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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】脱落防止機能付き配管支持具
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/10 20060101AFI20220301BHJP
   H02G 9/04 20060101ALI20220301BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
F16L3/10 A
H02G9/04
H02G3/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018078135
(22)【出願日】2018-04-16
(65)【公開番号】P2019132421
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2018017075
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504115404
【氏名又は名称】富士機材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】角地 俊行
(72)【発明者】
【氏名】穴澤 達
(72)【発明者】
【氏名】林 信広
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-025825(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2012-0001008(KR,U)
【文献】特開2018-013179(JP,A)
【文献】特開2006-118676(JP,A)
【文献】特開2006-063605(JP,A)
【文献】特開昭62-045437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/10
H02G 9/04
H02G 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を壁面に支持する、脱落防止機能付き配管支持具であって、
前記配管を外周方向から当接自在に窪んだ凹面を一方の面に有し、前記壁面に当接自在な当接面を他方の面に有する管枕と、
前記配管を内部に導入自在に湾曲した連結部、及び、この連結部から略平行に延在し、前記凹面に隣接する一対の側面に先端部側の内壁を当接できる一対の帯状のアームを有する管用バンドと、
前記管枕の凹面から穿設した座繰り穴に頭部を収容でき、この座繰り穴の底面から前記当接面に向けて貫通した係止孔にねじ部を挿通でき、前記管枕を前記壁面に固定するねじ部材と、
一対の前記アームの先端部側に開口したボルト穴と前記座繰り穴の周壁を横断し前記管枕の両側面を貫通したボルト挿通穴を一致させた状態で、軸部を前記ボルト穴及び前記ボルト挿通穴に挿通でき、ナット部材を締結自在なボルト部材と、を備え、
前記ボルト部材は、その軸部の外周が前記ねじ部材の頭部に近接した状態で配置されている、脱落防止機能付き配管支持具。
【請求項2】
前記ボルト部材は、前記ナット部材の脱落を防止する脱落防止ボルトからなる、請求項1記載の脱落防止機能付き配管支持具。
【請求項3】
前記脱落防止ボルトは、
一端部に頭部を有し、雄ねじ部、及び、前記雄ねじ部の中間部に形成した嵌合軸部を軸部に有するボルト本体と、
前記嵌合軸部を外周方向から導入自在な切り欠きを外周に開口し、前記嵌合軸部の外周に密着自在に、前記嵌合軸部に嵌合した円筒状の脱落防止部材と、を備え、
前記脱落防止部材は、
前記ナット部材の雌ねじ部の山径より直径が小さい円形の外周と、
前記脱落防止部材の外周から膨出し、先端面が前記ナット部材の雌ねじ部の内壁を押圧自在な突部と、を有し、
前記ボルト本体に対して前記ナット部材を所定のトルク以上で回転した状態では、前記突部の押圧力に抗して、前記ナット部材を前記ボルト本体に対して螺進でき、
前記ナット部材が前記頭部に向かって前記突部を通過した状態では、前記突部が弾性復帰している、請求項2記載の脱落防止機能付き配管支持具。
