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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】クランプオン式超音波流量センサ
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20220301BHJP
【FI】
G01F1/66 A
G01F1/66 101
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018047209
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2019158675
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(72)【発明者】
【氏名】新村 紘和
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-304931(JP,A)
【文献】米国特許第06575043(US,B1)
【文献】特開2002-365106(JP,A)
【文献】特開2013-174567(JP,A)
【文献】特開2006-030041(JP,A)
【文献】特開2017-075834(JP,A)
【文献】特開2014-178202(JP,A)
【文献】特開2004-340621(JP,A)
【文献】国際公開第2004/097345(WO,A1)
【文献】特開2017-083353(JP,A)
【文献】特開2015-087397(JP,A)
【文献】実開昭60-118919(JP,U)
【文献】特開2000-337940(JP,A)
【文献】米国特許第07703337(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内を流れる流体の流量を測定するクランプオン式超音波流量センサであって、
超音波を送受信可能な送受信面を有する第1の超音波素子と、
前記配管に接触する配管接触面を有し、前記第1の超音波素子の前記送受信面から送信される超音波を前記配管へ伝搬する伝搬経路と、
前記配管を支持するとともに、前記配管接触面が前記配管の軸心方向に沿って配置されるように前記伝搬経路を支持するクランプ部材と、
前記配管を挟んで前記第1の超音波素子との間で超音波を送受信可能な第2の超音波素子と、
前記第1の超音波素子と前記第2の超音波素子との間で送受信される超音波に基づいて前記配管内を流れる流体の流量を算出する流量算出部と
前記配管の周壁内の超音波を減衰させる弾性体により形成され、前記配管の周方向および前記軸心方向に前記配管接触面を取り囲むダンピング材とを備え、
前記伝搬経路は、前記軸心方向に対する傾斜方向に超音波を伝搬するウェッジ材と、前記ウェッジ材と前記配管との音響インピーダンスを整合させる弾性カプラントとを含み、前記軸心方向に対する超音波のせん断波の入射角が臨界角以上となるように設けられ、
前記第1の超音波素子の前記送受信面は、前記軸心方向と前記傾斜方向とに直交する幅方向において第1の幅を有し、
前記伝搬経路に含まれる前記弾性カプラントの前記配管接触面は、略矩形状であり、前記幅方向において前記第1の幅より小さい第2の幅を有し、
前記配管接触面の前記軸心方向における長さは、前記送受信面において前記幅方向と直交する方向の長さより大きい、クランプオン式超音波流量センサ。
【請求項2】
前記第1の幅は、前記傾斜方向における前記第1の超音波素子の厚みの5倍以上である、請求項1記載のクランプオン式超音波流量センサ。
【請求項3】
前記第2の幅は、前記配管の外径の3分の1以下である、請求項1または2記載のクランプオン式超音波流量センサ。
【請求項4】
前記第1の超音波素子は、固有の共振周波数で振動することにより超音波を送信するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のクランプオン式超音波流量センサ。
【請求項5】
前記第1の超音波素子は、メガヘルツの単位で表示された超音波の周波数とミリメートルの単位で表示された前記配管の周壁の厚みとの積が2以上となるように形成される、請求項4記載のクランプオン式超音波流量センサ。
【請求項6】
前記第1の超音波素子は、メガヘルツの単位で表示された超音波の周波数とミリメートルの単位で表示された前記配管の周壁の厚みとの積が6以下となるように形成される、請求項4または5記載のクランプオン式超音波流量センサ。
【請求項7】
前記配管の周壁は、前記伝搬経路の前記配管接触面から出射される超音波の縦波が衝突する励起領域を含み、
前記配管の前記励起領域は、当該配管内を流れる流体を通過しかつ前記第2の超音波素子に向かう超音波を励起する、請求項1~6のいずれか一項に記載のクランプオン式超音波流量センサ
【請求項8】
前記ダンピング材は、前記弾性カプラントの位置および姿勢を保持するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のクランプオン式超音波流量センサ。
【請求項9】
前記ダンピング材を前記配管に押圧する押圧部材をさらに備える、請求項8または1~8のいずれか一項に記載のクランプオン式超音波流量センサ。
【請求項10】
前記押圧部材は、前記弾性カプラントの位置および姿勢を保持するように構成される、請求項記載のクランプオン式超音波流量センサ。
【請求項11】
前記押圧部材は、金属部材により形成され、前記傾斜方向において、前記弾性カプラントの前記配管に対向する面のうち前記配管接触面を除く部分と前記配管との間に配置される、請求項または10記載のクランプオン式超音波流量センサ。
【請求項12】
前記第1の超音波素子の前記送受信面は、前記傾斜方向と前記幅方向とに直交する長さ方向において第1の長さを有し、
前記伝搬経路の前記配管接触面は、前記軸心方向において前記第1の長さより大きい第2の長さを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のクランプオン式超音波流量センサ。
【請求項13】
前記配管の外径は2mm以上20mm以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載のクランプオン式超音波流量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内を流れる流体の流量を算出するクランプオン式超音波流量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
クランプ部材により配管に取り付けられた状態で配管内を流れる流体の流量を算出することが可能なクランプオン式超音波流量センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のクランプオン式超音波流量センサ(超音波流量スイッチ)は、超音波の送信および受信を行う一対の超音波素子を含む。一方の超音波素子により配管内を流れる流体に超音波が送信され、他方の超音波素子により流体を通過した超音波が受信される。一対の超音波素子により送信および受信された超音波に基づいて流体の流量が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-217733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クランプオン式超音波流量センサにおいては、一方の超音波素子から他方の超音波素子に到達する超音波の中には、流体を通過することなく配管の周壁内を伝搬する成分が存在する。このような成分は、流体の流量についての情報を有さない不要な成分となる。超音波の不要な成分が大きい場合には、流体の流量の正確な算出が困難になる。したがって、流体を通過する超音波の成分を不要な成分から分離して受信する必要がある。
【0005】
ここで、配管の直径が大きい場合には、一対の超音波素子を離間して配置可能である。また、樹脂材料中における超音波の伝搬速度は、金属材料中における超音波の伝搬速度より小さい。さらに、樹脂材料中における超音波の減衰率は、金属材料中における超音波の減衰率より大きい。そのため、配管の直径が大きいか、または配管が樹脂材料により形成される場合には、流体を通過する超音波の成分を不要な成分から時間的または空間的に分離して受信されるように容易に一対の超音波素子を配置することができる。
【0006】
しかしながら、配管の直径が小さくかつ配管が金属材料により形成される場合には、流体を通過する超音波の成分を不要な成分から分離して受信されるように一対の超音波素子を配置することは容易ではない。そのため、小径を有する金属配管内を流れる流体の流量を算出することができない。
【0007】
