(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】耐火構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
E04B1/94 H
(21)【出願番号】P 2018173960
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】金森 誠治
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-126849(JP,A)
【文献】特開2012-144962(JP,A)
【文献】特開2006-257752(JP,A)
【文献】特開2004-360444(JP,A)
【文献】特開2005-336963(JP,A)
【文献】米国特許第6226946(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質材料の表面に耐火層を備えた耐火構造であって、
耐火層は、複数の耐火板並設層が積層された積層構造により構成され、
耐火板並設層は、目地を介して並ぶように配置された複数の耐火板により構成され、
表面同士が互いに重なり合うように配置された一方の耐火板並設層の表面と他方の耐火板並設層の表面との間に到達する目地の開口のうち、木質材料側に位置される一方の耐火板並設層の目地の開口を覆って当該開口の両側に位置する耐火板の表面に到達するように設けられたメッシュシートと、
メッシュシートの網目開口に入り込んで、当該メッシュシートを一方の耐火板並設層の表面及び他方の耐火板並設層の表面に接着するとともに、一方の耐火板並設層の表面と他方の耐火板並設層の表面とを接着する接着剤とを備えたことを特徴とする耐火構造。
【請求項2】
木質材料の表面に耐火層を備えた耐火構造であって、
耐火層は、複数の耐火板並設層が積層された積層構造により構成され、
耐火板並設層は、隣り合う端面同士を対向させて形成された目地を介して同一平面上に並ぶように配置された複数の耐火板により構成され、
板面同士が互いに重なり合うように配置された一方の耐火板並設層の板面と他方の耐火板並設層の板面との間に到達する目地の開口のうち、木質材料側に位置される一方の耐火板並設層の目地の開口を覆って当該開口の両側に位置する耐火板の板面に到達するように設けられたメッシュシートと、
メッシュシートの網目開口に入り込んで、当該メッシュシートを一方の耐火板並設層の板面及び他方の耐火板並設層の板面に接着するとともに、一方の耐火板並設層の板面と他方の耐火板並設層の板面とを接着する接着剤とを備えたことを特徴とする耐火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の耐火板並設層が積層された積層構造により構成された耐火層を備えた耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物の木質下地の表面に、互いに隣り合う端面同士が接触するように当該端面同士を突き合わせて対向させたことにより形成された目地を介して同一平面上に並べられた複数の合板により構成された合板並設層を設け、当該合板並設層の表面に、互いに隣り合う端面同士が接触するように当該端面同士を突き合わせて対向させたことにより形成された目地を介して同一平面上に並べられた複数の石膏ボードにより構成された耐火板並設層としての第1の石膏ボード並設層を設け、当該第1の石膏ボード並設層の表面にアルミニウムシートを設け、このアルミニウムシートの表面に、隣り合う端面同士が目地を介して同一平面上に並べられた複数の石膏ボードにより構成された耐火板並設層としての第2の石膏ボード並設層を設けた構成の耐火構造が知られている(特許文献1の
図1乃至
図4等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した耐火構造では、アルミニウムシートを耐火板並設層としての第1の石膏ボード並設層の室内側の板面に接着剤等で張り付けることによって、当該第1の石膏ボード並設層の室内側の板面に到達する目地の開口を塞ぐようにしている。
