(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】プラズマ照射装置
(51)【国際特許分類】
A61C 19/06 20060101AFI20220301BHJP
A61C 1/08 20060101ALI20220301BHJP
H05H 1/26 20060101ALI20220301BHJP
A61N 1/44 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
A61C19/06 Z
A61C1/08 Z
H05H1/26
A61N1/44
(21)【出願番号】P 2018175789
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】長原 悠
(72)【発明者】
【氏名】上原 剛
(72)【発明者】
【氏名】東儀 彰子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】安宅 元晴
(72)【発明者】
【氏名】多田 麻友華
(72)【発明者】
【氏名】大下 貴也
(72)【発明者】
【氏名】井上 毅
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-520101(JP,A)
【文献】特表2017-529193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0326347(US,A1)
【文献】特表2008-538188(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119487(WO,A1)
【文献】特開2005-131373(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0188626(US,A1)
【文献】特開2000-125937(JP,A)
【文献】特表2005-534459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/06
A61C 1/08
H05H 1/26
A61N 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ発生部を
長尺状のカウリングの内部に有し、前記プラズマ発生部にて発生したプラズマおよび前記プラズマによって生じる活性ガスの少なくとも一方を吐出する照射器具と、
前記照射器具の表面に設けられ、前記照射器具を把持する使用者の手を定着させる定着機構と、を備え
、
前記定着機構は、前記カウリングの短手方向の両側に開口する凹部を備え、
前記凹部は、前記使用者の指が配置される空間であり、前記カウリングの径方向の内側に向かうに従い前記カウリングの長手方向における前記凹部の長さが短くなっている
、プラズマ照射装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記カウリングの全周に渡って設けられている、請求項1に記載のプラズマ照射装置。
【請求項3】
前記カウリングは、前記カウリングの先端から突出するノズルを有する、請求項1
または2に記載のプラズマ照射装置。
【請求項4】
前記プラズマ発生部は、誘電体バリア放電により前記プラズマを発生する請求項1~
3のいずれか1項に記載のプラズマ照射装置。
【請求項5】
前記プラズマ発生部は、窒素ガスを用いて前記プラズマを発生する請求項1~
4のいずれか1項に記載のプラズマ照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、歯科治療等の医療を用途とするプラズマ照射装置が知られている。
プラズマ照射装置は、創傷等の患部にプラズマまたは活性ガスを照射することで、患部を治癒する。前記活性ガスは、プラズマ照射装置内でプラズマによって発生させられる。
例えば、特許文献1は、歯科治療を行うプラズマジェット照射装置を開示している。前記プラズマジェット照射装置は、プラズマジェット照射手段を有する照射器具を備えている。前記プラズマジェット照射装置は、発生したプラズマと、活性種と、を被照射物に照射する。前記活性種は、プラズマ中の気体またはプラズマ周辺の気体とプラズマとが反応して生成される。
特許文献2は、照射器具内部で活性ガス(活性種)を発生させ、その活性ガスをノズルから吐出して患部に照射するプラズマ照射装置を開示している。前記活性ガスは、例えば、活性酸素や活性窒素等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5441066号公報
【文献】特開2017-50267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のプラズマ照射装置は、使用者が治療中に、照射器具を落下することがあるため、落下しないように改善が望まれていた。特に、使用者が治療中に照射器具を持ち替える際に、照射器具を落下することがあった。また、歯科治療に用いられている照射器具は、患者の唾液や水が付着し、その表面が濡れて滑りやすくなっているため、使用者が照射器具を落下することがあった。また、照射器具の表面が患者に触れて、その表面に汚れが付着する可能性がある。そのため、照射器具の表面に付着した汚れを落としやすい形態が望まれていた。さらに、歯科治療では、細かな操作が必要であるため、照射器具の持ちやすさや、操作性も求められていた。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、使用者が治療中に、照射器具を落下するのを防止し、照射器具の表面に付着した汚れを落としやすく、照射器具の持ちやすさや、操作性に優れるプラズマ照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るプラズマ照射装置は、プラズマ発生部を有し、前記プラズマ発生部にて発生したプラズマおよび前記プラズマによって生じる活性ガスの少なくとも一方を吐出する照射器具と、前記照射器具の表面に設けられ、前記照射器具を把持する使用者の手を定着させる定着機構と、を備える。
【0007】
前記照射器具は、長手方向の長さが、該長手方向に直交する短手方向の長さよりも長い長尺状に形成され、前記定着機構は、前記照射器具の外周面から径方向に向けて窪む凹部を備え、前記凹部は、前記照射器具の径方向の内側に向かうに従い前記長手方向の長さが短くなってもよい。
【0008】
前記定着機構は、前記照射器具の使用者の手の指を挿通する環状部であってもよい。
【0009】
前記定着機構は、前記照射器具の表面に設けられた微細な凹凸であってもよい。
【0010】
前記定着機構は、前記照射器具の表面に設けられたラバーグリップであってもよい。
【0011】
前記定着機構は、前記照射器具の使用者の手の指を挿通する環状部材を有するストラップであってもよい。
