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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】電力需要管理装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20220301BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
H02J3/14 130
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018104358
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019213251
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 瑞
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070131(JP,A)
【文献】特表2014-517365(JP,A)
【文献】国際公開第2016/186081(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-10/10
G06Q30/00-30/08
G06Q50/00-50/20
G06Q50/26-99/00
G16Z99/00
H02J3/00-5/00
H02J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力抑制の要請の対象となる需要家の設備の運転状況のデータを需要家側の管理システムから受信するように構成された設備データ受信部と、
前記需要家の設備のうち標準の電力抑制制御グループとして決定された設備の情報と、電力抑制予備グループとして決定された設備の情報とを予め記憶するように構成された設備グループ記憶部と、
前記標準の電力抑制制御グループに電力抑制制御を適用したときの電力削減量の総和を、前記需要家の目標の電力削減量として予め記憶するように構成された需要家情報記憶部と、
電力抑制制御を実行する際に、前記運転状況のデータに基づいて、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成可能かどうかを判定するように構成された削減量達成可否判定部と、
前記需要家の設備のうち、電力抑制制御の対象となる設備を選択するように構成された制御対象決定部と、
この制御対象決定部によって決定された設備において電力抑制制御が実施されるよう前記需要家に対して要請するように構成された電力抑制要請部とを備え、
前記制御対象決定部は、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成可能と判定された場合は、前記標準の電力抑制制御グループの全ての設備を電力抑制制御の対象として選択し、前記目標の電力削減量を達成不可能と判定された場合は、前記標準の電力抑制制御グループの正常運転中の全ての設備と、前記電力抑制予備グループの正常運転中の1乃至複数の設備とを組み合わせて、電力抑制制御の実施による電力削減量が、前記目標の電力削減量に最も近くなるように電力抑制制御の対象を選択することを特徴とする電力需要管理装置。
【請求項2】
請求項1記載の電力需要管理装置において、
前記削減量達成可否判定部は、前記標準の電力抑制制御グループの全ての設備が正常運転中の場合、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成可能と判定し、前記標準の電力抑制制御グループの設備のうち少なくとも1つが停止あるいは故障中の場合、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成不可能と判定することを特徴とする電力需要管理装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の電力需要管理装置において、
前記設備グループ記憶部は、前記標準の電力抑制制御グループの設備の情報および前記電力抑制予備グループの設備の情報として、電力抑制制御の実施による各設備の電力削減量の情報を少なくとも記憶し、
前記制御対象決定部は、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成不可能と判定された場合に、前記設備グループ記憶部に記憶された情報に基づいて、前記電力抑制制御の対象を選択することを特徴とする電力需要管理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電力需要管理装置において、
前記電力抑制制御の対象として選択された設備に適用する電力抑制制御の内容を設備毎に決定するように構成された電力抑制制御決定部をさらに備え、
前記電力抑制要請部は、前記電力抑制制御決定部によって決定された電力抑制制御が前記制御対象決定部によって決定された設備において実施されるよう前記需要家に対して要請することを特徴とする電力需要管理装置。
