
8個/mlで懸濁した。丸底96ウェルマイクロテストプレートにおいて、40μlの正常ヒト血清(25%)(Biopredic、SER019)を40μlの希釈MAbと混合し、37℃で30分間シェーカー上でインキュベートした。次に、20μlのrRBC懸濁液を、該血清を含むウェルに添加し、この抗体混合物を37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを1000×g、4℃で2分間遠心分離した。630nmの参照波長を用いて415nmでODを測定するために、上清(70μl)を平底96ウェルマイクロテストプレート上のウェルに移した。
図12は、抗C5 MAb:CFA0305およびCFA0672がrRBCの溶血を阻害したことを示し、このことは、これらの抗体が副補体経路を阻害することを示す。
【0323】
実施例6
マウスにおけるヒトC5を用いた抗C5モノクローナル抗体の薬物動態研究
6.1.C57BL/6マウスを用いたインビボ試験
C57BL/6マウス(In VivosまたはBiological Resource Centre、シンガポール)にヒトC5(Calbiochem)のみまたはヒトC5および抗ヒトC5抗体を投与した後のヒトC5と抗ヒトC5抗体のインビボ動態を評価した。ヒトC5溶液(0.01mg/ml)またはヒトC5と抗ヒトC5抗体とを含有する混合溶液(それぞれ、0.01mg/mlおよび2mg/ml(CFA0305-F760G4、CFA0307-F760G4、CFA0366-F760G4、CFA0501-F760G4、CFA0538-F760G4、CFA0599-F760G4、CFA0666-F760G4、CFA0672-F760G4、およびCFA0675-F760G4)または0.2mg/ml(CFA0330-F760G4およびCFA0341-F760G4))を尾静脈に10ml/kgの用量で1回投与した。この場合、抗ヒトC5抗体はヒトC5に対して過剰に存在するため、ほとんどすべてのヒトC5が抗体に結合されると考えられる。投与して5分後、7時間後、1日後、2日後、3日後、および7日後に血液を採取した。採取した血液は直ちに14,000rpm、4℃で10分間遠心分離し、血漿を分離した。分離した血漿はアッセイまで冷凍庫に-80℃で保存した。使用した抗ヒトC5抗体は以下のものである:上記のCFA0305-F760G4、CFA0307-F760G4、CFA0330-F760G4、CFA0341-F760G4、CFA0366-F760G4、CFA0501-F760G4、CFA0538-F760G4、CFA0599-F760G4、CFA0666-F760G4、CFA0672-F760G4、およびCFA0675-F760G4。
【0324】
6.2.電気化学発光(ECL)アッセイによる血漿中総ヒトC5濃度の測定
マウス血漿中の総ヒトC5濃度をECLにより測定した。
【0325】
CFA0330-F760G4、CFA0341-F760G4、またはヒトC5のみが存在する血漿サンプルについては、以下の方法を使用した。抗ヒトC5抗体(Santa Cruz)を未処理のMULTI-ARRAY 96ウェルプレート(Meso Scale Discovery)に分注し、4℃で一晩静置して抗ヒトC5固相化プレートを調製した。検量線用サンプル、および1μg/mlの注射した抗体(CFA0330-F760G4またはCFA0341-F760G4)で100倍以上希釈したマウス血漿サンプルを調製し、37℃で30分間インキュベートした。その後、サンプルを抗ヒトC5固相化プレートに分注し、室温で1時間静置した。次いで、SULFO-TAG標識された抗ヒトIgG抗体(Meso Scale Discovery)を添加し、室温で1時間反応させ、洗浄を行った。その直後、Read Buffer T (x4) (Meso Scale Discovery)を分注し、Sector Imager 2400 (Meso Scale Discovery)を用いて測定を行った。
【0326】
