(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】貼付用ラベル、ラベル貼付方法、トルクセンサシャフトの製造方法および同シャフトの製造設備
(51)【国際特許分類】
C09J 7/20 20180101AFI20220301BHJP
G01L 3/10 20060101ALI20220301BHJP
B65C 9/26 20060101ALI20220301BHJP
B24C 1/04 20060101ALI20220301BHJP
G09F 3/02 20060101ALI20220301BHJP
G09F 3/00 20060101ALI20220301BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C09J7/20
G01L3/10 301D
B65C9/26
B24C1/04 F
G09F3/02 M
G09F3/02 B
G09F3/00 Q
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2017212302
(22)【出願日】2017-11-01
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107825
【氏名又は名称】細見 吉生
(72)【発明者】
【氏名】小牧 正博
(72)【発明者】
【氏名】蔦野 広宣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 巧
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-134174(JP,A)
【文献】国際公開第2007/034579(WO,A1)
【文献】実開昭61-172144(JP,U)
【文献】特開2003-159898(JP,A)
【文献】特開平08-188751(JP,A)
【文献】国際公開第2010/013399(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/173261(WO,A1)
【文献】特開2017-177029(JP,A)
【文献】特開2015-196792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
G09F 3/00
G01L 3/10
B65C 9/26
B24C 1/04
G09F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に粘着性をもちワークの表面に貼り付けられるラベル本体と当該下面に重ねられた台紙とを有し、そのラベル本体が、上記台紙から剥離され、吸着装置で吸着されて移動させられ、ワークの表面に貼り付けられるようにされた貼付用ラベルであって、
上記のラベル本体が、表裏間に通じる穴があいたものであり、上記の台紙を下面に重ねているとともに、上記の穴を有しない表層フィルムを上面に重ね粘着させたものであること、
そのラベル本体が、ショットブラストされるワークの表面の一部を覆うマスキングシートであって上記ショットブラストにより除去されないものであり、上記の穴として、平行に延びた複数個の筋状の打抜き穴を有していること、
および、上記の表層フィルムは、上記のラベル本体が上記台紙から剥離され吸着装置で吸着されてワーク表面に貼り付けられるまで移動させられる間、上記の穴を含むラベル本体の形状を保持できる強度をもつとともに、上記ショットブラストを受けて消散するものであること
を特徴とする貼付用ラベル。
【請求項2】
上記のラベル本体が厚さ0.1~1.0mmのゴム製または樹脂製のものであり、上記の表層フィルムが厚さ5~50μmのPP製であり、上記の台紙が、上記剥離を可能にするコーティングを有する厚さ50~100μmのPET製であることを特徴とする
請求項1に記載の貼付用ラベル。
【請求項3】
上記の台紙が、上記のラベル本体と同じ穴があいたものであって、厚さ5~50μmのPP製の裏張補強フィルムを下面に重ねて粘着させたものであることを特徴とする
請求項2に記載の貼付用ラベル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の貼付用ラベルから上記台紙を剥離して取り除き、上記表層フィルムを上面に有するラベル本体を、当該表層フィルムの側から吸着装置にて吸着し、吸着した状態で当該吸着装置とともに上記ワークの表面上に移動させることにより当該ワークの表面に貼り付けることを特徴とするラベル貼付方法。
【請求項5】
上記ワークが支持機にて回転可能に支持された軸状のものであり、ラベル本体を貼り付けられる上記表面が円柱面であって、
上記吸着装置が上記ラベル本体を平面状に保って吸着し、そのラベル本体の一部を上記ワークの上記円柱面に押し当て、
ラベル本体の一部が上記ワークの表面に押し当てられたとき、上記支持機が、上記ワークを支持した状態で、上記円柱面の軸心と直角で上記ラベル本体の平面と平行な方向へ移動するとともに、上記円柱面が上記ラベル本体に対して滑ることなく転がるように上記ワークを回転させる
こと、
および、上記支持機が、上記ワークの上記円柱面と同一軸心上に同一径の別の円柱面を有していて、ラベル本体の一部が上記ワークの表面に押し当てられるとき上記別の円柱面が固定部材に接触し、上記支持機が上記移動をする間、上記固定部材に対して上記別の円柱面が転がることにより、回転駆動源を用いずに、上記支持機が上記ワークとともに回転すること
を特徴とする
請求項4に記載したラベル貼付方法。
【請求項6】
上記の貼付用ラベルとして、
上記のラベル本体が、ショットブラストされるワークの表面の一部を覆って保護するマスキングシートであり、上記の表層フィルムが、上記ショットブラストによって除去されるものであるもの
を使用することを特徴とする
請求項4または5に記載したラベル貼付方法。
【請求項7】
上記ワークとして、円柱面上に金属ガラス皮膜が形成された軸状のものを使用し、
上記の貼付用ラベルとして、ラベル本体が、平行に延びた複数個の筋状の打抜き穴を有するものを使用し、
請求項6に記載したラベル貼付方法によって、上記ワークの上記円柱面に上記ラベル本体を貼り付けたのち、
ラベル本体が貼り付けられた上記円柱面に対してショットブラストを行うことにより、上記金属ガラス皮膜を、平行に延びた複数本の筋状パターンに形成することを特徴とするトルクセンサシャフトの製造方法。
【請求項8】
金属粉末を含む火炎を溶射ガンより噴射して金属粉末を溶融させ、当該火炎を、それがワークの表面に達する前より外側からの冷却ガスにて冷却する方式の溶射を、上記ワークにおける上記円柱面に対し行うことによって上記金属ガラス皮膜を形成し、
その円柱面に上記ラベル本体を貼り付けたのち、上記円柱面に対してショットブラストを行うことを特徴とする
請求項7に記載したトルクセンサシャフトの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載したトルクセンサシャフトの製造方法を行うために、
金属粉末を含む火炎を溶射ガンより噴射して金属粉末を溶融させ、当該火炎を、それがワークの表面に達する前より外側からの冷却ガスにて冷却する方式の溶射を行う溶射装置と、そのワークの上記円柱面に上記ラベル本体を貼り付ける装置と、上記ラベル本体を貼り付けた上記円柱面に対してショットブラストを行う装置とが、その順序で各装置間に上記ワークを移動させる搬送装置によって接続されている
