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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/86 20060101AFI20220301BHJP
   E04C 2/26 20060101ALI20220301BHJP
   E04C 2/284 20060101ALI20220301BHJP
   E04C 2/30 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
E04B1/86 N
E04C2/26 Z
E04C2/284
E04C2/30 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018005058
(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公開番号】P2019124042
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠一
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-247289(JP,A)
【文献】特開2001-262730(JP,A)
【文献】実開昭49-103219(JP,U)
【文献】特開2001-003482(JP,A)
【文献】特開2017-053187(JP,A)
【文献】特開平10-131355(JP,A)
【文献】実開昭49-107138(JP,U)
【文献】国際公開第2013/026956(WO,A1)
【文献】特開2004-092199(JP,A)
【文献】特開2004-068299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/82 - 1/90
E04B 2/72 - 2/82
E04C 2/00 - 2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CLTにより形成されたCLT壁と、当該CLT壁と壁面同士が対向するように配置された付加壁と、互いに対向するCLT壁の壁面及び付加壁の壁面のうちの一方の壁面に設けられた反射層と、互いに対向するCLT壁の壁面及び付加壁の壁面のうちの他方の壁面側に設けられた吸音層と、反射層と吸音層との間に設けられた空気層とを備えたことを特徴とする壁構造。
【請求項2】
CLTにより形成された一方のCLT壁と、当該一方のCLT壁と壁面同士が対向するように配置された他方のCLT壁と、互いに対向する一方のCLT壁の壁面及び他方のCLT壁の壁面のうちの一方の壁面に設けられた反射層と、互いに対向する一方のCLT壁の壁面及び他方のCLT壁の壁面のうちの他方の壁面側に設けられた吸音層と、反射層と吸音層との間に形成された空気層とを備えたことを特徴とする壁構造。
【請求項3】
CLTにより形成されたCLT壁と、
当該CLT壁の一方の壁面と壁面同士が対向するように配置された第1の付加壁と、互いに対向するCLT壁の一方の壁面及び第1の付加壁の壁面のうちの一方の壁面に設けられた第1の反射層と、互いに対向するCLT壁の一方の壁面及び第1の付加壁の壁面のうちの他方の壁面側に設けられた第1の吸音層と、第1の反射層と第1の吸音層との間に設けられた第1の空気層と、
当該CLT壁の他方の壁面と壁面同士が対向するように配置された第2の付加壁と、互いに対向するCLT壁の他方の壁面及び第2の付加壁の壁面のうちの一方の壁面に設けられた第2の反射層と、互いに対向するCLT壁の他方の壁面及び第2の付加壁の壁面のうちの他方の壁面側に設けられた第2の吸音層と、第2の反射層と第2の吸音層との間に設けられた第2の空気層とを備えたことを特徴とする壁構造。
【請求項4】
空気層を介して吸音層と対向する反射層の表面が凹凸部を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の壁構造。
【請求項5】
反射層は遮蔽性能を有した材料により形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の壁構造。
【請求項6】
反射層はCLT壁の壁面に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の壁構造。
【請求項7】