CFA0305-F760G4、CFA0307-F760G4、CFA0366-F760G4、CFA0501-F760G4、CFA0538-F760G4、CFA0599-F760G4、CFA0666-F760G4、CFA0672-F760G4、またはCFA0675-F760G4が存在する血漿サンプルについては、以下の方法を使用した。抗ヒトC5抗体(CFA0329-F939G4;VH、配列番号:23およびVL、配列番号:27)を未処理のMULTI-ARRAY 96ウェルプレート(Meso Scale Discovery)に分注し、4℃で一晩静置して抗ヒトC5固相化プレートを調製した。検量線用サンプル、および酸性溶液(pH5.5)で100倍以上希釈したマウス血漿サンプルを調製し、37℃で30分間インキュベートした。その後、サンプルを抗ヒトC5固相化プレートに分注し、室温で1時間静置した。次いで、SULFO-TAG標識された抗ヒトC5抗体(CFA0300-F939G4;VH、配列番号:24およびVL、配列番号:28)を添加し、室温で1時間反応させ、洗浄を行った。その直後、Read Buffer T (x4) (Meso Scale Discovery)を分注し、Sector Imager 2400 (Meso Scale Discovery)を用いて測定を行った。
【0327】
ヒトC5濃度は、検量線のレスポンスに基づき解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を用いて算出した。この方法で測定した、静脈内投与後の血漿中ヒトC5濃度の経時変化を
図13に示す。データは、5分の時点での血漿中ヒトC5濃度と比較した残存パーセンテージとしてプロットされている。
【0328】
6.3. ECLアッセイによる血漿中抗ヒトC5抗体濃度の測定
マウス血漿中の抗ヒトC5抗体濃度をECLにより測定した。抗ヒトIgG(γ鎖特異的)F(ab')2抗体断片(Sigma)または抗ヒトIgGκ鎖抗体(Antibody Solutions)を未処理のMULTI-ARRAY 96ウェルプレート(Meso Scale Discovery)に分注し、4℃で一晩静置して抗ヒトIgG固相化プレートを調製した。検量線用サンプル、および100倍以上希釈したマウス血漿サンプルを調製した。その後、サンプルを抗ヒトIgG固相化プレートに分注し、室温で1時間静置した。次いで、ビオチン化抗ヒトIgG抗体(Southernbiotech)またはSULFO-TAG標識された抗ヒトIgG Fc抗体(Southernbiotech)を添加し、室温で1時間反応させ、洗浄を行った。その後、ビオチン化抗ヒトIgG抗体を用いた場合のみ、SULFO-TAG標識されたストレプトアビジン(Meso Scale Discovery)を添加し、室温で1時間反応させ、洗浄を行った。その直後、Read Buffer T (x4) (Meso Scale Discovery)を分注し、Sector Imager 2400 (Meso Scale Discovery)を用いて測定を行った。抗ヒトC5抗体濃度は、検量線のレスポンスに基づき解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を用いて算出した。この方法で測定した、静脈内投与後の血漿中抗ヒトC5抗体濃度の経時変化を
図14に示す。データは、5分の時点での血漿中抗ヒトC5抗体濃度と比較した残存パーセンテージとしてプロットされている。
【0329】
6.4.インビボでのヒトC5クリアランスに対するpH依存的抗ヒトC5抗体結合の効果
pH依存的抗ヒトC5抗体(CFA0305-F760G4、CFA0307-F760G4、CFA0366-F760G4、CFA0501-F760G4、CFA0538-F760G4、CFA0599-F760G4、CFA0666-F760G4、CFA0672-F760G4、およびCFA0675-F760G4)、ならびにpH非依存的抗ヒトC5抗体(CFA0330-F760G4およびCFA0341-F760G4)をインビボで試験し、得られた血漿中抗ヒトC5抗体濃度および血漿中ヒトC5濃度を比較した。
図14に示すように、抗体の曝露は同等であった。一方、pH依存的抗ヒトC5抗体と同時に投与したヒトC5のクリアランスは、pH非依存的抗ヒトC5抗体と同時に投与したヒトC5のクリアランスと比較して加速していた(
図13)。
【0330】
実施例7
抗C5モノクローナル抗体(305変異体)の最適化
