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特許7032241天井板落下防止構造及び天井板落下防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】天井板落下防止構造及び天井板落下防止方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
E04B9/18 H
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018102131
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019206829
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】橋口 寛史
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-28270(JP,A)
【文献】特開2013-234524(JP,A)
【文献】特公昭47-19983(JP,B1)
【文献】特開2003-96923(JP,A)
【文献】特開2016-153566(JP,A)
【文献】特開2017-8533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井板が吊られて保持されている吊天井構造における天井板落下防止構造であって、
前記天井板の天井裏側となる面に、索体が埋め込まれている若しくは接合されている面材が、面接合されていることを特徴とする天井板落下防止構造。
【請求項2】
前記索体が、躯体に対して締結されていることを特徴とする請求項1に記載の天井板落下防止構造。
【請求項3】
前記面材の落下を低減させるための落下防止具であって、野縁、野縁受け、クリップ、ハンガー、吊ボルトの何れかに対して締結若しくは掛止めされ、前記面材にその一部が埋め込まれている若しくは接合されている落下防止具を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の天井板落下防止構造。
【請求項4】
前記面材の落下を低減させるための落下防止具であって、躯体に対して直接又は他の部材を介して締結され、前記面材にその一部が埋め込まれている若しくは接合されている落下防止具を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の天井板落下防止構造。
【請求項5】
前記落下防止具を相互に連結する連結部材であって、前記面材に埋め込まれている若しくは接合されている連結部材を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の天井板落下防止構造。
【請求項6】
前記面材が複数層によって形成されており、前記索体が前記面材の層の間に配されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の天井板落下防止構造。
【請求項7】
前記索体が、野縁と略平行に配されていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の天井板落下防止構造。
【請求項8】
前記面材に埋め込まれている若しくは接合されている筒状体を備え、前記索体が、前記筒状体の内部に配されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の天井板落下防止構造。
【請求項9】
天井板が吊られて保持されている吊天井構造における天井板落下防止方法であって、
天井板の天井裏側となる面に、索体が埋め込まれている若しくは接合されている面材を面接合させるステップを有することを特徴とする天井板落下防止方法。
【請求項10】
前記索体を躯体に対して締結するステップを有することを特徴とする請求項9に記載の天井板落下防止方法。
【請求項11】
前記面材を面接合させるステップが、
第1のシートを前記天井板の天井裏側となる面に面接合させるステップと、
前記第1のシートの上部に前記索体を配するステップと、
前記索体が配された第1のシートの上部に、第2のシートを面接合させるステップと、
を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の天井板落下防止方法。
【請求項12】
前記面材を面接合させるステップが、
前記天井板の天井裏側となる面に流動性を有する樹脂材を塗布して第1の樹脂層を形成するステップと、
前記第1の樹脂層の上部に前記索体を配するステップと、
前記索体が配された第1の樹脂層の上部に、流動性を有する樹脂材を塗布して第2の樹脂層を形成するステップと、
を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の天井板落下防止方法。
