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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20220301BHJP
   C09K 17/32 20060101ALI20220301BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20220301BHJP
   C05D 3/04 20060101ALI20220301BHJP
   C05D 9/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
E02D3/12 103
C09K17/32 H
C09K17/06 H
C05D3/04
C05D9/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018062974
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019173398
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正美
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝道
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0308306(US,A1)
【文献】特開2006-144464(JP,A)
【文献】特開2015-071528(JP,A)
【文献】特開昭61-195186(JP,A)
【文献】特開昭63-270375(JP,A)
【文献】特開2015-121031(JP,A)
【文献】特開2008-184741(JP,A)
【文献】特開2006-169940(JP,A)
【文献】特開2008-008023(JP,A)
【文献】特公昭47-5780(JP,B1)
【文献】特開2002-13102(JP,A)
【文献】特許第5599032(JP,B2)
【文献】特開昭50-48708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
C09K 17/32
C09K 17/06
C05D 3/04
C05D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の土壌中で微生物が栄養源を代謝することにより発生する炭酸イオンと土壌中の二価金属イオンとを反応させて土壌の土粒子間に析出される炭酸塩により地盤を硬化させる地盤改良方法において、
粉末状の栄養源を地盤改良対象の地盤に供給するステップと、
粉末状の栄養源が供給された地盤を撹拌するステップと、
撹拌された地盤に微生物及び栄養源の入った水溶液を供給するステップと、
水溶液が供給された地盤を撹拌するステップと、
を備えたことを特徴とする地盤改良方法。
【請求項2】
粉末状の栄養源として、pH調整機能を備えた転炉石灰肥料とpH調整機能を備えた鉱さい珪酸質肥料とを混合した混合肥料、又は、転炉石灰肥料、又は、鉱さい珪酸質肥料と、二価金属イオンとを供給したことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良方法。
【請求項3】
混合肥料、又は、転炉石灰肥料、又は、鉱さい珪酸質肥料は、微生物、栄養源、二価金属イオンが供給されていない固化対象の土壌のpHを8~9に調整する量を、地盤改良対象の地盤に供給したことを特徴とする請求項2に記載の地盤改良方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の代謝作用(微生物反応)を利用して地盤を硬化させる地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤(土壌)中の微生物の代謝作用により生成される炭酸イオンと多価金属イオンとを反応させて析出される炭酸塩により地盤を硬化させる地盤改良方法が知られている(例えば、特許文献1乃至3等参照)。
例えば、微生物は次式に示されるとおり、代謝活動において栄養源(グルコース)から二酸化炭素を生じる。
12+6O→6CO+6HO(好気性条件)
12→2CO+2COH(嫌気性条件)
このとき地盤中のカルシウムと微生物の代謝作用により生成される二酸化炭素(炭酸イオン)とが反応し、次式のとおり、土粒子間に炭酸カルシウム(炭酸塩)が析出・沈澱し、地盤が硬化する。
Ca2++CO→HO→CaCO+2H
この場合、カルシウムを含む地盤中に微生物を投入した場合でも地盤が硬化するが(特許文献1参照)、地盤中のカルシウム溶解量が少ない場合や地盤を高強度に改良する場合においては、地盤にカルシウムを注入することにより、炭酸カルシウムの析出量を多くすることができる(特許文献2参照)。
また、微生物の代謝作用(微生物反応)を活性化させるためには、pHを例えば弱酸性から弱アルカリ性付近に保持することが必要であることも知られており、固化対象の地盤にpH調整剤(pH緩衝剤)を注入するようにしている(特許文献3,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4621634号公報