【請求項5】
請求項4記載の電力需要管理装置において、
前記設備グループ記憶部は、前記標準の電力抑制制御グループの設備の情報および前記電力抑制予備グループの設備の情報として、各設備に適用される電力抑制制御の内容を指定する情報を少なくとも記憶し、
前記電力抑制制御決定部は、前記設備グループ記憶部に記憶されている情報に従って、前記電力抑制制御の対象の設備に適用する電力抑制制御の内容を決定することを特徴とする電力需要管理装置。
【請求項6】
電力抑制制御を実行する際に、電力抑制の要請の対象となる需要家の設備の運転状況のデータを取得する第1のステップと、
前記需要家の設備のうち標準の電力抑制制御グループとして決定された設備の情報を記憶する設備グループ記憶部と、前記標準の電力抑制制御グループに電力抑制制御を適用したときの電力削減量の総和を、前記需要家の目標の電力削減量として記憶する需要家情報記憶部と、前記運転状況のデータとを参照し、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成可能かどうかを判定する第2のステップと、
前記需要家の設備のうち、電力抑制制御の対象となる設備を選択する第3のステップと、
この第3のステップで決定した設備において電力抑制制御が実施されるよう前記需要家に対して要請する第4のステップとを含み、
前記第3のステップは、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成可能と判定された場合は、前記標準の電力抑制制御グループの全ての設備を電力抑制制御の対象として選択し、前記目標の電力削減量を達成不可能と判定された場合は、前記標準の電力抑制制御グループとして決定された設備の情報の他に、電力抑制予備グループとして決定された設備の情報を予め記憶する前記設備グループ記憶部を参照し、前記標準の電力抑制制御グループの正常運転中の全ての設備と、前記電力抑制予備グループの正常運転中の1乃至複数の設備とを組み合わせて、電力抑制制御の実施による電力削減量が、前記目標の電力削減量に最も近くなるように電力抑制制御の対象を選択するステップを含むことを特徴とする電力需要管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要家の電力需要を管理する技術に係り、特に電力抑制制御の対象となる需要家の設備を選択する電力需要管理装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力を消費する装置の稼働が集中する等の理由で、消費電力量が一時的に上昇し、電力の供給が逼迫した状況になると、電力の供給量が不足する状況になることを避けるために、電力供給側の主体から、消費電力量の調整を求めるデマンド制御の要求(消費電力量の調整要求)を行うことが提案されている(特許文献1参照)。以下、特許文献1に開示されているように、電力供給側からの要請に応じて需要家側が電力の使用を抑制するよう電力消費パターンを変化させることを、デマンドレスポンスとする。
【0003】
このようなデマンドレスポンスにおいては、ビル(需要家)の予め決められた設備を停止することで、その分の電力削減量(ネガワット)を、需要家が実施した節電成果としてカウントすることができる。しかしながら、需要家側の設備が電力抑制開始の段階で、既に停止していたり、故障していたりした場合、電力会社に申請していた量のネガワットを達成できないケースがあった。
【0004】
図4(A)、図4(B)は従来のデマンドレスポンスの問題点を説明する図である。図4(A)の例では、ビル100の、電力会社へ申請した電力抑制時の電力削減量が例えば200kWであり、電力抑制時に運転を停止したり抑制したりする設備101-A~101-Eが5つある例を示している。図4(A)の102は設備101-A~101-Eを制御するビル管理システム(BEMS:Building and Energy Management System)、103は電力会社と需要家との間で電力需要調整を行うアグリゲーションセンター104と通信を行うゲートウェイである。
【0005】
一方、図4(B)は、実際の電力抑制時に5つの設備101-A~101-Eのうち設備101-C,101-Eが既に停止していた例を示している。各設備101-A~101-Eの使用電力をそれぞれ40kWとすると、設備101-C,101-Eが既に停止していたことにより、設備101-A,101-B,101-Dを停止することによる電力削減量は120kWとなる。したがって、電力会社へ申請した電力削減量200kWを達成できないことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開WO2016/186081
