(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
B65D81/34 U
(21)【出願番号】P 2018068924
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 季和
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-204134(JP,A)
【文献】特開2007-284095(JP,A)
【文献】特開2017-171329(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006017834(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1層および第2層を含む積層体からなり、凹部および前記凹部の周縁に沿って形成され前記周縁から外方に延出するフランジ部を含む第1容器本体と、
前記フランジ部に形成される接合領域で前記第2層に接合されることによって前記凹部との間に内部空間を形成する第2容器本体と
を備える容器であって、
前記第2容器本体と前記第2層との間の接合強度は、前記第2層と前記第1層との間の層間接合強度よりも強く、
前記接合領域の前記凹部側に離隔して並行する前記第2層の欠落部が形成され、
前記フランジ部の周方向の一部で前記接合領域が前記欠落部に向けて突出する突出部が形成され、
前記突出部の両側で前記欠落部から前記接合領域に向けて前記フランジ部の幅方向に延びる切り込みが少なくとも前記第2層に形成される容器。
【請求項2】
前記切り込みは、前記接合領域に達していない、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
少なくとも第1層および第2層を含む積層体からなり、凹部および前記凹部の周縁に沿って形成され前記周縁から外方に延出するフランジ部を含む第1容器本体と、
前記フランジ部に形成される接合領域で前記第2層に接合されることによって前記凹部との間に内部空間を形成する第2容器本体と
を備える容器であって、
前記第2容器本体と前記第2層との間の接合強度は、前記第2層と前記第1層との間の層間接合強度よりも強く、
前記接合領域の前記凹部側に離隔して並行する前記第2層の欠落部が形成され、
前記フランジ部の周方向の一部で前記接合領域の前記凹部側の端縁部に沿う前記第2層の追加の欠落部が形成され
、
前記追加の欠落部の両側から前記欠落部に向けて前記フランジ部の幅方向に延びる切り込みが少なくとも前記第2層に形成される容器。
【請求項4】
前記切り込みは、前記欠落部に達していない、請求項
3に記載の容器。
【請求項5】
前記接合領域の前記凹部側の端縁部は波形に形成され、
前記追加の欠落部は前記端縁部の波形に交差する、請求項
3または請求項
4に記載の容器。
【請求項6】
前記欠落部では、少なくとも前記第2層に切り込みが形成されるか、前記第2層が部分的に薄く成形されるか、または前記第2層が部分的に途切れる、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体および蓋体からなる食品などの容器において、容器の密封性と、開封性、すなわち開封時に蓋体を容器本体から容易に剥離できるようにすることとを両立することは容易ではない。容器本体と蓋体との間の接合強度を強くすれば密封性は向上するが開封性は低下し、逆に接合強度を弱くすれば開封性が向上する代わりに密封性が低下するためである。このような課題を解決するための技術は、これまでに種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1および特許文献2には、容器本体と容器本体のフランジ部に接合される蓋体とからなる容器において、多層シートで形成された容器本体の内外層の層間接着力を容器本体と蓋体との間の接着力よりも小さくなるように構成するとともに、フランジ部の容器開口部側の内層に切り込みを設ける技術が提案されている。切り込みの外側に形成される容器本体と蓋体との接合領域では容器本体を層間剥離させることで、容器本体と蓋体との間の接合強度を弱めることなく開封性を高めることが可能になる。
【0004】
一方、特許文献3には、上記の例と同様に容器本体のフランジ部に環状の切り込み部を設けた容器において、環状の切り込み部の一部にヒートシール部の内縁との距離が他の部分よりも小さい部分を形成し、この部分でフランジ部と蓋体との間が他の部分よりも低い圧力で剥離することを利用して加熱時の蒸気排出口とする技術が記載されている。これによって、食品などが充填された包装容器を電子レンジで加熱しても、包装容器が破裂して内容物が飛び散る不具合や、火傷をしたりすることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-251363号公報
