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  • 特許-懸架装置用スプリング製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】懸架装置用スプリング製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/12 20060101AFI20220301BHJP
   F16F 15/067 20060101ALI20220301BHJP
   B60G 11/16 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
F16F1/12 N
F16F15/067
B60G11/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018031939
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2019148273
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 英生
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 浩之
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-186362(JP,A)
【文献】特開2017-015249(JP,A)
【文献】特開平09-257074(JP,A)
【文献】実開昭59-114308(JP,U)
【文献】実開昭57-196836(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/12
F16F 15/067
B60G 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばね部を構成する金属製の線材であって、表面に被覆層が設けられた線材と、
前記ばね部に作用する荷重を受けるゴム製のシート部であって、前記線材が嵌り込んだ溝部を有するとともに、接着剤にて当該線材に接着されたシート部とを備え、
前記溝部の内壁面には、当該溝部の溝幅より小さい幅寸法にて構成された凹部であって、接着剤が溜まった凹部が設けられている懸架装置用スプリング製造方法において、
前記凹部に予め決められた量の接着剤を塗布した後、前記線材を前記溝部の内壁に接触させるように、前記被覆層が成形されている前記ばね部を前記シート部に載置することを特徴とする懸架装置用スプリング製造方法
【請求項2】
前記ばね部を前記シート部に載置した後に、当該ばね部を前記シート部に所定の押圧力で、予め決められた時間だけ押圧することを特徴とする請求項1に記載の懸架装置用スプリング製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用懸架装置に用いられるスプリングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、金属製のコイルばねとプラスチック製の保持部材とが接着材を介して接着されている。当該発明では、保持部材に接着剤が塗布された後、当該塗布された部位にコイルばねが載置されることにより、コイルばねが保持部材に接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-15249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の懸架装置用スプリングでは、以下の理由により、コイルばねが早期に損傷するおそれがある。
すなわち、保持部材に接着剤が塗布された後、当該塗布された部位にコイルばねが載置されると、塗布された接着剤の一部が、コイルばねと保持部材との接着面からはみ出してしまう可能性が極めて高い。
【0005】
車両振動や経年変化等により、接着面からはみ出した接着剤(以下、はみ出し部という。)と接着面に存在する接着剤(以下、接着層という。)との間に亀裂が発生し、はみ出し部が接着層から破断してしまう可能性がある。
【0006】
はみ出し部が破断した場合において、コイルばねに荷重が作用して当該コイルばね及び保持部材が変形すると、当該はみ出し部がコイルばねに対して相対的に変位してしまう。はみ出し部がコイルばねに対して変位すると、はみ出し部の破断箇所とコイルばねとが擦れ合ってしまう。
【0007】
はみ出し部の破断箇所とコイルばねとが擦れ合うと、コイルばねの表面に設けられた被覆層が損傷してしまうので、当該損傷した部位からコイルばねが早期に損傷してしまう。
本願は、上記点に鑑み、金属製の線材にて構成されたばね部が早期に損傷してしまうことを抑制可能な懸架装置用スプリングの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車両用懸架装置に用いられるスプリングは、ばね部(2)を構成する金属製の線材(2A)であって、表面に被覆層が設けられた線材(2A)と、ばね部(2)に作用する荷重を受けるゴム製のシート部(3)であって、線材(2A)が嵌り込んだ溝部(3A)を有するとともに、接着剤にて当該線材(2A)に接着されたシート部(3)とを備える。
【0009】
当該溝部(3A)の内壁面には、例えば、当該溝部(3A)の溝幅(W1)より小さい幅寸法(W2)にて構成された凹部(4)であって、接着剤を溜めることが可能な凹部(4)が設けられていることが望ましい。
【0010】
これにより、当該懸架装置用スプリングを製造する者は、凹部(4)に接着剤を載置した後、線材(2A)を溝部(3A)に載置することが可能となる。したがって、当該懸架装置用スプリングでは、溝部(3A)全体に接着剤が塗布された後、当該塗布された部位に線材(2A)が載置される場合に比べて、接着面からはみ出す接着材の量を低減することが可能となり得る。延いては、はみ出し部が接着層から破断してしまうことが抑制されるので、はみ出し部の破断に起因するばね部の早期損傷が抑制される。
【0011】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係るスプリングを示す図である。