【文献】特許第4608669号公報
【文献】特許第4599611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の微生物の代謝作用を利用した地盤改良方法においては、微生物、栄養源、多価金属イオン、pH調整剤等を地盤に注入している。
しかしながら、微生物、栄養源、多価金属イオン、pH調整剤等を地盤に注入するだけでは、微生物等が地盤に均等に混ざらないため、地盤を均等に硬化させることができず、地盤改良対象の地盤の地盤改良を良好に行うことができないという問題点があった。
本発明は、微生物の代謝作用を利用した地盤改良方法において、地盤改良対象の地盤の地盤改良を良好に行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る地盤改良方法は、地盤の土壌中で微生物が栄養源を代謝することにより発生する炭酸イオンと土壌中の二価金属イオンとを反応させて土壌の土粒子間に析出される炭酸塩により地盤を硬化させる地盤改良方法において、粉末状の栄養源を地盤改良対象の地盤に供給するステップと、粉末状の栄養源が供給された地盤を撹拌するステップと、撹拌された地盤に微生物及び栄養源の入った水溶液を供給するステップと、水溶液が供給された地盤を撹拌するステップと、を備えたので、地盤改良対象とする地盤中に、粉末状の栄養源、水溶液中に存在していた微生物、栄養源が均等に混ざるようになる。従って、地盤改良対象とする地盤全体でバイオミネラリゼーションが活発に行われ、地盤改良対象とする地盤全体を均等に硬化させることができるので、地盤改良対象の地盤の地盤改良を良好に行うことができるようになる。
また、粉末状の栄養源として、pH調整機能を備えた転炉石灰肥料とpH調整機能を備えた鉱さい珪酸質肥料とを混合した混合肥料、又は、転炉石灰肥料、又は、鉱さい珪酸質肥料と、二価金属イオンとを供給した。
また、混合肥料、又は、転炉石灰肥料、又は、鉱さい珪酸質肥料は、微生物、栄養源、二価金属イオンが供給されていない固化対象の土壌のpHを8~9に調整する量を、地盤改良対象の地盤に供給した。
以上のようにすることで、微生物反応及び鉱物化反応の両方を促進させることができて、地盤改良対象の地盤を良好に硬化させることができる
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態1に係る地盤改良方法を示す図。
図2】実施形態2に係る地盤改良方法を示す図。
図3】実験による土壌固化方法の概念を示す図。
図4】各使用資材を水に溶解させた10%溶液を作製し、各使用資材の10%溶液において、pH及びCa2+の値がどのようになるかを実験した結果を示す数値データ及びグラフ。
図5】ケイカルの1%溶液を作製し、ケイカルの1%溶液におけるpH及びCa2+の経時的変化を実験した結果を示す数値データ及びグラフ。
図6】ミネカルの1%溶液を作製し、ミネカルの1%溶液におけるpH及びCa2+の経時的変化を実験した結果を示す数値データ及びグラフ。
図7】山砂とミネカル、山砂とケイカルを混合させた混合試料を作製し、山砂に対するミネカルの重量比(%)、山砂に対するケイカルの重量比(%)を変えることで、混合試料中のpH及びCa2+の値がどのようになるかを実験した結果を示す数値データ及びグラフ。
図8】山砂とミネカルとケイカルとを混合させた混合試料を作製し、山砂に対するミネカル及びケイカルの重量比(%)を変えることで、混合試料中のpH及びCa2+の値がどのようになるかを実験した結果を示す数値データ及びグラフ。
図9】各試料土壌の硬度変化実験結果を示す数値データ及びグラフ。
図10】各試料土壌のpH変化実験結果を示す数値データ及びグラフ。
図11】各試料土壌のCa2+変化実験結果を示す数値データ及びグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1の地盤改良方法は、地盤の土壌中で微生物が栄養源を代謝することにより発生する炭酸イオンと土壌中の二価金属イオンとを反応させて土壌の土粒子間に析出される炭酸塩により地盤を硬化させる地盤改良方法であって、粉末状の栄養源を地盤改良対象の地盤に散布して供給するステップS1と、粉末状の栄養源が散布された地盤を撹拌するステップS2と、撹拌された地盤に微生物及び栄養源の入った水溶液を散水して供給するステップS3と、水溶液が散水された地盤を撹拌するステップS4と、を行う方法である。
【0008】
即ち、微生物を活性化させるための粉末状の栄養源を地盤改良対象の地盤の表面に散布して撹拌した後に、微生物及び栄養源の入った水溶液を撹拌後の地盤に散布して再び撹拌する。
つまり、粉末状の栄養源が散布された乾いた状態の地盤を撹拌して栄養源が地盤改良対象の地盤全体にまんべんなく行き渡るようにすることで、その後、当該地盤に供給される微生物が活発に活動できる環境を整えた上で、当該微生物が活発に活動できる環境が整った地盤に微生物及び栄養源の入った水溶液を散水する。そして、当該微生物及び栄養源が供給された地盤を再び撹拌することによって、当該地盤に供給された微生物及び栄養源が地盤改良対象の地盤全体にまんべんなく行き渡るようにする。
