(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】セグメントのローリング制御構造及びセグメントのローリング制御方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/04 20060101AFI20220301BHJP
E21D 11/08 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
E21D11/04 Z
E21D11/08
(21)【出願番号】P 2017242606
(22)【出願日】2017-12-19
【審査請求日】2020-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592094586
【氏名又は名称】都築コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】大木 智明
(72)【発明者】
【氏名】四方 弘章
(72)【発明者】
【氏名】後藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】斧 申二
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 竜之介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 眞也
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-248774(JP,A)
【文献】特開平08-199996(JP,A)
【文献】特開平11-141285(JP,A)
【文献】実開昭55-081193(JP,U)
【文献】特開2008-162273(JP,A)
【文献】特開2005-120661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
E21D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメントの切羽側と坑口側の側面にそれぞれ凹設されたピン嵌合孔と、隣り合うセグメントの互いに対向する切羽側と坑口側
の前記ピン嵌合孔同士に嵌合する調芯ピンとを備えるとともに、前記切羽側と坑口側
の前記ピン嵌合孔をセグメント1ピース当り
それぞれ複数対設けて構成され、
且つ、前記切羽側
の前記ピン嵌合孔と
前記坑口側の
前記ピン嵌合孔
とは、中心を周方向に所定の量ずらして配設され
、
中心を周方向の一方向側にずらした前記切羽側と前記坑口側の一対のピン嵌合孔と、中心を周方向の他方向側にずらした前記切羽側と前記坑口側の一対のピン嵌合孔と、を備えていることを特徴とするセグメントのローリング制御構造。
【請求項2】
請求項
1に記載のセグメントのローリング制御構造において、
前記切羽側と坑口側の一対のピン嵌合孔の中心を周方向にずらす前記所定の量が1mm~3mmであることを特徴とするセグメントのローリング制御構造。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載のセグメントのローリング制御構造において、
前記調芯ピンが、隣り合うセグメントの互いに対向する切羽側と坑口側
の前記ピン嵌合孔同士に嵌合する軸線方向両側がテーパー状で、略そろばん玉状に形成されていることを特徴とするセグメントのローリング制御構造。
【請求項4】
ローリングが必要な場合に、隣り合う請求項1から請求項
3のいずれかに記載のセグメントのローリング制御構造を備えたセグメントのピン嵌合孔同士に前記調芯ピンを嵌合させ、セグメント組立とともにローリングを強制的に発生させるようにしたことを特徴とするセグメントのローリング制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントのローリング制御構造及びセグメントのローリング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、シールド工法においては、シールドマシン内部で、あらかじめ工場製作された鉄筋コンクリート製、鋼製などの円弧状でブロック状のセグメントをエレクタにより組みあげ、トンネル断面の1周分(1リング)のトンネル覆工本体を構築する。
【0003】
その後、シールドマシンにより地山を掘り進み、シールドマシン内部にトンネル断面の1周分(1リング)のセグメント組立スペースを確保した段階で、再びトンネル断面の1周分(1リング)のセグメントを組み立てるという作業を繰り返し、トンネルを構築してゆく。
【0004】
一方、先に組立したセグメントと、後に組立したセグメントには円周方向にずれが生じる場合がある。これをローリングといい、このローリングは、1リングごとにみると0~数mm程度の微小であっても、同じ方向に連続してローリングが発生するとトンネル延長に従い累積されるため、大きなずれとなる場合がある。
【0005】
道路や鉄道のシールドトンネルでは、セグメント組立完了後に床版や照明、換気ファン等の内部構築をして設備を取り付けるために、セグメント自体にあらかじめインサート金具や、突起部等を付けておく必要があり、セグメント組立後にインサート金具や突起物等がトンネル断面の円周方向のどの位置にあるかが重要で、ローリングが累積して大きなずれが発生すると支障が生じることになる。
【0006】
そこで、従来、シールド工法でトンネルを構築する際には、ローリング修正用のセグメントを使用することにより、ローリング修正を行ったり、設置部材にズレを吸収する機構設けるようにしている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-2155号公報
【文献】特開2008-2156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ローリング修正用のセグメントを使用する場合には、セグメント構造の制約上、数mm単位の修正は不可能で、1Rで20mm程度~数10mm程度を一度に修正せざるを得ず、大きなずれを一度に修正することで多大な労力を要するとともに修正精度を確保することが難しくなる。
【0009】
また、ズレを吸収する機構を設け、部材設置時の位置調整を行う場合においても、多大な労力がかかる上、プレキャスト部材の場合には機構の構造に制約が生じることもある。
【0010】