ことを特徴とするトルクセンサシャフトの製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴があいたラベル本体を有していてワークの表面に貼り付けられる貼付用ラベル、そのラベル本体をワークの表面に貼り付けるラベル貼付方法、その貼付方法を利用してトルクセンサシャフトを製造する方法および製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁歪部を有するシャフトを用いてトルクを検出するトルクセンサについて、一般的な構造を
図13に示す。トルクを受けるシャフト(トルクセンサシャフト)1”が軸受6を介してハウジング7に支持されており、そのシャフト1”の一部表面において全周(360°)に磁歪部1V・1Wが形成されている。また、ハウジング7の内側で、磁歪部1V・1Wの各外周に近い位置にコイルX・Yが配置されている。磁歪部1V・1Wとしては、シャフト1”の周面に磁性材料が、図示のとおり軸方向に対して互いに逆向きに傾斜した螺旋状(いわゆるシェブロン状)の縞模様に形成される(つまり、磁性体の皮膜や突出部を螺旋状の複数の線として形成される)のが一般的である。ハウジング7には、図示のようにアンプ基板8や信号線用のコネクタ9なども付設される。
シャフト1”にトルクが作用すると、磁歪部1V・1Wに引張応力と圧縮応力とがそれぞれ発生し、その結果、相反する磁歪効果によって各磁歪部1V・1Wの透磁率がそれぞれ増加・減少する。この透磁率の変化に基づいてコイルX・Yに誘導起電力が発生するため、直流変換や両者の差動増幅を行うことにより、トルクの大きさに比例した電圧出力が得られるわけである。
【0003】
トルクセンサの上記シャフトの表面に形成される磁歪部が金属ガラス(アモルファス合金)の皮膜であると、当該皮膜が高透磁率で高磁歪であることに基づいてトルクの検出感度が高くなる。また、金属ガラス皮膜を、上記シャフトの表面に簡単かつ迅速に、しかもシャフトとの密着性が高くなるように形成するには、火炎等を急速冷却する方式の溶射法によるのが好ましい。
【0004】
特許文献1には、トルクセンサシャフトとする軸状のワークの表面に、金属ガラス皮膜を含む磁歪部を所定の模様に形成することによりトルクセンサシャフトを製造する方法および設備が記載されている。搬送パレット上に回転可能に取り付けた軸状ワークを、予熱したうえで上記した急冷方式の溶射装置の正面へ移動させ、そこでワークの表面に溶射により金属ガラス皮膜を形成する。その後、マスキング装置によって、上記した縞模様に対応するパターンに形成された被覆材を当該皮膜上に付着させ、そのうえで、当該被覆材付きの金属ガラス皮膜へ向けてショットブラストを行う。ショットブラストによって、被覆材で覆われた部分にのみ金属ガラス皮膜が残存し、覆われていない部分の皮膜が消失する結果、縞模様(たとえばシェブロン状)の金属ガラス皮膜が形成されて上記の磁歪部となる。
【0005】
上記のようにワークの表面に被覆部を形成するマスキング装置として、特許文献1の装置では、被覆部とするゴムや樹脂を半固形体の状態でインクのように転写する装置が使用されている。すなわち、インクカキアゲロールや、周面上に凹部が刻印されたグラビア版ロール、グラビア版ロールに使用するスクレーパ、さらいはワーク表面に接触させる転写ロール等を利用して、被覆材を、上記縞模様に対応するパターンになるようワークの表面に転写するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したマスキング装置を用いて金属ガラス皮膜をマスキングしたうえショットブラスト装置でショットブラストすると、上述のとおり金属ガラス皮膜でできた縞模様の磁歪部を形成することができる。しかし、当該装置を用いて上記のような方法でマスキングをする場合、金属ガラス皮膜の上記縞模様を、形状精度の高いシャープなパターンをもつものとして形成することが難しい。半固形体のゴム等を被覆材とする場合、被覆パターンの外縁部(境界部)においては被覆材の厚さが均一でなく、外寄りの部分(境界付近)ほど薄いため、マスキングの境界が明確でなくなるからである。金属ガラス皮膜の形状精度を十分に高めることができなければ、小型のトルクセンサシャフト等においてトルク検出の精度を最大限に高めることが難しくなり、また、性能にばらつきが生じがちになる。
【0008】
マスキングの境界を明瞭にしたシャープなパターンとなるようワーク表面に被覆材を設けるためには、半固形体のゴム等を転写するのではなく、所定の模様に形成された一定厚さのラベルを貼付するのが好ましい。トルクセンサシャフトの磁歪部の形成のためにラベルを使用するとなると、当然ながら上記のように縞模様(シェブロン状など)の、つまり複数の穴があいた粘着剤付きのラベルを使用することとなる。
【0009】
ただし、穴があいたラベルをマスキングシートとしてワークに貼付することも、実は容易でない。貼付用ラベルは、一般に、台紙から剥がしたラベル本体をワークの位置まで運んだうえワークの表面に押し付けることによって貼り付けるが、台紙から剥がした後の取り扱いの間に縞模様等の形状が崩れやすいからである。また、取り扱いの自動化のためにラベルを負圧吸引手段で吸着することが一般に行われるが、穴のあいたラベルは、台紙を剥がした後はそのような吸着が困難だからでもある。
穴のあいたラベルをワークの表面に貼り付けるに当たってのこのような課題は、トルクセンサシャフトの製造に関してショットブラスト用のマスキングをする場合のみに存在するのではない。台紙を剥離・除去した状態のラベル本体を、吸着しながら移動させるという過程を含む多くの場合に、当該ラベル本体の円滑な貼付を妨げる原因となっている。
【0010】
本発明は、上記した課題を解決し、穴のあいたラベルをワークに貼り付ける過程を自動機械等によって円滑かつ正確に実施することを可能にする貼付用ラベルやその貼付方法、さらには、そのラベルをショットブラスト用のマスキングシートとして使用することによるトルクセンサシャフトの製造方法・製造設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の貼付用ラベルは、下面に粘着性をもちワークの表面に貼り付けられるラベル本体と当該下面に重ねられた台紙とを有し、そのラベル本体が、上記台紙から剥離され、吸着装置で吸着されて移動させられ、ワークの表面に貼り付けられるものとして使用される貼付用ラベルであって、上記のラベル本体が、
・ 表裏間に通じる穴があいたものであり、上記の台紙(穴があいていても開いていなくてもよい)を下面に重ねているとともに、
・ 上記の穴を有しない表層フィルムを上面に重ね粘着させたものであることを特徴とする。
図1に、このような貼付用ラベルの一例を示している。
図1において符号101・102・103が、それぞれラベル本体、台紙、表層フィルムである。なお、上記における「上面」および「下面」は、ラベル本体における2面のそれぞれを区別するための便宜上の表示であり、
図1(b)における上・下をそれぞれ「上面」・「下面」と表している(「上面」をつねに鉛直上方にして使用されるわけではない)。