抗C5抗体305LO5の最適化された可変領域に、その特性をさらに改善するためにいくつかの変異を導入して、最適化された可変領域305LO15、305LO16、305LO18、305LO19、305LO20、305LO22、および305LO23を作製した。これら305変異体のVHおよびVLのアミノ酸配列は、それぞれ、表7および8に示される。ヒト化VHをコードする遺伝子を、改変ヒトIgG1 CH変異体SG115(配列番号:114)、および改変ヒトIgG4 CH変異体SG422(配列番号:115)またはSG429(配列番号:116)と組み合わせた。ヒト化VLをコードする遺伝子を、ヒトCL(SK1、配列番号:38)と組み合わせた。これとは別に、ヒト化抗C5抗体BNJ441をコードする重鎖および軽鎖遺伝子(BNJ441H、配列番号:149;BNJ441L、配列番号:150)を合成し、それぞれを発現ベクターにクローニングした。
【0331】
抗体を、重鎖および軽鎖の発現ベクターの組み合わせで同時トランスフェクトしたHEK293細胞において発現させ、プロテインAで精製した。
【0332】
【0333】
【0334】
実施例8
抗C5抗体(305変異体)の結合特徴決定
組み換えヒトC5に対する抗C5抗体の反応速度パラメータを、BIACORE(登録商標)T200機器(GE Healthcare)を用いて、以下の3つの異なる条件で37℃にて評価した:(1)結合と解離の両方がpH7.4、(2)結合と解離の両方がpH5.8、および(3)結合がpH7.4、解離がpH5.8。アミンカップリングキット(GE Healthcare)をGE Healthcareにより推奨される設定にしたがって用いて、ProA/G(Pierce) をCM1センサーチップ上に固定化した。条件(1)および(3)の場合には抗体および分析物をACES pH7.4緩衝液(20mM ACES、150mM NaCl、1.2mM CaCl2、0.05%Tween 20、0.005%NaN3)中に希釈し、条件(2)の場合はそれらをACES pH5.8緩衝液(20mM ACES、150mM NaCl、1.2mM CaCl2、0.05%Tween 20、0.005%NaN3)中に希釈した。各抗体をProA/Gによりセンサー表面上に捕捉させた。抗体の捕捉レベルは、概して60~90共鳴単位(RU)であった。次に、組み換えヒトC5を、3倍段階希釈により調製して3~27nMまたは13.3~120nMで注入し、続いて解離させた。該表面は25mM NaOHを用いて再生させた。BIACORE(登録商標)T200 Evaluationソフトウェア、バージョン2.0(GE Healthcare)を用いて、条件(1)および(2)での反応速度パラメータを、1:1結合モデルでセンサーグラムをフィッティングさせることによって決定し、条件(3)での解離速度を、1:1 MCKの解離モデルでセンサーグラムをフィッティングさせることによって測定した。全ての抗体のpH依存性は、条件(2)と(1)の解離速度の比として示した。
【0335】
結合速度(ka)、解離速度(kd)、結合アフィニティ(KD)、およびpH依存性が、表9に示される。全ての抗体はpH7.4よりもpH5.8で速い解離速度を示し、それらのpH依存性は約20倍であった。
【0336】
【0337】
pH7.4およびpH5.8での組み換えヒトC5に対する抗C5抗体(BNJ441、エクリズマブ、および305変異体)の結合アフィニティを、BIACORE(登録商標)T200機器(GE Healthcare)を用いて37℃で測定し、抗原結合に与えるpHの影響を評価した。アミンカップリングキット(GE Healthcare)をメーカーにより推奨される設定にしたがって用いて、ヤギ抗ヒトIgG(Fc)ポリクローナル抗体(KPL #01-10-20)をCM4センサーチップ上に固定化した。抗体と分析物を、20mM ACES、150mM NaCl、1.2mM CaCl2、0.05%Tween 20、および0.005%NaN3を含有するACES pH7.4緩衝液中またはACES pH5.8緩衝液中のいずれかに希釈した。抗Fc法を用いて抗体をセンサー表面に捕捉させた。捕捉レベルは、概して50~80共鳴単位(RU)であった。組み換えヒトC5を、pH7.4アッセイ条件では27nMから、pH5.8アッセイ条件では135nMから出発する3倍段階希釈によって、調製した。表面を、20mM HCl、0.01%Tween 20を用いて再生させた。データを処理し、BiaEvaluation 2.0ソフトウェア(GE Healthcare)を用いて1:1結合モデルでフィッティングさせた。
【0338】