換言すれば、地盤改良対象に地盤に乾いた粉末状の栄養源を供給して当該地盤を撹拌する作業を行った後、当該撹拌後の地盤に微生物及び栄養源の入った水溶液が供給されて湿った状態となった地盤を再び撹拌する。
従って、乾いた栄養源が供給されて地盤が乾いた状態での撹拌と微生物及び栄養源の入った水溶液が供給されて地盤が湿った状態での撹拌とに分けて、撹拌作業を2回行うことによって、微生物及び栄養源が地盤改良対象の地盤全体にまんべんなく行き渡るので、地盤改良対象の地盤全体で、微生物が栄養源を代謝すること(微生物反応)により発生する炭酸イオンと二価金属イオンとが反応(鉱物化反応)して土粒子間に析出される炭酸塩により地盤を硬化させる、所謂、バイオミネラリゼーションによる地盤改良が行われるようになるので、地盤を均等に硬化させることができる。
【0009】
実施形態1の地盤改良方法は、例えば、図1に示すように、下部の良好地盤1上の砂地層等の軟弱地盤2を硬化させて強度を高め、表層改良を行う方法として使用できる。
【0010】
具体的には、ステップS1においては、図1(a)に示すように、地盤改良対象とする軟弱地盤2の地表面21に粉末状の栄養源3を散布する。
次に、ステップS2においては、図1(b)に示すように、地表面21に粉末状の栄養源3が散布された軟弱地盤2を撹拌機械4を用いて撹拌する。この場合、粉末状の栄養源3が軟弱地盤2中に均等に混ざるように十分に撹拌する。
次に、ステップS3においては、図1(c)に示すように、粉末状の栄養源3が均等に混ざるように撹拌された軟弱地盤2の地表面21に、微生物5及び栄養源6の入った水溶液7を散水して、微生物5及び栄養源6を軟弱地盤2中に浸透させる。
そして、ステップS4においては、図1(d)に示すように、粉末状の栄養源3がまんべんなく混ざり、かつ、微生物5及び栄養源6が浸透した軟弱地盤2を撹拌機械4を用いて再び撹拌する。この場合、微生物5及び栄養源6が軟弱地盤2に均等に混ざるように十分に撹拌する。
【0011】
以上により、軟弱地盤2中に、粉末状の栄養源3、水溶液7中に存在していた微生物5、栄養源6が均等に混ざるようになり、軟弱地盤2中で微生物5が栄養源3;6を代謝することにより発生する炭酸イオンと土壌中の二価金属イオンとが反応して土壌の土粒子間に析出される炭酸塩により、地盤改良対象の軟弱地盤2全体がまんべんなく硬化するので、地盤改良対象の軟弱地盤2の地盤改良を良好に行うことができるようになる。
【0012】
実施形態1によれば、まず、地盤改良対象とする地盤の地表面に粉末状の栄養源を散布して、当該地盤に水を供給しない乾いた状態で当該地盤を撹拌するので、当該地盤を撹拌しやすくなるとともに、当該地盤が乾いた状態なので、粉末状の栄養源が当該地盤中に均等に混ざりやすくなり、地盤改良対象とする地盤を、微生物に好ましい土壌環境(微生物が活発に活動できる環境)にできる。そして、このように地盤全体を微生物に好ましい土壌環境に整えた後に、当該地盤に微生物及び栄養源の入った水溶液を散水して微生物及び栄養源を当該地盤中に浸透させ、その後、当該微生物及び栄養源が当該地盤中に均等に混ざるように再び撹拌するので、地盤改良対象とする地盤中に、粉末状の栄養源、水溶液中に存在していた微生物、栄養源が均等に混ざるようになる。従って、地盤改良対象とする地盤全体でバイオミネラリゼーションが活発に行われ、地盤改良対象とする地盤全体を均等に硬化させることができるので、地盤改良対象の地盤の地盤改良を良好に行うことができるようになる。
【0013】
実施形態2
実施形態2の地盤改良方法は、地盤の土壌中で微生物が栄養源を代謝することにより発生する炭酸イオンと土壌中の二価金属イオンとを反応させて土壌の土粒子間に析出される炭酸塩により地盤を硬化させる地盤改良方法であって、微生物及び栄養源の入った水溶液を地盤改良対象の地盤に散水して供給するステップS1Aと、水溶液が散水された地盤を撹拌するステップS2Aと、を行う方法である。
【0014】
即ち、地盤改良対象の地盤の表面に微生物及び栄養源の入った水溶液を散水した後に撹拌する。
【0015】
実施形態2の地盤改良方法は、実施形態1と同様、例えば、図2に示すように、下部の良好地盤1上の砂地層等の軟弱地盤2を硬化させて強度を高め、表層改良を行う方法として使用できる。
【0016】
具体的には、ステップS1Aにおいては、図2(a)に示すように、地盤改良対象とする軟弱地盤2の地表面21に微生物5及び栄養源8の入った水溶液7を散水し、微生物5及び栄養源8を軟弱地盤2中に浸透させる。
次に、ステップS2Aにおいては、図2(b)に示すように、微生物5及び栄養源8が浸透した軟弱地盤2を撹拌機械4を用いて撹拌する。この場合、微生物5及び栄養源8が軟弱地盤2に均等に混ざるように十分に撹拌する。
【0017】
以上により、軟弱地盤2中に、微生物5、栄養源8が均等に混ざるようになり、軟弱地盤2中で微生物5が栄養源8を代謝することにより発生する炭酸イオンと土壌中の二価金属イオンとが反応して土壌の土粒子間に析出される炭酸塩により、地盤改良対象の軟弱地盤2全体がまんべんなく硬化するので、地盤改良対象の軟弱地盤2の地盤改良を良好に行うことができるようになる。
【0018】