【請求項13】
前記面材の落下を低減させるための落下防止具を、野縁、野縁受け、クリップ、ハンガー、吊ボルトの何れかに対して締結若しくは掛止めするステップと、前記面材に前記落下防止具の一部を埋め込み若しくは接合するステップと、を備えることを特徴とする請求項9から12の何れかに記載の天井板落下防止方法。
【請求項14】
前記面材の落下を低減させるための落下防止具を、躯体に対して直接又は他の部材を介して締結するステップと、前記面材に前記落下防止具の一部を埋め込み若しくは接合するステップと、を備えることを特徴とする請求項9から12の何れかに記載の天井板落下防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り天井における天井板が落下してしまうことを低減するための天井板落下防止構造及び天井板落下防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばRC構造の建築物等において、天井板を天井スラブから吊り下げる工法が広く用いられている。
当該在来工法では、天井スラブから吊り下がっている吊ボルトに対して、ハンガーを介して野縁受けが取り付けられ、この野縁受けに対してクリップ等の部材により野縁が取り付けられる。そして、天井板が、野縁に対してネジ留め等によって取り付けられることで、吊り天井が構成されている。
このような在来工法の吊り天井について、大きな地震が起こった際に天井板が落下することが問題となっており、既存の建物における耐震対策が求められている。
このような問題に対して、既存の吊り天井の耐震補強(落下防止)に関する従来技術が特許文献1~5によって開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平04-110822号公報
【文献】特開2012-012912号公報
【文献】特開2015-063853号公報
【文献】特開2015-183457号公報
【文献】特開2017-014819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記在来工法の吊天井においては、天井板として石膏ボード等が用いられることが多い。石膏ボードは地震時の大きな揺れによって応力がかかったり、衝撃が加えられると、割れやすいという側面があり、これによって天井板の落下が生じてしまうことがある。1カ所でも割れが生じてしまうと、そこから波及的に割れが広がり、結果として、大きな範囲で天井板の落下が生じてしまうことがある。
従って、天井板の割れの発生や割れた場合にも落下が低減されるような対策が求められるが、特許文献2、5で開示される技術では、野縁受けとハンガーの接合部分等を接着させるものであり、天井板の落下が低減されるような対策が、天井板に対して面的になされるものではなかった。
また、特許文献3、4で開示されている技術は、居室側からの施工を要するものであるため、工事期間中において居室が利用できなくなるという問題がある。
特許文献1で開示される技術では、天井裏側での施工が可能であると共に、天井板に対して面的に対策がされるものである。しかしながら、特許文献1の技術は、天井板が野縁のフランジに載置されているものにおいて、天井板が野縁のフランジから外れて落下することを防止するための技術であり、天井板が割れる状況等が考慮されているものではない。従って、天井板の割れの発生や割れた場合にも落下が低減されるようにする対策としては十分なものであるとは言えなかった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、既存の吊天井に対して、天井裏側からの施工が可能であると共に、天井板の割れの発生の低減や、天井板が割れた場合にもその落下が低減されるような対策することが可能な天井板落下防止構造及び天井板落下防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
天井板が吊られて保持されている吊天井構造における天井板落下防止構造であって、前記天井板の天井裏側となる面に、索体が埋め込まれている若しくは接合されている面材が、面接合されていることを特徴とする天井板落下防止構造。
【0007】
(構成2)
前記索体が、躯体に対して締結されていることを特徴とする構成1に記載の天井板落下防止構造。
【0008】
(構成3)
前記面材の落下を低減させるための落下防止具であって、野縁、野縁受け、クリップ、ハンガー、吊ボルトの何れかに対して締結若しくは掛止めされ、前記面材にその一部が埋め込まれている若しくは接合されている落下防止具を備えることを特徴とする構成1又は2に記載の天井板落下防止構造。
【0009】
(構成4)
前記面材の落下を低減させるための落下防止具であって、躯体に対して直接又は他の部材を介して締結され、前記面材にその一部が埋め込まれている若しくは接合されている落下防止具を備えることを特徴とする構成1又は2に記載の天井板落下防止構造。
