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特許7032134ピリジルアミノ酢酸化合物を含有する予防及び/又は治療剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】ピリジルアミノ酢酸化合物を含有する予防及び/又は治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/444 20060101AFI20220301BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220301BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
A61K31/444
A61P27/02
A61P27/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017527490
(86)(22)【出願日】2016-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2016070110
(87)【国際公開番号】W WO2017006985
(87)【国際公開日】2017-01-12
【審査請求日】2019-06-27
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2015137968
(32)【優先日】2015-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】桐原 朋子
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 敦
(72)【発明者】
【氏名】シャリフ ナジャム エイ
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】中西 聡
【審判官】前田 佳与子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-19650号公報(JP,A)
【文献】特開2014-31369号公報(JP,A)
【文献】米国特許公開第2014/0018396号明細書(US,A1)
【文献】国際公開第10/113957号(WO,A1)
【文献】国際公開第12/43891号(WO,A1)
【文献】特開2002-179694号公報(JP,A)
【文献】「関西の専門医が語る ドクター’sコラム」、[online]、2010年9月23日、[2021年10月18日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20100923074818/https://eonet.jp/health/doctor/column19_1.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-9/72,31/00-33/44,47/00-47/69
A61P27/02,27/06
CAplus/MEDLINE/REGISTRY/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を含有する、高度に上昇した眼圧を伴う疾患の療剤であって、
前記高度に上昇した眼圧を伴う疾患が、眼圧が40~80mmHgの範囲内にある疾患であり、
(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩以外の他の緑内障若しくは高眼圧症の予防及び/又は治療薬を含有しない療剤。
【請求項2】
前記高度に上昇した眼圧を伴う疾患が、急性原発閉塞隅角症、原発閉塞隅角緑内障、続発閉塞隅角緑内障又は急性の眼圧上昇である、請求項1に記載の療剤。
【請求項3】
(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.001~0.03%(w/v)含む、請求項1又は2に記載の療剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の療剤を含む点眼剤。
【請求項5】
高度に上昇した眼圧を伴う疾患の療剤の製造における、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩の使用であって、
前記高度に上昇した眼圧を伴う疾患が、眼圧が40~80mmHgの範囲内にある疾患であり、
前記治療剤は、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩以外の他の緑内障若しくは高眼圧症の予防及び/又は治療薬を含有しない、使用。
【請求項6】
前記高度に上昇した眼圧を伴う疾患が、急性原発閉塞隅角症、原発閉塞隅角緑内障、続発閉塞隅角緑内障又は急性の眼圧上昇である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.001~0.03%(w/v)含む、請求項5又6に記載の使用。
【請求項8】
前記療剤が点眼剤である、請求項5~7のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を含有する予防及び/又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、種々の病因により眼圧が上昇し、眼球の内部組織(網膜、視神経など)が障害を受けることで失明に至る危険性のある眼疾患である。緑内障の治療方法としては、眼圧下降療法が一般的であり、その代表的なものとして薬物療法、レーザー治療法、手術療法などがある。
ここで、一部の緑内障、例えば、原発閉塞隅角緑内障の治療では、虹彩切開術等の根本的治療が行われる前に、アセタゾラミドの経静脈投与、経口投与等をすることで高度に上昇した眼圧を早急に下降させる治療が行われている。しかし、この治療は安全性や効果の面で十分とは言えず、より安全性が高く、かつ、より高度に上昇した眼圧を早急に下降させる新たな薬物療法が望まれている。
(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルは、下記式(1):
