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特許7032079車両制御装置およびそれを用いた車両制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】車両制御装置およびそれを用いた車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20220301BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20220301BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20220301BHJP
   B60W 50/16 20200101ALI20220301BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20220301BHJP
   B60W 50/10 20120101ALI20220301BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20220301BHJP
   G05G 9/04 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/09 V
G08G1/0969
B60W50/16
B60W50/14
B60W50/10
B60W60/00
G05G9/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017164815
(22)【出願日】2017-08-29
(65)【公開番号】P2019045913
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝則
(72)【発明者】
【氏名】米澤 智
(72)【発明者】
【氏名】平尾 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 蓮
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/141308(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/035207(WO,A1)
【文献】特開平07-195962(JP,A)
【文献】米国特許第8676431(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26 ~ 21/36
G08G 1/00 ~ 1/16
B60W 50/00 ~ 60/00
G05G 9/00 ~ 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主な運転動作が車両によって自動的に行われる自動運転状態を実行可能な車両に配設され、
乗員が保持可能な形状を呈して移動に応じた移動信号を出力する移動指示装置と、前記乗員が着座するシートの近傍に配置されて前記移動指示装置が移動する操作面を有する指示装置載置部と、前記移動指示装置から出力される前記移動信号に応じて前記車両を操作する車両演算指示装置と、前記移動指示装置の近傍に前記車両が進行する進行方向の道路を複数表示する進行方向表示装置と、を具備し、
前記車両演算指示装置は、
前記自動運転状態が実行されている間に、前記車両の進行方向に走行可能な複数の候補道路が出現したら、前記進行方向表示装置により前記移動指示装置の近傍に前記複数の候補道路を表示させ、
前記乗員が前記移動指示装置を操作することで、前記複数の候補道路の中から一つの前記道路を選択したら、前記選択した道路に向かって前記車両を走行させることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
更に、前記複数の候補道路から前記車両が進行する前記道路を選択する際に、前記乗員が選択を決定する進行方向決定装置と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記車両演算指示装置は、前記複数の候補道路に優先順位を設定し、
前記進行方向表示装置は、前記優先順位に応じて前記道路を表示する態様を異ならせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記指示装置載置部と前記進行方向表示装置とは、前記乗員の一つの視界に入る位置に配設されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の車両制御装置。
【請求項5】
更に、前記選択を行うべく前記乗員が前記移動指示装置に操作力を加えた際に、前記操作力に対抗する反力を発生させる反力発生装置を具備することを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記指示装置載置部および前記進行方向表示装置は、センターコンソールの上面に形成されることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記進行方向表示装置は、前記複数の候補道路の中から一つの前記道路を選択する暫定的な道路選択状況を、前記複数の候補道路と共に表示することを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記乗員が前記移動指示装置を操作する際に、前記乗員が着座する前記シートはリラックスポジションであることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の車両制御装置。
【請求項9】
主な運転動作が車両によって自動的に行われる自動運転状態を実行可能な車両に適用され、
乗員が保持可能な形状を呈して移動に応じた移動信号を出力する移動指示装置と、前記乗員が着座するシートの近傍に配置されて前記移動指示装置が移動する操作面を有する指示装置載置部と、前記移動指示装置から出力される前記移動信号に応じて前記車両を操作する車両演算指示装置と、前記移動指示装置の近傍に前記車両が進行する進行方向の道路を複数表示する進行方向表示装置と、により実行され、
前記自動運転状態が実行されている間に、前記車両の進行方向に走行可能な複数の候補道路が出現したら、前記進行方向表示装置により前記移動指示装置の近傍に前記複数の候補道路を表示させ、