【0010】
(構成5)
前記落下防止具を相互に連結する連結部材であって、前記面材に埋め込まれている若しくは接合されている連結部材を備えることを特徴とする構成3又は4に記載の天井板落下防止構造。
【0011】
(構成6)
前記面材が複数層によって形成されており、前記索体が前記面材の層の間に配されていることを特徴とする構成1から5の何れかに記載の天井板落下防止構造。
【0012】
(構成7)
前記索体が、野縁と略平行に配されていることを特徴とする構成1から6の何れかに記載の天井板落下防止構造。
【0013】
(構成8)
前記面材に埋め込まれている若しくは接合されている筒状体を備え、前記索体が、前記筒状体の内部に配されていることを特徴とする構成1から7の何れかに記載の天井板落下防止構造。
【0014】
(構成9)
天井板が吊られて保持されている吊天井構造における天井板落下防止方法であって、天井板の天井裏側となる面に、索体が埋め込まれている若しくは接合されている面材を面接合させるステップを有することを特徴とする天井板落下防止方法。
【0015】
(構成10)
前記索体を躯体に対して締結するステップを有することを特徴とする構成9に記載の天井板落下防止方法。
【0016】
(構成11)
前記面材を面接合させるステップが、第1のシートを前記天井板の天井裏側となる面に面接合させるステップと、前記第1のシートの上部に前記索体を配するステップと、前記索体が配された第1のシートの上部に、第2のシートを面接合させるステップと、を有することを特徴とする構成9又は10に記載の天井板落下防止方法。
【0017】
(構成12)
前記面材を面接合させるステップが、前記天井板の天井裏側となる面に流動性を有する樹脂材を塗布して第1の樹脂層を形成するステップと、前記第1の樹脂層の上部に前記索体を配するステップと、前記索体が配された第1の樹脂層の上部に、流動性を有する樹脂材を塗布して第2の樹脂層を形成するステップと、を有することを特徴とする構成9又は10に記載の天井板落下防止方法。
【0018】
(構成13)
前記面材の落下を低減させるための落下防止具を、野縁、野縁受け、クリップ、ハンガー、吊ボルトの何れかに対して締結若しくは掛止めするステップと、前記面材に前記落下防止具の一部を埋め込み若しくは接合するステップと、を備えることを特徴とする構成9から12の何れかに記載の天井板落下防止方法。
【0019】
(構成14)
前記面材の落下を低減させるための落下防止具を、躯体に対して直接又は他の部材を介して締結するステップと、前記面材に前記落下防止具の一部を埋め込み若しくは接合するステップと、を備えることを特徴とする構成9から12の何れかに記載の天井板落下防止方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の天井板落下防止構造及び天井板落下防止方法によれば、既存の吊天井に対して、天井裏側からの施工が可能であると共に、天井板の割れの発生の低減や、天井板が割れた場合にもその落下を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る実施形態の天井板落下防止構造の概略を示す斜視図。
図2】実施形態の天井板落下防止構造の概略を断面的に示す図
図3】実施形態の天井板落下防止構造の施工手順を説明する図
図4】天井板落下防止構造の別の一例の概略を断面的に示す図
図5】天井板落下防止構造の別の一例の概略を断面的に示す図
図6】落下防止具の例を示す図
図7】落下防止具の別の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0023】
<実施形態1>
図1は、本発明に係る実施形態1の天井板落下防止構造の概略を示す斜視図であり、図2は、図1のA-A線に沿って見た場合における、概念的な断面図である。
本実施形態の天井板落下防止構造は、既存の建物の吊り天井に対する耐震補強(落下防止)のためのものである。在来工法における吊り天井は、一般的に、天井スラブ(若しくは上階スラブ)から吊り下がっている吊ボルト21に螺着されるハンガー25によって野縁受け22が保持され、この野縁受け22に対してクリップ24(クリップ24s及びクリップ24w)により野縁23(野縁23s及び野縁23w)が取り付けられる。野縁23は野縁受け22に対して直交する向きで取り付けられ、これにより格子状の天井下地材が形成される。図1では、シングル野縁23sとダブル野縁23w及び、それぞれに対応するクリップ24sとクリップ24wを示している。そして、石膏ボード等で構成される天井板27が、野縁23に対してネジ留め等によって取り付けられることで吊り天井が構成されている。