【0012】
また、上記のプラズマ照射装置において、前記プラズマ発生部は、誘電体バリア放電により前記プラズマを発生してもよい。
【0013】
また、上記のプラズマ照射装置において、前記プラズマ発生部は、窒素ガスを用いて前記プラズマを発生してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、使用者が治療中に、照射器具を落下するのを防止し、照射器具の表面に付着した汚れを落としやすく、照射器具の持ちやすさや、操作性に優れるプラズマ照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ照射装置を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るプラズマ照射装置を構成する照射器具の部分断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るプラズマ照射装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るプラズマ照射装置を構成する照射器具の定着機構を示す模式図である。
【
図8】本発明の第1変形例に係る照射器具の定着機構を示す模式図である。
【
図9】本発明の第2変形例に係る照射器具の定着機構を示す模式図である。
【
図10】本発明の第3変形例に係る照射器具の定着機構を示す模式図である。
【
図11】本発明の第4変形例に係る照射器具の定着機構を示す模式図である。
【
図12】本発明の第5変形例に係る照射器具の定着機構を示す模式図である。
【
図13】本発明の第6変形例に係る照射器具の定着機構を示す模式図である。
【
図14】本発明の第7変形例に係る照射器具の定着機構を示す模式図であり、(A)は平面図、(B)は斜視図である。
【
図15】本発明の第8変形例に係る照射器具の定着機構を示す模式図であり、(A)は平面図、(B)は斜視図である。
【
図16】本発明の第9変形例に係る照射器具の定着機構を示す模式図であり、(A)は平面図、(B)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のプラズマ照射装置の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0017】
本発明のプラズマ照射装置は、プラズマジェット照射装置または活性ガス照射装置である。
プラズマジェット照射装置は、プラズマを発生させる。プラズマジェット照射装置は、発生したプラズマと、活性種と、を被照射物に直接照射する。前記活性種は、プラズマ中の気体またはプラズマ周辺の気体とプラズマとが反応して生成される。活性種としては、活性酸素種や活性窒素種を例示できる。活性酸素種としては、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、オゾン、過酸化水素、スーパーオキシドアニオンラジカル等を例示できる。活性窒素種としては、一酸化窒素、二酸化窒素、ペルオキシナイトライト、過酸化亜硝酸、三酸化二窒素等を例示できる。
【0018】
活性ガス照射装置は、プラズマを発生させる。活性ガス照射装置は、活性種を含む活性ガスを被照射物に照射する。前記活性種は、プラズマ中の気体またはプラズマ周辺の気体とプラズマとが反応して生成される。
【0019】
以下、本発明のプラズマ照射装置の一実施形態について説明する。
本実施形態のプラズマ照射装置は、活性ガス照射装置である。
図1から
図5に示すように、本実施形態のプラズマ照射装置200は、照射器具10と、検出部15と、供給ユニット20と、ガス管路30と、電気配線40と、供給源70と、報知部80と、制御部90(演算部)と、定着機構100と、を備える。
照射器具10は、照射器具10内で発生した活性ガスを吐出する。供給ユニット20は、照射器具10に電力およびプラズマ発生用ガスを供給する。供給ユニット20は、供給源70を収容している。供給源70は、プラズマ発生用ガスを収容している。供給ユニット20は、例えば、100Vの家庭用電源等の電源(不図示)と接続されている。ガス管路30は、照射器具10と供給ユニット20とを接続している。電気配線40は、照射器具10と供給ユニット20とを接続している。本実施形態において、ガス管路30と電気配線40とは、各々独立しているが、ガス管路30と電気配線40とは一体でもよい。
【0020】
図2は、照射器具10における軸線に沿う面の断面(縦断面)図である。
図2に示すように、照射器具10は、長尺状のカウリング2(筐体)と、カウリング2の先端から突出するノズル11と、カウリング2内に位置するプラズマ発生部12とを備える。
カウリング2は、円筒形の胴体部2bと、胴体部2bの先端を塞ぐヘッド部2aとを備える。なお、胴体部2bは、円筒形に限らず、四角筒、六角筒、八角筒等の多角筒形でもよい。
【0021】
ヘッド部2aは、先端に向かい漸次縮径するテーパ状をなしている。すなわち、本実施形態におけるヘッド部2aは、円錐形である。なお、ヘッド部2aは、円錐形に限らず、四角錘、六角錘、八角錘等の多角錘形でもよい。
ヘッド部2aは、先端に嵌合孔2cを有している。嵌合孔2cは、ノズル11を受け入れる孔である。ノズル11は、ヘッド部2aに着脱可能になっている。ヘッド部2aは、管軸O1方向に延びる第一の活性ガス流路7を内部に有している。管軸O1は、胴体部2bの管軸である。
胴体部2bは、外周面に操作スイッチ9(操作部)を備えている。
【0022】
図2および
図3に示すように、プラズマ発生部12は、管状誘電体3(誘電体)と、内部電極4と、外部電極5とを備える。
管状誘電体3は、管軸O1方向に延びる円筒状の部材である。管状誘電体3は、管軸O1方向に延びるガス流路6を内部に有している。第一の活性ガス流路7とガス流路6とは連通している。なお、管軸O1は、管状誘電体3の管軸と同じである。
管状誘電体3は、内部に内部電極4を備えている。内部電極4は、管軸O1方向に延びる略円柱状の部材である。内部電極4は、管状誘電体3の内面と離間している。
管状誘電体3の外周面の一部には、内部電極4に沿う外部電極5を備えている。外部電極5は、管状誘電体3の外周面に沿って周回する環状の電極である。
図3に示すように、管状誘電体3と内部電極4と外部電極5とは、管軸O1を中心として同心円状に位置している。
本実施形態において、内部電極4の外周面と外部電極5の内周面とは、管状誘電体3を挟んで互いに対向している。
【0023】
本実施形態では、プラズマ発生部12は、誘電体バリア放電によりプラズマを発生する。
プラズマ発生部12は、例えば、窒素を用いてプラズマを発生する。窒素を用いてプラズマを発生するためには、プラズマ発生部12に印加する電圧が高くなり、プラズマ発生部12から放射される電磁波を防ぐために必要なシールドが重くなる。このため、プラズマ発生部12を落としたときに、誘電体バリア放電を発生させるための誘電体が割れやすくなる。