CLT壁の壁面に設けられた反射層は、CLT壁の壁面に貼り付けられたアスファルト系シート、又は、アルミ箔、あるいは、CLT壁の壁面に塗装された反射遮蔽機能を有した塗料により形成されたことを特徴とする請求項6に記載の壁構造。
【請求項8】
空気層の厚さは、5mm~50mmに設定されたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の壁構造。
【請求項9】
CLT壁は、CLTにより形成された複数のCLTパネルの端面同士が所定の隙間を隔てて隣り合うように配置されたCLTパネル壁と、複数のCLTパネルの端面間の所定の隙間に充填された当該隙間の伸縮変形に追従して変形可能な遮音材とを備えて構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))を使用した壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
CLTを使用した壁を備えた住宅構造が知られている(特許文献1参照)。
また、大中規模の木造建築物において、CLTを使用した壁構造として、CLTにより形成されたCLT壁と、当該CLT壁と壁面同士が対向するように配置された付加壁と備え、CLT壁の壁面と付加壁の壁面との間にグラスウール等の吸音材を設置した構成の壁構造、あるいは、CLTにより形成された一方のCLT壁と、当該一方のCLT壁と壁面同士が対向するように配置された他方のCLT壁とを備え、一方のCLT壁の壁面と他方のCLT壁の壁面との間にグラスウール等の吸音材を設置した構成の壁構造が知られている(非特許文献1参照)。
尚、大中規模の木造建築物とは、軸組構造又は壁組構造で構築された学校、ホテル、集合住宅、老人ホーム、役所などの比較的大型の木造建築物のことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-53187号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】日本CLT協会 技術報告会2017 一般社団法人日本CLT協会、2017年5月30日、第38頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のCLTを使用した壁構造は、鉄筋コンクリートの壁構造と比べて遮音性能が低いという問題があった。
本発明は、CLTを使用した壁構造において、遮音性能を向上させることができる壁構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る壁構造は、CLTにより形成されたCLT壁と、当該CLT壁と壁面同士が対向するように配置された付加壁と、互いに対向するCLT壁の壁面及び付加壁の壁面のうちの一方の壁面に設けられた反射層と、互いに対向するCLT壁の壁面及び付加壁の壁面のうちの他方の壁面側に設けられた吸音層と、反射層と吸音層との間に設けられた空気層とを備えたことを特徴とする。
また、CLTにより形成された一方のCLT壁と、当該一方のCLT壁と壁面同士が対向するように配置された他方のCLT壁と、互いに対向する一方のCLT壁の壁面及び他方のCLT壁の壁面のうちの一方の壁面に設けられた反射層と、互いに対向する一方のCLT壁の壁面及び他方のCLT壁の壁面のうちの他方の壁面側に設けられた吸音層と、反射層と吸音層との間に形成された空気層とを備えたことを特徴とする。
また、CLTにより形成されたCLT壁と、当該CLT壁の一方の壁面と壁面同士が対向するように配置された第1の付加壁と、互いに対向するCLT壁の一方の壁面及び第1の付加壁の壁面のうちの一方の壁面に設けられた第1の反射層と、互いに対向するCLT壁の一方の壁面及び第1の付加壁の壁面のうちの他方の壁面側に設けられた第1の吸音層と、第1の反射層と第1の吸音層との間に設けられた第1の空気層と、当該CLT壁の他方の壁面と壁面同士が対向するように配置された第2の付加壁と、互いに対向するCLT壁の他方の壁面及び第2の付加壁の壁面のうちの一方の壁面に設けられた第2の反射層と、互いに対向するCLT壁の他方の壁面及び第2の付加壁の壁面のうちの他方の壁面側に設けられた第2の吸音層と、第2の反射層と第2の吸音層との間に設けられた第2の空気層とを備えたことを特徴とする。
当該壁構造によれば、音が反射層で反射して吸音層で吸音されるようになるので、CLTを使用した壁構造において、遮音効果の高い壁構造となる。
また、反射層と吸音層との間に空気層を備えているので、吸音層での吸音効果がさらに高まる。