【請求項4】
前記管枕及び前記管用バンドは、合成樹脂で成形している、請求項1から3のいずれかに記載の脱落防止機能付き配管支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱落防止機能付き配管支持具に関する。特に、自動車専用道路又は橋梁などの壁面に沿って敷設した電気ケーブル収納用の配管などを支持する配管支持具であって、壁面に固定した管枕と配管を拘持する管用バンドが協働して、配管を支持するとともに脱落を防止する配管支持具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車専用道路又は橋梁などは、その壁面に沿って、電気ケーブル収納用の配管などを敷設している。このような配管は、その長手方向に沿って配列した複数の配管支持具で支持されている。
【0003】
このような配管支持具の例として、配管の外周に当接自在な凹面を有し、ビスで壁面に固定できる箱状の管枕と、内部に配管を導入した状態で管枕と連結自在な管用バンドで構成し、建物の平坦な壁面、又は、柱状体の湾曲した壁面のいずれにも固定できる、配管保持具(以下、配管支持具として記載する)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-25825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6は、従来技術による配管支持具の構成を示す横断面図である。なお、図6は、特許文献1の図8に相当している。図6を参照すると、従来技術による配管支持具9は、箱状の管枕91と管用バンド92を備えている。
【0006】
図6を参照すると、管枕91は、変形可能な合成樹脂から成り、方形の枠体911と、枠体911の中央部を架橋した帯板状の台座912を有している。台座912は、ビスBのねじ部が挿通自在な係止孔91hを中央部に開口している。係止孔91hは、ビスBの頭部が進入困難にその穴径を規定している。
【0007】
図6を参照して、枠体911の当接面91fを平坦な壁面Wfに当接し、係止孔91hを介して、ビスBを壁面Wfに締結することで、管枕91を壁面Wfに固定できる。係止孔91hの奥側には、台座912の当接面91fから椀状に窪んだ凹部913を形成している。
【0008】
図6を参照して、ビスBを壁面Wfに締結すると、ビスBの頭部は、台座912の中央部を変形する力を付勢できる。そして、台座912の中央部を変形する力の反作用として、ビスBのねじ部には、引っ張り力が働くので、ビスBは壁面Wfに対して弛むことなく、確実に締結できる、としている。
【0009】
図6を参照すると、管枕91は、一対の鉤片91k・91kを枠体911の内壁に形成している。一対の鉤片91k・91kは対向配置されている。一方、管用バンド92は、円弧状に湾曲した連結部921と、連結部921から平行に帯状に延在した一対のアーム922・922で構成している。そして、一対のアーム922・922は、一対の爪片92n・92nを先端部に形成している。
【0010】
図6を参照して、一対のアーム922・922を枠体911の内部に進入すると、一対の爪片92n・92nを一対の鉤片91k・91kに係合できる。連結部921の内部に配管Pbをその外周方向から導入した状態で、一対のアーム922・922を枠体911の内部に進入すると、爪片92nが鉤片91kに係止することで、管枕91と管用バンド92が協働して、配管Pbを支持できる。
【0011】
図6を参照すると、配管Pbは、実態として、外周を波形に形成したベローズ管である。配管Pbは、例えば、内部に電気ケーブル(図示せず)を収容している。管枕91は、曲率半径の大きい第1円弧部91cと曲率半径の小さい第2円弧部91dを枠体911の当接面91fと反対面に形成している。第1円弧部91cと第2円弧部91dはそれらの中心を共有している。
【0012】
図6を参照して、連結部921の内部に配管Pbを導入し、管用バンド92を管枕91に係合した状態では、第1円弧部91cは、ベローズ管の環状凸部に当接できる。一方、第2円弧部91dは、ベローズ管の環状凹部に当接できる。これにより、配管支持具9に対して、ベローズ管の軸方向の移動を規制できる。