発明によるこのような貼付用ラベルは、ワークの表面に貼り付けるラベル本体が表裏間に通じる穴を有するものであるため、貼り付けのために台紙を剥離した後は、通常なら変形してその穴の形が崩れ、形状や寸法の精度が低下することが多い。ラベル本体を吸着装置(負圧吸引手段)で吸着して取り扱うとしても、穴があいているために本来なら円滑な吸着が難しい。ところが、本発明では、ラベル本体が、上記の穴を有しない表層フィルムを上面に重ね粘着させたものであるため、そのような不都合が生じない。表層フィルムに適度な強度(剛性、腰の強さ)をもたせておくと、台紙を剥離させた後もラベル本体の形が崩れず、形状や寸法の精度が維持される。また、表層フィルムを穴を有しないものとする以上、吸着装置によってラベル本体をスムーズに吸着し、取り扱うことができる。
【0012】
上記の貼付用ラベルについては、とくに、
・ 上記のラベル本体が、ショットブラストされるワークの表面の一部を覆うマスキングシートであって上記ショットブラストにより除去されない(消散しない)ものであり、上記の穴として、平行に延びた複数個の筋状の打抜き穴(プレスで打ち抜いた穴)を有していて、
・ 上記の表層フィルムが、ワークの表面に貼り付けられる前の上記ラベル本体に上記の穴の形状を保持させることができ、かつ、上記ショットブラストによって除去されるものであるとよい。
そのような貼付用ラベルは、平行に延びた複数個の筋状の穴をショット領域とすべくワークの表面に貼り付けるショットブラスト用マスキングシートとして好ましい。理由はつぎのとおりである。
上記のような複数個の筋状の穴を有するラベル本体は、筋状の穴とラベル本体のやはり筋状の部材(肉部分)とが交互に存在していることから、本来なら穴の形がきわめて変形しやすく、形状・寸法の精度が維持され難い。しかし、上記のとおり表層フィルムがラベル本体に当該穴の形状を保持させ得るものであるなら、そのような不都合が防止される。また、その表層フィルムがショットブラストによって除去されるものであるなら、ショットブラストの開始前に同フィルムを取り除く必要がない。そのままショットブラストを行うと、ラベル本体の穴の内側領域が露出する一方、ラベル本体の肉部分に被覆された領域が保護されるため、上記複数個の筋状の穴を正確にショット領域とすることができる。しかも、それらの穴がプレスで形成された打抜き穴であると、その穴の周縁部分においても厚さが均一であるため、マスキングの境界を明確に定めることができる。
【0013】
上記のラベル本体が厚さ0.1~1.0mmのゴム製または樹脂製のものであり、上記の表層フィルムが厚さ5~50μmのPP製であり、上記の台紙が、上記剥離を可能にするコーティングを有する厚さ50~100μmのPET製であるととくに好ましい。
ラベル本体から円滑に台紙を剥離し、吸着装置によって無理なくラベル本体を吸着し、穴のあいた形状を崩さないように扱い、円柱形など種々の形状を有するワークの表面に確実にラベル本体を貼り付けるためには、ラベル本体と表層フィルム、台紙のそれぞれの厚さや材質が適切なものである必要がある。いずれかが厚すぎたり硬すぎたりしても、逆に薄すぎたり軟らかすぎたりしても、円滑な取扱いはできない。また、ショットブラストによってラベル本体は除去されず、表層フィルムが除去されることも必要である。上記した材料と厚さとの組み合わせは、そうした各操作の円滑な実施を可能にするものである。
【0014】
上記の台紙が、上記のラベル本体と同じ穴(同じ形状・寸法で表裏間に通じるもの)があいたものであって、厚さ5~50μmのPP製の裏張補強フィルムを下面に重ねて粘着させたものであるのも好ましい。裏張補強フィルムは、
図1の例では符号104で示されている。
貼付用ラベルは、台紙とラベル本体とに同じ穴があいているものの方が一般に製造容易である。ラベル本体に穴を開けるとき、打ち抜きによって同時に台紙にも同じ穴をあけると、ラベル本体への穴を簡単かつ正確に形成できるからである。しかし、台紙にも穴があいていると、ラベル本体から剥がされた後の台紙が、変形したり皺になったりしやすいため、巻き取り等によって回収することが難しくなりがちである。その点、台紙に上記のような裏張補強フィルムが重ねられていると、ラベル本体から剥がされた後も台紙が変形等しがたく、したがってその後の取り扱いを円滑化しやすい。
【0015】
発明によるラベル貼付方法は、上記の貼付用ラベルから上記台紙を剥離して取り除き、上記表層フィルムを上面に有するラベル本体を、当該表層フィルムの側から吸着装置にて吸着し、吸着した状態で当該吸着装置とともに上記ワークの表面上に移動させることにより当該表面に貼り付けることを特徴とする。
そのような方法をとると、ラベル本体を円滑に取り扱ってワークの表面に能率的に貼り付けることができる。ラベル本体には穴があいているものの、穴を有しない表層フィルムが上面に重ねられているため、吸着装置で無理なく吸着することができるうえ、台紙から分離した後も穴の形状等が崩れないまま移動させられてワーク表面に貼り付けられるからである。
なお、
図5および
図6には、上記したラベル貼付方法を実施するための装置の一例を示している。同図中、符号61は台紙102からラベル本体101を剥離するための部分、符号62はラベル本体101を吸着し、吸着した状態でワーク1の表面にまで移動させ貼り付けるための部分である。
【0016】
上記の貼付方法は、とくに、
1) 上記ワークが支持機にて回転可能に支持された軸状のものであり、ラベル本体を貼り付けられる上記表面が円柱面である場合に、
2) 上記吸着装置が上記ラベル本体を平面状に保って吸着し、そのラベル本体の一部を上記ワークの上記円柱面に押し当て、
3) ラベル本体の一部が上記ワークの表面(円柱面)に押し当てられたとき、上記支持機が、上記ワークを支持した状態で、上記円柱面の軸心と直角で上記ラベル本体の平面と平行な方向へ移動する(支持機に対してラベル本体が移動する場合をも含む)とともに、上記円柱面が上記ラベル本体に対して滑ることなく転がるように上記ワークを回転させる――のが有意義である。
図5に示す装置においても、ワークが軸状であってラベル本体の貼り付け面が円柱面である。吸着装置がラベル本体を吸着して一部をその円柱面に押し当てると、ワークの支持機が
図5の紙面と直角な方向へ移動するとともにワークを上記のように回転させ、もって上記円柱面にラベル本体を貼り付ける。
上記1)のようにワークが回転可能な軸状のものでありラベル本体の貼付面が円柱面であることは少なくない。そのような場合、ラベル本体を確実かつ円滑に貼り付けるには、上記2)・3)の手順をとるのがよい。もし、吸着装置がラベル本体を上記ワークの円柱面と同じ曲面に変形させて吸着するとしたら、吸着させること自体が容易でないうえ、ワークの表面に貼り付けるとき面間に空気をはさんでしまう恐れがある。また、平面状に保ったラベル本体の一部をワークの表面に押し当てた後に、吸着装置等がラベル本体を曲げて円柱面に貼り付けるとすると、ラベル本体を曲げるための仕組みが複雑になりコストを要する。しかし、上記2)・3)の手順をとるなら、そのような不都合が生じないうえ、簡単な動作で確実かつ円滑にラベル本体を貼り付けることができる。
【0017】
上記の貼付方法においては、上記支持機が、上記ワークの上記円柱面と同一軸心上に同一径(ラベル本体の厚さを考慮するのがよい)の別の円柱面を有していて、上記2)によりラベル本体の一部が上記ワークの表面に押し当てられるとき、上記別の円柱面が固定部材に接触し、上記支持機が上記3)のように移動する間、上記固定部材に対し上記別の円柱面が転がるのに連れて上記支持機が上記ワークとともに回転する――という方法をとるのが好ましい。