前記乗員が前記移動指示装置を操作することで、前記複数の候補道路の中から一つの前記道路を選択したら、前記選択した道路に向かって前記車両を走行させることを特徴とする車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置およびそれを用いた車両制御方法に関し、特に、自動運転状態に於いて乗員が車両の進行方向を選択することができる車両制御装置およびそれを用いた車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の運転は、運転者が、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングハンドルを操作することで行うものが一般的である。近年、交通事故の減少を図るため、運転者の操作を補助して、緊急時等に車両を自動で停止させる運転支援装置が登場している。更には、運転者による操舵等の運転操作を殆ど必要とせずに、車両を自動的に走行させる自動運転支援装置が普及しつつある。
【0003】
特許文献1には、車両の挙動に関する操作である、アクセル操作、ブレーキ操作及びハンドル操作の全てを車両制御ECUが制御し、運転者の操作に依らない自動運転を行うことができる自動運転支援装置が開示されている。この文献に記載された自動運転支援装置は、エンジン装置、ブレーキ装置、電動パワーステアリング等を駆動制御して、案内経路上の中断タイミングまで自動運転を行う。
【0004】
特許文献2では、上記した自動運転に際して、運転者の疲労を低減すること等を目的として、自動運転時にシートをリラックスモードとする技術事項が開示されている。具体的には、車両が自動運転状態となった場合、シートを後方に移動させ、更に、シートバックを後方に倒す。このようにすることで、運転者をステアリングホイールから遠ざけ、自動運転による操舵等を妨げず、且つ運転者の疲労軽減を図ることができる。
【0005】
一方、車両操作の主だった部分を車両が主体的に行う自動運転機能を持つ自動運転車両が市場に登場しても、道路を走行する全ての車両が自動運転車両とはならず、乗員が車両を運転する手動運転車両と自動運転車両とが道路に混在する状態がしばらく続くと予測される。また、将来的に自動運転車両のみが道路を走行するようになったとしても、車両が自動運転状態である際に、車両の進行方向を乗員が指示しなければならないことも想定される。
【0006】
ここで、自動運転状態に於いては、シートはリラックスポジションとされているので、自動運転状態に於いて乗員の車両操作が必要な場合は、乗員はその姿勢をリラックス姿勢から運転姿勢に変更する必要がある。即ち、乗員は、各ペダルおよびステアリングハンドルを操作するべく、上肢を起立させると共に、体全体を車両前方に移動させなければならない。その姿勢変更を短時間に行うことは、乗員に対して大きな負担となる。更に、自動運転状態から手動運転状態に遷移するために必要な引き継ぎ時間は、一般に少なくとも数秒ないし20秒程度であることが知られており、このように引き継ぎに時間が掛かると、自動運転状態において車両の進行方向を迅速に選択することは難しい。
【0007】
特許文献3では、マウス型装置を用いて車両を操作する発明が記載されている。具体的には、この文献に記載された発明では、車室内においてシートの近傍にマウス型装置を配置し、乗員がマウス型装置を操作することで車両を操舵することができる。
【0008】
更に、特許文献4には、コントローラを用いて車両を操作する発明が記載されている。具体的には、車両の近傍に障害物が存在する際には、障害物に向かって車両が進行することを防止するべく、乗員がコントローラに対して反力制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-178332号公報
【文献】特開2016-168972号公報
【文献】特開2016-199245号公報
【文献】特開2007-223564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した特許文献3および特許文献4に記載されている制御機構では、乗員の近傍に配設されたマウス型装置やコントローラを操作することで、乗員はその姿勢を大きく変位させること無く車両を操作することを可能とする。しかしながら、例えば、自動運転状態に於いて、前方に存在する複数の道路から、車両が進行するべき道路を選択する場合、乗員は車両前方の状況を確認しながら、手元のマウス装置等を制御しなければならない。よって、乗員は視線を車両前方と手元に移動させながら進行するべき道路を選択しなければならないので、安全且つ迅速に進路を選択することが簡単でなかった。
【0011】
また、自動運転状態にて進行するべき道路を選択する他の方法として、インスツルメントパネルに配設されたディスプレイに車両前方の複数の道路を表示し、ディスプレイに表示された道路を乗員が目視で確認しつつ、手元に配設されたマウス型装置等を操作することが考えられる。しかしながら、この場合でも、乗員は、インスツルメントパネルに配設されたディスプレイと、乗員の手元に配置されたマウス型装置との間で、視線を動かしながら、進行するべき道路を選択しなければならない。よって、この構成であっても、自動運転状態に於いて、車両が進行するべき道路を安全且つ迅速に選択することは難しい。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自動運転状態に於いて、車両が進行するべき道路を簡易且つ安全に選択できる車両制御装置および車両制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の車両制御装置は、主な運転動作が車両によって自動的に行われる自動運転状態を実行可能な車両に配設され、乗員が保持可能な形状を呈して移動に応じた移動信号を出力する移動指示装置と、前記乗員が着座するシートの近傍に配置されて前記移動指示装置が移動する操作面を有する指示装置載置部と、前記移動指示装置から出力される前記移動信号に応じて前記車両を操作する車両演算指示装置と、前記移動指示装置の近傍に前記車両が進行する進行方向の道路を複数表示する進行方向表示装置と、を具備し、前記車両演算指示装置は、前記自動運転状態が実行されている間に、前記車両の進行方向に走行可能な複数の候補道路が出現したら、前記進行方向表示装置により前記移動指示装置の近傍に前記複数の候補道路を表示させ、前記乗員が前記移動指示装置を操作することで、前記複数の候補道路の中から一つの前記道路を選択したら、前記選択した道路に向かって前記車両を走行させることを特徴とする。