【0024】
プラズマ発生部12は、カウリング2から離脱可能である。プラズマ発生部12は、例えば、カウリング2から管軸O1方向に引き抜かれる。例えば、カウリング2をヘッド部2aと胴体部2bとに分解した後、プラズマ発生部12が、胴体部2bに対して前側に引き抜かれるようにプラズマ発生部12を構成してもよい(なお、管軸O1方向に沿ってヘッド部2a側を前側、胴体部2b側を後側とする)。
例えば、プラズマ発生部12が破損した場合などには、カウリング2からプラズマ発生部12を離脱させた後、新たなプラズマ発生部12をカウリング2に装着することができる。このとき、新たなプラズマ発生部12は、カウリング2に対して管軸O1方向に差し込むことができる。
【0025】
図6に示すように、ノズル11の先端部の硬さ(JIS K 6253に規定されるタイプAデュロメータにより測定される硬さ、以下「硬さ」という。)は、0度以上60度以下である。本実施形態では、ノズル11は、プラズマおよび活性ガスの少なくとも一方が通過する本体管1と、本体管1を覆うカバー13と、を備えている。カバー13は、ノズル11の先端部を形成し、硬さが0度以上60度以下の材料により形成されている。カバー13が、硬さが0度以上60度以下の材料により形成されていることで、ノズル11の先端部のうちの少なくとも外面(最外層)硬さが、0度以上60度以下となる。カバー13の硬さは、例えば、10度以上40度以下であることが好ましい。
【0026】
本体管1は、嵌合孔2cに嵌合する台座部1bと、台座部1bから突出する照射管1cとを備える。台座部1bは、嵌合孔2c(カウリング2)に対して着脱自在に装着されている。照射管1cは、円筒状に形成されている。台座部1bと照射管1cとは一体になっている。本体管1は、その内部に、第二の活性ガス流路8を有している。本体管1は、先端に照射口1aを有している。第二の活性ガス流路8と第一の活性ガス流路7とは、連通している。
【0027】
本体管1(台座部1bおよび照射管1c)は、同一材料で一体に形成されている。本実施形態では、本体管1が金属(例えば、SUS(ステンレス鋼)等)により形成されている。本体管1の材料は、特に制限はなく、絶縁性を有してもよいし、導電性を有してもよい。本体管1の材料としては、耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料が好ましい。耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料としては、ステンレス等の金属を例示できる。
【0028】
カバー13は、生体適合性かつ絶縁性を具備する軟質な材料によって形成されている。本実施形態では、カバー13は、樹脂(例えば、シリコン樹脂、より具体的には、硬さが20度程度のシリコン樹脂など)により形成されている。カバー13は、前述のように、硬さが0度以上60度以下の材料により形成されている。カバー13を形成する材料は、SUS(ステンレス鋼)やABS樹脂よりも軟質であり、本体管1やカウリング2を形成する材料よりも軟質である。言い換えると、カバー13と同等の形状、かつ同等の大きさの部材を、SUSやABS樹脂、本体管1を形成する材料、または、カウリング2を形成する材料によって形成した場合、この部材よりもカバー13の方が変形し易い。
【0029】
カバー13は、照射管1cに外側から嵌合されている。カバー13の先端部は、本体管1の先端部に対して突出している。図示の例では、カバー13の先端部が、照射管1cの先端部よりも前側に突出している。カバー13は、円筒状に形成されている。カバー13の肉厚は、例えば、0.5mm~5mm、好ましくは1mm~3mmである。なお、カバー13の肉厚が0.5mm未満では、後述する負担の軽減効果が発揮され難くなる。一方、カバー13の肉厚が5mmを超えると、ノズル11の全体が太くなり過ぎ、例えば、治療(歯科治療)し難くなることがある。
【0030】
本実施形態では、カバー13には、ヘッドカバー14が一体に設けられている。ヘッドカバー14は、ヘッド部2aを覆っており、図示の例では、ヘッド部2aに外側から嵌合されている。
カバー13は、本体管1に対して着脱自在に装着されている。本実施形態では、ヘッドカバー14も、ヘッド部2aに対して着脱自在に装着されている。カバー13およびヘッドカバー14は、本体管1およびヘッド部2aに対して一体的に着脱自在に装着されている。なお、カバー13やヘッドカバー14の着脱性を向上させるため、カバー13やヘッドカバー14の内面に、凹凸部を設けてもよい。凹凸部を設けることにより、カバー13やヘッドカバー14と、本体管1やヘッド部2aと、の接触面積を低減させ、着脱時の摩擦抵抗を軽減させることができる。
【0031】
カバー13(カバー13とヘッドカバー14との連結体)は、例えば、押し出し成形で試作後、二次加工をすることで製造してもよい。カバー13は、例えば、真空注型、RIM成形、射出成形により製造してもよい。真空注型やRIM成形、射出成形によりカバー13を形成する場合、カバー13を押し出し成形で試作後、二次加工をする場合に比べて、例えば、カバー13の内面に前述の凹凸部を設けたり、カバー13に切込みを入れたりする等し易くなる。そのため、真空注型やRIM成形、射出成形によりカバー13を形成することが好ましい。
【0032】
図2に示すように、胴体部2bの材料は、特に制限はないが、導電性を有する材料が好ましい。胴体部2bは、金属材料で形成されてもよいし、絶縁材料とその表面に金属材料の層を有する多層構造でもよい。
金属材料としては、ステンレス、チタン、アルミニウム等が挙げられる。コストと軽さの観点からアルミニウムが好ましく、アルミニウムを用いる場合は、表面にアルマイト処理がされていることが好ましい。
胴体部2bの大きさは、特に制限はなく、手指で把持しやすい大きさとすることができる。
【0033】
ヘッド部2aの材料は、特に制限はなく、絶縁性を有してもよいし、絶縁性を有しなくてもよい。ヘッド部2aの材料は、耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料が好ましい。耐摩耗性、耐腐食性に優れる材料としては、ステンレス等の金属を例示できる。ヘッド部2aと胴体部2bとの材料は、同じでもよく、異なってもよい。
ヘッド部2aの大きさは、プラズマ照射装置200の用途等を勘案して決定できる。例えば、プラズマ照射装置200が口腔内用治療器具である場合、ヘッド部2aの大きさは、口腔内に挿入できる大きさが好ましい。
【0034】
管状誘電体3の材料としては、公知のプラズマ装置に使用する誘電体材料を適用できる。管状誘電体3の材料としては、ガラス、セラミックス、合成樹脂等を例示できる。管状誘電体3の誘電率は低いほど好ましい。
【0035】
管状誘電体3の内径Rは、内部電極4の外径dを勘案して適宜決定できる。内径Rは、後述する距離sを所望の範囲とするように決定する。