本発明の目的は、小径を有する金属配管内を流れる流体の流量を算出することが可能なクランプオン式超音波流量センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るクランプオン式超音波流量センサは、配管内を流れる流体の流量を測定するクランプオン式超音波流量センサであって、超音波を送受信可能な送受信面を有する第1の超音波素子と、配管に接触する配管接触面を有し、第1の超音波素子の送受信面から送信される超音波を配管へ伝搬する伝搬経路と、配管を支持するとともに、配管接触面が配管の軸心方向に沿って配置されるように伝搬経路を支持するクランプ部材と、配管を挟んで第1の超音波素子との間で超音波を送受信可能な第2の超音波素子と、第1の超音波素子と第2の超音波素子との間で送受信される超音波に基づいて配管内を流れる流体の流量を算出する流量算出部と、配管の周壁内の超音波を減衰させる弾性体により形成され、配管の周方向および軸心方向に配管接触面を取り囲むダンピング材とを備え、伝搬経路は、軸心方向に対する傾斜方向に超音波を伝搬するウェッジ材と、ウェッジ材と配管との音響インピーダンスを整合させる弾性カプラントとを含み、軸心方向に対する超音波のせん断波の入射角が臨界角以上となるように設けられ、第1の超音波素子の送受信面は、軸心方向と傾斜方向とに直交する幅方向において第1の幅を有し、伝搬経路に含まれる弾性カプラントの配管接触面は、略矩形状であり、幅方向において第1の幅より小さい第2の幅を有し配管接触面の軸心方向における長さは、送受信面において幅方向と直交する方向の長さより大きい。
【0009】
このクランプオン式超音波流量センサにおいては、第1の超音波素子の送受信面から送信された超音波が伝搬経路により配管へ伝搬される。伝搬経路は、配管接触面が配管に接触しかつ配管の軸心方向に沿って配置されるようにクランプ部材により配管に支持される。伝搬経路は、ウェッジ材、弾性カプラントを含み、軸心方向に対する超音波のせん断波の入射角が臨界角以上となるように設けられる。そのため、配管接触面から出射される超音波は配管により全反射され、ほとんど配管の周壁内に侵入しない。
【0010】
上記の構成によれば、振動により配管の周壁内に超音波が励起され、励起された超音波を用いて、第1の超音波素子と第2の超音波素子との間で配管を挟んで超音波を送受信することができる。この場合、流体を通過することなく配管の周壁内を伝搬して第1の超音波素子と第2の超音波素子との間で送受信される超音波の不要な成分が低減する。したがって、第1の超音波素子と第2の超音波素子との間で送受信される超音波に基づいて配管内を流れる流体の流量を算出することが容易になる。
【0011】
ここで、第1の超音波素子の送受信面の幅が大きい場合、傾斜方向に送信される超音波の強度を増加させることができる。一方で、配管における超音波が照射される部分の幅が大きくなると、上記の超音波の不要な成分が増加する。そこで、伝搬経路には、配管接触面の幅が第1の超音波素子の送受信面の幅より小さくなるように幅変化部が設けられる。これにより、傾斜方向に送信される超音波の強度を増加させつつ超音波の不要な成分を低減することができる。その結果、小径を有する金属配管内を流れる流体の流量を算出することができる。
【0013】
)第1の幅は、傾斜方向における第1の超音波素子の厚みの5倍以上であってもよい。この場合、第1の超音波素子から傾斜方向に送信される超音波の強度を十分に増加させることができる。
【0014】
)第2の幅は、配管の外径の3分の1以下であってもよい。この場合、流体を通過することなく配管の周壁内を伝搬して第1の超音波素子と第2の超音波素子との間で送受信される超音波の不要な成分を十分に低減することができる。
【0015】
)第1の超音波素子は、固有の共振周波数で振動することにより超音波を送信するように構成されてもよい。この場合、第1の超音波素子から送信される超音波の強度を容易に増加させることができる。
【0016】
)第1の超音波素子は、メガヘルツの単位で表示された超音波の周波数とミリメートルの単位で表示された配管の周壁の厚みとの積が2以上となるように形成されてもよい。この場合、振動により配管の周壁内に励起される超音波の位相速度の変動が防止される。これにより、流体の流量をより正確に算出することが可能になる。
【0017】
)第1の超音波素子は、メガヘルツの単位で表示された超音波の周波数とミリメートルの単位で表示された配管の周壁の厚みとの積が6以下となるように形成されてもよい。この場合、振動により配管の周壁内に励起される超音波の表面波が支配的になることが防止される。これにより、第1の超音波素子と第2の超音波素子との間で送受信される超音波の強度を増加させることができる。
【0018】
)配管の周壁は、伝搬経路の配管接触面から出射される超音波の縦波が衝突する励起領域を含み、配管の励起領域は、当該配管内を流れる流体を通過しかつ第2の超音波素子に向かう超音波を励起してもよい。この場合、配管の励起領域から発生された超音波に基づいて配管内を流れる流体の流量を算出することができる。
【0019】
)ダンピング材は、弾性カプラントの位置および姿勢を保持するように構成されてもよい。この構成によれば、弾性カプラントに幅変化部が形成されかつ弾性カプラントにおける第2の幅を有する部分が配管に接触される場合でも、当該部分の幅の変化が規制される。そのため、小さい幅を有する超音波を容易に配管に照射することができる。また、当該部分の折れ曲がり、蛇行および変形が防止される。これにより、小径を有する金属配管内を流れる流体の流量を正確に算出することができる。
【0020】
)クランプオン式超音波流量センサは、ダンピング材を配管に押圧する押圧部材をさらに備えてもよい。この場合、ダンピング材が配管に十分に押圧されることにより、配管の周壁内を伝搬する超音波が十分に減衰される。これにより、流体の流量をより正確に算出することができる。
【0021】
10)押圧部材は、弾性カプラントの位置および姿勢を保持するように構成されてもよい。この構成によれば、弾性カプラントに幅変化部が形成されかつ弾性カプラントにおける第2の幅を有する部分が配管に接触される場合でも、当該部分の幅の変化が規制される。そのため、小さい幅を有する超音波を容易に配管に照射することができる。また、当該部分の折れ曲がり、蛇行および変形が防止される。これにより、小径を有する金属配管内を流れる流体の流量を正確に算出することができる。
【0022】
11)押圧部材は、金属部材により形成され、傾斜方向において、弾性カプラントの配管に対向する面のうち配管接触面を除く部分と配管との間に配置されてもよい。この場合、小さい幅を有する超音波をより確実に配管に照射することができる。
【0023】
12)第1の超音波素子の送受信面は、傾斜方向と幅方向とに直交する長さ方向において第1の長さを有し、伝搬経路の配管接触面は、軸心方向において第1の長さより大きい第2の長さを有してもよい。この構成によれば、傾斜方向に超音波が送信される場合でも、軸心方向に十分に大きい領域にわたって配管接触面から配管に超音波を照射することができる。
【0024】
13)配管の外径は2mm以上20mm以下であってもよい。この構成によれば、金属配管の外径が十分に小さい場合でも、流体の流量を算出することができる。


【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、小径を有する金属配管内を流れる流体の流量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施の形態に係る流量センサの外観斜視図である。
図2図1のヘッド部の内部構成を示す横断面図である。
図3図1の流量センサにおける流量の算出方法を説明するための図である。
図4】センサヘッドの詳細を示す模式的横断面図である。
図5図4のセンサヘッドのA-A線断面図である。
図6】変形例におけるヘッド部の内部構成を示す模式的横断面図である。
図7】ヘッド部を配管に取り付ける工程を説明するための図である。
図8】ヘッド部を配管に取り付ける工程を説明するための図である。
図9】配管が取り付けられていない状態のクランプ部材の内部を示す模式的断面図である。
図10】配管が取り付けられた状態のクランプ部材の内部を示す模式的断面図である。
図11】配管が取り付けられた状態のクランプ部材の内部を示す模式的断面図である。
図12図1の中継部および本体部の内部構成を示すブロック図である。
図13】センサヘッドの第1~第4の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(1)クランプオン式超音波流量センサの概略構成
本発明の一実施の形態に係るクランプオン式超音波流量センサ(以下、流量センサと略記する。)について図面を参照しながら説明する。また、以下の説明において、配管の中心軸に沿った方向を軸心方向と呼ぶ。配管の周壁に沿った方向を周方向と呼ぶ。軸心方向に対して所定の角度だけ傾斜した方向を傾斜方向と呼ぶ。軸心方向と傾斜方向とに直交する方向を幅方向と呼ぶ。傾斜方向と幅方向とに直交する方向を長さ方向と呼ぶ。
【0028】
図1は、本発明の一実施の形態に係る流量センサの外観斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係る流量センサ1は、ヘッド部100、中継部200および本体部300から構成される。ヘッド部100は、2つのセンサヘッド110,120および2つのクランプ部材130,140を含む。また、ヘッド部100は、センサヘッド110,120の一部をクランプ部材130,140に取り付けるための2つの取付板金150,160をさらに含む。クランプ部材130,140は、例えば金属材料により形成される。
【0029】