【文献】特開昭63-78号公報
【文献】特許第4242872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献3に記載された容器は、蒸気排出口が形成されるまでは密封されており、また蒸気排出口が形成された後も容器の内圧は高い状態に保たれるため、容器を電子レンジに入れて食品などの内容物を加熱する場合、水蒸気を容器内に充満させることで加熱効率を向上させることが期待される。しかしながら、特許文献3に記載された容器では、環状の切り込み部とヒートシール部の内縁との距離が他の部分よりも小さい部分でフランジ部と蓋体との間が剥離して蒸気排出口が形成されるときに、その両側に隣接する部分でもフランジ部と蓋体との間が不規則に剥離するため、蒸気排出口の幅が一定しない。その結果、水蒸気を容器内に充満させることによって得られる加熱効率の向上効果が容器ごとに異なり、電子レンジを用いた加熱時間の設定などに際してどの程度の加熱効率が見込めるかを予測しづらかった。
【0007】
そこで、本発明は、開封することなく内容物を加熱することが可能な容器において、安定した加熱効率の向上効果を得ることが可能な、新規かつ改良された容器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある観点によれば、少なくとも第1層および第2層を含む積層体からなり、凹部および凹部の周縁に沿って形成され周縁から外方に延出するフランジ部を含む第1容器本体と、フランジ部に形成される接合領域で第2層に接合されることによって凹部との間に内部空間を形成する第2容器本体とを備える容器であって、第2容器本体と第2層との間の接合強度は、第2層と第1層との間の層間接合強度よりも強く、接合領域の凹部側に離隔して並行する第2層の欠落部が形成され、フランジ部の周方向の一部で接合領域が欠落部に向けて突出する突出部が形成され、突出部の両側で欠落部から接合領域に向けてフランジ部の幅方向に延びる切り込みが少なくとも第2層に形成される容器が提供される。
上記の構成によれば、接合領域の突出部を含む部分で容器本体と蓋体との間が他の部分よりも低い圧力で剥離するため、この部分を通蒸部として内容物の加熱時に水蒸気を放出して容器の破裂を防止しつつ、容器内に水蒸気を充満させて内容物の加熱効率を向上させることができる。突出部の両側にフランジ部の幅方向に延びる切り込みが形成されることによって、通蒸部で容器の内部空間が外部空間に連通する幅が安定し、容器間でのばらつきが小さい安定した加熱効率の向上効果を得ることができる。
【0009】
本発明の別の観点によれば、少なくとも第1層および第2層を含む積層体からなり、凹部および凹部の周縁に沿って形成され周縁から外方に延出するフランジ部を含む第1容器本体と、フランジ部に形成される接合領域で第2層に接合されることによって凹部との間に内部空間を形成する第2容器本体とを備える容器であって、第2容器本体と第2層との間の接合強度は、第2層と第1層との間の層間接合強度よりも強く、接合領域の凹部側に離隔して並行する第2層の欠落部が形成され、フランジ部の周方向の一部で接合領域の凹部側の端縁部に沿う第2層の追加の欠落部が形成される容器が提供される。
上記の構成によれば、第2層の追加の欠落部で容器本体と蓋体との間が他の部分よりも低い圧力で剥離するため、この部分を通蒸部として内容物の加熱時に水蒸気を放出して容器の破裂を防止しつつ、容器内に水蒸気を充満させて内容物の加熱効率を向上させることができる。このようにして形成される通蒸部では容器の内部空間が外部空間に連通する幅が安定し、容器間でのばらつきが小さい安定した加熱効率の向上効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、開封することなく内容物を加熱することが可能な容器において、安定した加熱効率の向上効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る容器の斜視図である。
【
図3】
図1に示す容器の通蒸部の構成を示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る容器の通蒸部の構成を示す図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係る容器の通蒸部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る容器の斜視図である。
図1(A)には開封前の状態が、
図1(B)には開封中の状態が、それぞれ示されている。
図2は、
図1に示す容器の部分断面図である。
図2(A)は