【0036】
内部電極4は、管軸O1方向に延びる軸部と、軸部の外周面のねじ山とを備える。軸部は、中実でもよいし、中空でもよい。中でも、軸部は中実が好ましい。軸部が中実であれば、加工が容易であり、かつ機械的な耐久性を高められる。内部電極4のねじ山は、軸部の周方向に周回する螺旋状のねじ山である。内部電極4の形態は、雄ねじと同様の形態である。
内部電極4は、外周面にねじ山を有することで、ねじ山先端部の電界が局所的に強くなり、放電開始電圧が低くなる。このため、低電力でプラズマを生成し、維持できる。
なお、内部電極4は、外周面にねじ山等の凹凸を有しなくてもよい。即ち、内部電極4は、外周面に凹凸を有しない円柱の部材でもよい
【0037】
内部電極4の外径dは、プラズマ照射装置200の用途(すなわち、照射器具10の大きさ)等を勘案して、適宜決定できる。プラズマ照射装置200が口腔内用治療器具である場合、外径dは、0.5mm~20mmが好ましく、1mm~10mmがより好ましい。外径dが上記下限値以上であれば、内部電極4を容易に製造できる。加えて、外径dが上記下限値以上であれば、内部電極4の表面積が大きくなり、プラズマをより効率的に発生して、治癒等をより促進できる。外径dが上記上限値以下であれば、照射器具10を過度に大きくすることなく、プラズマをより効率的に発生し、治癒等をより促進できる。
【0038】
内部電極4のねじ山の高さhは、内部電極4の外径dを勘案して適宜決定できる。
内部電極4のねじ山のピッチpは、内部電極4の長さや外径d等を勘案して適宜決定できる。ピッチpは、0.2mm~3.0mmが好ましく、0.2mm~2.5mmがより好ましく、0.2mm~2.0mmがさらに好ましい。
【0039】
内部電極4の材料は、導電材であれば特に制限はなく、公知のプラズマ装置の電極に使用できる金属を適用できる。内部電極4の材料としては、ステンレス、銅、タングステン等の金属、カーボン等を例示できる。
【0040】
内部電極4としては、JIS B 0205:2001のメートルねじの規格品(M2、M2.2、M2.5、M3、M3.5等)、JIS B 2016:1987のメートル台形ねじの規格品(Tr8×1.5、Tr9×2、Tr9×1.5等)、JIS B 0206:1973のユニファイ並目ねじの規格品(No.1-64UNC、No.2-56UNC、No.3-48UNC等)等と同等の仕様が好ましい。これらの規格品と同等の仕様であれば、コスト面で優位である。
【0041】
内部電極4の外面と管状誘電体3の内面との距離sは、0.05mm~5mmが好ましく、0.1mm~1mmがより好ましい。距離sが上記下限値以上であれば、所望量のプラズマ発生用ガスを容易に通流できる。距離sが上記上限値以下であれば、プラズマをさらに効率的に発生し、活性ガスの温度を低くできる。
【0042】
外部電極5の材料は、導電材であれば特に制限はなく、公知のプラズマ装置の電極に使用する金属を適用できる。外部電極5の材料としては、ステンレス、銅、タングステン等の金属、カーボン等を例示できる。
【0043】
ノズル11における照射管1c内の流路の長さ(すなわち、距離L2)は、プラズマ照射装置200の用途等を勘案して、適宜決定できる。
照射口1aの開口径は、例えば、0.5mm~5mmが好ましい。開口径が上記下限値以上であれば、活性ガスの圧力損失を抑制できる。開口径が上記上限値以下であれば、照射する活性ガスの流速を高めて、患部の治癒等を促進できる。
照射管1cは、管軸O1に対して屈曲している。
照射管1cの管軸O2と管軸O1とのなす角度θは、プラズマ照射装置200の用途等を勘案して決定できる。
【0044】
外部電極5の先端中心点Q1からヘッド部2aの先端Q2までの距離L1と、先端Q2から照射口1aまでの距離L2との合計(即ち、内部電極4から照射口1aまでの道のり)は、プラズマ照射装置200に求める大きさや、照射した活性ガスが当たる面(被照射面)における温度等を勘案して適宜決定する。距離L1と距離L2の合計が長ければ、被照射面の温度を低くできる。距離L1と距離L2の合計が短ければ、活性ガスのラジカル密度をさらに高めて、被照射面における清浄化、賦活化、治癒等の効果をさらに高められる。なお、先端Q2は、管軸O1と管軸O2との交点である。
【0045】
図2および
図4に示すように、検出部15は、照射器具10に加えられた外力(衝撃力)を検出する。検出部15は、ノズル11よりもプラズマ発生部12の近くに配置されている。検出部15は、凹部16に配置されている。凹部16は、胴体部2bの内周面に形成されている。管軸O1に直交する方向を径方向とすると、検出部15は、管状誘電体3に対して径方向の外側に配置されている。検出部15は、管軸O1方向に延びる管状に形成されている。
検出部15は、照射器具10から離脱可能である。検出部15は、プラズマ発生部12をカウリング2から離脱させた後、カウリング2内から外部に取り出される。
【0046】
検出部15は、検出部15に外力が加えられたときに変色する。本実施形態では、検出部15の色は、検出部15に所定の大きさ以上の外力が加えられる前後で異なる。検出部15の色は、検出部15に所定の大きさ以上の外力が加えられた後、元の色に戻らず変色したままである。本実施形態では、検出部15が、所定の衝撃加速度(衝撃値)以上の衝撃加速度が加えられたときに変色し、変色した状態が維持される。
【0047】
検出部15としては、例えば、ショックウォッチ社のショックウォッチ(登録商標)を採用することができる。なお、本実施形態のように、検出部15が管状の場合、検出部15として、例えば、衝撃検知チューブ(例えば、ショックウォッチ(登録商標)のチューブタイプ等)などを採用することができる。さらに、衝撃検知チューブに代えて、例えば、衝撃検知ラベル(例えば、ショックウォッチ(登録商標)のラベルタイプ等)や、衝撃検知表示器(例えば、ショックウォッチ(登録商標)のMAG2000等)などを採用することができる。
【0048】
検出部15は、例えば、管状誘電体3の強度(大きさや形状、材質)などを勘案して適宜設計することができる。検出部15を適宜設計することにより、例えば、検出部15の変色に関する衝撃加速度の閾値を調節すること等ができる。
検出部15は、照射器具10の外部から視認可能である。カウリング2には、のぞき窓17が設けられている。のぞき窓17は、検出部15(凹部16)に対して径方向の外側に配置されている。検出部15は、のぞき窓17を通して照射器具10の外部から視認される。
【0049】
図1に示すような供給ユニット20は、照射器具10に電気およびプラズマ発生用ガスを供給する。供給ユニット20は、内部電極4と外部電極5との間に印加する電圧および周波数を調節できる。供給ユニット20は、供給源70を収容する筐体21を備えている。
筐体21は、供給源70を離脱可能に収容する。これにより、筐体21に収容された供給源70内のガスがなくなったとき、供給源70を交換することができる。