【化1】
で表される化合物であり、特許文献1に膨大な数のピリジルアミノ酢酸化合物の一つとして記載されている。また、それらピリジルアミノ酢酸化合物はEP2アゴニスト作用を有することから(特許文献2)、眼圧下降作用が期待され、緑内障治療剤となりうることが記載されている(特許文献1)。
さらに、特許文献3及び4には、上記式(1)で表される化合物とチモロール等の他の緑内障治療薬とを組み合わせることで眼圧下降作用が増強されることが記載されている。なお、特許文献1~4の全ての記載内容は、本明細書の開示として援用する。
しかし、これまでに上記式(1)で表される化合物又はその塩が、高度に上昇した眼圧を早急に、かつ、安全に下降させ得ることについては全く報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2012/0190852号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0054172号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0018396号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0018350号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明の課題は、上記式(1)で表される化合物又はその塩の新たな医薬用途を見出すことである。
【0005】
本発明者等は、上記課題のために鋭意検討を行った結果、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩(以下、「本化合物」ともいう)が、安全に、かつ、高度に上昇した眼圧を早急に下降させることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に関するものであり得る。
【0006】
〔1〕(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を含有する、高度に上昇した眼圧を伴う疾患の予防及び/又は治療剤。
〔2〕高度に上昇した眼圧を伴う疾患が、急性原発閉塞隅角症、原発閉塞隅角緑内障、続発閉塞隅角緑内障又は急性の眼圧上昇である、前記〔1〕に記載の予防及び/又は治療剤。
〔3〕(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.001~0.03%(w/v)含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の予防及び/又は治療剤。
〔4〕(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩以外の他の緑内障若しくは高眼圧症の予防及び/又は治療薬を含有しない、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の予防及び/又は治療剤。
〔5〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の予防及び/又は治療剤を含む点眼剤。
〔6〕高度に上昇した眼圧を伴う疾患の予防及び/又は治療に使用するための(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩。
〔7〕高度に上昇した眼圧を伴う疾患が、急性原発閉塞隅角症、原発閉塞隅角緑内障、続発閉塞隅角緑内障又は急性の眼圧上昇である、前記〔6〕に記載の(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩。
〔8〕前記〔6〕又は〔7〕に記載の(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を含む点眼剤。
〔9〕高度に上昇した眼圧を伴う疾患の予防及び/又は治療剤の製造における、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩の使用。
〔10〕高度に上昇した眼圧を伴う疾患が、急性原発閉塞隅角症、原発閉塞隅角緑内障、続発閉塞隅角緑内障又は急性の眼圧上昇である、前記〔9〕に記載の使用。
〔11〕(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を0.001~0.03%(w/v)含む、前記〔9〕又は〔10〕に記載の使用。
〔12〕(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩以外の他の緑内障若しくは高眼圧症の予防及び/又は治療薬を使用しない、前記〔9〕~〔11〕のいずれか1項に記載の使用。
〔13〕前記予防及び/又は治療剤が点眼剤である、前記〔9〕~〔12〕のいずれか1項に記載の使用。
〔14〕(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩を、高度に上昇した眼圧を伴う疾患の予防及び/又は治療が必要な患者に投与することを含む、高度に上昇した眼圧を伴う疾患の予防及び/又は治療方法。
〔15〕高度に上昇した眼圧を伴う疾患が、急性原発閉塞隅角症、原発閉塞隅角緑内障、続発閉塞隅角緑内障又は急性の眼圧上昇である、前記〔14〕に記載の方法。
〔16〕(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩の投与量が、0.001~0.03%(w/v)である、前記〔14〕又は〔15〕に記載の方法。
〔17〕(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩以外の他の緑内障若しくは高眼圧症の予防及び/又は治療薬を投与しない、前記〔14〕~〔16〕のいずれか1項に記載の方法。
〔18〕前記投与が、点眼投与である、前記〔14〕~〔17〕のいずれか1項に記載の方法。
【0007】