実施形態2によれば、微生物及び栄養源の入った水溶液を地盤改良対象の地盤に散水して当該地盤中に浸透させた後に当該地盤を撹拌するので、水溶液中に存在していた微生物、栄養源が地盤改良対象とする地盤中に均等に混ざるようになる。従って、地盤改良対象とする地盤全体でバイオミネラリゼーションが活発に行われ、地盤改良対象とする地盤全体を均等に硬化させることができるので、地盤改良対象の地盤の地盤改良を良好に行うことができるようになる。
【0019】
尚、実施形態1で説明した粉末状の栄養源としては、後述する、pH調整機能を備えた転炉石灰肥料及びpH調整機能を備えた鉱さい珪酸質肥料のうちの少なくとも一方、二価金属イオンであるCa2+を含む硝酸カルシウム等の肥料等を用いることができる。
また、実施形態1で説明した栄養源6としては後述するグルコース等の糖分を用いることができる。
また、実施形態2で説明した栄養源8としては、グルコース等の糖分、後述する、pH調整剤としての機能も備えた転炉石灰肥料及び鉱さい珪酸質肥料のうちの少なくとも一方、二価金属イオンであるCa2+を含む硝酸カルシウム等の肥料等を用いることができる。
【0020】
実施形態1;2で使用する撹拌機械4としては、地盤を撹拌できるものであれば、どのようなものを用いて構わないが、回転軸に耕運爪(撹拌部材)が取り付けられて回転軸を回転させることにより耕運爪で土を耕す耕運機等のように、撹拌部材を回転させて撹拌対象を撹拌させる撹拌機械4を用いることが好ましい。
尚、撹拌機械4を使用せずに、地盤改良対象とする地盤を人力で撹拌するようにしてもよい。
【0021】
尚、実施形態1;2では、地盤改良対象とする地盤に微生物を供給したが、地盤改良対象とする地盤中に存在する微生物を利用してバイオミネラリゼーションを行わせるようにしても良い。
また、地盤改良対象とする地盤中のCa2+等の二価金属イオンが多く含まれている場合等においては、Ca2+等の二価金属イオンを地盤改良対象とする地盤に供給しないようにしてもよい。
また、地盤改良対象とする地盤中のpH環境がバイオミネラリゼーションに適した環境であれば、pH調整機能を備えた転炉石灰肥料や鉱さい珪酸質肥料等の粉末状の栄養分を用いることなく、他の粉末状の栄養分を用いるようにしてもよい。
【0022】
実施形態3
また、地盤改良対象とする地盤にセメント系材料を混合して地盤改良を行う場合あるが、セメント系材料として普通セメント系材料を用いた場合、六価クロム等の重金属の溶出量が多くなるため、近年では、地盤改良対象とする地盤にセメント系材料を混合して地盤改良を行う場合には、六価クロム等の重金属の溶出量が、土壌の汚染に関わる環境基準(平成7年環境庁告示19号)を満たすエコセメント等の特殊なセメント系材料を用いて地盤改良を行うようにしている。
しかしながら、エコセメント等の特殊なセメント系材料は、コストが高いため、地盤改良にかかるコストが嵩むという問題点がある。
【0023】
そこで、実施形態3では、地盤改良対象とする地盤にエコセメント等の特殊なセメント系材料を混合するセメント系材料混合による地盤改良方法と、上述したバイオミネラリゼーションによる地盤改良方法とを併用するようにした。
【0024】
実施形態3によれば、セメント系材料混合による地盤改良方法と、上述したバイオミネラリゼーションによる地盤改良方法とを併用するようにしたので、エコセメント等の特殊なセメント系材料の使用量を減らすことができるようになり、地盤改良対象とする地盤の良好な地盤改良を、低コストで実現できるようになる。
即ち、エコセメント等の特殊なセメント系材料の使用量を減らした分を、上述したバイオミネラリゼーションで補うことができ、地盤改良にかかるコストを低減できるとともに、地盤改良対象とする地盤全体を均等に硬化できて、良好な地盤改良を行えるようになる。
【0025】
尚、本発明のバイオミネラリゼーションによる地盤改良(土壌固化方法)の効果を確かめるための実験を行った。
即ち、固化対象の土壌に、微生物と、当該微生物により代謝される栄養源と、pH調整手段(pH調整剤)としての肥料と、二価金属イオンとを供給したことによって、土壌中で微生物が栄養源を代謝すること(微生物反応)により発生する炭酸イオンと二価金属イオンとが反応(鉱物化反応)して土粒子間に析出される炭酸塩により土壌を硬化させる土壌固化方法、所謂、バイオミネラリゼーションによる土壌固化方法の効果を確かめる実験を行った。
【0026】
具体的には、肥料として、転炉石灰肥料、又は、鉱さい珪酸質肥料、又は、転炉石灰肥料と鉱さい珪酸質肥料とを混合した混合肥料を用いた。
【0027】
転炉石灰肥料としては、商品名「くみあいミネカル(以下、ミネカルという)」、産業振興株式会社製を使用した。
当該ミネカルの成分値は、石灰(CaO)40.0、ケイ酸(SiO)14.0、苦土(MgO)1.5、酸化鉄(FeO)18.0、マンガン(MnO)0.5、リン酸(P)1.5、その他24.5(ホウ酸(HBO)等)である。
【0028】
鉱さい珪酸質肥料としては、商品名「くみあいケイカル(以下、ケイカルという)」、村樫石灰工業株式会社製を使用した。
当該ケイカルの成分値は、石灰(CaO)48.0、ケイ酸(SiO)30.0、苦土(MgO)5.0、その他17.0(マンガン(MnO)等)である。
【0029】
即ち、図3に示すように、固化対象の土壌12に供給する供給物22として、ドライイースト等の微生物、グルコース等の栄養源、pH調整用肥料としてのミネカル,ケイカル、硝酸カルシウム等の二価金属イオンを供給することにより、固化対象の土壌12を硬化させる方法を実験した。
