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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】歩行支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20220301BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
A61H3/04
A61H1/02 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018123553
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020000544
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】502281127
【氏名又は名称】株式会社ファテック
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英彦
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 淳輝
(72)【発明者】
【氏名】青野 孝行
(72)【発明者】
【氏名】松浦 年宏
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-093221(JP,A)
【文献】特開2003-093451(JP,A)
【文献】特開2012-125486(JP,A)
【文献】特開2018-057631(JP,A)
【文献】国際公開第2008/058534(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/04
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の歩行を支援する歩行支援装置であって、
ベースと、ベースに設けられた移動手段と、ベースに設けられた起立着座動作支援手段と、移動手段の制動構成部とを備え、
起立着座動作支援手段は、使用者が着座した状態から起立する際の動作、及び、使用者が起立した状態から着座する際の動作を支援する手段であり、
当該起立着座動作支援手段は、昇降部材と、昇降部材を昇降させる昇降駆動手段とを備え、
昇降部材は、昇降駆動手段に連結されて昇降動作を行う昇降体と、昇降体に取付けられて使用者を支持する支持部材とを備え、
制動構成部は、昇降体が昇降動作中においては移動手段に制動を掛け、かつ、昇降体が最上位置に到達した場合には移動手段の制動を解除するように構成された歩行支援装置において、
制動構成部は、移動手段の車輪の回転を停止させる制動動作状態と車輪の回転を許容する制動解除状態とに設定される制動手段と、制動手段を制動動作状態と制動解除状態とに設定する制御を行う制動制御手段とを備え、
制動制御手段は、カム機構により構成され、当該カム機構は、昇降体に設けられた原節と、制動手段に連結された従節とを備え、原節が従節に作用して制動手段を制動解除状態又は制動動作状態に設定するように構成されたことを特徴とする歩行支援装置。
【請求項2】
使用者の歩行を支援する歩行支援装置であって、
ベースと、ベースに設けられた移動手段と、ベースに設けられた起立着座動作支援手段と、移動手段の制動構成部とを備え、
起立着座動作支援手段は、使用者が着座した状態から起立する際の動作、及び、使用者が起立した状態から着座する際の動作を支援する手段であり、
当該起立着座動作支援手段は、昇降部材と、昇降部材を昇降させる昇降駆動手段とを備え、
昇降部材は、昇降駆動手段に連結されて昇降動作を行う昇降体と、昇降体に取付けられて使用者を支持する支持部材とを備え、
制動構成部は、昇降体が昇降動作中においては移動手段に制動を掛け、かつ、昇降体が最上位置に到達した場合には移動手段の制動を解除するように構成された歩行支援装置において、
制動構成部は、移動手段の車輪の周面に接触して車輪の回転を停止させる制動動作状態と車輪の周面から離れて車輪の回転を許容する制動解除状態とに設定される制動手段と、制動手段を制動動作状態と制動解除状態とに設定する制御を行う制動制御手段とを備え、
制動手段は、ベースに取付けられた取付板と、取付板に設けられた軸受孔と、車輪の周面と取付板との間に配置されて他端が取付板に固定されたコイルばねと、軸受孔及びコイルばねの円筒部を貫通するように設けられて一端面が車輪の周面と対向するように設けられた動作軸と、動作軸の一端側を貫通させる貫通孔を備えて当該貫通孔に動作軸の一端側を貫通させた状態で当該動作軸の一端側の周面及びコイルばねの一端に固定された力伝達部材と、ブレーキワイヤと、ブレーキワイヤの一端部と力伝達部材とを接続する接続部材とを備え、
制動制御手段は、カム機構により構成され、当該カム機構は、昇降体に設けられた原節と、ブレーキワイヤの他端部が固定された従節とを備え、原節が従節に作用して制動手段を制動解除状態又は制動動作状態に設定するように構成されたことを特徴とする歩行支援装置。
【請求項3】
制動構成部は、昇降体が最下位置に到達した場合に移動手段の制動を解除するように構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歩行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起立着座動作支援機能を備えた歩行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、起立着座動作支援機能を備えた歩行支援装置が知られている(特許文献1参照)。
当該歩行支援装置は、椅子等に座っている使用者の前方に配置された後、使用者あるいは使用者の補助者が、リモコン等の入力部を操作することによって、制御部は、歩行支援装置を起立動作支援モードに設定する。起立動作支援モードにおいては、制御部が制動手段(ブレーキ)を作動させて、ベースに設けられている移動手段としての複数の車輪の回転を停止させた状態で、使用者の起立動作支援を行う。この起立動作支援モードにおいては、歩行支援装置が不用意に移動せず、使用者は起立動作を安全に行うことができる。
また、使用者あるいは使用者の補助者が、起立支援動作が終了した後に、リモコン等の入力部を操作することによって、制御部は、歩行支援装置を歩行モードに設定する。歩行モードにおいては、制御部が制動手段の作動を解除するので、使用者は当該歩行支援装置の移動手段により移動しながらの歩行が可能となる。
また、着座動作支援時においては、使用者あるいは使用者の補助者が、リモコン等の入力部を操作することによって、制御部は、歩行支援装置を着座動作支援モードに設定する。着座動作支援モードにおいては、制御部が制動手段を作動させて、複数の車輪の回転を停止させた状態で、使用者の着座動作支援を行う。この着座支援動作においては、歩行支援装置が不用意に移動せず、使用者は着座動作を安全に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-57631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された歩行支援装置では、使用者の起立支援動作が終了した後に、移動手段の車輪の回転を停止させていた制動手段の作動を解除して、歩行支援装置を歩行モードに設定するためには、使用者の起立支援動作が終了した後に、使用者あるいは使用者の補助者が、リモコン等の入力部を操作しなければならない。即ち、補助者が使用者の起立支援動作の完了を確認した後にリモコン等の入力部を操作しなければならなかったり、あるいは、使用者が起立支援動作終了後に自らリモコン等の入力部を操作しなければならず、当該使用者の起立支援動作が終了した後の入力部への操作が、補助者や使用者にとって煩わしいという問題点があった。
