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特許7032141活性剤組成物、その調製、及び触媒におけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】活性剤組成物、その調製、及び触媒におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/02 20060101AFI20220301BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20220301BHJP
   C08F 210/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C08F4/02
C08F4/6592
C08F210/00
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018000104
(22)【出願日】2018-01-04
(62)【分割の表示】P 2015508961の分割
【原出願日】2013-03-14
(65)【公開番号】P2018090810
(43)【公開日】2018-06-14
【審査請求日】2018-02-01
【審判番号】
【審判請求日】2020-06-10
(31)【優先権主張番号】61/639,206
(32)【優先日】2012-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイーフエンバツハ,ステイーブン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ソーン,マシユー・グラント
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ルビン
【合議体】
【審判長】佐藤 健史
【審判官】福井 悟
【審判官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-53609(JP,A)
【文献】特開平8-48712(JP,A)
【文献】特開昭59-100105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)連結化合物及び該連結化合物と接触する担体物質から形成される部を、
ii)少なくとも2以上の芳香族基を有し、該芳香族基の少なくとも2以上がそれぞれ芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有する多官能性化合物
接触させることによって形成される活性剤前駆体組成物であって
記担体物質は、無機酸化物から選択される無機担体であり、
前記連結化合物が有機金属化合物、非有機金属化合物又はそれらの混合物であり、
前記連結化合物が有機金属化合物である場合には、式:
MR1 st-s
を有する有機金属化合物であり、式中、MはMg、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、B、Ga、In、Sn及びそれらの混合物から選択される金属原子を表し;R1は同じであるか又は異なってもよく、且つC1‐C20ヒドロカルビル基を表し、該ヒドロカルビル基のベータ炭素はSiで置き換えられてもよく;Qはヘテロ原子又はヘテロ原子含有有機基を表し、該ヘテロ原子は該ヘテロ原子を介してMに直接結合し;tはMの原子価を表し、sは2≦s≦tである数である、
また、
前記連結化合物が非有機金属化合物である場合には、式:
11 t
で表される非有機金属化合物であり、式中、M1Taを表し;Q1N(Me) を表し;tはM1の原子価を表し、
前記多官能性化合物は芳香族ポリオールであり、
前記連結化合物の少なくとも一部は、前記多官能性化合物と反応できる、M-R、M-Q及び/又はM-Q部を有する、
オレフィン重合用触媒のための活性剤前駆体組成物。
【請求項2】
i)連結化合物及び該連結化合物と接触する担体物質から形成される部、
ii)少なくとも2以上の芳香族基を有し、該芳香族基の少なくとも2以上がそれぞれ芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有する、多官能性化合物、及び
iii)アルミノキサン
を接触させることによって形成される、活性剤組成物であって、
該組成物は、a-i)担体物質と連結化合物を接触させることにより、連結処理担体を形成させること、及びa-ii)この連結処理担体を、順次、多官能性化合物と接触させ、次にアルミノキサンと接触させることにより、形成され、
前記担体物質は、無機酸化物から選択される無機担体であり、
前記連結化合物が有機金属化合物、非有機金属化合物又はそれらの混合物であり、
前記連結化合物が有機金属化合物である場合には、式:
MR 1 s t-s
を有する有機金属化合物であり、式中、MはMg、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、B、Ga、In、Sn及びそれらの混合物から選択される金属原子を表し;R 1 は同じであるか又は異なってもよく、且つC 1 ‐C 20 ヒドロカルビル基を表し、該ヒドロカルビル基のベータ炭素はSiで置き換えられてもよく;Qはヘテロ原子又はヘテロ原子含有有機基を表し、該ヘテロ原子は該ヘテロ原子を介してMに直接結合し;tはMの原子価を表し、sは2≦s≦tである数である、
また、
前記連結化合物が非有機金属化合物である場合には、式:
1 1 t
で表される非有機金属化合物であり、式中、M 1 はTaを表し;Q 1 はN(Me) を表し;tはM 1 の原子価を表し、
前記多官能性化合物は芳香族ポリオールであり、
前記連結化合物の少なくとも一部は、前記多官能性化合物と反応できる、M-R 、M-Q及び/又はM -Q 部を有する、
オレフィン重合用触媒のための活性剤組成物。
【請求項3】
前記担体物質は、ケイ酸アルミニウム、カオリナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、イライト、ベントナイト、ハロイサイト、シリカ、アルミナ、シリカ‐アルミナ、マグネシア、チタニア及びジルコニアである、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
Qのヘテロ原子は、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄又はリンから選択される、請求項1又は2又は3記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規活性剤前駆体組成物、活性剤組成物、それらの調製、及びオレフィン重合用触媒におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミノキサン(アルモキサンとも呼ばれる)として公知の、部分的に加水分解されたアルミニウムアルキル化合物は、オレフィン重合用のメタロセンの活性化に有効である。メチルアルミノキサン(メチルアルモキサンとも呼ばれる)は、工業界で一般的に好まれるアルミニウム共触媒となっている。メチルアルミノキサンは、芳香族溶媒、典型的にはトルエンの10~30重量%溶液として市販されている。
【0003】
アルミノキサン又は修飾アルミノキサンの使用に基づいて、オレフィン重合用触媒系の効率を改善することに、かなりの努力がなされている。この件に関して、国際公開第2009/029857号公報は、トルエン溶液中、テトラヒドロフラン等のルイス塩基でメチルアルミノキサンを処理することにより、メチルアルミノキサンからジメチルアルミニウム陽イオンが形成することを示している。ルイス塩基で安定化したジアルキルアルミニウム陽イオンは、非アルミノキサン源からも誘導することができ、メタロセン触媒活性剤として使用できる。例えば、Klosinらの国際公開第2000/011006号公報及びOrganometallics,2000,19,4684-4686を参照のこと。メチルアルミノキサンがメタロセンと反応すると、例えば[Cp2Zr(μ‐Me)2AlMe2+又は[Cp2Ti(μ‐Me)2AlMe2+等のメタロセン‐ジアルキルアルミニウム陽イオンが形成する。これに関して、メチルアルミノキサンによるジルコノセン触媒前駆体の活性化について記述しているBabushkin及びBrintzinger著のJ.Am.Chem.Soc.,2002,124,12869-12873、並びにSarzottiら著のJ.Polymer Sci.A,2007,45,1677-1690;また、メチルアルミノキサンによるチタノセン触媒前駆体の活性化について記述しているBryliakov、Talsi及びBochmann著のOrganometallics,2004,23,149-152を参照のこと。
【0004】
シリカ担持メチルアルミノキサンは、現在市販される好ましいメタロセン触媒活性剤である。しかしながら、シリカ担持メチルアルミノキサンは少量のメタロセンのみを活性化することができ、結果としてこの系では比較的効率が低い。メタロセン分子を効率的に活性化するためには多量の過剰量のメチルアミノキサン(例えば、400:1より大きいAl:Zr原子比率)が必要であること、及び/又は、標準等級シリカ上に担持することができるメチルアルミノキサンが少量(例えば、20%未満のAl)であることにより、効率が低くなると考えられている。
【0005】
当該分野において、アルミノキサンは、継続的に改良の努力がなされており、特にそれらの安定性及び/又は活性化効率を増大させる改良の努力がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2009/029857号公報
【文献】国際公開第2000/011006号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Organometallics,2000,19,4684-4686.
【文献】J.Am.Chem.Soc.,2002,124,12869-12873.
【文献】J.Polymer Sci.A,2007,45,1677-1690.
【文献】Organometallics,2004,23,149-152.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規活性剤前駆体組成物及び活性剤組成物に関し、それらは高効率な触媒系を提供する。この組成物は、不活性な無水環境において一般的に安定であり、通常固体形態である。これらの望ましい特徴に加えて、オレフィン重合において共触媒として使用される場合、本発明の組成物は典型的な担持されたアルミノキサンよりも非常に良好に機能する。更に詳細には、結果として生じる本発明の活性剤組成物はメタロセンと相互作用して、高活性触媒系を生成する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、
i)連結化合物と接触した担体物質、及び
ii)多官能性化合物、
を含む活性剤前駆体組成物である。
【0010】
多官能性化合物は、2以上の芳香族基を有し、2以上のこの芳香族基はそれぞれ芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、アルミノキサン及び上記活性剤前駆体組成物を含む、活性剤組成物である。
【0012】
活性剤前駆体組成物、活性剤組成物及び触媒組成物を形成させる方法、並びに触媒組成物、本発明の触媒組成物を利用した重合方法、及びそれにより形成されるポリマーも、本発明により提供される。
【0013】
本発明のこれらの実施形態及び特徴、並びに他の実施形態及び特徴は、下記の明細書及び付属の特許請求の範囲から、更に明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
活性剤前駆体組成物及び活性剤組成物を形成するのに使用される成分、並びに結果として生じる活性剤前駆体組成物及び活性剤組成物は、アルゴン、窒素又はヘリウム等の不活性で水分を含まず酸素を含まない環境で取り扱われることが好ましく、なぜならこれらの成分及び組成物は、水分及び酸素に影響されやすいからである。
【0015】
本発明の活性剤前駆体組成物及び本発明の活性剤組成物の形成並びに/又は取扱いに関わる操作は、通常不活性な無水環境で行われる。一般的に、不活性な無水環境とは無水液体炭化水素溶媒であり、好ましくは芳香族炭化水素である。適切な脂肪族炭化水素として、イソブタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、及びイソオクタン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。芳香族炭化水素には、通常1以上のベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、1,2,4‐トリエチルベンゼン、1,3,5‐トリエチルベンゼン、アミルベン
ゼン、及びテトラヒドロナフタレン等が含まれる。溶媒の混合物を使用してもよい。トルエンは特に好ましい芳香族溶媒である。
【0016】
本発明の組成物
本発明の活性剤前駆体組成物及び活性剤組成物を形成するにあたり、本明細書において記述する成分を使用する。この組成物は本明細書において通常未変更の成分によって記述されるが、この成分は本発明の活性剤前駆体組成物又は活性剤組成物の一部である場合、活性剤前駆体組成物又は活性剤組成物の一部となった以前の形態と同じ形態でないことがわかる。例えば、連結化合物は連結部を形成してもよく、多官能性化合物は2以上の芳香族基を含む多官能性基であって2以上のこの芳香族基がそれぞれ芳香族基に1以上の極性基を有する多官能性基を形成してもよい。
【0017】
活性剤前駆体組成物
本発明の活性剤前駆体組成物は、i)連結化合物と接触した担体物質(本明細書において連結処理担体と呼ぶことがある)、及びii)2以上の芳香族基を有し、2以上のこの芳香族基がそれぞれ芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有する多官能性化合物からなる。これらの成分は活性剤前駆体組成物の一部になった以前と同じ形態であるとは限らないことがわかるが、この担体物質、連結化合物、及び多官能性化合物は下記に記載されるとおりである。本発明の活性剤前駆体組成物は、下記の方法により製造することができる。
【0018】
担体物質
担体物質は、有機物又は無機物であることができる。本発明の実施において使用される担体物質は、タルク、粘土、シリカ、アルミナ、シリカ‐アルミナ、塩化マグネシウム若しくはそれらの混合物等の任意の微粉砕無機固体担体、又は、球体、粒子状若しくは微粉砕のポリエチレン、ポリ塩化ビニル若しくはポリスチレン等の粒子状樹脂担体物質であってもよい。好ましい担体物質は、ハロゲン化マグネシウム等の無機粒子状固体触媒担体又はキャリア材であり、特に、カオリナイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、イライト、ベントナイト、ハロイサイト及び類似の耐火粘土等の、無機酸化物、ケイ酸アルミニウム又は無機酸化物含有無機組成物である。更に好ましい担体物質は無機酸化物であり、特にシリカ、アルミナ、及びシリカアルミナである。担体物質として特に好ましいのは粒子状シリカであり、特に多孔性粒子状シリカである。単独で、又はシリカ、アルミナ若しくはシリカ‐アルミナとの組合せで使用してもよい無機酸化物は、マグネシア、チタニア、及びジルコニア等である。
【0019】
任意に、担体物質は、完全に又は好ましくは部分的に脱水して、水を除去してもよい。担体物質は、100~1000℃で、好ましくは100~約600℃で、1~約100時間、好ましくは約3~約24時間、加熱することにより脱水してもよい。この処理は、減圧下で、又は窒素等の乾燥不活性ガスでパージしながら行ってもよい。代替として、担体物質は化学的に脱水してもよい。化学脱水は、水分及び酸素がない雰囲気において、例えばトリメチルアルミニウム等の脱水剤存在下、例えばヘプタン等の不活性低沸点溶媒中で担体をスラリーにすることにより行う。
【0020】