センサヘッド110,120は、それぞれクランプ部材130,140により保持された状態で配管Pの周壁の外周面に取り付けられる。本実施の形態においては、配管Pは、比較的小径を有する金属配管である。配管Pの直径(外径)は、例えば2mm以上20mm以下である。配管P内には流体が流れる。
【0030】
センサヘッド110と中継部200との間にヘッド用ケーブルCA1が接続され、センサヘッド120と中継部200との間にヘッド用ケーブルCA2が接続されている。中継部200と本体部300との間に中継ケーブルCA3が接続されている。本体部300には、さらに本体ケーブルCA4の一端が接続されている。本体ケーブルCA4の他端は、流量センサ1の外部装置(図示せず)に接続される。外部装置は、例えばパーソナルコンピュータまたはプログラマブルロジックコントローラである。中継部200および本体部300の詳細は後述する。
【0031】
図2は、図1のヘッド部100の内部構成を示す横断面図である。図2に示すように、センサヘッド110は、ケーシング111、超音波素子112、ウェッジ材113、弾性カプラント114、板ばね115、ダンピング材116および表示灯117を含む。
【0032】
ケーシング111は、例えば樹脂材料により形成され、軸心方向に沿って延びる細長形状(本例においては、略直方体形状)を有する。以下、ケーシング111において、配管Pを向く方向を下方向と定義し、その反対方向を上方向と定義する。ケーシング111の上下方向は、軸心方向と幅方向とに直交する。ケーシング111の上面には、透明部材により形成された窓部Wが形成される。ケーシング111の下部には開口H1が形成される。
【0033】
超音波素子112は、超音波を送受信可能な送受信面A1を有する。ウェッジ材113は、非金属でかつ高い剛性および高い音響透過性を有する材料により形成される。ウェッジ材113は、高い耐環境性を有する材料により形成されることが好ましい。ウェッジ材113は、傾斜方向を向く接合面B1を有し、下部に下方を向く入出射面C1を有する。超音波素子112の送受信面A1は、図示しない音響接合剤によりウェッジ材113の接合面B1に接合される。
【0034】
ウェッジ材113は、図示しないシール部材を介して、開口H1を閉塞するようにケーシング111の下部に取り付けられる。これにより、ケーシング111の内部に水および油等の液体が浸入不可能な空間が形成され、超音波素子112がケーシング111の内部に収容される。ウェッジ材113の入出射面C1は、ケーシング111の開口H1から下方にわずかに突出する。この状態で、ケーシング111は、2つの取付ねじ151により取付板金150に取り付けられる。なお、ケーシング111の内部には、樹脂部材が充填される。
【0035】
弾性カプラント114は、固体形状を有し、高分子ゴムまたはゲル状物質等からなる軟質弾性体材料により形成される。弾性カプラント114の硬度は、例えば20度~40度である。弾性カプラント114の下部には、軸心方向における所定の長さにわたって配管Pと接触可能に下方に突出する突出部T1が形成される。
【0036】
弾性カプラント114は、ウェッジ材113の入出射面C1と配管Pとに接触するように配置されることにより、ウェッジ材113と配管Pとの音響インピーダンスを整合させる。弾性カプラント114におけるウェッジ材113との接触面をウェッジ接触面D1と呼ぶ。また、弾性カプラント114の突出部T1における配管Pとの接触面を配管接触面E1と呼ぶ。
【0037】
板ばね115は、周方向および軸心方向に突出部T1を取り囲むように配置され、2つの取付ねじ134により弾性カプラント114とともにクランプ部材130に取り付けられる。ダンピング材116は、例えば配管P内の超音波を減衰させる弾性体により形成され、周方向および軸心方向に突出部T1を取り囲むように板ばね115と配管Pとの間に配置される。
【0038】
後述するように、流量センサ1は、配管P内にしきい値以上の流量で流体が流れているか否かに基づいて外部装置への切替信号(オンオフ信号)の状態を変化させる流量スイッチとして動作することも可能である。表示灯117は、例えば異なる色で発光する複数の発光ダイオードを含み、図1の中継部200による制御に基づいて、流量スイッチの動作状態に対応して複数種類の態様で点灯または点滅する。
【0039】
本実施の形態においては、表示灯117は、外部装置がオン状態である場合に緑色に点灯し、外部装置がオフ状態である場合に赤色に点灯する。外部装置がオン状態である場合には表示灯117が点灯し、外部装置がオフ状態である場合には表示灯117が消灯してもよい。逆に、外部装置がオン状態である場合には表示灯117が消灯し、外部装置がオフ状態である場合には表示灯117が点灯してもよい。
【0040】
表示灯117は、窓部Wに近接するようにケーシング111の内部に配置される。これにより、表示灯117の動作の態様は、窓部Wを通してケーシング111の外部から視認可能である。使用者は、表示灯117の色または点灯状態等を視認することにより、外部装置のオン状態とオフ状態とを容易に識別することができる。
【0041】
センサヘッド120は、ケーシング121、超音波素子122、ウェッジ材123、弾性カプラント124、板ばね125およびダンピング材126を含む。ケーシング121は、窓部Wが形成されない点を除き、ケーシング111と同様の構成を有する。したがって、ケーシング121には、開口H1と同様の開口H2が形成される。
【0042】
超音波素子122およびウェッジ材123は、超音波素子112およびウェッジ材113とそれぞれ同様の構成を有する。したがって、超音波素子122は、送受信面A1と同様の送受信面A2を有する。また、ウェッジ材123は、接合面B1および入出射面C1とそれぞれ同様の接合面B2および入出射面C2を有する。超音波素子122の送受信面A2は、ウェッジ材123の接合面B2に接合される。ケーシング121は、ウェッジ材123が取り付けられた状態で、2つの取付ねじ161により取付板金160に取り付けられる。
【0043】
弾性カプラント124は、弾性カプラント114とそれぞれ同様の構成を有する。したがって、弾性カプラント124は、突出部T1、ウェッジ接触面D1および配管接触面E1とそれぞれ同様の突出部T2、ウェッジ接触面D2および配管接触面E2を有する。弾性カプラント124は、ウェッジ材123の入出射面C2と配管Pとに接触するように配置されることにより、ウェッジ材123と配管Pとの音響インピーダンスを整合させる。
【0044】
板ばね125およびダンピング材126は、板ばね115およびダンピング材116とそれぞれ同様の構成を有する。板ばね125は、周方向および軸心方向に突出部T2を取り囲むように配置され、2つの取付ねじ144により弾性カプラント124とともにクランプ部材140に取り付けられる。ダンピング材126は、周方向および軸心方向に突出部T2を取り囲むように板ばね125と配管Pとの間に配置される。
【0045】
取付板金150と取付板金160とは、クランプ部材130、配管Pおよびクランプ部材140を挟んで4つの結合ねじ101により互いに結合される。これにより、弾性カプラント114およびダンピング材116がクランプ部材130により配管Pに押圧された状態で、センサヘッド110がクランプ部材130に取り付けられる。同様に、弾性カプラント124およびダンピング材126がクランプ部材140により配管Pに押圧された状態で、センサヘッド120がクランプ部材140に取り付けられる。
【0046】
(2)流量の算出方法
図3は、図1の流量センサ1における流量の算出方法を説明するための図である。図3においては、クランプ部材130,140および取付板金150,160の図示を省略している。図3に示すように、超音波素子112と超音波素子122とは、軸心方向に互いにオフセットした状態で配置される。
【0047】
超音波素子112は、図1の中継部200による制御に基づいて、送受信面A1から傾斜方向に超音波を送信する。送信された超音波は、接合面B1からウェッジ材113内に入射する。その後、超音波は、ウェッジ材113内を伝搬し、入出射面C1から送信される。入出射面C1から送信された超音波は、ウェッジ接触面D1から弾性カプラント114内に入射し、弾性カプラント114内を伝搬した後、配管Pに向けて突出部T1の配管接触面E1から出射される。
【0048】
本実施の形態においては、ウェッジ材113は、軸心方向に対する超音波の横波(せん断波)の入射角が臨界角以上となるように接合面B1および入出射面C1が形成される。この場合、配管接触面E1から出射される超音波の縦波および横波が配管Pの周壁P1により全反射され、ほとんど周壁P1内に侵入しない。一方で、超音波の縦波が周壁P1の外周面に衝突することにより、周壁P1内にガイド波が励起される。ガイド波は、配管Pを軸心方向に平行な方向に伝搬する超音波であり、板波または表面波等が存在する。ガイド波には、複数の共振振動モードが存在し、ガイド波の位相速度および群速度は超音波の周波数と周壁P1の厚みとの積ならびに共振振動モードにより振動の様子が異なるという特徴がある。
【0049】
