(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】カードリーダおよびカードリーダの制御方法
(51)【国際特許分類】
G11B 5/02 20060101AFI20220301BHJP
G11B 5/09 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
G11B5/02 Z
G11B5/02 Q
G11B5/09 311A
G11B5/09 311B
(21)【出願番号】P 2017241269
(22)【出願日】2017-12-18
【審査請求日】2020-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】田中 穣
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋平
(72)【発明者】
【氏名】谷 宇飛
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4965873(US,A)
【文献】特開平05-347005(JP,A)
【文献】特開2000-173008(JP,A)
【文献】特開2014-87161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/02
G11B 5/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気カードに磁気データを記録する磁気ヘッドに設けられたライト用コイルと、
前記ライト用コイルにライト電流を供給する駆動回路とを備え、
前記駆動回路は、所定の周期でオンオフが切り換わるチョッピング電流を前記ライト電流として前記ライト用コイルに供給するチョッピング回路であり、
前記チョッピング電流のオンオフの周期は、オンとオフを1回ずつ含む期間に前記チョッピング電流によって前記磁気カードに形成される着磁パターンの記録方向の長さが、前記ライト用コイルが巻かれるコア、もしくは、前記ライト用コイルとは別に設けられたリード用コイルが巻かれるコアに形成されたリードギャップより狭い周期であることを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記駆動回路に対して、前記チョッピング電流のオンオフの周期を設定する第1制御信号、および、前記チョッピング電流のデューティ比を設定する第2制御信号を供給する制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載のカードリーダ。
【請求項3】
第2制御信号は、前記磁気カードにおける磁気データの着磁強度に対応するデューティ比を設定する信号であることを特徴とする請求項2に記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記駆動回路は、モータドライバICであることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のカードリーダ。
【請求項5】
磁気カードに磁気データを記録する磁気ヘッドを備えたカードリーダの制御方法であって、
前記磁気ヘッドに設けられたライト用コイルにライト電流を供給する駆動回路から、所定の周期でオンオフが切り換わるチョッピング電流を前記ライト用コイルに供給して、前記磁気カードに磁気データを記録し、
前記チョッピング電流のオンオフの周期は、オンとオフを1回ずつ含む期間に前記チョッピング電流によって前記磁気カードに形成される着磁パターンの記録方向の長さが、前記ライト用コイルが巻かれるコア、もしくは、前記ライト用コイルとは別に設けられたリード用コイルが巻かれるコアに形成されたリードギャップより狭い周期であることを特徴とするカードリーダの制御方法。
【請求項6】
前記駆動回路を制御する制御部から前記駆動回路に対して、チョッピング電流のオンオフの周期を設定する第1制御信号、および、前記チョッピング電流のデューティ比を設定する第2制御信号を供給することを特徴とする請求項5に記載のカードリーダの制御方法。
【請求項7】