連結化合物と組み合わせるため、担体は反応性極性基(官能基)を有する必要がある。この極性基は通常、ハロゲン、酸素、硫黄、リン及び窒素ヘテロ原子等の電子豊富ドナーサイト、又は、1以上のこれらの原子や二重結合を含有するサイトを有する。このような極性基の例として、‐OH基、‐NH基、‐SH基、ヘテロ原子を含有する高歪環(例えば、四員‐Si‐O‐Si‐O‐環等の部分を形成する高温(約600~1000℃)でか焼した担体物質から得る環)、カルボニル基、及び炭素‐炭素二重結合等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般的に、この極性基は、連結化合物との反応で、IUPAC標準シグマ結合を形成することができる基である。
【0021】
担体物質は、鋳型としての役割を果たし、活性剤前駆体組成物及び/又は活性剤組成物の粒径を制御することができる。この粒径は、次いで触媒及びポリマーの形態に影響を及ぼす。従って、担体物質の選択においては、担体物質の特定の粒径がしばしば考慮される。シリカ等の適切な担体は、通常0.1~600ミクロンの、好ましくは0.3~100ミクロンの粒子径;50~1000m2/gの、好ましくは100~500m2/gの表面積;及び、0.3~5.0cc/gの、好ましくは0.5~3.5cc/gの細孔容積を有するであろう。細孔径が約50~約500オングストロームである担体を使用することも望ましい。
【0022】
連結化合物
連結化合物は、担体と多官能性化合物を連結させる化合物である。連結化合物は、有機金属又は非有機金属化合物であってもよいが、この有機金属化合物はアルミニウムを含有しない。
【0023】
有機金属化合物は、金属が炭素原子に直接結合したものである。非有機金属化合物は、金属がヘテロ原子に直接結合したものである。
【0024】
有機金属化合物の一実施形態は、式:
MR1 st-s
により表され、式中、MはMg、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、B、Ga、In、Sn及びそれらの混合物から選択される金属原子を表し;R1は同じであるか又は異なってもよく、且つC1‐C20ヒドロカルビル基を表し、このヒドロカルビル基のベータ炭素はSiで置き換えられてもよく;Qはヘテロ原子又はヘテロ原子含有有機基を表し、このヘテロ原子はこのヘテロ原子を介してMに直接結合し;tはMの原子価を表し、sは2≦s≦tである数である。
【0025】
好ましくは、MはMg、Ti又はZnである。また、好ましくは、tは2、3、4、5若しくは6、又は、2、3、4若しくは5である。
【0026】
Qで使用してもよいヘテロ原子の非限定例は、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素)、酸素、窒素、硫黄、リン等である。
【0027】
Qで使用してもよい有機基の非限定例は、ヒドロカルビル基、又はヘテロ原子で置換された若しくはヘテロ原子を含有するヒドロカルビル基である。
【0028】
上記の式においてR1で表されるヒドロカルビル基又はQの有機基の例として、1~18個の炭素を含む、又は1~12個の炭素を含む、又は1~7個の炭素を含むアルキル、シクロアルキル及びアリール基が挙げられ、より詳細には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、デシル、シクロヘキシル、フェニル、及びベンジルが挙げられる。
【0029】
適切に使用され得る、s=tである有機金属化合物の具体的非限定例としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ‐n‐ブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、及びブチルオクチルマグネシウム等のジアルキルマグネシウム;ジベンジルマグネシウム、ジトリルマグネシウム及びジキシリルマグネシウム等のジアリールマグネシウム;エチルマグネシウムエトキシド等のアルキルアルコキシマグネシウム;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジプロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ‐n‐ブチル亜鉛、及びジイソブチル亜鉛等のジアルキル亜鉛;ジベンジル亜鉛、ジトリル亜鉛、及びジキシリル亜鉛等のジアリール亜鉛;トリ
メチルガリウム、トリメチルインジウム、トリエチルガリウム、及びトリエチルインジウム等の、トリアルキルガリウム又はトリアルキルインジウム;テトラベンジルチタン、テトラメチルチタン、テトラエチルチタン、及びテトラプロピルチタン等のテトラアルキルチタン;テトラエチルスズ、テトラプロピルスズ、テトラブチルスズ等のテトラアルキルスズ;テトラキス(トリメチルシリル)チタン(Ti(SiMe34)、テトラキス(トリメチルシリルメチル)チタン(Ti(CH2SiMe34等の、R1のアルファ又はベータ位にSiを含有するテトラアルキルチタン;ペンタキス(トリメチルシリルメチル)タンタル)等のペンタアルキルタンタル及びその誘導熱力学生成物トリス(トリメチルシリルメチル)タンタルカルベン((Me3SiCH23Ta=CH2が挙げられる。
【0030】
適切に使用され得る、s<tである有機金属化合物の具体的非限定例としては、フッ化ジメチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、フッ化ジエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、フッ化ジイソブチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、臭化ジイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド等のジアルキルアルミニウム類(s=2、t=3);二フッ化ジベンジルチタン、二塩化ジベンジルチタン、二臭化ジベンジルチタン、二フッ化ビス(トリメチルシリル)チタン、二塩化ビス(トリメチルシリル)チタン、及び二臭化ビス(トリメチルシリル)チタン等の、ジアルキルチタン類(s=2、t=4);フッ化トリメチルチタン、塩化トリメチルチタン、フッ化トリエチルチタン、塩化トリエチルチタン、フッ化トリイソブチルチタン、及び塩化トリイソブチルチタン等の、トリアルキルチタン類(s=3、t=4)が挙げられる。R1が1以上存在する場合、各R1は同じであるか、又は異なることができ;Qが1以上存在する場合、Qは同じであるか、又は異なることができる。言い換えれば、複数のMR1 st-s(MR1 st-s混合物)を使用することができる。
【0031】
好ましくは、MR1 st-sは、MgEt2、MgEtBu、MgBu2、MgBuOct、MgOct2、ZnMe2、ZnEt2又はZr(CH2Ph)4であり、ここでEt=エチル、Bu=ブチル、Me=メチル、oct=オクチル、Ph=フェニルである。
【0032】
非有機金属化合物の一実施形態は、式:
11 t
により表され、式中、M1はMg、Al、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B Ga、In、Al、Si、Ge、Sn、La、Ce、Er、Yb、Lu及びそれらの混合物から選択される金属原子を表し;Q1は同じであるか又は異なってもよく、且つヘテロ原子又はヘテロ原子含有有機基を表し、このヘテロ原子又はヘテロ原子含有基はヘテロ原子を介してM1に直接結合し;tはM1の原子価を表し、tは2以上である。
【0033】
好ましくは、M1はMg、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、又はCr又はZnである。また、好ましくは、tは2、3、4、5若しくは6であり、又は、好ましくは、2、3、4若しくは5である。
【0034】
1で使用してもよいヘテロ原子の非限定例は、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素)、酸素、窒素、硫黄、リン等である。Q1が酸素、窒素、硫黄、リンを含有するヘテロ原子含有有機基である場合、Q1で使用してもよい有機基の非限定例は、ヒドロカルビル、又はヘテロ原子で置換された若しくはヘテロ原子を含有するヒドロカルビル基である。
【0035】
1でのヒドロカルビル基の例は、1~18個の、又は1~12個の、又は1~7個の炭素原子を含有するアルキル、シクロアルキル及びアリール基であり、より詳細には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、第3ブチル、アミル、ヘキシル、デシル、シクロヘキシル、フェニル、2,6‐ジメチルフェニル、2‐エチルヘキサノイル、トリフルオロメタンスルホニル、及びベンジルである。
【0036】
適切に使用し得るM11 t型非有機金属化合物の具体的非限定例は、Ti[N(CH324、Ti[N(CH2CH324、TiCl3、TiF4、TiCl4、TiBr4、TiI4、Ti(OCH2CH2CH2CH34、Ti(OCH2CH34、Ti[OC(CH334、Ti[OOCCH(C25)CHC494、Ti[OCH(CH324、Ti[OC654、Ti[OC63‐2,6‐(CH324、Ti(SO3CF34、Zr[N(CH324、Zr[N(CH2CH324、Zr[N(CH3)(CH2CH3)]4、ZrF4、ZrCl4、ZrBr4、ZrI4、Zr(OCH2CH2CH2CH34、Zr(OCH2CH34、Zr[OC(CH334、Zr[OOCCH(C25)CHC494、Zr[OCH(CH324、Zr(OCH2CH2CH34、Zr[OC654、Zr[OC63‐2,6‐(CH324、Hf[N(CH324、Hf[N(CH2CH324、Hf[N(CH3)(CH2CH3)]4、HfCl4、HfBr4、HfI4、Hf(OCH2CH2CH2CH34、Hf(OCH2CH34、Hf[OC(CH334、Hf[OOCH(C25)CHC494、Hf[OCH(CH324、Hf(OCH2CH2CH34、Hf[OC654、Hf[OC63‐2,6‐(CH324、VCl3、VBr3、VOF3、VCl4、VOCl3、VO[OCH(CH323、Nb[N(CH325、NbF5、NbCl5、NbBr5、NbI5、Nb[OOCCH(CH2CH3)CH2CH2CH2CH34、Ta[N(CH325、Ta{[(NC(CH33][N(C2523}、TaF5、TaCl5、TaBr5、TaI5、Ta(OCH35、Ta(OCH2CH35、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、B[N(CH323、BF3、BCl3、BBr3、BI3、B[OCH(CH323、B[OSi(CH333、Al[N(CH323、AlF3、AlCl3、AlBr3、AlI3、Al(OC493、Al(OCH2CH33、Al(OCH2CH2CH2CH33、Al[OCH(CH323、Al[OCH2(C25)CHC493、Ga[N(CH323、GaF3、GaCl3、GaBr3、GaI3、InF3、InCl3、InBr3、InI3、GeF4、GeCl4、GeBr4、GeI4、Ge(OCH2CH34、2,2,4,4,6,6‐ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘキサメチルジシラザン、SiCl4、SiBr4、SiI4、Si(OCH34、Si(OCH2CH34、Si(OCH2CH2CH2CH34、Si(OCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH34、Si(O((CH217CH3))4、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、SnF2、SnCl2、SnBr2、SnI2、SnF4、SnCl4、SnBr4、SnI4、Sn(OCH2CH34、Sn(OCH2CH2CH2CH34、Sn[OC(CH334、Sb[N(CH323、SbF3、SbCl3、SbBr3、SbI3、Sb(OCH2CH33、Sb(OCH2CH2CH2CH33、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、Mg(OCH2CH32、Mg[OOCCH(CH2CH3)CH2CH2CH2CH32、Mg(SO3CF32、ScF3、ScCl3、Sc(SO3CF33、YF3、YCl3、Y[OCH(CH323、Y(SO3CF33、CrF2、CrF3、CrCl2、CrCl3、Cr[OOCCH(CH2CH3)CH2CH2CH2CH33、Cr(NO33、MoCl3、MoOCl4、MoCl5、WCl4、WCl6、MnF2、MnCl2、MnBr2、MnI2、Mn[OOCCH(CH2CH3)CH2CH2CH2CH32、MnF3、FeF2、FeCl2、FeBr2、FeF3、FeCl3、FeBr3、CoF2、CoCl2、Co[OOCCH(CH2CH3)CH2CH2CH2CH32、NiF2、NiCl2、NiBr2、NiI2、Ni(SO3CF32、CuF2、CuCl2、CuBr2、CuI2、Cu(OCH32、Cu(SO3CF32、LaF3、LaCl3、LaBr3、LaI3、La[OCH(CH323、CeF3、CeCl3、CeBr3、CeI3、Ce(SO3CF33、ErCl
3、ErI3、Er[OCH(CH323、YbF3、YbCl3、Yb[OCH(CH323、LuCl3、Lu(SO3CF33である。
【0037】
好ましくは、M11 tは、MgCl2、MgF2、AlCl3、AlF3、SiCl4、SiMeCl3、SiMe2Cl2、Ti(OEt)4、Ti(OBu)4、Ti(NMe24、Ta(NMe25又はZr(NMe24である。
【0038】
連結化合物の一実施形態は、有機アルミニウム化合物と有機金属化合物の混合物、又は有機アルミニウム化合物と上記の非有機金属化合物の混合物である。
【0039】
本明細書全体を通して使用される場合、「有機アルミニウム化合物」という語は式Z3-fAlRfの化合物を指し、式中、
Alはアルミニウム;
Rは水素原子又は炭素原子を介してアルミニウムに結合する基(通常、ヒドロカルビル基);
Zは非炭素原子を介してアルミニウムに結合する原子又は基;及び
fは2~3の数、
である。
【0040】
本発明の実施において使用してもよい適切な有機アルミニウム化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルエチルアルミニウム、ジエチルメチルアルミニウム、トリ‐n‐プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ‐n‐ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルエチルアルミニウム、トリ‐tert‐ブチルアルミニウム、トリ‐3‐メチルブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリ‐n‐ヘキシルアルミニウム、トリイソヘキシルアルミニウム、トリス(3‐メチルペンチル)アルミニウム、トリス(4‐メチルペンチル)アルミニウム、トリス(2‐メチルヘキシル)アルミニウム、トリス(3‐メチルヘキシル)アルミニウム、トリス(2‐エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(メチルシクロヘキシル)アルミニウム、トリへプチルアルミニウム、トリ‐n‐オクチルアルミニウム、トリ‐n‐デシルアルミニウム、トリドデシルアルミニウム、トリス(テトラデシル)アルミニウム、トリス(ヘキサデシル)アルミニウム、トリス(オクタデシル)アルミニウム、トリスフェニルアルミニウム、水素化ジトリルアルミニウム、トリトリルアルミニウム、トリス(3,5‐ジメチルフェニル)アルミニウム、トリス(2,4‐ジイソプロピルフェニル)アルミニウム、トリス(ビフェニリル)アルミニウム、ジメチル(フェニル)アルミニウム、エチルメチルフェニルアルミニウム、トリ‐α‐ナフチルアルミニウム、及びトリ‐β‐ナフチルアルミニウム、並びに前述の化合物の2以上の混合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0041】
多官能性化合物