【0030】
固化対象の土壌において、微生物反応及び鉱物化反応の両方を促進させるために好適な環境は、土壌のpH環境が好適な範囲に維持され、かつ、土壌中に二価金属イオンが多く存在することであると考えられる。
【0031】
固化対象の土壌中で微生物が代謝作用(微生物反応)を行うためには、土壌環境が中性あるいは弱酸性であることが好ましく、微生物反応が促進されると二酸化炭素が発生するために、土壌環境が酸性化すると考えられる。
一方、微生物反応により発生する炭酸イオンと二価金属イオンとが反応する鉱物化反応を促進させるための土壌のpH環境は、pH8~9であることが好ましい。
尚、土壌のpH環境が、pH10程度以上になると、微生物にとって、好ましくない土壌環境となり、微生物反応が促進されない。
また、鉱物化反応のためには、土壌中に二価金属イオンが数千ppm~1万ppm存在していることが好ましい。
【0032】
以上から、微生物反応及び鉱物化反応の両方を促進させるためには、土壌のpH環境が、pH8~9であることが好ましいとの考えに基づいて、実験では、ミネカル、又は、ケイカル、又は、ミネカルとケイカルとを混合した混合肥料を用いて、土壌のpH環境を、微生物反応及び鉱物化反応に好ましい環境にするための条件を検討した。
さらに、実験では、固化対象の土壌に二価金属イオンとして数千ppm~1万ppmのCa2+を供給するために、硝酸カルシウムを供給するようにした。尚、このように、硝酸カルシウムを使用した場合、硝酸カルシウム中の窒素(N)が微生物の栄養源にもなるため、好ましいと考えられる。
【0033】
実験では、微生物、栄養源、二価金属イオンが供給されていない固化対象の土壌のpHを8~9にする条件を検討するための実験を行った。
【0034】
まず、各使用資材を水に溶解させた10%溶液を作製し、各資材の10%溶液において、pH及びCa2+の値がどのようになるかを実験した。図4に示すように、ミネカルの10%溶液では、石灰の溶解により、pHが12を超え、ケイカルの10%溶液では、石灰の溶解により、pHが10を超えることが確認できた。尚、山砂の10%溶液ではpHが6.78、堆肥の10%溶液ではpHが7.34、再生資材混入山砂(以下、「再資砂」と略す)の10%溶液ではpHが8.02であった。
【0035】
また、ケイカルの1%溶液を作製し、ケイカルの1%溶液におけるpH及びCa2+の経時的変化を実験した。図5に示すように、ケイカルの1%溶液においては、pH値が経時的に上昇することが確認できた。即ち、7日間でpH値が7.53から7.84まで徐々に比例的に上昇することがわかった。
【0036】
また、ミネカルの1%溶液を作製し、ミネカルの1%溶液におけるpH及びCa2+の経時的変化を実験した。図6に示すように、ミネカルの1%溶液においては、pH値が経時的に上昇することが確認できた。即ち、7日間の間でpH値が上昇下降を繰り返しながら9.55から9.84まで上昇することがわかった。
【0037】
図5図6に示す実験結果により判明したケイカル、ミネカルの特性から、ミネカルは、pH値を直ちに上昇させる即効性pH調整剤及びpH値を経時的に上昇させる遅効性pH調整剤としての使用に適し、ケイカルは、pH値を安定的に徐々に上昇させる遅効性pH調整剤としての使用に適していると推測できる。
即ち、固化対象の土壌中で微生物が代謝作用を行って土壌環境が酸性化するとしても、ミネカルを用いれば、pH値を直ちに上昇させる効果(即効性)及び経時的にpH値を上昇させる効果(遅効性)効果により、土壌のpH環境を所望の状態にできるとともにその所望のpH環境を長時間(例えば1週間以上)維持できると考えられる。
また、固化対象の土壌中で微生物が代謝作用を行って土壌環境が酸性化するとしても、ケイカルを用いれば、土壌のpH環境を所望の状態に安定的に長時間(例えば1週間以上)維持できるようになると考えられる。
【0038】
また、山砂とミネカル、山砂とケイカルを混合させた混合試料を作製し、山砂に対するミネカルの重量比(%)、山砂に対するケイカルの重量比(%)を変えることで、混合試料中のpH及びCa2+の値がどのようになるかを実験した。
即ち、微生物、栄養源、二価金属イオンが供給されていない固化対象の土壌としての山砂のpHを8~9に調整するために必要なミネカルの量、及び、ケイカルの量を確認する実験を行った。尚、当該実験では、山砂とミネカルとに水を供給してかき混ぜた混合試料、山砂とケイカルとに水を供給してかき混ぜた混合試料のpH及びCa2+を測定した。
【0039】
図7に示すように、山砂に対するミネカルの重量比を0.5%にすることで、混合試料のpH環境をpH8.81にでき、山砂に対するミネカルの重量比を0.1%にすることで、混合試料のpH環境をpH8.2にできることを確認した。即ち、山砂に対するミネカルの重量比を、0.1%~0.5%の範囲に設定すれば、混合試料のpH環境をpH8~9にできることを確認した。
従って、実験では、肥料としてミネカルを用いる場合には、微生物、栄養源、二価金属イオンが供給されていない土壌のpH環境をpH8~9にできる量、即ち、固化対象の土壌に対してミネカルの重量比が0.1%~0.5%となるように、ミネカルを固化対象の土壌に供給するようにした。