前記第2制御信号は、前記磁気カードの磁気データの着磁強度に対応するデューティ比を設定する信号であることを特徴とする請求項6に記載のカードリーダの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッドを備えたカードリーダおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カードリーダにおいて、磁気カードに磁気データの書込みを行う磁気ヘッドを備えたものがある。磁気カードは、JISやISOなどの規格において、磁気データを記録する領域の着磁強度のランクが規格化されている。そのため、カードリーダは、これらの規格に対応した電流(以下、ライト電流という)を磁気ヘッドに供給する駆動回路を備えている。特許文献1には、磁気ヘッドにライト電流を供給する回路に抵抗を設けて電流を制限することが記載されている。また、特許文献1には、低抗磁力カード(Lo-Coカード)に比べて大きな着磁強度で記録される高抗磁力カード(Hi-Coカード)に磁気データを記録するための磁気ヘッドの駆動回路として、電源電圧を切り換える回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気カードの着磁強度に応じたライト電流を磁気ヘッドに供給して磁気データを記録する際、着磁強度が小さい磁気カードに対しては、特許文献1のように抵抗を用いて電流を制限することや、電源電圧を切り換えて供給する電流の電圧を低くし、着磁強度を小さくすることが行われる。しかしながら、抵抗を用いる場合、許容電流の大きい抵抗を用いる必要があるため、基板上の抵抗実装面積が大きく、駆動回路の大型化およびコスト高が問題となる。また、抵抗からの発熱の影響も問題となる。また、電源電圧を切り換える場合、回路が複雑になる。
【0005】
そこで、ライト電流としてチョッピング電流を用いることにより、電圧の実効値を下げて着磁強度を調節することが考えられる。しかしながら、チョッピング電流により着磁すると、チョッピング電流のオンオフに起因する変動が磁気カードに形成される着磁パターンに表れる。従って、チョッピング電流により記録した磁気データ(着磁パターン)を読み取る際、良好な再生波形が得られないおそれがある。
【0006】
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、磁気データを記録する磁気ヘッドを備えたカードリーダにおいて、チョッピング電流を用いて、良好な再生波形を得られる磁気データを記録することが可能なカードリーダおよびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のカードリーダは、磁気カードに磁気データを記録する磁気ヘッドに設けられたライト用コイルと、前記ライト用コイルにライト電流を供給する駆動回路とを備え、前記駆動回路は、所定の周期でオンオフが切り換わるチョッピング電流を前記ライト電流として前記ライト用コイルに供給するチョッピング回路であり、前記チョッピング電流のオンオフの周期は、オンとオフを1回ずつ含む期間に前記チョッピング電流によって前記磁気カードに形成される着磁パターンの記録方向の長さが、前記ライト用コイルが巻かれるコア、もしくは、前記ライト用コイルとは別に設けられたリード用コイルが巻かれるコアに形成されたリードギャップより狭い周期であることを特徴と
する。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明は、磁気カードに磁気データを記録する磁気ヘッドを備えたカードリーダの制御方法であって、前記磁気ヘッドに設けられたライト用コイルにライト電流を供給する駆動回路から、所定の周期でオンオフが切り換わるチョッピング電流を前記ライト用コイルに供給して、前記磁気カードに磁気データを記録し、前記チョッピング電流のオンオフの周期は、オンとオフを1回ずつ含む期間に前記チョッピング電流によって前記磁気カードに形成される着磁パターンの記録方向の長さが、前記ライト用コイルが巻かれるコア、もしくは、前記ライト用コイルとは別に設けられたリード用コイルが巻かれるコアに形成されたリードギャップより狭い周期であることを特徴とする。
【0009】
本発明では、磁気データを記録する磁気ヘッドに設けられたライト用コイルにチョッピング電流を供給するため、チョッピング電流のデューティ比を制御することによってライト電流の実効値を調節し、磁気カードへの着磁強度を調節できる。従って、抵抗や複数の電源を用いてライト電流を調節する必要がないので、ライト用コイルの駆動回路の小型化および低コスト化を図ることができ、回路構成を簡素化できる。また、抵抗からの発熱量が大きくなることを回避できる。