pH7.4およびpH5.8での組み換えヒトC5に対するBNJ441、エクリズマブ、および305変異体の結合アフィニティ(KD)は、表10に示される。305変異体は、ほぼ800の(pH5.8でのKD)/(pH7.4でのKD)比を示し、これは、93の(pH5.8でのKD)/(pH7.4でのKD)比しか示さなかったBNJ441よりも、8倍高かった。
【0339】
【0340】
実施例9
C5活性化に対する抗C5抗体(305変異体)の阻害活性
9.1.抗C5 MAbによる補体活性化リポソーム溶解の阻害
抗C5 MAbを、リポソーム溶解測定法により補体活性の阻害について試験した。30μLの正常ヒト血清(6.7%)(Biopredic、SER019)を96ウェルプレートにおいて20μLの希釈MAbと混合し、室温で30分間シェーカー上でインキュベートした。ジニトロフェニルに対する抗体で感作したリポソーム溶液(Autokit CH50、Wako、995-40801)を各ウェルに移し、37℃で2分間シェーカー上に置いた。50μLの基質溶液(Autokit CH50)を各ウェルに添加し、37℃で2分間振とうすることにより混合した。最終混合物を37℃で40分間インキュベートし、その後340nmでのODを測定した。リポソーム溶解パーセントは、100×[(OD
MAb - OD
血清およびリポソームバックグラウンド)]/[(OD
MAbなし - OD
血清およびリポソームバックグラウンド)]と定義された。
図15は、抗C5 MAb:305LO15-SG422、305LO16-SG422、305LO18-SG422、305LO19-SG422、305LO20-SG422、および305LO20-SG115がリポソーム溶解を阻害したことを示している。Fc変異体を有する2つの抗体:305LO15-SG115および305LO23-SG429もまた、リポソーム溶解を阻害した(
図16)。
【0341】
抗C5 MAbを、組み換えヒトC5(配列番号:39)の阻害について試験した。10μLのC5欠損ヒト血清(Sigma、C1163)を96ウェルプレートにおいて20μLの希釈MAbおよび20μLの組み換えC5(0.1μg/mL)と混合し、37℃で1時間シェーカー上でインキュベートした。リポソーム(Autokit CH50)を各ウェルに移し、37℃で2分間シェーカー上に置いた。50μLの基質溶液(Autokit CH50)を各ウェルに添加し、37℃で2分間振とうすることにより混合した。最終混合物を37℃で180分間インキュベートし、その後340nmでのODを測定した。リポソーム溶解パーセントは、上記のように定義された。
図17は、抗C5 MAb:305LO22-SG115、305LO22-SG422、305LO23-SG115、および305LO23-SG422がリポソーム溶解を阻害したことを示している。
【0342】
9.2.抗C5 MAbによるC5a生成の阻害
抗C5 MAbがC5aおよびC5bへのC5の切断を阻害することを確認するために、抗C5 MAbを、リポソーム溶解中のC5aの生成について試験した。リポソーム溶解測定法からの上清中のC5aレベルを、C5a ELISAキット(R&D systems、DY2037)を用いて定量した。全てのMAbは、上清中のC5a生成を用量依存的に阻害した(
図18および19)。
【0343】
9.3.カニクイザル血漿中の補体活性の測定
抗C5 MAbを、カニクイザル血漿中の補体活性の阻害について試験した。抗C5 MAbをサルに投与し(20mg/kg)、血漿サンプルを56日目まで定期的に採取した。ニワトリ赤血球細胞(cRBC)(Innovative research、IC05-0810)を、0.5mM MgCl
2および0.15mM CaCl
2を含有するゼラチン/ベロナール緩衝生理食塩水(GVB++)(Boston BioProducts、IBB-300X)で洗浄し、その後1μg/mlの抗ニワトリRBC抗体(Rockland 103-4139)を用いて4℃で15分間感作した。次いで、該細胞をGVB++で洗浄し、同じ緩衝液中に細胞1×10
8個/mlで懸濁した。別の丸底96ウェルマイクロテストプレートにおいて、サル血漿を感作cRBCと37℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを1000×g、4℃で2分間遠心分離した。630nmの参照波長を用いて415nmでODを測定するために、上清を平底96ウェルマイクロテストプレート上のウェルに移した。溶血パーセントは、100×[(OD