本実施形態の天井板落下防止構造の適用対象としては、特に、特定天井が挙げられる。特定天井とは、平成25年国土交通省告示第771号において地震時の振動で脱落する可能性があるとされている天井であり、床面からの高さが6mより高く、かつ、水平投影面積が200mより大きく、かつ、単位面積あたりの質量が2kg/mより大きいものである。
【0024】
本実施形態の天井板落下防止構造の基本的な構造は、図1、2に示されるように、天井板27の天井裏側となる面の、各野縁23の間において、索体12が埋め込まれている面材11を、天井板27に面接合させるものである。なお、図1においては、中央付近の2列だけに索体12が埋め込まれている面材11が接合されているものとしている。
面材11は、第1のシート111と、第2のシート112と、第1のシート111と第2のシート112の間に埋め込まれた索体12と、によって構成されている。
第1のシートは、樹脂製のシート材であり両面に接着層が形成されたものである。第2のシートも第1のシートと同様に樹脂製のシート材であるが、第2のシートは接着層が下面のみに形成されたものである。
索体12は、ステンレスロープ(表面が樹脂によって被膜されたステンレスロープとしてもよい)によって構成される。索体12は基本的には野縁23と略平行となるように配置され、その両端は、躯体(壁、柱、梁など)に対して締結される。
【0025】
面材11は、図2に示されるように、落下防止具13によって、野縁23に対して掛止めされる。
図6(a)は、落下防止具13の斜視図である。落下防止具13は、面材11の落下を低減させるための金具であり、野縁23に対して掛止めされる断面コ字状の掛止部131と、掛止部131の両サイドに形成されるフランジ部132とを備える。
落下防止具13は、図2に示されるように、野縁23に対して掛止部131が掛止めされ、面材11にフランジ部132が埋め込まれて(第1のシート111と第2のシート112の間に埋め込まれて)使用される。これにより面材11の落下をより低減させるもの、即ち、当該面材11に接着されている天井板27の落下をより低減させるものである。
【0026】
次に図3を参照しつつ、本実施形態の天井板落下防止構造の施工手順について説明する。
手順1
まず、天井板27の上面(天井裏側の面)を清掃する(ブラシ掛けや研磨布掛け等)。
手順2(図3(a))
次に、第1のシート111を各野縁23の間の長手方向に沿って敷設していく。即ち、第1のシート111を天井板27の天井裏側となる面に面接合させるものである。本実施形態では、第1のシート111として、予め所定の幅でプレカットされたものであり、両面に接着層が形成されていると共に、当該接着層を保護する保護シートが設けられているものを使用する。“所定の幅”とは、野縁23の設置間隔として一般的な227mm、303mm、364mm等に基づく幅である。なお、プレカットしたものを用いるのではなく、現場にてサイズを合わせたカット作業を行うものであっても構わない。また、第1のシート111が接着層を有しておらず、現場にて接着剤を塗布するものであっても構わない。
手順3(図3(b))
次に、索体12と落下防止具13を設置する。索体12は、その両端が躯体(壁、柱、梁など)に届く長さのものが使用され、第1のシート111の上に設置されて、その両端が躯体(壁、柱、梁など)に締結される。索体12と躯体との締結は、各種の締結方法を適宜用いればよく、例えばコンクリートの壁面にアイボルトを打設し、特許第6009611号、特許第6185688号、特開2017-9121、特願2017-198255等におけるくさびクランプ等を用いて端末を加工した索体12を、シャックルを介して締結する等である。アイボルトに替えて、コンクリートの壁面等にアンカーボルトを打設し、当該アンカーボルトに金物(取り付け金具)をナットで取り付け、これに対して端末加工した索体12を締結するようにしてもよい。
索体12の躯体への締結作業は、手順4より後で行っても構わないが、躯体との締結によって索体12に張力を与えることができるため、手順4よりこれを先に行うことにより、索体12を直線状にした状態で面材11内に配することができる。なお、天井裏の状況によっては、索体12を直線的に配置できない場合もあるが、この場合においても、索体12が蛇行しない程度に引き込み作業をして(蛇行するような余長がないようにして)、索体12を配置することが好ましい。
落下防止具13は、野縁23に対して掛止部131が掛止めされるように設置される。
手順4(図3(c))
最後に、第2のシート112を、索体12と落下防止具13を覆うように敷設していく。本実施形態では、第1のシート111と同じく、第2のシート112として、予め所定の幅でプレカットされたものであり、片面に接着層が形成されていると共に、当該接着層を保護する保護シートが設けられているものを使用する。なお、現場にてサイズを合わせたカット作業を行うものや、第2のシート112が接着層を有しておらず、現場にて接着剤を塗布するものであっても構わない点も、第1のシート111と同様である。