【0014】
更に本発明の車両制御装置では、複数の前記候補道路から前記車両が進行する前記道路を選択する際に、前記乗員が選択を決定する進行方向決定装置と、を具備することを特徴とする。
【0015】
更に本発明の車両制御装置では、前記車両演算指示装置は、前記複数の候補道路に優先順位を設定し、前記進行方向表示装置は、前記優先順位に応じて前記道路を表示する態様を異ならせることを特徴とする。
【0016】
更に本発明の車両制御装置では、前記指示装置載置部と前記進行方向表示装置とは、前記乗員の一つの視界に入る位置に配設されることを特徴とする。
【0017】
更に本発明の車両制御装置では、前記選択を行うべく前記乗員が前記移動指示装置に操作力を加えた際に、前記操作力に対抗する反力を発生させる反力発生装置を具備することを特徴とする。
【0018】
更に本発明の車両制御装置では、前記指示装置載置部および前記進行方向表示装置はセンターコンソールの上面に形成されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の車両制御装置では、前記進行方向表示装置は、前記複数の候補道路の中から一つの前記道路を選択する暫定的な道路選択状況を、前記複数の候補道路と共に表示することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の車両制御装置では、前記乗員が前記移動指示装置を操作する際に、前記乗員が着座する前記シートはリラックスポジションであることを特徴とする。
【0021】
更に本発明の車両制御方法は、主な運転動作が車両によって自動的に行われる自動運転状態を実行可能な車両に適用され、乗員が保持可能な形状を呈して移動に応じた移動信号を出力する移動指示装置と、前記乗員が着座するシートの近傍に配置されて前記移動指示装置が移動する操作面を有する指示装置載置部と、前記移動指示装置から出力される前記移動信号に応じて前記車両を操作する車両演算指示装置と、前記移動指示装置の近傍に前記車両が進行する進行方向の道路を複数表示する進行方向表示装置と、により実行され、前記自動運転状態が実行されている間に、前記車両の進行方向に走行可能な複数の候補道路が出現したら、前記進行方向表示装置により前記移動指示装置の近傍に前記複数の候補道路を表示させ、前記乗員が前記移動指示装置を操作することで、前記複数の候補道路の中から一つの前記道路を選択したら、前記選択した道路に向かって前記車両を走行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車両制御装置は、主な運転動作が車両によって自動的に行われる自動運転状態を実行可能な車両に配設され、乗員が保持可能な形状を呈して移動に応じた移動信号を出力する移動指示装置と、前記乗員が着座するシートの近傍に配置されて前記移動指示装置が移動する操作面を有する指示装置載置部と、前記移動指示装置から出力される前記移動信号に応じて前記車両を操作する車両演算指示装置と、前記移動指示装置の近傍に前記車両が進行する進行方向の道路を複数表示する進行方向表示装置と、を具備し、前記車両演算指示装置は、前記自動運転状態が実行されている間に、前記車両の進行方向に走行可能な複数の候補道路が出現したら、前記進行方向表示装置により前記移動指示装置の近傍に前記複数の候補道路を表示させ、前記乗員が前記移動指示装置を操作することで、前記複数の候補道路の中から一つの前記道路を選択したら、前記選択した道路に向かって前記車両を走行させることを特徴とする。従って、車両の前方に車両が走行することができる複数の候補道路が出現した場合、シートの近傍に配置された移動指示装置を乗員が操作することで、意図する道路に向かって車両を操作することができる。よって、シートに横臥した状態のまま、自動運転状態の車両の進行方向を操作することができる。また、移動指示装置の近傍に映し出される複数の候補道路を確認しつつ、移動指示装置を操作することで、進行する道路を選択することができることから、車両の外部を目視確認が十分正確にできない状況の中でも、移動指示装置から大きく視線を移動させること無く、例えば複雑な分岐路などに対しても正確に車両を操作できる。よって、進行方向を選択する際の安全性を向上することができる。
【0023】
更に本発明の車両制御装置では、複数の前記候補道路から前記車両が進行する前記道路を選択する際に、前記乗員が選択を決定する進行方向決定装置と、を具備することを特徴とする。従って、候補道路の選択を決定するための進行方向決定装置を有することで、乗員は自らが望む道路の選択を、好適なタイミングで行うことができる。
【0024】
更に本発明の車両制御装置では、前記車両演算指示装置は、前記複数の候補道路に優先順位を設定し、前記進行方向表示装置は、前記優先順位に応じて前記道路を表示する態様を異ならせることを特徴とする。従って、乗員は、道路の表示態様を視認することで候補道路に優先順位を容易に確認することができ、より安全度の高い道路を容易に選択することができる。
【0025】
更に本発明の車両制御装置では、前記指示装置載置部と前記進行方向表示装置とは、前記乗員の一つの視界に入る位置に配設されることを特徴とする。従って、乗員は、視界を変動させること無く、進行方向表示装置に表示される候補道路を確認しながら、表示装置載置部を操作することで進行する道路を選択できる。
【0026】
更に本発明の車両制御装置では、前記選択を行うべく前記乗員が前記移動指示装置に操作力を加えた際に、前記操作力に対抗する反力を発生させる反力発生装置を具備することを特徴とする。従って、例えば、乗員が移動指示装置に操作力を加える方向が、危険性の高い方向であれば、反力発生装置がその操作力に対抗する反力を発生させることで、車両が危険性の高い方向に進行してしまうことを抑止できる。
【0027】
更に本発明の車両制御装置では、前記指示装置載置部および前記進行方向表示装置はセンターコンソールの上面に形成されることを特徴とする。従って、乗員が着座するシートの近傍に配設されるセンターコンソールの上面に指示装置載置部および進行方向表示装置を形成することで、乗員は指示装置載置部の上面に配置される移動指示装置を容易に操作することができる。また、指示装置載置部の前方に配置される進行方向表示装置を容易に目視で確認できる。