【0013】
図6を参照して、電柱などの柱状体(図示せず)の湾曲した壁面に、配管支持具9を固定する場合には、台座912の両側に形成した挿通穴910・910に、帯状のバンド部材(図示せず)を挿通し、バンド部材(図示せず)を柱状体に緊締することで、配管支持具9を固定する柱状体(図示せず)に固定できる。
【0014】
図6を参照すると、特許文献1による配管支持具9は、配管支持具9を平坦な壁面Wに固定する場合には、台座912の中央部を変形する力に依存して、ビスBの弛みを規制しているが、振動などでビスBが台座912から飛び出す可能性がある。
【0015】
又、特許文献1による配管支持具9は、管用バンド92の先端部側に不用意な外力が作用すると、管枕91と管用バンド92の係合が解除される可能性がある。ビスなどの締結具を用いて、平坦な壁面に固定する場合に、締結具が脱落することなく、かつ、配管を確実に支持できる配管支持具が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0016】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、電気ケーブル収納用の配管などを支持する配管支持具であって、締結具を用いて壁面に固定した管枕と管枕に連結する管用バンドが協働して、配管を確実に支持するとともに脱落を防止する配管支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、配管を当接自在な凹面に座繰り穴を穿設し、座繰り穴にねじ部材を挿入して壁面に固定できる管枕と、配管を管枕に支持できる管用バンドで配管支持具を構成し、ボルト部材及びナット部材を用いて、管用バンドの連結部から延在した一対のアームを管枕の両側面に固定し、ボルト部材の軸部がねじ部材の頭部に近接した状態で配置することで、ねじ部材が座繰り穴から飛び出すことを阻止でき、これにより、配管を壁面に確実に支持できると考え、これに基づいて、以下のような新たな配管支持具を発明するに至った。
【0018】
(1)本発明による脱落防止機能付き配管支持具は、配管を壁面に支持する配管支持具であって、前記配管を外周方向から当接自在に窪んだ凹面を一方の面に有し、前記壁面に当接自在な当接面を他方の面に有する管枕と、前記配管を内部に導入自在に湾曲した連結部、及び、この連結部から略平行に延在し、前記凹面に隣接する一対の側面に先端部側の内壁を当接できる一対の帯状のアームを有する管用バンドと、前記管枕の凹面から穿設した座繰り穴に頭部を収容でき、この座繰り穴の底面から前記当接面に向けて貫通した係止孔にねじ部を挿通でき、前記管枕を前記壁面に固定するねじ部材と、一対の前記アームの先端部側に開口したボルト穴と前記座繰り穴の周壁を横断し前記管枕の両側面を貫通したボルト挿通穴を一致させた状態で、軸部を前記ボルト穴及び前記ボルト挿通穴に挿通でき、ナット部材を締結自在なボルト部材と、を備え、前記ボルト部材は、その軸部の外周が前記ねじ部材の頭部に近接した状態で配置されている。
【0019】
(2)前記ボルト部材は、前記ナット部材の脱落を防止する脱落防止ボルトからなってもよい。
【0020】
(3)前記脱落防止ボルトは、一端部に頭部を有し、雄ねじ部、及び、前記雄ねじ部の中間部に形成した嵌合軸部を軸部に有するボルト本体と、前記嵌合軸部を外周方向から導入自在な切り欠きを外周に開口し、前記嵌合軸部の外周に密着自在に、前記嵌合軸部に嵌合した円筒状の脱落防止部材と、を備え、前記脱落防止部材は、前記ナット部材の雌ねじ部の山径より直径が小さい円形の外周と、前記脱落防止部材の外周から膨出し、先端面が前記ナット部材の雌ねじ部の内壁を押圧自在な突部と、を有し、前記ボルト本体に対して前記ナット部材を所定のトルク以上で回転した状態では、前記突部の押圧力に抗して、前記ナット部材を前記ボルト本体に対して螺進でき、前記ナット部材が前記頭部に向かって前記突部を通過した状態では、前記突部が弾性復帰していることが好ましい。
【0021】