本発明は、使用者の起立支援動作が終了した後に、補助者や使用者による操作を要することなく、歩行モードに移行するように構成された歩行支援装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る歩行支援装置は、使用者の歩行を支援する歩行支援装置であって、ベースと、ベースに設けられた移動手段と、ベースに設けられた起立着座動作支援手段と、移動手段の制動構成部とを備え、起立着座動作支援手段は、使用者が着座した状態から起立する際の動作、及び、使用者が起立した状態から着座する際の動作を支援する手段であり、当該起立着座動作支援手段は、昇降部材と、昇降部材を昇降させる昇降駆動手段とを備え、昇降部材は、昇降駆動手段に連結されて昇降動作を行う昇降体と、昇降体に取付けられて使用者を支持する支持部材とを備え、制動構成部は、昇降体が昇降動作中においては移動手段に制動を掛け、かつ、昇降体が最上位置に到達した場合には移動手段の制動を解除するように構成されたので、使用者の起立支援動作が終了した後に、補助者や使用者による操作を要することなく、歩行モードに移行する歩行支援装置を提供できる
さらに、制動構成部は、移動手段の車輪の回転を停止させる制動動作状態と車輪の回転を許容する制動解除状態とに設定される制動手段と、制動手段を制動動作状態と制動解除状態とに設定する制御を行う制動制御手段とを備え、制動制御手段は、カム機構により構成され、当該カム機構は、昇降体に設けられた原節と、制動手段に連結された従節とを備え、原節が従節に作用して制動手段を制動解除状態又は制動動作状態に設定するように構成されたので、少なくとも、使用者の起立支援動作が終了した後に、補助者や使用者による操作を要することなく、歩行モードに確実に移行する歩行支援装置を提供できる。
また、制動構成部は、移動手段の車輪の周面に接触して車輪の回転を停止させる制動動作状態と車輪の周面から離れて車輪の回転を許容する制動解除状態とに設定される制動手段と、制動手段を制動動作状態と制動解除状態とに設定する制御を行う制動制御手段とを備え、制動手段は、ベースに取付けられた取付板と、取付板に設けられた軸受孔と、車輪の周面と取付板との間に配置されて他端が取付板に固定されたコイルばねと、軸受孔及びコイルばねの円筒部を貫通するように設けられて一端面が車輪の周面と対向するように設けられた動作軸と、動作軸の一端側を貫通させる貫通孔を備えて当該貫通孔に動作軸の一端側を貫通させた状態で当該動作軸の一端側の周面及びコイルばねの一端に固定された力伝達部材と、ブレーキワイヤと、ブレーキワイヤの一端部と力伝達部材とを接続する接続部材とを備え、制動制御手段は、カム機構により構成され、当該カム機構は、昇降体に設けられた原節と、ブレーキワイヤの他端部が固定された従節とを備え、原節が従節に作用して制動手段を制動解除状態又は制動動作状態に設定するように構成された場合には、少なくとも、使用者の起立支援動作が終了した後に、補助者や使用者による操作を要することなく、歩行モードに確実に移行する歩行支援装置を提供できる。
さらに、制動構成部は、昇降体が最下位置に到達した場合に移動手段の制動を解除するように構成されたので、昇降体が最上位置、又は、最下位置のいずれかに位置する場合に、移動可能に設定される歩行支援装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】歩行支援装置を斜め後側から見た斜視図。
図2】歩行支援装置を斜め前側から見た斜視図。
図3】歩行支援装置を左横側から見た側面図。
図4】歩行支援装置を後側から見た図。
図5】制動制御手段の構成を示す分解斜視図。
図6】制動制御手段の動作説明図。
図7】制動構成部の動作説明図。
図8】支持台内に設けられた連結手段及び引出規制手段を示す断面図。
図9】引出規制手段を示す斜視図。
図10】引出規制手段の動作説明図。
図11】歩行支援装置の起立動作支援時の動作説明図。
図12】制動構成部の動作説明図。
図13】制動構成部の動作説明図。
図14】制動構成部の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1に係る歩行支援装置1は、図1図2に示すように、ベース2と、ベース2に設けられた移動手段3と、ベース2に設けられた起立着座動作支援手段4と、使用者Aが装着する例えばズボン等の装着具B(図11参照)と起立着座動作支援手段4とを連結する連結手段5と、移動手段3の制動構成部100と、連結手段5の引出規制手段200とを備えて構成される。
尚、以下、当該歩行支援装置1を使用する要介護者、障害者、リハビリ訓練者等の使用者Aの前側を「前」、左側を「左」、右側を「右」、後側を「後」と定義して説明する。
【0008】
ベース2は、例えば断面円形状の鉄パイプ等を凹字やU字のような形状に形成したベースフレームにより構成される。ベースフレームは、上方側から見た場合には、凹字やU字の下側が歩行支援装置1の前方に位置されて、凹字やU字の左右の上端が歩行支援装置1の後方の左右に位置された逆凹字状や逆U字状に見えるように構成されている。
即ち、ベース2は、左側ベースを形成するベースフレーム左部2aと、右側ベースを形成するベースフレーム右部2bと、前側ベースを形成するベースフレーム前部2cとを備え、ベースフレーム左部2aがベースフレーム前部2cの左端から後方に延長するとともに、ベースフレーム右部2bがベースフレーム前部2cの右端から後方に延長するように構成されている。
【0009】
移動手段3は、複数の旋回キャスター(自在キャスター)31,31…により構成される。
例えば、図1図2に示すように、移動手段3は、ベースフレーム左部2aの後端側、及び、ベースフレーム右部2bの後端側にそれぞれ設けられた後側旋回キャスター31R,31Rと、ベースフレーム前部2cの左右側にそれぞれ設けられた前側旋回キャスター31F,31Fとにより構成される。
当該旋回キャスター31は、例えば、車輪32が床面等の路面Rと平行(水平)に延長する中心軸(シャフト)33を介して回転可能なようにフォーク34に取付けられ、かつ、フォーク34が路面Rと垂直に延長する中心軸(シャフト)35を介して当該中心軸35周りを回転可能なように取付座36を介してベース2に取付けられた構成である。
また、例えば、旋回キャスター31のうち、後側旋回キャスター31R,31Rは、後述する制動構成部100によって、車輪32の回転が停止するように構成されている。
【0010】
起立着座動作支援手段4は、装着具Bを介して連結手段5に連結された使用者Aが着座した状態から起立する際の動作、及び、装着具Bを介して連結手段5に連結された使用者Aが起立した状態から着座する際の動作を支援する手段である。