【0050】
供給源70は、プラズマ発生部12にプラズマ発生用ガスを供給する。供給源70は、内部にプラズマ発生用ガスが収容された耐圧容器である。
図5に示すように、供給源70は、筐体21内に配置された配管75に対して着脱可能に装着されている。配管75は、供給源70とガス管路30とを接続している。
配管75には、電磁弁71、圧力レギュレータ73、流量コントローラ74および圧力センサ72(残量センサ)が取り付けられている。
【0051】
電磁弁71が開状態となると、供給源70から配管75およびガス管路30を介して照射器具10にプラズマ発生用ガスが供給される。図示の例では、電磁弁71は、弁開度が調節できる構成ではなく、開閉の切り替えのみができる構成である。なお電磁弁71は、弁開度が調節できる構成であってもよい。
圧力レギュレータ73は、電磁弁71と供給源70との間に配置されている。圧力レギュレータ73は、供給源70から電磁弁71に向かうプラズマ発生用ガスの圧力を低下(プラズマ発生用ガスを減圧)させる。
【0052】
流量コントローラ74は、電磁弁71とガス管路30との間に配置されている。流量コントローラ74は、電磁弁71を通過したプラズマ発生用ガスの流量(単位時間当たりの供給量)を調整する。流量コントローラ74は、プラズマ発生用ガスの流量を、例えば、3L/minに調整する。
圧力センサ72は、供給源70におけるプラズマ発生用ガスの残量V1を検出する。圧力センサ72は、前記残量V1として、供給源70内の圧力(残圧)を測定する。圧力センサ72は、圧力レギュレータ73と供給源70との間(圧力レギュレータ73よりも一次側)を通過するプラズマ発生用ガスの圧力を、供給源70の圧力として測定する。圧力センサ72としては、例えば、キーエンス社のAP-V80シリーズ(具体的には、例えばAP-15S)等を採用することができる。
【0053】
配管75の供給源70側の端部には、継手76が設けられている。継手76には、供給源70が着脱可能に装着されている。供給源70を継手76に着脱させることで、電磁弁71、圧力レギュレータ73、流量コントローラ74および圧力センサ72(以下、「電磁弁71等」という。)を筐体21に固定したまま、供給源70を交換することができる。
この場合、交換前の供給源70、交換後の供給源70のいずれについても共通の電磁弁71等を使用することができる。なお電磁弁71等は、供給源70に固定され、供給源70と一体的に筐体21から離脱可能であってもよい。
【0054】
図1に示すように、ガス管路30は、供給ユニット20から照射器具10にプラズマ発生用ガスを供給する経路である。ガス管路30は、照射器具10の管状誘電体3の後端部に接続している。ガス管路30の材料は、特に制限はなく、公知のガス管に用いる材料を適用できる。ガス管路30の材料としては、例えば、樹脂製の配管、ゴム製のチューブ等を例示でき、可撓性を有する材料が好ましい。
【0055】
電気配線40は、供給ユニット20から照射器具10に電気を供給する配線である。電気配線40は、照射器具10の内部電極4、外部電極5および操作スイッチ9に接続している。電気配線40の材料は、特に制限はなく、公知の電気配線に用いる材料を適用できる。
電気配線40の材料としては、絶縁材料で被覆した金属導線等を例示できる。
【0056】
図5に示すような制御部90は、情報処理装置を用いて構成される。すなわち、制御部90は、バスで接続されたCPU(Central Processor Unit)、メモリおよび補助記憶装置を備える。制御部90は、プログラムを実行することによって動作する。制御部90は、例えば、供給ユニット20に内蔵されていてもよい。制御部90は、照射器具10、供給ユニット20および報知部80を制御する。
【0057】
制御部90には、照射器具10の操作スイッチ9が電気的に接続されている。操作スイッチ9が操作されると、操作スイッチ9から制御部90に電気信号が送られる。制御部90が前記電気信号を受け付けると、制御部90は電磁弁71および流量コントローラ74を作動させ、かつ内部電極4と外部電極5との間に電圧を印加する。
【0058】
本実施形態では、操作スイッチ9が押釦であり、使用者が操作スイッチ9を1回押した(使用者が操作スイッチ9を操作した)ときに、制御部90が前記電気信号を受け付ける。すると制御部90が、電磁弁71を所定の時間、開放して電磁弁71を通過したプラズマ発生用ガスの流量を流量コントローラ74に調整させ、かつ内部電極4と外部電極5との間に電圧を所定の時間、印加する。その結果、供給源70からプラズマ発生部12に一定量のプラズマ発生用ガスが供給され、ノズル11から活性ガスが一定時間(例えば、数秒から数十秒程度、本実施形態では30秒)、継続して吐出される。
【0059】
制御部90は、プラズマ発生用ガスの残回数Nを演算する。残回数Nは、供給源70に残存するプラズマ発生用ガスによって、供給源70からプラズマ発生部12にプラズマ発生用ガスを供給することができる残りの回数である。残回数Nは、供給源70におけるプラズマ発生用ガスの残量V1から算出することができる。残回数Nは、残量V1と、操作スイッチ9の操作1回あたりのプラズマ発生用ガスの供給量V2と、に基づいて演算(N=V1/V2)することができる。
【0060】
報知部80は、残回数Nを報知する。報知部80は、制御部90が演算した残回数Nを数字で表示する。報知部80として、例えば、任意の数字を表示可能なディスプレイ装置を採用してもよく、機械式のカウンタを採用してもよい。なお、報知部80は、音声によって残回数Nを報知してもよい。この場合、報知部80としては、例えば、スピーカ等を採用することができる。
【0061】
図1に示すように、定着機構100は、照射器具10の表面に設けられている。定着機構100は、照射器具10を把持する使用者の手を、照射器具10からずれにくくするための機構である。照明器具10の表面が平面であると、照射器具10を把持した手が滑ってしまう。すなわち、定着機構100は、使用者の手が照射器具10から滑らないようにするための機構である。
【0062】
本実施形態では、
図7に示すように、照射器具10は、長手方向の長さが、長手方向に直交する短手方向の長さよりも長い長尺状に形成されている。定着機構100は、照射器具10の外周面10aから径方向に向けて窪み、照射器具10の短手方向の両側に開口する凹部101を備える。さらに、凹部101は、照射器具10の径方向の内側に向かうに従い長手方向の長さが短くなっている。また、凹部101は、照射器具10の使用者の手の指が配置される空間である。凹部101は、照射器具10の長手方向に間隔をあけて複数(図示の例では3つ)設けられている。凹部101は、周方向の位置を同等にして設けられている。凹部101は、いずれも、照射器具10の外周面のうち、ノズル11が曲がる方向に位置する部分に設けられている。これにより、使用者が、照射器具10に対して握手するように、ノズル11が曲がる方向の反対側から照射器具10を把持すると、使用者の指が凹部101に配置される。