投与後 - OD
血漿およびcRBCバックグラウンド)]/[(OD
投与前 - OD
血漿およびcRBCバックグラウンド)]と定義された。
図20は、抗C5 MAb:305LO15-SG422、305LO15-SG115、305LO16-SG422、305LO18-SG422、305LO19-SG422、305LO20-SG422、305LO20-SG115、および305LO23-SG115が血漿中の補体活性を阻害したことを示している。
【0344】
9.4.抗C5 MAbによるC5変異体の生物学的活性の阻害
抗C5 MAbを、組み換えヒトC5変異体:V145I、R449G、V802I、R885H、R928Q、D966Y、S1310N、およびE1437Dの阻害について試験した。C5にR885H変異を有するPNH患者はエクリズマブへの応答不良を示すことが、報告されている(例えば、Nishimura et al., New Engl. J. Med. 370:632-639 (2014)を参照されたい)。ヒトC5変異体の各々をFS293細胞において発現させ、上清を以下の研究に使用した。10μLのC5欠損ヒト血清(Sigma、C1163)を96ウェルプレートにおいて20μLの希釈MAbおよび20μLの組み換えC5変異体(2~3μg/mL)含有細胞培養培地と混合し、37℃で0.5時間シェーカー上でインキュベートした。リポソーム(Autokit CH50)を各ウェルに移し、37℃で2分間シェーカー上に置いた。50μLの基質溶液(Autokit CH50)を各ウェルに添加し、37℃で2分間振とうすることにより混合した。最終混合物を37℃で90分間インキュベートし、その後340nmでのODを測定した。リポソーム溶解パーセントは、上記のように定義された。
図21は、抗C5 MAb(エクリズマブ)がR885H C5変異体を阻害しなかったが、試験した他の変異体を阻害したことを示している。
図22は、抗C5 MAb(305変異体)が試験した全てのC5変異体を阻害したことを示している。
【0345】
9.5.抗C5 MAbによる補体活性化リポソーム溶解の阻害
抗C5 MAbを、リポソーム溶解測定法により補体活性の阻害について試験した。30μLの正常ヒト血清(6.7%)(Biopredic、SER019)を96ウェルプレートにおいて20μLの希釈MAbと混合し、室温で30分間シェーカー上でインキュベートした。ジニトロフェニルに対する抗体で感作したリポソーム溶液(Autokit CH50、Wako、995-40801)を各ウェルに移し、25℃で2分間シェーカー上に置いた。50μLの基質溶液(Autokit CH50)を各ウェルに添加し、25℃で2分間振とうすることにより混合した。最終混合物を37℃で45分間インキュベートし、その後340nmでのODを測定した。リポソーム溶解の阻害パーセントは、100×[(OD
MAb - OD
血清およびリポソームバックグラウンド)]/[(OD
MAbなし - OD
血清およびリポソームバックグラウンド)]と定義された。
図23は、抗C5 MAbであるBNJ441および305変異体がリポソーム溶解を阻害したこと、および305変異体がBNJ441よりも強い阻害活性を有することを、示している。
【0346】
実施例10
カニクイザルにおける抗C5モノクローナル抗体(305変異体)の薬物動態研究
10.1.カニクイザルを用いたインビボ試験
カニクイザル(株式会社 新日本科学、日本)に抗ヒトC5抗体を投与した後の抗ヒトC5抗体のインビボ動態を評価した。抗ヒトC5抗体溶液(2.5mg/ml)を前腕の橈側皮静脈に約8ml/kgの用量で30分の注入により1回投与した。投与前、ならびに投与して5分後、7時間後、1日後、2日後、3日後、7日後、14日後、21日後、28日後、35日後、42日後、49日後、および56日後に血液を採取した。採取した血液は直ちに1,700×g、4℃で10分間遠心分離し、血漿を分離した。分離した血漿はアッセイまで冷凍庫に-70℃以下で保存した。抗ヒトC5抗体は実施例7に記載したように調製した。
【0347】
10.2.ELISAアッセイによる血漿中総カニクイザルC5濃度の測定