当該起立着座動作支援手段4は、ベース2のベースフレーム前部2cの左右の中央側より立ち上がるように設けられた固定支柱6と、昇降部材7と、昇降部材7を固定支柱6に沿って昇降させる昇降駆動手段8と、固定支柱6に着脱自在に取付けられた昇降ガイド手段9とを備える。
【0011】
固定支柱6は、例えば、角柱状に形成され、下端側が図外の取付ブラケット、ボルト及びナット等の固定手段によって、ベースフレーム前部2cの左右の中央側より斜め前方に立ち上がるように、当該ベースフレーム前部2cの左右の中央側に固定されている。
【0012】
図1図3に示すように、昇降部材7は、昇降駆動手段8に連結されて昇降動作を行う昇降体10と、昇降体10にヒンジ70を介して回転可能に取付けられた支持部材20とを備える。
【0013】
図3図4に示すように、昇降駆動手段8は、例えば、固定支柱6の後面61に設けられたボールねじ機構81により構成される。
ボールねじ機構81は、固定支柱6の後面61と平行に対向して上下方向に延長するように設けられたねじ軸82と、ねじ軸82を回転させるモータ83と、モータ83が固定されて固定支柱6に固定されるモータマウント84と、固定支柱6に固定されてねじ軸82の下端部に形成された回転軸部を回転可能に支持する軸受装置85と、ねじ軸82の下端部に形成された回転軸部の下端とモータ83の回転軸とを連結するカップリング86と、ねじ軸82に取付けられてねじ軸82の回転により上下方向に移動するナット87とを備えて構成される。
【0014】
昇降体10は、ナット87の後面88に取付けられて上下左右方向に延長する板により構成される。
従って、ボールねじ機構81のモータ83の回転がカップリング86を介してねじ軸82に伝達されてねじ軸82が回転することにより、ナット87及び昇降体10が昇降する。ボールねじ機構81では、周知のように、ねじ軸82とナット87との間に図外の多数のボールが介在するように設けられて、ねじ軸82とナット87との摩擦を軽減させた構成となっているため、昇降体10がスムーズに昇降する。
当該昇降体10には後述する原節(カム)130が設けられており、かつ、当該昇降体10の後面12には支持部材20がヒンジ70,70を介して回転可能に取付けられている。
【0015】
支持部材20は、固定支柱6に沿った方向に延長する可動支柱21と、可動支柱21の上端側より後方に延長するように設けられて使用者Aを支持する支持台22とを備える。
【0016】
可動支柱21は、例えば、上下左右方向に延長する板材により形成される。可動支柱21を形成する板材の左右方向の横幅寸法は、固定支柱6の左右方向の横幅寸法よりも短い寸法に形成される。
当該可動支柱21は、例えば、下端側の左右の側面27,27よりそれぞれ突出するように設けられた円柱状のスライダ23,23を備えるとともに、上下方向の下側における左右側前面がヒンジ70,70を介して昇降体10の下側における後面12の左右側に連結されている。
【0017】
図1図2に示すように、可動支柱21の上面24には、歩行支援装置1の各電気部品への電源供給をオンオフするための電源オンオフ用の電源キースイッチ41、歩行支援装置1に起立動作支援を行わせるか着座動作支援を行わせるかを切替えるための切替スイッチ42を備える。
尚、可動支柱21の上面24は、例えば、前方から後方に向けて下方に延長する傾斜面に形成される。
【0018】
支持台22は、可動支柱21の上端側から左右方向に延長した後に左右側が後方に延長するように構成される。即ち、支持台22は、使用者Aが左右の前腕を載せたり、使用者Aが左右の手で掴んだりするためのものであり、使用者Aを下から支持する部分である。支持台22を上方側から見た場合に、ベース2と同様に、凹字やU字の下側が歩行支援装置1の前方に位置されて可動支柱21の上端側に連結され、凹字やU字の左右の上端が歩行支援装置1の後方に位置された逆凹字状や逆U字状に見えるように構成されている。言い換えれば、上方側から見た場合に逆凹字状や逆U字状に見えるように構成された支持台22は、前部22a,左部22b、右部22cとを備えて構成されている。
支持台22は、上面22tが例えば平面に形成されて、昇降時において最上位置(図7(c),図11(c)等参照)に到達した際には上面22tが例えば水平面を形成するように、可動支柱21の上端側に連結されている。即ち、支持台22の上面22tと可動支柱21の中心軸とのなす角度が例えば鋭角となるように、可動支柱21の上端側に支持台22が連結されている。
【0019】
支持台22は、例えば、図8に示すように、上面22tを形成する逆凹字状や逆U字状の天板22Xと、天板22Xの周縁より下方に延長するように設けられた側板22Yと、側板22Yの下端縁間を覆うように設けられた底板22Zとが組み合わされて構成され、天板22Xの下方に、天板22Xと側板22Yと底板22Zとで囲まれた中空空間22Hを有した中空構造により構成される。
【0020】
ヒンジ70は、例えば図3図4に示すように、昇降体10の後面12における下方左右側にそれぞれ設けられて互いに対向する一方の一対の軸受ブラケット71,71と、可動支柱21の前面25における下方左右側にそれぞれ設けられて互いに対向する他方の一対の軸受ブラケット72,72と、これら4つの軸受ブラケット71,71,72,72の軸受孔を貫通するように設けられて、一方の一対の軸受ブラケット71,71に固定されるか、又は、他方の一対の軸受ブラケット72,72に固定された回転中心軸73とにより構成される。
従って、昇降体10の昇降時において、可動支柱21に設けられた軸受ブラケット72,72が回転中心軸73を回転中心として回転することにより、可動支柱21の上下側が前後方向に動く。
即ち、可動支柱21は、上下方向の下側がヒンジ70,70を介して昇降体10に連結されて、昇降体10の昇降に伴って当該ヒンジ70の回転中心軸73を回転中心として上下側が前後方向に揺動可能なように構成されている。
【0021】
昇降ガイド手段9は、板部90と板部90に形成されたガイド溝91とを備える。
即ち、昇降ガイド手段9は、板面が前後方向及び上下方向に延長する板材により形成されて、前側の板面と固定支柱6の側面62とが接触した状態でボルト96等で固定支柱6の側面62に取付けられた板部90と、支持部材20の昇降時に可動支柱21の下側に設けられたスライダ23をガイドするガイド溝91とを備えた構成である。
つまり、昇降ガイド手段9は、可動支柱21の下側に設けられたスライダ23が入り込んで、昇降体10の昇降に伴う支持部材20の昇降時において、当該スライダ23の上下方向の移動をガイドするガイド溝91が形成された板材により構成される。
【0022】
尚、固定支柱6の側面62に対する昇降ガイド手段9の取付構造は、例えば、図1に示すように、固定支柱6の側面62に形成されたねじ穴95と、ボルト96を通すために昇降ガイド手段9に形成された図外の貫通孔又はねじ孔と、当該貫通孔又はねじ孔を通過して固定支柱6のねじ穴95に締結されるボルト96とを備えた構成にすればよい。
あるいは、固定支柱6の側面62より突出するように設けられた図外のねじ棒と、当該ねじ棒を通すために昇降ガイド手段9に形成された図外の貫通孔と、当該貫通孔を通過したねじ棒に螺着されて昇降ガイド手段9の板部90の板面に締結される図外のナットとで構成された昇降ガイド手段9の取付構造としてもよい。
【0023】