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、目標の電力削減量を満たすように電力抑制制御の対象の設備を選択することが可能な電力需要管理装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電力需要管理装置は、電力抑制の要請の対象となる需要家の設備の運転状況のデータを需要家側の管理システムから受信するように構成された設備データ受信部と、前記需要家の設備のうち標準の電力抑制制御グループとして決定された設備の情報と、電力抑制予備グループとして決定された設備の情報とを予め記憶するように構成された設備グループ記憶部と、前記標準の電力抑制制御グループに電力抑制制御を適用したときの電力削減量の総和を、前記需要家の目標の電力削減量として予め記憶するように構成された需要家情報記憶部と、電力抑制制御を実行する際に、前記運転状況のデータに基づいて、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成可能かどうかを判定するように構成された削減量達成可否判定部と、前記需要家の設備のうち、電力抑制制御の対象となる設備を選択するように構成された制御対象決定部と、この制御対象決定部によって決定された設備において電力抑制制御が実施されるよう前記需要家に対して要請するように構成された電力抑制要請部とを備え、前記制御対象決定部は、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成可能と判定された場合は、前記標準の電力抑制制御グループの全ての設備を電力抑制制御の対象として選択し、前記目標の電力削減量を達成不可能と判定された場合は、前記標準の電力抑制制御グループの正常運転中の全ての設備と、前記電力抑制予備グループの正常運転中の1乃至複数の設備とを組み合わせて、電力抑制制御の実施による電力削減量が、前記目標の電力削減量に最も近くなるように電力抑制制御の対象を選択することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の電力需要管理装置の1構成例において、前記削減量達成可否判定部は、前記標準の電力抑制制御グループの全ての設備が正常運転中の場合、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成可能と判定し、前記標準の電力抑制制御グループの設備のうち少なくとも1つが停止あるいは故障中の場合、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成不可能と判定することを特徴とするものである。
また、本発明の電力需要管理装置の1構成例において、前記設備グループ記憶部は、前記標準の電力抑制制御グループの設備の情報および前記電力抑制予備グループの設備の情報として、電力抑制制御の実施による各設備の電力削減量の情報を少なくとも記憶し、前記制御対象決定部は、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成不可能と判定された場合に、前記設備グループ記憶部に記憶された情報に基づいて、前記電力抑制制御の対象を選択することを特徴とするものである。
また、本発明の電力需要管理装置の1構成例は、前記電力抑制制御の対象として選択された設備に適用する電力抑制制御の内容を設備毎に決定するように構成された電力抑制制御決定部をさらに備え、前記電力抑制要請部は、前記電力抑制制御決定部によって決定された電力抑制制御が前記制御対象決定部によって決定された設備において実施されるよう前記需要家に対して要請することを特徴とするものである。
また、本発明の電力需要管理装置の1構成例において、前記設備グループ記憶部は、前記標準の電力抑制制御グループの設備の情報および前記電力抑制予備グループの設備の情報として、各設備に適用される電力抑制制御の内容を指定する情報を少なくとも記憶し、前記電力抑制制御決定部は、前記設備グループ記憶部に記憶されている情報に従って、前記電力抑制制御の対象の設備に適用する電力抑制制御の内容を決定することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の電力需要管理方法は、電力抑制制御を実行する際に、電力抑制の要請の対象となる需要家の設備の運転状況のデータを取得する第1のステップと、前記需要家の設備のうち標準の電力抑制制御グループとして決定された設備の情報を記憶する設備グループ記憶部と、前記標準の電力抑制制御グループに電力抑制制御を適用したときの電力削減量の総和を、前記需要家の目標の電力削減量として記憶する需要家情報記憶部と、前記運転状況のデータとを参照し、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成可能かどうかを判定する第2のステップと、前記需要家の設備のうち、電力抑制制御の対象となる設備を選択する第3のステップと、この第3のステップで決定した設備において電力抑制制御が実施されるよう前記需要家に対して要請する第4のステップとを含み、前記第3のステップは、前記目標の電力削減量を前記標準の電力抑制制御グループで達成可能と判定された場合は、前記標準の電力抑制制御グループの全ての設備を電力抑制制御の対象として選択し、前記目標の電力削減量を達成不可能と判定された場合は、前記標準の電力抑制制御グループとして決定された設備の