さらに、セグメントのローリングリスクを考えると、インバートや側壁のように定位置でセグメントに取り付ける部材は、セグメント製作時に一体化しておくことが難しい。また、側壁のプレキャスト化は、セグメントのローリングを吸収する機構を組み込むことが難しく実現し難い。このため、従来は側壁を現場でのコンクリート打設で構築しなくてはならなかった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、より効率的且つ効果的にセグメントのローリングを制御することを可能にするセグメントのローリング制御構造及びセグメントのローリング制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0013】
本発明のセグメントのローリング制御構造は、セグメントの切羽側と坑口側の側面にそれぞれ凹設されたピン嵌合孔と、隣り合うセグメントの互いに対向する切羽側と坑口側の前記ピン嵌合孔同士に嵌合する調芯ピンとを備えるとともに、前記切羽側と坑口側の前記ピン嵌合孔をセグメント1ピース当りそれぞれ複数対設けて構成され、且つ、前記切羽側の前記ピン嵌合孔と前記坑口側の前記ピン嵌合孔とは、中心を周方向に所定の量ずらして配設され、中心を周方向の一方向側にずらした前記切羽側と前記坑口側の一対のピン嵌合孔と、中心を周方向の他方向側にずらした前記切羽側と前記坑口側の一対のピン嵌合孔と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明のセグメントのローリング制御構造においては、前記切羽側と坑口側の一対のピン嵌合孔の中心を周方向にずらす前記所定の量が1mm~3mmであることがより望ましい。
【0016】
また、本発明のセグメントのローリング制御構造においては、前記調芯ピンが、隣り合うセグメントの互いに対向する切羽側と坑口側の前記ピン嵌合孔同士に嵌合する軸線方向両側がテーパー状で、略そろばん玉状に形成されていることがさらに望ましい。
【0017】
本発明のセグメントのローリング制御方法は、ローリングが必要な場合に、隣り合う上記のいずれかのセグメントのローリング制御構造を備えたセグメントのピン嵌合孔同士に前記調芯ピンを嵌合させ、セグメント組立とともにローリングを強制的に発生させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のセグメントのローリング制御構造及びセグメントのローリング制御方法においては、より効率的且つ効果的にセグメントのローリングを制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るセグメント及びセグメントのローリング制御構造を示す図であり、(a)が坑口側の側面図、(b)が平面図、(c)が切羽側の側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る覆工の展開図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るセグメント及びセグメントのローリング制御構造の調芯ピンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1から
図3を参照し、本発明の一実施形態に係るセグメントのローリング制御構造及びセグメントのローリング制御方法について説明する。
【0021】
本実施形態のセグメントのローリング制御構造Aは、
図1及び
図2、
図3に示すように、セグメント本体(セグメント)1の切羽側の側面1aと坑口側の側面1bにそれぞれ凹設されたピン嵌合孔2、3と、隣り合うセグメント1の互いに対向する切羽側と坑口側一対のピン嵌合孔2、3同士に嵌合する調芯ピン4とを備えるとともに、切羽側と坑口側の一対のピン嵌合孔2、3をセグメント1ピース当り複数対設けて構成されている。
【0022】
また、坑口側のピン嵌合孔3と切羽側のピン嵌合孔2は、周方向に1mm~3mm程度ずらして配設されている。
【0023】
さらに、複数の一対の坑口側のピン嵌合孔3と切羽側のピン嵌合孔2はそれぞれ、坑口側のピン嵌合孔3と切羽側のピン嵌合孔2の位置を時計廻り(周方向の一方向)T1と逆廻り(周方向の他方向)T2の2種類でずらすようにする。
【0024】
これにより、どちらのピン嵌合孔2、3を使用して調芯ピン4を設置するかによって、組み立てるセグメント1は、既設のセグメント1に対して時計廻り、または逆廻りに1mm~3mm程度相対的に回転させることが可能になる。
【0025】
なお、セグメント継手5は3mm程度ずれても締結できる継手(例えばSUリング、ボルト)とする。
【0026】
そして、本実施形態のセグメントのローリング制御方法では、セグメント1の坑口側のピン嵌合孔3のローリングさせたい方向に適したズレのピン嵌合孔3に調芯ピン4を設置し、セグメント組立時にはズレた位置の調芯ピン4が、既設セグメント1の切羽側のピン嵌合孔2にぴったり合い、ローリングを強制的に発生させる。
【0027】
これにより、ローリングの制御を実現することが可能になり、ピン嵌合孔2、3を設け、ピン嵌合孔2、3に調芯ピン4を取り付けるだけで、ローリングを制御し、セグメント1のズレを修正することが可能になる。
【0028】
なお、ローリング制御が必要ない場合には、調芯ピン4を設置しなければよい。また、調芯ピン4はピン嵌合孔2、3に嵌合して取り付けることが可能であれば、特にその形状を限定する必要はないが、例えば、
図3に示すように嵌合部4a、4bをテーパー状に形成、言い換えれば、略そろばん玉状に形成すると、取扱性、施工性をよくすることができる。
【0029】
したがって、本実施形態のセグメントのローリング制御構造A及びセグメントのローリング制御方法においては、シールドトンネル構築中にセグメントローリングを制御することにより、内部構築の一部をセグメント製作時に一体化して付けておくことができる。また、後施工の内部構築のためのインサート金具や突起部等が設計通りの定位置に配置することが可能になるので、側壁などのプレキャスト化が容易になり、その部材の設置が簡便になる。
【0030】
よって、本実施形態のセグメントのローリング制御構造A及びセグメントのローリング制御方法によれば、より効率的且つ効果的にセグメント1のローリングを制御することが可能になる。
【0031】
以上、本発明に係るセグメントのローリング制御構造及びセグメントのローリング制御方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 セグメント(セグメント本体)
2 切羽側のピン嵌合孔
3 坑口側のピン嵌合孔
4 調芯ピン
4a 嵌合部
4b 嵌合部
5 セグメント継手
A セグメントのローリング制御構造