ガイド溝91は、例えば図3に示すように、上部側ガイド溝92、中央側ガイド溝93、下部側ガイド溝94が連続した構成となっている。
昇降ガイド手段9を構成する板部90が固定支柱6に取付けられた状態において、例えば、上部側ガイド溝92は固定支柱6から離れた位置において固定支柱6と平行に上下方向に延長する溝により形成され、下部側ガイド溝94は上部側ガイド溝92よりも固定支柱6に近い位置において固定支柱6と平行に上下方向に延長する溝により形成され、中央側ガイド溝93は上部側ガイド溝92の下端と下端側ガイド溝94の上端とを繋ぐ傾斜溝により形成される。
【0024】
尚、図1に示すように、昇降ガイド手段9が、固定支柱6の左右の側面62,62にそれぞれ取付けられるとともに、スライダ23が、可動支柱21の下側の左右の側面27,27よりそれぞれ突出するように設けられて、左右のスライダ23,23が左右の昇降ガイド手段9,9のガイド溝91,91にガイドされて移動するように構成されている。
従って、図7に示すように、昇降体10の支持部材20の昇降時においては、可動支柱21の左右下側がスライダ23とガイド溝91との係合により支持された状態で昇降することになるので、支持部材20の昇降動作、即ち、起立着座支援動作が安定かつ確実に行われる歩行支援装置1となる。
【0025】
以上のように構成された歩行支援装置1によれば、モータ83を駆動させることで、昇降体10が昇降し、昇降体10にヒンジ70を介して回転可能に連結された支持部材20が昇降する。この昇降動作の際には、支持部材20の可動支柱21の下端側に設けられたスライダ23が昇降ガイド手段9のガイド溝91にガイドされて移動する。
尚、ガイド溝91の形態の異なる昇降ガイド手段9を作製しておいて、昇降ガイド手段9を取り換えることによって、支持部材20の昇降時の動きに伴う支持台22の動きが、使用者Aの挙動に合わなかったり、使用者Aの好みに合わなかった場合等、支持部材20の昇降時の動きに伴う支持台22の動きを使用者Aの挙動や使用者Aの好みに合ったものに選択できるようになる。つまり、ガイド溝91の形態を選択することによって、使用者Aの挙動や使用者Aの好みに合った起立着座動作支援を行える歩行支援装置1を提供できるようになる。
【0026】
移動手段3の制動構成部100は、昇降体10が昇降動作を行う起立支援動作中又は着座支援動作中においては移動手段3に制動を掛け、かつ、起立支援動作が終了して昇降体10が最上位置に到達した場合には移動手段3の制動を解除するように構成されている。
【0027】
図1図3に示すように、移動手段3の制動構成部100は、旋回キャスター31の車輪32の周面38に接触して車輪32の回転を停止させる制動動作状態と車輪32の周面38から離れて車輪32の回転を許容する制動解除状態とに設定される制動手段110と、制動手段110を制動動作状態と制動解除状態とに設定する制御を行う制動制御手段120とを備える。
【0028】
制動手段110は、例えば、ベースフレーム左部2aの後端側に設けられた後側旋回キャスター31Rの車輪32、及び、ベースフレーム右部2bの後端側に設けられた後側旋回キャスター31Rの車輪32の個々に対応して個別に設けられる。
【0029】
制動手段110は、例えば、後側旋回キャスター31Rの車輪32よりも前方に位置するベース2の下面より下方に突出するように当該ベース2に取付けられた取付板111と、取付板111に形成された図外の貫通孔を貫通するように設けられて当該取付板111に取付けられた軸受部112と、取付板111と車輪32の周面38との間に配置されて他端が軸受部112のフランジ113に固定された圧縮コイルばね114と、軸受部112の軸受孔及び圧縮コイルばね114の円筒部(圧縮コイルばね114の円筒状内側空間)を貫通するように設けられて一端面115が車輪32の周面38と対向するように設けられた動作軸116と、動作軸116の一端側を貫通させる図外の貫通孔を備えて当該貫通孔に動作軸116の一端側を貫通させた状態で当該動作軸116の一端側の周面及び圧縮コイルばね114の一端に固定された力伝達部材117と、ブレーキワイヤ118と、ブレーキワイヤ118の一端部と力伝達部材117とを接続する接続部材119とを備えた構成である。
【0030】
尚、軸受部112を設ける代わりに、取付板111を貫通する貫通孔により形成された軸受孔を設けるようにして、動作軸116の他端側が当該軸受孔を貫通するように動作軸116を設置するとともに、圧縮コイルばね114の他端を取付板111に固定するようにしてもよい。
【0031】
制動制御手段120は、例えばカム機構により構成される。
図3図5図6に示すように、制動制御手段120を構成するカム機構は、例えば昇降体10の前面11における右側上端部の位置に取付けられた原節(カム)130と、従節140とを備えた構成である。
即ち、昇降体10が昇降することによって原節130が上下移動し、当該原節130の上下移動に伴って従節140が前後方向に移動するように構成されている。
【0032】
従節140は、例えば、固定支柱6の右側の側面62における上端側に取付けられたスライドガイド141を介して前後方向に移動可能に設けられたスライド板142と、スライド板142の後側に設けられて原節130と接触する接触子(ローラ)143と、スライド板142の前端側に設けられたワイヤ端固定部144とを備える。
接触子143は、中心線145が左右方向に延長する円柱により形成され、当該接触子143において原節130と接触する部分は、円柱の周面により構成される。
【0033】
例えば、スライドガイド141には、前後方向に延長するガイド溝146が形成されており、スライド板142には、前後方向に延長してガイド溝146に係合する係合突部147が形成されている。このガイド溝146と係合突部147とが係合するように、スライド板142がスライドガイド141に取付けられていることにより、スライド板142が前後方向に移動可能に構成されている。
【0034】
原節130は、上端から斜め前方に傾斜して下るように形成された傾斜面131と、傾斜面131の下縁から下方に延長して固定支柱6の前面63と平行な面に形成された制動解除面132とを備える。
【0035】
ブレーキワイヤ118は、被覆チューブ135と、被覆チューブ135の中空部を貫通するように設けられて両端側が被覆チューブの両端より突出して露出するように構成されたワイヤ136とで構成される。
ブレーキワイヤ118は、被覆チューブ135の一端が取付板111に固定されて、この被覆チューブ135の一端より突出するワイヤ136の一端が接続部材119に固定されるとともに、被覆チューブ135の他端が固定支柱6の前面63における上端側に設けられたチューブ端固定板149に固定されて、この被覆チューブ135の他端より突出するワイヤ136の他端が従節140のワイヤ端固定部144に固定される。
【0036】
例えば、図3に示すように、被覆チューブ135の端部には、外周にねじ部を備えたチューブ端固定用筒150が取付けられ、当該チューブ端固定用筒150を接続部材119取付板111やチューブ端固定板149に形成された貫通孔に通した状態で当該貫通孔を挟んで当該チューブ端固定用筒150の外周のねじ部に設けておいたナット151,151を締結することにより、被覆チューブ135の端部が取付板111やチューブ端固定板149に固定される。