なお、前記〔1〕から〔5〕の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができる。前記〔6〕から〔8〕の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができ、かつ、本明細書における「予防及び/又は治療剤」に関する説明が当該「(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩」の態様にも適用できる。前記〔9〕から〔13〕の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができ、かつ、本明細書における「予防及び/又は治療剤」に関する説明が当該「使用」の態様にも適用できる。前記〔14〕から〔18〕の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができ、かつ、本明細書における「予防及び/又は治療剤」に関する説明が当該「方法」の態様にも適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下、特に断りがない場合は、本発明の「予防及び/又は治療剤」を単に「治療剤」と表現する。
本発明の治療剤に含有される、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩は、米国特許出願公開第2012/0190852号明細書(特許文献1)に記載の方法、当該技術分野における通常の方法等に従って製造することができる。
【0009】
本発明の治療剤に含有される、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルの塩は、薬理上許容される塩であれば特に制限されない。具体的には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩若しくはリン酸塩等の無機酸塩;又は酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、グルタミン酸塩若しくはアスパラギン酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、好ましくは、塩酸塩又はトリフルオロ酢酸塩が挙げられる。
【0010】
本発明の治療剤に含有される、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩の含有量は、特に制限されないが、点眼剤の場合、下限は0.0003%(w/v)が好ましく、0.001(w/v)がより好ましく、0.0013%(w/v)がさらに好ましく、0.0015%(w/v)が特に好ましい。上限は、0.03%(w/v)が好ましく、0.01%(w/v)がより好ましく、0.005%(w/v)がさらに好ましく、0.003%(w/v)が特に好ましく、0.0027%(w/v)が殊更に好ましい。より詳細に、含有量は、0.0003~0.03%(w/v)が好ましく、0.001~0.01%(w/v)がより好ましく、0.001~0.005%(w/v)がさらに好ましく、0.001~0.003%(w/v)が特に好ましく、0.0013~0.003%(w/v)が殊更に好ましく、0.0015~0.0027%(w/v)が格別好ましい。より具体的には、0.0010%(w/v)、0.0011%(w/v)、0.0012%(w/v)、0.0013%(w/v)、0.0014%(w/v)、0.0015%(w/v)、0.0016%(w/v)、0.0017%(w/v)、0.0018%(w/v)、0.0019%(w/v)、0.0020%(w/v)、0.0021%(w/v)、0.0022%(w/v)、0.0023%(w/v)、0.0024%(w/v)、0.0025%(w/v)、0.0026%(w/v)、0.0027%(w/v)、0.0028%(w/v)、0.0029%(w/v)、0.0030%(w/v)、0.005%(w/v)、0.01%(w/v)、0.03%(w/v)及びこれらの量を上限又は下限とする範囲が好ましい。ここで、「%(w/v)」は、点眼液100mL中に含まれる有効成分(ここでは、本化合物)や添加剤(界面活性剤等)の質量(g)を意味する。例えば、本化合物0.01%(w/v)とは、点眼液100mL中に含まれる本化合物の含有量が0.01gであることを意味する。
【0011】
尚、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルの塩を含有する場合、塩が遊離した時の(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルの含有量が前記の範囲となることを意味する。
【0012】
本発明の治療剤には、必要に応じて添加剤を用いることができる。添加剤としては、例えば、界面活性剤、緩衝剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、高分子量重合体等を加えることができる。
本発明の治療剤には、医薬品の添加物として使用可能な界面活性剤を適宜配合することができる。
界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ビタミンE TPGS、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
より具体的には、ポリオキシエチレンヒマシ油としては、酸化エチレンの重合数の異なる種々のポリオキシエチレンヒマシ油を用いることができ、酸化エチレンの重合数は5~100が好ましく、20~50がより好ましく、30~40が特に好ましく、35が最も好ましい。ポリオキシエチレンヒマシ油の具体例としては、ポリオキシル5ヒマシ油、ポリオキシル9ヒマシ油、ポリオキシル15ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40ヒマシ油等が挙げられ、ポリオキシル35ヒマシ油が最も好ましい。
【0013】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、酸化エチレンの重合数の異なる種々のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることができ、酸化エチレンの重合数は10~100が好ましく、20~80がより好ましく、40~70が特に好ましく、60が最も好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の具体例としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等が挙げられ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が最も好ましい。