図1(A)に示すIIA-IIA線に沿った断面図であり、
図2(B)は
図1(B)に示すIIB-IIB線に沿った断面図である。
【0014】
本実施形態に係る容器100は、容器本体110と、蓋体130とを含む。容器本体110は、略円形の平面形状を有し、凹部111と、凹部111の周縁に沿って形成されるフランジ部112とを含む。フランジ部112は、凹部111の周縁から外方に延出する。蓋体130は、凹部111の開口を覆うフィルム状の部材であり、フランジ部112に形成される接合領域140でヒートシールまたは超音波シールなどを用いて容器本体110に接合されることによって凹部111との間に内部空間SPを形成する。
【0015】
容器本体110は、
図2に示されるように、基材層114Aおよび表面層114Bを含む積層体114を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものである。基材層114Aは、容器本体110の外側に位置し、容器本体110の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。表面層114Bは、容器本体110の内側、すなわち内部空間SPに面する側に位置する。接合領域140において、蓋体130は積層体114の表面層114Bに接合される。後述するように、接合領域140における蓋体130と表面層114Bとの間の接合強度は、積層体114における基材層114Aと表面層114Bとの間の層間接合強度よりも強い。
【0016】
ここで、積層体114の基材層114Aは、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、およびポリエチレンが例示される。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。基材層114Aには、剛性を向上させるためにタルクなどの無機フィラーが添加されてもよい。
【0017】
一方、積層体114の表面層114Bは、例えばポリオレフィン系樹脂で形成される。ポリオレフィン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、およびブロックポリプロピレンのようなポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)、および低密度ポリエチレン(LDPE)のようなポリエチレン系樹脂、ならびに直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体などが例示される。
【0018】
なお、図示された例において積層体114は基材層114Aおよび表面層114Bの2つの層を含むが、他の例において積層体114は追加の層を含んでもよい。例えば、積層体114は、高い剛性が必要とされる場合に、複数の基材層と、基材層同士を接着する接着層とを含んでもよい。接着層は、例えばウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、またはエチレン酢酸ビニル(EVA)などで形成される。また、積層体114は、酸素などを遮断するガスバリア層を含んでもよい。ガスバリア層は、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、またはポリアクリロニトリル(PAN)などで形成される。
【0019】
さらに、本実施形態では、容器本体110のフランジ部112に、接合領域140の凹部111側に離隔して並行する環状切り込み115が形成される。後述するように、環状切り込み115は、表面層114Bの欠落部の例である。図示された例では環状切り込み115がちょうど表面層114Bだけを貫通して基材層114Aには達していないが、環状切り込み115は基材層114Aの一部に達していてもよい。あるいは、環状切り込み115は表面層114Bを貫通せず、表面層114Bが容器100の開封時に容易に破断できる程度の厚さで残されてもよい。なお、環状切り込み115の断面形状は図示された例ではV字形であるが、U字形またはI字形などの他の形状であってもよい。
【0020】
蓋体130は、外層131Aおよびシール層131Bを含むフィルム状の積層体131からなる。外層131Aは、蓋体130の表側、すなわち容器本体110に面しない側に位置し、蓋体130に必要とされる柔軟性や引張強度を発揮する。シール層131Bは、蓋体130の裏側、すなわち容器本体110に面する側に位置し、接合領域140で容器本体110を構成する積層体114の表面層114Bに接合される。ここで、積層体131の外層131Aは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、または二軸延伸ナイロンフィルム(O-Ny)などで形成される。また、積層体131のシール層131Bは、例えばランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリエチレンなどの樹脂組成物で形成される。