また、チューブ端固定用筒150から突出するワイヤ136の端部にも同様に、外周にねじ部を備えたワイヤ端固定用筒152が取付けられ、当該ワイヤ端固定用筒152を接続部材119やワイヤ端固定部144に形成された貫通孔に通した状態で当該貫通孔を挟んで当該ワイヤ端固定用筒152の外周のねじ部に設けておいたナット153,153を締結することにより、ワイヤ136の端部が接続部材119やワイヤ端固定部144に固定される。
尚、ブレーキワイヤ118は、例えば、固定支柱6、ベース2の内側に通されて、一端側がベースフレーム左部2a、又は、ベースフレーム右部2bに形成された引き出し孔を介して外部に引き出されて取付板111及び接続部材119に固定され、かつ、他端側が固定支柱6の上端に形成された開口65を介して外部に引き出されてチューブ端固定板149及びワイヤ端固定部144に固定されている。
【0037】
制動手段110は、通常は、圧縮コイルばね114のばね力によって動作軸116の一端面115が車輪32の周面38に押し付けられて車輪32の回転を停止させた制動動作状態となっている。そして、制動手段110は、ブレーキワイヤ118を牽引した場合に、動作軸116の一端面115が車輪32の周面38から離れて車輪32の回転を許容する制動解除状態となるように構成されている。
【0038】
以上のような制動構成部100を備えた歩行支援装置1においては、図6(a),図7(a)に示すように、昇降体10が最下位置にある場合、及び、図7(b)に示すように、昇降体10が昇降動作を行う支援動作中(起立支援動作中又は着座支援動作中)において、原節130と従節140の接触子143とが接触していない場合には、圧縮コイルばね114のばね力によって動作軸116の一端面115が車輪32の周面38に押し付けられて車輪32が回転できないような状態、つまり、後側旋回キャスター31Rの車輪32に制動(ブレーキ)が掛けられた状態に維持される。即ち、制動手段110が制動動作状態に設定される。
そして、昇降体10が上昇する過程において原節130の傾斜面131と従節140の接触子143とが接触した後、図6(b),図7(c)に示すように、昇降体10が最上位置に到達して、原節130の制動解除面132と従節140の接触子143とが接触した歩行モードになった場合には、原節130が従節140を前方(所定の方向)に移動させてブレーキワイヤ118が牽引されて、動作軸116の一端面115が車輪32の周面38から離れて車輪32の回転が許容される。即ち、制動手段110が制動解除状態に設定され、歩行支援装置1が移動手段3により移動可能となる。
【0039】
実施形態1に係る歩行支援装置1によれば、移動手段3の制動構成部100を備えたので、昇降体10が最下位置にある時、及び、起立支援動作中、着座支援動作中においては、制動手段110が移動手段3に制動を掛ける制動動作状態に設定されて、移動手段3の車輪32が回転しない制動状態に維持される。従って、連結具51の着脱動作時、起立支援動作中、着座支援動作中において、歩行支援装置1が不用意に移動せずに、安定するので、安全が図れる。
そして、起立支援動作が終了して昇降体10が最上位置に到達した場合には、原節130が従節140に作用して制動手段110が自動的に制動解除状態に設定され、歩行支援装置1が歩行モードに移行するので、使用者Aは歩行支援装置1に繋がれた状態での歩行が可能となる。
即ち、実施形態1に係る歩行支援装置1によれば、使用者Aの起立支援動作が終了した後に、補助者や使用者Aによる操作を要することなく、歩行モードに移行するように構成された歩行支援装置1を提供できるようになった。
つまり、従来のような、使用者の起立支援動作が終了した後に、補助者や使用者による制動手段を解除するための煩わしい操作が不要となり、使用者Aの起立支援動作が終了した後に、自動的に制動解除状態となる歩行支援装置1を提供できるようになった。
【0040】
また、制動制御手段120をカム機構により構成し、当該カム機構及びブレーキワイヤ118を用いて自動的に移動手段3の制動を解除する構成としたので、移動手段3の制動を解除するための電力や油圧等の専用動力源を不要とできる。
【0041】
連結手段5、及び、連結手段5の引出規制手段200は、図1図2に示すように、支持台22の左部22b、及び、支持台22の右部22cに、それぞれ設けられる。
【0042】
図8に示すように、連結手段5は、一端が一端取付部5aを介して支持台22に固定された、例えばコイルばねやぜんまいばね等の弾性支持手段5Aと、一端が弾性支持手段5Aの他端に接続された、例えば、ロープ、紐、帯材等の可撓性を有した連結部材5Bと、当該連結部材5Bの他端に設けられた連結部とを備えた構成である。
【0043】
弾性支持手段5Aとしては、特に、引張コイルばね48を用いることが好ましい。
連結部材5Bとしては、特に、合成繊維により形成されたロープ49を用いることが好ましい。
連結部としては、例えばフック等の連結具51を用いることが好ましい。
【0044】
左の連結手段5の弾性支持手段5Aは、例えば天板22Xと側板22Yと底板22Zとで囲まれた支持台22の左部22bにおける中空空間22Hの前側に位置する天板22の裏面22rに一端取付部5aを介して固定されている。
また、右の連結手段5の弾性支持手段5Aは、例えば天板22Xと側板22Yと底板22Zとで囲まれた支持台22の右部22cにおける中空空間22Hの前側に位置する天板22の裏面22rに一端取付部5aを介して固定されている。
【0045】
ロープ49(連結部材5B)は、一端が引張コイルばね48(弾性支持手段5A)の他端に連結され、他端側が、引出規制手段200、ガイド環53、支持台22の底板22Zあるいは側板22Yに形成された引出孔52を経由して、支持台22の中空空間22Hの外側に引き出されて、他端に連結具51が取付けられている。
連結具51は、引出孔52を通過できない大きさのフック等が使用されている。
【0046】
引出規制手段200は、ロープ49の他端側を支持台22から離れる方向に引出不能状態とするように設定されたり、又は、ロープ49の他端側を支持台22から離れる方向に引出可能状態とするように設定される。
具体的には、引出規制手段200は、図9図10に示すように、支持台22に取付けられてロープ49をガイドするガイド部材210と、操作レバー220と、操作レバー220を一方方向に付勢する付勢手段としての付勢ばね230とを備え、ロープ49の他端側を支持台22から離れる方向に引出不能状態とするように設定されたり、又は、ロープ49の他端側を支持台22から離れる方向に引出可能状態とするように設定される。
【0047】
図9図10に示すように、ガイド部材210は、例えば合成樹脂により形成され、支持台22の天板22Xの裏面22rに取付けられる取付部211と、取付部211から延長して互いに間隔を隔てて対向するように形成された各壁板部212,212と、各壁板部212,212を貫通するように形成された通孔213,213とを備える。
取付部211は、対向する各壁板部212,212の各通孔213,213に通された当該各通孔213,213間のロープ49の外面と対向する壁面214を有する。
当該ガイド部材210は、例えば取付部211の取付面215と支持台22の天板22Xの裏面22rとを接触させた状態でボルト等の固定具219,219で天板22Xに固定されている。