【0014】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリソルベート65等が挙げられ、ポリソルベート80が最も好ましい。
ビタミンE TPGSは、トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステルともいう。
【0015】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ポリオキシル40等が挙げられる。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール等が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0016】
本発明の治療剤に界面活性剤を配合する場合、その含有量は、界面活性剤の種類等により適宜調整することができる。具体的に、下限は0.001%(w/v)が好ましく、0.01%(w/v)がより好ましく、0.1%(w/v)がさらに好ましく、0.5%(w/v)が特に好ましく、0.8%(w/v)が最も好ましい。上限は10%(w/v)が好ましく、5%(w/v)がより好ましく、4%(w/v)がさらに好ましく、3%(w/v))が特に好ましく、2%(w/v)が最も好ましい。より詳細に、含有量は、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.1~4%(w/v)がさらに好ましく、0.5~3%(w/v)が特に好ましく、0.8~2%(w/v)が最も好ましい。
【0017】
本発明の治療剤には、医薬品の添加物として使用可能な緩衝剤を適宜配合することができる。
緩衝剤の例としては、リン酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酢酸又はその塩、炭酸又はその塩、酒石酸又はその塩、ε-アミノカプロン酸、トロメタモール等が挙げられる。より具体的には、リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられ、ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられ、クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられ、酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられ、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられる。中でも、ホウ酸若しくはその塩、又は、クエン酸若しくはその塩が好ましい。
【0018】
本発明の治療剤に緩衝剤を配合する場合、その含有量は、緩衝剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.1~3%(w/v)がさらに好ましく、0.2~2%(w/v)が最も好ましい。
【0019】
本発明の治療剤には、医薬品の添加物として使用可能な等張化剤を適宜配合することができる。
等張化剤の例としては、イオン性等張化剤や非イオン性等張化剤等が挙げられる。
イオン性等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられ、非イオン性等張化剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。本発明の治療剤に等張化剤を配合する場合、その含有量は、等張化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.01~10%(w/v)が好ましく、0.02~7%(w/v)がより好ましく、0.1~5%(w/v)がさらに好ましく、0.5~4%(w/v)が特に好ましく、0.8~3%(w/v)が最も好ましい。
【0020】
本発明の治療剤には、医薬品の添加物として使用可能な安定化剤を適宜配合することができる。
安定化剤の例としては、エデト酸、エデト酸一ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられ、エデト酸二ナトリウムが特に好ましい。エデト酸ナトリウムは水和物であってもよい。本発明の治療剤に安定化剤を配合する場合、その含有量は、安定化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~1%(w/v)が好ましく、0.005~0.5%(w/v)がより好ましく、0.01~0.1%(w/v)が最も好ましい。
【0021】
本発明の治療剤には、医薬品の添加物として使用可能な防腐剤を適宜配合することができる。
防腐剤の例としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられる。本発明の治療剤に防腐剤を配合する場合、その含有量は、防腐剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.0005~0.1%(w/v)がより好ましく、0.001~0.05%(w/v)がさらに好ましく、0.005~0.010%(w/v)が最も好ましい。
【0022】
本発明の治療剤には、医薬品の添加物として使用可能な抗酸化剤を適宜配合することができる。
抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の治療剤に抗酸化剤を配合する場合、その含有量は、抗酸化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.0005~0.1%(w/v)がより好ましく、0.001~0.05%(w/v)が最も好ましい。
【0023】