情報の他に、電力抑制予備グループとして決定された設備の情報を予め記憶する前記設備グループ記憶部を参照し、前記標準の電力抑制制御グループの正常運転中の全ての設備と、前記電力抑制予備グループの正常運転中の1乃至複数の設備とを組み合わせて、電力抑制制御の実施による電力削減量が、前記目標の電力削減量に最も近くなるように電力抑制制御の対象を選択するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、標準の電力抑制制御グループとして設備グループ記憶部に登録されている設備が電力抑制制御の開始以前に既に停止あるいは故障していた場合であっても、可能な限り目標の電力削減量を満たすように電力抑制制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施例に係るデマンドレスポンスシステムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施例に係るデマンドレスポンスシステムの動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の実施例に係るデマンドレスポンスシステムの電力需要管理装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図4図4は、従来のデマンドレスポンスの問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例に係るデマンドレスポンスシステムの構成を示すブロック図である。デマンドレスポンスシステムは、電力抑制の要請の対象となる需要家の施設であるビル1と、電力会社と需要家との間で電力需要調整を行うアグリゲータ事業者が運営するアグリゲーションセンター2とから構成される。
【0014】
ビル1には、例えば空調機や照明などの多数の設備10-A~10-Iと、設備10-A~10-Iを制御するビル管理システム(BEMS)11と、ネットワークを介してアグリゲーションセンター2と通信を行う通信機器であるゲートウェイ12とが設けられている。
【0015】
アグリゲーションセンター2には、電力需要管理装置20が設けられている。電力需要管理装置20は、設備データ受信部21と、設備データ記憶部22と、設備グループ記憶部23と、需要家情報記憶部24と、要請入力部25と、削減量達成可否判定部26と、制御対象決定部27と、電力抑制制御決定部28と、電力抑制要請部29とを備えている。
【0016】
電力需要管理装置20の設備グループ記憶部23には、ビル1(需要家)の標準の電力抑制制御グループとして需要家から予め申請された設備10-A~10-Eの識別情報と、これらの各設備10-A~10-Eに適用される電力抑制制御の内容を指定する制御情報と、この電力抑制制御の実施による各設備10-A~10-Eの電力削減量ER-A~ER-Eの情報と、前記電力抑制制御グループの代わりの電力抑制予備グループとして需要家から予め申請された設備10-F~10-Iの識別情報と、これらの各設備10-F~10-Iに適用される電力抑制制御の内容を指定する制御情報と、この電力抑制制御の実施による各設備10-F~10-Iの電力削減量ER-F~ER-Iの情報とが予め記憶されている。
【0017】
電力需要管理装置20の需要家情報記憶部24には、ビル1(需要家)の目標の電力削減量ERspの情報が予め記憶されている。この目標の電力削減量ERspは、設備グループ記憶部23に記憶されている標準の電力抑制制御グループの各設備10-A~10-Eの電力削減量ERの総和と等しい。したがって、設備10-A~10-Eの電力削減量ER-A~ER-Eと設備10-F~10-Iの電力削減量ER-F~ER-Iの総和は、目標の電力削減量ERspを上回るように設定されていることになる。
【0018】
なお、目標の電力削減量ERspと各設備10-A~10-Iの電力削減量ERと各設備10-A~10-Iに適用される電力抑制制御の内容とは、予め需要家からの申請に応じて決定され、設備グループ記憶部23と需要家情報記憶部24とに登録されている。
【0019】
ビル1に設けられたゲートウェイ12は、ビル管理システム11から設備10-A~10-Iの運転状況のデータを定期的に取得し、取得したデータをネットワークを介してアグリゲーションセンター2の電力需要管理装置20に送信する。運転状況のデータとしては、例えば設備10-A~10-Iの発停を示すデータ、設備10-A~10-Iの正常/異常(故障)を示すデータ、設備10-A~10-Iの使用電力を示すデータなどがある。電力需要管理装置20の設備データ受信部21は、ゲートウェイ12から定期的に送信されるデータを受信して設備データ記憶部22に格納する。
【0020】
図2は本実施例のデマンドレスポンスシステムの動作を説明するフローチャートである。電力需要管理装置20の要請入力部25は、電力会社からの電力抑制の要請をネットワークを介して受け付ける。
電力需要管理装置20は、要請入力部25が電力会社からの電力抑制の要請を受信すると(図2ステップS1においてYES)、ビル1(需要家)に要請する電力抑制制御の内容を以下のようにして決定する。