【0048】
操作レバー220は、操作軸225の一端である先端側に取付部221を備え、当該取付部221に押圧部222を備えた構成である。この操作レバー220の押圧部222が、ガイド部材210における壁面214と対向する各壁板部212,212間の開口223を介して各壁板部212,212間に入り込んだ状態となるように、支持台22の天板22Xの裏面22rに取付けられている。即ち、取付部221が、例えば支持台22の天板22Xの裏面22rから当該裏面22rと直交するように突出する回転中心軸231に取付けられたことにより、操作レバー220は、当該回転中心軸231を回転中心として回転可能に構成されている。当該回転中心軸231の先端部に形成された図外のねじ部には取付部221の抜け止め用のナット232が取付けられている。
尚、ガイド部材210の開口223側の面、及び、操作レバー220は、支持台22の左部22b及び右部22cの互いに対向する側板22Y,22Yの互いに向かい合う内側面に形成された開口22e,22e(図1図2図10参照)を介して、支持台22の外側に露出するように設けられたり、あるいは、支持台22の左部22b及び右部22cの側板22Y,22Yにおける各外側面に形成された図外の開口を介して、支持台22の外側に露出するように設けられる。
【0049】
付勢ばね230は、例えば一端がガイド部材210の取付部211に連結されるとともに、他端が操作レバー220の操作軸225に連結されている。
そして、通常、当該付勢ばね230により、操作軸225の他端226が側板22Yから離れる方向(一方方向)に付勢されて、操作レバー220の押圧部222が各通孔213,213間のロープ49の外面を押圧した状態に維持されることによって、押圧部222と壁面214との間にロープ49が挟み込まれた状態(ロック状態)となっている。
つまり、図10(a)に示すように、付勢ばね230のばね力により、操作レバー220には、押圧部222が壁面214に近付く方向への回転力が常時付与されて、ロープ49の他端側が引出不能状態(ロック状態)に設定される。
【0050】
また、図10(b)に示すように、付勢ばね230の力に抗して操作レバー220の操作軸225を握り、操作軸225の他端226を側板22Yに近づけて操作レバー220の押圧部222を壁面214から離れる方向(一方方向とは反対の方向)に回転させることによって、押圧部222によるロープ49の他端側の引出不能状態が解除されて、ロープ49の他端側を支持台22から離れる方向に引き出せる引出可能状態に設定される。
【0051】
尚、壁面214、及び、この壁面214と対向する押圧部222には、通孔213,213間に通されたロープ49の外面に食い込むような刃226,226が形成されている。当該刃226,226の向きは、ロープ49の他端側が引き出される方向においては抵抗が大きくなって、ロープ49が引張コイルばね48(弾性支持手段5A)のばね力によって引き戻される方向においては抵抗が小さくなるような向きに形成されている。
従って、操作レバー220の操作軸225を握ってロープ49の他端側が引出可能状態に設定されている場合には、ロープ49の他端側には引張コイルばね48のばね力により引張コイルばね48側に引っ張られる力が加わっているとともに、ロープ49の他端の連結具51を支持台22から離れる方向に人力で引張って引き出せるようになっている。
そして、操作レバー220の操作軸225から手を離すと、付勢ばね230のばね力によって押圧部222が壁面214に近付く方向に付勢されて、壁面214及び押圧部222に設けられた刃226,226がロープ49の外面に食い込んだ状態、即ち、ロープ49の他端側が引出不能状態に設定される。当該引出不能状態に設定されている場合には、ロープ49の他端の連結具51を支持台22から離れる方向に人力で引張ることができないが、ロープ49の他端側が引張コイルばね48のばね力により引張コイルばね48側に徐々に引っ張られて連結具51が支持台22に近付くことができるように構成されている。
即ち、使用者Aの装着具Bと連結具51とが連結された後、引出不能状態に設定された場合においては、ロープ49の弛みが徐々に解消されるようになっている。
【0052】
上述した連結手段5、及び、連結手段5の引出規制手段200を備えたことにより、装着具Bと連結具51との連結時においては、操作レバー220の操作軸225を握ることによって、ロープ49の他端の連結具51を容易に引出せるようになるので、ロープ49の他端に設けられた連結具51と使用者Aの装着する装着具Bの連結部Cとを連結する連結作業が容易となる。
そして、連結作業の終了後は、操作レバー220の操作軸225から手を離すことにより、押圧部222の刃226と壁面214の刃226とでロープ49が挟まれた状態となって、ロープ49の他端側が支持台22から離れる方向に引き出されることが阻止される。従って、使用者Aが装着具Bを介して歩行支援装置1のロープ49の連結具51に連結された後に、使用者Aの体勢が崩れにくくなり、使用者Aの転倒を防止できるようになる。また、この際、引張コイルばね48(弾性支持手段5A)のばね力によってロープ49に引き戻し力が加わわって、連結具51の位置が支持台22の引出孔52に徐々に近付くようにロープ49が引き戻されるので、ロープ49の弛みが徐々に解消される。
従って、使用者Aは、支援動作時においては、連結具51と連結された吊位置が支持台22に近付いた安定した状態で起立着座動作を行えるようになるとともに、歩行モードにおいては、転倒しないようになり、安全な歩行動作を行えるようになる。
即ち、連結具51と使用者Aの装着する装着具Bの連結部Cとを連結する連結作業を容易に行えるとともに、使用者Aが歩行支援装置1のロープ49の連結具51に連結された後の使用者Aの転倒防止機能を備えた歩行支援装置1となる。
【0053】
次に、実施形態1に係る歩行支援装置1の使用方法を説明する。
図11に示すように、装着具Bを装着した使用者Aがベッドや椅子等の着座部Dに着座した状態から起立する際の起立動作支援時においては、切替スイッチ42を起立動作支援側(昇降体10を上昇させる側)に設定してモータ83を駆動させることによって、昇降体10を最上位置に位置させて制動手段110を制動解除状態として歩行支援装置1を移動可能な状態に設定してから、歩行支援装置1を着座部Dの近くまで移動させる。その後、切替スイッチ42を着座動作支援側(昇降体10を下降させる側)に設定してモータ83を駆動させ、図11(a)に示すように、昇降体10を最下位置まで下降させることで、支持台22を後方に向けて下傾させた状態にする。そして、使用者A又は補助者が操作レバー220の操作軸225を握って、使用者Aが装着する装着具Bの連結部Cにロープ49の他端の連結具51が近付くように連結具51を引張り出す。この場合、連結具51を容易に引出せるので、ロープ49の他端に設けられた連結具51と使用者Aの装着する装着具Bの連結部Cとを連結する連結作業が容易となる。また、この連結作業中においては、制動構成部100により後側旋回キャスター31Rの車輪32に制動が掛けられた状態であるので、連結作業中に歩行支援装置1が不用意に移動してしまうことを防止でき、使用者Aは、安全に連結作業を行なうことができる。
【0054】