多官能性化合物は、2以上の芳香族基を有し、2以上のこの芳香族基はそれぞれ芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有する。この芳香族基は、同素環式又は複素環式、単環式又は多環式であることができる。極性一塩基性基に対し立体障害となる基を含め、芳香族環上にヒドロカルビル基が存在できるが、この極性一塩基性基は立体障害を受ける必要はない。分子中に1以上の極性一塩基性基を含有する芳香族基が、最低2以上存在する限り、多官能性化合物中に、極性一塩基性基を有しない芳香族基が存在できる。本明細書において使用される場合、「複素環式」という語は、1以上のヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄及び/又は窒素)が、好ましくは1~4のヘテロ原子が、より好ましくは1~2のヘテロ原子が存在する芳香族基を指す。芳香族基は多環式であることができ、縮合環(例えばナフチレン等に基づく部)、又は部分的に水素化した縮合環(例えばテトラヒドロナフチ
レン等に基づく部)のいずれかである。
【0042】
いくつかの実施形態においては、同素環式芳香族基は6個以上の炭素原子、好ましくは6~約24個の炭素原子、より好ましくは6~約15個の炭素原子を有する。他の実施形態においては、この芳香族基は5個以上の非水素原子を有する複素環式芳香族部であり、この複素環式芳香族部においては、1以上の芳香環原子が窒素、酸素又は硫黄等の炭素以外の元素である。この芳香環が同素環式である場合、多官能性化合物は一般的に12~約60個の炭素原子、好ましくは約13~約52個の炭素原子、より好ましくは約13~約30個の炭素原子を1分子中に有する。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態においては、多官能性化合物は式E(ArJH)gにより
表すことができ、式中、
Eは有機部、原子又は結合であり;
Arは芳香族部であり;
Jは極性原子又は極性基であり;
Hは水素原子であり;
gは2以上の整数であり;
各ArJHは同じであるか、又は異なることができる。
【0044】
多官能性化合物において、各芳香族基が芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有する2以上の芳香族基は、有機部、原子又は結合により連結され得る。これらの芳香族基が有機部により連結される場合、この有機部は1~約20個の炭素原子、好ましくは1~約12個の炭素原子を有し、且つ、脂肪族又は芳香族部であることができる。この有機部においては、1以上のヘテロ原子が存在することができ、一般的に窒素、酸素又は硫黄である。芳香族基に極性一塩基性基を有するこの芳香族基を連結するのに適切な有機部として、メチン、メチレン、エチレン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン、ペンチリデン、ヘキシリデン、シクロヘキシリデン等の置換又は非置換飽和環式部、置換又は非置換フェニレン、ベンジル部(例えば、C6Me3(CH2‐)3)、及びベンゼン、ナフチレン、アントラセン、ピリジン等から誘導される他の置換又は非置換芳香族部が挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましい有機部には、芳香族部及びメチレン基が含まれる。芳香族基に極性一塩基性基を有するこの芳香族基が、原子により連結される場合、その原子は炭素、ケイ素、窒素、リン、酸素又は硫黄であることができ;好ましくは、窒素原子又は酸素原子である。多官能性化合物が上式で表される実施形態においては、芳香族基に極性一塩基性基を有するこの芳香族基を連結する有機部、結合又は原子は、Eによって表される。
【0045】
芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有する芳香族基に適切な同素環式芳香族部には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、オキサジアゾール、チアゾール、チオフェン、インドール、キノリン等に基づく構造を有する置換又は非置換芳香族部が含まれる。
【0046】
芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有する芳香族基に適切な複素環式芳香族部には、ピリジン、ピリダジン、イミダゾール、ピリミジン、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、キノリン、イソキノリン、テトラゾール、フラン、チオフェン、イソオキサゾール、チアゾール、オキサゾール、イソチアゾール、ピロール、インドール、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、シンノリン、インダゾール、インドリジン、フタラジン、トリアジン、イソインドール、プリン、オキサジアゾール、チアジアゾール、フラザン、ベンゾフラザン、ベンゾチオフェン、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキザゾール、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、ジヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾフラン、フロピリジン、ピ
ロロピリミジン、及びアザインドールに基づく構造を有する置換又は非置換芳香族部が含まれる。
【0047】
単環式芳香族部が好ましく;好ましい単環式芳香族部には、ベンゼン環に基づく部が含まれる。同素環式芳香族部も好ましい。
【0048】
上式において、Arは芳香族基に極性一塩基性基を有する芳香族基の芳香族環に対応する芳香族部である。言い換えれば、いくつかの実施形態においては、ArJHは芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有する芳香族基を表す。
【0049】
多官能性化合物においては、極性一塩基性基は水酸基、チオール基又は二級アミノ基であり;好ましくは水酸基又は二級アミノ基であり;より好ましくは水酸基である。極性一塩基性基が二級アミノ基(‐NR’)である場合、R’は1~約20個の炭素原子、好ましくは1~約8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり;R’は好ましくはアルキル基である。類似して、上式がこの多官能性化合物を表す実施形態においては、Jは‐O、‐S又は‐NR’を含む、好ましくは‐O又は‐NR’を含む、より好ましくは‐Oを含む極性原子又は極性基であり;‐NR’において、R’は1~約20個の炭素原子、好ましくは1~約8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり;R’は好ましくはアルキル基である。上式において、多官能性化合物の極性一塩基性基は、JHで表される。これらの実施形態においては、JHは立体障害を受ける必要はないが、極性一塩基性基に対して立体障害があるアルキル基を含め、この芳香族基にアルキル基が存在できる。
【0050】
芳香族ポリオールは、好ましい種類の多官能性化合物である。この極性一塩基性基は立体障害を受ける必要はないが、この極性一塩基性基に対して立体障害があるアルキル基を含め、この芳香族基にアルキル基が存在できる。
【0051】
多官能性化合物中には、芳香族基にそれぞれ1以上の極性一塩基性基を有する2以上の芳香族基がある。芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有する芳香族基の数は、好ましくは2~約6であり;より好ましくは2~約4であり;特に好ましいのは芳香族基にそれぞれ1以上の極性一塩基性基を有する、2~約3の芳香族基を有する多官能性化合物である。芳香族基にそれぞれ1以上の極性一塩基性基を有する芳香族基を6より多く有することは、本発明の範囲内である。
【0052】
多官能性化合物が上式で表される実施形態においては、gの値は2~約6であることが好ましく;2~約4であることがより好ましく;2~約3であることが特に好ましい。gは6より大きな値であり得る。g=2の場合、Eは原子と原子をつなぐ結合であることができる。例えば、この多官能性化合物が4,4’‐ジフェノールの場合、Eは2つの芳香環の間の結合である。
【0053】
芳香族基が同素環式である、本発明の実施において適切な多官能性化合物には、2,2’‐ジフェノール、4,4’‐ジフェノール、3,4’‐ジフェノール、2,2’‐メチレンビス(フェノール)、4,4’‐メチレンビス(フェノール)、4,4’‐エチレンジフェノール、2‐(2‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)‐4‐メチルフェノール、6,6’‐メチレンビス(2‐tert‐ブチル‐4‐メチルフェノール)、6,6’‐(1‐エチリデン)ビス(2,4‐ジ(tert‐ブチル)‐フェノール)、4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジ(tert‐ブチル)‐フェノール)(Ethanox(登録商標)4702抗酸化剤、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation))、4,4’‐イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノール‐A)、1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ(tert‐ブチル)‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゼン(Ethanox(登録商標)330抗酸化剤、ア
ルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation))、1,1,2,2‐テトラキス(p‐ヒドロキシフェニル)エタン、1,1’‐ビ‐2‐ナフトール、1,3,5‐トリ(6‐ヒドロキシ‐2‐ナフチル)‐ベンゼン、1‐[2,6‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)フェニル]フェノール、4’‐n‐ブチルアミノ‐4‐ビフェニロール、2,2’‐ビフェニルジ(メチルアミン)、2,4’‐ビフェニルジ(メチルアミン)、1,1’‐ビナフチル‐2,2’‐ジ(メチルアミン)、4,4’‐ジ(イソプロピルアミノ)‐テルフェニル、p,p’‐ジ(エチルアミノ)クアテルフェニル、及びビフェニル‐4,4’‐ジチオール等が含まれる。好ましい多官能性化合物には、4,4’‐エチレンジフェノール、4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジ(tert‐ブチル)‐フェノール)、及び1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ(tert‐ブチル)‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゼンが含まれる。
【0054】
1以上の芳香族基がヘテロ芳香族である、本発明の実施において適切な多官能性化合物には、2,6‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)ピリジン、3,5‐ビス(4‐ヒドロキシ‐ベンジル)ピリジン、6,6’‐ジヒドロキシ‐2,2’‐ジピリジル、6,6’’‐ジヒドロキシ‐2,2’:6’,2’’‐テルピリジン、2‐エチルアミノ‐5‐(2‐ヒドロキシフェニル)‐1,3,4‐オキサジアゾール、2‐チオール‐5‐(2‐ヒドロキシフェニル)‐1,3,4‐オキサジアゾール、5‐(4‐メチルアミノフェニル)‐1,3,4‐オキサジアゾール‐2‐チオール、2‐ヒドロキシ‐4‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐チアゾール、及び5,5’‐ジヒドロキシ‐2,2’‐ビチオフェン等が含まれる。
【0055】
通常、担体物質は連結化合物と接触して、連結化合物残基(又は連結部)の少なくとも一部分がM‐R又はM1‐Q1部を含有し、それが下記多官能性化合物と更に反応できる。
【0056】
連結化合物、担体物質及び多官能性化合物を接触させることにより、活性剤前駆体組成物は連結化合物から形成される部、担体物質、及び多官能性化合物から形成される部からなってもよく、多官能性化合物から形成される部は、芳香族基にそれぞれ1以上の極性部を有する2以上の上記芳香族基を有する多官能性基であってもよい。
【0057】
多官能性化合物から形成される部(多官能性基)は、芳香環にそれぞれ1以上の極性部を有する2以上の芳香環を有してもよい。この芳香族基は、同素環式又は複素環式、単環式又は多環式であることができる。一般的に、この多官能性基は12~約60個の炭素原子、好ましくは約13~約52個の炭素原子、より好ましくは約13~約30個の炭素原子を有する。この極性部に対して立体障害があるアルキル基を含め、この芳香環にアルキル基が存在できるが、この極性部は立体障害を受ける必要はない。多官能性基を記述するもう1つの方法は、式E(ArJ‐)gで表されるとおりであり、式中、
Eは有機部、原子又は結合であり;
Arは芳香族部であり;
Jは極性原子又は極性基であり;
gは2以上の整数であり;
各ArJ‐は同じであるか、又は異なることができる。
E、Ar、J、g及び各々の選択は、多官能性化合物についての以下の記述のとおりである。上記多官能性化合物と同様に、極性部(J)は立体障害を受ける必要はないが、この極性部に対して立体障害があるアルキル基を含め、この芳香族基にアルキル基が存在できる。Eは、原子と原子をつなぐ結合であることができる。例えば、この多官能性化合物が4,4’‐ジフェノキシの場合、Eは2つの芳香環の間の結合である。
【0058】
本発明の実施において適切な多官能性基又は部には、2,2’‐ジフェノキシ、4,4’‐ジフェノキシ、3,4’‐ジフェノキシ、2,2’‐メチレンビス(フェノキシ)、
4,4’‐メチレンビス(フェノキシ)、4,4’‐エチレンジフェノキシ、2‐(5‐メチルフェン‐2‐オキシ)‐4‐メチルフェノキシ、6,6’‐メチレンビス(2‐tert‐ブチル‐4‐メチルフェノキシ)、4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジ(tert‐ブチル)フェノキシ)、6,6’‐(1‐エチリデン)ビス(2,4‐ジ(tert‐ブチル)フェノキシ)、4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジ(tert‐ブチル)フェノキシ)、4,4’‐イソプロピリデンジフェノキシ、1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ(tert‐ブチル)‐4‐オシベンジル)ベンゼン、1,1,2,2‐テトラキス(4‐オキシフェニル)エタン、1,1’‐ビ‐2‐ナフトキシ、1,3,5‐トリ(6‐オキシ‐2‐ナフチル)‐ベンゼン、4’‐n‐ブチルアミノ‐4‐ビフェニルオキシ、2,2’‐ビフェニルジ(メチルアミノ)、2,4’‐ビフェニルジ(メチルアミノ)、1,1’‐ビナフチル‐2,2’‐ジ(メチルアミノ)、4,4’‐ジ(イソプロピルアミノ)‐テルフェニル、p,p’‐ジ(エチルアミノ)クアテルフェニル、ビフェニル‐4,4’‐ジチオ、2,6‐ビス(4‐フェノキシ)ピリジン、3,5‐ビス(4‐ベンジルオキシ)ピリジン、6,6’‐ジオキシ‐2,2’‐ジピリジル、6,6’’‐ジオキシ‐2,2’:6’,2’’‐テルピリジン、5‐(2‐フェノキシ)‐1,3,4‐オキサジアゾリル‐2‐エチルアミノ、5‐(2‐フェノキシ)‐1,3,4‐オキサジアゾイル‐2‐チオ、5‐(4‐メチルアミノフェニル)‐1,3,4‐オキサジアゾール‐2‐チオ、4‐(4‐オキシフェニル)‐チアゾリル‐2‐オキシ、2,2’‐ビチオフェニル‐5,5’‐ジオキシ等が含まれる。好ましい多官能性基には、4,4’‐エチレンジフェノキシ、4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジ(tert‐ブチル)フェノキシ)、及び1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ(tert‐ブチル)‐4‐ベンジルオキシ)ベンゼンが含まれる。