(4)前記管枕及び前記管用バンドは、合成樹脂で成形していることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明による脱落防止機能付き配管支持具は、配管を当接自在な凹面に座繰り穴を穿設し、座繰り穴にねじ部材を挿入して壁面に固定できる管枕と、配管を管枕に支持できる管用バンドで配管支持具を構成し、ボルト部材及びナット部材を用いて、管用バンドの連結部から延在した一対のアームを管枕の両側面に固定し、ボルト部材の軸部がねじ部材の頭部に近接した状態で配置することで、ねじ部材が座繰り穴から飛び出すことを阻止でき、これにより、配管を壁面に確実に支持できる。
【0023】
又、本発明による脱落防止機能付き配管支持具は、ナット部材の脱落を防止する脱落防止ボルトでボルト部材を構成することが好ましく、管用バンドが管枕から脱落することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態による脱落防止機能付き配管支持具の構成を示す図であり、図1(A)は、配管支持具の正面図、図1(B)は、配管支持具の平面図、図1(C)は、配管支持具の右側面図、図1(D)は、図1(B)のA-A矢視断面図である。
図2】第1実施形態による脱落防止機能付き配管支持具の構成を示す図であり、一方の配管支持具を斜視図で示し、他方の配管支持具を斜視分解組立図で示している。
図3】第1実施形態による脱落防止機能付き配管支持具に備わる脱落防止ボルトの構成を示す斜視図である。
図4】第1実施形態による脱落防止機能付き配管支持具に備わる脱落防止ボルトの構成を示す斜視分解組立図である。
図5】本発明の第2実施形態による脱落防止機能付き配管支持具の構成を示す図であり、図5(A)は、配管支持具の正面図、図5(B)は、配管支持具の平面図、図5(C)は、配管支持具の右側面図である。
図6】従来技術による配管支持具の構成を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[第1実施形態]
(脱落防止機能付き配管支持具の構成)
最初に、本発明の第1実施形態による脱落防止機能付き配管支持具の構成を説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態による脱落防止機能付き配管支持具の構成を示す図であり、図1(A)は、配管支持具の正面図、図1(B)は、配管支持具の平面図、図1(C)は、配管支持具の右側面図、図1(D)は、図1(B)のA-A矢視断面図である。
【0027】
図2は、第1実施形態による脱落防止機能付き配管支持具の構成を示す図であり、一方の配管支持具を斜視図で示し、他方の配管支持具を斜視分解組立図で示している。
【0028】
図3は、第1実施形態による脱落防止機能付き配管支持具に備わる脱落防止ボルトの構成を示す斜視図である。図4は、第1実施形態による脱落防止機能付き配管支持具に備わる脱落防止ボルトの構成を示す斜視分解組立図である。
【0029】
(全体構成)
図1から図4を参照すると、本発明の第1実施形態による脱落防止機能付き配管支持具10は、電気ケーブルなどを収容した配管Pを壁面Wfに支持できる(図1(A)参照)。配管支持具10は、直方体状等の管枕1と管用バンド2を備えている。又、配管支持具10は、ねじ部材3と脱落防止ボルトからなるボルト部材4を備えている。
【0030】
図1又は図2を参照すると、管枕1は、円弧状等に窪んだ凹面1dを一方の面に有している。凹面1dには、配管Pを外周方向から当接できる。又、管枕1は、壁面Wfに当接自在な当接面1fを他方の面に有している。
【0031】
図1又は図2を参照すると、管用バンド2は、円弧状等に湾曲した連結部21と、連結部21から平行に帯状に延在した一対のアーム22・22を有している。連結部21には、その内部に配管Pを導入できる。一対のアーム22・22は、凹面1dに隣接する一対の側面1s・1sに先端部側の内壁を当接できる。配管Pを連結部21の内部に導入することで、配管Pの動きを拘束できる。つまり、管用バンド2は、配管Pを拘持できる。なお、管用バンド2は、本実施形態では、その連結部21の断面が優弧状に湾曲した形状となっているが、必ずしも優弧状に湾曲した形状に限定されず、配管Pを拘持できる形状であればよい。
【0032】