【0021】
なお、他の例において、蓋体130を構成する積層体131は必ずしもフィルム状でなくてもよく、容器本体110を構成する積層体114と同様に所定の形状に成形されたシート状の積層体であってもよい。この場合、容器100は、互換的な第1容器本体と第2容器本体とを含むといえる。第1容器本体を構成する積層体が第1層および第2層を含み、第2層に欠落部が形成されることによって、第1層と第2層との層間剥離を利用して容器100を開封することができる。上記の例では第1容器本体が容器本体110、第2容器本体が蓋体130であるが、第1容器本体を蓋体130、第2容器本体を容器本体110とし、蓋体130を構成する積層体の第2層に欠落部を形成することも可能である。同様の構成は、後述する他の実施形態でも可能である。
【0022】
(容器の開封動作)
次に、上記のような容器100の開封動作について説明する。容器100では、
図2(A)に示すように蓋体130の一部が容器本体110のフランジ部112の周縁から延出したタブを形成している。ユーザは蓋体130のタブ部分を容易に摘持し、ここから蓋体130を引き剥がすことによって容器100の開封を開始することができる。
【0023】
ここで、上述のように、接合領域140における蓋体130と表面層114Bとの間の接合強度は、積層体114の基材層114Aと表面層114Bとの間の層間接合強度よりも強い。従って、上記のようにユーザが蓋体130を引き剥がすと、積層体114の端部に近い接合領域140で蓋体130に接合された表面層114Bが蓋体130とともに引き剥がされる一方で、積層体114の基材層114Aと表面層114Bとの間は層間剥離する。
【0024】
さらにユーザが蓋体130を引き剥がすと、
図2(B)に示すように、環状切り込み115で表面層114Bが蓋体130から離れ、そこから先は蓋体130だけが引き剥がされる。これは、上述のように、環状切り込み115が表面層114Bを貫通して形成されているか、または環状切り込み115によって表面層114Bが容易に破断できる程度の厚さにされているためである。
【0025】
本実施形態に係る容器100は、上記のような手順によって開封される。積層体114の基材層114Aと表面層114Bとの間の層間接合強度を弱めれば、開封時にユーザが蓋体130を引き剥がす力が小さくて済み、開封が容易になる。その一方で、開封前、容器本体110と蓋体130とが互いに接合された状態では、内部空間SPの内圧は接合領域140、より具体的には接合領域140の凹部111側の端縁部に集中する。環状切り込み115は接合領域140の端縁部から離隔しているため、集中した内圧が環状切り込み115を起点にして積層体114を層間剥離させるように作用することが防止される。それゆえ、上記のように層間接合強度を弱めることによって開封を容易にした場合であっても、蓋体130と表面層114Bとの間の接合強度を強くすることによって高い内圧に対抗することができる。このようにして、本実施形態に係る容器100では、開封性と耐内圧性とを両立させることができる。
【0026】
(通蒸部の構成)
図3は、
図1に示す容器の通蒸部の構成を示す図である。本実施形態では、
図1に示されるように、容器100のフランジ部112に通蒸部120が形成される。ここで、通蒸部120は、容器100の内部空間SPの内圧が上昇したときに、内部空間SPを外部空間に連通させることが可能な部分である。
図3に示されるように、通蒸部120では、フランジ部112の周方向の一部で接合領域140が環状切り込み115に向けて突出する突出部140Pと、突出部140Pの両側で環状切り込み115から接合領域140に向けてフランジ部112の幅方向に延びる交差切り込み121とが形成される。交差切り込み121は、環状切り込み115と同様に、少なくとも積層体114の表面層114Bに形成されるが、基材層114Aの一部に達していてもよく、表面層114Bを貫通していなくてもよい。また、交差切り込み121の断面形状は、環状切り込み115と同様にV字形であってもよく、U字形またはI字形などの他の形状であってもよい。
【0027】