カニクイザル血漿中の総カニクイザルC5濃度をELISAにより測定した。抗ヒトC5抗体(実施例2に記載した方法を用いて作製された社内抗体)をNunc-ImmunoPlate MaxiSorp (Nalge Nunc International)に分注し、4℃で一晩静置して抗カニクイザルC5固相化プレートを調製した。検量線用サンプル、および0.4μg/mlの注射した抗体で20000倍希釈したカニクイザル血漿サンプルを調製し、37℃で60分間インキュベートした。その後、サンプルを抗カニクイザルC5固相化プレートに分注し、室温で1時間静置した。次いで、HRP標識された抗ヒトIgG抗体(SouthernBiotech)を添加し、室温で30分間反応させ、洗浄を行った。その後、ABTS ELISA HRP基質(KPL)を添加した。プレートリーダーにより405nmの波長でシグナルを測定した。カニクイザルC5濃度は、検量線のレスポンスに基づき解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を用いて算出した。この方法で測定した、静脈内投与後の血漿中カニクイザルC5濃度の経時変化を
図24に示す。データは、投与前の時点での血漿中カニクイザルC5濃度と比較した残存パーセンテージとしてプロットされている。pH依存的抗ヒトC5抗体(305LO15-SG422、305LO15-SG115、305LO16-SG422、305LO18-SG422、305LO19-SG422、305LO20-SG422、305LO20-SG115、305LO22-SG422、305LO23-SG422、および305LO23-SG115)は、pH非依存的抗ヒトC5抗体と比較して、より低い血漿中C5蓄積を示した。
【0348】
10.3.ELISAアッセイによる血漿中抗ヒトC5抗体濃度の測定
カニクイザル血漿中の抗ヒトC5抗体濃度をELISAにより測定した。抗ヒトIgGκ鎖抗体(Antibody Solutions)をNunc-ImmunoPlate MaxiSorp (Nalge Nunc International)に分注し、4℃で一晩静置して抗ヒトIgG固相化プレートを調製した。検量線用サンプル、および100倍以上希釈したカニクイザル血漿サンプルを調製した。その後、サンプルを抗ヒトIgG固相化プレートに分注し、室温で1時間静置した。次いで、HRP標識された抗ヒトIgG抗体(SouthernBiotech)を添加し、室温で30分間反応させ、洗浄を行った。その後、ABTS ELISA HRP基質(KPL)を添加した。プレートリーダーにより405nmの波長でシグナルを測定した。抗ヒトC5抗体濃度は、検量線のレスポンスに基づき解析ソフトウェアSOFTmax PRO(Molecular Devices)を用いて算出した。この方法で測定した、静脈内投与後の血漿中抗ヒトC5抗体濃度の経時変化を
図25に示す。pH依存的抗ヒトC5抗体(305LO15-SG422、305LO15-SG115、305LO16-SG422、305LO18-SG422、305LO19-SG422、305LO20-SG422、305LO20-SG115、305LO22-SG422、305LO23-SG422、および305LO23-SG115)は、pH非依存的抗ヒトC5抗体と比較して、より長い半減期を呈した。
【0349】
実施例11
305変異体FabとヒトC5-MG1ドメインとの複合体のX線結晶構造解析
11.1.ヒトC5のMG1ドメイン(20-124)の発現および精製
トロンビン切断可能リンカーを介してGSTタグに融合させたMG1ドメイン(配列番号:39のアミノ酸残基20-124)(GST-MG1)を、pGEX-4T-1ベクター(GE healthcare)を用いて、大腸菌BL21 DE3 pLysS株(Promega)において発現させた。タンパク質発現は、0.1mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて25℃で5時間誘導した。細菌細胞ペレットを、リソナーゼ(lysonase)(Merck)およびコンプリートプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)を添加したBugbuster(Merck)により溶解させ、続いて、GSTrapカラム(GE healthcare)をメーカーの使用説明書にしたがって用いて、可溶性画分からGST-MG1を精製した。GSTタグをトロンビン(Sigma)で切断し、得られたMG1ドメインをSuperdex 75ゲル濾過カラム(GE healthcare)でさらに精製した。MG1ドメインを含む画分をプールして、-80℃で保存した。