図1又は図2を参照すると、管枕1は、凹面1dから穿設した座繰り穴1hを凹面1dに開口している。又、管枕1は、座繰り穴1hの底面から当接面1fに向けて貫通した係止孔1kを開口している。座繰り穴1hには、ねじ部材3の頭部3hを収容できる。係止孔1kには、ねじ部材3のねじ部3sを挿通できる。ねじ部材3のねじ部3sを壁面Wfに螺合することで、管枕1を壁面Wfに固定できる。
【0033】
図2を参照すると、管用バンド2は、一対のアーム22・22の先端部側にボルト穴22hを開口している。一方、管枕1は、座繰り穴1hの周壁を横断し、管枕1の両側面1s・1sを貫通したボルト挿通穴11hを開口している。一対のボルト穴22h・22hとボルト挿通穴11hを一致させた状態で、軸部4sをボルト穴22h及びボルト挿通穴11hに挿通できる。そして、軸部4sの先端側にナット部材4nを締結することで、管用バンド2と管枕1で配管Pを支持した状態で、管用バンド2を管枕1に固定できる。一対のアーム22・22間の間隔は一定でもよいが、一対のアーム22・22は連結部21との接続部から先端部に向かって間隔が広がるようにされることが望ましい。こうすることで、ボルト部材4にナット部材4nを締結するときに、一対のアーム22・22がナット部材4nと平座金1wとを押圧するので、ボルト部材4に対するナット部材4nの弛みがより抑制される。
【0034】
図1(A)又は図1(D)を参照すると、ボルト部材4は、軸部4sの外周がねじ部材3の頭部3hに近接した状態で配置されている。ボルト部材4の軸部4sをねじ部材3の頭部3hに近接した状態で配置することで、ねじ部材3が座繰り穴1hから飛び出すことを阻止でき、これにより、配管Pを壁面Wfに確実に支持できる。
【0035】
ここで、図1(A)を参照して、「ボルト部材4の軸部4sの外周がねじ部材3の頭部3hに近接した状態で配置されている」とは、軸部4sの外周とねじ部材3の頭部3hの頂上が所定の短い距離を設けて離間していることを意味している。「所定の短い距離」とは、ねじ部材3を座繰り穴1hの底面に固定した状態で、ボルト部材4の軸部4sがねじ部材3の頭部3hに阻止されることなく、通過できる距離であり、ねじ部材3が弛んで、頭部3hが軸部4sの外周に向かって移動しても、ねじ部材3の移動を直ちに停止できる距離である。例えば、この距離は、3mm以下が好ましいが、3mm以下に必ずしも限定されず、ねじ部材3の移動を停止できるならば3mmを超えてもよい。
【0036】
(脱落防止ボルトの構成)
次に、脱落防止ボルトからなるボルト部材4の構成を説明する。図3又は図4を参照すると、実施形態によるボルト部材4は、ボルト本体41と円筒状の脱落防止部材42を備えている。ボルト本体41は、一端部に頭部41hを有し、雄ねじ部41m、雄ねじ部41mの中間部に形成された嵌合軸部41f、及び、ねじ山を形成していない非雄ねじ部41nを軸部4sに有している。なお、非雄ねじ部41nはなくてもよく、非雄ねじ部41nの部分に雄ねじ部41mを延長して設けてもよい。非雄ねじ部41nの直径は雄ねじ部41mの谷径と同じにしているが(図4参照)、雄ねじ部41mの山径(外径)まで大きくしてもよい。
【0037】
図4を参照すると、脱落防止部材42は、切り欠き42dを外周42cに設けて開口している。切り欠き42dによって、脱落防止部材42をボルト本体41の嵌合軸部41fの外周方向から導入できる。そして、脱落防止部材42は、嵌合軸部41fの外周に密着自在に、嵌合軸部41fに嵌合できる(図3参照)。
【0038】
図4を参照すると、脱落防止部材42は、円形の外周42cと突部42bを有している。脱落防止部材42の外周42cは、雄ねじ部41mに螺合自在なナット部材4nの雌ねじ部4fの山径(内径)より直径を小さく構成している。突部42bは、脱落防止部材42の外周42cから円錐台状に膨出している。突部42bは、その先端面がナット部材4nの雌ねじ部4fの内壁を押圧できる。突部42bは円錐台状に特に限定されず、半円状であってもよい。
【0039】
図3を参照して、図示しないスパナ又はレンチなどの工具を用いて、ボルト本体41に対してナット部材4nを所定のトルク以上で回転した状態では、突部42bの押圧力に抗して、ナット部材4nをボルト本体41に対して螺進できる。図3又は図4を参照すると、図示しないスパナ又はレンチなどの工具を用いて、ボルト本体41に対してナット部材4nを回転できる。