また、空気層を介して吸音層と対向する反射層の表面が凹凸部を備えたことを特徴とするので、反射層の表面で音が斜めに反射して吸音層に入射するので、反射した音が吸音層を通過する距離が長くなるため、吸音層での吸音効果をより一層高めることができる。
また、反射層は遮蔽性能を有した材料により形成されたので、遮音効果がさらに向上する。
また、反射層はCLT壁の壁面に設けられたことを特徴とする。
また、CLT壁の壁面に設けられた反射層は、CLT壁の壁面に貼り付けられたアスファルト系シート、又は、アルミ箔、あるいは、CLT壁の壁面に塗装された反射遮蔽機能を有した塗料により形成されたことを特徴とする。
また、空気層の厚さは、5mm~50mmに設定されたことを特徴とする。
さらに、CLT壁は、CLTにより形成された複数のCLTパネルの端面同士が所定の隙間を隔てて隣り合うように配置されたCLTパネル壁と、複数のCLTパネルの端面間の所定の隙間に充填された当該隙間の伸縮変形に追従して変形可能な遮音材とを備えて構成されたことを特徴とするので、CLT壁自体の遮音効果が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の壁構造の一例を示す断面図。
図2】実施形態1の壁構造の一例を示す断面図。
図3】実施形態1の壁構造の一例を示す断面図。
図4】実施形態1の壁構造を形成するCLT壁の互いに隣り合うCLTパネルとCLTパネルの端面間の構造を示す図。
図5】実施形態2の壁構造の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態1
実施形態1に係る壁構造としては、CLTにより形成されたCLT壁と付加壁とを備えてCLT壁と付加壁との間に、吸音層、反射層、空気層を備えて構成されたAタイプの壁構造と、一方のCLT壁と他方のCLT壁とを備えて一方のCLT壁の壁面と他方のCLT壁の壁面との間に、吸音層、反射層、空気層を備えて構成されたBタイプの壁構造とがある。
【0009】
Aタイプの壁構造は、図1図3に示すように、CLT壁1と、当該CLT壁1と壁面1a,2a同士が対向するように配置された付加壁2と、CLT壁1の壁面1aに設けられた反射層3と、当該反射層3と付加壁2の壁面2aとの間に設けられた吸音層4とを備え、反射層3と吸音層4との間に空気層5を備えた構成である。
Aタイプの壁構造としては、図1に示すように、CLT壁1の一方の壁面1aと付加壁2の壁面(裏壁面、即ち、後述する壁下地板21の裏面)2aとが対向し、CLT壁1の他方の壁面1bが露出した現し壁と呼ばれる状態となっている壁構造と、図3に示すように、CLT壁1の一方の壁面1aと一方の付加壁2Aの壁面(裏壁面)2aとが対向するとともに、CLT壁1の他方の壁面1bと他方の付加壁2Bの壁面(裏壁面)2aとが対向した状態となっている壁構造とがある。
【0010】
また、Bタイプの壁構造は、一方のCLT壁と、当該一方のCLT壁と壁面同士が対向するように配置された他方のCLT壁と、互いに対向する一方のCLT壁の壁面及び他方のCLT壁の壁面のうちの一方の壁面側に設けられた反射層と、互いに対向する一方のCLT壁の壁面及び他方のCLT壁の壁面のうちの他方の壁面側に設けられた吸音層とを備え、反射層と吸音層との間に空気層を備えた構成である。
具体的には、図2に示すように、一方のCLT壁1Aと、当該一方のCLT壁1Aと壁面1a,1a同士が対向するように配置された他方のCLT壁1Bと、一方のCLT壁1Aの壁面1aに設けられた反射層3と、当該反射層3と他方のCLT壁1Bの壁面1aとの間に設けられた吸音層4とを備え、反射層3と吸音層4との間に空気層5を備えた構成である。
【0011】
尚、CLTとは、農林水産省告示第3079号に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材」である。
即ち、CLTは、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
【0012】
CLT壁1,1A,1Bは、図4に示すように、CLTにより形成された複数のCLTパネル1P,1Pの端面1s,1s同士が所定の隙間を隔てて隣り合うように配置されたCLTパネル壁1Xと、隣り合うCLTパネル1P,1Pの端面1s,1s間の所定の隙間に充填された当該隙間の伸縮変形に追従して変形可能な遮音材6とを備えて構成される。