【0350】
11.2.305変異体のFab断片の調製
305由来の最適化変異体のうち1つのFab断片を、パパイン(Roche Diagnostics、カタログ番号1047825)による制限消化、続いて、Fc断片を除去するためのプロテインAカラム(MabSlect SuRe、GE Healthcare)、カチオン交換カラム(HiTrap SP HP、GE Healthcare)、およびゲル濾過カラム(Superdex200 16/60、GE Healthcare)へローディングする、従来の方法により調製した。Fab断片を含む画分をプールして、-80℃で保存した。
【0351】
11.3.305変異体FabとヒトC5-MG1ドメインとの複合体の調製
精製した組み換えヒトC5-MG1ドメインを、精製した305変異体Fab断片と1:1のモル比で混合した。複合体を、25mM HEPES pH7.5、100mM NaClで平衡化したカラムを用いたゲル濾過クロマトグラフィー(Superdex200 10/300 increase、GE Healthcare)により精製した。
【0352】
11.4.結晶化
精製した複合体を約10mg/mLに濃縮し、シーディング法と組み合わせたシッティングドロップ蒸気拡散法により4℃で結晶化を行った。リザーバー溶液は、0.2Mギ酸マグネシウム無水物、15.0%w/vポリエチレングリコール3350から成るものであった。これにより、2~3日で板状結晶を得ることに成功した。この結晶を、0.2Mギ酸マグネシウム無水物、25.0%w/vポリエチレングリコール3350、および20%グリセロールの溶液中に浸漬した。
【0353】
11.5.データ収集および構造決定
X線回折データを、SPring-8のBL32XUで測定した。測定中、結晶を常に-178℃の窒素流下に置いて凍結状態を維持し、ビームラインに接続されたMX-225HS CCD検出器(RAYONIX)を用いて、結晶を1回に1.0°回転させながら、合計180のX線回折像を収集した。セルパラメータの決定、回折スポットのインデックス付け、および回折像から得られた回折データの処理を、Xia2プログラム(J. Appl. Cryst. 43:186-190 (2010))、XDSパッケージ(Acta. Cryst. D66:125-132 (2010))、およびScala (Acta. Cryst. D62:72-82 (2006))を用いて行い、最終的に分解能2.11Åまでの回折強度データを取得した。結晶学的データ統計値が表11に示される。
【0354】
【0355】
構造を、プログラムPhaser (J. Appl. Cryst. 40:658-674 (2007))を用いて分子置換により決定した。Fabドメインのサーチモデルは、公開されたヒトIgG4 Fab結晶構造(PDBコード: 1BBJ)に由来し、MG1ドメインのサーチモデルは、公開されたヒトC5結晶構造(PDBコード: 3CU7, Nat.Immunol. 9:753-760 (2008))に由来するものであった。モデルをCootプログラム(Acta Cryst. D66:486-501 (2010))で構築して、プログラムRefmac5 (Acta Cryst. D67:355-367 (2011))で精密化した。25-2.11Åからの回折強度データの結晶学的信頼度因子(R)は20.42%であり、Free R値は26.44%であった。構造精密化統計値は、表11に示される。
【0356】
11.6.305変異体FabとC5-MG1ドメインとの複合体の全体構造
305由来の最適化変異体のFab断片(「305 Fab」)は、ヒトC5-MG1ドメイン(「MG1」)に1:1の比で結合し、この結晶構造の非対称単位は、
図26Aに示すように、2つの複合体である分子1と分子2を含んでいた。分子1および2は、
図26Bに示すように、全ての残基においてCα原子位置のRMSDが0.717Åで良好に重ね合わせることができる。以下で説明する図面は、分子1を用いて作成された。
【0357】
図27Aおよび27Bでは、305 Fab接触領域のエピトープが、それぞれ、MG1アミノ酸配列中および結晶構造中にマッピングされている。エピトープは、結晶構造において305 Fabのいずれかの部分から4.5Å以内の距離に位置している原子を1個以上含む、MG1のアミノ酸残基を含んでいる。さらに、3.0Å以内のエピトープが、