上記した別の円柱面と、それに押し当てる固定部材とは、
図5・
図6においてそれぞれ符号1x・68として例示している。上記二つの円柱面が同一軸心上にある同一径のものであるなら、別の円柱面が上記固定部材上を転がることによるワークの回転速度は適切なものとなり、ラベル本体の貼り付け面である上記円柱面がラベル本体に対して滑ることなく転がることになる。
図5~
図7には、そのための構成と手順とを例示している。
上記3)のように支持機が移動の間にワークを回転させるためには、支持機にモータ等を配備し、それにより適切な回転速度でワークを駆動するのもよい。しかし、上記のように支持機に別の円柱面をもたせ、それに固定部材を押し当てることとすれば、支持機を上記のとおり移動させる(または逆にラベル本体を固定部材とともに移動させる)だけでワークを適切な速度で回転させることができる。その場合、特別な回転駆動源を必要とせず回転速度を制御する必要もない。
【0018】
上記の貼付方法については、貼付用ラベルとして、
・ 上記のラベル本体が、ショットブラストされるワークの表面の一部を覆って保護するマスキングシートであり、
・ 上記の表層フィルムが、上記ショットブラストによって除去されるものであるもの
を使用するのがよい。
そのような貼付用ラベルを用いて上記の貼付方法を行うと、ワークの表面に、ショットブラストのためのマスキングを円滑に実施することができる。
【0019】
トルクセンサシャフトを製造するにあたっては、
・ 上記ワークとして、円柱面上に金属ガラス皮膜が形成された軸状のものを使用し、
・ 上記の貼付用ラベルとして、ラベル本体が、平行に延びた複数個の筋状の打抜き穴を有するものを使用し、
・ 上記したラベル貼付方法によって、上記ワークの上記円柱面に上記ラベル本体を貼り付けたのち、
・ ラベル本体が貼り付けられた上記円柱面に対してショットブラストを行うことにより、上記金属ガラス皮膜を、平行に延びた複数本の筋状パターンに形成するとよい。
そのようにすると、貼り付けた上記ラベル本体がショットブラストの際のマスキングシートとなり、筋状の(いわゆるシェブロン状の縞模様等のパターンを有する)金属ガラス皮膜をもつ好ましいトルクセンサシャフトを製造することができる。
【0020】
トルクセンサシャフトの製造は、とくに、
・ 金属粉末を含む火炎を溶射ガンより噴射して金属粉末を溶融させ、当該火炎を、それがワークの表面に達する前より外側からの冷却ガスにて冷却する方式の溶射を、上記ワークにおける上記円柱面に対し行うことによって上記金属ガラス皮膜を形成し、
・ 皮膜が形成されたその円柱面に上記ラベル本体を貼り付けたのち、上記円柱面に対してショットブラストを行う
こととするのが好ましい。上記のように冷却ガスを用いる火炎急冷方式の溶射を行う装置の一例を、
図11・
図12に示している。
適切な成分系の金属粉末を原料として上記のとおり冷却ガスを用いる火炎急冷方式の溶射を、金属等でできた軸状ワークの円柱面上に行うと、その表面に金属ガラス皮膜を直接に付着形成することができる。そうした表面に上記のとおりショットブラストを行って金属ガラス皮膜を縞模様にすると、シャフトと金属ガラス皮膜との一体性が高いことから、トルク検知特性の高いトルクセンサシャフトを製造することができる。
【0021】
上記したトルクセンサシャフトの製造方法を行うには、
・ 金属粉末を含む火炎を溶射ガンより噴射して金属粉末を溶融させ、当該火炎を、それがワークの表面に達する前より外側からの冷却ガスにて冷却する方式の溶射を行う溶射装置(
図11・
図12を参照)と、
・ 溶射皮膜が形成されたそのワークの表面に上記ラベル本体を貼り付ける装置(
図5・
図6を参照)と、
・ 上記ラベル本体を貼り付けた上記円柱面に対してショットブラストを行う装置(
図10を参照)とを有し、
・ それらの装置が、その順序で各装置間に上記ワークを移動させる搬送装置(
図9を参照)によって接続されている
という構成の製造設備を用いるのが好ましい。製造設備の全体的な配置例を
図8に示している。
上記のような設備なら、ワークの表面に溶射によって金属ガラス皮膜を直接に形成し、マスキングシートとするラベル本体を当該表面に貼り付け、そのうえでショットブラストして上記皮膜を縞模様にしたトルクセンサシャフトの製造を、上記搬送装置でワークを移動させることによって順次に能率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
発明の貼付用ラベルは、穴のあいたラベル本体をワークに貼り付ける作業を自動機械等によって円滑かつ正確に実施することを可能にする。ラベル本体や表層フィルム等の厚さと材質を適切に設定すると、ショットブラスト用のマスキングシートとして使用するにも適している。また、台紙の下面に裏張補強フィルムを重ねて粘着させると、ラベル本体から剥がされた後の台紙が変形等しがたいため、台紙の取り扱いをも円滑化できる。
発明のラベル貼付方法によれば、穴のあいたラベル本体を、形状等が崩れないように吸着装置等で円滑に取り扱ってワークの表面に正確かつ能率的に貼り付けることができる。ワークが軸状のものである場合は、ラベル本体の一部をワークの円柱面上に押し当てたうえ、円柱面がラベル本体に対して滑ることなく転がるようにワークを移動・回転させることにより、簡単な動作で円滑にラベル本体を当該円柱面に貼り付けることができる。その場合、ワークを保持してともに回転する支持機にワークの上記円柱面と同一径の別の円柱面を設けておき、ワークおよび支持機を移動させるときその円柱面を固定部材に対して転がすようにすれば、特別な回転駆動源や制御手段が必要でなくなる。発明の貼付方法を、ショットブラスト用のマスキングシートの貼り付けに使用することもできる。
発明によるトルクセンサシャフトの製造方法では、軸状ワークに貼り付けるラベル本体がショットブラスト用の適切なマスキングシートとなり、軸表面に筋状に金属ガラス皮膜を有する好ましいトルクセンサシャフトを製造することができる。とくに、適切な成分系の金属粉末を原料として火炎急冷方式の溶射をワークの円柱面上に行うなら、トルク検知特性の高いトルクセンサシャフトを能率的に製造することができる。
発明によるトルクセンサシャフトの製造設備を用いると、ワークの表面に溶射、マスキング、ショットブラスト等を順次に能率的に行って、トルクセンサシャフトを円滑に量産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】発明の実施例である貼付用ラベル100を示す図であって、
図1(a)は平面図、同(b)はその横断面図である。
【
図2】コイル状に巻かれた状態の貼付用ラベル100を示す外観図である。
【
図3】貼付用ラベル100の製造手順を示す概念図である。
【
図4】
図4(a)~(d)のそれぞれは、軸状のワーク1をトルクセンサシャフト1’にする過程を示す模式図である。
【
図5】ワーク1に、ショットブラスト用のマスキングシートであるラベル本体101を貼り付ける作業を行うマスキング装置60等を示す側面図である。
【
図6】
図5のマスキング装置60の要部とワーク1や支持機A2等の詳細を示す拡大側面図である。
【
図7】マスキング装置60等の動作手順を示すフローチャートである。
【