しかしながら、当該アルミニウムシートは、一方のシート面が第1の石膏ボード並設層の室内側の板面に接着剤等で接着されているだけなので、接着力が弱く、火災時において、火熱が、第1の石膏ボード並設層に伝達されて、目地を介した両側の第1の石膏ボードが収縮するため、早期に、第1の石膏ボード並設層の目地が開いて、当該目地の開口を塞いでいた部分のアルミニウムシートが破損するので、火熱がこの開いた目地を介して木質下地に到達してしまうという課題があった。
即ち、木質材料により形成された下地等の表面側に複数の耐火板並設層が積層されて構成された耐火層を備えた従来の耐火構造においては、火災時において、木質材料により形成された下地側に位置される耐火板並設層の目地が早期に開いてしまうため、火熱がこの開いた目地を介して木質材料に早期に到達してしまうという課題があった。
本発明は、上記課題を解消すべく、木質材料の表面側に複数の耐火板並設層が積層されて構成された耐火構造において、火災時に、木質材料側に位置される耐火板並設層の目地が早期に開いてしまうことを防止できる耐火構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る耐火構造は、木質材料の表面側に耐火層を備えた耐火構造であって、耐火層は、複数の耐火板並設層が積層された積層構造により構成され、耐火板並設層は、目地を介して並ぶように配置された複数の耐火板により構成され、表面同士が互いに重なり合うように配置された一方の耐火板並設層の表面と他方の耐火板並設層の表面との間に到達する目地の開口のうち、木質材料側に位置される一方の耐火板並設層の目地の開口を覆って当該開口の両側に位置する耐火板の表面に到達するように設けられたメッシュシートと、メッシュシートの網目開口に入り込んで、当該メッシュシートを一方の耐火板並設層の表面及び他方の耐火板並設層の表面に接着するとともに、一方の耐火板並設層の表面と他方の耐火板並設層の表面とを接着する接着剤とを備えたことを特徴とする。当該耐火構造は、例えば、木質材料が柱躯体、梁躯体、階段躯体等である場合で、当該躯体等の表面側を囲むように耐火層が設けられる場合に適用される耐火構造である。
また、本発明に係る耐火構造は、木質材料の表面側に耐火層を備えた耐火構造であって、耐火層は、複数の耐火板並設層が積層された積層構造により構成され、耐火板並設層は、隣り合う端面同士を対向させて形成された目地を介して同一平面上に並ぶように配置された複数の耐火板により構成され、板面同士が互いに重なり合うように配置された一方の耐火板並設層の板面と他方の耐火板並設層の板面との間に到達する目地の開口のうち、木質材料側に位置される一方の耐火板並設層の目地の開口を覆って当該開口の両側に位置する耐火板の板面に到達するように設けられたメッシュシートと、メッシュシートの網目開口に入り込んで、当該メッシュシートを一方の耐火板並設層の板面及び他方の耐火板並設層の板面に接着するとともに、一方の耐火板並設層の板面と他方の耐火板並設層の板面とを接着する接着剤とを備えたことを特徴とする。当該耐火構造は、例えば、木質材料が壁躯体、床躯体、天井躯体、屋根躯体等である場合で、当該躯体等の平面により形成される表面側に耐火層が設けられる場合に適用される耐火構造である。
本発明に係る耐火構造によれば、木質材料の表面側に複数の耐火板並設層が積層されて構成された耐火構造において、木質材料側に位置される一方の耐火板並設層の目地の開口の両側に位置する耐火板が、接着剤とメッシュシートと他方の耐火板並設層とによって強固に連結された構造となり、火災時において、木質材料側に位置される一方の耐火板並設層の目地が開きにくくなるので、当該目地が早期に開いてしまうことを防止でき、耐火性能を長時間維持できる耐火構造を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】目地の開口に対応してメッシュテープ(帯状シートメッシュ)が設けられた状態を1層目の耐火板並設層の表面側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1乃至
図3に示すように、実施形態1の木造建築物の耐火構造は、木質材料により形成された躯体1の表面1a側に耐火層2を備えた耐火構造である。