尚、図7図8において、混合比率「山砂-M〇%-K〇%」、「山砂-M〇%」、「山砂-K〇%」なる表記の「M〇%」は、山砂に対するミネカルの重量比を示し、「K〇%」は、山砂に対するケイカルの重量比を示している。
【0040】
また、図7に示すように、山砂に対するケイカルの重量比を10%にすることで、混合試料のpH環境をpH8.06にできることを確認した。即ち、山砂に対するケイカルの重量比を、10%に設定すれば、混合試料のpH環境をpH8~9にできることを確認した。
従って、実験では、肥料としてケイカルを用いる場合には、微生物、栄養源、二価金属イオンが供給されていない土壌のpH環境をpH8~9にできる量、即ち、固化対象の土壌に対してケイカルの重量比が10%となるように、ケイカルを固化対象の土壌に供給するようにした。
【0041】
また、山砂とミネカルとケイカルとを混合させた混合試料を作製し、山砂に対するミネカル及びケイカルの重量比(%)を変えることで、混合試料中のpH及びCa2+の値がどのようになるかを実験した。
即ち、微生物、栄養源、二価金属イオンが供給されていない固化対象の土壌としての山砂のpHを8~9に調整するために必要な混合肥料の量を確認する実験を行った。尚、当該実験では、山砂とミネカルとケイカルとに水を供給してかき混ぜた混合試料のpH及びCa2+を測定した。
図8に示すように、山砂に対するミネカルの重量比を0.5%にするとともに、山砂に対するケイカルの重量比を0.5%とすることで、混合試料のpH環境をpH8.07にできることを確認した。
また、山砂に対するミネカルの重量比を0.5%にするとともに、山砂に対するケイカルの重量比を1.0%とすることで、混合試料のpH環境をpH8.09にできることを確認した。
以上から、山砂に対するミネカルの重量比を0.5%にするとともに、山砂に対するケイカルの重量比を0.5%~1.0%とすることで、混合試料のpH環境をpH8~9にできることを確認した。
従って、実験では、肥料としてミネカルとケイカルとを混合させた混合肥料を用いる場合には、微生物、栄養源、二価金属イオンが供給されていない土壌のpH環境をpH8~9にできる量、即ち、固化対象の土壌に対してミネカルの重量比を0.5%とするともに、ケイカルの重量比を0.5%~1.0%となるように、ミネカル及びケイカルを固化対象の土壌に供給するようにした。
【0042】
実験の土壌固化方法の効果を確認するために、固化対象の土壌に肥料を混合した混合土壌を複数種類作製し、これら混合土壌に、それぞれ、微生物、微生物によって代謝される栄養源、二価金属イオンを含む硝酸カルシウムを供給した試料土壌を作製した。そして、これら試料土壌において、時間経過に伴う、試料土壌の硬度変化、試料土壌のpH変化、試料土壌のCa2+の変化を観測する実験を行った。
【0043】
混合土壌としては、
・山砂に肥料としてミネカルだけを供給したミネカル混合山砂であって山砂に対するミネカルの重量比を0.5%としたミネカル混合山砂(以下、「山砂-M0.5%」と略す)
・山砂に肥料としてミネカル及びケイカルを供給したミネカルケイカル混合山砂であって山砂に対するミネカルの重量比を0.5%、山砂に対するケイカルの重量比を1.0%としたミネカルケイカル混合山砂(以下、「山砂-M0.5%-K1.0%」と略す)
・再資砂に肥料としてミネカル及びケイカルを供給したミネカルケイカル混合再資砂であって再資砂に対するミネカルの重量比を0.5%、ケイカルの重量比を1.0%としたミネカルケイカル混合再資砂(以下、「再資砂-M0.5%-K1.0%」と略す)
を作製した。
【0044】
微生物としては、
・ドライイースト
・Bacillus属入り腐葉土堆肥(以下、「Bacillus堆肥」と略す)
を使用した。
【0045】
実験方法の具体例を以下に示す。
(1)各資材を乾燥させる(「Bacillus堆肥」は乾燥させない)。
(2)土壌(山砂または再資砂)と肥料とを混合し、合計3000gとなるように上述した各混合土壌を作製する。尚、土壌微生物を用いる場合は、「Bacillus堆肥」を各混合土壌に対して重量比10%となるように各混合土壌に「Bacillus堆肥」を300g混合した。
(3)混合土壌に硝酸カルシウム(硝酸カルシウム四水和物(一級)、和光純薬工業株式会社製(尚、同じ成分である商品名「カル・パック」等を用いても良い))を24g(100mM(4000ppm相当))を混合する。
(4)以上の各混合土壌をバットに敷き詰める
(5)水道水1000mLに対し、グルコース(栄養源)5g及びドライイースト5gを溶解した反応液を作製する。尚、「Bacillus堆肥」を混合させた混合土壌にはドライイーストは添加しない。
(6)各混合土壌3000gに対し、反応液1000mLを散水するように添加する。尚、ドライイーストを使用したSD(セミドライ)方式実験(以下、SD方式(ドライイースト(SD))と言う)の場合は、水道水500mLに対し、グルコース(栄養源)5g及びドライイースト5gを溶解した反応液500mLを各混合土壌3000gに散水するように添加した。
(7)以上のように作製した試料土壌を、30℃恒温槽に設置し、時間経過に伴う、各試料土壌の硬度変化、各試料土壌のpH変化、各試料土壌のCa2+の変化を観測した。