凹部101の大きさは、特に制限はなく、例えば、平均的な成人の手の指の大きさに合せて決定される。
【0063】
次に、プラズマ照射装置200の使用方法を説明する。
例えば、医師などの使用者は、照射器具10を持って移動させ、ノズル11を後述する被照射物に向ける。この際、使用者は、自身の利手(照射器具10の操作を行う手)の指を照射器具10の表面に設けられた凹部101に沿わせて、照射器具10を把持する。この状態で操作スイッチ9を押し、供給源70から照射器具10に電気およびプラズマ発生用ガスを供給する。
照射器具10に供給したプラズマ発生用ガスは、管状誘電体3の後端部から管状誘電体3の内空部に流入する。プラズマ発生用ガスは、内部電極4と外部電極5とが対向する位置において電離し、プラズマになる。
【0064】
本実施形態においては、内部電極4と外部電極5とが、プラズマ発生用ガスの流れる方向と直交する向きに対向している。内部電極4の外周面と外部電極5の内周面とが対向する位置で発生したプラズマは、ガス流路6と、第一の活性ガス流路7と、第二の活性ガス流路8とをこの順に通流する。この間、プラズマは、ガス組成を変化しつつ通流し、ラジカル等の活性種を含む活性ガスとなる。
【0065】
生じた活性ガスは、照射口1aから吐出される。吐出された活性ガスは、照射口1a近傍の気体の一部をさらに活性化して活性種を生成する。これらの活性種を含む活性ガスを被照射物に照射する。
【0066】
被照射物としては、例えば、細胞、生体組織、生物個体等を例示できる。
生体組織としては、内臓の各器官、体表や体腔の内面を覆う上皮組織、歯肉、歯槽骨、歯根膜およびセメント質等の歯周組織、歯、骨等を例示できる。
生物個体としては、ヒト、犬、猫、豚等の哺乳類;鳥類;魚類等のいずれでもよい。
【0067】
プラズマ発生用ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン等の希ガス;窒素;等を例示できる。これらのガスは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
プラズマ発生用ガスは、窒素を主成分とすることが好ましい。ここで、窒素を主成分とするとは、プラズマ発生用ガスにおける窒素の含有量が50体積%超であることをいう。
すなわち、プラズマ発生用ガスにおける窒素の含有量は、50体積%超が好ましく、70体積%以上がより好ましく、80質量%~100質量%がさらに好ましく、90質量%~100質量%が特に好ましい。プラズマ発生用ガス中、窒素以外のガス成分は、特に制限はなく、例えば、酸素、希ガス等を例示できる。
【0068】
プラズマ照射装置200が口腔内用治療器具である場合、管状誘電体3に導入するプラズマ発生用ガスの酸素濃度は、1体積%以下が好ましい。酸素濃度が上限値以下であれば、オゾンの発生を低減できる。
【0069】
管状誘電体3に導入するプラズマ発生用ガスの流量は、1L/min~10L/minが好ましい。
管状誘電体3に導入するプラズマ発生用ガスの流量が前記下限値以上であると、被照射物における被照射面の温度の上昇を抑制しやすい。プラズマ発生用ガスの流量が前記上限値以下であると、被照射物の清浄化、賦活化または治癒をさらに促進できる。
【0070】
内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電圧は、5kVpp以上20kVpp以下が好ましい。ここで、交流電圧を表す単位「Vpp(Volt peak to peak)」は、交流電圧波形の最高値と最低値との電位差である。
なお、内部電極4が外周面に凹凸を有しない円柱の部材である場合、内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電圧は、10kVpp以上が好ましい。外周面に凹凸を有さない内部電極4を用いる場合、外周面に凹凸を有する内部電極4を用いる場合に比べて、内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電圧を高める必要がある。
印加する交流電圧が前記上限値以下であれば、発生するプラズマの温度を低く抑えられる。印加する交流電圧が前記下限値以上であれば、さらに効率的にプラズマを発生できる。
【0071】
内部電極4と外部電極5との間に印加する交流の周波数は、0.5kHz以上20kHz未満が好ましく、1kHz以上15kHz未満がより好ましく、2kHz以上10kHz未満がさらに好ましく、3kHz以上9kHz未満が特に好ましく、4kHz以上8kHz未満が最も好ましい。
交流の周波数が前記上限値未満であれば、発生するプラズマの温度を低く抑えられる。交流の周波数が前記下限値以上であれば、さらに効率的にプラズマを発生できる。
【0072】
ノズル11の照射口1aから照射する活性ガスの温度は、50℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましい。
ノズル11の照射口1aから照射する活性ガスの温度が前記上限値以下であると、被照射面の温度を40℃以下にしやすい。被照射面の温度を40℃以下にすることで、被照射部分が患部である場合にも、患部への刺激を低減できる。
ノズル11の照射口1aから照射する活性ガスの温度の下限値は、特に制限はなく、例えば、10℃以上である。
活性ガスの温度は、照射口1aにおける活性ガスの温度を熱電対で測定した値である。
【0073】
照射口1aから被照射面までの距離(照射距離)は、例えば、0.01mm~10mmが好ましい。照射距離が上記下限値以上であれば、被照射面の温度を低くし、被照射面への刺激をさらに緩和できる。照射距離が上記上限値以下であれば、治癒等の効果をさらに高められる。
【0074】
照射口1aから1mm以上10mm以下の距離で離れた位置の被照射面の温度は、40℃以下が好ましい。被照射面の温度が40℃以下であれば、被照射面への刺激を低減できる。被照射面の温度の下限値は特に制限はないが、例えば、10℃以上である。
被照射面の温度は、内部電極4と外部電極5との間に印加する交流電圧、照射する活性ガスの吐出量、内部電極4の先端Q1から照射口1aまでの長さ等の組み合わせで調節できる。
被照射面の温度は、熱電対を用いて測定できる。
【0075】
活性ガスに含まれる活性種(ラジカル等)としては、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、オゾン、過酸化水素、スーパーオキシドアニオンラジカル、一酸化窒素、二酸化窒素、ペルオキシナイトライト、過酸化亜硝酸、三酸化二窒素等を例示できる。活性ガスに含まれる活性種の種類は、例えば、プラズマ発生用ガスの種類等にさらに調節できる。
【0076】