【0028】
また、本発明の車両制御装置では、前記進行方向表示装置は、前記複数の候補道路の中から一つの前記道路を選択する暫定的な道路選択状況を、前記複数の候補道路と共に表示することを特徴とする。従って、乗員は、複数の候補道路の中から、自身が選択した道路を容易に認識することが出来る。
【0029】
また、本発明の車両制御装置では、前記乗員が前記移動指示装置を操作する際に、前記乗員が着座する前記シートはリラックスポジションであることを特徴とする。従って、乗員は、リラックスポジションであるシートに横臥した状態のまま、指示装置載置部を操作することができる。
【0030】
更に本発明の車両制御方法は、主な運転動作が車両によって自動的に行われる自動運転状態を実行可能な車両に適用され、乗員が保持可能な形状を呈して移動に応じた移動信号を出力する移動指示装置と、前記乗員が着座するシートの近傍に配置されて前記移動指示装置が移動する操作面を有する指示装置載置部と、前記移動指示装置から出力される前記移動信号に応じて前記車両を操作する車両演算指示装置と、前記移動指示装置の近傍に前記車両が進行する進行方向の道路を複数表示する進行方向表示装置と、により実行され、前記自動運転状態が実行されている間に、前記車両の進行方向に走行可能な複数の候補道路が出現したら、前記進行方向表示装置により前記移動指示装置の近傍に前記複数の候補道路を表示させ、前記乗員が前記移動指示装置を操作することで、前記複数の候補道路の中から一つの前記道路を選択したら、前記選択した道路に向かって前記車両を走行させることを特徴とする。従って、車両の前方に車両が走行することができる複数の候補道路が出現した場合、シートの近傍に配置された移動指示装置を乗員が操作することで、意図する道路に向かって車両を操作することができる。よって、シートに横臥した状態のまま、自動運転状態の車両の進行方向を操作することができる。また、移動指示装置の近傍に映し出される複数の候補道路を確認しつつ、移動指示装置を操作することで、進行する道路を選択することができることから、車両の外部を目視確認せずとも、移動指示装置から大きく視線を移動させること無く、車両を操作できる。よって、進行方向を選択する際の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る車両制御装置および車両制御方法を示す図であり、車両を構成する各部位の接続構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両制御装置および車両制御方法を示す図であり、(A)は車両室内の前方部分を示す上面図であり、(B)は車両制御装置を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る車両制御装置および車両制御方法を示す図であり、(A)は手動運転状態を示す側面図であり、(B)は自動運転状態を示す側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る車両制御装置および車両制御方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る車両制御装置および車両制御方法を示す図であり、車両制御装置を搭載した車両が走行する道路地図を示す模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る車両制御装置および車両制御方法を示す図であり、センターコンソールの上面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る車両制御装置および車両制御方法を示す図であり、(A)および(B)は、表示装置に各道路が表示される状態を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る車両制御装置および車両制御方法を示す図であり、乗員が移動指示装置を操作する状況を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係る車両制御装置30を、図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、以下の説明では上下前後左右の各方向を用いるが、左右とは車両10の前方を向いた場合の左右である。
【0033】
図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置30を備えた車両10を説明するブロック図である。車両制御装置30は、車両10を制御する制御機構の一部である。後述するように、車両制御装置30は、自動運転を実行している間に、車両10の前方に複数の道路が出現した場合に、車両10が走行するべき道路を選択するための装置である。車両制御装置30は、移動指示装置31と、指示装置載置部32と、反力発生部26と、進行方向表示装置18と、車両演算指示装置14と、を有している。
【0034】
移動指示装置31は、車両10の車室内において乗員11の近傍に配置され、例えばマウスの如き形状および機能を有するマウス型装置である。乗員11が移動指示装置31を操作すると、その移動量および移動方向を示す移動信号を車両演算指示装置14に出力する。車両演算指示装置14は移動信号に基づいて、車両10の操舵および加減速を行う。
【0035】
指示装置載置部32は、マウス型の移動指示装置31が載置される平坦部位である。指示装置載置部32は、後述するように、自動運転の際にリラックスポジションとされるシート20の近傍に配置される。
【0036】
反力発生部26は、乗員11が移動指示装置31を操作した際に、その操作力に対抗する反力を発生させる。反力発生部26が反力を移動指示装置31に与えることで、乗員11は車両10をより安全に操作でき、更に、車両操作に際して節度感および安心感を得ることができる。
【0037】
進行方向表示装置18は、指示装置載置部32および移動指示装置31の近傍に配設された表示装置である。進行方向表示装置18は、車両10が自動運転を実行している際に、車両10が走行することが可能な道路が複数出願した場合に、その複数の道路を表示する。進行方向表示装置18が、移動指示装置31の近傍で、車両10の進行方向の道路を表示することで、乗員11は道路の状況を容易に確認しつつ移動指示装置31を操作し、車両10が進行するべき道路を選択することができる。かかる事項については後述する。