図8】トルクセンサシャフトの製造設備につき全体配置を示す平面図である。
【
図9】ワーク1用の搬送パレットAと搬送装置Bとを示す図で、
図2(a)は正面図、同(b)は側面図、同(c)は、搬送パレットAと搬送装置Bとに設けたマグネットカップリングにおける磁極の配置図である。
【
図10】ショットブラスト装置30・70を示す側面図である。
【
図12】溶射装置40のうち溶射ガン47を示す詳細図である。
【
図13】トルクセンサの一般的な構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の一実施例を以下に示す。
図1は、貼付用ラベル100の平面図(
図1(a))および横断面図(同(b))である。この貼付用ラベル100は、ショットブラスト用のマスキングシートとして使用するラベル本体101が台紙102の上に重ねられたものである。ラベル本体101は、トルクセンサシャフト(
図13参照)の製造過程で、後述するように軸状のワーク1(
図4等参照)に貼り付けてマスキングシートとするもので、貼付面すなわち
図1の下向きの面に強粘着性を有している。一方、台紙102の上面には、ラベル本体101との剥離を容易にするコーティングが施されている。
台紙102は、
図1(a)の左右の方向に帯状に連続する長尺のもので、その台紙102の片側面(
図1(b)の上向きの面)上に、長方形の外形をもつラベル本体101が、隣接のものとの間に数mmの隙間をおいて多数配置されている。ラベル本体101のそれぞれは、トルクセンサシャフトにおける磁歪部(
図13の符号1V・1W)として二方向に傾斜した縞模様の金属ガラス皮膜を形成する目的で使用することから、図示のとおり、平行に延びた複数個の筋状の穴101a(表裏間に通じる穴)を有している。シャフトの表面に巻き付けたとき互いに逆向きに傾斜した2組の螺旋状の縞模様(いわゆるシェブロンパターン)となるよう、その穴101aは、向きが90°異なる傾斜をもつものとして2列に形成されている。なお、台紙102の両サイドには、ラベル本体101の打ち抜きの際の位置決めや貼付用ラベル100の送りガイド等に使用する穴102aが等間隔で設けられている。
【0025】
トルクセンサシャフトを量産するためには、ラベル本体101を自動機械類でハンドリングし、ワーク1のマスキング対象箇所に1枚ずつ正確に貼り付ける必要がある。それには、負圧吸引する方式の吸着装置でラベル本体101を保持し移動させて対象箇所に貼り付けるのがよい。しかし、図示のラベル本体101は、複数の穴101aが接近して形成されたものであるため、台紙102から分離された後は吸着するのが難しいうえ、外形や穴101aの形状・寸法を崩さずに扱うことがきわめて難しい。
そのため、ラベル本体101には、
図1(b)のようにその上面、すなわち台紙102に重ねられた面とは逆の面に、表層フィルム103を重ねて粘着(微粘着)させている。そうすることにより、ラベル本体101は、台紙102から分離された後も、吸着装置によって容易に吸着することができるうえ、外形や穴101aの形状・寸法を維持することが可能になる。
【0026】
この例では、ラベル本体101に設けた穴101aと同じ穴が台紙102にも形成されている。ラベル本体101と台紙102とを同時に打ち抜いて穴101aを形成するからである。複数の穴が互いに接近して開いているために、台紙102も、ラベル本体101から剥がされた後は形が崩れたり破れたりしやすいため、巻き取りまたは折り畳みによって回収することが難しい場合がある。
そこで、台紙102にも、その下面(すなわちラベル本体101とは逆の側の面)に裏張補強フィルム104を重ねて粘着(微粘着)させている。これにより、ラベル本体101が分離された後の台紙102についても、変形や破損を防止でき、円滑な取り扱いを実現できる。
【0027】
ラベル本体101は、トルクセンサシャフトとするワーク1の表面上に形成した金属ガラス皮膜の一部を、ショットブラストによって除去する際のマスキングシートとして使用するものである。したがって、そのショットブラストの間に除去されないだけの強度(耐久性)や粘着強さを有する必要がある。また、ラベル本体101の上面に重ねた表層フィルム103は、ラベル本体101から分離させないまま使用することから、ショットブラストによって短時間で消散するものである必要がある。
そのような点を考慮して、この例では、貼付用ラベル100の各シート・フィルムを下記の材料により構成している。すなわち、
ラベル本体101 : 加硫ゴム(強粘着性)。厚さ0.5mm。
台紙102 : PETセパレータ。厚さ75μm。
表層フィルム103 : PP(微粘着)。厚さ20μm。
裏張補強フィルム104: PP(微粘着)。厚さ20μm。
【0028】
貼付用ラベル100の外観を
図2に示す。帯状の台紙102上に多数のラベル本体101等を並べて粘着させ、それを図示のようにロール状に巻いておく。そうしたロールから台紙102を繰り出し、繰り出した台紙102から、後述のようにラベル本体101(上面に表層フィルム103を有するもの)を1組ずつ剥がしてワーク1の金属ガラス皮膜上に貼り付けることにより、マスキングシートとして使用する。
【0029】
上記のように構成した貼付用ラベル100の製造手順は、
図3に示すとおりである。すなわち、
1) 帯状の台紙102上に、やはり帯状のラベル本体101(マスキングシートとしての形状・寸法にする前のもの)を重ねて粘着させたシート(
図3中の左方部分を参照)に対し、金型111によって打抜プレスを行う。これにより、ラベル本体101と台紙102との双方に貫通するよう、上記の縞模様に対応する複数個の筋状の穴101aを形成する(
図3の中ほど上部の外観図を参照)。
2) その後、ラベル本体101の上面に帯状の表層フィルム103を重ねるとともに、台紙102の下面に帯状の裏張補強フィルム104を重ね、それぞれラベル本体101と台紙102とに微粘着させる。表層フィルム103と裏張補強フィルム104の幅は、台紙102の幅よりも狭く、完成後(
図1・
図2の状態)のラベル本体101の幅よりも広いものとする。
3) ピナクルと呼ばれる刃物工具112を、表層フィルム103の表面から同フィルム103とラベル本体101との合計厚さ分だけ押し下げることにより、同フィルム103とラベル本体101とに切れ目を入れるハーフカット(ピナクル抜き)を行う。
4) 上記のハーフカットによる切れ目に沿って、不要部分、すなわち完成状態の各ラベル本体101(外形をそれぞれ長方形にされたもの)の間の部分と両サイドとに残るいわゆるカス部分を取り除く。これにより、帯状の台紙102の下面に帯状の裏張補強フィルム104を有していて、台紙102の上面には、長方形にされたラベル本体101と表層フィルム103との積層体が多数組配置された貼付用ラベル100(
図3の右方上部の外観図および
図2を参照)ができあがる。
【0030】
ラベル本体101は、トルクセンサシャフトとする軸状のワーク1にそれを貼り付けてショットブラスト用のマスキングシートとすることは前述のとおりである。軸状のワーク1を、ショットブラスト等を経てトルクセンサシャフトにする過程の概略を
図4(a)~(d)に示す。
図4に示すワーク1は中空軸状のものであり、図(a)のとおり長さ方向の中ほどに、磁歪部を形成するための形成部1aがある。円柱面であるその形成部1aの全周に、