所定の乾燥時間を経た後、施工状態をチェックして、作業を終了する。
【0027】
以上のごとく、本実施形態の天井板落下防止構造(若しくは天井板落下防止方法)によれば、既存の吊天井に対して、天井裏側からのみの施工が可能であり、工事中においても居室の利用が可能である。
また、索体が埋め込まれている面材を、天井板に対して全面的に面接合させるものであるため、天井板の割れの発生を低減でき、また仮に天井板に割れが発生した場合においても、そこから波及的に割れが生じてしまうことが低減され、且つ、割れた天井板が断片的に落下するようなことも低減される。即ち、単なる面材ではなく、索体が埋め込まれている面材が天井板に対して全面的に面接合させているため、仮に天井板に割れが発生した場合においても、索体があることにより波及的に割れが生じる範囲が限定され、且つ、索体による締結力により断片的な天井板の落下が生じることが低減されるものである。
これにより、天井板の部分脱落及び全体脱落の双方をより有効に防止できるものである。
【0028】
本実施形態では、第1のシート111及び第2のシート112が、樹脂製であるものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、必要な強度が所定の重量以下で得られるものであれば、例えば金属製、木製、布製(繊維シート)、等であってもよい。ただし、少なくとも、石膏ボードより脆性が高い(割れにくい)、非脆性の材料で形成されたものであることが好ましい。
また、本実施形態では面材11が、第1のシート111及び第2のシート112の2層構造であるものを例としたが、3層構造以上としても構わない。
【0029】
本実施形態では、面材11が、野縁23の間に敷設されるものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、例えば、面材11が野縁23を跨ぐように(野縁23を覆うように)敷設されるようにするものであっても構わない。
【0030】
<実施形態2>
実施形態1では、面材11が、シート状の部材である第1のシート111と第2のシート112によって構成されるものを例としたが、実施形態2では、流動性を有する樹脂材を天井板27の天井裏側に塗布することによって面材11を形成するものについて説明する。
既設の吊り天井の構造や、索体12、落下防止具13の構成については、実施形態1と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0031】
以下、本実施形態の天井板落下防止構造の施工手順について説明する。
なお、施工方法としては実施形態1と異なっているが、施工過程の図示としては実施形態1と大きな差はないため、図3に基づいて説明する。
【0032】
手順1
まず、天井板27の上面(天井裏側の面)を清掃する(実施形態1と同様)。
手順2(図3(a))
次に、各野縁23の間に樹脂材を塗布し、第1の樹脂層111を天井板27の天井裏側となる面に形成する。
手順3(図3(b))
次に、第1の樹脂層111が乾燥する前に、索体12と落下防止具13を設置する。索体12は、その両端が躯体(壁、柱、梁など)に届く長さのものが使用され、第1の樹脂層111の上に設置されて、その両端が躯体(壁、柱、梁など)に締結される。索体12と躯体との締結については、実施形態1と同様である。
落下防止具13は、野縁23に対して掛止部131が掛止めされるように設置される。
手順4(図3(c))
最後に、第1の樹脂層が乾燥する前に、索体12と落下防止具13を覆うように樹脂材を塗布し、第2の樹脂層112を形成する。これにより、索体12と落下防止具13のフランジ部132が埋め込まれた面材11が、天井板27に全面的に面接合されることとなる。
所定の乾燥時間を経た後、施工状態をチェックして、作業を終了する。
【0033】
以上のごとく、本実施形態によれば、索体12と落下防止具13のフランジ部132が埋め込まれた面材11が一体的に形成される。天井裏側からのみの施工が可能である点や天井板の部分脱落及び全体脱落の双方をより有効に防止できる点については、実施形態1と同様である。
なお、ここでは、第1の樹脂層111が乾燥する前に第2の樹脂層112を塗布することで両者が一体的に形成されるものを例としたが、第1の樹脂層111が乾燥した後に、第2の樹脂層112を塗布するものであっても構わない。
【0034】
本実施形態では、樹脂材が野縁23の間に塗布されるものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、例えば、樹脂材の塗布において野縁23も覆うように塗布するものであっても構わない。
【0035】
なお、各実施形態における索体12の設置作業では、野縁受け22と天井板27の間を通すようにして比較的長い距離の設置をする必要があり、作業性があまり良くない面がある。この作業の効率を上げるために、メッセンジャーワイヤーやPPロープ等を先に通しておき、複数の索体12をこれにつないで、メッセンジャーワイヤーやPPロープ等を引っ張って通すようにしてもよい。