【0038】
また、車両10は、自動運転を実現させるために、車両演算指示装置14と、入力装置12と、車外環境認識装置13と、車両駆動装置16と、操舵装置17と、制動装置15と、シート駆動装置19を備えている。
【0039】
車両演算指示装置14は、車両10の制御手段であり、例えば、各種の演算等を行う演算装置等を含む電子制御ユニット(ECU)等である。車両演算指示装置14は、入力装置12および車外環境認識装置13から入力される入力情報等に基づき、車両駆動装置16、操舵装置17および制動装置15を制御することで、車両10を自動運転する。また、車両演算指示装置14は、入力装置12からの指示により運転者が運転操作を行う通常の手動運転状態と、車両演算指示装置14が自動で主な運転を行う自動運転状態と、を切り替える。
【0040】
更に、本実施形態では、車両演算指示装置14は、自動運転状態に於いて、車両制御に乗員11が介入する場合に、移動指示装置31から入力される信号に基づいて、車両10の加減速および操舵を行う動作制御装置も含む。
【0041】
制動装置15は、車両10の減速及び停止を行う制動手段である。制動装置15は、例えば、車両演算指示装置14からの信号によって作動するブレーキ等である。
【0042】
シート駆動装置19は、図3(A)等を参照して、車両演算指示装置14の指示に基づいて、シート20の位置姿勢を駆動するモータ等から構成される。
【0043】
自動運転状態では、車両演算指示装置14は、車外環境認識装置13等からの情報に基づき、各種の演算を実行し、現在の走行状態や外部環境等を常に監視する。そして、車両演算指示装置14は、制動装置15、車両駆動装置16及び操舵装置17等を制御し、現在の状況に応じて適切な自動運転を行う。このように、車両演算指示装置14は、自動運転機能を有し、車両10の運転操作を自動で行うことができる。更に、車両演算指示装置14は、車両10が自動運転状態の際には、シート駆動装置19を駆動することで、図3(B)に示す、シート20をリラックスポジションとする。ここで、リラックスポジションとは、自動運転状態の際に、運転者がリラックスできると共に自動運転を阻害しないように、シート20を後方に移動させると共に、シートバック22を倒した位置姿勢である。
【0044】
また、車両演算指示装置14は、入力装置12または車外環境認識装置13から入力される入力情報に基づいて、車両10の運転状態を、自動運転状態から手動運転状態に移行する。更にこの際、車両演算指示装置14は、シート駆動装置19を駆動することで、図3(A)に示すシート20を前方に移動させ、シートバック22を起こすなどして、運転者が操舵装置17や制動装置15を操作できるドライビングポジションを実現する。ここで、ドライビングポジションとは、手動運転状態の際に、ステアリングホイール24やブレーキペダルを操作しやすいシート20の位置姿勢である。
【0045】
図2を参照して、車両制御装置30の構成を詳述する。図2(A)は車両10の車室内の前方右側を示す上面図であり、図2(B)は車両制御装置30を示す斜視図である。
【0046】
図2(A)を参照して、車両10の車室内の前方にはシート20が配置されており、右側のシート20に、車両10を操作する運転者である乗員11が着座している。シート20どうしの間に、センターコンソール25が配置されている。センターコンソール25は、シート20どうしの間で、前後方向に細長く延びるボックス状の部位である。
【0047】
図2(B)を参照して、本実施形態では、センターコンソール25に、車両制御装置30が組み込まれている。車両制御装置30は、移動指示装置31と、移動指示装置31が載置される指示装置載置部32と、反力発生部26と、進行方向表示装置18と、ここでは図示しない車両演算指示装置14と、を備えている。
【0048】
移動指示装置31は、マウス等のポインティングスティックの如き形状を呈しており、乗員11が手で上方から保持できる大きさと形状を呈している。移動指示装置31は、その移動量、移動速度、移動方向等を示す電気信号を、上記した車両演算指示装置14に出力する。移動指示装置31は、有線で車両演算指示装置14と接続されても良いし、無線的に車両演算指示装置14と接続されても良い。
【0049】
センターコンソール25の上面であって前後方向中央部分には、移動指示装置31が載置される操作面となる指示装置載置部32が形成されている。指示装置載置部32は、移動指示装置31をスライド移動(摺動移動)させることを可能とする平坦面として形成されている。移動指示装置31の移動量は、移動指示装置31自体が検出しても良いし、指示装置載置部32が検出しても良い。
【0050】
センターコンソール25の上面であって後方部分には、移動指示装置31を収納する収納部28が形成されている。収納部28は、例えば、センターコンソール25を部分的に窪ませることで形成され、移動指示装置31よりも若干大きく形成されている。通常の手動運転状態および自動運転状態に於いては、移動指示装置31は収納部28に収納されている。よって、通常時においては、移動指示装置31は乗員11の腕等が接触し難い箇所に配置されている。このことから、手動運転状態に於いて、車両10を操舵する乗員11の手が移動指示装置31に接触することを防止することができる。また、自動運転状態に於いて、シート20の上面に横臥する乗員11が、不必要に移動指示装置31に接触することを防止することができる。
【0051】
ここで、収納部28に収納されている移動指示装置31を充電するようにしても良い。この充電は、接触型の充電であっても良いし非接触型の充電でも良い。このように充電を行うことで、簡易に移動指示装置31を充電でき、自動運転時において緊急的に車両10を操作する際に、移動指示装置31が電気切れになることを抑止できる。
【0052】
更に、収納部28に移動指示装置31を収納している際には移動指示装置31の機能を無効にし、移動指示装置31を指示装置載置部32に載置した場合のみ、移動指示装置31の機能を有効にしても良い。このようにすることで、移動指示装置31を乗員11が意図せず操作してしまうことを防止できる。
【0053】