【0008】
躯体1は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))、又は、集成材により形成された主要構造部である。
【0009】
主要構造部とは、建築基準法第二条の五に「構造耐力上主要な部分」として定められた、「壁、柱、床、梁、屋根又は階段」のことである。
尚、実施形態1(
図1,
図3)、後述する実施形態2(
図4)では、木造建築物の主要構造部を構成する躯体1としての壁躯体の表面1a側に耐火層2を備えた耐火構造を例示して説明する。
【0010】
CLTとは、農林水産省告示第3079号に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し三層以上の構造を持たせた一般材」である。
【0011】
集成材は、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
【0012】
図1に示すように、耐火層2は、複数の耐火板並設層3,3…が積層された積層構造、例えば、1層目の耐火板並設層3Aと2層目の耐火板並設層3Bとからなる二層の耐火板並設層3,3により構成される。
【0013】
耐火板並設層3は、互いに隣り合う端面31a,31a同士が接触するように当該端面31a,31a同士を突き合わせて対向させたことにより形成された目地4を介して同一平面上に並ぶように配置された複数の耐火板により構成される。
当該耐火板としては、例えば、石膏ボードや耐熱耐火パネル等を用いればよい。
石膏ボードとしては、例えば、普通石膏ボード、強化石膏ボード、硬質石膏ボード等の石膏ボードを用いればよい。
耐熱耐火パネルは、例えば、水酸化アルミニウム混入火山性ガラス質堆積物板であり、例えば、大建工業株式会社製の「ダイライト(登録商標)」、「SD耐火パネル」等の耐熱耐火パネルを用いればよい。
【0014】
実施形態1では、耐火板として、石膏ボード31を用いた例を示す。
石膏ボード31は、例えば、端面31aにおける一方の板面31f側は、一方の板面31fと端面31aとに繋がる傾斜面(面取り面)に形成されている。
従って、このような石膏ボード31を用いた場合、互いに隣り合う石膏ボード31,31の端面31a,31a同士が突き合わされて形成される目地4の一方の板面31f側は、例えば断面が三角形状の凹部に形成され、当該凹部が目地4の一方側の開口41となる。
尚、端面が板面と直交する面で構成されている耐火板を用いる場合には、耐火板の端面同士が突き合わされて形成される目地4の開口は、線状の開口になる。
【0015】
図1に示すように、耐火層2は、例えば、石膏ボード31,31の板面31f,31f同士が互いに重なり合うように配置されて形成された1層目の耐火板並設層3Aと2層目の耐火板並設層3Bとの間に、目地開き防止手段5を備えている。
【0016】
目地開き防止手段5は、石膏ボード31,31の板面31f,31f同士が互いに重なり合うように配置された1層目の耐火板並設層3Aの板面31fと2層目の耐火板並設層3Bの板面31fとの間に到達する目地4,4…の開口41,42のうち、躯体1側に位置される1層目の耐火板並設層3Aの目地4の開口41を覆って当該開口41の両側に位置する石膏ボード31,31の板面31f,31fに到達するように設けられたメッシュシート6と、接着剤7とで形成される。
【0017】
メッシュシート6は、シート(薄厚)状に形成された網状部材であり、例えば、ガラスやカーボン等の不燃性材料により形成されたメッシュシートを用いればよい。
当該メッシュシート6としては、例えば、
図2に示すように、目地4の開口41に沿って当該開口41を覆って当該開口41の両側に位置する石膏ボード31,31の板面31f,31fに到達する幅Wを有したメッシュテープ(帯状シートメッシュ)61を用いればよい。
当該メッシュテープ61としては、メッシュを構成する複数の線材の一方の面に図外の仮止め用の接着剤が設けられているメッシュテープ、例えば、吉野石膏株式会社製の「タイガーGファイバーテープ」等を用いればよい。
【0018】