尚、硬度は土壌硬度計、pHは土壌用pHメータ、Ca2+はCaイオンメータで測定した。
【0046】
実験結果を図9乃至図11に示す。
図9は各試料土壌の硬度変化実験結果を示し、図10は各試料土壌のpH変化実験結果を示し、図11は各試料土壌のCa2+変化実験結果を示す。
尚、図9乃至図11において、上段左側の数値データ、上段右側のグラフは、混合土壌が「山砂-M0.5%」である場合の実験結果を示し、中段左側の数値データ、中段右側のグラフは、混合土壌が「山砂-M0.5%-K1.0%」である場合の実験結果を示し、下段左側の数値データ、下段右側のグラフは、混合土壌が「再資砂-M0.5%-K1.0%」である場合の実験結果を示す。
【0047】
図9に示すように、混合土壌が「山砂-M0.5%」の場合においての硬度変化は、ドライイーストを供給した試料土壌では、2週間程度経過すると、硬度が1369kPaとなり、土壌が良好に硬化する。即ち、2週間程度経過するまでの間に、鉱物化反応が促進されて、土壌が硬化したと考えられる。尚、土壌の硬度を1000kPa(1MPa)以上にできれば、地盤を硬化させる地盤改良を行うことが可能になると考えられる。
微生物が供給されていない試料土壌においては、土壌は当然硬化しない。
また、「Bacillus堆肥」を供給した試料土壌においては、2週間程度経過すると、硬度が250kPa以上となるが、土壌はあまり硬化していない。尚、土壌の硬度を250kPa以上にできれば、液状化地盤を硬化させる液状化対策を行うことが可能になると考えられる。
【0048】
また、図10に示すように、混合土壌が「山砂-M0.5%」の場合においてのpH変化は、ドライイーストを供給した試料土壌の場合、当初からpH8を下回り、56日目まではpH8よりも低くなっている。これは、ドライイースト溶液には代謝物である有機酸が多く含まれていること、及び、微生物の代謝作用(微生物反応)による影響であると考えられる。そして、14日経過頃からミネカルの遅効性pH調整剤として効果により、pHが8近くまでで上昇し、これにより、鉱物化反応が促進され、土壌が硬化したと考えられる。
尚、「Bacillus堆肥」を供給した試料土壌のpH変化は、ドライイーストを供給した試料土壌の場合とほぼ同様であるが、ドライイーストと比べて土壌が硬化していないので、Bacillusによる微生物反応及び鉱物化反応が鈍いと考えられる。
【0049】
また、図11に示すように、混合土壌が「山砂-M0.5%」の場合においてのCa2+の変化は、「ドライイースト」を供給した試料土壌においては、8000ppmから、2週間程度経過するまでの間に、2400ppmに減少している。このことから、2週間程度の間に、微生物反応及び鉱物化反応が促進されて土壌が硬化したと推測できる。
尚、「Bacillus堆肥」を供給した試料土壌においては、2週間程度経過するまでの間に、Ca2+は、8200ppmから4100ppmまで減少しているが、ドライイーストを供給した試料土壌の場合よりは、減少していないため、鉱物化反応が促進されず、土壌があまり硬化しなかったと推測できる。
【0050】
図9に示すように、混合土壌が「山砂-M0.5%-K1.0%」の場合においての硬度変化は、ドライイーストを供給した試料土壌では、2週間程度経過すると、硬度が2396kPaとなり、土壌が良好に硬化する。即ち、2週間程度経過するまでの間に、微生物反応及び鉱物化反応が促進されて、土壌が硬化したと考えられる。
また、SD方式(ドライイースト(SD))の試料土壌においては、2週間程度経過すると、硬度が10000kPa(10MPa)以上となり、28日経過すると、硬度が21604kPaとなり、土壌を硬化させる効果が非常に高いことが分かった。即ち、ドライイースト(SD)の場合、微生物反応及び鉱物化反応が活発に行われ、土壌が硬化したと考えられる。
尚、「Bacillus堆肥」を供給した試料土壌においては、2週間程度経過すると、硬度が236kPa程度にしかならず、土壌はあまり硬化していない。
【0051】
また、図10に示すように、混合土壌が「山砂-M0.5%-K1.0%」の場合においてのpH変化は、ドライイーストを供給した試料土壌の場合、当初からpH8を下回り、56日目まではpH8よりも低くなっている。これは、ドライイースト溶液には代謝物である有機酸が多く含まれていること、及び、微生物反応による影響であると考えられる。
一方、SD方式(ドライイースト(SD))の試料土壌においては、始めは6台に下がり、6日目からは、ほぼ8以上が維持されている。即ち、最初に有機酸、及び、微生物反応によりpHが下がるが、5日経過頃から、ミネカル及びケイカルの遅効性pH調整剤として効果により、pHが8程度まで上昇し、これにより、鉱物化反応が促進され、土壌が硬化したと考えられる。
尚、「Bacillus堆肥」を供給した試料土壌のpH変化は、ドライイーストを供給した試料土壌の場合とほぼ同様であるが、ドライイーストと比べて土壌が硬化していないので、Bacillusによる微生物反応及び鉱物化反応が鈍いと考えられる。
【0052】
また、図11に示すように、混合土壌が「山砂-M0.5%-K1.0%」の場合においてのCa2+の変化は、ドライイーストを供給した試料土壌においては、8100ppmから、2週間程度経過するまでの間に、2100ppmに減少している。このことから、2週間程度の間に、微生物反応及び鉱物化反応が促進されて土壌が硬化したと推測できる。