車両制御装置30は、乗員11が移動指示装置31を操作した際に、その操作力に対抗する反力を生成する反力発生部26を備えている。反力発生部26としては、電気磁石等の磁気発生手段を採用できる。反力発生部26は、例えば、磁束を発生する電気磁石と、この磁束に対して吸引または反発する磁性体とから構成される。具体的な構成の一例を挙げると、反力発生部26は、移動指示装置31に内蔵された電気磁石と、指示装置載置部32に組み込まれた磁性体から構成される。
【0054】
センターコンソール25の上面であって前方部分には、進行方向表示装置18が形成されている。進行方向表示装置18としては、センターコンソール25に組み込まれた液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を採用することができる。また、進行方向表示装置18は、車両10の天井部分に取り付けられたプロジェクタであっても良い。進行方向表示装置18としてこのようなプロジェクタが採用された場合は、プロジェクタから照射された光線が、センターコンソール25の上面前方部分に照射されることで、センターコンソール25の上面前方部分に車両10の前方に存在する道路が映し出される。ここで、指示装置載置部32および進行方向表示装置18は、センターコンソール25の上面に於いて重畳して配設されても良い。
【0055】
上記した車両制御装置30は、自動運転状態においてシート20に横臥している乗員11の手の近傍に配設されている。よって、自動運転状態に於いて後述する車両10の操作を行う際に、乗員11は横臥したまま容易に車両制御装置30の移動指示装置31を保持して操作することができる。その際に、乗員11は、進行方向表示装置18および移動指示装置31を同一の視界33(図2(A))に収め、進行方向表示装置18に表示される道路地図を目視確認しながら、車両10が進行するべき道路を移動指示装置31で選択する。この際、乗員11は、車両10の前方を目視確認せずとも、進行方向表示装置18により進行方向の道路の地図形状を確認することができ、更に、どの道路を選択したかを確認できる。
【0056】
また、移動指示装置31が載置される指示装置載置部32と進行方向表示装置18とは、センターコンソール25の上面に形成されている。即ち、指示装置載置部32と進行方向表示装置18とは、同一平面上に配設されている。かかる構成により、乗員11は、進行方向表示装置18に表示される地図情報を目視確認しながら、容易に、進行方向表示装置18を用いて進行するべき道路を選択することができる。
【0057】
図3を参照して、手動運転状態と自動運転状態のシート20の形態を説明する。図3(A)は手動運転状態におけるシート20の位置姿勢を示す側面図であり、図3(B)は自動運転状態におけるシート20の位置姿勢を示す側面図である。
【0058】
図3(A)を参照して、乗員11が車両10を運転する手動運転状態では、シート20の位置姿勢は、手動運転に適したドランビングポジションとされる。ここで、シート20は、シートクッション21、シートバック22、およびヘッドレスト23から構成されている。
【0059】
ドランビングポジションでは、シート20の前後方向の位置は、乗員11が、アクセルペダルおよびブレーキペダルを踏み込むことができ、且つ、ステアリングホイール24を操舵することができるように、比較的前方に配置されている。同様の理由により、シートバック22は起立した状態となっている。
【0060】
図3(B)を参照して、車両演算指示装置14が車両10を運転する自動運転状態では、シート20の位置姿勢は、運転者の疲労を緩和するのに適したリラックスポジションとされる。具体的には、シート20は、上記したドライビングポジションと比較すると、後方に移動される。これにより、乗員11が後方に移動されるので、乗員11がその脚部を前方に伸ばすことができ、車両搭乗時の疲労を軽減することが出来る。更に、ステアリングホイール24や図示しないブレーキペダル等から、乗員11を遠ざけることができ、自動運転状態において、乗員11が意図せずステアリングホイール24等に接触してしまうことが防止される。
【0061】
更に、シートバック22は、ドライビングポジションと比較すると倒された状態とされている。また、シートクッション21およびシートバック22の上面が、連続する平坦面に近い形状を呈している。従って、乗員11は、その上半身を倒すことができ、車両搭乗時の疲労を軽減することが出来る。更にまた、リラックスポジションでは、シート20を全体的に上方に移動させても良い。これにより、自動運転状態において、乗員11の頭部の位置が高くなり、乗員11の視界を良好に確保することが出来る。
【0062】
図4のフローチャートに基づいて、上記した各図も参照しつつ、上記した車両制御装置30を用いて、自動運転時に、車両10が進行するべき道路を乗員11が選択する車両制御方法を具体的に説明する。
【0063】
先ず、ステップS10では、車両10が自動運転状態とされている。具体的には、図1を参照して、車両演算指示装置14は、車外環境認識装置13等からの情報に基づき、各種の演算を実行し、現在の走行状態や外部環境等を常に監視する。車両演算指示装置14は、乗員11の入力指示に基づき、または車両演算指示装置14が自動運転を行うことが可能と判断したら、制動装置15、車両駆動装置16及び操舵装置17等の制御を行い、現在の状況に応じて適切な自動運転を行う。このステップでは、乗員11は車両10を操作する必要は無いため、シート20は図3(B)に示すリラックスポジションとされ、乗員11はシート20の上面に横臥している。
【0064】
ステップS11では、車両演算指示装置14が、車両10の前方に、車両10が進行可能な道路が複数存在するか否かを判断する。ここで、車両10の前方に、車両10が進行可能な道路が複数存在すれば、即ちステップS11がYESであれば、車両演算指示装置14は、ステップS12に移行し、後述するように乗員11が進行するべき道路を選択する。一方、車両10が進行可能な道路が複数存在しなければ、即ちステップS11がNOであれば、車両演算指示装置14は、ステップS11に戻り自動運転状態を継続する。
【0065】