図4(b)のように、高透磁率で高磁歪の金属ガラス皮膜1bを形成する。当該皮膜は、後述するように、急冷式溶射装置による溶射によって形成するとよい。
ワーク1上に形成した上記金属ガラス皮膜1b上に、マスキングシートとしてのラベル本体101を
図4(c)のように貼り付ける。そのうえで、ワーク1のうち形成部1aの表面にショットブラストを施す。ラベル本体101で覆われた部分には金属ガラス皮膜が残る一方、ラベル本体101の穴101aの位置で露出していた部分の金属ガラス皮膜が除去されるため、ラベル本体101の縞模様(
図1(a)参照)と同様のシェブロンパターンをもつ磁歪部1V・1W(
図13参照)がワーク1に形成される。ショットブラスト後にラベル本体101(マスキングシート)を除去することにより、
図4(d)に示すトルクセンサシャフト1’を得ることができる。
なお、ワーク1は一般的には炭素鋼製であるが、チタンやステンレス鋼のものをワーク1とすることもある。また、
図4や
図6に示すワーク1は中空であるが、中実のものであってもよい。
【0031】
図5に、ラベル本体101をワーク1に貼り付けるための自動機械であるマスキング装置60と、ワーク1を支持して順次搬送を行う手段である搬送パレットAおよび搬送装置Bを示す。
搬送パレットAは、鉛直軸回りに回転できる支持機A2を上部に有し、その支持機A2上にワーク1を取り付けることができる。そして搬送パレットAは、
図5の紙面と直角の方向に移動できるよう、搬送ロールB3を有する下部の搬送装置B上に載せている(詳細は
図9により後述)。こうした搬送パレットAの支持機A2上に軸心を鉛直にして取り付けることから、ワーク1は、その軸心を中心に回転し、また、図の紙面と直角の方向に移動することができる。搬送パレットA上には複数組の支持機A2があってそれぞれにワーク1を取り付けることができるが、マスキング装置60は1台のみを搬送パレットAの移動経路の脇に設置している。搬送パレットAとともにワーク1を移動させることにより、複数のワーク1に順次マスキングを施すのである。
【0032】
マスキング装置60は、
図1・
図2に示す貼付用ラベル100からラベル本体101等を1枚ずつ剥がし、それを、吸着(負圧吸引)することにより保持してワーク1の上記形成部1aにまで移動し、当該形成部1a上に押し付けて貼り付ける、という作業をなす。そのような目的達成のために、マスキング装置60は、剥離部61と吸着部62、移動部63、および操作制御盤64により構成している。貼付用ラベル100を供給し、ラベル本体101を剥がした後の台紙102等を回収するために、巻出しリール65と巻取りリール66を設けてもいる。
【0033】
マスキング装置60と支持機A2上のワーク1等との詳細は
図6のとおりである。
上記した剥離部61は、まず、台紙102等を鋭角的に屈曲させて送るための先端プレート61aを有している。台紙102を含む貼付用ラベル100を、同プレート61aの下面に沿って送り、その先端において、ラベル本体101と表層フィルム103とがある側の面を外側にして反転させるように約150°屈曲させ、同プレート61aの上面に沿って牽引する。同プレート61aの先端で屈曲させることにより、ラベル本体101および表層フィルム103を台紙102から剥がすのである。ラベル本体101等から分離した台紙102(裏張補強フィルム104を含む)は、同プレート61aの上方へ牽引して送り、前記した巻取りリール66によって回収する。
剥離部61にはさらに、上記プレート61aの先端部付近に向けて圧縮空気を吹き出すエアノズル61bを付設している。上記プレート61aの先端で剥離したラベル本体101等が台紙102の側(
図6の上方)へ向くことを防止する、いわば剥離補助のためのエア(アシストエア)を吹き出すのである。
【0034】
マスキング装置60の吸着部62は、エアポンプ(図示せず)に通じる負圧管62aとその先端の吸着パッド62bとにより構成している。吸着パッド62bは、ラベル本体101の大きさとほぼ等しい長方形の開口を前部の一平面内に有している。上記の剥離部61で台紙102から分離したラベル本体101(表層フィルム103が付いたもの)を、吸着パッド62bの当該前部平面上に吸着し保持することができる。吸着・保持された状態のラベル本体101は、台紙102から剥がされた粘着面が外を向き、表層フィルム103が吸着パッド62bに接触している。なお、ラベル本体101等がその長さ方向の端部から順に吸着パッド62bから離れていくときにも吸着力が失われないよう、負圧管62aと吸着パッド62bにおけるエアの通路および開口は複数に分割してある。
【0035】
移動部63は、吸着したラベル本体101を吸着部62とともに移動させるための手段である。負圧管62aを図示の鉛直状態から水平状態にまで旋回させるための旋回シリンダ63aと、負圧管62a、吸着パッド62bおよび旋回シリンダ63aを図示の右方位置から左方へ押し出すように水平移動させる押出シリンダ63bとを有している。旋回シリンダ63aと押出シリンダ63bとは、空気圧式のアクチュエータである。移動部63によって吸着部62を移動させることにより、吸着パッド62b上のラベル本体101を図示左方のワーク1における形成部1aの表面にまで移動し、それに押し付けることができる。その押し付け等によってラベル本体101をワーク1に貼り付け終わった後は、押出シリンダ63bと旋回シリンダ63aとを上記と逆の向きに動作させて吸着部62を元の位置に戻すことができる。
【0036】
ワーク1は、
図6の左方に示すとおり中空軸状のもので、
図5で説明したとおり、搬送パレットAの支持機A2上に鉛直軸回りに回転可能なように取り付けている。すなわち、支持機A2に棒状の下部ホルダー2Bを固定し、ワーク1はそのホルダー2B上に被せることにより取り付けている。ワーク1の上端側にも、上記の下部ホルダー2Bと同様の形状部分を有する上部ホルダー2Uを取り付け、ホルダー2Bと連結させている。また、下部ホルダー2Bと上部ホルダー2Uとのそれぞれに、同一形状の筒状カバー3を取り付けている。筒状カバー3はワーク1の両端側を覆う治具であり、予熱や溶射等の作業がワーク1における磁歪部の形成部1aにのみ行われるようにするものである。ホルダー2Bとホルダー2Uとは、連結されたときの形状が上下に対称となるようにし、かつ、筒状カバー3も上下対称に配置している。それは、ワーク1の上端側と下端側とで熱的な条件(熱容量等)を等しくし、もって形成部1aを適切に予熱・溶射できるようにしたのである。
【0037】
ワーク1に対するラベル本体101の貼り付けは、マスキング装置60の移動部63によって上記のとおりラベル本体101を形成部1aに押し付けたとき、ワーク1を、回転させながらラベル本体101の長手方向(
図6の紙面と直角方向)に移動させることにより行う。その移動の際にワーク1を回転させる手段として、マスキング装置60の脇の支持部材67上にシリコン製の(したがって金属材との間で滑りにくい)当て板(固定部材)68を取り付け、それに支持機A2の一部を接触させている。図示のように支持機A2の軸部にカラー1xを取り付け、そのカラー1xの外径をワーク1の形成部1aの外径(正確には、ラベル本体101と表層フィルム103の合計厚さの2倍を加算した外径)と同一にしておけば、支持機A2は、搬送パレットAとともに移動するとき当て板68で転がされてワーク1を適切な速度で回転させる。すなわち、形成部1aが、吸着パッド62b上のラベル本体101に対して滑ることなく転がりながら移動し、ラベル本体101の全面の貼り付けが円滑に行える。