周壁P1内のガイド波が周壁P1の内周面に衝突することにより、流体を通過して所定の入射角θで対向する周壁P2に向かうように超音波が励起される。流体を通過した超音波の縦波が周壁P2の内周面に衝突することにより、周壁P2内にガイド波が励起される。周壁P2内のガイド波が周壁P2の外周面に衝突することにより、配管Pから弾性カプラント124の配管接触面E2に向かう超音波の縦波が励起される。
【0050】
配管Pからの超音波は、配管接触面E2から突出部T2内に入射し、弾性カプラント124内を伝搬してウェッジ接触面D2から出射される。ウェッジ接触面D2から出射された超音波は、入出射面C2からウェッジ材123内に入射した後、ウェッジ材123内を伝搬して接合面B2から出射される。その後、超音波は、中継部200による制御に基づいて超音波素子122の送受信面A2から受信される。
【0051】
このように、周壁P1には、超音波素子112から出射される超音波の縦波が衝突する励起領域R1が設けられる。励起領域R1は、主として配管P内を流れる流体を通過しかつ超音波素子122に向かう超音波を励起する領域である。図3には、励起領域R1がハッチングパターンにより図示されている。
【0052】
次に、超音波素子122は、中継部200による制御に基づいて、送受信面A2から傾斜方向に超音波を送信する。送信された超音波は、接合面B2からウェッジ材123内に入射する。その後、超音波は、ウェッジ材123内を伝搬し、入出射面C2から送信される。入出射面C2から送信された超音波は、ウェッジ接触面D2から弾性カプラント124内に入射し、弾性カプラント124内を伝搬した後、配管Pに向けて突出部T2の配管接触面E2から出射される。
【0053】
本実施の形態においては、ウェッジ材123は、軸心方向に対する超音波の横波の入射角が臨界角以上となるように接合面B2および入出射面C2が形成される。この場合、配管接触面E2から出射される超音波の縦波および横波が配管Pの周壁P2により全反射され、ほとんど周壁P2内に侵入しない。一方で、超音波の縦波が周壁P2の外周面に衝突することにより、周壁P2内にガイド波が励起される。
【0054】
周壁P2内のガイド波が周壁P2の内周面に衝突することにより、流体を通過して所定の入射角θで対向する周壁P1に向かうように超音波が発生する。流体を通過した超音波の縦波が周壁P1の内周面に衝突することにより、周壁P1内にガイド波が励起される。周壁P1内のガイド波が周壁P1の外周面に衝突することにより、配管Pから弾性カプラント114の配管接触面E1に向かう超音波の縦波が励起される。
【0055】
配管Pからの超音波は、配管接触面E1から突出部T1内に入射し、弾性カプラント114内を伝搬してウェッジ接触面D1から出射される。ウェッジ接触面D1から出射された超音波は、入出射面C1からウェッジ材113内に入射した後、ウェッジ材113内を伝搬して接合面B1から出射される。その後、超音波は、中継部200による制御に基づいて超音波素子112の送受信面A1から受信される。
【0056】
このように、周壁P2には、超音波素子122から出射される超音波の縦波が衝突する励起領域R2が設けられる。励起領域R2は、主として配管P内を流れる流体を通過しかつ超音波素子112に向かう超音波を励起する領域である。図3には、励起領域R2がドットパターンにより図示されている。
【0057】
超音波素子112から超音波素子122への超音波の伝搬時間と超音波素子122から超音波素子112への超音波の伝搬時間との差を時間差Δtと呼ぶ。時間差Δtに基づいて、配管P内を流れる流体の流量Qを下記式(1)により算出する。ここで、dは配管Pの内径であり、Vは流体中の超音波の速度であり、θは流体中の超音波の入射角である。Kは、配管Pの断面内で所定の分布を有する流体の速度を平均速度に換算するための流量補正係数である。速度V、入射角θおよび流量補正係数Kは既知である。使用者は、図1の本体部300を操作することにより、配管Pの内径dを設定することができる。
【0058】
【数1】
【0059】
流量センサ1は流量スイッチとして動作することも可能である。使用者は、本体部300を操作することにより、流量のしきい値を設定することができる。本体部300は、上記式(1)により算出された流量Qを設定されたしきい値と比較し、比較結果に基づいてオンオフ信号を外部装置に出力する。オンオフ信号は、図1の本体ケーブルCAを通して本体部300に接続された外部装置のオン状態とオフ状態とを切り替えるための信号である。図2の表示灯117は、外部装置のオン状態とオフ状態とを識別可能に点灯する。
【0060】
(3)ヘッド部の詳細
図4は、センサヘッド110,120の詳細を示す模式的横断面図である。図5は、図4のセンサヘッド110,120のA-A線断面図である。図4においては、ケーシング111,121、表示灯117、クランプ部材130,140および取付板金150,160の図示が省略されている。図5においては、ケーシング111,121、表示灯117および取付板金150,160の図示が省略され、センサヘッド120およびクランプ部材130,140が点線により図示されている。
【0061】
超音波素子112は、薄い板状の圧電素子により形成される。超音波素子112の厚みはtである(図4)。超音波素子112(送受信面A1)の幅はwである(図5)。ここで、厚みおよび幅とは、それぞれ傾斜方向および幅方向における大きさを意味する。長さ方向における送受信面A1の大きさ(長さ)はLである(図4)。長さLは、幅wと略等しくてもよいし、幅wより大きくてもよい。なお、図4においては、超音波素子112の厚みは、実際の厚みより大きく図示されている。配管Pの外径はdであり、周壁の厚みはtである。
【0062】
超音波素子112には、固有振動数付近の交流電圧(パルス電圧)が印加される。これにより、超音波素子112は、固有振動数(共振周波数f)で振動し、高い強度を有する超音波を送信する。以下、MHz(メガヘルツ)の単位で表示された超音波の共振周波数fとmm(ミリメートル)の単位で表示された周壁の厚みtとの積をf・t積と呼ぶ。
【0063】
超音波素子112は、f・t積が2以上6以下となる共振周波数fで振動するように形成されることが好ましい。f・t積を2以上とすることにより、周壁内のガイド波の位相速度の変動が防止される。これにより、流体の流量をより正確に算出することが可能になる。また、f・t積を6以下とすることにより、周壁内のガイド波の表面波が支配的になることが防止される。これにより、流体内に高い強度を有する超音波を発生させることができる。
【0064】
また、超音波素子112は、幅wが厚みtの5倍以上となるように形成されることが好ましい。この場合、超音波の送信方向である傾斜方向の共振に対する幅方向の複共振の強度が低下する。これにより、傾斜方向の共振特性を向上させることができる。超音波素子122の好ましい構成は、超音波素子112の好ましい構成と同様である。
【0065】
配管Pの周壁における超音波が照射される部分の幅(以下、照射幅と呼ぶ。)は、配管Pの外径dの3分の1以下であることが好ましい。この場合、流体を通過することなく周壁内を伝搬してセンサヘッド110,120間で送受信される超音波の成分をより低減することができる。これにより、流体の流量をより正確に算出することが可能になる。
【0066】
ここで、上記のように、超音波素子112の幅wは厚みtの5倍以上であることが好ましい。また、超音波素子112が破損することを防止するため、超音波素子112の厚みtを所定の厚み以上にすることが必要となる。したがって、超音波素子112(送受信面A1)の幅wは所定の幅より大きくなる。
【0067】
一方で、上記のように、超音波の照射幅は、配管Pの外径dの3分の1以下であることが好ましい。本実施の形態においては、配管Pの外径dは比較的小さい(例えば2mm以上20mm以下である)ため、超音波の照射幅は所定の幅より小さくなる。このように、送受信面A1の幅wの全領域から送信される超音波を配管Pに照射する場合には、上記の2つの好ましい条件を両立させることができない。
【0068】
そこで、超音波素子112の送受信面A1から送信される超音波を配管Pへ伝搬する伝搬経路が弾性カプラント114に設けられる。伝搬経路には、ウェッジ接触面D1と配管接触面E1との間において幅が変化する幅変化部V1が形成される。本実施の形態においては、弾性カプラント114のウェッジ接触面D1は、幅がwとなるように形成される。一方で、突出部T1および配管接触面E1は、幅がwより小さいwとなるように形成される。具体的には、幅wは配管Pの外径dの3分の1以下である。すなわち、伝搬経路の幅変化部V1は、ウェッジ接触面D1と配管接触面E1との間において、幅がwからwに変化する。
【0069】
この構成においては、大きい幅wを有する超音波がウェッジ接触面D1から弾性カプラント114に入射する。その後、超音波は、弾性カプラント114内を伝搬して弾性カプラント114の下面(出射面)から出射される。ここで、配管接触面E1を除く超音波の出射面は配管Pに接触していないため、当該出射面から出射される超音波は次第に減衰し、配管Pにほとんど照射されない。一方、配管接触面E1は配管Pに接触しているため、配管接触面E1から出射される超音波はほとんど減衰せずに配管Pに照射される。
【0070】