本発明の治療剤には、医薬品の添加物として使用可能な高分子量重合体を適宜、配合することができる。
高分子量重合体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
本発明の治療剤に高分子量重合体を配合する場合、その含有量は、高分子量重合体の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~5%(w/v)が好ましく、0.01~1%(w/v)がより好ましく、0.1~0.5%(w/v)が最も好ましい。
本発明の治療剤のpHは、4.0~8.0が好ましく、4.5~7.5がより好ましく、5.0~7.0が特に好ましく、5.5~6.5が最も好ましい。本発明の治療剤は、当該pHを調整するためのpH調整剤として、例えば、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を添加してもよい。
【0024】
本発明の治療剤は、種々の素材で製造された容器に入れて保存することができる。例えば、ポリエチレン製、ポリプロピレン製等の容器を用いることができ、点眼のし易さ(容器の硬さ)や本化合物の安定性等の観点で、ポリエチレン製の容器に入れて保存することが好ましい。
本発明の治療剤の剤形は、医薬品として使用可能なものであれば特に制限はない。具体的には、点眼剤、眼科用注射剤、眼軟膏等が挙げられ、特に点眼剤が好ましい。これら薬剤の剤形は、当該技術分野における通常の方法に従って製造することができる。また、本発明の治療剤が液剤である場合の溶媒又は分散媒は水であることが好ましい。
【0025】
本発明の治療剤は、1又は複数、好ましくは1~3の、より好ましくは、1又は2の、本化合物以外の他の緑内障若しくは高眼圧症の予防及び/又は治療薬を含有してもよく、併用されてもよい。当該他の緑内障若しくは高眼圧症の予防及び/又は治療薬としては、特に制限はないが、具体的には、市販又は開発中の緑内障治療薬等が好ましく、市販の緑内障治療薬等がより好ましく、本化合物と作用機序の異なる市販の緑内障治療薬等が特に好ましい。より具体的には、非選択性交感神経作動薬、α2受容体作動薬、α1受容体遮断薬、β受容体遮断薬、副交感神経作動薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、Rhoキナーゼ阻害剤などが挙げられる。
非選択性交感神経作動薬の具体例としては、ジピベフリンが挙げられ、α2受容体作動薬の具体例としては、ブリモニジン、アプラクロニジンが挙げられ、α1受容体遮断薬の具体例としてはブナゾシンが挙げられ、β受容体遮断薬の具体例としては、チモロール、ベフノロール、カルテオロール、ニプラジロール、ベタキソロール、レボブノロール、メチプラノロールが挙げられ、副交感神経作動薬の具体例としてはピロカルピンが挙げられ、炭酸脱水酵素阻害剤の具体例としては、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミドが挙げられ、プロスタグランジン類の具体例としては、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、ビマトプロスト、トラボプロストが挙げられ、Rhoキナーゼ阻害剤の具体例としては、リパスジルが挙げられる。
【0026】
本発明の治療剤の一態様は、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩以外の、他の緑内障若しくは高眼圧症の予防及び/又は治療薬を含まない。
本発明の治療剤の一態様は、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピル又はその塩以外の、他の緑内障若しくは高眼圧症の予防及び/又は治療薬と併用されない。
本発明の治療剤は、経口でも非経口でも投与することができ、これらの製剤化には特別な技術は必要なく、汎用される技術を用いて製剤化をすることができる。投与剤型としては、点眼剤、眼軟膏、注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などが挙げられ、点眼剤が好ましい。
【0027】
本発明の治療剤の用法は、所望の薬効を奏するのに十分な用法であれば特に制限はなく、疾患の症状、患者の年齢や体重、薬剤の剤形等に応じて適宜選択できる。具体的には、1回量1~5滴、好ましくは1~3滴、より好ましくは1~2滴、特に好ましくは1滴を、1日1~4回、好ましくは1日1~3回、より好ましくは1日1~2回、特に好ましくは1日1回を、毎日~1週間毎に点眼投与することができる。1日1回1滴を毎日、点眼投与することが好ましい。ここで、1滴は、通常、約0.01~約0.1mLであり、好ましくは、約0.015~約0.07mLであり、より好ましくは、約0.02~約0.05mLであり、特に好ましくは約0.03mLである。
本発明の治療剤は、高度に上昇した眼圧を伴う疾患の予防及び/又は治療剤であり、早急に眼圧を低下又は下降させるために用いられる医薬製剤である。
本発明における「高度に上昇した眼圧を伴う疾患」とは、眼圧が、例えば、25~100mmHg、好ましくは25~80mmHg、より好ましくは30~80mmHg、さらに好ましくは40~80mmHgの範囲内にある疾患を言う。このような疾患は、早急に眼圧を下降させることが必要である。
本発明による治療・予防が必要となる「高度に上昇した眼圧」には、数週間、数日又は数時間の間に急速に眼圧が上記高眼圧の範囲に上昇する場合のような、いわゆる急性の高眼圧状態のみならず、数ヶ月や数年の長い年月をかけて上記のような高度に上昇した眼圧になる、いわゆる慢性的な高眼圧状態も含む。
【0028】
ここで、「早急に眼圧を低下」または「早急に眼圧を下降」とは、例えば、24時間以内、好ましくは12時間以内、より好ましくは6時間以内、さらに好ましくは4時間以内、殊更好ましくは2時間以内に、眼圧を正常なレベル、例えば、10~25mmHg、好ましくは10~20mmHgの範囲内とすることを言う。さらに言えば、例えば6時間以内に-1~-90mmHg、好ましくは-5~-80mmHg、より好ましくは-7~-70mmHg、さらに好ましくは-10~-70mmHg、最も好ましくは-10~-60mmHg眼圧を低下させること、若しくは、例えば2時間以内に-1~-90mmHg、好ましくは-5~-80mmHg、より好ましくは-7~-70mmHg、さらに好ましくは-10~-70mmHg、最も好ましくは-10~-60mmHg眼圧を低下させることが適当である。ここで、「-10mmHg」のような負の値は、治療前に比べて眼圧が10mmHg低下したことを意味するものとする。