活性ガス中におけるヒドロキシラジカルの密度(ラジカル密度)は、0.1μmol/L~300μmol/Lが好ましく、0.1μmol/L~100μmol/Lがより好ましく、0.1μmol/L~50μmol/Lがさらに好ましい。ラジカル密度が前記下限値以上であると、細胞、生体組織および生物個体から選ばれる被照射物の清浄化、賦活化または異常の治癒を促進しやすい。ラジカル密度が前記上限値以下であると、被照射面への刺激を低減できる。
【0077】
ラジカル密度は、例えば、以下の方法で測定できる。
DMPO(5,5-ジメチル-1-ピロリン-N-オキシド)0.2mol/L溶液0.2mLに対して、活性ガスを30秒間照射する。この際、照射口1aから液面までの距離を5.0mmとする。活性ガスを照射した前記溶液について、電子スピン共鳴(ESR)法を利用してヒドロキシルラジカル濃度を測定し、これをラジカル密度とする。
【0078】
活性ガス中における一重項酸素の密度(一重項酸素密度)は、0.1μmol/L~300μmol/Lが好ましく、0.1μmol/L~100μmol/Lがより好ましく、0.1μmol/L~50μmol/Lがさらに好ましい。一重項酸素密度が前記下限値以上であると、細胞、生体組織および生物個体等の被照射物の清浄化、賦活化または異常の治癒を促進しやすい。前記上限値以下であると、被照射面への刺激を低減できる。
【0079】
一重項酸素密度は、例えば、以下の方法で測定できる。
TPC(2,2,5,5-テトラメチル-3-ピロリン-3-カルボキサミド)0.1mol/L溶液0.4mLに対して、活性ガスを30秒間照射する。この際、照射口1aから液面までの距離を5.0mmとする。活性ガスを照射した前記溶液について、電子スピン共鳴(ESR)法を利用して一重項酸素濃度を測定し、これを一重項酸素密度とする。
【0080】
照射口1aから照射する活性ガスの流量は、1L/min~10L/minが好ましい。
照射口1aから照射する活性ガスの流量が前記下限値以上であると、活性ガスが被照射面に作用する効果を充分に高められる。照射口1aから照射する活性ガスの流量が前記上限値未満であると、活性ガスの被照射面の温度が過度に高まることを防止できる。加えて、被照射面が濡れている場合には、被照射面の急速な乾燥を防止できる。さらに、被照射面が患部である場合には、患者への刺激を抑制できる。
なお、プラズマ照射装置200において、照射口1aから照射する活性ガスの流量は、管状誘電体3へのプラズマ発生用ガスの供給量で調節できる。
【0081】
プラズマ照射装置200によって生じる活性ガスは、外傷や異常の治癒を促進する効果を有する。活性ガスを細胞、生体組織または生物個体に照射することによって、その被照射部分の清浄化、賦活化、またはその被照射部分の治癒を促進できる。
【0082】
外傷や異常の治癒を促進する目的で活性ガスを照射する場合、その照射頻度、照射回数および照射期間は特に制限はない。例えば、1L/min~5.0L/minの照射量で活性ガスを患部に照射する場合、1日1~5回、毎回10秒~10分、1日間~30日間、等の照射条件が、治癒を促進する観点から好ましい。
【0083】
本実施形態のプラズマ照射装置200は、特に口腔内用治療器具、歯科用治療器具として有用である。また、本実施形態のプラズマ照射装置200は、動物治療用器具(例えば、ヒトを除く動物の口腔内を治療するための治療装置)としても好適である。
【0084】
本実施形態のプラズマ照射装置200によれば、照射器具10の表面に設けられた定着機構100(凹部101)に指を沿わせて、照射器具10を把持することにより、照射器具10が使用者の手にしっかりと固定されるため、照射器具10を持ちやすく、操作性に優れ、使用者300が治療中に、照射器具10を落下することを防止できる。したがって、適切に治療を行うことができる。また、定着機構100は、照射器具10の外周面10aから径方向に向けて窪み、照射器具10の短手方向の両側に開口する凹部101を備え、凹部101は、照射器具10の径方向の内側に向かうに従い長手方向の長さが短くなっているため、照射器具10の表面に付着した汚れが凹部101内に溜まり難く、照射器具10の表面に付着した汚れを落としやすい。
【0085】
<他の実施形態>
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
【0086】
例えば、
図8から
図13に示すような第1変形例から第9変形例に係る定着機構110,120,130,140,150,160,170,180,190を採用してもよい。なお、第1変形例から第9変形例に係る定着機構110,120,130,140,150,160,170,180,190では、前記実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0087】
図8に示す第1変形例に係る定着機構110は、照射器具10の外周面10aから径方向に向けて窪み、照射器具10の短手方向の両側に開口する凹部111を備える。さらに、凹部111は、照射器具10の径方向の内側に向かうに従い長手方向の長さが短くなっている。凹部111は、例えば、照射器具10の全周に渡って設けられている。使用者が照射器具10をペンのように握ると、凹部111に指が配置される。
凹部111の大きさは、特に制限はなく、例えば、平均的な成人の手の大きさに合せて決定される。
【0088】
図9に示す第2変形例に係る定着機構120は、照射器具10の使用者の手の指を挿通する環状部121である。本変形例では、照射器具10の外形が拳銃の形態をなしており、環状部121はその拳銃の形態において、引き金を引くための指を、その内側に挿通する部分である。
環状部121の大きさ、言い換えれば、環状部121の内側の大きさ(面積)は、特に制限はなく、例えば、平均的な成人の手の指の大きさに合せて決定される。
【0089】
図10に示す第3変形例に係る定着機構130は、ローレット(滑り止め)131である。ローレット131は、照射器具10のカウリング2の表面に設けられた微細な凹凸である。ローレット131としては、斜めローレット、平目ローレット、綾目ローレット等のいずれでもよい。
ローレット131を構成する凹凸の大きさは、特に制限はなく、使用者の手との間に十分な摩擦力が生じるように決定される。
【0090】
図11に示す第4変形例に係る定着機構140は、ラバーグリップ(滑り止め)141である。ラバーグリップ141は、照射器具10のカウリング2の表面に設けられている。
ラバーグリップ141をゴムの材質は、特に制限はなく、使用者の手との間に十分な摩擦力が生じるように決定される。
【0091】