【0038】
マスキング装置60によって行うマスキング、すなわちワーク1(の形成部1a)に対するラベル本体101の貼り付けについて、手順を
図7に示す。すなわち、その手順はつぎのとおりである。
1) 搬送装置B(
図5)により搬送パレットA(同)とともにワーク1が搬送されて、いずれかのワーク1がマスキング装置60の正面に来て停止すると(
図7中のP1)、マスキング装置60のリール65・66によりラベル本体101の1枚分だけ台紙102を送って停止し、エアノズル61bからのアシストエアをも利用してラベル本体101の1枚を剥離し、上方を向いた吸着パッド62b上に負圧吸引してそれを吸着する(P2~P5)。
2) ラベル本体101を吸着した状態の吸着パッド62bを、90°旋回して水平向きにし、さらに前方へ押し出すことにより、ラベル本体101の一端部分をワーク1の形成部1aに押し付け、部分的に貼付する(P6・P7)。
3) 搬送装置Bによって支持機A2とともにワーク1を走行(移動)させ、かつその移動の際に当て板68によってワーク1を回転させることにより、ラベル本体101の全面を形成部1aに貼付する(P8)。
4) その後、吸着パッド62bを後方へ引き戻し、負圧吸引を停止するとともに上方へ旋回させて、元の状態に戻す(P9~P12)。
【0039】
以上に説明したマスキング装置60を含み、
図4(a)~(d)に示した過程に沿ってトルクセンサシャフト1’を量産するための製造設備を
図8に示す。この設備は、それぞれワーク1を取り扱う着脱装置10と予熱装置20、ショットブラスト装置30、溶射装置40、マスキング装置60、ショットブラスト装置70、クリーニング装置80等の作業装置を、図示のとおり配置したものである。トルクセンサシャフトとするための軸状のワーク1(
図4参照)を上記の各作業装置に順次搬送して、各ワーク1に各作業装置による処理を施す。そうすることによって、金属ガラス皮膜を含む磁歪部を各ワーク1上に形成し、トルク検出特性にすぐれたトルクセンサシャフトを製造する。
【0040】
図8の製造設備では、ワーク1の搬送を、
図9(a)・(b)に示す搬送パレットAと搬送装置Bとを使用して行う。搬送パレットAは、ワーク1を取り付けるための支持機A2をフレームA1内に回転可能に設けるとともに、それへの回転力の伝動機構A3等を設けたものである。搬送パレットAには支持機A2を12組配置しているため、同パレットAにはワーク1を通常12個、
図5・
図6の状態でホルダー2B・2Uおよび上下の筒状カバー3とともに取り付けることになる。
【0041】
搬送装置Bは、上記各作業装置ごとにその下部に付設したもので、モータB1と伝動機構B2とに連結された搬送用ローラB3により、上記搬送パレットAを長手方向へ搬送できるよう構成している。搬送パレットAの搬送を案内する目的で、搬送装置Bには、搬送経路の片側にガイドローラB4を設けるとともに、エアシリンダB5に連結された押し当てローラB6を搬送経路の他の側に設けている。双方のローラB4・B6により搬送パレットAをはさみ付けて、その位置が左右へずれることを防止している。
ワーク1を回転させる手段として、搬送装置BにはモータB7を設け、その駆動軸の上端にマグネットカップリングMCの駆動側継手B8を取り付けている。そして搬送パレットAの上記伝動機構B2の下端部分に、マグネットカップリングMCの被駆動側継手A4を取り付けている。これらにより、搬送パレットAが所定の位置まで搬送されて停止したとき、搬送装置BのモータB7の駆動力によって搬送パレットAの支持機A2を回転させることができる。こうした支持機A2上にワーク1を取り付けると、ワーク1は支持機A2とともに各作業装置において回転させ得るため、その一部領域の全周に磁歪部を形成するための作業(予熱・溶射・マスキング・ショットブラスト・クリーニング)を円滑に実施することができる。
【0042】
搬送装置Bと搬送パレットAにおけるマグネットカップリングMCの駆動側継手B8と被駆動側継手A4との各対向面には、
図9(c)のとおり区分して磁極を配置している。すなわち、上記各継手B8・A4の双方とも中央部に同極(図示の例ではN極)を置き、その周囲にN極とS極とを交互に配置する。
【0043】
図8の製造設備には、上記した搬送装置Bのほか、搬送装置Bによる搬送経路と直角の方向に搬送パレットAを移動させる横行装置C1・C2をも配置している。そのような横行装置C1・C2を、図示のとおり一連の搬送装置Bによる連続した搬送経路の端部に配置したことにより、この製造設備では、搬送パレットAを矩形状の周回経路に沿って各作業装置間に搬送することができる。
【0044】
図8の製造設備内に設置した複数の作業装置のうち、端部に設けた着脱装置10は、搬送パレットA(
図9・
図6)に対してワーク1を取り付けたり取り外したりするものである。筒状カバー3(
図6)やホルダー2U等とともにワーク1を保持して昇降させ、支持機A2上のホルダー2Bに対して着脱することができる。
【0045】
着脱装置10の隣(下流側)に配置した予熱装置20は、ガスバーナ(図示省略)によって搬送パレットA上のワーク1を予熱する装置である。搬送パレットA(
図9・
図6)上の支持機A2は、マグネットカップリングMCを介し搬送装置Bから駆動されて回転するため、ワーク1を回転させて均一に予熱することができる。
【0046】
ショットブラスト装置30および同70は、
図10のように構成した作業装置である。すなわち、支持フレーム31上に昇降用モータ33を取り付け、そのモータ33によって昇降ロッド34を昇降させる。昇降ロッド34の先にブラストガン35を設け、それによってワーク1の磁歪部形成用部分1aにショットブラストをかける。
図8において予熱装置20の下流隣接位置に配置したショットブラスト装置30は、溶射に先立って、ワーク1の磁歪部形成部1aに微細な凹凸を形成する目的で使用する。また、マスキング装置60より下流側に設けたショットブラスト装置70は、溶射後の金属ガラス皮膜上に縞模様にマスキングされた形成部1aに向けてショットブラストを行い、マスキングされない部分の金属ガラス皮膜を除去する目的で使用する。
ショットブラスト装置30・70のブラストガン35は、車輪32やモータ33、連結ロッド34等の作用で、ワーク1の配列方向に移動することができる。なお、予熱装置20のガスバーナや後述する溶射装置40の溶射ガン47も、同様にワーク1の配列方向に移動することが可能である。
【0047】
ショットブラスト装置30の下流側隣接位置に配置した溶射装置40は、
図11・
図12に示す構成のものである。まず
図11のとおり、支持フレーム41上に昇降・横行用アクチュエータ45を取り付けて、昇降ロッド46を昇降させるとともに前後(ワーク1の配列方向)に横行できるようにし、昇降ロッド46の先に溶射ガン47を設けている。溶射ガン47による溶射の際、ワーク1を回転させるとともに上記アクチュエータ45で溶射ガン47を昇降・横行させることにより、ワーク1の磁歪部形成部1aに、同部分1aの温度コントロールをしながら溶射皮膜を均一に形成する。支持フレーム41には車輪42を取り付けているので、溶射ガン47をワーク1の配列方向に移動することができる。
【0048】
溶射ガン47は、