【0040】
図1を参照して、ナット部材4nが頭部41hに向かって突部42bを通過した状態では、突部42bが弾性復帰して、ボルト本体41に対してナット部材4nの脱落を防止できる。これにより、ボルト本体41に対してナット部材4nが弛んでも、管用バンド2と管枕1の連結を維持でき、管用バンド2が管枕1から脱落することを防止できる。ナット部材4nは、図3及び図4に示すように、つば付き六角ナット等のつば付きナット(フランジ付きナット)を用いることが好ましい。
【0041】
引き続き、配管支持具10の構成を説明する。図1又は図2を参照すると、ねじ部材3は、六角ボルト等のボルトからなることが好ましい。ここでは、ねじ部材3として、つば付きボルト(フランジ付きボルト)を用いているが、平座金を介してボルトを用いてもよい。つば付きボルト又は平座金を用いることで、座繰り穴1hの底面との接地面積を大きくでき、弛み止めの効果を期待できる。なお、ねじ部材3として、頭部3hの高さが低く、頭部3hの外径が大きいトラスねじを用いてもよい。
【0042】
図1又は図2を参照すると、管枕1及び管用バンド2は、FRPなどの繊維強化プラスチックで成形することが好ましいが、鉄鋼又はステンレス合金など金属部材からなることを必ずしも排除しない。図3又は図4を参照すると、ボルト本体41及びナット部材4nは、ステンレス合金などの金属部材からなることが好ましく、錆の発生を防止できる。
【0043】
図2を参照して、ボルト部材4にナット部材4nを締結するときは、アーム22とボルト部材4の頭部41hの間に、平座金1wを介在することが好ましい。平座金1wは、ボルト部材4の螺合に起因するアーム22の損傷を抑制できる。アーム22とボルト部材4の頭部41hとの間に、平座金1wに加えて、ばね座金1wsを介在させてもよい。平座金1wを用いず、ボルト部材4として、つば付きボルト(フランジ付きボルト)を用いてもよい。
本実施形態において、平座金を用いる代わりに、つば付きナット若しくはつば付きボルト、又はつば付きナットとつば付きボルトとの両方を用いることで、平座金を通す作業をなくすことができ作業性を向上させることができる。
【0044】
(脱落防止機能付き配管支持具の作用)
次に、第1実施形態による脱落防止機能付き配管支持具10の使用方法を説明しながら、配管支持具10の作用及び効果を説明する。最初に、図1又は図2を参照して、ねじ部3sを先頭に、ねじ部材3を座繰り穴1hに挿入する。次に、図示しないスパナ又はレンチなどの工具を用いて、ねじ部材3を回転することで、管枕1を壁面Wfに固定できる。
【0045】
次に、図1又は図2を参照して、管用バンド2の内部に配管Pを導入した後に、配管Pを管枕1の凹面1dに当接する。又は、配管Pを管枕1の凹面1dに当接した状態で、管用バンド2の内部に配管Pを相対的に導入する。
【0046】
次に、図2を参照して、ボルト穴22hとボルト挿通穴11hを一致させた状態で、ボルト部材4をボルト穴22h及びボルト挿通穴11hに挿通する(図1参照)。次に、ボルト部材4の軸部4sにナット部材4nを締結することで(図1参照)、配管支持具10の組立作業を終了する。
【0047】
図1又は図2を参照すると、第1実施形態による配管支持具10は、ボルト部材4の軸部4sをねじ部材3の頭部3hに近接した状態で配置しているので、ねじ部材3が座繰り穴1hから飛び出すことを阻止できる。そして、これにより、配管Pを壁面Wfに確実に支持できる。
【0048】
又、第1実施形態による配管支持具10は、ボルト部材4として脱落防止ボルトを用いることで、ボルト部材4に対してナット部材4nが弛んでも、管用バンド2と管枕1の連結を維持でき、管用バンド2が管枕1から脱落することを防止できる。
[第2実施形態]
(脱落防止機能付き配管支持具の構成)
次に、本発明の第2実施形態による脱落防止機能付き配管支持具の構成を説明する。
【0049】
図5は、本発明の第2実施形態による脱落防止機能付き配管支持具の構成を示す図であり、図5(A)は、配管支持具の正面図、図5(B)は、配管支持具の平面図、図5(C)は、配管支持具の右側面図である。