通蒸部120では、接合領域140が環状切り込み115に向けて突出した突出部140Pが形成されることによって、環状切り込み115と接合領域140との距離が他の部分よりも小さくなり、この部分では容器本体110と蓋体130との間が他の部分よりも低い圧力で剥離する。上述の通り、開封前、容器本体110と蓋体130とが互いに接合された状態では内部空間SPの内圧が接合領域140の凹部111側の端縁部に集中するが、環状切り込み115が接合領域140の端縁部から離隔しているため、内圧が環状切り込み115を起点にして積層体114を層間剥離させるように作用することが防止される。通蒸部120では突出部140Pが形成されることによって、内圧が集中する接合領域140の端縁部(すなわち、突出部140Pの先端部)と環状切り込み115との距離が近くなり、内圧が環状切り込み115を起点にして積層体114を層間剥離させるように作用し得る。従って、通蒸部120では容器本体110と蓋体130との間が他の部分よりも低い圧力で剥離する。
【0028】
交差切り込み121は、上記のような通蒸部120において、容器本体110と蓋体130との間が剥離する領域を安定させる機能を有する。通蒸部120で容器本体110と蓋体130との間が剥離する場合、剥離は突出部140Pに近い環状切り込み115の区間S1から発生する。図示された例において、突出部140Pの両側に形成される1対の交差切り込み121のそれぞれの起点は、区間S1の両端に一致する。交差切り込み121が区間S1の両端を起点にしてフランジ部112の幅方向に形成されていることによって、区間S1から発生した容器本体110と蓋体130との間の剥離は交差切り込み121に沿って誘導され、接合領域140に向かう。このようにして、本実施形態では、交差切り込み121が形成されることによって通蒸部120における容器本体110と蓋体130との間の剥離が区間S1を越えてフランジ部112の周方向に広がることが防止される。
【0029】
なお、交差切り込み121に沿って誘導された容器本体110と蓋体130との間の剥離は、途中からは交差切り込み121がなくても接合領域140に向かって進行するため、交差切り込み121は必ずしも接合領域140まで達していなくてもよい。
【0030】
本実施形態では、上記のような通蒸部120が形成されることによって、容器100を開封することなく電子レンジに入れて食品などの内容物を加熱したときに水蒸気の発生によって上昇した内部空間SPの内圧によって通蒸部120で蓋体130と容器本体110との間が剥離し、内部空間SPが外部空間に連通することによって、加熱された内容物から発生した水蒸気の一部が通蒸部120を介して放出されるとともに、容器内にも水蒸気が充満することによって加熱効率が向上する。このとき、通蒸部120に交差切り込み121が形成されていることによって、容器本体110と蓋体130との間の剥離が環状切り込み115に沿って通蒸部120の外側まで広がることが防止され、確実に通蒸部120、具体的には環状切り込み115の区間S1の幅で内部空間SPが外部空間に連通する。従って、本実施形態では、通蒸部120から放出される水蒸気の量と容器内に充満する水蒸気の量とが各容器においてほぼ一定になり、容器間でのばらつきが小さい安定した加熱効率の向上効果を得ることができる。
【0031】
また、副次的な効果として、本実施形態では、通蒸部120において確実に環状切り込み115の区間S1の幅で内部空間SPを外部空間に連通させることができる。従って、区間S1を比較的短く設計しておけば、通蒸部120で蓋体130と容器本体110との間が剥離するときに多量の水蒸気が勢いよく流出することによって破裂音が発生するのを防止することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る容器の通蒸部の構成を示す図である。なお、本実施形態の構成は、以下で説明する通蒸部の構成を除いては上記の第1の実施形態と同様であるため、重複した説明は省略する。
図4に示されるように、本実施形態で容器100のフランジ部112に形成される通蒸部220では、フランジ部112の周方向の一部で接合領域140の凹部111側の端縁部に沿う追加の切り込み221と、追加の切り込み221の両側から環状切り込み115に向けてフランジ部112の幅方向に延びる交差切り込み222とが形成される。追加の切り込み221は、例えば環状切り込み115と同様に形成される積層体114の表面層114Bの欠落部である。交差切り込み222は、環状切り込み115と同様に、少なくとも積層体114の表面層114Bに形成されるが、基材層114Aの一部に達していてもよく、表面層114Bを貫通していなくてもよい。また、交差切り込み222の断面形状は、環状切り込み115と同様にV字形であってもよく、U字形またはI字形などの他の形状であってもよい。
【0033】