また、索体12の設置は、第1のシート111の接着面や、乾燥していない第1の樹脂層111の上に対して行うものであり、従って、索体12を野縁受け22と天井板27の間を通すようにして設置する作業の作業性があまり良くない面がある。これに対し、索体12の設置作業の効率化のための筒状体(パイプ)を設けるようにしてもよい。図4に、このような例を示した。
筒状体14を第1のシート111の接着面や、乾燥していない第1の樹脂層111の上に設置し、筒状体14の中に索体12を通すことで、索体12の設置の作業効率を向上させるものである。なお、筒状体14に予めメッセンジャーワイヤーやPPロープ等を先に通しておくことで、前述と同様に、索体12を通す作業をより効率化することができる。
当該施工法とした場合、図4に示されるように、面材11に筒状体14が埋め込まれた状態となり、索体12が筒状体14の内部に配されていることになる。
【0036】
上記各実施形態では、落下防止具13として、フランジ部132を有しており、当該フランジ部132が面材11内に埋め込まれることで、面材11の落下を防止するものを例としたが、落下防止機能をより高めるために、落下防止具13同士を連結するようにしてもよい。図5に、このような例を示した。
落下防止具13を相互に連結する連結部材であって、面材11に埋め込まれる連結部材15を備えることによって、面材11の落下を防止する機能及び、天井板に割れが波及的に広がることを低減する機能、断片的な天井板の落下が生じることを低減する機能のそれぞれを高めることができる。
連結部材15はステンレスロープ等によって構成され、索体12と同様に、第1のシート111の接着面や、第1の樹脂層111の上に載置されることによって、面材11に埋め込む構成とすることができる。
【0037】
また、落下防止具13と、面材11との接合力を高めるために、フランジ部132の表面積を大きくするようにしてもよい。図6(b)、(c)に、このような例を示した。
図6(b)は、孔を設けたフランジ部132´とすることで、落下防止具13と、面材11との接合力を高めるものの例である。
図6(c)は、複数の枝状部材を設けたフランジ部132´´とすることで、落下防止具13と、面材11との接合力を高めるものの例である。
各実施形態においては、落下防止具が、野縁に掛止めされているものを例としたが、野縁受け、クリップ、ハンガー、吊ボルトの何れかに対して締結若しくは掛止めされるものであってよい。
【0038】
また、落下防止具を、野縁等に締結若しくは掛止めするのではなく(又は野縁への掛止め等に加えて)、躯体に対して直接又は他の部材を介して締結するものであってもよい。例えば、天井スラブ(若しくは上階スラブ)にアンカーボルトを打設して金物(取り付け金具)を取り付け、これと落下防止具をステンレスロープ等で締結するようにしてもよい。図7にはこのような締結を行うための落下防止具の例を示した。図7(a)~(c)に示した各落下防止具は、図6(a)~(c)の各落下防止具の上部に、索体(ステンレスロープ等)締結用の穴が形成された接続部133を設けたものである。
図7(a)~(c)に示した各落下防止具を、天井スラブ等の躯体に設けた金物に締結した索体等によって吊るすような構成とすることにより、野縁等にかかる負荷を低減できるため、より好ましいものである。
なお、落下防止具13を用いることにより、上述のごとくより落下防止機能が高められるものであるが、索体が埋め込まれている面材を天井板に対して全面的に面接合させることのみによっても、落下防止機能を得ることはできるため、落下防止具13は必須の要素ではない。
【0039】
各実施形態においては、索体12が、その両端部を除いて面材11の中に埋め込まれているものを例としたが、本発明をこれに限るものではない。索体12が面材11に対して必要な強度を持って接合されているものであればよく、例えば、索体12が面材11から一部露出している場合等であっても構わない。
また、索体12や連結部材15としてステンレスロープを例としたが、本発明をこれに限るものではない(各種の鋼線や、必要な強度を有するものであれば繊維ロープ等であっても構わない)。
各実施形態においては、その図示として、索体12が野縁23の間に2本配されているものと例としているが、本発明をこれに限るものではなく、3本以上(或いは1本)であっても構わない。また、面材に配する索体として格子状若しくは網状に配するようなものであっても構わない。
【符号の説明】
【0040】
11...面材
111...第1のシート(第1の樹脂層)
112...第1のシート(第2の樹脂層)
12...索体
13...落下防止具
14...筒状体
15...連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7