図5を参照して、本ステップの状況を詳述する。図5は、ステップS11に於いて車両10が通過しようとしている交差点34を上方から見た図である。この図では、紙面上の左右上下を東西南北としている。ここでは、比較的広い道路35Aが南北に沿って延びており、比較的広い道路35Bが東西に沿って延びており、道路35Aと道路35Bとが交差することで交差点34が形成されている。また、交差点34よりも北側部分の道路35Aから、複数の道路が分岐している。具体的には、比較的狭い道路35Eおよび道路35Fが、道路35Aの東側辺から北東側に向かって分岐している。また、比較的狭い道路35Gが、道路35Aの西側辺から北西側に向かって分岐している。
【0066】
道路35E、35F、35Gは、道路35Aと比較すると狭い。よって、これらの道路35E、35F、35Gは、車両10が通過できる道路幅を有しているものの、道路35F等を車両10が通過することは他の車両と接触する等のリスクを伴う。
【0067】
道路35Aを北に向かって走行する車両10が交差点34に差し掛かる際に、道路工事が行われている等の理由により、道路35A以外の道路に進行しなければならない場合、乗員11は、道路35Aから分岐する他の道路を選択しなければならない。ここでは、車両10が走行可能な道路として、道路35E、35F、35Gが図示されている。しかしながら、上記したように、自動運転状態から手動運転状態に移行するには数秒間の引き継ぎ時間が要される。更には、図4(B)に示したように、自動運転状態ではリラックスポジションとされているシート20の上面に横臥している。よって、乗員11が咄嗟に車両10が進行するべき道路を選択することは容易ではない。
【0068】
本実施形態では、走行する道路の選択を、乗員11の手の直近に配置された移動指示装置31および進行方向表示装置18を用いて行うことができる。
【0069】
具体的には、ステップS12で、車両演算指示装置14は、車両10が進行することが可能な複数の道路(候補道路)を、進行方向表示装置18に表示する。具体的には、図6に示すように、上記した構成の各道路を、センターコンソール25の上面前方側に配設された進行方向表示装置18に表示する。
【0070】
なお、ここでは、センターコンソール25の上面前方に進行方向表示装置18を配置し、センターコンソール25の上面後方に指示装置載置部32を配置しているが、進行方向表示装置18と指示装置載置部32とを重畳して配設することもできる。この場合は、移動指示装置31を中心として、その周辺部に、上記した各道路が表示される。
【0071】
更に、本ステップに於いて、車両演算指示装置14は、車両10の進行方向直前に進行方向の候補となる複数の道路35E等が存在していることを、乗員11に報知するようにしても良い。具体的な報知としては、スピーカからの発音、ディスプレイに所定される文字や模様、照明からの発光等を採用することができる。この報知を行うことにより、自動運転状態であっても、乗員11は、自らが進行方向を選択しなければならない状況であることを自覚することができる。
【0072】
また、本ステップでは、上記した報知に応じて乗員11が移動指示装置31を取り出す。これにより、移動指示装置31が操作可能な状態となり、指示装置載置部32の上面で移動指示装置31を移動させることで、車両10が進行するべき道路35を選択することができる。
【0073】
ここで、図7(A)を参照して、進行方向表示装置18に於ける道路35E等の表示は、その道路35E等の優先度に応じて変化させることができる。一般に、広い道路の方が車両10の通行に適しており安全性が高い。よって、道路35G、35E、35Fの順番で道路が広い場合、車両演算指示装置14は、優先順位を、道路35G、35E、35Fの順番で高くする。そして、進行方向表示装置18は、この優先順位に応じて、道路35G、35E、35Fを、色を異ならせて表示する。即ち、表示態様を異ならせる。ここでは、優先度が最も高い道路35Gを最も明るく表示し、次に優先度が高い道路35Eを若干暗く表示し、最も優先度が低い道路35Fを最も暗く表示している。ここで、優先順位に基づく表示態様の変更としては、他の態様を採用することもでき、色彩を異ならせる、点滅させる、所定のマークを付与して表示する等を採用することもできる。
【0074】
ステップS13では、次に、乗員11が移動指示装置31を操作することで、車両10が進行するべき方向を選択する。具体的には、乗員11は、進行方向表示装置18、指示装置載置部32および移動指示装置31を一つの視界に収めている。よって、乗員11は、進行方向表示装置18を見ることで、前方に車両10が進行することができる複数の道路35E等が存在すること、道路35E等の位置および形状、道路35E等の優先順位等を視覚的に確認することができる。更に、乗員11は、視線を車両前方に移動せずとも、道路35E、35G、35Fに関する各情報を確認しながら、指示装置載置部32の上面で移動指示装置31をスライドさせることで、道路選択を行うことができる。よって、車両10が進行する道路を選択する際に、乗員11は車両10の進行方向を視認するべく視線を車両前方等に変動させる必要が無いので、道路選択を安全且つ簡易に行うことができる。
【0075】
ここで、指示装置載置部32の上面における移動指示装置31の移動方向と、道路35E等を選択する方向とは対応づけられる。具体的には、乗員11が、指示装置載置部32の上面において移動指示装置31を右方にスライド移動させると、車両演算指示装置14は、地図上で右方に対応する西側に存在する道路35Gを選択する。一方、乗員11が、指示装置載置部32の上面において移動指示装置31を左側前方にスライド移動させると、車両演算指示装置14は、地図上で左側前方に対応する北東側に存在する道路35Fを選択する。
【0076】
ここで、図8を参照して、移動指示装置31を操作して進行する道路を選択する際には、移動指示装置31の移動を適度に規制する反力を発生させても良い。
【0077】
具体的には、乗員11が道路選択を行う際には、例えば、前方左側を向く操作力F1を移動指示装置31に与える。ここで仮に、単に移動指示装置31がスライドすることを許容すると、移動指示装置31の移動量や移動速度を制限することができず、乗員11の意図する道路選択を行うことが難しいことが考えられる。
【0078】
本実施形態では、車両演算指示装置14の指示に基づいて、反力発生部26が、操作力F1に対抗する反力F2を移動指示装置31に付与している。前方左側を向く操作力F1に対して、反力F2は後方右側を向いている。操作力F1と反力F2とは、作用する方向は逆であり、その大きさは略同一である。このように、反力F2を移動指示装置31に付与することで、移動指示装置31の過度な移動を抑制することができる。更に、移動指示装置31から乗員11がフィードバックを得ることができ、進行するべき道路選択を行う際の安心感を向上することができる。