また、接着剤7としては、耐熱性に優れた無機系接着剤(無機系耐熱接着剤)を用いれば良く、例えば、吉野石膏株式会社製の「タイガートラボンド」等を用いればよい。
【0019】
次に、
図3に基づいて、耐火層2の構築方法について説明する。
まず、
図3(a),(b)に示すように、躯体1の表面1aにより形成された同一平面上に、複数の石膏ボード31,31…を目地4を介して並ぶように取付けて1層目の耐火板並設層3Aを形成する。
この場合、例えば、石膏ボード31の他方の板面31fと躯体1の表面1aとを突き合わせて対向させた状態で、石膏ボード31,31…を躯体1の表面1aに図外のビス等の固定手段を用いて固定していくことにより、1層目の耐火板並設層3Aが形成される。
尚、1層目の耐火板並設層3Aを形成する石膏ボード31,31…の他方の板面31fの全面に、接着剤7を塗布した後、石膏ボード31の他方の板面31fと躯体1の表面1aとを突き合わせて対向させた状態で、石膏ボード31,31…を躯体1の表面1aに図外のビス等の固定手段を用いて固定していくことにより、1層目の耐火板並設層3Aを形成するようにしてもよい。
【0020】
次に、
図3(b)に示すように、1層目の耐火板並設層3Aの一方の板面31f側、即ち、1層目の耐火板並設層3Aの表面側に位置される目地4の開口41に沿って当該開口41を覆って当該開口41の両側に位置する石膏ボード31,31の板面31f,31fに到達するように、メッシュテープ61を取付ける(
図2参照)。
即ち、当該メッシュテープ61の一方の面と目地4の開口41の両側に位置する石膏ボード31,31の板面31f,31fとが上述した仮止め用の接着剤により仮止めされるように、メッシュテープ61を取付ける。
【0021】
次に、
図3(c),(d)に示すように、1層目の耐火板並設層3Aの一方の板面31f、即ち、1層目の耐火板並設層3Aの表面により形成された同一平面上に、複数の石膏ボード31,31…を目地4を介して並ぶように取付けて2層目の耐火板並設層3Bを形成する。
この2層目の耐火板並設層3Bを形成する際には、例えば、1層目の耐火板並設層3Aの一方の板面31fと対向させる2層目の耐火板並設層3Bを形成する石膏ボード31,31…の他方の板面31fの全面に、接着剤7を塗布した後、2層目の耐火板並設層3Bを形成する石膏ボード31の他方の板面31fを1層目の耐火板並設層3Aの一方の板面31fに押し付けていくことにより、2層目の耐火板並設層3Bを形成する石膏ボード31,31…が1層目の耐火板並設層3Aの表面(一方の板面31f,31f…)に接着剤7を介して取付けられて、2層目の耐火板並設層3Bが形成される。
さらに、図外のビス等の固定手段を用いて、当該2層目の耐火板並設層3Bを形成する石膏ボード31,31…を躯体1に固定するようにしてもよい。
【0022】
尚、1層目の耐火板並設層3Aの目地4と2層目の耐火板並設層3Bの目地4とが連続しないように施工する。即ち、1層目の耐火板並設層3を形成する石膏ボード31,31…の端面31a,31a…と2層目の耐火板並設層3Bを形成する石膏ボード31,31…の端面31a,31a…とが同一平面上に位置しないように、1層目の耐火板並設層3を形成する石膏ボード31と2層目の耐火板並設層3Bを形成する石膏ボード31とが互い違いになる様に取付ける。
また、目地4の一方側の開口41が例えば断面三角形状の凹部に形成されている場合には、当該凹部が目地4の一方側の開口41となる。この場合、当該開口41を覆って当該開口41の両側に位置する石膏ボード31,31の板面31f,31fに到達するように、メッシュテープ61を仮止めした後、メッシュテープ61の表面側から当該開口41内に接着剤7が充填されるように塗布し、その後、2層目の耐火板並設層3Bを形成する石膏ボード31,31…の他方の板面31fの全面に、接着剤7を塗布してから、当該石膏ボード31,31…を1層目の耐火板並設層3Aの表面に取付けて行くことが好ましい。
【0023】
以上により、1層目の耐火板並設層3Aの板面31fと2層目の耐火板並設層3Aの板面31fとの間に到達する目地4の開口41,42のうち、躯体1側に位置される1層目の耐火板並設層3Aの目地4の開口41の開きを防止する目地開き防止手段5が、メッシュテープ61と接着剤7とによって構成されることになる。