図12に示す第5変形例に係る定着機構150は、照射器具10の外周面10aから径方向に向けて窪み、照射器具10の短手方向の両側に開口する凹部151,152を備える。さらに、凹部151,152は、照射器具10の径方向の内側に向かうに従い長手方向の長さが短くなっている。また、凹部151,152は、照射器具10の使用者の手の指が配置される空間である。凹部151,152は、照射器具10の長手方向に間隔をあけて複数(図示の例では6つ)設けられている。凹部151と凹部152は、照射器具10のカウリング2の表面において、対向するように設けられている。すなわち、照射器具10の長手方向に間隔をあけて設けられた3つ窪みからなる凹部151と、照射器具10の長手方向に間隔をあけて設けられた3つ窪みからなる凹部152とが、照射器具10のカウリング2の表面において、対向するように設けられている。凹部151,152の大きさは、特に制限はなく、例えば、平均的な成人の手の指の大きさに合せて決定される。特に、使用者が照射器具を持ち替えた場合に、使用者の指が凹部151または凹部152のいずれかに密接するように、凹部151および凹部152の大きさや位置が設けられていることが好ましい。
これにより、照射器具10を持ちやすく、操作性に優れ、使用者が照射器具を持ち替えても、照射器具10を落下することを防止できる。また、定着機構150は、照射器具10の外周面10aから径方向に向けて窪み、照射器具10の短手方向の両側に開口する凹部151,152を備え、凹部151,152は、照射器具10の径方向の内側に向かうに従い長手方向の長さが短くなっているため、照射器具10の表面に付着した汚れが凹部151,152内に溜まり難く、照射器具10の表面に付着した汚れを落としやすい。
【0092】
図13に示す第6変形例に係る定着機構160は、照射器具10の使用者の手の指を挿通する環状部材162を有するストラップ161である。ストラップ161は、環状部材162と、環状部材162に連結し、ストラップ161を照射器具10に固定する提げ紐163と、を有する。
使用者は、環状部材162に手の指を挿通することにより、照射器具10を手で把持することを止めても、照射器具10を落下することがない。
【0093】
図14に示す第7変形例に係る定着機構170は、照射器具10の先端側(ノズル11側)に照射器具10の外周面10aから径方向に向けて窪む凹部171を備える。さらに、凹部171は、照射器具10の径方向の内側に向かうに従い長手方向の長さが短くなっている。また、凹部171は、照射器具10の使用者の手の指が配置される空間である。凹部171の大きさは、特に制限はなく、例えば、平均的な成人の手の指の大きさに合せて決定される。特に、使用者が照射器具を持ち替えた場合に、使用者の指が凹部171に密接するように、凹部171の大きさや位置が設けられていることが好ましい。
これにより、照射器具10を持ちやすく、操作性に優れ、使用者が照射器具を持ち替えても、照射器具10を落下することを防止できる。また、定着機構170は、照射器具10の外周面10aから径方向に向けて窪む凹部171を備え、凹部171は、照射器具10の径方向の内側に向かうに従い長手方向の長さが短くなっているため、照射器具10の表面に付着した汚れが凹部171内に溜まり難く、照射器具10の表面に付着した汚れを落としやすい。
【0094】
図15に示す第8変形例に係る定着機構180は、照射器具10の先端側(ノズル11側)に照射器具10の外周面10aから径方向に向けて窪む凹部181を備える。さらに、凹部181は、照射器具10の径方向の内側に向かうに従い長手方向の長さが短くなっている。また、凹部181は、照射器具10の使用者の手の指が配置される空間である。凹部181の大きさは、特に制限はなく、例えば、平均的な成人の手の指の大きさに合せて決定される。特に、使用者が照射器具を持ち替えた場合に、使用者の指が凹部181に密接するように、凹部181の大きさや位置が設けられていることが好ましい。
これにより、照射器具10を持ちやすく、操作性に優れ、使用者が照射器具を持ち替えても、照射器具10を落下することを防止できる。また、定着機構180は、照射器具10の外周面10aから径方向に向けて窪む凹部181を備え、凹部181は、照射器具10の径方向の内側に向かうに従い長手方向の長さが短くなっているため、照射器具10の表面に付着した汚れが凹部181内に溜まり難く、照射器具10の表面に付着した汚れを落としやすい。
【0095】
図16に示す第9変形例に係る定着機構190は、照射器具10の使用者の手の指を挿通する環状部191である。本変形例では、照射器具10の外形が拳銃の形態をなしており、環状部191はその拳銃の形態において、引き金を引くための指を、その内側に挿通する部分である。また、定着機構190は、照射器具10の先端側(ノズル11側)にある。
環状部191の大きさ、言い換えれば、環状部191の内側の大きさ(面積)は、特に制限はなく、例えば、平均的な成人の手の指の大きさに合せて決定される。
【0096】
上述の定着機構のなかでも、口腔内に適応できる、プラズマ照射をし易い、メンテナンス性に優れる等の観点から、
図7に示す定着機構100、
図8に示す定着機構110、
図12に示す定着機構150、
図14に示す定着機構170、
図15に示す定着機構180がより好ましい。
【0097】
操作スイッチ9が、上記の実施形態と異なっていてもよい。例えば、照射器具10に操作スイッチ9を設けることに代えて、供給ユニット20に足踏みペダルを設けてもよい。
この場合、足踏みペダルを操作部とし、例えば使用者が足踏みペダルを踏んだときに、供給源70からプラズマ発生用ガスをプラズマ発生部12に供給する構成を採用すること等ができる。
報知部80や検出部15がなくてもよい。
【0098】
上述の本実施形態の内部電極4の形状は、ねじ状である。しかしながら、内部電極は、外部電極との間にプラズマを発生できれば、内部電極の形状は限定されない。
内部電極は、表面に凹凸を有してもよいし、表面に凹凸を有しなくてもよい。内部電極としては、外周面に凹凸を有する形状が好ましい。
例えば、内部電極の形状は、コイル状でもよいし、外周面に突起、穴、貫通孔が複数形成された棒形状または筒形状でもよい。内部電極の断面形状は、特に限定されず、例えば、真円形、楕円形等の円形、四角形、六角形等の多角形を例示できる。
【0099】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のプラズマ式治療キットは、口腔内の治療、歯科の治療、動物の治療等の用途に有用である。活性ガスの照射によって処理可能な疾患および症状としては、例えば、歯肉炎、歯周病等の口腔内の疾患、皮膚の創傷等を例示できる。
本発明の治療方法は、生体組織の治癒促進に有効である。本発明の治療方法は、ヒトのみならず、ヒトを除く動物の治療にも有効である。
【符号の説明】
【0101】
1 本体管
10 照射器具
11 ノズル
12 プラズマ発生部
13 カバー
100,110,120,130,140,150,160,170,180,190 定着機構
101,111,151,152,171,181,191 凹部
121,191 環状部
131 ローレット
141 ラバーグリップ
161 ストラップ
162 環状部材
200 プラズマ照射装置