【0010】
また、本発明では、磁気データを読み取る際に誘導電流が発生するコイルが巻かれるコア(ライト用コイルとリード用コイルを兼用する場合は、ライト用コイルが巻かれるコアであり、ライト用コイルとリード用コイルを別にする場合は、リード用コイルが巻かれるコア)に形成されたギャップ(リードギャップ)よりも、チョッピング電流の1回のオンオフの期間に記録される着磁パターンの記録方向の長さの方が短い。従って、チョッピング電流によって記録された磁気データ(着磁パターン)を磁気ヘッドで読み取る際、チョッピング電流のオンオフに起因する着磁パターンの変動が生じたとしても、チョッピング電流のオン期間に記録される着磁パターンのピークがリードギャップの範囲内に少なくとも1箇所は存在するので、チョッピング電流のオンオフに起因する着磁パターンの変動が再生波形に反映されにくい。よって、良好な再生波形を得ることができる。更に、チョッピング電流のデューティ比の調節によって実効値を下げて着磁強度を下げる場合、電圧を低くした場合よりもライト電流の立ち上がりが良いので、記録した磁気データを読み取ると、再生波形が矩形波に近い形状となる。従って、着磁強度が小さい磁気カードに対して、良好な再生波形を得ることが可能な磁気データを記録することができる。
【0011】
本発明のカードリーダおよびその制御方法において、前記駆動回路に対して、前記チョッピング電流のオンオフの周期を設定する第1制御信号、および、前記チョッピング電流のデューティ比を設定する第2制御信号を供給する構成を採用することができる。このようにすると、チョッピング電流のオンオフの周期とデューティ比を個別に調節することができる。
【0012】
この場合に、前記第2制御信号は、前記カードの磁気データの着磁強度に対応するデューティ比を設定する信号であることが好ましい。これにより、磁気カードの着磁強度のランクに応じた磁界を発生させることができ、磁気カードの規格に対応した磁気データの記録動作を行うことができる。
【0013】
本発明のカードリーダにおいて、前記駆動回路として、モータドライバICを用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁気データを記録する磁気ヘッドに設けられたライト用コイルにチョ
ッピング電流を供給するため、チョッピング電流のデューティ比を制御することによってライト電流の実効値を調節し、磁気カードへの着磁強度を調節できる。従って、抵抗や複数の電源電圧を用いてライト電流を調節する必要がないので、ライト用コイルの駆動回路の小型化および低コスト化を図ることができ、回路構成を簡素化できる。また、抵抗からの発熱量が大きくなることを回避できる。
【0015】
また、本発明によれば、磁気データを読み取る磁気ヘッドのコアに形成されたギャップ(リードギャップ)よりも、チョッピング電流の1回のオンオフの期間に記録される着磁パターンの記録方向の長さの方が短い。従って、チョッピング電流によって記録された磁気データ(着磁パターン)を磁気ヘッドで読み取る際、チョッピング電流のオンオフに起因する着磁パターンの変動が生じたとしても、チョッピング電流のオン期間に記録される着磁パターンのピークがリードギャップの範囲内に少なくとも1箇所は存在するので、チョッピング電流のオンオフに起因する着磁パターンの変動が再生波形に反映されにくい。よって、良好な再生波形を得ることができる。更に、チョッピング電流のデューティ比の調節によって実効値を下げて着磁強度を下げる場合、電圧を低くした場合よりもライト電流の立ち上がりが良いので、記録した磁気データを読み取ると、再生波形が矩形波に近い形状となる。従って、着磁強度が小さい磁気カードに対して、良好な再生波形を得ることが可能な磁気データを記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用したカードリーダの説明図および磁気カードの説明図である。
【
図2】カードリーダの電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】チョッピング電流の波形、チョッピング電流による着磁パターン、および再生波形の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明を適用したカードリーダおよびその制御方法を説明する。