また、ドライイースト(SD)を供給した試料土壌においては、5日経過するまでの間に、Ca2+は、8700ppmから1300ppmまで減少しており、鉱物化反応が非常に促進されて、土壌が非常に硬化したと推測できる。
尚、「Bacillus堆肥」を供給した試料土壌においては、2週間程度経過するまでの間に、Ca2+は、8300ppmから3600ppmまで減少しているが、ドライイーストを供給した試料土壌の場合よりは、減少していないため、鉱物化反応が促進されず、土壌があまり硬化しなかったと推測できる。
【0053】
図9に示すように、混合土壌が「再資砂-M0.5%-K1.0%」のおいての硬度変化は、ドライイーストを供給した試料土壌では、硬度が、5日経過後に4716kPaとなり、9日経過後に17253kPaとなった後、2週間程度経過すると14055kPaとなり、良好な土壌硬化現象が見られた。
また、SD方式(ドライイースト(SD))の試料土壌においては、硬度が、5日経過後に4716kPaとなり、7日経過後に17253kPaとなった後、2週間経過後に50665kPaとなり、さらに、21日経過後に73943kPaとなった。即ち、非常に良好な土壌硬化現象が見られた。
一方、「Bacillus堆肥」を供給した試料土壌においては、5日経過後に硬度が161kPaとなった後は、硬化が見られず、土壌はあまり硬化していない。
【0054】
また、図10に示すように、混合土壌が「再資砂-M0.5%-K1.0%」の場合においてのpH変化は、ドライイーストを供給した試料土壌の場合、1日~7日日までは、pH8以下になったが、8日目以後はpH8以上が維持されている。即ち、ミネカル及びケイカルの遅効性pH調整剤として効果により、8日目以後はpHが8程度まで上昇し、これにより、鉱物化反応が促進され、土壌が硬化したと考えられる。
また、SD方式(ドライイースト(SD))の試料土壌においても、ドライイーストの場合と同様なpH変化を示し、8日目以後はpH8以上が維持されている。即ち、ミネカル及びケイカルの遅効性pH調整剤として効果により、8日目以後はpHが8程度まで上昇し、これにより、鉱物化反応が促進され、土壌が硬化したと考えられる。
尚、「Bacillus堆肥」を供給した試料土壌のpH変化は、ドライイーストを供給した試料土壌の場合とほぼ同様であるが、ドライイーストと比べて土壌が硬化していないので、Bacillusによる微生物反応及び鉱物化反応が鈍いと考えられる。
【0055】
また、図11に示すように、混合土壌が「再資砂-M0.5%-K1.0%」の場合においてのCa2+の変化は、ドライイーストを供給した試料土壌においては、9800ppmから、5日経過するまでの間に、2800ppmに減少し、さらに、その後、急激に減少している。即ち、5日経過後に、微生物反応及び鉱物化反応が促進されて土壌が硬化したと推測できる。
また、SD方式(ドライイースト(SD))の試料土壌においては、5日経過するまでの間に、Ca2+は、8100ppmから800ppmまで減少しており、5日経過後に、鉱物化反応が非常に促進されて、土壌が非常に硬化したと推測できる。
尚、「Bacillus堆肥」を供給した試料土壌においては、2週間程度経過するまでの間に、Ca2+は、9900ppmから3900ppmまで減少しているが、ドライイーストを供給した試料土壌の場合よりは、減少していないため、鉱物化反応が促進されず、土壌があまり硬化しなかったと推測できる。
【0056】
以上の実験から、良好な土壌硬化現象を得るためには、M0.5%の配合よりは、M0.5%-K1.0%の配合の方が好ましく、さらに、山砂より再資砂を混合した混合土壌の方が好ましく、さらには、微生物としてドライイーストを用いたSD(セミドライ)方式とすることが好ましいことがわかった。
【0057】
実験では、肥料として、ミネカル(転炉石灰肥料)とケイカル(鉱さい珪酸質肥料)とを混合した混合肥料、又は、ミネカルのみ、又は、ケイカルのみを、微生物、栄養源、二価金属イオンが供給されていない固化対象の土壌のpHを8~9に調整するのに必要な量だけ、微生物、栄養源、二価金属イオンとともに固化対象の土壌に供給した。
この場合、固化対象の土壌に供給する当該pH調整剤としての混合肥料の量は、図8の値から、固化対象の土壌に対する重量比で、ミネカルが0.5%、ケイカルが1.0%以下とすればよいことがわかる。
また、pH調整剤としての肥料としてミネカルだけを用いる場合においては、固化対象の土壌に供給するミネカルの量は、図7の値から、固化対象の土壌に対する重量比で、0.1%~0.6%とすればよいと推測できる。
また、pH調整剤としての肥料としてケイカルだけを用いる場合においては、固化対象の土壌に供給するケイカルの量は、図7の値から、固化対象の土壌に対する重量比で、9%~28%とすればよいと推測できる。
【符号の説明】
【0058】
2 軟弱地盤(地盤改良対象の地盤)、3 粉末状の栄養源、4 撹拌機械、
5 微生物、6 栄養源、7 水溶液、8 栄養源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11