図12に示す構造の粉末式フレーム溶射ガンであって、火炎を急速冷却することにより、シャフトの表面に金属ガラス(アモルファス合金)皮膜を形成できるものである。
図示のように溶射ガン47は、ガン本体47aの前部に、外部冷却装置とも言える二重管の筒状体47c等を取り付けている。溶射ガン47には、溶射する材料粉末を搬送ガス(たとえば窒素)とともに供給する管と、燃料(アセチレンまたはエチレン)および酸素の各供給管、ならびに内部冷却ガス(たとえば窒素)の供給管とが接続されている。溶射ガン47の前端にはノズル47bがあり、それより火炎と溶射粉末材料とを噴射する。上記の内部冷却ガスは、ノズル47bの周囲に接する位置から吹き出してノズル47bの冷却と火炎の温度調節をする。図示の筒状体47cは、溶射ガン47が噴射する火炎Fの前半部分(ノズル47bに近い部分。材料粉末の溶融領域)において火炎Fと外気とを隔てるとともに、二重管の先端部より火炎Fの後半部分に冷却ガス(たとえば窒素)Gを吹き出して火炎Fを冷却する。
この溶射ガン47は、皮膜とする合金と同一成分の材料粒子を火炎Fとともにノズル47bから噴射し、当該材料粒子を火炎Fによって溶融させたうえ上記冷却ガスGで冷却することにより、ワーク1の表面に金属ガラス皮膜を形成することができる。火炎Fの速度は30~40m/s程度とし、火炎Fの温度は中心部付近が1000~1200℃となるようにする(材料粒子に応じてそれぞれ調整する)。火炎Fは、筒状体47cとそれより噴出される冷却ガスGに囲まれて基材(ワーク1)に達するため、金属ガラス皮膜中に酸化物の介在する量を抑制できる。
溶射装置40によってワーク1の磁歪部形成用部分1aには、たとえば、Fe-Co-Si-B-Nb系(たとえば(Fe1-xCox)72B20Si4Nb4)の金属ガラス皮膜を、厚さ100~200μm程度に形成するとよい。この成分系は、アモルファス形成能が高くてアモルファス化させやすいうえ、磁気特性にすぐれ、また機械的特性においては塑性変形しがたい、といった点で好ましい。
【0049】
溶射装置40には、非接触式温度計を配置し、溶射されるワーク1(磁歪部形成用部分1a)の表面の温度を計測する。当該温度の計測値に応じ、溶射ガン47の位置を前記アクチュエータ45により上下および横方向に逸らす等して、溶射中のワーク1(磁歪部形成用部分1a)の温度を一定に保ち、もって皮膜の性状やワーク1との密着度合いを良好にするのである。
【0050】
溶射によって金属ガラス皮膜を形成されたワーク1は、
図8中の溶射装置40から隣接の冷却装置51へ搬送され、そこで所定時間だけ空冷された後、横行装置C1によって搬送パレットAごと向かい側の入側テーブル52へ横行搬送され、さらにマスキング装置60へと搬送される。
マスキング装置60では、先に説明したように、ワーク1(形成部1a)における金属ガラス皮膜(
図4(b)の符号1b)の表面上に、ラベル本体101(
図1)を貼り付ける(
図4(c)を参照)。ラベル本体101は、ショットブラストの際のマスキングシートとするもので、磁歪部としての螺旋状の縞模様と同じパターンで複数の穴101aを有している。
マスキング装置60に隣接する位置等に、ラベル本体101を押さえ付ける手段(図示せず)を設けるのもよい。マスキング装置60で貼り付けたラベル本体101を、押付ロール等によってワーク1の形成部1aに押さえ付け、貼付状態を確実にするのである。ラベル本体101の性質や厚さ、形成部1aの太さ等によってはそれが有効な場合がある。
【0051】
図8のとおりマスキング装置60の下流側にも、冷却装置53をはさんでショットブラスト装置70を配置している。ショットブラスト装置70の構成は前記ショットブラスト装置30と同様であり、
図10に示したとおりである。この装置70では、マスキング装置60でラベル本体101等が貼付されたワーク1の形成部1a(金属ガラス皮膜1b)に向けてショットブラストを行い、ラベル本体101の穴101aの部分にある金属ガラス皮膜を除去する。ラベル本体101で被覆された部分にはショットブラストの効果が及ばないため、ラベル本体101と同じ縞模様(シェブロンパターン)に金属ガラス皮膜が残ることになる。なお、ラベル本体101に重ねられた表層フィルム103は、軟質材であるためショットブラストの開始直後に消散する。
【0052】
マスキング装置60・ショットブラスト装置70のさらに下流側には、
図8のとおりクリーニング装置80を配置している。クリーニング装置80は、ショットブラストされた後の形成部1aからラベル本体101(マスキングシート)を除去し、形成部1aの表面を清掃するための装置である。図示の例では、ワイヤブラシ付きの回転ローラをワーク1に押し付けるものとして構成しているが、高圧水や圧縮エアを当ててラベル本体101を除去するものや、溶剤等を用いてラベル本体101を溶かすものとしてもよい。
【0053】
図8の製造設備は、上記クリーニング装置80の下流側に出側テーブル54を設けるとともに、それより着脱装置10にかけて横行装置C2を配置している。これらにより、軸状のワーク1に対して金属ガラス皮膜の形成、マスキング、ショットブラストおよびその後のクリーニングを行って磁歪部の形成を完了した複数のトルクセンサシャフト1’(
図4参照)を、搬送パレットAとともに着脱装置10上に戻し、そこで回収することができる。
【0054】
軸状のワーク1に必要な処理を行ってトルクセンサシャフト1’を製造するための設備は、
図8のものに限るわけではない。たとえば、生産能力を低めにするとともに設備コストを下げようとすると、
図8の配置から、予熱装置20やショットブラスト装置30または70、クリーニング装置80を取り除いて設備構成することも可能である。その場合、ワーク1の搬送順序等を変更するとともに、1)ワーク1の予熱は、溶射装置40において溶射材料を噴射せず火炎のみを出すことによって行い、2)1台のみのショットブラスト装置(30または70)に、溶射前(形成部1aの下地調整)と溶射後(一部皮膜の除去による模様形成)との2回のショットブラストを行わせ、3)また、形成部1a等の清掃は、クリーニング装置80によらずに作業員が行うこととすればよい。それにより、比較的コンパクトな設備で円滑にトルクセンサシャフト1’を製造することができる。
【0055】
以上、ラベル本体101の使用例として、それをトルクセンサシャフト1’の製造過程においてマスキング装置60によりショットブラスト用のマスキングのためにワーク1に貼り付ける場合を説明した。しかし、穴付きのラベル本体を含む、
図1等のものと同様の構成を有する貼付用ラベルは、これらとは異なる形態で使用することももちろん可能である。すなわち、発明の貼付用ラベルは、トルクセンサシャフト1’の製造とは関わりのないワーク1に貼り付ける目的で、上記以外の貼付用の装置・方法を用いて使用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 ワーク
1’・1” トルクセンサシャフト
1a 形成部
1b 金属ガラス皮膜
1V・1W 磁歪部
40 溶射装置
47 溶射ガン
60 マスキング装置
61 剥離部
62 吸着部
63 移動部
68 固定部材(当て板)
70 ショットブラスト装置
A 搬送パレット
A2 支持機
B 搬送装置
100 貼付用ラベル
101 ラベル本体(マスキングシート)
101a 穴
102 台紙
103 表層フィルム
104 裏張補強フィルム