図1(a)は本発明を適用したカードリーダ1の説明図であり、
図1(b)は磁気カード2の説明図である。カードリーダ1は、磁気カード2に形成された磁気ストライプ2aへの磁気データの書込み、および、磁気ストライプ2aに記録された磁気データの読み取りを行う。
【0018】
(全体構成)
カードリーダ1は、カード挿入口5と、ライト用磁気ヘッド6Aおよびリード用磁気ヘッド6Bと、カード挿入口5からライト用磁気ヘッド6Aおよびリード用磁気ヘッド6Bを経由してカード搬送方向Xに直線状に延びるカード搬送路7と、カード挿入口5に挿入された磁気カード2をカード搬送路7へ取り込んでカード搬送路7に沿って搬送するカード搬送機構8を備える。ライト用磁気ヘッド6Aおよびリード用磁気ヘッド6Bは、それぞれ、カード搬送路7を通過する磁気カード2に接触可能なセンサ面61を備える。カード搬送機構8は、磁気カード2を間に挟んで搬送する駆動ローラー81およびパッドローラー82を複数組備える。また、カード搬送機構8は、各駆動ローラー81を回転させる搬送モータ83を備える。
【0019】
カードリーダ1は、カード挿入口5に磁気カード2が挿入されると、カード挿入口5に設けられたセンサ51によって磁気カード2を検出し、搬送モータ83を駆動して駆動ローラー81を回転させる。これにより、磁気カード2はカード搬送路7に沿って搬送されて、ライト用磁気ヘッド6Aおよびリード用磁気ヘッド6Bの位置を通過する際に各磁気ヘッドのセンサ面61に摺接する。磁気カード2に磁気データを書き込む際には、ライト用磁気ヘッド6Aを駆動して磁気カード2を着磁する磁界を発生させる。また、磁気カード2に記録された磁気データを読み取る際には、磁気カード2がリード用磁気ヘッド6B
のセンサ面61を通過する際の磁界の変化を検出する。
【0020】
(電気的構成)
図2はカードリーダ1の電気的構成を示すブロック図である。カードリーダ1の制御部9は、CPU10を備える。CPU10には、カード挿入口5に設けられたセンサ51の検出信号が入力される。CPU10は、センサ51の検出信号に基づいてカード搬送機構8を制御する。CPU10は、図示しないモータドライバに制御信号を出力し、モータドライバからの制御信号によって搬送モータ83を駆動して、磁気カード2をカード搬送路7の奥側へ搬送する動作、および磁気カード2をカード挿入口5から排出する動作を行う。なお、センサ51とは異なる位置に別のセンサを設けて、磁気カード2の位置を判定してもよい。
【0021】
CPU10は、ライト用駆動回路20を介してライト用磁気ヘッド6Aを駆動して、磁気カード2に磁気データを記録する。また、CPU10は、磁気カード2の磁気ストライプ2aがリード用磁気ヘッド6Bのセンサ面61を通過する際、リード用コイル62Bから出力されるアナログ信号に基づきリード用回路30が出力するデジタルデータを取得する。
【0022】
図2に示すように、ライト用磁気ヘッド6Aは、ライト用駆動回路20からライト電流が供給されるライト用コイル62Aと、ライト用コイル62Aが巻回されるコア63Aを備える。コア63Aには、ライト用磁気ヘッド6Aのセンサ面61に露出した部分にライトギャップGaが形成されている。ライト用駆動回路20は、CPU10から供給される制御信号に基づき、ライト用磁気ヘッド6Aにライト電流を供給する。
【0023】
本形態では、ライト用駆動回路20はモータドライバICであり、ライト電流としてチョッピング電流を生成してライト用コイル62Aに供給する。つまり、ライト用駆動回路20はチョッピング回路である。CPU10は、ライト用駆動回路20に対して、チョッピング電流のオンオフの周期を設定する第1制御信号S1、チョッピング電流のデューティ比を設定する第2制御信号S2、および、発生させる磁界の極性を制御する磁気極性信号である第3制御信号S3を供給する。第2制御信号S2は、第1制御信号S1とは別経路でライト用駆動回路20に供給される。従って、チョッピング電流のオンオフの周期と、デューティ比は、独立して制御される。
【0024】