図11(b)に示すように、連結作業が終了した後に、操作レバー220の操作軸225から手を離して、切替スイッチ42を起立動作支援側に設定してモータ83を駆動させる。これにより、昇降体10が上昇するとともに、支持台22も姿勢を変えながら上昇し、支持台22に連結された使用者Aの起立支援動作が行われる。この起立支援動作中においては、制動手段110により後側旋回キャスター31Rの車輪32に制動が掛けられた状態(制動動作状態)であるので、使用者Aに対して、安定かつ安全に起立支援動作が行われるようになる。また、起立支援動作中においては、引出規制手段200により、ロープ49の他端側が支持台22から離れる方向に引き出されることが防止されるので、使用者Aの転倒を防止できるようになる。また、起立支援動作中においては、引張コイルばね48(弾性支持手段5A)のばね力によって連結具51の位置が支持台22の引出孔52に徐々に近付くようにロープ49が引き戻されて、ロープ49の弛みが徐々に解消されるので、使用者Aは、連結具51と連結された吊位置が支持台22に近付いた安定した状態で起立動作を行えるようになる。
【0055】
そして、図11(c)に示すように、昇降体10が最上位置に到達して起立支援動作が終了したならば、原節130の制動解除面132と従節140の接触子143とが接触することにより、ブレーキワイヤ118が牽引されて、制動手段110が自動的に制動解除状態に設定される。即ち、使用者Aの起立支援動作が終了した後に、補助者や使用者Aによる制動手段110の制動動作を解除するための煩わしい操作を要することなく、歩行支援装置1が歩行モードに移行し、使用者Aは歩行支援装置1に繋がれた状態での歩行が可能となる。
【0056】
さらに、着座時においては、切替スイッチ42を着座動作支援側に設定してモータ83を駆動させることにより、昇降体10が下降し、原節130と従節140の接触子143との接触が解除されることによって、制動手段110が自動的に制動動作状態に設定される。従って、着座支援動作中に歩行支援装置1が不用意に移動することが防止され、使用者Aに対して、安定かつ安全に着座支援動作が行われるようになる。
【0057】
尚、起立動作支援時においては、支持部材20の支持台22は、後端部が下がった状態から使用者Aの起立動作に合わせて徐々に上がるように姿勢を変化させながら上昇するので、使用者Aは自然な起立動作を行えるようになる。
また、着座動作支援時においては、支持部材20は、支持台22の上面22tが水平な状態あるいは水平に近い状態から、支持台22の後端部が使用者Aの着座動作に合わせて徐々に下がるように姿勢を変化させながら下降するので、使用者Aは自然な着座動作を行えるようになる。
【0058】
実施形態2
実施形態1では、昇降体10が最上位置に到達して歩行モードに設定された場合にのみ、制動手段110を制動解除状態に設定する制動構成部100を備えた歩行支援装置1を例示したが、図12に示すように、昇降体10が最上位置に到達して歩行モードに設定された場合、及び、昇降体10が最下位置に到達して連結時姿勢モードに設定された場合に、制動手段110を制動解除状態に設定するとともに、昇降体10が昇降動作を行う起立支援動作中、又は、着座支援動作中においては、制動手段110を制動動作状態に設定する制動構成部100を備えた歩行支援装置1としてもよい。
【0059】
当該実施形態2の制動構成部100の場合、制動制御手段120を、図12に示すように、歩行モード、及び、装着時姿勢モードの両方のモードにおいて、ブレーキワイヤ118を牽引するように動作する原節130及び原節130Rを具備したカム機構により構成すればよい。
【0060】
具体的には、制動制御手段120を構成するカム機構は、例えば昇降体10として実施形態1よりも上下方向に長い昇降体10を用い、当該昇降体10の前面11の右側における上下方向の中間部の位置に取付けられた原節(カム)130と、昇降体10の前面11における原節130の上方において当該原節130から一定距離離れた位置に取付けられた原節(カム)130Rと、従節140とを備えた構成とすればよい。
【0061】
原節130Rは、上端から下方に延長して固定支柱6の後面61と平行な面に形成された制動解除面132Rと、制動解除面132Rの下端から斜め後方に傾斜して下って昇降体10の前面11に到達するように形成された傾斜面131Rとを備える。
原節130は、傾斜面131Rの下端から下方に一定距離離れた位置である上端から斜め前方に傾斜して下るように形成された傾斜面131と、傾斜面131の下縁から下方に延長して固定支柱6の後面61と平行な面に形成された制動解除面132とを備える。
【0062】
実施形態2の歩行支援装置1によれば、図12(a)に示すように、昇降体10が最下位置に到達して連結時姿勢モードに設定された場合には、原節130Rの制動解除面132Rと従節140の接触子143とが接触した状態となる。これにより、原節130Rが従節140を前方(所定の方向)に移動させるので、ブレーキワイヤ118が牽引されることにより、動作軸116の一端面115が車輪32の周面38から離れて車輪32の回転が許容される。即ち、制動手段110が制動解除状態に設定されて、歩行支援装置1が移動手段3により移動可能となる。
そして、図12(b)に示すように、昇降体10が昇降動作中において原節130R:130と接触子143とが接触していない場合、即ち、接触子143が原節130Rと原節130との間に位置されている場合には、圧縮コイルばね114のばね力によって動作軸116の一端面115が車輪32の周面38に押し付けられて車輪32が回転できないような状態となる。つまり、制動手段110が制動動作状態に設定されて、後側旋回キャスター31Rの車輪32に制動が掛けられた状態に維持される。
さらに、図12(c)に示すように、昇降体10が最上位置に到達して歩行モードになった場合には、原節130の制動解除面132と接触子143とが接触し、原節130が従節140を前方(所定の方向)に移動させるので、ブレーキワイヤ118が牽引されることにより、動作軸116の一端面115が車輪32の周面38から離れて車輪32の回転が許容される。即ち、制動手段110が制動解除状態に設定されて、歩行支援装置1が移動手段3により移動可能となる。
【0063】
実施形態2に係る歩行支援装置1によれば、昇降体10が最上位置に到達して歩行モードに設定された場合、及び、昇降体10が最下位置に到達して連結時姿勢モードに設定された場合に、制動手段110が制動解除状態に設定されるので、ロープ49の他端に設けられた連結具51と使用者Aの装着する装着具Bの連結部Cとを連結する連結作業時において、歩行支援装置1を移動できるようになる。
【0064】
実施形態1においては、連結作業を行う際に歩行支援装置1を着座部Dの位置まで移動させる場合において、いちいち、歩行支援装置1を歩行モードに設定して移動した後に、連結作業時に歩行支援装置1を連結時姿勢モードに設定しなければならかった。しかしながら、実施形態2によれば、連結作業を行う際に歩行支援装置1を着座部Dの位置まで移動させる場合において、歩行支援装置1を連結時姿勢モードのまま移動させることができて、歩行支援装置1を着座部Dの位置まで移動させた後にすぐに連結作業を行うことができるようになる。
【0065】