通蒸部220では、接合領域140に重複する追加の切り込み221が形成される区間S2において容器本体110と蓋体130との間が他の部分よりも低い圧力で剥離する。上述の通り、開封前、容器本体110と蓋体130とが互いに接合された状態では内部空間SPの内圧が接合領域140の凹部111側の端縁部に集中するが、環状切り込み115が接合領域140の端縁部から離隔しているため、内圧が環状切り込み115を起点にして積層体114を層間剥離させるように作用することが防止される。通蒸部220では追加の切り込み221によって、内圧が集中する接合領域140の端縁部に積層体114の表面層114Bの欠落部が形成されるため、内圧が追加の切り込み221を起点にして積層体114を層間剥離させるように作用し得る。従って、通蒸部220では容器本体110と蓋体130との間が他の部分よりも低い圧力で剥離する。
【0034】
交差切り込み222は、上記のような通蒸部220において、容器本体110と蓋体130との間が剥離する領域を安定させる機能を有する。通蒸部220で容器本体110と蓋体130との間が剥離する場合、剥離は追加の切り込み221が形成される区間S2で発生する。図示された例において、追加の切り込み221の両側に形成される1対の交差切り込み222のそれぞれの起点は、区間S2の両端に一致する。交差切り込み222が区間S2の両端を起点にしてフランジ部112の幅方向に形成されていることによって、区間S2で積層体114が層間剥離しやすくなる。交差切り込み222を起点にした層間剥離も発生するが、図示された例では交差切り込み222が環状切り込み115に達しておらず、したがって交差切り込み222の終点と環状切り込み115との間に容器本体110と蓋体130との間が剥離していない領域が残る。それゆえ、本実施形態では、通蒸部220における容器本体110と蓋体130との間の剥離によって通蒸が可能になる範囲が実質的に区間S2に限定される。
【0035】
ここで、上記の例では、交差切り込み222が環状切り込み115に達していないことによって、
図4に矢印Fで示すように内圧によって発生する応力が分散する。応力は交差切り込み222に沿って伝わるため、交差切り込み222の終点から先は放射状に分散することになる。このような応力の分散によって、本実施形態では、区間S2以外で積層体114に余分な層間剥離を起こさず、通蒸部220で内部空間SPが外部空間に連通する幅を安定させることができる。応力を分散させるという観点でいえば、本実施形態の変形例として、
図5に示す通蒸部220Aのように、追加の切り込み221を形成し、交差切り込み222を形成しないことも可能である。この場合も、追加の切り込み221の終点から先では内圧によって発生する応力が放射状に分散し、
図4の例と同様に積層体114が余分な層間剥離を起こすことを防止できる。
【0036】
なお、上記の例では交差切り込み222が環状切り込み115に達していないものとして説明したが、例えば、交差切り込み222の追加の切り込み221から離れた部分において、接合領域140の端縁部から離れたことによって積層体114の層間剥離が進展しないような場合には、交差切り込み222の有無にかかわらず容器本体110と蓋体130との間が剥離しない領域が残るため、交差切り込み222が環状切り込み115まで達していてもよい。
【0037】
なお、追加の切り込み221は、接合領域140の凹部111側の端縁部に沿うものとして説明したが、接合領域140の端縁部と追加の切り込み221とは厳密に一致していなくてもよい。具体的には、例えば、接合領域140の端縁部と追加の切り込み221との間にはわずかに間隔が空いていてもよく、接合領域140が追加の切り込み221をわずかに越えていてもよい。
【0038】
以上で説明した本発明の第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同様の効果、すなわち、通蒸部120から放出される水蒸気の量と容器内に充満する水蒸気の量とが各容器においてほぼ一定になり、容器間でのばらつきが小さい安定した加熱効率の向上効果を得ることができる。また、区間S2を比較的短く設計しておけば、通蒸部120で蓋体130と容器本体110との間が剥離するときに破裂音が発生するのを防止することができる。第1の実施形態との比較として、本実施形態では、接合領域140に突出部が形成されず、接合領域140が周方向について均一な幅を有することになるため、接合領域140を形成するときのシール盤の周方向の位置合わせ誤差をある程度許容することができる。第1の実施形態の場合、周方向の位置合わせ誤差によって突出部140Pと交差切り込み121とが重複すると、上述した効果が得られにくくなる。ただし、本実施形態では、追加の切り込み221と接合領域140の凹部111側の端縁部との位置関係を上記で説明したような範囲に収めるために、シール盤の径方向の位置合わせについてはある程度の精度が必要になる。
【0039】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る容器の通蒸部の構成を示す図である。なお、本実施形態の構成は、以下で説明する通蒸部および接合領域の構成を除いては上記の第1の実施形態と同様であるため、重複した説明は省略する。