【0021】
最初に、電力需要管理装置20の削減量達成可否判定部26は、需要家情報記憶部24に記憶された目標の電力削減量ERspを、標準の電力抑制制御グループで達成可能かどうかを判定する。具体的には、削減量達成可否判定部26は、設備グループ記憶部23に標準の電力抑制制御グループとして記憶された各設備10-A~10-Eの最新の運転状況のデータを設備データ記憶部22から取得する(図2ステップS2)。そして、削減量達成可否判定部26は、各設備10-A~10-Eが正常運転中であれば、目標の電力削減量ERspを標準の電力抑制制御グループで達成可能と判定する(図2ステップS3)。
【0022】
電力需要管理装置20の制御対象決定部27は、目標の電力削減量ERspを標準の電力抑制制御グループで達成可能と判定された場合(ステップS3においてYES)、標準の電力抑制制御グループに属する設備10-A~10-Eを電力抑制制御の対象として選択する(図2ステップS4)。
【0023】
電力需要管理装置20の電力抑制制御決定部28は、電力抑制制御の対象として選択された設備10-A~10-Eに適用する電力抑制制御の内容を、設備グループ記憶部23に記憶されている制御情報に基づいて決定する(図2ステップS5)。
【0024】
設備グループ記憶部23に記憶されている電力抑制制御の種類としては、例えば空調機や照明などの設備の発停(ON/OFF)制御がある。また、別の電力抑制制御の種類として、例えば空調機などのように運転中に制御量(例えば室内温度)を制御設定値(例えば室内温度設定値)に追従させる設定値追従制御が行われる設備において、制御設定値を使用電力が減少する指定方向に指定幅だけ変更する設定値制御がある。設備グループ記憶部23には、このような電力抑制制御の内容を指定する制御情報が予め設備毎に登録されている。
電力抑制制御決定部28は、設備グループ記憶部23に記憶されている制御情報に従って、各設備10-A~10-Eに適用する電力抑制制御の内容を決定すればよい。
【0025】
電力需要管理装置20の電力抑制要請部29は、制御対象決定部27と電力抑制制御決定部28とによって電力抑制制御の対象の設備とこれに適用する電力抑制制御の内容とが決定されると、ビル1のゲートウェイ12に対して電力抑制を要請する制御信号をネットワークを介して送信する(図2ステップS6)。
【0026】
ステップS1で受信した、電力会社からの電力抑制の要請には、例えば電力抑制開始時間、電力抑制継続時間、電力削減量ERtotal等の内容が含まれている。一方、電力抑制要請部29から送信する制御信号には、電力抑制開始時間、電力抑制継続時間、電力抑制制御の対象の設備を指定する設備指定情報、この設備毎の電力抑制制御の内容を指定する制御指定情報などが含まれている。
【0027】
ビル1のゲートウェイ12を介して電力需要管理装置20からの制御信号を受信したビル管理システム11は、受信した制御信号に応じて電力抑制制御を行う。
例えばビル管理システム11は、設備指定情報で電力抑制制御の対象として指定された設備(標準の電力抑制制御グループの場合には設備10-A~10-E)のうち、制御指定情報で発停制御が指定されている設備については、電力抑制開始時間になった時点で運転を停止させ、電力抑制継続時間の経過後に運転を再開させる。
【0028】
また、ビル管理システム11は、電力抑制制御の対象として指定された設備のうち、制御指定情報で設定値制御が指定されている設備については、電力抑制開始時間になった時点で制御設定値を制御指定情報で指定された方向に指定された幅だけ変更し、電力抑制継続時間の経過後に制御設定値を元の値に戻す。
こうして、電力会社あるいはアグリゲータ事業者と需要家との間で予め取り決められた目標の電力削減量ERspを達成できるように電力抑制制御が行われる。
【0029】
一方、電力需要管理装置20の削減量達成可否判定部26は、設備グループ記憶部23に標準の電力抑制制御グループとして記憶された各設備10-A~10-Eの最新の運転状況のデータを設備データ記憶部22から取得した結果、各設備10-A~10-Eのうち少なくとも1つが停止あるいは故障中の場合、目標の電力削減量ERspを標準の電力抑制制御グループで達成不可能と判定する(図2ステップS3においてNO)。
【0030】
電力需要管理装置20の制御対象決定部27は、目標の電力削減量ERspを標準の電力抑制制御グループで達成不可能と判定された場合、設備グループ記憶部23に電力抑制予備グループとして記憶された各設備10-F~10-Iの最新の運転状況のデータを設備データ記憶部22から取得する(図2ステップS7)。
【0031】
そして、制御対象決定部27は、標準の電力抑制制御グループの設備10-A~10-Eのうち正常運転中の全ての設備と、電力抑制予備グループの設備10-F~10-Iのうち正常運転中の1乃至複数の設備とを組み合わせて、電力抑制制御の実施による電力削減量が、目標の電力削減量ERsp以上で、かつ電力削減量ERspに最も近くなるように電力抑制制御の対象を選択する(図2ステップS8)。
【0032】