【0079】
反力発生部26が発生する反力F2は、移動指示装置31の移動量に関わらず一定でも良いし、移動指示装置31の移動量に応じて大きくすることもできる。移動指示装置31の移動量に応じて反力F2を大きくすることで、乗員11はより大きなフィードバックを得ることができ、安心感等が向上する効果を顕著にすることができる。
【0080】
更に、反力発生部26が発生する反力F2の大きさは、上記した優先順位に基づいて異ならせることもできる。例えば、優先順位が高い道路35Gを乗員11が選択した場合は反力F2を小さくし、優先順位が低い道路35Fを乗員11が選択した場合は反力F2を大きくするようにしても良い。このようにすることで、乗員11は優先順位が高い道路35Gを選択しやすくなり、安全性の高い進行を行うことが期待される。
【0081】
ステップS14では、ステップS13で暫定的な道路選択状況を進行方向表示装置18に表示する。図7(B)では、道路35Gが暫定的に選択された場合を示している。ここでは、暫定的に選択された道路35Gのみが着色して表示され、他の道路35E、35Fは白色で表示されている。即ち、本ステップでも、暫定的に選択されている道路35Gと、選択されていない他の道路35E、35Fとで、表示態様を変更している。このように着色して表示することで、乗員11は自らが進行するべき道路として、道路35Gを選択していることを認識することが出来る。
【0082】
ステップS15では、上記した道路選択を決定する。具体的には、乗員11は、上記したように進行方向表示装置18で自らが道路35Gを暫定に選択していることを視認し、車両10が進行する方向として道路35Gが適切と判断したら、道路選択を決定する。道路選択を決定する具体的方法としては、例えば、図8を参照して、移動指示装置31の前端側に形成された釦である進路方向決定装置36を押下することが考えられる。乗員11がこのような決定作業を行ったら、車両演算指示装置14は、道路35Gを車両10が進行するべき方向であると決定する。
【0083】
上記のように、乗員11が車両10の進行方向を決定することで、乗員11はシート20の直近に配置された進行方向表示装置18を目視確認しつつ、移動指示装置31をスライド操作することで、車両10の進行方向を選択することができる。よって、図3(B)に示すリラックスポジションとされているシート20に横臥した状態のまま、視線を車両前方側に移動させること無く、車両10の進行するべき道路を容易に選択でき、更にその選択を決定することができる。
【0084】
更に、マウス型装置である移動指示装置31で暫定的に道路35Gを選択した後に、進路方向決定装置36を押下することで、その道路選択を決定することから、乗員11が道路選択を誤ることを抑止することができる。
【0085】
ここで、上記した優先順位に基づいて、進路方向決定装置36から発生する反力F2を異ならせても良い。例えば、優先順位が高い道路35Gを乗員11が選択した場合は、乗員11が進路方向決定装置36を押下した際に、進路方向決定装置36から発生する反力F2を小さくする。一方、優先順位が低い道路35Fを乗員11が選択した場合は、乗員11が進路方向決定装置36を押下した際に、進路方向決定装置36から発生する反力F2を大きくする。このようにすることで、乗員11は、進路方向決定装置36を押下した際に、進路方向決定装置36から与えられる反力F2が大きいことで、自らが選択した道路の推奨度合いやリスクの大きさを認知することができる。
【0086】
ステップS16では、車両演算指示装置14は、上記決定に基づいて車両10の操舵および加減速を行う。そして、図7(B)を参照し、車両10を選択した道路35Gに進行させる。また、本ステップでは、車両演算指示装置14により車両10を自動運転している。
【0087】
ステップS17では、車両10が自動運転状態で道路35Gを進行しており、道路選択を行う必要は既に無い。よって、車両演算指示装置14は、進行方向表示装置18に地図情報を表示させない。更に、移動指示装置31の機能を無効にする。そして、乗員11は、移動指示装置31を収納部28に収納する。その後、車両10はステップS10に戻り、自動運転状態を続行する。
【0088】
以上、本発明の実施形態を示したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0089】
例えば、図2(A)を参照して、上記実施形態では指示装置載置部32および進行方向表示装置18をセンターコンソール25の上面としたが、車両10の他の部位を指示装置載置部32および進行方向表示装置18とすることもできる。具体的には、シート20の側面に配設される図示しないアームレストの上面に指示装置載置部32および進行方向表示装置18を形成することもできる。更には、インスツルメントパネルに、指示装置載置部32および進行方向表示装置18を形成することもできる。
【0090】
更に、上記した実施形態では、車両10は手動運転状態と自動運転状態とを切り替え可能であったが、専ら自動運転状態で走行する車両10に対して本実施形態の車両制御装置30を適用することもできる。
【0091】
更に、図5では、車両10が進行可能な道路として分岐路を例示したが、他の形態の道路、例えば左右右折路、隣接レーンを選択する際に、上記した車両制御装置30および車両制御方法を用いることができる。
【符号の説明】
【0092】
10 車両
11 乗員
12 入力装置
13 車外環境認識装置
14 車両演算指示装置
15 制動装置
16 車両駆動装置
17 操舵装置
18 進行方向表示装置
19 シート駆動装置
20 シート
21 シートクッション
22 シートバック
23 ヘッドレスト
24 ステアリングホイール
25 センターコンソール
26 反力発生部
28 収納部
30 車両制御装置
31 移動指示装置
32 指示装置載置部
33 視界
34 交差点
35、35A、35B、35E、35F、35G 道路
36 進路方向決定装置
F1 操作力
F2 反力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8