【0059】
上述の多官能性基又は多官能性部のオキシ、アミノ、又はチオという語は、式E(ArJ‐)gにおいて、J‐がO‐、N(R’)‐、又はS‐である場合の、J‐の例を指す。このO‐、N(R’)‐、又はS‐は、連結化合物のM‐R又はM1‐Q1部と、多官能性化合物の‐OH、‐N(R’)H、又は‐SH基の反応を通して形成し、極性一塩基性基プロトンをH‐Rとして失って、新規のO‐M、(R’)N‐M、S‐M、O‐M1、(R’)N‐M1、S‐M1結合を形成する。この多官能性化合物を連結化合物で処理した担体物質と反応させることにより、多官能性化合物の大部分の1以上の極性一塩基性基が、連結処理担体の1以上のM‐R又はM1‐Q1基と反応すると考えられ、シグマ結合により担体‐連結部‐多官能性化合物部の連結が形成することを理解するべきである。多官能性化合物の全ての極性一塩基性基が、M‐R又はM1‐Q1部と反応する必要はない。
【0060】
活性剤組成物
本発明の活性剤組成物はアルミノキサン及び活性剤前駆体組成物を含み、この活性剤前駆体組成物は、i)連結化合物と接触する担体物質、及びii)2以上の芳香族基を有し、2以上のこの芳香族基がそれぞれ芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有する多官能性化合物からなる。活性剤組成物を得るための担体物質、連結化合物、及び多官能性化合物は、上述のとおりである。アルミノキサンは下記のとおりである。これらの成分は活性剤組成物の一部になった以前と同じ形態であるとは限らないことがわかる。本発明の活性剤組成物は、下記の方法により製造することができる。
【0061】
アルミノキサン
アルミノキサンは本発明の活性剤組成物の成分であり、当業者に周知である。アルミノキサンは一般的にアルキルアルミニウム化合物等のアルミニウム化合物を、水で加水分解することにより得られる。例えば、直接水を添加する方法、水を含有する溶媒等の水で湿潤した物質や、水で湿潤した若しくは水に浸漬した多孔性触媒担体等の固体基質と接触させる方法、又は、塩水和物を添加する方法により加水分解する。これにより得られる生成物は、添加した水の量に依存して、アルミノキサンオリゴマーの二量体又は複合混合物で
ある。アルミノキサンを形成させる他の方法は、アルキルアルミニウム化合物と、カルボニル、カルボキシル及び/又は水酸基等の1以上の酸素含有官能基を有する有機化合物の反応である。このような化合物の例には、PhCOMe、PhCOOH、PhCOOMe及びPh3COH等が含まれる。本発明の実施において使用できるアルミノキサンには、上述のいずれかの方法で形成され、ハロゲン含有化合物等の1以上の試薬で更に処理されるアルキルアルミニウム誘導アルミノキサンも含まれ、それらは例えば、国際公開第2007/131010 A2号公報、国際公開第2007/005364 A2号公報及び国際公開第2005/066191 A1号公報に記述される、トリフルオロトルエン処理アルミノキサン及びフッ化ジメチルアルミニウム処理アルミノキサンである。
【0062】
本発明において使用できるアルミノキサンの非限定例には、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、n‐プロピルアルミノキサン、n‐ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n‐ヘキシルアルミノキサン、n‐オクチルアルミノキサン、デシルアルミノキサン、ドデシルアルミノキサン、テトラデシルアルミノキサン、ヘキサデシルアルミノキサン、オクタデシルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、及びトリルアルミノキサン等が含まれる。アルミノキサンの混合物も使用してよい。
【0063】
好ましいアルミノキサンは、ヒドロカルビル基が飽和であるアルミノキサンであり、特にこのヒドロカルビル基が1~約20個の炭素原子を有するアルミノキサンである。より好ましいのは、飽和ヒドロカルビル基が1~約6個の炭素原子を有するアルミノキサンである。更により好ましいのは、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、n‐ブチルアルミノキサン、及びイソブチルアルミノキサンである。きわめて好ましいのは、メチルアルミノキサン及びエチルアルミノキサンである。最もきわめて好ましいアルミノキサンは、メチルアルミノキサンである。
【0064】
連結化合物、担体物質、多官能性化合物、及びアルミノキサンを接触させることにより、活性剤組成物は連結化合物から形成される部、担体物質、及び多官能性化合物から形成される部からなってもよく、この多官能性化合物から形成される部は、2以上の芳香族基を有する多官能性基であって、2以上のこの芳香族基は芳香族基にそれぞれ1以上の極性部を有する多官能性基であってよい。多官能性基及びそれらの選択は、上述のとおりである。
【0065】
触媒組成物
本発明の触媒組成物は、本発明の活性剤組成物と1以上の遷移金属の触媒化合物若しくは錯体、又は1以上のランタニド若しくはアクチニド系列金属の触媒化合物との相互作用により形成する。活性剤生成物は上述のとおりであり、触媒化合物及び錯体は今記載したとおりである。活性剤組成物及び触媒化合物又は錯体は、活性剤組成物の一部になった以前と同じ形態ではないことがわかる。通常、触媒化合物又は錯体は、活性剤組成物との相互作用により除去される不安定な基を含有する。メタロセン系触媒化合物から形成する触媒組成物は、好ましい触媒組成物である。
【0066】
上述のように、担体物質も鋳型としての役割を果たし、活性剤前駆体組成物及び/又は活性剤組成物の粒径を制御する。次いで、この活性剤組成物の粒径は、本発明の活性剤組成物で形成される触媒組成物の形態に影響を及ぼす。
【0067】
活性剤前駆体組成物の形成
活性剤前駆体組成物及び活性剤組成物の形成は、一般的に容易であり、活性剤前駆体組成物又は活性剤組成物に存在する形成副生成物のいずれも、活性剤前駆体組成物から生成する活性剤組成物、又はこの活性剤組成物から生成する触媒組成物の特性に悪影響を及ぼしていないように思われる。
【0068】
活性剤前駆体組成物又は活性剤組成物を調製する際、温度は周囲温度であり、所望であれば反応混合物を加熱することができる。反応混合物を加熱する典型的な温度は、約20℃~約130℃、好ましくは約40℃~約70℃である。反応混合物を加熱して還流条件下にすることも好ましい。
【0069】
上述のように、本発明は活性剤前駆体組成物を形成させる方法に関する。これらの方法は、不活性な無水環境において、
i)連結化合物と接触する担体物質、及び
ii)2以上の芳香族基を有し、2以上のこの芳香族基がそれぞれ芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有する多官能性化合物、
を合わせて一緒にすることを含む。
【0070】
本発明の活性剤前駆体組成物を形成させるには、担体物質及び連結化合物を接触させ、連結処理担体を形成させ、次いで多官能性化合物をそこに添加する。
【0071】
成分を接触させる順番は、活性剤前駆体組成物の構造にある程度の影響を及ぼす。少なくともいくつかの場合において、成分を接触させる順番がこれらの活性剤前駆体組成物から最終的に形成する触媒の形態に影響を与え、これにより、触媒を用いた重合中の反応器付着物に影響を与える。
【0072】
上記の方法により形成する活性剤前駆体組成物は、本発明の活性剤前駆体組成物である。
【0073】
活性剤前駆体組成物を形成させる方法において、連結化合物は担体物質及び多官能性化合物の両方と相互作用する。通常、この相互作用は、担体表面の極性一塩基性基及び多官能性化合物の極性一塩基性基の両方によって連結化合物の金属原子に連結した、ヒドリジル、アルキル又はヘテロ原子基の水素化分解反応により促進される。この水素化分解反応の結果として、連結基の金属原子と担体の間、及び連結基の金属原子と多官能性化合物の間に、その後新しい化学結合が形成し、あらかじめ連結化合物の金属原子に連結されたヒドリジル、アルキル又はヘテロ原子基は、それぞれH2、炭化水素(C‐H)又はヘテロ原子部(例えば、ハロゲン‐H、RO‐H、R2N‐H)として除去される。
【0074】
活性剤前駆体組成物の形成に使用される担体物質、連結化合物、及び一塩基性多官能性化合物の比は、変化することができる。好ましい比は、水素化分解を受ける連結化合物の基の数、担体表面の一塩基性基の滴定可能な数、及び多官能性化合物中に含有される一塩基性基の数に基づいて決定され、水素化分解反応の結果、連結化合物の金属原子と表面基の間、及び連結化合物の金属原子と多官能性化合物の間に、1以上の新規化学結合が形成するように決定される。連結化合物と、担体物質表面の滴定可能な一塩基性基が、おおよそ等モル比であることが好ましい。多官能性化合物に対し、連結基が等モル比未満であることも好ましい。
【0075】
連結化合物の連結基の一部分(つまり、有機金属リンカーMR1 s(t-s)のR1、及び非有機金属リンカーM11 tのQ1)が、担体物質の表面に存在する少なくとも一部分の極性一塩基性基又は他の極性基若しくはサイト(ひとまとめにして極性表面基)と反応できるように、十分な連結化合物が含まれる必要がある。連結化合物(MR1 s(t-s)又はM11 t)と担体の反応性一塩基性基(つまり、連結化合物により反応する又は連結化合物と反応する、担体表面上の活性プロトン)の比は、0.2:1.0~(t‐1):1.0であり、ここでtは連結化合物の金属の原子価である。連結化合物と多官能性基の比は、1.0:0.01~1.0:2.0である。好ましくは、連結化合物と担体の反応性一塩基性
基の比は、0.6:1.0~(t‐1):1.0であり、ここでtは連結化合物の金属の原子価である。好ましくは、連結化合物と多官能性基の比は、1.0:0.1~1.0:2.0である。最も好ましくは、連結化合物と担体の反応性一塩基性基の比は、0.5:1.0~1.0:1.0であり、連結化合物と多官能性基の比は、1.0:0.3~1.0:2.0である。
【0076】
担体表面上の活性極性一塩基性基の量は、物理的方法(例えば、シリカ担体の全水酸基を測定する方法である、高温か焼してLOIを測定する方法)の代わりに化学的方法(例えば、化学薬品を用いた滴定)により定量することが推奨される。これは、化学的方法は化学薬品と反応できる、一塩基性基の一部のみを測定するのに対し、物理的方法は化学薬品(本件では連結化合物)により反応することができない部分を含む全ての一塩基性基を測定するからである。このような、担体表面上の極性一塩基性基の滴定方法には、国際公開第2008/036594号公報の実施例4.2‐1に記述される、トリアルキルアルミニウム化合物又はグリニャール試薬を用いたNMR滴定が含まれる。国際公開第2008/036954号公報と同様の方法で、本明細書において記述される任意の特定の連結化合物を滴定試薬として用いる方法も妥当である。
【0077】
活性剤前駆体組成物を形成させる方法において、この方法において含まれる連結化合物及び多官能性化合物の全重量に対して、担体物質は通常、約5重量%~約70重量%含まれる。担体の前処理条件及び特定の多官能性化合物に依存して、担体物質は活性剤前駆体組成物の約5重量%~約70重量%の範囲であり得る。通常、低温(100~約600℃)でか焼した担体物質については、芳香環に極性一塩基性基を有する多官能性化合物の芳香環1モルに対し、約5重量%~約40重量%の担体が活性剤前駆体組成物に存在する。高温(約600~1000℃)でか焼した担体物質については、芳香環に極性一塩基性基を有する多官能性化合物の芳香環1モルに対し、約20重量%~約70重量%の担体が通常活性剤前駆体組成物に存在する。
【0078】
異なる多官能性化合物を使用するとその分子量は大きく異なることを考慮し、担体は、活性剤前駆体全重量の約1~80%、好ましくは5~60重量%、最も好ましくは10~50重量%とすることができる。典型的なAl含量は、活性剤前駆体全重量の1~30重量%、より好ましくは、3~20重量%、最も好ましくは4~10重量%である。従って、多官能性化合物は1~70重量%、好ましくは4~40重量%、より好ましくは8~25重量%とすることができる。
【0079】
連結化合物、その連結基、多官能性基、芳香族基に極性一塩基性基を有する芳香族基、多官能性化合物の芳香環の極性一塩基性基、及び担体物質の相対量については、同一のモル比が本発明の組成物に適用される。例えば、ここでの考察は相互作用により組成物を形成する前の成分を言及するのがより適切であることを再確認すれば、それは多官能性基の極性基のモル数である。(例えば、連結化合物の連結基の少なくとも一部分は反応し、もはや連結化合物の一部ではないであろう。)
【0080】
活性剤組成物の形成
本発明は更に、活性剤組成物を形成させる方法に関する。これらの方法は、不活性な無水環境において、
i)担体物質及び連結化合物を接触させることにより、連結処理担体を形成させること、
ii)この連結処理担体を、
a)多官能性化合物と接触させて、混合物を形成させ、次にこの混合物をアルミノキサンと接触させること、又は
b)アルミノキサンと接触させて、混合物を形成させ、次にこの混合物を、多官能性
化合物と接触させること、又は
(c)多官能性化合物の一部と接触させて、第1混合物を形成させ、この第1混合物をアルミノキサンと接触させて、第2混合物を形成させること、及び、
(d)この第2混合物を更なる多官能性化合物と接触させること、
を含み、ここでこの多官能性化合物は2以上の芳香族基を有し、2以上のこの芳香族基がそれぞれ芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有し、こうして活性剤組成物を形成する。
【0081】
他の実施形態においては、活性剤組成物を形成させる方法は、不活性な無水環境において、
i)担体物質と連結化合物を接触させることにより、連結処理担体を形成させること、及び
ii)この連結処理担体を、順次、
a)多官能性化合物と接触させ、次にアルミノキサンと接触させること、又は
b)アルミノキサンと接触させ、次に多官能性化合物と接触させること、
を含み、ここでこの多官能性化合物は2以上の芳香族基を有し、2以上のこの芳香族基がそれぞれ芳香族基に1以上の極性一塩基性基を有し、こうして活性剤組成物を形成させる。
【0082】
いくつかの実施形態においては、活性剤組成物は活性剤前駆体組成物をアルミノキサンと組み合わせることにより作製する。活性剤組成物がこの方法で作製される場合、活性剤組成物の形態は活性剤前駆体組成物の粒径により影響を受ける。アルミノキサンと合わせて一緒にする前に、活性剤前駆体組成物を単離する必要はない。活性剤組成物が活性剤前駆体組成物から作製されない場合、活性剤組成物の粒径は担体物質の粒径により、又は連結化合物の量を変化させることにより影響され得る。更に、アルミノキサンの量は、活性剤組成物から作製される触媒組成物の活性に影響を及ぼす。活性剤組成物中のアルミノキサンの量が減少するに従い、触媒組成物の活性は減少する。
【0083】
本発明の活性剤組成物を形成させるため、任意の数個の順序で、活性剤組成物の成分を組み合わせることができる。活性剤前駆体組成物を形成させる上記の手順のいずれに対しても、アルミノキサンは最後の成分として添加することができる。
【0084】
1つの適切な添加手順においては、担体物質及び連結化合物を組み合わせ(連結処理担体を形成し)、次に多官能性化合物を連結処理担体と組み合わせ、その後生成混合物をアルミノキサンと組み合わせる。この手順において、多官能性化合物は連結処理担体に添加することができ、連結処理担体は多官能性化合物に添加することができ、又は両方を同時に反応場所へ供給することができる。
【0085】