CLTパネル1Pは、例えば厚さ寸法90mm~150mm程度(ラミナ3層~5層の厚さ寸法に相当)、縦寸法10m~12m程度、横寸法3m~4m程度に形成されたパネルである。
【0013】
互いに隣り合うCLTパネル1Pの端面1sとCLTパネル1Pの端面1sとの間の隙間は、湿度変化に伴う伸縮や施工性を考慮して、例えば、2mm程度とする。
実施形態1によれば、当該隙間に設けられる、当該隙間の伸縮変形に追従して変形可能な遮音材6として、例えば、ゴム、シリコン系シーリング材、セルロースナノファイバー等を使用した。従って、この遮音材6が設けられた隙間の上に、反射層3を設けることで、CLT壁1,1A,1B自体の遮音効果が高まる。
【0014】
付加壁2は、例えば、床側に固定された断面凹状の長尺な図外の床側ランナーと、天井側に固定された断面凹状の長尺な図外の天井側ランナーと、これらの床側ランナーと天井側ランナーとの間に横方向に所定の間隔を隔てて立設されて壁の下地を形成する図外の複数のスタッドと、複数のスタッドに取付けられた石こうボード等の壁下地板21と、壁下地板21の表面22に設けられた図外の壁仕上げ材とで構成される。当該壁仕上げ材は、例えば、化粧板、クロス等のシート、塗料等である。
【0015】
反射層3は、遮蔽性能を有した材料により形成されることが好ましい。例えば、反射層3は、アスファルト系シート、アルミ箔をCLT壁1,1A,1Bの壁面1a,1bに貼り付けたり、あるいは、反射遮蔽機能を有した塗料をCLT壁1,1A,1Bの壁面1a,1bに塗装することにより形成される。
【0016】
吸音層4は、例えば反射層3と対向する付加壁2の壁面(裏壁面)2a側に、グラスウール、ロックウール等の吸音材を設置することにより形成される。
即ち、Aタイプの壁構造の場合、複数のスタッド及び壁下地板21の裏面を覆うように吸音材をスタッド等に取付けて設置することにより、吸音層4が形成される。
また、Bタイプの壁構造の場合、例えば他方のCLT壁1Bの壁面1aに吸音材を取付けて設置することにより、吸音層4が形成される。
吸音層4の厚さは、例えば、50mm程度とする。
【0017】
反射層3と吸音層4との間に設定される空気層5の厚さは、例えば、5mm~50mm程度とする。
【0018】
実施形態1に係る壁構造によれば、反射層3を備えたので、音が反射層3で反射して吸音層4で吸音されるようになるので、CLTを使用した壁構造において、遮音効果の高い壁構造を提供できる。
また、反射層3を、遮音性能を有した材料により形成したので、吸音層4での吸音効果がより高まる。
さらに、反射層3と吸音層4との間に空気層5を備えたので、吸音層4での吸音効果がさらに高まる。
【0019】
実施形態2
図5に示すように、吸音層4と対向する反射層3の表面31が例えば波形等のような凹凸部を備えた構成とすることにより、反射層3の表面31で音が矢印aに示すように斜めに反射して吸音層4に入射するので、反射した音が吸音層4を通過する距離Lが長くなるため、吸音層4での吸音効果をより一層高めることができる。
【0020】
尚、上記では、反射層3と吸音層4との間に空気層5を設けた構成としたが、反射層3と吸音層4との間に空気層5を備えない構成としてもよい。この場合でも、音が反射層3で反射して吸音層4で吸音されるので、CLTを使用した壁構造において、従来の反射層を備えない壁構造と比べた場合、遮音効果の高い壁構造を提供できるようになる。
【0021】
尚、上記では、CLT壁と、当該CLT壁と壁面同士が対向するように配置された付加壁と、CLT壁の壁面に設けられた反射層と、当該反射層と付加壁の壁面との間に設けられた吸音層とを備えたAタイプの壁構造を例示したが、本願発明では、Aタイプの壁構造として、付加壁の壁面側(即ち、石こうボード等の壁下地板の裏面側)に反射層を設け、CLT壁の壁面側に吸音層を設けるようにした構成としてもよい。
即ち、CLT壁と、当該CLT壁と壁面同士が対向するように配置された付加壁と、互いに対向するCLT壁の壁面及び付加壁の壁面のうちの一方の壁面側に設けられた反射層と、互いに対向するCLT壁の壁面及び付加壁の壁面のうちの他方の壁面側に設けられた吸音層とを備えた壁構造としてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1,1A,1B CLT壁、1a,1b CLT壁の壁面、2,2A,2B 付加壁、
2a 付加壁の壁面、3 反射層、4 吸音層、5 空気層、6 遮音材、
31 反射層の表面。
図1
図2
図3
図4
図5