図2】第1実施形態におけるシート部を示す図である。
図3】第1実施形態に係るスプリングの特徴を示す図である。
図4】第1実施形態に係るシート部の特徴を示す図である。
図5】A及びBは、第1実施形態に係るシート部の特徴を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の「発明の実施形態」は、本願発明の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0014】
なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載されたものである。本明細書に記載された発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0015】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。
【0016】
(第1実施形態)
本実施形態は、懸架装置用スプリング及び懸架装置用ラバーシートを車両の前輪用懸架装置に適用したものである。
【0017】
1.懸架装置用スプリング及び懸架装置用ラバーシートの構成
図1に示される懸架装置用スプリング1(以下、スプリング1という。)は、ばね部2及びシート部3等を少なくとも備える。
【0018】
ばね部2は、金属製の線材2Aにより構成されたばねである。線材2Aの表面には、当該線材2A全体を覆う被覆層2Bが設けられている。なお、本実施形態に係るばね部2は、コイル状に成形されたコイルばねである。被覆層2Bは、熱硬化樹脂等の樹脂にて形成された薄膜である。
【0019】
シート部3は、ばね部2に作用する荷重を受ける懸架装置用ラバーシートの一例である。当該シート部3は、ゴム等の弾性変形可能な樹脂にて構成されている。シート部3には、図2に示されるように、線材2Aが嵌り込む溝部3Aが設けられている。
【0020】
溝部3Aは、座巻部を構成する線材2Aが嵌り込む溝である。つまり、シート部3は、コイル状に構成されたばね部2の軸線方向一端に配置され、座巻部を構成する線材2Aに接触する(図1参照)。以下に係る線材2Aは、線材2Aのうち座巻部を構成する部分である。
【0021】
線材2Aは、接着剤にてシート部3、つまり溝部3Aの内壁面に接着されている。このため、線材2Aと溝部3Aの内壁面との間には、図3に示されるように、当該接着材による接着層ADが形成されている。
【0022】
そして、溝部3Aの内壁面には、図4に示されるように、少なくとも1つの凹部4が設けられている。当該凹部4の幅寸法W2は、溝部3Aの溝幅W1より小さい寸法である。後述の接着剤塗布工程では、凹部4に接着剤Adhが塗布される。このため、凹部4Aには接着剤が溜まっている。
【0023】
なお、本実施形態に係る凹部4は、図2に示されるように、第1凹部4A及び複数の第2凹部4B等を有して構成されている。第1凹部4Aは、溝部3Aの底部において、当該溝部3Aに沿って延びる溝状の凹部である。各第2凹部4Bは、第1凹部4Aから溝幅方向に延びる凹部である。
【0024】
2.線材とシート部との接着方法
シート部3、つまり溝部3Aの内壁面と線材2Aとの接着は、少なくとも以下の工程を含む接着方法により施行される。
【0025】
(1)接着作業を行う者又は接着作業装置(以下、作業者等という。)は、先ず、凹部4、つまり第1凹部4A及び第2凹部4Bに予め決められた量の接着剤を塗布する。なお、「予め決められた量」は、試験等により決定された量である。
【0026】
(2)次に、作業者は、線材2Aを溝部3Aの内壁に接触させるように、既に被覆層2Bが成形されているばね部2をシート部3に載置した後、当該ばね部2をシート部3に所定の押圧力で、予め決められた時間だけ押圧する載置工程を施行する。
【0027】
これにより、凹部4に塗布(載置)された接着剤は、溝部3Aの内壁面に沿うように当該内壁面全体に拡がる。その後、作業者等は、所定温度の雰囲気中にてスプリング1を予め決められた時間加熱する接着剤硬化工程を施行する。なお、硬化工程は、常温の雰囲気中で施行されてもよい。
【0028】
3.本実施形態に係るスプリング等の特徴
スプリング1を製造する者、つまり作業者等は、凹部4に接着剤Adhを載置した後、線材2Aを溝部3Aに載置することが可能となる。したがって、当該スプリング1では、溝部3A全体に接着剤が塗布された後、当該塗布された部位に線材2Aが載置される場合(特許文献1に記載のスプリング)に比べて、接着面からはみ出す接着材の量を低減することが可能となり得る。延いては、はみ出し部が接着層ADから破断してしまうことが抑制されるので、はみ出し部の破断に起因するばね部の早期損傷が抑制される。
【0029】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係る凹部4(特に、第1凹部4A)の断面形状は、半円状であった。これに対して、本実施形態に係る凹部4の断面形状は、半円状以外のその他形状である。具体的には、例えば、図5A又は図5Bに示されるように、三角状又は台形状である。
【0030】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号を付したので、重複する説明は省略する。
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る第1凹部4Aは、溝部3Aに沿って延びる溝状の凹部であった。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、たとえば、第1凹部4Aは、溝部3Aに沿って点在する複数の凹部により構成されていてもよい。第2凹部4Bが廃止された構成、又は第1凹部4Aが1つの窪み部により構成されていてもよい。
【0031】
さらに、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1… 懸架装置用スプリング
2… ばね部
2A… 線材
2B… 被覆層
3… シート部
3A… 溝部
4… 凹部
図1
図2
図3
図4
図5