他の適切な添加手順においては、担体物質及び連結化合物を組み合わせ(連結処理担体を形成し)、次にアルミノキサンを連結処理担体と組み合わせ、その後生成混合物を多官能性化合物と組み合わせる。この手順において、連結処理担体及びアルミノキサンから形成する混合物に多官能性化合物を添加することができ、又は多官能性化合物に、連結処理担体及びアルミノキサンから形成する混合物を添加することができる。
【0086】
理論に拘束されるわけではないが、上記の2つの添加手順は、相当量の多官能性化合物部が担体に結合し、同時にアルミノキサンに結合することを可能にする。そして、多官能性基修飾アルミノキサンが担体と結合するか又は担体と共沈して、最終触媒の粒径分布、及び生成するポリオレフィン樹脂の形態を制御でき、重合反応器の付着物を最小限にする又は防止するのを確実にする。
【0087】
他の添加手順からも利点がある。例えば、連結処理担体を形成させ、これをアルミノキ
サンの一部と組み合わせ、その後多官能性化合物と組み合わせ、次にアルミノキサンのもう一方の部分と組み合わせる手法;連結処理担体を形成させ、これを多官能性化合物の一部と組み合わせ、その後アルミノキサンと組み合わせ、次に多官能性化合物のもう一方の部分と組み合わせる方法である。これらの方法の任意の時点で不活性溶媒を含有することができるが、好ましくは最初の時点である。
【0088】
上記の方法により形成する活性剤組成物は、本発明の活性剤組成物である。
【0089】
活性剤組成物を形成させる方法においては、アルミノキサンを活性剤前駆体と接触させることができ、アルミノキサンは活性剤組成物の全重量に対して、約5~80重量%、好ましくは10~60重量%、より好ましくは15~50重量%の質量となる。これに対するもう1つの見方として、アルミノキサンの導入により、活性剤前駆体組成物の各成分はその分減少する。活性剤組成物が活性剤前駆体組成物及びアルミノキサンから形成されない場合、上記の方法に含まれる連結化合物、多官能性化合物及びアルミノキサンの全重量に対し、担体物質は約0.2重量%~約75重量%に減少する。極性一塩基性基数g及び多官能性化合物の分子量に依存して、活性剤組成物中では、多官能性化合物は約0.02重量%~65重量%に、好ましくは0.8重量%~38重量%に、より好ましくは2重量%~24重量%に減少する。
【0090】
本発明の活性剤組成物においては、担体物質は通常、組成物の約1重量%~約30重量%であり、多官能性化合物の分子量及び使用するアルミノキサン量に依存して、活性剤組成物は通常、約1重量%~約60重量%のアルミニウムを含有する。
【0091】
触媒組成物を形成する方法及び成分
活性剤前駆体組成物及び活性剤組成物の形成及び取扱いに関して上述したように、触媒成分及び生成触媒組成物は、アルゴン、窒素、又はヘリウム等の不活性で水分を含まず酸素を含まない環境で取り扱われることが好ましく、なぜならこれらの成分及び組成物は、水分及び酸素に影響されやすいからである。
【0092】
触媒組成物は、本発明の活性剤組成物と、遷移金属、ランタニド金属若しくはアクチニド金属の触媒化合物又は錯体を、不活性溶媒中で合わせて一緒にすることにより生成する。通常、活性剤組成物と触媒化合物又は錯体は、不活性溶媒中で組み合わせ、撹拌する。この反応には加熱も冷却も必要としない。通常、活性剤組成物中の遷移金属に対するアルミニウムのモル比は、約10:1~約105:1、好ましくは約10:1~約1000:1、より好ましくは約50:1~約300:1である。
【0093】
触媒組成物形成に使用される成分には、不活性溶媒、本発明の活性剤組成物、及び遷移金属、ランタニド金属若しくはアクチニド金属の触媒化合物又は錯体が含まれる。不活性溶媒は、活性剤前駆体組成物及び活性剤組成物形成についての上述のとおりである。活性剤組成物は上述のとおりである。遷移金属、ランタニド金属若しくはアクチニド金属の触媒化合物及び錯体は、以下に記載する。
【0094】
本発明の活性剤組成物は助触媒として非常に有効であり、任意の公知の遷移金属触媒化合物、及び任意の公知のランタニド若しくはアクチニド系列金属触媒化合物と共に使用することができる。ここでこの遷移金属とは、周期表の3~10族の遷移金属である。本明細書において、周期表は、1985年2月4日発行のChemical&Engineering Newsの27頁に示されているものを指す。周期表の3族から10族は、以前はIIIB族からVIIIB族として知られていたものである。適切な触媒化合物は、d‐及びf‐ブロック金属化合物としても記述できる。例えば、Moellerら著の「化学(Chemistry)」第2版(アカデミック・プレス社、著作権1984年)の
225頁に示されている周期表を参照のこと。金属成分に関しては、Fe、Co、Ni、Pd、及びVの化合物が好ましい。より好ましいのは4~6族金属(IVB~VIB族;Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、及びW)の化合物であり、最も好ましいのは4族(IVB族)金属であり、特にチタン、ジルコニウム又はハフニウムである。
【0095】
従って、本発明において使用される遷移金属触媒化合物は、1以上の任意のチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒化合物、任意のメタロセン、任意の幾何拘束型化合物、任意の後期遷移金属錯体、又は、文献に報告されているか、そうでない場合は適切に活性化された場合に効果的な触媒化合物であることが一般的に当業者に公知である任意の他の遷移金属化合物若しくは錯体であることができる。この遷移金属触媒化合物には、例えばメタロセン及びチーグラー・ナッタオレフィン重合触媒化合物の混合物等の、2以上の異なる種類のこれらの遷移金属化合物又は錯体の混合物も含まれる。
【0096】
触媒組成物の遷移金属成分として使用することができ、本発明において使用する、3、4、5、及び6族(IIIB、IVB、VB、及びVIB族)金属の遷移金属化合物は、チーグラー・ナッタ型オレフィン重合触媒としてしばしば言及される、スカンジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、トリウム及びウラン等の金属の化合物である。この種類の好ましい化合物は、式MXn(OR)mで表すことができ、式中、Mはバナジル、ジルコニル又はウラニル等の、1つ又は2つの酸素原子を含有する遷移金属原子又は遷移金属原子の陽イオンを表し、Xはハロゲン原子を表し、ORはアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリール基又はアラルキル基等の、約18個以下の炭素原子、好ましくは約8個以下の炭素原子、より好ましくは約4個以下の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ基を表し、n及びmは、それらのうち1つが(両方ではなく)ゼロであり得る場合を除いて正の整数であり、n+mは遷移金属の原子価状態である。使用できる遷移金属化合物のいくつかの具体例は、例えば、二臭化チタン、三臭化チタン、四臭化チタン、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン、三フッ化チタン、四フッ化チタン、二ヨウ化チタン、三ヨウ化チタン、四ヨウ化チタン、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、四フッ化ハフニウム、四塩化ハフニウム、四臭化ハフニウム、四ヨウ化ハフニウム、三塩化ハフニウム、三臭化ハフニウム、三ヨウ化ハフニウム、二塩化バナジウム、三塩化バナジウム、四塩化バナジウム、四臭化バナジウム、三臭化バナジウム、二臭化バナジウム、三フッ化バナジウム、四フッ化バナジウム、五フッ化バナジウム、二ヨウ化バナジウム、三ヨウ化バナジウム、四ヨウ化バナジウム、塩化バナジル、臭化バナジル、五臭化ニオブ、五塩化ニオブ、五フッ化ニオブ、五臭化タンタル、五塩化タンタル、五フッ化タンタル、臭化第一クロム、臭化第二クロム、塩化第一クロム、塩化第二クロム、フッ化第一クロム、フッ化第二クロム、二臭化モリブデン、三臭化モリブデン、四臭化モリブデン、二塩化モリブデン、三塩化モリブデン、四塩化モリブデン、五塩化モリブデン、六フッ化モリブデン、三塩化ランタン、フッ化第一セリウム、塩化第一セリウム、臭化第一セリウム、ヨウ化第一セリウム、フッ化第二セリウム、三塩化ウラン、四塩化ウラン、三臭化ウラン、四臭化ウラン、四塩化トリウム、及び四臭化トリウム等である。遷移金属のヒドロカルビルオキシド及びハロゲン化物/ヒドロカルビルオキシド混合物には、Ti(OCH34、Ti(OCH3)Cl3、Ti(OCH3)Br3、Ti(OCH322、Ti(OC254、Ti(OC253Cl、Ti(OC25)Cl3、Ti(OC25)Br3、Ti(OC49)Br3、Ti(OC25)I3、Ti(OC372Cl2、Ti(O‐iso‐C373Cl、Ti(O‐iso‐C372Cl2、Ti(O‐iso‐C37)Cl3、Ti(OC493Cl、Ti(OC492Cl2、Ti(OC49)Cl3、Ti(OC65)Cl3、Ti(O‐p‐CH364)Cl3、Ti(OC6132Cl2、Ti(OC613)Cl3、Ti(O‐cyclo‐C611)Cl3、Ti(OC8172Br2、Ti(O‐2‐EtHex)4
、Ti(OC1225)Cl3、Ti(OC17182Br2、Zr(OC254、Zr(OC494、Zr(OC5114、ZrCl(OC253、ZrCl2(OC252、ZrCl3(OC25)、ZrCl(OC493、ZrCl2(OC492、ZrCl3(OC49)、Hf(OC494、Hf(OC493Cl、VO(OC253、VOCl(OCH32、VOCl(OC252、VOCl(OC372、VOCl(O‐iso‐C372、VOCl2(OCH3)、VOCl2(OC25)、VOCl2(OC37)、VOCl2(O‐iso‐C37)、VOBr(OCH32、VOBr(OC252、VOBr(O‐iso‐C492、VOBr2(OC37)、VOBr2(O‐iso‐C37)、VOBr2(OC49)、VOBr2(O‐iso‐C49)、VOI(OCH32、VOI(OC252、VOI2(OCH3)、VOI2(O‐cyclo‐C35)、VOI2(OC511)、VOI2(O‐cyclo‐C611)、Cr(O‐iso‐C493及びMo(OC253等が含まれる。カルボン酸塩及び遷移金属の様々なキレートも使用することができるが、一般にはそれほど好ましくはない。このような塩及びキレートの数少ない非限定例としては、酢酸ジルコニル、酪酸ウラニル、酢酸クロム、オキシ‐2‐エチルヘキサン酸クロム(III)、2‐エチルヘキサン酸クロム(III)、ジクロロエチルヘキサン酸クロム(III)、2‐エチルヘキサン酸クロム(II)、2‐エチルヘキサン酸チタン(IV)、ビス(2,4‐ペンタンジオナート)チタンオキシド、ビス(2,4‐ペンタンジオナート)チタンジクロリド、ビス(2,4‐ペンタンジオナート)チタンジブトキシド、バナジルアセチルアセトナート、クロムアセチルアセトナート、ニオブアセチルアセトナート、ジルコニルアセチルアセトナート、及びクロムオクチルアセトアセタート等が挙げられる。また、例えばテトラメチルチタン、メチルチタントリクロリド、テトラエチルジルコニウム、及びテトラフェニルチタン等の遷移金属アルキルも使用することができる。
【0097】
周知のチーグラー・ナッタ触媒化合物の好ましい遷移金属化合物は、アルコキシド、ハロゲン化物、及びハロゲン化物/アルコキシド混合化合物を含む、4族(IVB族)金属の遷移金属化合物である。より好ましいのは、TiCl4、ZrCl4、HfCl4及びTiCl3であり、TiCl4が最も好ましい。そのようなより好ましい化合物は、溶解度を促進するために、キレートの形で使用することができる。この種類の適切なキレート触媒は公知であり、文献に報告されている。
【0098】
メタロセンはオレフィン重合触媒化合物の他の広範な種類であり、本発明の新規高効率触媒の形成において、メタロセンと共に本発明の活性剤組成物を使用することができる。本明細書において使用される場合、「メタロセン」という語には、1以上のシクロペンタジエニル部を含有する金属誘導体が含まれる。適切なメタロセンは当業者に公知であり、3、4、5、6族(IIIB、IVB、VB及びVIB族)、ランタニド及びアクチニド金属のメタロセンが含まれる。このメタロセンは例えば、米国特許第2,864,843号公報,同第2,983,740号公報、同第4,665,046号公報、同第4,874,880号公報、同第4,892,851号公報、同第4,931,417号公報、同第4,952,713号公報、同第5,017,714号公報、同第5,026,798号公報、同第5,036,034号公報、同第5,064,802号公報、同第5,081,231号公報、同第5,145,819号公報、同第5,162,278号公報、同第5,245,019号公報、同第5,268,495号公報、同第5,276,208号公報、同第5,304,523号公報、同第5,324,800号公報、同第5,329,031号公報、同第5,329,033号公報、同第5,330,948号公報、同第5,347,025号公報、同第5,347,026号公報及び同第5,347,752号公報に記載されるメタロセンであり、このようなメタロセンに関する内容は、引用により本明細書に取り込まれる。
【0099】
本明細書におけるメタロセン構造は広く解釈されるべきであり、1、2、3又は4個の
Cp環又は置換Cp環を含有する構造が含まれる。従って、本発明での使用に適切であるメタロセンは、式(I):
aCpbMXcd(I)
により表すことができ、式中、Cpはそれぞれ独立して、通常5~約24個の炭素原子を有するシクロペンタジエニル部含有基であり;Bは架橋基、又は2つのCp基を1つに連結するか、若しくは代替的に、アルキルアミノシリルアルキル、シリルアミド、アルコキシ、シロキシ、アミノシリルアルキル若しくは類似の単座配位ヘテロ原子電子供与基等の代替配位基をもつアンサ(ansa)基であり;Mは、d‐又はf‐ブロック金属原子であり;各X及び各Yは、独立して、d‐又はf‐ブロック金属原子に結合している基であり;aは0又は1であり;bは1~3(好ましくは2)の全整数であり;cは2以上であり;dは0又は1である。b、c及びdの合計は、安定化合物を形成させるのに十分な値であり、しばしばd‐又はf‐ブロック金属の原子の配位数である。
【0100】
Cpは、独立して、シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル、若しくは金属とπ‐結合することができる同類の基、又は、ヒドロカルビル‐、ハロ‐、ハロヒドロカルビル‐、ヒドロカルビルメタロイド‐、及び/若しくはそれらのハロヒドロカルビルメタロイド置換誘導体である。Cpは通常、75個以下の非水素原子を含有する。もしBが存在する場合、Bは通常、シリレン(‐SiR2‐)、ベンゾ(C64<)、置換ベンゾ、メチレン(‐CH2‐)、置換メチレン、エチレン(‐CH2CH2‐)、又は置換エチレン架橋である。Mは、好ましくは4~6族の金属原子、最も好ましくは4族(IVB族)の金属原子で、特にはハフニウム、最も特別にはジルコニウムである。Xは、アルキリデン基、シクロメタル化ヒドロカルビル基、又は任意の他の2価キレート配位子等の2価の置換基であることができ、このキレート配位子の2つの座はMに単結合して、Mを一員として含む環式部を形成する。各X、及びもしYが存在する場合、各Yは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロカルビル基(アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル等)、ヒドロカルビルオキシ(アルコキシ、アリールオキシ等)、シロキシ、アミノ又は置換アミノ、ヒドリド、アシルオキシ、トリフラート、及び安定メタロセンを形成する類似の1価の基である。b、c及びdの合計は、全数であり、しばしば3~5である。Mが4族(IVB族)金属又はアクチニド金属で、bが2のとき、cとdの合計は2であり、cは1以上である。Mが3族(IIIB族)又はランタニド金属で、bが2のとき、cは1であり、dはゼロである。Mが5族(VB族)金属でbが2のとき、cとdの合計は3であり、cは2以上である。
【0101】