実施形態1,2では、圧縮コイルばね114のばね力によって制動手段110を制動動作状態に設定するとともに、ブレーキワイヤ118を牽引して制動手段110を制動解除状態に設定する構成の制動構成部100を備えた歩行支援装置1を例示したが、以下に示す実施形態3(図13)、実施形態4(図14)のように、引張りコイルばね114Aのばね力に抗してブレーキワイヤ118を牽引することによって制動手段110を制動動作状態に設定するとともに、引張りコイルばね114Aのばね力(戻り力)によって制動手段110を制動解除状態に設定する構成の制動構成部100を備えた歩行支援装置1としてもよい。
【0066】
実施形態3
実施形態3では、図13に示すように、制動構成部100が、引張りコイルばね114Aを有した制動手段110を備えた構成において、昇降体10が最上位置に到達して歩行モードに設定された場合にのみ、制動手段110を制動解除状態に設定する歩行支援装置1とした。
【0067】
具体的には、制動手段110は、図13に示すように、動作軸116が後側旋回キャスター31Rの車輪32の後方側に配置されて、当該動作軸116の一端面115が引張りコイルばね114Aにより車輪32の周面38から離れる方向に付勢されて制動解除状態に設定され、かつ、ブレーキワイヤ118が牽引されて引張りコイルばね114Aが引っ張られることによって動作軸116の一端面115が車輪32の周面38に押し付けられて車輪32が回転できない制動動作状態に設定されるように構成されている。
【0068】
実施形態3の場合、カム機構を構成する原節130Xは、例えば昇降体10の前面11の右側における上端側の位置に設けられる。当該原節130Xは、上端から下方に延長して固定支柱6の後面61と平行な面に形成された制動面133と、制動面133の下端から斜め後方に傾斜して下って昇降体10の前面11に到達するように形成された傾斜面134とを備える。
【0069】
実施形態3の制動手段110は、図13(a)に示すように、昇降体10が最下位置にある場合、及び、図13(b)に示すように、昇降体10が昇降動作を行う支援動作中(起立支援動作中又は着座支援動作中)においては、原節130Xの制動面133と従節140の接触子143とが接触することで、ブレーキワイヤ118が牽引されて引張りコイルばね114Aが引っ張られるとともに、動作軸116の一端面115が車輪32の周面38に押し付けられて車輪32が回転できない制動動作状態に設定される。
そして、昇降体10が上昇する過程において従節140の接触子143が、原節130Xの傾斜面134を通過した後、昇降体10が最上位置に到達した場合、即ち、原節130と接触子143とが接触していない状態においては、図13(c)に示すように、制動手段110は、引張りコイルばね114Aのばね力(戻り力)によって、動作軸116の一端面115が車輪32の周面38から離れて車輪32の回転が許容される制動解除状態に設定される。即ち、歩行モードとなる。
従って、実施形態3の歩行支援装置1によれば、実施形態1の歩行支援装置1と同様な効果が得られる。
【0070】
実施形態4
実施形態4では、図14に示すように、制動構成部100が、引張りコイルばね114Aを有した制動手段110を備えた構成において、昇降体10が最上位置に到達して歩行モードに設定された場合、及び、昇降体10が最下位置に到達して連結時姿勢モードに設定された場合に、制動手段110を制動解除状態に設定する歩行支援装置1とした。
【0071】
実施形態4の場合、カム機構を構成する原節130Yは、例えば昇降体10の前面11の右側における上端側の位置に設けられる。
当該原節130Yは、昇降体10の前面11の上端から下方に一定距離離れた位置からから斜め前方に傾斜して下るように形成された傾斜面138と、当該傾斜面138の下端から下方に延長して固定支柱6の後面61と平行な面に形成された制動面139と、当該制動面139の下端から斜め後方に傾斜して下って昇降体10の前面11に到達するように形成された傾斜面137とを備える。
【0072】
実施形態4の制動手段110は、図14(a)に示すように、昇降体10が最下位置に到達して連結時姿勢モードに設定された場合、及び、図14(c)に示すように、昇降体10が最上位置に到達して歩行モードに設定された場合、即ち、原節130Yと接触子143とが接触していない状態においては、引張りコイルばね114Aのばね力(戻り力)によって、動作軸116の一端面115が車輪32の周面38から離れて車輪32の回転が許容される制動解除状態に設定される。
そして、図14(b)に示すように、昇降体10が昇降動作を行う支援動作中(起立支援動作中又は着座支援動作中)においては、原節130Yの制動面139と従節140の接触子143とが接触することで、ブレーキワイヤ118が牽引されて引張りコイルばね114Aが引っ張られ、動作軸116の一端面115が車輪32の周面38に押し付けられて車輪32が回転できない制動動作状態に設定される。
従って、実施形態4の歩行支援装置1によれば、実施形態2の歩行支援装置1と同様な効果が得られる。
【0073】
上述した各実施形態では、ブレーキワイヤーを用いた摩擦式ブレーキを備えた制動構成部100を例示したが、ドラムブレーキやディスクブレーキを用いた摩擦式ブレーキを備えた制動構成部100を用いてもよい。
即ち、本発明においては、制動制御手段120が、カム機構により構成され、当該カム機構は、昇降体10に設けられた原節と、ブレーキワイヤ180の他端部が固定された従節とを備え、原節が従節に作用して制動手段110を制動解除状態又は制動動作状態に設定するように構成されていればよい。
【0074】
また、電磁石を用いた電磁ブレーキを備えた制動構成部100を用いてもよい。この場合、上述したカム機構で電磁石を励磁する電源のオンオフを行う構成とすればよい。
即ち、本発明においては、制動制御手段120が、カム機構により構成され、当該カム機構は、昇降体10に設けられた原節と、制動手段110に連結された従節とを備え、原節が従節に作用して制動手段を制動解除状態又は制動動作状態に設定するように構成されされていればよい。
【0075】
尚、移動手段3は、車輪以外の移動手段であっても良い。例えば、車輪の代わりに球を備えたキャスター、キャタピラー等の移動手段であっても良く、制動をかけられるように構成された移動手段であればよい。
【0076】
また、本発明の歩行支援装置1は、連結手段5、及び、連結手段5の引出規制手段200を備えない構成、即ち、使用者Aと起立着座動作支援手段4とが連結手段5を介して連結されずに、使用者Aが支持台22に掴まったり、使用者Aが支持台22に身体を預けるようにして使用する歩行支援装置であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 歩行支援装置、2 ベース、3 移動手段、4 起立着座動作支援手段、
7 昇降部材、8 昇降駆動手段、10 昇降体、20 支持部材、32 車輪、
38 車輪の周面、100 制動構成部、110 制動手段、111 取付板、
114 圧縮コイルばね、114A 引張りコイルばね、115 動作軸の一端面、
116 動作軸、117 力伝達部材、118 ブレーキワイヤ、119 接続部材、
120 制動制御手段、130 原節(カム)、140 従節。
図1
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