リード用磁気ヘッド6Bは、リード用回路30に接続されるリード用コイル62Bと、リード用コイル62Bが巻回されるコア63Bを備える。コア63Bには、リード用磁気ヘッド6Bのセンサ面61に露出した部分にリードギャップGbが形成されている。リード用回路30は、リード用コイル62Bから出力されるアナログ電流の波形を矩形波に変換し、復調回路によってデジタルデータに変換してCPU10へ出力する処理を行う。
【0025】
(チョッピング制御)
図3はチョッピング電流の波形、チョッピング電流による着磁パターン、および再生波形の説明図である。
図3(a)はS極とN極を配列した磁気データの説明図である。
図3(b)は
図3(a)の磁気データを記録するためのチョッピング電流の波形であり、
図3(c)は
図3(b)のチョッピング電流により形成される着磁パターンである。そして、
図3(d)はリード用磁気ヘッド6Bで着磁パターンを読み取った再生波形を模式的に示す説明図である。カードリーダ1において、磁気カード2に対する磁気データの記録方向は、カード搬送方向Xと一致する方向となる。
図3の例は、低抗磁力カード(Lo-Coカード)に磁気データを記録するため、チョッピング制御により実効電圧を下げた場合の例である。
【0026】
ライト用駆動回路20は、CPU10により設定された周期およびデューティ比でライト電流のオンオフを行ってチョッピング電流を生成し、リード用コイル62Bに供給する。これにより、ライト電流の電源電圧を下げることなく、リード用コイル62Bに流れる実効電圧を小さくする。CPU10は、磁気カード2の着磁強度に応じたデューティ比のチョッピング電流を生成させる。また、CPU10は、チョッピング電流のオンオフの周期が後述する条件を満たすように設定する。
【0027】
図3(b)に示すように、S極とN極を着磁するときは、チョッピング電流の向きを逆転させてライト用磁気ヘッド6Aが発生させる磁界の極性を反転させる。
図3(c)に示すように、チョッピング電流により形成される着磁パターンは、チョッピング電流のオンオフに対応する変動を備えたパターンとなる。カード搬送速度をVとするとき、チョッピング電流のオンオフを1回行う期間(すなわち、チョッピング周期T)に形成される着磁パターンの記録方向(すなわち、カード搬送方向X)の長さLxは、Lx=VTとなる。また、チョッピング周期T=1/f(f:チョッピング周波数)であるため、Lx=V/fである。カードリーダ1では、リード用磁気ヘッド6Bによって記録される着磁パターンには、記録方向の長さがLxの範囲内に、着磁強度が最も高いピーク点が必ず1箇所含まれる。
【0028】
チョッピング電流の周波数fは、1回のオンオフの期間(チョッピング周期T)に形成される着磁パターンの記録方向の長さLxが、リード用磁気ヘッド6Bのコア63Bに形成されたリードギャップGbよりも小さくなるように設定されている。すなわち、VT<Gb(V/f<Gb)の条件を満たすように設定されている。このようにすると、チョッピング電流により記録された着磁パターンをリード用磁気ヘッド6Bで読み取る際、リードギャップGbの範囲に必ず1箇所は着磁パターンのピーク点(着磁強度が最も大きい点)が含まれる。このような構成を実現するため、CPU10は、チョッピング電流のオンオフのタイミングを設定する第1制御信号S1として、VT(V/f)<Gbの条件を満たすような周期を設定する信号をライト用駆動回路20に供給する。
【0029】
図3(d)の再生波形Aは、チョッピング制御により実効電圧を小さくして記録した着磁パターン(
図3(c)の着磁パターン)をリード用磁気ヘッド6Bで読み取った際の再生波形である。チョッピング制御によって形成された着磁パターンがリードギャップGbを通過する際、上記のように、どのタイミングでもリードギャップGbの範囲内に着磁強度が最も高いピーク点が含まれる。従って、その再生波形Aには、
図3(c)の着磁パターンの変動が反映されにくい。従って、
図3(d)に示す矩形波に近い良好な再生波形Aが得られる。従って、記録した磁気データを精度良く再生することができる。
【0030】
ここで、
図3(d)において破線で示す再生波形Bは、チョッピング制御を行わず、電圧の低い一定のライト電流で
図3(a)の磁気データを記録した場合の再生波形である。ライト電流の電圧を下げてライト電流の実効値を下げた場合、再生波形Bは、立ち上がりの部分の波形が矩形波のようなシャープな形状にならない。つまり、チョッピング制御を行わない場合は、チョッピング制御により実効電圧を下げた場合のような良好な再生波形を得られないことがわかる。