式(I)の化合物に類似であって、ボラベンゼン又は置換ボラベンゼン、アザボロール又は置換アザボロール、及び様々な他の等電子Cp類似化合物等の、Cpと等電子な環式不飽和荷電基により、1以上のCp基が置換されている化合物も本発明において有用である。例えば、Krishnamurtiらの米国特許第5,554,775号公報及び同第5,756,611号公報を参照のこと。
【0102】
メタロセンの1つの好ましい基においては、bが2であり、すなわち、シクロペンタジエニル部含有基が分子中に2つ存在し、これらの2つの基は同じであるか、又は互いに異なることができる。
【0103】
本発明の実施において使用できる有用なメタロセンの他の下位基は、1998年7月30日に発行された国際公開第98/32776号公報に記載された種類のメタロセンである。これらのメタロセンは、N、O、S若しくはP原子を介して接続する、又は炭素と炭素の二重結合によって接続する1以上の多原子基により、メタロセン中の1以上のシクロペンタジエニル基が置換されている点において特徴がある。このようなシクロペンタジエニル環の置換基の例としては、‐OR、‐SR、‐NR2、‐CH=、‐CR=、及び‐PR2が挙げられる。ここで、Rは同じであるか又は異なることができ、置換又は非置換
1‐C16ヒドロカルビル基、トリC1‐C8ヒドロカルビルシリル基、トリC1‐C8ヒドロカルビルオキシシリル基、混合C1‐C8ヒドロカルビル及びC1‐C8ヒドロカルビルオキシシリル基、トリC1‐C8ヒドロカルビルゲルミル基、トリC1‐C8ヒドロカルビルオキシゲルミル基、又は混合C1‐C8ヒドロカルビル及びC1‐C8ヒドロカルビルオキシゲルミル基である。
【0104】
本発明が適用可能なメタロセンの例として、例えば:
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド;
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノメチルモノクロリド;
ビス(シクロペンタジエニル)チタンジクロリド;
ビス(シクロペンタジエニル)チタンジフルオリド;
シクロペンタジエニルジルコニウムトリ(2‐エチルヘキサノアート);
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム水素クロリド;
ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド;
ラセミ体及びメソ体のジメチルシラニレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド;
ラセミ体ジメチルシラニレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド;
ラセミ体エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド;
(η5‐インデニル)ハフニウムトリクロリド;
(η5‐C5Me5)ハフニウムトリクロリド;
ラセミ体ジメチルシラニレンビス(インデニル)トリウムジクロリド;
ラセミ体ジメチルシラニレンビス(4,7‐ジメチル1‐インデニル)ジルコニウムジクロリド;
ラセミ体ジメチルシラニレンビス(インデニル)ウランジクロリド;
ラセミ体ジメチルシラニレンビス(2,3,5‐トリメチル‐1‐シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド;
ラセミ体ジメチルシラニレン(3‐メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド;
ラセミ体ジメチルシラニレンビス(1‐(2‐メチル‐4‐エチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド;
ラセミ体ジメチルシラニレンビス(2‐メチル‐4,5,6,7‐テトラヒドロ‐1‐インデニル)ジルコニウムジクロリド;
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリウムジクロリド;
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ウランジクロリド;
(tert‐ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)シランチタンジクロリド;
(tert‐ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)シランクロムジクロリド;
(tert‐ブチルアミド)ジメチル(‐η5‐シクロペンタジエニル)シランチタンジクロリド;
(tert‐ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)シランメチルチタンブロミド;
(tert‐ブチルアミド)(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)‐1,2‐エタンジイルウランジクロリド;
(tert‐ブチルアミド)(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)‐1,2‐エタンジイルチタンジクロリド;
(メチルアミド)(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)‐1、2‐エタンジイルセリウムジクロリド;
(メチルアミド)(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)‐1、2‐エタンジイ
ルチタンジクロリド;
(エチルアミド)(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)メチレンチタンジクロリド;
(tert‐ブチルアミド)ジベンジル(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)シランベンジルバナジウムクロリド;
(ベンジルアミド)ジメチル(インデニル)シランチタンジクロリド;
(フェニルホスフィド)ジメチル(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)シランベンジルチタンクロリド;
rac‐ジメチルシリルビス(2‐メチル‐1‐インデニル)ジルコニウムジメチル;
rac‐エチレンビス(1‐インデニル)ジルコニウムジメチル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタンジメチル;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(n‐ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(メチル‐n‐ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(n‐プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(2‐プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(メチルエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(インデニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(メチルインデニル)ジルコニウムジメチル;
ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル;
ジメチルシリレンビス(2‐メチルインデニル)ジルコニウムジメチル;
ジメチルシリレンビス(2‐エチルインデニル)ジルコニウムジメチル;
ジメチルシリレンビス(2‐メチル‐4‐フェニルインデニル)ジルコニウムジメチル;1,2‐エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル;
1,2‐エチレンビス(メチルインデニル)ジルコニウムジメチル;
2,2‐プロピリデンビス(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジメチル;
ジメチルシリレンビス(6‐フェニルインデニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(メチルインデニル)ジルコニウムベンジルメチル;
エチレンビス[2‐(tert‐ブチルジメチルシロキシ)‐1‐インデニル]ジルコニウムジメチル;
ジメチルシリレンビス(インデニル)クロロジルコニウムメチル;
5‐(シクロペンタジエニル)‐5‐(9‐フルオレニル)1‐ヘキセンジルコニウムジメチル;
ジメチルシリレンビス(2‐メチルインデニル)ハフニウムジメチル;
ジメチルシリレンビス(2‐エチルインデニル)ハフニウムジメチル;
ジメチルシリレンビス(2‐メチル‐4‐フェニルインデニル)ハフニウムジメチル;
2,2‐プロピリデンビス(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジメチル;
ビス(9‐フルオレニル)(メチル)(ビニル)シランジルコニウムジメチル;
ビス(9‐フルオレニル)(メチル)(プロプ‐2‐エニル)シランジルコニウムジメチル;
ビス(9‐フルオレニル)(メチル)(ブト‐3‐エニル)シランジルコニウムジメチル;
ビス(9‐フルオレニル)(メチル)(ヘキシ‐5‐エニル)シランジルコニウムジメチル;
ビス(9‐フルオレニル)(メチル)(オクト‐7‐エニル)シランジルコニウムジメチル;
(シクロペンタジエニル)(1‐アリルインデニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(1‐アリルインデニル)ジルコニウムジメチル;
(9‐(プロプ‐2‐エニル)フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;
(9‐(プロプ‐2‐エニル)フルオレニル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(9‐(プロプ‐2‐エニル)フルオレニル)ジルコニウムジメチル;
(9‐(シクロペント‐2‐エニル)フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル;
ビス(9‐(シクロペント‐2‐エニル)(フルオレニル)ジルコニウムジメチル;
5‐(2‐メチルシクロペンタジエニル)‐5(9‐フルオレニル)‐1‐ヘキセンジルコニウムジメチル;
1‐(9‐フルオレニル)‐1‐(シクロペンタジエニル)‐1‐(ブト‐3‐エニル)‐1‐(メチル)メタンジルコニウムジメチル;
5‐(フルオレニル)‐5‐(シクロペンタジエニル)‐1‐ヘキセンハフニウムジメチル;
(9‐フルオレニル)(1‐アリルインデニル)ジメチルシランジルコニウムジメチル;1‐(2,7‐ジ(α‐メチルビニル)(9‐フルオレニル)‐1‐(シクロペンタジエニル)‐1,1‐ジメチルメタンジルコニウムジメチル;
1‐(2,7‐ジ(シクロヘキシ‐1‐エニル)(9‐フルオレニル))‐1‐(シクロペンタジエニル)‐1,1‐メタンジルコニウムジメチル;
5‐(シクロペンタジエニル)‐5‐(9‐フルオレニル)‐1‐ヘキセンチタンジメチル;
5‐(シクロペンタジエニル)‐5‐(9‐フルオレニル)1‐ヘキセンチタンジメチル;
ビス(9‐フルオレニル)(メチル)(ビニル)シランチタンジメチル;
ビス(9‐フルオレニル)(メチル)(プロプ‐2‐エニル)シランチタンジメチル;
ビス(9‐フルオレニル)(メチル)(ブト‐3‐エニル)シランチタンジメチル;
ビス(9‐フルオレニル)(メチル)(ヘキシ‐5‐エニル)シランチタンジメチル;
ビス(9‐フルオレニル)(メチル)(オクト‐7‐エニル)シランチタンジメチル;
(シクロペンタジエニル)(1‐アリルインデニル)チタンジメチル;
ビス(1‐アリルインデニル)チタンジメチル;
(9‐(プロプ‐2‐エニル)フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル;
(9‐(プロプ‐2‐エニル)フルオレニル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル;
ビス(9‐(プロプ‐2‐エニル)フルオレニル)ハフニウムジメチル;
(9‐(シクロペント‐2‐エニル)フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル;
ビス(9‐(シクロペント‐2‐エニル)(フルオレニル)ハフニウムジメチル;
5‐(2‐メチルシクロペンタジエニル)‐5(9‐フルオレニル)‐1‐ヘキセンハフニウムジメチル;
5‐(フルオレニル)‐5‐(シクロペンタジエニル)‐1‐オクテンハフニウムジメチル;
(9‐フルオレニル)(1‐アリルインデニル)ジメチルシランハフニウムジメチル;
(tert‐ブチルアミド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタン(1,3‐ペンタジエン);
(シクロペンタジエニル)(9‐フルオレニル)ジフェニルメタンジルコニウムジメチル;
(シクロペンタジエニル)(9‐フルオレニル)ジフェニルメタンハフニウムジメチル;
ジメチルシラニレンビス(インデニル)トリウムジメチル;
ジメチルシラニレンビス(4,7‐ジメチル‐1‐インデニル)ジルコニウムジメチル;ジメチルシラニレンビス(インデニル)ウランジメチル;
ジメチルシラニレンビス(2‐メチル‐4‐エチル‐1‐インデニル)ジルコニウムジメチル;
ジメチルシラニレンビス(2‐メチル‐4,5,6,7‐テトラヒドロ‐1‐インデニル)ジルコニウムジメチル;
(tert‐ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)シランチタンジメチル;
(tert‐ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)シランクロムジメチル;
(tert‐ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)シランチタンジメチル;
(フェニルホスフィド)ジメチル(テトラメチル‐η5‐シクロペンタジエニル)シランチタンジメチル;及び
[ジメチルシランジイルビス(インデニル)]スカンジウムメチルのような化合物が挙げられる。
多くの場合、上記で言及したようなメタロセンは、ラセミ混合物として存在するであろうが、純粋な鏡像異性形態、又は所定の鏡像異性形態において濃縮した混合物を使用することができる。
【0105】
本発明の新規触媒の形成において、本発明の活性剤組成物と共に使用することのできる他の有機金属触媒化合物は、例えばBarborakらの米国特許第5,516,739号、Barborakらの同第5,561,216号、Brookhartらの同第5,866,663号、Brookhartらの同第5,880,241号、及びCoughlinらの同第6,114,483号に記載されている、後期遷移金属触媒である。本明細書において、このような触媒はひとまとめにして「Brookhart型後期遷移金属触媒化合物又は錯体」と呼ぶ場合がある。
【0106】
本発明の実施において使用できる、他の遷移金属触媒化合物及び触媒錯体には、Johnsonらの国際公開第96/23010号公報に記載されているようなジイミン及びビスオキサゾリン配位子を含有するカトフルオロ(catfluoro)ニッケル、パラジウム、鉄及びコバルト錯体;欧州特許第381,495号公報に記載されているような、選択された2座リン含有配位子を含有するパラジウム及びニッケル触媒;Johnsonら著のJ.Am.Chem.Soc.1995,117,6414(Brownらの国際公開第97/17380号公報も参照のこと)に記載されているようなカトフルオロα‐ジイミン系ニッケル及びパラジウム錯体;Johnsonらの米国特許第5,714,556号公報に記載されているようなニッケル錯体;Schmidtら著のJ.Am.Chem.Soc.1985,107,1443、及びBrookhartら著のMacromolecules,1995,28,5378に記載されているようなコバルト(III)シクロペンタジエニル触媒系;Klabundeの米国特許第4,716,205号公報、同第4,906,754号公報、同第5,030,606号公報、及び同第5,175,326号公報に記載されているような、ニッケル(II)に連結したアンフルオロ(anfluoro)リン、酸素供与配位子;国際公開第98/40374号公報に記載されているような、2座配位子が配位した8~10族(VIIIB族)遷移金属錯体;米国特許第5,637,660号公報に記載されているような、ピリジン又はキノリン部を含有する2座配位子を有する遷移金属錯体;米国特許第6,020,493号公報に記載されているような、キノリオキシ又はピリジノキシ置換4族(IVB族)遷移金属トリハライド;StarzewskiらのAngew.Chem.Int.Ed.Engl.1987,26,63、及び米国特許第4,691,036号公報に記載されているような