【0029】
本発明における「高度に上昇した眼圧を伴う疾患」としては、例えば、急性原発閉塞隅角症、原発閉塞隅角緑内障、続発閉塞隅角緑内障又はぶどう膜炎等炎症に起因する急性の眼圧上昇等の急性の眼圧上昇が挙げられる。
上記疾患の予防及び/又は治療が必要な患者としては、ヒトを含む又は含まない動物、特にヒトを含む又は含まない哺乳動物が挙げられる。
【実施例
【0030】
以下に製剤例及び薬理試験結果を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
製剤例
以下に本発明の治療剤における代表的な製剤例を示す。なお、下記製剤例において各成分の配合量は製剤100mL中の含量である。また、本化合物Aは、(6-{[4-(ピラゾール-1-イル)ベンジル](ピリジン-3-イルスルホニル)アミノメチル}ピリジン-2-イルアミノ)酢酸イソプロピルを意味する。
【0031】
[製剤例1]
点眼剤(100mL中)
本化合物A 0.002g
ホウ酸 0.2g
グリセリン 2.0g
ポリソルベート80 0.5g
エデト酸二ナトリウム 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0032】
[製剤例2]
点眼剤(100mL中)
本化合物A 0.002g
リン酸二水素ナトリウム 0.2g
グリセリン 2.0g
ビタミンE TPGS 0.8g
エデト酸二ナトリウム 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0033】
[製剤例3]
点眼剤(100mL中)
本化合物A 0.002g
クエン酸三ナトリウム 0.2g
グリセリン 2.0g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.3g
エデト酸二ナトリウム 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0034】
なお、前記製剤例1~3において、本化合物Aおよび/又は添加剤の種類および/又は配合量を適宜調整することで、所望の薬剤を得ることができる。
【0035】
[薬理試験]
本化合物Aの有用性を調べるため、実験動物(高眼圧サル)に対する眼圧下降効果を検討した。試験溶液としては、下記に示すとおり、本化合物Aを含まない参考溶液をコントロールとして用い、本化合物Aを含む溶液を本願発明の実施例1として準備し、ラタノプロスト点眼液を比較例1として準備した。
【0036】
(試験溶液の調製)
(1)参考溶液の調製
ポリオキシル35ヒマシ油1.7 gに0.5%(w/v) エデト酸二ナトリウム/10%(w/v)グリセリン溶液10 mL、1%(w/v)ベンザルコニウム塩化物溶液1mL、精製水30mL、2%(w/v)ホウ酸/0.2%(w/v)ソルビン酸溶液50mLを加え溶解した。溶解を確認後、水酸化ナトリウム溶液を適量加え、製剤のpHを6.5付近とした後、精製水を適量加えて全量を100mLとし、コントロールとしての参考溶液を準備した。
【0037】
(2)本化合物A溶液の調製(実施例1)
ポリオキシル35ヒマシ油2.55gに本化合物A 0.015g、0.5%(w/v) エデト酸二ナトリウム/10%(w/v)グリセリン溶液15 mL、1%(w/v)ベンザルコニウム塩化物溶液1.5mL、精製水45mL、2%(w/v)ホウ酸/0.2%(w/v)ソルビン酸溶液75mLを加え溶解した。溶解を確認後、水酸化ナトリウム溶液を適量加え、製剤のpHを6.5付近とした後、精製水を適量加えて全量を150mLとし、本化合物A溶液(実施例1):0.01w/v%を準備した。
(3)ラタノプロスト点眼液(比較例1)
市販のラタノプロスト点眼液(商品名:キサラタン(登録商標)点眼液0.005%(w/v)、点眼量:20μL)を使用した。
【0038】
(実験動物の作成)
GaasterlandおよびKupferの論文(Gaasterland D and Kupfer C. Invest Ophthalmol. 1974 Jun;13(6):455-7)に準じてレーザー誘発高眼圧サル(カニクイザル)を作成した(性別:雄性、1群11匹とし、合計3群を準備)。
【0039】
(試験方法)
(1)0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液(商品名:ベノキシール(登録商標)0.4%液)を上記実験動物の片眼に一滴ずつ点眼し、局所麻酔をした。
(2)各試験溶液(上記コントロール、実施例1又は比較例1)の点眼の直前に眼圧を測定し、初期眼圧とした。
(3)各試験溶液を上記実験動物の片眼に20μLずつ点眼した(対側眼は無処置)。
(4)各試験溶液の点眼後2時間、4時間および6時間経過後に、0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液を一滴ずつ眼圧測定眼に点眼して局所麻酔を行い、その後眼圧を測定した。また、眼圧は各3回測定し、その平均値を結果に示した。
なお、各3つの群に対する試験は、各群においてコントロール、実施例1及び比較例1の3種類の試験を、時期をずらして3回(3期)行う、3群3期の完全クロスオーバーで実施した。
【0040】
(結果および考察)
各投与群の投与後2時間、4時間および6時間における平均眼圧下降幅(対初期眼圧)を表1に示す。
【0041】
【表1】
*表1中、「負の記号(-)」は、例えば、-1.0の場合、初期眼圧に比べて眼圧が1.0低下したことを意味する。
【0042】
表1から明らかなように、実施例1の本化合物Aの眼圧下降作用は、比較例1のラタノプロスト投与群よりも大きく、かつ、投与から少なくとも2時間経過後から優れた眼圧下降作用を示した。

以上から、本化合物Aは、高眼圧サルによる試験において投与後速やかに優れた眼圧下降効果が得られることがわかった。