図6に示されるように、本実施形態で容器100のフランジ部112に形成される通蒸部320では、フランジ部112の周方向の一部で接合領域340の凹部111側の端縁部に沿う追加の切り込み321と、追加の切り込み321の両側から環状切り込み115に向けてフランジ部112の幅方向に延びる交差切り込み322とが形成される。追加の切り込み321および交差切り込み322の構成は、第2の実施形態で説明された追加の切り込み221および交差切り込み222と同様である。図示された例では、接合領域340の凹部111側の端縁部が波形に形成されており、追加の切り込み321が接合領域340の端縁部の波形に交差している。
【0040】
上記のような構成によって、第2の実施形態と同様に、通蒸部320で追加の切り込み321が形成された区間S3において積層体114が層間剥離し、それによって容器本体110と蓋体130との間が剥離する。加えて、本実施形態では、接合領域340の端縁部の波形と追加の切り込み321とが交差する点に内圧が集中することによって、所定の内圧でより確実に容器本体110と蓋体130との間を剥離させることができる。本実施形態でも、追加の切り込み321の両端から交差切り込み322が形成されることによって、区間S3で積層体114が層間剥離しやすくなる。また、図示された例では交差切り込み322が環状切り込み115に達しておらず、交差切り込み322の終点と環状切り込み115との間に容器本体110と蓋体130との間が剥離しない領域が残ることによって、通蒸部320において通蒸が可能になる範囲が実質的に区間S3に限定される点、および、交差切り込み322を形成しないことが可能である点も第2の実施形態と同様である。
【0041】
(変形例)
図7は、本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図7に示すように、本変形例では、容器本体110のフランジ部112に形成される環状切り込み115の代わりに、接合領域140よりも凹部111側に位置するフランジ部112と凹部111との境界付近に、表面層114Bの環状薄肉部116が形成される。環状薄肉部116は、例えば、積層体114を凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形するときに、フランジ部112の押圧によって基材層114Aの樹脂を表面層114B側に膨出させることによって形成される。環状薄肉部116では、図示された例のように表面層114Bが部分的に薄く成形されていてもよいし、あるいは表面層114Bが部分的に途切れていてもよい。
【0042】
本変形例のように、表面層114Bに環状薄肉部116が形成される場合も、環状薄肉部116では表面層114Bが途切れているか、または容易に破断できる程度の厚さにされているため、容器100の開封時に環状薄肉部116で表面層114Bが蓋体130から離れ、そこから先は蓋体130だけが引き剥がされる。つまり、本変形例における環状薄肉部116は、上記の第1の実施形態における環状切り込み115と同様の機能を有する。本明細書では、このように表面層114Bを途切れさせるか、または容易に破断できる程度の厚さにする部分を、表面層114Bの欠落部ともいう。上述したような環状切り込み115や環状薄肉部116と同様の機能を有する範囲で、欠落部の形状はどのようなものであってもよく、必ずしも切り込みまたは薄肉部と呼ばれる形状には限られない。
【0043】
なお、本変形例は、上記で説明した第1の実施形態および第2の実施形態のそれぞれに適用可能である。第1の実施形態に適用した場合、通蒸部120に形成される交差切り込み121は、接合領域140の突出部140Pの両側で、環状薄肉部116の表面層114Bが最も薄くなった部分、または表面層114Bが途切れた部分を起点にして形成される。第2の実施形態に適用した場合、上述のように通蒸部220に形成される交差切り込み222は表面層114Bの欠落部(
図4の例では環状切り込み115)に達していなくてもよいため、変形例に係る環状薄肉部116が形成されても交差切り込み222の構成は変わらない。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0045】
100…容器、110…容器本体、111…凹部、112…フランジ部、114…積層体、114A…基材層、114B…表面層、115…環状切り込み、116…環状薄肉部、120,220…通蒸部、121,222…交差切り込み、221…追加の切り込み、130…蓋体、131…積層体、131A…外層、131B…シール層、140…接合領域、140P…突出部、SP…内部空間。