ビス(イリド)ニッケル錯体により記述されるようなニッケル錯体;国際公開第97/02298号公報に記載されているような、ニッケル(0)化合物及び酸と組み合わせた中性のN、O、P又はS供与配位子;Finkらの米国特許第4,724,273号公報に記載されているような、アミノビス(イミノ)ホスホランニッケル触媒が含まれる。
【0107】
使用できる様々な種類の遷移金属化合物の具体的非限定追加例としては、以下のものが挙げられる:
2,6‐ビス‐[1‐(1‐メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド;
2,6‐ビス[1‐(1‐エチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド;
2,6‐ビス[1‐(1‐イソプロピルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄[II]クロリド;
2,6‐ビス(1‐(2‐メチルフェニルイミノ)エチル)ピリジン鉄(II)クロリド;
N,N’‐ジ(トリメチルシリル)ベンズアミジナート銅(II);
Mashima著の「触媒」1999年41巻58頁に記載されている、3座Schiff塩基コバルト及び鉄錯体;
米国特許第5,880,323号公報に記載されている種類のニッケル化合物;
ニッケル(II)アセチルアセトナート;
ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II);
ビス(アセトニトリル)ビス(テトラフルオロホウ酸)パラジウム(II);
(2,2’‐ビピリジン)ジクロロパラジウム(II);
ビス(シクロオクタジエニル)ニッケル(0);
パラジウム(II)アセチルアセトナート;
Matsuiら著のChemistry Letters2000,pp.554‐555に記載されている種類のビス(サリチルアルジミナート)錯体;
コバルトジオクトアート;
コバルトセン;
(シクロペンタジエニル)(トリフェニルホフィノ)コバルト(II)ジヨージド;及び公開特許公報第09‐272709号に記載されている種類のニッケル化合物。
【0108】
本発明の触媒組成物の形成において使用することができる好ましい遷移金属化合物は、次式:
MXnm
で表すことができる遷移金属化合物である。式中、Mは、ランタニド系列及びアクチニド系列を含む周期表の4~8族(IVB~VIIIB族)の遷移金属であり、好ましくは4~6族(IVB~VIB族)であり、Yは、独立して、ハライド又は擬ハライドで、nはMの原子価であり、mは0からn‐1の整数である。擬ハライドの中で好ましいのは、アルコキシド又はオキシハライド基である。擬ハライドは技術用語であり、アンフルオロ部を指し、アンフルオロ部は塩様の陰イオンであり、非ハロゲン化物である。適切な擬ハライド基の非限定例は、オキシハライド基、ヒドロカルビルオキシ基(アルコキシ、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリールアルコキシ等の‐OR基)、アミド基(‐NR2)、ヒドロカルビルチオ基(‐SR基)等である。上式でMが4族(IVB族)金属である化合物が最も好ましい。適切な遷移金属化合物の非限定例としては、例えば、二臭化チタン、三臭化チタン、四臭化チタン、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン、三フッ化チタン、四フッ化チタン、二ヨウ化チタン、四ヨウ化チタン、二臭化ジルコニウム、三臭化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、二塩化ジルコニウム、三塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、四フッ化ハフニウム、四塩化ハフニウム、四臭化ハフニウム、四ヨウ化ハフニウム、三塩化ハフニウム、三
臭化ハフニウム、三ヨウ化ハフニウム、ハフニウムオキシクロリド、二塩化バナジウム、三塩化バナジウム、四塩化バナジウム、三フッ化バナジウム、四フッ化バナジウム、五フッ化バナジウム、三ヨウ化バナジウム、バナジウムオキシトリクロリド、バナジウムオキシトリブロミド、五臭化ニオブ、五塩化ニオブ、五フッ化ニオブ、五臭化タンタル、五塩化タンタル、五フッ化タンタル、臭化第一クロム、臭化第二クロム、塩化第一クロム、塩化第二クロム、フッ化第一クロム、フッ化第二クロム、二臭化モリブデン、三臭化モリブデン、四臭化モリブデン、二塩化モリブデン、三塩化モリブデン、四塩化モリブデン、五塩化モリブデン、六フッ化モリブデン、三塩化ランタン、フッ化第一セリウム、塩化第一セリウム、臭化第一セリウム、ヨウ化第一セリウム、フッ化第二セリウム、三塩化ウラン、四塩化ウラン、三臭化ウラン、四臭化ウラン、四塩化トリウム、及び四臭化トリウム等の、遷移金属ハライド及びオキシハライドが挙げられる。適切な遷移金属アルコキシド及び混合ハライド/アルコキシドには、Ti(OCH34、Ti(OC254、Ti(OC253Cl、Ti(OC25)Cl3、Ti(O‐iso‐C37)Cl3、Ti(OC493Cl、Ti(OC372Cl2、Ti(O‐iso‐C372Cl2、Ti(OC17182Br2、Zr(OC254、Zr(OC494、Zr(OC5114、ZrCl3(OC25)、ZrCl(OC493、Hf(OC494、Hf(OC493Cl、VO(OC253、Cr(O‐iso‐C493、及びMo(OC253等が含まれる。他の使用できる遷移金属化合物には、例えばTi(NMe24、Zr(NMe24、Ti(NEt24、Zr(NEt24、及びTi(NBu24等のアミド;シュウ酸チタン、酢酸コバルト、酢酸クロム、ギ酸ニッケル、シュウ酸タリウム及びギ酸ウラニル等のカルボン酸塩が含まれる。より好ましい遷移金属化合物には、4~6族(IVB~VIB族)金属のハライド、オキシハライド、アルコキシド、及び混合ハライド‐アルコキシドが含まれ、更に詳細には4族及び5族(IVB族及びVB族)金属のハライド、オキシハライド、アルコキシド、及び混合ハライド‐アルコキシドが含まれる。特に好ましい遷移金属化合物には、3価又は4価の4族(IVB族)金属ハライドが含まれ、詳細にはクロリド、及びバナジウムオキシハライドが含まれ、中でも特にバナジウムオキシトリクロリドである。
【0109】
本発明の重合及びポリマー
本発明の触媒組成物は、オレフィンポリマー、特にエチレンポリマー、プロピレンポリマー、エチレン/α‐オレフィン共重合体、スチレンポリマー及び共重合体等を製造するのに有用である。本発明に従って重合を行う場合、触媒成分は、溶液又は固体形態であることができる。触媒組成物が溶液である場合、溶媒は、適用できる場合は、大過剰量の液体オレフィンモノマーとすることができる。しかしながら、一般的には補助不活性溶媒(通常、液体パラフィン系又は芳香族炭化水素溶媒)を使用し、それらは例えば、ヘプタン、イソオクタン、デカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、又は液体パラフィン系炭化水素及び/若しくは液体芳香族炭化水素の混合物である。
【0110】
本発明に従って、オレフィン、通常、エチレン、プロピレン、1‐ブテン、スチレンなどの1‐オレフィン(α‐オレフィンとしても知られている)を単独重合することにより、又は、2以上の共重合可能モノマー(このうち少なくとも1つが通常1‐オレフィンである)を共重合させることにより、ポリマーを製造できる。このような共重合体の形成において使用される他のモノマーは、1以上の異なる1‐オレフィン及び/若しくはジオレフィン、並びに/又はアセチレン系モノマーである。本発明の触媒組成物存在下、重合できるオレフィンには、エチレン、プロピレン、1‐ブテン、1‐ヘキセン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐オクテン、1‐デセン、1‐ドデセン、1‐テトラデセン、1‐ヘキサデセン、及び1‐オクタデセン等の、2~20個の炭素原子を有するα‐オレフィンが含まれる。通常、1‐オレフィン、ジオレフィン及び/又はアセチレンモノマー等の使用される炭化水素モノマーは、1分子当たり約10個以下の炭素原子を含有するであろう。本方法で使用する好ましい1‐オレフィンモノマーとして、エチレン、プロピレン、1‐
ブテン、3‐メチル‐1‐ブテン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐ヘキセン及び1‐オクテンが挙げられる。エチレン、又はプロピレン、又はエチレン及びエチレンと共重合可能な1以上のC3‐C8の1‐オレフィンを重合する際に、本発明の触媒組成物を使用することが特に好ましい。エチレン及びプロピレンでターポリマーを形成させるのに使用できる典型的なジオレフィンモノマーには、ブタジエン、ヘキサジエン、ノルボルナジエン、及び類似の共重合可能なジエン系炭化水素が含まれる。1‐ヘプチン及び1‐オクチンは、使用できる適切なアセチレン系モノマーの具体例である。
【0111】
ホモポリマーを調製するのにしばしば使用するモノマーは、1‐アルケンモノマーである。他の多くの場合において、エチレン等の1‐アルケンモノマー及びそれと共重合可能な1以上のモノマーの混合物を、共重合体の製造に使用する。
【0112】
エチレン重合、又はエチレンと3~10個の炭素原子を有するα‐オレフィンとの共重合は、気相又は液相(例えば、トルエン又はヘプタン等の溶媒中)のいずれかにおいて行ってもよい。重合は、従来温度(例えば、0~120℃)及び圧力(例えば、大気圧~50kg/cm2)で、分子量制御等に関する従来方法を使用して行うことができる。
【0113】
本発明の不均一触媒は、スラリー法又は気相法として行う重合において使用することができる。これに関連し、「スラリー」という語は、1以上の補助溶媒(例えば、液体脂肪族又は芳香族炭化水素等)からなってもよい適切な液体反応媒体中若しくは過剰量の液体モノマー中で、粒子状触媒をスラリー若しくは分散体として使用し、バルク中で重合することを意味する。一般的に言えば、これらの重合は、約0~約160℃の1以上の温度で、大気圧、減圧、又は過圧条件下で行う。好ましくは、本発明の触媒のスラリー又は分散体を含有する液体反応媒体中で行う重合を、約40~約110℃の温度で行う。このような方法に使用する典型的な液体希釈剤には、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、及び類似の物質が含まれる。通常、気相重合を行うときは過圧を使用し、反応は約50~約160℃の温度で行う。これらの気相重合は、生成物粒子を未反応ガスから分離するように改造した圧力容器の中の、触媒の撹拌層又は流動層で行うことができる。温度調節したエチレン、コモノマー、水素、及び窒素等の不活性希釈ガスを導入又は再循環し、触媒粒子を所望の重合反応温度に維持することができる。水、酸素及び他の不純物の捕集剤として、トリエチルアルミニウム等のアルキルアルミニウムを添加してもよい。そのような場合においては、トルエン又はキシレン等の適切な無水液体炭化水素溶媒中で溶液として、アルキルアルミニウムが好ましく用いられる。このような溶液の濃度としては、約5×10-5モル濃度が便利に使用される。しかし、所望であれば、それ以上又はそれ以下の濃度の溶液を使用することができる。ポリマー生成物は、反応器中において一定の生成物量を維持する速度で、連続的又は半連続的に取り除くことができる。
【0114】
一般に、本発明に従って行われる重合及び共重合は、触媒的に効果的な量の本発明の新規触媒組成物を使用して行い、その量は、行う重合の種類、使用する重合条件、及び重合を行う反応装置の種類等の要因によって変化してもよい。多くの場合において、使用する本発明の触媒量は、重合するモノマーの重量に基づき、約0.000001~約0.01重量%の遷移金属、ランタニド金属、又はアクチニド金属を与えるような量である。
【0115】
本発明の活性剤組成物と共に形成される触媒組成物の形態は、これらの触媒を用いて生成されるポリマーの形態に影響を及ぼす。粒径範囲が狭い触媒は、著しく反応器付着物を減少させ、その結果として洗浄や保守のための反応器の停止を最小限にすることが明らかになっている。以下の実施例においては、樹脂の形態が、重合反応器の付着物の程度により示されている。
【0116】
従来手段で触媒の重合及び不活性化を行った後、任意の適切な手段により、重合反応器から生成物ポリマーを回収することができる。液体媒体中の触媒のスラリー又は分散体で工程を行う場合、生成物は通常、物理的な分離技術(例えば、デカンテーション等)により回収することができる。回収したポリマーは通常、1以上の適切な揮発性溶媒で洗浄して、残留重合溶媒又は他の不純物取り除き、その後、通常は減圧化で、加熱しながら又は加熱せずに、乾燥する。気相重合で工程を行う場合、気相反応容器から除去後の生成物は、通常、窒素パージ手段により残留モノマーは存在せず、更なる触媒不活性化又は触媒除去をせずに使用できる可能性がある。
【0117】
本発明に従ってポリマーを調製する場合、単峰性又は多峰性のポリマー種を調製する条件を使用する。例えば、異なるエチレン重合成長速度定数及び停止速度定数を有する2以上の異なるメタロセンから形成される本発明の触媒混合物を、多峰性型の広い分子量分布を有するポリマーの調製に使用することができる。上記で言及したように、触媒の形態は、反応器付着物の程度によって証明されるように、生成するポリマーの形態に影響を及ぼす。
【0118】
本発明により作製されるポリマーは、製造物品に形成される。
【0119】
本明細書に記載される前述の操作は、適切な無水物質を使用して、従来の不活性雰囲気下で行われる。
【0120】
以下の実施例は、本発明を例証する。しかしながら、本発明は本明細書において完全に記載され、且つ特許請求の範囲において記載されており、以下の実施例の詳細はこれにより本発明を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。
【実施例
【0121】
実施例1
ジエチル亜鉛(DEZ)リンカー
活性剤の調製
2雰囲気のドライボックス中で、シリカゲル(5g、140℃で2時間か焼、P‐10、富士シリシア化学株式会社)を、トルエン(37g)中でスラリー化した。撹拌しながら、ジエチル亜鉛12wt%トルエン溶液(DEZ、10.71g、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)をゆっくり加えた。この混合物を室温で30分間撹拌した。この混合物に、1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゼン(ETHANOX330、12.256g、20wt%トルエン溶液、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を加えた。この混合物を室温で1時間撹拌し、その後メチルアルミノキサン(MAO、13.197g、30wt%トルエン溶液、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を撹拌しながら加えた。MAOの添加が完了したら、この混合物を室温で30分間反応させた。次にこの混合物スラリーを120℃で4時間加熱した。この混合物を室温まで冷却した後、混合物活性剤スラリーを金属錯体触媒前駆体とin-situ反応させて、最終担持触媒を調製できる。又は、活性剤をろ過により単離し、トルエン及びイソヘキサンで洗浄後、減圧乾燥することができる。