特に、本実施の形態においては、配管接触面E1を除く超音波の出射面と配管Pとの間に金属部材により形成された板ばね115が配置される。この場合、当該出射面から出射される超音波は、板ばね115により遮断される。これにより、配管接触面E1を除く出射面から配管Pに超音波が照射されることをより確実に防止することができる。
【0071】
このように、大きい幅wを有する超音波素子112の送受信面A1から超音波が送信された場合でも、小さい幅wを有する超音波を配管Pに照射することができる。これにより、上記の2つの好ましい条件を両立させることができる。なお、本実施の形態においては、幅変化部V1の幅はwからwに変化するが、本発明はこれに限定されない。幅変化部V1の幅は、w,wとは異なるwからwに変化してもよい。幅wは、wより大きくてもよいし、wより小さくてもよい。
【0072】
超音波素子112は、傾斜方向に超音波を送信するように配置される。そのため、軸心方向における超音波の広がり領域は、超音波素子112が軸心方向に対して直交する方向に送信された超音波の広がり領域より大きくなる。そこで、弾性カプラント114の突出部T1の配管接触面E1は、軸心方向において長さがLより大きいLとなるように形成されることが好ましい。これにより、軸心方向に十分に大きい領域にわたって配管接触面E1から配管Pに超音波を照射することができる。
【0073】
弾性カプラント124の構成は、弾性カプラント114の構成と同様である。したがって、弾性カプラント124の伝搬経路には、幅変化部V1と同様の幅変化部V2が形成される。また、弾性カプラント124の突出部T2の配管接触面E2は、軸心方向において長さがLより大きいLとなるように形成されることが好ましい。
【0074】
板ばね115には、軸心方向に沿って延びる矩形状のスリットS3が形成される。ダンピング材116には、軸心方向に沿って延びかつスリットS3と重なる矩形状のスリットS1が形成される。弾性カプラント114の突出部T1は、板ばね115のスリットS3およびダンピング材116のスリットS1に嵌め込まれる。この場合、突出部T1は、配管Pに接触しつつ板ばね115およびダンピング材116により周方向および軸心方向に取り囲まれる。
【0075】
板ばね115は、クランプ部材130に取り付けられた状態で突出部T1を取り囲むことにより、クランプ部材130に対する弾性カプラント114の位置および姿勢を保持する。これにより、小さい幅wを有する突出部T1が配管Pに押圧される場合でも、突出部T1の幅の変化が規制される。そのため、小さい幅wを有する超音波を容易に配管に照射することができる。また、突出部T1の幅を維持しつつ突出部T1の折れ曲がり、蛇行および変形が防止される。これにより、配管P内を流れる流体の流量を正確に算出することができる。
【0076】
ダンピング材116は、突出部T1および励起領域R1を周方向に取り囲む状態で配管Pに取り付けられ、配管Pに押圧される。この場合、励起領域R1を除く配管Pの部分の振動が抑制され、周壁内を周方向に伝搬する超音波がダンピング材116により減衰する。これにより、流体を通過することなく周壁内を伝搬してセンサヘッド110,120間で送受信される超音波の成分をより低減することができる。
【0077】
また、ダンピング材116は、突出部T1および励起領域R1を軸心方向に取り囲む状態で配管Pに取り付けられ、配管Pに押圧される。この場合、励起領域R1を除く配管Pの部分の振動が抑制され、配管Pの周壁内を軸心方向に伝搬する超音波がダンピング材116により減衰する。そのため、軸心方向に伝搬するガイド波が、軸心方向における周壁の端面で反射して帰還することが防止される。したがって、帰還したガイド波が不要なタイミングで超音波を励起することがない。これにより、流体の流量をより正確に算出することが可能になる。
【0078】
板ばね125およびダンピング材126の構成は、板ばね115およびダンピング材116の構成とそれぞれ同様である。したがって、板ばね125にはスリットS3と同様のスリットS4が形成され、ダンピング材126にはスリットS1と同様のスリットS2が形成される。弾性カプラント124の突出部T2は、板ばね125のスリットS4およびダンピング材126のスリットS2に嵌め込まれる。これにより、突出部T2は、配管Pに接触しつつ板ばね125およびダンピング材126により周方向および軸心方向に取り囲まれる。また、ダンピング材126は、励起領域R2を周方向および軸心方向に取り囲む状態で配管Pに取り付けられ、配管Pに押圧される。
【0079】
図6は、変形例におけるヘッド部100の内部構成を示す模式的横断面図である。図6に示すように、変形例における板ばね115には、スリットS3の縁を取り囲みかつ配管Pに向かって延びる立壁部W1が形成される。立壁部W1は、ダンピング材116のスリットS1に嵌め込まれつつ弾性カプラント114の突出部T1を取り囲む。この場合、板ばね115は、クランプ部材130に対する弾性カプラント114の位置および姿勢をより強固に保持する。これにより、突出部T1の折れ曲がり、蛇行および変形がより確実に防止される。
【0080】
同様に、変形例における板ばね125には、スリットS4の縁を取り囲みかつ配管Pに向かって延びる立壁部W2が形成される。立壁部W2は、ダンピング材126のスリットS2に嵌め込まれつつ弾性カプラント124の突出部T2を取り囲む。
【0081】
(4)ヘッド部の配管への取り付け
図7および図8は、ヘッド部100を配管Pに取り付ける工程を説明するための図である。図7に示すように、弾性カプラント114がクランプ部材130と板ばね115との間に配置される。次に、弾性カプラント114の突出部T1(図4および図5)が板ばね115のスリットS3に嵌め込まれた状態で、板ばね115が2つの取付ねじ134によりクランプ部材130に取り付けられる。突出部T1の先端は、板ばね115のスリットS3から突出する。
【0082】
続いて、突出部T1の先端がスリットS1に嵌め込まれるようにダンピング材116が配置される。ダンピング材116は、接着剤等により板ばね115に接着されてもよい。この場合、弾性カプラント114、板ばね115およびダンピング材116をクランプ部材130とともに一体的に扱うことが容易になる。
【0083】
同様に、弾性カプラント124がクランプ部材140と板ばね125との間に配置される。次に、弾性カプラント124の突出部T2が板ばね125のスリットS4(図4および図5)に嵌め込まれた状態で、板ばね125が2つの取付ねじ144によりクランプ部材140に取り付けられる。突出部T2の先端は、板ばね125のスリットS4から突出する。
【0084】
続いて、突出部T2の先端がスリットS2(図4および図5)に嵌め込まれるようにダンピング材126が配置される。ダンピング材126は、接着剤等により板ばね125に接着されてもよい。この場合、弾性カプラント124、板ばね125およびダンピング材126をクランプ部材140とともに一体的に扱うことが容易になる。
【0085】
クランプ部材140は、軸心方向に延びかつ幅方向に向かい合う一対の垂直壁141と、軸心方向に向かい合う一対の垂直壁142とを有する。また、クランプ部材140は、配管Pと接触することにより配管Pを支持可能に形成された支持部143を有する。一対の垂直壁141の互いに向かい合う面(内面)には、配管Pにクランプ部材140を仮止めするための一対の仮止部材145が設けられる。仮止部材145は、ゴム部材等の弾性体により形成される。本実施の形態においては、一対の仮止部材145は、幅方向に向かい合わずに軸心方向に互いにオフセットするように配置される。
【0086】
クランプ部材130は、軸心方向に延びかつ幅方向に向かい合う一対の垂直壁131と、軸心方向に向かい合う一対の垂直壁132とを有する。一対の垂直壁131と一対の垂直壁141とは、それぞれ対応する。同様に、一対の垂直壁132と一対の垂直壁142とは、それぞれ対応する。また、クランプ部材130は、配管Pと接触することにより配管Pを支持可能に形成された支持部133を有する。
【0087】
一対の垂直壁131および一対の垂直壁132は、クランプ部材130を配管Pに取り付ける際にクランプ部材130のガイドを行う。一対の垂直壁141および一対の垂直壁142は、クランプ部材140を配管Pに取り付ける際にクランプ部材140のガイドを行う。クランプ部材130,140のガイドは、互いに対応する一対の垂直壁131,141と、互いに対応する一対の垂直壁132,142とにより行われる。
【0088】
一対の垂直壁131の内面と一対の垂直壁141の外面とは、正対したときに互いに平行に移動可能でかつ配管Pの軸心方向周りに所定の角度以上傾くことを規制するクリアランスが形成されるような寸法関係を有する。同様に、一対の垂直壁132の内面と一対の垂直壁142の外面とは、正対したときに互いに平行に移動可能でかつ配管Pの軸心方向に沿ったピッチング方向に所定の角度以上傾くことを規制するクリアランスが形成されるような寸法関係を有する。
【0089】
一対の垂直壁141の内面間に配管Pが位置するようにクランプ部材140が配置される。この場合、一対の仮止部材145が配管Pに接触する。また、一対の垂直壁131の内面間に一対の垂直壁141が位置しかつ一対の垂直壁132の内面間に一対の垂直壁142が位置するようにクランプ部材130が配置される。その後、配管Pに対して、クランプ部材130とクランプ部材140とが所定以上の押圧力で挟み込まれる。この状態で、クランプ部材130を上下方向に貫通するように、一対の仮止ねじ135がクランプ部材140の一対の仮止部材145にそれぞれ螺合される。