【0050】
なお、第1実施形態で用いた符号と同じ符号を付した構成品は、その作用を同じとするので、以下説明を省略する場合がある。
【0051】
図5を参照すると、本発明の第2実施形態による配管支持具20は、電気ケーブルなどを収容した配管Pを壁面Wfに支持できる(図5(A)参照)。配管支持具20は、直方体状等の管枕5と管用バンド6を備えている。又、配管支持具20は、ねじ部材3と脱落防止ボルトからなるボルト部材4を備えている。第1実施形態による配管支持具10は図1(C)に示すように、管枕1の幅と管用バンド2の幅とが同一であるが、第2実施形態による配管支持具20は図5(C)に示すように、管枕5の幅が管用バンド6の幅よりも大きくなっている。
【0052】
図5を参照すると、管枕5は、円弧状等に窪んだ凹面5dを一方の面に有している。凹面5dには、配管Pを外周方向から当接できる。又、管枕5は、壁面Wfに当接自在な当接面5fを他方の面に有している。
【0053】
図5を参照すると、管用バンド6は、優弧状に湾曲した連結部61と、連結部61から平行に帯状に延在した一対のアーム62・62を有している。連結部61には、その内部に配管Pを導入できる。一対のアーム62・62は、凹面5dに隣接する一対の側面5s・5sに先端部側の内壁を当接できる。配管Pを連結部61の内部に導入することで、配管Pの動きを拘束できる。つまり、管用バンド6は、配管Pを拘持できる。本実施形態では管用バンド6の断面はU字状となっている。第2実施形態では、優弧状の連結部61の曲率半径は図1又は図2に示した連結部21の曲率半径よりも小さくなっている。
【0054】
図5を参照すると、管枕5は、凹面5dから穿設した座繰り穴5hを凹面5dに開口している。更に、管枕1は、座繰り穴5hの底面から当接面5fに向けて貫通した係止孔5kを開口している。座繰り穴5hには、ねじ部材3の頭部3hを通過できる。係止孔5kには、ねじ部材3のねじ部3sを挿通できる。そして、ねじ部材3のねじ部3sを壁面Wfに螺合することで、管枕5を壁面Wfに固定できる。
【0055】
図5を参照すると、管用バンド6は、一対のアーム62・62の先端部側にボルト穴を開口している。一方、管枕5は、座繰り穴5hの周壁を横断し、管枕5の両側面5s・5sを貫通したボルト挿通穴を開口している。一対のボルト穴とボルト挿通穴を一致させた状態で、軸部4sをボルト穴及びボルト挿通穴に挿通できる。そして、軸部4sの先端側にナット部材4nを締結することで、管用バンド6と管枕5で配管Pを支持した状態で、管用バンド6を管枕5に固定できる。
【0056】
図5(A)を参照すると、ボルト部材4は、軸部4sの外周がねじ部材3の頭部3hに近接した状態で配置されている。ボルト部材4の軸部4sをねじ部材3の頭部3hに近接した状態で配置することで、ねじ部材3が空洞5vから飛び出すことを阻止でき、これにより、配管Pを壁面Wfに確実に支持できる。
【0057】
(脱落防止機能付き配管支持具の作用)
次に、第2実施形態による脱落防止機能付き配管支持具20の作用及び効果を説明する。図5を参照すると、第2実施形態による配管支持具20は、ボルト部材4の軸部4sをねじ部材3の頭部3hに近接した状態で配置しているので、ねじ部材3が管枕5から飛び出すことを阻止できる。そして、これにより、配管Pを壁面Wfに確実に支持できる。
【0058】
又、第2実施形態による配管支持具20は、ボルト部材4として脱落防止ボルトを用いることで、ボルト部材4に対してナット部材4nが弛んでも、管用バンド6と管枕5の連結を維持でき、管用バンド6が管枕5から脱落することを防止できる。
【符号の説明】
【0059】
1 管枕
1d 凹面
1f 当接面
1h 座繰り穴
1s・1s 一対の側面
2 管用バンド
3 ねじ部材
3h 頭部(ねじ部材の頭部)
3s ねじ部(ねじ部材のねじ部)
4 ボルト部材
4n ナット部材
4s 軸部(ボルト部材の軸部)
10 脱落防止機能付き配管支持具
11h ボルト挿通穴
22h ボルト穴
P 配管
Wf 壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6