【0024】
このように、耐火層2が目地開き防止手段5を備えた構成によれば、1層目の耐火板並設層3Aの表面側(室内側)に位置される目地4の開口41に沿って当該開口41を覆って当該開口41の両側に位置する石膏ボード31,31…板面31f,31fに仮止めされたメッシュテープ61の網目開口に入り込んだ接着剤7が、当該メッシュテープ61を1層目の耐火板並設層3Aの板面31f(目地4の一方側の開口41が凹部に形成されている場合には、当該凹部の内面も含む)及び2層目の耐火板並設層3Bの板面31fに接着するとともに、1層目の耐火板並設層3Aの板面31fと2層目の耐火板並設層3Bの板面31fとを接着する。
さらに、メッシュテープ61が存在しない場所においても、1層目の耐火板並設層3Aの板面31fと2層目の耐火板並設層3Bの板面31fとが接着剤7により全面接着される。
【0025】
即ち、躯体1側に位置される1層目の耐火板並設層3Aの目地4の開口41を覆って当該開口41の両側に位置する石膏ボード31,31…板面31f,31fに到達するように設けられたメッシュテープ61が、1層目の耐火板並設層3Aの板面31fと2層目の耐火板並設層3Bの板面31fとの間に挟まれた状態で、1層目の耐火板並設層3Aの板面31f(目地4の一方側の開口41が凹部に形成されている場合には、当該凹部の内面も含む)と2層目の耐火板並設層3Bの板面31fとが、メッシュテープ61の網目開口に入り込んだ接着剤7により接着される。つまり、メッシュテープ61の網目開口に接着剤7が入り込み、その結果、接着剤7がメッシュテープ61を挟んで1層目の耐火板並設層3Aの石膏ボード31と2層目の耐火板並設層3Bの石膏ボード31とを一体化した接着構造となる。さらに、当該メッシュテープ61のテープの幅方向両縁の外側に位置される1層目の耐火板並設層3Aの板面31fと2層目の耐火板並設層3Bの板面31fとが接着剤7により接着される。
【0026】
実施形態1によれば、躯体1側に位置される1層目の耐火板並設層3Aの目地4の開口41の両側に位置する石膏ボード31,31が、接着剤7とメッシュテープ61と2層目の耐火板並設層とによって強固に連結された構造となり、火災時において、躯体1側に位置される1層目の耐火板並設層3Aの目地4が開きにくくなるので、当該目地4が早期に開いてしまうことを防止でき、耐火性能を長時間維持できる木造建築物の耐火構造を提供できるようになる。
【0027】
また、実施形態1によれば、耐火層2が目地開き防止手段5を備えたので、耐火層2の層厚を薄くできることから、コスト削減できるとともに、室内空間を広くでき、かつ、耐火性能を向上できる耐火構造を実現できるようになる。
【0028】
実施形態2
図4に示すように、耐火層2が、1層目の耐火板並設層3Aと2層目の耐火板並設層3Bと3層目の耐火板並設層3Cとからなる三層の耐火板並設層3,3,3により構成された耐火構造としてもよい。
この場合、躯体1としての壁躯体の表面1a側に耐火層2を備え、当該耐火層2が、板面31f,31f同士が互いに重なり合うように配置された一方の耐火板並設層の板面31fと他方の耐火板並設層の板面31fとの間に到達する目地の開口のうち、木質材料側に位置される耐火板並設層(
図4に示す2層目の耐火板並設層3B及び3層目の耐火板並設層3C)の目地4の開口41を覆って当該開口41の両側に位置する石膏ボード(耐火板)31,31の板面31f,31fに到達するように設けられたメッシュテープ61と、メッシュテープ61の網目開口に入り込んで、当該メッシュテープ61を、一方の耐火板並設層の板面(目地4の一方側の開口41が凹部に形成されている場合には、当該凹部の内面も含む)及び他方の耐火板並設層の板面に接着するとともに、一方の耐火板並設層の板面と他方の耐火板並設層の板面とを接着する接着剤7とで形成された目地開き防止手段5を備えた構成とすればよい。
また、耐火層2が、四層以上の耐火板並設層3,3…により構成された耐火構造であって、目地開き防止手段5を備えた構成としてもよい。
【0029】