例えば標準の電力抑制制御グループに属する設備10-Cと10-Eとが、電力抑制制御の開始以前に何らかの理由で既に停止していたとする。そして、設備グループ記憶部23には、電力抑制制御の実施による設備10-Cの電力削減量ER-Cが30kW、設備10-Eの電力削減量ER-Eが40kWと登録されていたとする。目標の電力削減量ERsp=200kWであったとすれば、70kW分の電力削減量が足りないことになる。
【0033】
一方、電力抑制予備グループに属する設備10-Fと10-Gとが正常運転中で、設備グループ記憶部23には、電力抑制制御の実施による設備10-Fの電力削減量ER-Fが30kW、設備10-Gの電力削減量ER-Gが40kWと登録されていたとする。
【0034】
したがって、標準の電力抑制制御グループに属する設備10-A,10-B,10-Dと電力抑制予備グループに属する設備10-F,10-Gとを組み合わせて、電力抑制制御の対象として選択すれば、目標の電力削減量ERsp=200kWを達成できることになる。こうして、制御対象決定部27は、電力抑制制御の対象を選択する。
【0035】
なお、制御対象決定部27は、設備10-A~10-Eのうち正常運転中の全ての設備に、設備10-F~10-Iのうち正常運転中の1乃至複数の設備を組み合わせたとしても、電力抑制制御の実施による電力削減量が、目標の電力削減量ERsp以上とならない場合には、電力抑制制御の実施による電力削減量が、電力削減量ERspに最も近くなるように電力抑制制御の対象を選択すればよい。
【0036】
次に、電力需要管理装置20の電力抑制制御決定部28は、ステップS5と同様に、電力抑制制御の対象として選択された設備10-A,10-B,10-D,10-F,10-Gに適用する電力抑制制御の内容を、設備グループ記憶部23に記憶されている制御情報に従って決定する(図2ステップS9)。
【0037】
電力需要管理装置20の電力抑制要請部29の動作はステップS6で説明したとおりである。
こうして、本実施例では、標準の電力抑制制御グループとして登録されている設備が電力抑制制御の開始以前に既に停止あるいは故障していた場合であっても、可能な限り目標の電力削減量ERspを満たすように電力抑制制御を行うことが可能となる。
【0038】
なお、本実施例では、ビル1のゲートウェイ12に対して電力抑制を要請する制御信号を送信するようにしているが、これに限るものではなく、電力抑制要請部29は、自動で電力抑制制御を実施しない需要家の既知の管理者に対して、電力抑制を要請する要請通知メールを送信するようにしてもよい。この要請通知メールには、電力抑制開始時間、電力抑制継続時間、電力抑制制御の対象の設備を指定する設備指定情報、この設備毎の電力抑制制御の内容を指定する制御指定情報などが記載されている。管理者は、受信した要請通知メールの内容に従って電力抑制制御を手動で実施することになる。
【0039】
また、本実施例では、1棟のビル1(需要家)を対象として説明したが、これに限るものではなく、複数の需要家を対象としてもよいことは言うまでもない。例えば電力会社から要請された電力削減量ERtotalが、単一の需要家の目標の電力削減量ERspを上回る場合には、単一の需要家で電力削減量ERtotalを満たすことができない。この場合、電力需要管理装置20は、複数の需要家を選択して、合計の電力削減量がERtotal以上になるようにすればよい。設備データ記憶部22と設備グループ記憶部23と需要家情報記憶部24には、上記で説明した情報が需要家毎に記憶されていることになる。こうして、図2で説明した処理を、選択した需要家毎に実施することにより、電力会社から要請された電力削減量ERtotalを維持することが可能となる。
【0040】
本実施例で説明した電力需要管理装置20は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図3に示す。コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インターフェース装置(以下、I/Fと略する)202とを備えている。I/F202には、設備データ受信部21のハードウェア、要請入力部25のハードウェア、電力抑制要請部29のハードウェア等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の電力需要管理方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、電力抑制制御を実行する際に電力抑制制御の対象となる需要家の設備を選択する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…ビル、2…アグリゲーションセンター、10-A~10-I…設備、11…ビル管理システム、12…ゲートウェイ、20…電力需要管理装置、21…設備データ受信部、22…設備データ記憶部、23…設備グループ記憶部、24…需要家情報記憶部、25…要請入力部、26…削減量達成可否判定部、27…制御対象決定部、28…電力抑制制御決定部、29…電力抑制要請部。
図1
図2
図3
図4