【0090】
上記の手順により、弾性カプラント114,124、板ばね115,125およびダンピング材116,126とともにクランプ部材130,140が配管Pに仮止めされる。この場合、クランプ部材130とクランプ部材140とが押圧された状態が一対の仮止部材145と一対の仮止ねじ135とにより維持される。これにより、クランプ部材130,140が配管Pから脱落することが防止される。また、クランプ部材130,140と配管Pとの間に生じる摩擦力により、クランプ部材130,140が軸心方向に滑ることが防止される。
【0091】
各仮止部材145には、対応する仮止ねじ135のねじ部の径よりもやや小さい径を有するねじ孔が形成されている。配管Pに対してクランプ部材130,140が所定以上の押圧力で挟み込まれるときに、各仮止ねじ135が対応する仮止部材145のねじ孔を押し広げながら当該仮止部材145に挿入される。この場合、仮止ねじ135と仮止部材145との間に発生する摩擦力により、仮止ねじ135が仮止部材145から抜けにくくなる。これにより、配管Pに対してクランプ部材130,140を所定以上の押圧力で挟み込んだ状態を維持することができる。
【0092】
なお、仮止部材145のねじ孔に挿入される仮止ねじ135のねじ部の長さは、配管Pの外径により異なる。具体的には、配管Pの外径が大きい場合には仮止ねじ135の挿入部分は短く、配管Pの外径が小さい場合には仮止ねじ135の挿入部分は長い。そこで、仮止部材145のねじ孔は、仮止ねじ135の挿入部分が最も短い場合でも十分な摩擦力を発生可能でかつ仮止ねじ135の挿入部分が最も長い場合でも仮止ねじ135の先端が仮止部材145のねじ孔の底に接触しない長さに形成される。これにより、種々の外径を有する配管Pにクランプ部材130,140を仮止めすることが可能になる。
【0093】
その後、図8に示すように、配管Pに仮止めされたクランプ部材130,140を挟むように取付板金150,160が配置される。ここで、図2に示すように、取付板金150には、2つの取付ねじ151によりケーシング111が取り付けられている。また、取付板金160には、2つの取付ねじ161によりケーシング121が取り付けられている。
【0094】
この状態で、取付板金150がクランプ部材130に取り付けられかつ取付板金160がクランプ部材140に取り付けられるように、配管Pを挟んで取付板金150と取付板金160とが4つの結合ねじ101により互いに結合される。これにより、配管Pがクランプ部材130の支持部133により支持されつつセンサヘッド110がクランプ部材130により配管Pに取り付けられる。また、配管Pがクランプ部材140の支持部143により支持されつつセンサヘッド120がクランプ部材140に取り付けられる。
【0095】
センサヘッド110が配管Pに取り付けられた状態においては、弾性カプラント114およびダンピング材116がクランプ部材130により配管Pに押圧される。また、弾性カプラント114の突出部T1が、配管Pに接触しつつ軸心方向に沿って配置される。クランプ部材130の支持部133が配管Pに接触することにより、弾性カプラント114(突出部T1)の押し潰し量が規制される。そのため、クランプ部材130の取付作業者の個人差によらず、均一に弾性カプラント114を押圧することができる。
【0096】
同様に、センサヘッド120が配管Pに取り付けられた状態においては、弾性カプラント124およびダンピング材126がクランプ部材140により配管Pに押圧される。また、弾性カプラント124の突出部T2が、配管Pに接触しつつ軸心方向に沿って配置される。クランプ部材140の支持部143が配管Pに接触することにより、弾性カプラント124(突出部T2)の押し潰し量が規制される。そのため、クランプ部材140の取付作業者の個人差によらず、均一に弾性カプラント124を押圧することができる。
【0097】
図9は、配管Pが取り付けられていない状態のクランプ部材130,140の内部を示す模式的断面図である。図10および図11は、配管Pが取り付けられた状態のクランプ部材130,140の内部を示す模式的断面図である。図11の配管Pの外径は、図10の配管Pの外径よりもわずかに大きい。
【0098】
本実施の形態においては、板ばね115,125およびダンピング材116,126は高い弾性を有する。板ばね115,125は、半円筒形薄板のばねであり、2つの取付ねじ134,144によりクランプ部材130,140に取り付けられた固定箇所に対し、周方向の両端が円弧状片持の薄板ばねとなっている。また、図9図11に示すように、クランプ部材130,140の内部には、板ばね115,125およびダンピング材116,126の変形を許容する空間Vが確保されている。さらに、図9に示すように、板ばね115,125に配管Pが取り付けられていない状態において、ダンピング材116,126の内面の径は、取り付け可能な配管Pの外径よりもわずかに小さく設定されている。
【0099】
図10に示すように、配管Pに対してクランプ部材130,140が挟み込まれ、配管Pが板ばね115,125に取り付けられる。このとき、白抜きの矢印で示すように、板ばね115,125に互いに向かい合う力が発生し、ダンピング材116,126に互いに向かい合う力が発生することにより、板ばね115,125およびダンピング材116,126が空間Vに押し広げられる。この場合、押し広げに対抗する板ばね115,125の各々の円弧状片持の薄板ばねの弾性により、一点鎖線の矢印で示すように、クランプ部材130,140の挟み込み方向とは異なる方向(配管Pの軸中心に向かう方向)にも押圧力が発生する。これにより、クランプ部材130,140に配管Pを挟み込むだけで、半円筒形薄板のばねである板ばね115,125により、ダンピング材116,126が配管Pの軸中心に向けて配管Pに押圧される。その結果、配管Pの周壁内を伝搬する超音波の不要な成分を確実に減衰することができる。
【0100】
図11に示すように、配管Pの外径がわずかに異なる場合でも、配管Pに対してクランプ部材130,140が挟み込まれたときには、図10と同様に、板ばね115,125の弾性により配管Pの軸中心に向かう方向に押圧力が発生する。これにより、ダンピング材116,126が配管Pの軸中心に向けて配管Pに押圧される。
【0101】
このように、クランプ部材130,140の内部に空間Vが確保されることにより、配管Pの外径に誤差またはばらつきがある場合でも、板ばね115,125が変形することが許容される。これにより、クランプ部材130,140を容易に配管Pに取り付けることができる。また、ダンピング材116が変形することにより、ダンピング材116をクランプ部材130により確実に配管Pに押圧することができる。同様に、ダンピング材126が変形することにより、ダンピング材126をクランプ部材140により確実に配管Pに押圧することができる。
【0102】
(5)中継部および本体部
図12は、図1の中継部200および本体部300の内部構成を示すブロック図である。図12に示すように、中継部200は、切替回路201、送信回路202,203、増幅回路204、A/D(アナログデジタル)変換器205、中継制御部206、校正情報記憶部207、通信回路208、電源回路209および表示灯駆動回路210を含む。
【0103】
切替回路201は、図1のヘッド用ケーブルCA1を介しての超音波素子112に接続されるとともに、図1のヘッド用ケーブルCA2を介して超音波素子122に接続される。また、中継部200において、切替回路201は増幅回路204に接続される。切替回路201は、中継制御部206の制御に基づいて、超音波素子112,122と増幅回路204との接続状態を第1の状態と第2の状態との間で切り替える。
【0104】
第1の状態は、超音波素子122と増幅回路204とが接続されかつ超音波素子112と増幅回路204とが接続されない状態である。第1の状態においては、超音波素子122が超音波を受信するとともに、受信した超音波に応じたアナログ形式の超音波信号を出力する。超音波素子122から出力された超音波信号が増幅回路204に与えられる。
【0105】
第2の状態は、超音波素子112と増幅回路204とが接続されかつ超音波素子122と増幅回路204とが接続されない状態である。第2の状態においては、超音波素子112が超音波を受信するとともに、受信した超音波に応じたアナログ形式の超音波信号を出力する。超音波素子112から出力された超音波信号が増幅回路204に与えられる。
【0106】
送信回路202は、トライステートドライバを含む。送信回路202においては、中継制御部206の制御に基づいてトライステートドライバの出力状態が3つの状態(Hレベル状態、Lレベル状態およびハイインピーダンス状態)の間で切り替えられることにより第1の駆動信号が生成される。超音波素子112は、送信回路202により生成された第1の駆動信号に応答して超音波を送信する。
【0107】
同様に、送信回路203は、トライステートドライバを含む。送信回路203においては、中継制御部206の制御に基づいてトライステートドライバの出力状態が3つの状態の間で切り替えられることにより第2の駆動信号が生成される。超音波素子122は、送信回路203により生成された第2の駆動信号に応答して超音波を送信する。