尚、実施形態1及び実施形態2の耐火構造は、例えば、木質材料が床躯体、天井躯体、屋根躯体等である場合において、当該躯体等の平面により形成される表面1a側に耐火層2が設けられる場合に適用可能である。
【0030】
実施形態3
実施形態1,2によれば、木質材料により形成された躯体1としての壁躯体等の表面1a側に耐火層2を備えた耐火構造を例示したが、
図5に示すように、木質材料により形成された躯体1としての柱躯体の表面1a側に耐火層2を備えた耐火構造としてもよい。
この場合、柱躯体の4隅に対応する1層目の耐火板並設層3Aの出隅31e,31e…は、互いに隣り合う柱躯体の側面に取付けられる一方の石膏ボード(耐火板)31の端面31a側の板面31fと他方の石膏ボード(耐火板)31の端面31aとが突き合わされることによって形成され、この一方の石膏ボード31の端面31a側の板面31fと他方の石膏ボード31の端面31aとの突き合わせにより形成される目地4の目地開きを防止するための目地開き防止手段5を設けた構成とすればよい。この場合、目地開き防止手段5は、出隅31eを介して隣り合う耐火板並設層3Aの各側面(板面31f,31f)に亘って設けるようにすれば、接着剤7による、メッシュテープ61と1層目の耐火板並設層3Aの石膏ボード31と2層目の耐火板並設層3Bの石膏ボード31との一体化接着構造がより強固となるので、好ましい。
【0031】
即ち、実施形態3に係る、躯体1としての柱躯体の表面1a側に耐火層2を備えた耐火構造は、耐火層2は、複数の耐火板並設層が積層された積層構造により構成されて目地開き防止手段5を備え、各耐火板並設層3A,3Bは、目地4を介して並ぶように配置された複数の耐火板により構成され、目地開き防止手段5は、表面同士が互いに重なり合うように配置された一方の耐火板並設層3Aの室内側の表面と他方の耐火板並設層3Bの柱躯体側の表面との間に到達する目地4の開口のうち、柱躯体側に位置される一方の耐火板並設層3Aの目地4の開口41を覆って当該開口41(尚、当該目地4の開口41は、線状の開口になる。)の両側に位置する耐火板の表面(一方の石膏ボード31の端面31a側の板面31fと他方の石膏ボード31の端面31a)に到達するように設けられたメッシュテープ61と、メッシュテープ61の網目開口に入り込んで、当該メッシュテープ61を一方の耐火板並設層3Aの室内側の表面及び他方の耐火板並設層3Bの柱躯体側の表面に接着するとともに、一方の耐火板並設層3Aの室内側の表面と他方の耐火板並設層3Bの柱躯体側の表面とを接着する接着剤7とを備えた構成とした。
【0032】
また、躯体1としての柱躯体の表面1a側に耐火層2を備えた実施形態3の耐火構造において、耐火層2が、四層以上の耐火板並設層3,3…により構成された耐火構造であって、目地開き防止手段5を備えた構成としてもよい。
【0033】
尚、実施形態3の耐火構造は、例えば、木質材料が梁躯体、階段躯体等である場合において、当該躯体等の表面1a側を囲むように耐火層2が設けられる場合に適用可能である。
【0034】
また、上記各実施形態では、垂直方向に延長する縦目地の目地開きを防止するための目地開き防止手段5を設ける場合について説明したが、水平方向に延長する横目地が形成される場合においては、この横目地の目地開きを防止するための目地開き防止手段5を設ければよい。
【0035】
また、木質材料により形成された壁下地、床下地、天井下地等の木質下地の表面側に耐火層2を備えた耐火構造としてもよい。この場合、木質下地の表面側に複数の合板を並べて形成された合板並設層を設けて、この合板並設層の表面側に耐火層2を備えた耐火構造としてもよい。
【0036】
また、上記では、木造建築物の耐火構造を例示したが、本発明の耐火構造は、木質材料の表面側に上述した耐火層2を備えて構成されていればよく、木造建築物以外の様々な木造物にも適用可能である。
【0037】
また、木質材料は、木以外の可燃性の材料であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 躯体(木質材料)、2 耐火層、3,3A,3B,3C 耐火板並設層、
4 目地、6 メッシュシート、7 接着剤、31 石膏ボード(耐火板)、
41 目地の開口、61 メッシュテープ。