図27Aで強調表示されている。
【0358】
11.7.E48、D51、およびK109の相互作用
実施例4.5および4.6に記載したように、305抗体シリーズを含む抗C5 MAbを、ウエスタンブロットおよびBIACORE(登録商標)結合解析によって、3つのヒトC5点変異体であるE48A、D51A、およびK109Aへの結合について試験した。305変異体はWT C5に強く結合したが、E48A C5変異体には弱くしか結合せず、D51AおよびK109A変異体には結合しなかった。305 FabとMG1の複合体の結晶構造は、
図28Aに示すように、これら3つのアミノ酸E48、D51、およびK109が全て305 Fabから3.0Å以内の距離にあって、該Fabといくつかの水素結合を形成していることを明らかにした。より詳細に考察すると、MG1のK109残基は、Fabの重鎖の界面に形成された溝に埋もれており、H-CDR3_G97、H-CDR3_Y100、およびH-CDR3_T100bとの3つの水素結合によって、ならびにH-CDR3_D95との塩橋によって、Fabと強固に相互作用している(
図28D)。D51は、MG1と305 Fabの重鎖との間に位置しており、H-CDR1_Ser32およびH-CDR2_Ser54と2つの水素結合を形成して空間を埋めている(
図28C)。これらは、C5のK109とD51の両方が、305抗体シリーズの結合にとって極めて重要な残基であることを示している。一方、E48は、表面の比較的近くに位置し、Fabとの水素結合は1つしか形成しておらず、このことは、抗体結合へのその寄与がK109およびE51のそれを下回るであろうことを示唆している(
図28B)。これらの関係は、ヒトC5変異体のウエスタンブロットおよびBIACORE(登録商標)結合解析の結果と一致している(実施例4.5および4.6)。補足事項:Fabのアミノ酸の残基番号付けは、Kabat番号付けスキームに基づく。(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1991)
【0359】
11.8.ヒトC5のH70、H72、およびH110と305抗体シリーズの相互作用
結晶構造解析は、
図27Aおよび
図29Aに示すように、ヒトC5上の3つのヒスチジン残基、すなわちH70、H72、およびH110が、305変異体Fabのエピトープに含まれていることを明らかにした。ヒトC5と305変異体Fabの間のpH依存的タンパク質-タンパク質相互作用に対するこれらのヒスチジン残基の寄与を調べるために、ヒトC5変異体H70Y、H72Y、H110Y、およびH70Y+H110Yを用いて、BIACORE(登録商標)結合解析を行った(実施例4.7)。H72Yは、C5への305変異体Fabの結合の完全な消失をもたらした。C5のこの残基は、
図29Cに示すように、305 Fabの重鎖のCDR2ループとMG1のループ(L73、S74、およびE76)によって形成されたポケット内に位置し、この空間をしっかりと埋めている。さらに、C5のH72残基はH-CDR2_Y58と水素結合を形成している。チロシンの比較的嵩高い側鎖を収容するのに充分な空間がないので、H72Y変異は許容されないと予想される。また、H-CDR2_Y58との水素結合を維持することもできない。H70およびH110のpH依存性への寄与に関しては、H70YおよびH110Y変異が、pH5.8でC5からの305変異体Fabの比較的遅い解離をもたらした。H70はMG1のT53と分子内水素結合を形成しているが、pH5.8でC5のH70がプロトン化されると、MG1の相互作用界面の対応部分で立体構造変化が起こり、この水素結合は破壊されると考えられる(
図29B)。H110に関しては、このC5残基のプロトン化が305 Fabに対する電荷反発を引き起こすと予想され、これは隣接ヒスチジン残基H-CDR3_H100cのプロトン化によって増強されうる(
図29D)。
【0360】
前述の発明は、明確な理解を助ける目的のもと、実例および例示を用いて詳細に記載したが、本明細書における記載および例示は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用したすべての特許文献および科学文献の開示は、その全体にわたって、参照により明示的に本明細書に組み入れられる。
【配列表】