【0122】
触媒の調製
上記で単離した活性剤(8.15g)をトルエン(61g)中で再スラリー化した。この活性剤スラリーに、ビス(1‐メチル‐3‐ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド25wt%トルエン溶液(603mg、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を加えた。添加後、この混合物
を室温で2時間撹拌した。次に、この薄白色固体をろ過した。ろ過装置上の固体をトルエン(10g)で2回、イソヘキサン(10g)で3回洗浄し、1時間室温で減圧乾燥した。薄白色の固体粉末(8.32g)を得た。ICPによるこの乾燥粉末の元素分析:Al
15.60wt%;Zr 0.40wt%;Zn 0.44wt%。この触媒の、エチレン/1‐ヘキセン共重合の結果を表1に示す。
【0123】
実施例2
ブチルエチルマグネシウム(BEM)リンカー
活性剤の調製
2雰囲気のドライボックス中で、シリカゲル(5g、140℃で2時間か焼、P‐10、富士シリシア化学株式会社)を、トルエン(37g)中でスラリー化した。撹拌しながら、ブチルエチルマグネシウム21.5wt%イソヘキサン溶液(BEM、5.24g、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)をゆっくり加えた。この混合物を室温で30分間撹拌した。この混合物に、1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゼン(ETHANOX330、12.256g、20wt%トルエン溶液、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を加えた。この混合物を室温で1時間撹拌し、その後メチルアルミノキサン(MAO、13.197g、30wt%トルエン溶液、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を撹拌しながら加えた。MAOの添加が完了したら、この混合物を室温で30分間反応させた。次にこの混合物スラリーを120℃で4時間加熱した。この混合物を室温まで冷却した後、混合物活性剤スラリーを金属錯体触媒前駆体とin-situ反応させて、最終担持触媒を調製できる。又は、活性剤をろ過により単離し、トルエン及びイソヘキサンで洗浄後、減圧乾燥することができる。
【0124】
触媒の調製
上記で単離した活性剤(7.53g)をトルエン(55g)中で再スラリー化した。この活性剤スラリーに、ビス(1‐メチル‐3‐ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド25wt%トルエン溶液(557mg、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を加えた。添加後、この混合物を室温で2時間撹拌した。次に、この黄色固体をろ過した。ろ過装置上の固体をトルエン(10g)で2回、イソヘキサン(10g)で3回洗浄し、1時間室温で減圧乾燥した。黄色の固体粉末(7.64g)を得た。ICPによるこの乾燥粉末の元素分析:Al 14.14wt%;Zr 0.39wt%;Mg 2.29wt%。この触媒の、エチレン/1‐ヘキセン共重合の結果を表1に示す。
【0125】
実施例3
ブチルエチルマグネシウム(BEM)及びトリメチルアルミニウム(TMA)リンカー
活性剤の調製
2雰囲気のドライボックス中で、シリカゲル(5g、140℃で2時間か焼、P‐10、富士シリシア化学株式会社)を、トルエン(37g)中でスラリー化した。撹拌しながら、トリメチルアルミニウム12wt%トルエン溶液(TMA、3.06g、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を加えた。この混合物を室温で30分間撹拌した。その後、この混合物スラリーに、ブチルエチルマグネシウム21.5wt%イソヘキサン溶液(BEM、2.62g、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)をゆっくり加えた。この混合物を室温で更に30分撹拌した。この混合物に、1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゼン(ETHANOX330、12.256g、20wt%トルエン溶液、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を加えた。この混合物を室温で1時間撹拌し、その後メチルアルミノキサン(MAO、13.197g、30wt%トルエン溶液、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を撹拌しながら加えた。MAOの添加が完了したら、この混合物を室温で30分間反応させた。次にこの混合物スラリーを120℃で4時間加熱した。この混合物を室温まで冷却した後、混合物活性剤スラリーを金属錯体触媒前駆体とin-situ反応させて、最終担持触媒を調製できる。又は、活性剤をろ過により単離し、トルエン及びイソヘキサンで洗浄後、減圧乾燥することができる。
【0126】
触媒の調製
上記で単離した活性剤(6.48g)をトルエン(52g)中で再スラリー化した。この活性剤スラリーに、ビス(1‐メチル‐3‐ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド25wt%トルエン溶液(483mg、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を加えた。添加後、この混合物を室温で2時間撹拌した。次に、この黄色固体をろ過した。ろ過装置上の固体をトルエン(10g)で2回、イソヘキサン(10g)で3回洗浄し、1時間室温で減圧乾燥した。黄色の固体粉末(6.50g)を得た。ICPによるこの粉末の元素分析:Al 15.21wt%;Zr 0.38wt%;Mg 1.22wt%。この触媒の、エチレン/1‐ヘキセン共重合の結果を表1に示す。
【0127】
実施例4
テトラキス(ジメチルアミノ)チタン、[Ti(NMe24]リンカー
活性剤の調製
2雰囲気のドライボックス中で、シリカゲル(5.0g、150℃で4時間か焼、ES767、PQコーポレーション(PQ Corp.))を、トルエン(75g)と混合し、撹拌しながら60℃で加熱した。[Ti(NMe24](1.0g、ストレム(Strem)、50wt%トルエン溶液として)、及び1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゼン(ETHANOX330、1.2g)を加え、各添加後に30分間撹拌した。この混合物を室温まで冷却し、その後ろ過した。収集した固体をトルエン(2×25g)、イソヘキサン(2×25g)で洗浄し、減圧乾燥した(6.2gを単離した)。この固体の一部(5.8g)をその後、撹拌しながらトルエン(73g)と混合し、撹拌しながら65℃まで加熱した。この混合物にE330(1.7g)及びメチルアルミノキサン(MAO、13.4g、30wt%トルエン溶液、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を撹拌しながら加えた。MAOの添加が完了したら、この混合物を室温で30分間、110℃で4時間反応させ、その後室温まで冷却した。
【0128】
触媒の調製
上記の最終活性剤混合物に、ビス(1‐メチル‐3‐ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(0.36gの25wt%トルエン溶液、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を加えた。この混合物を室温で2時間撹拌し、ろ過した。収集した固体をトルエン(2×10g)、イソヘキサン(3×10g)で洗浄し、減圧乾燥した(9.7g)。ICPによるこの乾燥粉末の元素分析:Al 14.7wt%;Zr 0.18wt%;Ti 1.9wt%。この触媒の、エチレン/1‐ヘキセン共重合の結果を表1に示す。
【0129】
実施例5
ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル、[Ta(NMe25]、リンカー
活性剤の調製
2雰囲気のドライボックス中で、シリカゲル(5.0g、150℃で4時間か焼、ES767、PQコーポレーション(PQ Corp.))を、トルエン(92g)と混合し、撹拌しながら60℃で加熱した。[Ta(NMe25](1.8g、ストレム(Strem)、50wt%トルエン溶液として)、及び1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゼン(ETHANOX330、1.5g)を加え、各添加後に30分間撹拌した。この混合物を室温まで冷却し、その後ろ過した。収集した固体をトルエン(2×25g)、イソヘキサン(3×25g)で洗浄し、減圧乾燥した(6.2gを単離した)。この固体(6.2g)をその後、撹拌しながらトルエン(69g)、E330(1.0g)、及びメチルアルミノキサン(MAO、8.5g、30wt%トルエン溶液、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)と混合した。MAOの添加が完了したら、この混合物を室温で30分間、110℃で4時間反応させ、その後室温まで冷却した。
【0130】
触媒の調製
上記の最終活性剤混合物に、ビス(1‐メチル‐3‐ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(0.64g、25wt%トルエン溶液、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を加えた。この混合物を室温で3時間撹拌し、ろ過した。収集した固体をトルエン(2×10g)、イソヘキサン(3×10g)で洗浄し、減圧乾燥した(8.6g)。ICPによるこの乾燥粉末の元素分析:Al 10.8wt%;Zr 0.03wt%;Ta 6.9wt%。この触媒の、エチレン/1‐ヘキセン共重合の結果を表1に示す。
【0131】
比較例6
リンカーなし/多官能性化合物
2雰囲気のドライボックス中で、30wt%MAO溶液(7.292g、アルベマール・コーポレーション(Albemarle Corporation)の製品)を、25wt%ビス(1‐メチル‐3‐ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド溶液(0.617g)を入れた20-mLバイアルにゆっくり加えた。この混合物溶液を室温で1時間撹拌した。か焼したP10 20シリカ(160℃で2時間か焼、富士シリシア化学株式会社)を、丸底フラスコ内において、27mLの無水トルエンでスラリー化した。このシリカスラリーを撹拌しながら、MAO活性化メタロセン溶液をシリカスラリーにゆっくり加えた。添加後、この混合物を室温で3時間撹拌した。黄色粉末をろ過し、トルエンで2回洗浄後、イソヘキサンで3回洗浄した。室温で2時間の減圧乾燥後、薄黄色の最終触媒を得た。ICPによるこの乾燥粉末の元素分析:Al 11.40wt%;Zr 0.40wt%。
【0132】
重合条件:
重合条件1:
溶媒として1800mLのイソブタンを4-L反応容器に加える。その後、捕捉剤として1mLの10wt%トリイソブチルアルミニウム(TIBA)ヘキサン溶液を加える。触媒と捕捉剤の前接触はない。イソブタン及び捕捉剤の添加後、50mLの1‐ヘキセンをコモノマーとして注入する。次に反応容器温度を85℃にし、エチレンを310psiになるまで加える。触媒(2mLイソヘキサン中に30mg)を、約200mLのイソブタンと共に反応容器に注入し流し入れる。温度及び圧力を、それぞれ85℃及び320psiに調節する。重合反応を60分行う。反応容器の排気及び冷却後、樹脂を回収する。65℃で減圧乾燥後、樹脂を得る。
【0133】
重合条件2:
平行圧力反応容器(PPR)は使用前、まず始めに100℃で加熱乾燥し、8時間パージする。反応容器の圧力試験後、モノマー(C2)を6回以上、反応容器に流し入れる。次に、反応容器に捕捉剤(5μmol、TIBA)及びコモノマー(100μリットル、1‐ヘキセン)を加え、その後反応溶媒として無水n-ヘプタンを加える。反応容器を、
作動圧力(150psi)及び作動温度(80℃)にする。反応容器を30分間、温度平衡にさせる。触媒及び無水イソドデカンの溶液(希釈していない触媒0.1mgを含有する150μリットル)を各反応容器に注入する。これが重合運転の開始点である。1時間運転後、CO2ガスで反応を失活させ、反応容器を室温及び大気圧になるまで放冷する。
バイアルを各反応容器から取り出し、lab genevacにより溶媒を除去する。生成した樹脂を秤量し、HT-GPC、FT-IR及びDSCにより分析する。
【0134】
【表1】
【0135】
本明細書又は特許請求の範囲のいずれにおいても、単数形又は複数形で表されていても、化学名又は化学式により表される成分は、化学名又は化学種により表される他の物質(例えば、別の成分又は溶媒等)と接触する前に存在したように特定される。化学変化、変換及び/又は反応がある場合、生成する混合物又は溶液において、どのような化学的変化、変換及び/又は反応が生じるかは問題ではない。なぜなら、このような変化、変換及び/又は反応は、必要とされる条件下において、本明細書に従って特定成分を組み合わせることによる自然な結果であるからである。従ってこの成分は、所望の操作を実施することに関して又は所望の組成物を形成させる上で、組み合わされる要素として特定される。
【0136】
本明細書で用いられる場合、「同時に」は全く同じ時間に供給を開始しなければならないこと、又は同じ期間で停止しなければならないことを意味するものではない。むしろ、この語は、実質的に全体の供給期間において、指定の供給が維持されているという意味で使用されている。これらの同時供給は、好ましくは連続同時供給であるが、供給におけるわずかな中断は、反応において物質の途絶が生じないよう中断の期間が十分に小さいことを条件として、許容できることも理解すべきである。従って、本明細書で用いられる場合、「同時に」という語は、上記で言及した小さい逸脱を包含するものと理解すべきである。
【0137】
本発明は、本明細書に記載される物質及び/若しくは方法を含み、この物質及び/若しくは方法からなり、又は本質的にこの物質及び/若しくは方法からなる。
【0138】
本明細書で用いられる場合、本発明の組成物中の成分の量、又は本発明の方法において使用される成分の量を修飾する「約」という語は、例えば、現状における濃縮物の作製又は溶液の使用で用いられる典型的な測定手順及び液体取扱手順を通して;これらの手順における故意でない誤りを通して;及び、本発明の組成物の作成又は本発明の方法の実施に使用される成分の製造、原料又は不純物の違い等を通して起こり得る数量の変動を意味する。「約」という語は、特定の初期混合物から生成する組成物に対する様々な平衡条件によって異なる量も包含する。「約」という語によって修飾されるかどうかに関わらず、本出願の特許請求の範囲には、上記量の等価物が含まれる。
【0139】
本明細書において用いられる場合、明確に示される場合を除き、冠詞「1つの」(a又はan)は、明細書又は特許請求の範囲を冠詞が表す単一の要素に限定することを意図するものではなく、また限定するものとして解釈するべきではない。むしろ、本明細書で用いられる場合、明確に示される場合を除き、冠詞「1つの」(a又はan)は、1以上のこの要素の包含することを意図するものである。
【0140】
本明細書のあらゆる部分において参照されている、各特許又は他の出版物又は公表文書はいずれも皆、本明細書において十分に記述されたかのように、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0141】
本発明は、その実施において相当の変形を受け入れることができる。従って、上記記述は、本発明を上記に示された特定の例示に限定することを意図するものではなく、限定するものとして解釈するべきではない。