【0108】
増幅回路204は、超音波素子112または超音波素子122から与えられた超音波信号を所定の利得で増幅し、増幅後の超音波信号をA/D変換器205に与える。A/D変換器205は、与えられた超音波信号のA/D変換を行い、変換後のデジタル形式の超音波信号を中継制御部206に与える。
【0109】
中継制御部206は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはCPU(中央演算処理装置)およびメモリにより構成され、機能部として超音波制御部206a、測定情報生成部206bおよび表示灯制御部206cを含む。中継制御部206がCPUおよびメモリにより構成される場合、これらの機能部は、CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。なお、超音波制御部206a、測定情報生成部206bおよび表示灯制御部206cの一部がFPGA等の電子回路(ハードウェア)により実現され、残りの部分がCPUがプログラムを実行することにより実現されてもよい。
【0110】
超音波制御部206aは、本体部300による制御に基づいて、切替回路201および送信回路202,203を制御する。例えば、超音波制御部206aは、超音波素子112,122と増幅回路204との間の接続状態を第1の状態に移行させるとともに、第1の駆動信号を生成するように送信回路202を動作させる。この場合、超音波素子112により超音波が送信され、超音波素子122により超音波が受信される。超音波素子122から出力された超音波信号が、増幅回路204により増幅され、A/D変換器205によりA/D変換された後、測定情報生成部206bに与えられる。
【0111】
また、超音波制御部206aは、超音波素子112,122と増幅回路204との間の接続状態を第2の状態に移行させるとともに、第2の駆動信号を生成するように送信回路203を動作させる。この場合、超音波素子122により超音波が送信され、超音波素子112により超音波が受信される。超音波素子112から出力された超音波信号は、増幅回路204により増幅され、A/D変換器205によりA/D変換された後、測定情報生成部206bに与えられる。
【0112】
測定情報生成部206bは、超音波素子112,122から出力される2つの超音波信号の信号波形の相互相関関数のピークから時間差を測定情報として生成する。なお、測定情報生成部206bは、超音波素子112から超音波素子122への超音波の伝搬時間と超音波素子122から超音波素子112への超音波の伝搬時間とをそれぞれ測定し、それらの時間の差分を時間差として算出してもよい。
【0113】
表示灯制御部206cは、本体部300による制御に基づいて、表示灯駆動回路210を制御する。表示灯駆動回路210は、図1のヘッド用ケーブルCA1を介して表示灯117に接続され、表示灯制御部206cの制御に基づいて表示灯117を駆動するための第3の駆動信号を生成する。
【0114】
校正情報記憶部207は、例えば不揮発性メモリにより構成され、超音波素子112,122、切替回路201、送信回路202,203、増幅回路204およびA/D変換器205に関する校正情報を記憶する。
【0115】
ヘッド部100および中継部200の各構成要素の動作特性によっては、測定情報生成部206bにより算出される時間差と配管P内を流れる流体の流量との間で式(1)の関係が満たされない場合がある。校正情報は、測定情報生成部206bにより算出される時間差と実際に測定されるべき流量との間の固有の関係を正確に算出するために、式(1)を校正するための情報である。校正情報は、例えば式(1)における時間差Δtの係数を調整する値と、式(1)のうち時間差Δtを含む項に加算されるべきオフセット値(流量0に対する調整値)とを含む。
【0116】
通信回路208は、図1の中継ケーブルCA3の一端に接続され、測定情報生成部206bにより生成されたデジタル形式の測定情報と校正情報とを中継ケーブルCA3を通して本体部300へ出力する。また、通信回路208は、中継ケーブルCA3を通して本体部300から入力される送信制御信号および表示制御信号を中継制御部206に与える。送信制御信号は送信回路202,203を制御するための制御信号であり、表示制御信号は表示灯駆動回路210を制御するための制御信号である。
【0117】
電源回路209は、本体部300から中継ケーブルCA3を通して供給される電力を受けるとともに、受けた電力を中継部200に設けられる他の構成要素に供給する。
【0118】
本体部300は、通信回路301、本体制御部302、表示部303、操作部304、記憶部305、出力回路306および電源回路307を含む。通信回路301は、図1の中継ケーブルCA3の他端に接続され、中継部200から中継ケーブルCA3を通して出力される測定情報および校正情報を本体制御部302に与える。また、通信回路301は、後述するように本体制御部302において生成される送信制御信号および表示制御信号を中継ケーブルCA3を通して中継部200へ出力する。
【0119】
表示部303は、例えばセグメント表示器またはドットマトリクス表示器を含み、本体制御部302の制御に基づいて配管P内を流れる流体の流量等を表示する。操作部304は、複数の操作ボタンを含む。使用者は、操作部304を操作することにより、ヘッド部100の取付対象となる配管Pの寸法および流量補正係数等を入力することができる。また、使用者は、操作部304を操作することにより、流量のしきい値を入力することができる。記憶部305は、不揮発性メモリまたはハードディスクドライブにより構成される。
【0120】
本体制御部302は、例えばCPUおよびメモリを含み、超音波素子112,122および表示灯117をそれぞれ駆動するために中継部200に与えるべき送信制御信号および表示制御信号を生成する。また、本体制御部302は、操作部304により入力された配管Pの寸法、流量補正係数および流量のしきい値等の情報を記憶部305に記憶させることにより情報を設定する。なお、配管Pの寸法として、操作部304に配管Pの外径dおよび周壁の厚みtが入力されることにより配管Pの内径dが設定されてもよい。
【0121】
さらに、本体制御部302は、通信回路301から与えられる校正情報に基づいて式(1)を校正する。また、本体制御部302は、校正された式(1)、通信回路301から与えられる測定情報および設定された流量補正係数に基づいて配管P内を流れる流体の流量を算出する。また、本体制御部302は、算出された流量と設定された流量のしきい値との比較結果に基づいてオンオフ信号を生成する。出力回路306は、図1の本体ケーブルCA4の一端に接続され、本体制御部302により生成されたオンオフ信号を本体ケーブルCA4を通して流量センサ1の外部装置に出力する。
【0122】
(6)変形例
上記実施の形態において、ヘッド部100は弾性カプラント114,115を含むが、本発明はこれに限定されない。ヘッド部100は、弾性カプラント114,115を含まなくてもよい。この場合、突出部T1および幅変化部V1は、ウェッジ材113およびダンピング材116の少なくとも一方に形成される。同様に、突出部T2および幅変化部V2は、ウェッジ材123およびダンピング材126の少なくとも一方に形成される。
【0123】
図13(a)~(d)は、センサヘッド110の第1~第4の変形例をそれぞれ示す断面図である。図13(a)~(d)においては、図5のセンサヘッド110の断面図に相当する断面図が示されている。以下、センサヘッド110の第1~第4の変形例について、図5のセンサヘッド110と異なる点を説明する。なお、図13(a)~(d)においては、センサヘッド120の図示が省略されているが、センサヘッド120は、対応するセンサヘッド110と同様の構成を有する。
【0124】
図13(a)に示すように、センサヘッド110の第1の変形例においては、ダンピング材116の上部に、軸心方向における所定の長さにわたってウェッジ材113と接触可能に上方に突出する突出部T1が形成される。また、ダンピング材116には、スリットS1(図5)が形成されない。ダンピング材116の突出部T1は、下方から板ばね115のスリットS3に嵌め込まれた状態で、ウェッジ材113に接触される。
【0125】
本例においては、ダンピング材116における配管Pとの接触面でかつ突出部T1と上下方向に重なる面が配管接触面E1となる。ウェッジ材113の接合面B1は、幅がwとなるように形成される。一方で、突出部T1および配管接触面E1は、幅がwより小さいwとなるように形成される。すなわち、ウェッジ材113およびダンピング材116には、伝搬経路が設けられ、接合面B1と配管接触面E1との間において、幅がwからwに変化する幅変化部V1が形成される。
【0126】
図13(b)に示すように、センサヘッド110の第2の変形例においては、ウェッジ材113の下部に、軸心方向における所定の長さにわたってダンピング材116と接触可能に下方に突出する突出部T1が形成される。また、ダンピング材116には、スリットS1が形成されない。ウェッジ材113の突出部T1は、上方から板ばね115のスリットS3に嵌め込まれた状態で、ダンピング材116に接触される。