【0031】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のカードリーダ1は、磁気データを記録するためのライト用コイル62Aにライト電流を供給するライト用駆動回路20は、所定の周期でオンオフが切り換わるチョッピング電流をライト用コイル62Aに供給する。そして、チョッピング電流のデューティ比を制御することによって実効電圧を調節し、磁気カード2への着磁強度を調節する。従って、抵抗や複数の電源を用いてライト電流を調節する必要がないので、ライト用駆動回路20の小型化および低コスト化を図ることができるとともに、抵抗
からの発熱量が大きくなることを回避できる。
【0032】
また、本形態では、チョッピング電流により記録された磁気データ(着磁パターン)を読み取るリード用磁気ヘッド6BのリードギャップGbよりも、チョッピング電流の1回のオンオフの期間(チョッピング周期T)に記録される着磁パターンの記録方向の長さLxの方が短くなるように、チョッピング電流の周波数fが設定されている。すなわち、VT<Gb(V/f<Gb)の条件を満たすように設定されている。これにより、リード用磁気ヘッド6Bから得られた再生波形Aには、チョッピング電流のオンオフに起因する着磁パターンの変動が表れにくい。従って、良好な再生波形を得ることができるので、記録した磁気データを精度良く再生することができる。
【0033】
更に、チョッピング電流によって実効電圧を小さくして記録した着磁パターンは、電圧の低い一定のライト電流によって記録した着磁パターンよりも再生波形の立ち上がりが良好であり、再生波形が矩形波に近い形状となる。従って、低抗磁力カード(Lo-Coカード)や、低抗磁力カード(Lo-Coカード)と高抗磁力カード(Hi-Coカード)の中間の着磁強度のカード(Mid-Coカード)に磁気データを記録する際、良好な再生波形を得ることができるので、記録した磁気データを精度良く再生することができる。
【0034】
本形態では、CPU10からライト用駆動回路20に対して、チョッピング電流のオンオフの周期を設定する第1制御信号S1を供給するとともに、第1制御信号S1とは別経路で、チョッピング電流のデューティ比を設定する第2制御信号S2を供給する。従って、チョッピング電流のオンオフの周期とデューティ比を個別に制御することができるので、良好な再生波形を得ることができる周期のチョッピング電流を供給し、且つ、磁気カード2の規格に応じた着磁強度で磁気データを記録することができる。
【0035】
(変形例)
(1)上記形態は、ライト用磁気ヘッド6Aおよびリード用磁気ヘッド6Bを備え、ライト用コイル62Aとリード用コイル62Bを別々のヘッドに設けた構成であったが、同一のヘッドにライト用コイル62Aとリード用コイル62Bを設けることができる。例えば、共通のコアにライト用コイル62Aとリード用コイル62Bを巻回し、磁気データを書込む際はライト用駆動回路20からライト用コイル62Aにライト電流を供給し、磁気データを読取る際はリード用コイル62Bに生じた誘導電流をリード用回路30に出力すればよい。また、ライト用コイル62Aとリード用コイル62Bを1つのコイルによって兼用することもできる。
【0036】
(2)上記形態は、ライト用駆動回路20がチョッピング回路であり、チョッピング回路としてモータドライバICを用いているが、チョッピング回路として他の回路を用いることができる。例えば、H-Bridbe回路を用いてチョッピング回路を構成してもよい。また、トランジスタやFETを直接CPU10によって制御してチョッピング制御を行うこともできる。
【符号の説明】
【0037】
1…カードリーダ、2…磁気カード、2a…磁気ストライプ、5…カード挿入口、6A…ライト用磁気ヘッド、6B…リード用磁気ヘッド、7…カード搬送路、8…カード搬送機構、9…制御部、20…ライト用駆動回路、30…リード用回路、51…センサ、61…センサ面、62A…ライト用コイル、62B…リード用コイル、63A、63B…コア、81…駆動ローラー、82…パッドローラー、83…搬送モータ、A、B…再生波形、Ga…ライトギャップ、Gb…リードギャップ、S1…第1制御信号、S2…第2制御信号、S3…第3制御信号、T…チョッピング周期、V…カード搬送速度、X…カード搬送方向