【0127】
本例においては、ダンピング材116における配管Pとの接触面でかつ突出部T1と上下方向に重なる面が配管接触面E1となる。ウェッジ材113の接合面B1は、幅がwとなるように形成される。一方で、突出部T1および配管接触面E1は、幅がwより小さいwとなるように形成される。すなわち、ウェッジ材113およびダンピング材116には、伝搬経路が設けられ、接合面B1と配管接触面E1との間において、幅がwからwに変化する幅変化部V1が形成される。
【0128】
図13(c)に示すように、センサヘッド110の第3の変形例においては、ウェッジ材113の下部に、軸心方向における所定の長さにわたってダンピング材116と接触可能に下方に突出する突出部T1が形成される。また、センサヘッド110は、板ばね115を含まない。さらに、ダンピング材116には、スリットS1が形成されない。ダンピング材116は、接着剤等によりクランプ部材130(図5)に取り付けられる。ウェッジ材113の突出部T1は、上方からダンピング材116に接触される。
【0129】
本例においては、ダンピング材116における配管Pとの接触面でかつ突出部T1と上下方向に重なる面が配管接触面E1となる。ウェッジ材113の接合面B1は、幅がwとなるように形成される。一方で、突出部T1および配管接触面E1は、幅がwより小さいwとなるように形成される。すなわち、ウェッジ材113およびダンピング材116には、伝搬経路が設けられ、接合面B1と配管接触面E1との間において、幅がwからwに変化する幅変化部V1が形成される。
【0130】
図13(d)に示すように、センサヘッド110の第4の変形例においては、ウェッジ材113の下部に、軸心方向における所定の長さにわたって配管Pと接触可能に下方に突出する突出部T1が形成される。ウェッジ材113の突出部T1は、上方から板ばね115のスリットS3およびダンピング材116のスリットS1に嵌め込まれた状態で、配管Pに接触される。
【0131】
本例においては、ウェッジ材113の突出部T1における配管Pとの接触面が配管接触面E1となる。配管接触面E1には、ウェッジ材113と配管Pとの音響インピーダンスを整合させるためのグリスが塗布されてもよい。ウェッジ材113の接合面B1は、幅がwとなるように形成される。一方で、突出部T1および配管接触面E1は、幅がwより小さいwとなるように形成される。すなわち、ウェッジ材113には、伝搬経路が設けられ、接合面B1と配管接触面E1との間において、幅がwからwに変化する幅変化部V1が形成される。
【0132】
(7)効果
本実施の形態に係る流量センサ1は、センサヘッド110,120を含む。センサヘッド110においては、超音波素子112の送受信面A1から送信された超音波がウェッジ材113および弾性カプラント114を通して配管Pへ伝搬される。弾性カプラント114は、配管接触面E1が配管Pに接触しかつ軸心方向に沿って配置されるようにクランプ部材130により配管Pに支持される。ウェッジ材113は、軸心方向に対する超音波のせん断波の入射角が臨界角以上となるように設けられる。そのため、配管接触面E1から出射される超音波は配管Pにより全反射され、ほとんど配管Pの周壁内に侵入しない。
【0133】
センサヘッド120は、センサヘッド110と同様の構成を有する。この構成によれば、振動により配管Pの周壁内にガイド波が励起され、励起されたガイド波を用いて、超音波素子112と超音波素子122との間で配管Pを挟んで超音波を送受信することができる。この場合、流体を通過することなく配管Pの周壁内を伝搬して超音波素子112と超音波素子122との間で送受信される超音波の不要な成分が低減する。したがって、超音波素子112と超音波素子122との間で送受信される超音波に基づいて配管P内を流れる流体の流量を算出することが容易になる。
【0134】
ここで、超音波素子112の送受信面A1の幅が大きい場合、傾斜方向に送信される超音波の強度を増加させることができる。一方で、配管Pにおける超音波が照射される部分の幅が大きくなると、上記の超音波の不要な成分が増加する。そこで、弾性カプラント114には、配管接触面E1の幅が超音波素子112の送受信面A1の幅より小さくなるように幅変化部V1が設けられる。これにより、傾斜方向に送信される超音波の強度を増加させつつ超音波の不要な成分を低減することができる。その結果、小径を有する金属配管P内を流れる流体の流量を算出することができる。
【0135】
(8)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、中継部200と本体部300とが別体として設けられ、中継ケーブルCA3により接続されるが、本発明はこれに限定されない。中継部200と本体部300とが一体的に設けられてもよい。
【0136】
(b)上記実施の形態において、ダンピング材116は、弾性カプラント114の突出部T1を周方向および軸心方向に取り囲む1つの弾性体により構成されるが、本発明はこれに限定されない。ダンピング材116は、弾性カプラント114の突出部T1を周方向および軸心方向に取り囲む複数の弾性体により構成されてもよい。この場合、ダンピング材116にはスリットS1が形成されなくてもよい。同様に、ダンピング材126は、弾性カプラント124の突出部T2を周方向および軸心方向に取り囲む複数の弾性体により構成されてもよい。
【0137】
(c)上記実施の形態において、ヘッド部100にダンピング材116,126が設けられるが、本発明はこれに限定されない。励起領域R1,R2を除く配管Pの部分が不要な超音波をほとんど励起しない場合には、ヘッド部100にダンピング材116,126が設けられなくてもよい。
【0138】
(d)上記実施の形態において、ヘッド部100に板ばね115,125が設けられるが、本発明はこれに限定されない。ヘッド部100に板ばね115が設けられなくてもよい。この場合、ダンピング材116は、接着剤等によりクランプ部材130に取り付けられる。弾性カプラント114の突出部T1は、ダンピング材116のスリットS1に嵌め込まれる。これにより、ダンピング材116は、クランプ部材130に対する弾性カプラント114の位置および姿勢を保持する。
【0139】
同様に、ヘッド部100に板ばね125が設けられなくてもよい。この場合、ダンピング材126は、接着剤等によりクランプ部材140に取り付けられる。弾性カプラント124の突出部T2は、ダンピング材126のスリットS2に嵌め込まれる。これにより、ダンピング材126は、クランプ部材140に対する弾性カプラント124の位置および姿勢を保持する。
【0140】
(9)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0141】
上記実施の形態においては、配管Pが配管の例であり、流量センサ1がクランプオン式超音波流量センサの例であり、送受信面A1が送受信面の例であり、超音波素子112,122がそれぞれ第1および第2の超音波素子の例である。配管接触面E1が配管接触面の例であり、クランプ部材130がクランプ部材の例であり、本体制御部302が流量算出部の例であり、ウェッジ材113がウェッジ材の例である。
【0142】
弾性カプラント114が弾性カプラントの例であり、ダンピング材116がダンピング材の例であり、幅変化部V1が幅変化部の例であり、励起領域R1が励起領域の例であり、板ばね115が押圧部材の例である。図5の例においては弾性カプラント114が伝搬経路の例であり、図13(a)~(c)の例においてはウェッジ材113およびダンピング材116が伝搬経路の例であり、図13(d)の例においてはウェッジ材113が伝搬経路の例である。
【符号の説明】
【0143】
1…流量センサ,100…ヘッド部,101…結合ねじ,110,120…センサヘッド,111…ケーシング,112,122…超音波素子,113,123…ウェッジ材,114,124…弾性カプラント,115,125…板ばね,116,126…ダンピング材,117…表示灯,130,140…クランプ部材,131,132,141,142…垂直壁,133,143…支持部,134,144,151,161…取付ねじ,135,146…仮止ねじ,145…仮止部材,150,160…取付板金,200…中継部,201…切替回路,202,203…送信回路,204…増幅回路,205…A/D変換器,206…中継制御部,206a…超音波制御部,206b…測定情報生成部,206c…表示灯制御部,207…校正情報記憶部,208,301…通信回路,209,307…電源回路,210…表示灯駆動回路,300…本体部,302…本体制御部,303…表示部,304…操作部,305…記憶部,306…出力回路,A1,A2…送受信面,B1,B2…接合面,C1,C2…入出射面,CA1,CA2…ヘッド用ケーブル,CA3…中継ケーブル,CA…本体ケーブル,D1…ウェッジ接触面,E1,E2…配管接触面,H1,H2…開口,P…配管,P1,P2…周壁,R1,R2…励起領域,S1~S4…スリット,T1,T2…突出部,V1,V2…幅変化部,V…空間,W…窓部,W1,W2…立壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13