(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】樹脂成形方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/12 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
H02K15/12 D
(21)【出願番号】P 2018176178
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000179328
【氏名又は名称】リックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲神▼名 玲秀
(72)【発明者】
【氏名】徳永 賢哲
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-343528(JP,A)
【文献】特開2016-197972(JP,A)
【文献】特開2012-013708(JP,A)
【文献】特開2015-046246(JP,A)
【文献】特開2006-141179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアに装着されるステータコイルのコイルエンドを被覆する絶縁樹脂を成形する樹脂成形方法であって、
前記ステータコイルに接続され前記ステータコアの外側に配置されるステータ端子を載置する通電および昇降可能な通電端子台と、昇降可能で前記通電端子台と対となり前記ステータ端子をクランプする端子押さえと、を用いて、前記ステータ端子をクランプした状態で前記ステータ端子を介して前記ステータコイルを通電して加熱する第1ステップと、
加熱した前記ステータコイルの前記コイルエンドを前記絶縁樹脂で被覆すると共に前記絶縁樹脂を成形する第2ステップと、
を備え、
前記第1ステップは、前記ステータ端子をクランプした状態で前記ステータ端子を介して前記ステータコイルを通電して加熱する前に、前記通電端子台と前記端子押さえとによる前記ステータ端子のクランプを解除した状態で前記通電端子台に前記ステータ端子を載置し、前記通電端子台を上方向または下方向へ移動させて前記ステータ端子の位置を
前記上方向または前記下方向を含まない所定角度傾斜した面内における所定範囲内とする、
樹脂成形方法。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂成形方法であって、
前記第1ステップは、前記ステータ端子の位置を検出する位置検出装置により検出された前記ステータ端子の位置が前記所定範囲内となるように前記通電端子台を昇降させる、
樹脂成形方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の樹脂成形方法であって、
前記第1ステップは、前記端子押さえと前記通電端子台とで前記ステータ端子をクランプしたときの前記ステータ端子の移動量を用いて前記ステータ端子の位置が前記所定範囲内となるように前記通電端子台を昇降させる、
樹脂成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形方法に関し、詳しくは、ステータコアに装着されるステータコイルのコイルエンドに絶縁樹脂を成形する樹脂成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の樹脂成形方法としては、ステータコイルにコイル固着剤を塗布し、コイル固着剤を塗布したステータコイルを加熱炉へ投入して加熱し、コイル固着剤を硬化させて成形するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、コイル固着剤を加熱炉に投入する前にステータコイルを通電してステータコイルを加熱する。これにより、コイル固着材を迅速に硬化させて、生産効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の樹脂成形方法では、ステータコイルに接続され他の装置(例えば、トランスアクスルなど)に組み付けられるステータ端子の位置にばらつきがあると、ステータ端子の他の装置への組み付けが困難になる場合がある。こうした不都合を回避する手法として、ステータコイルに樹脂成形した後に、専用の装置を用いてステータ端子の位置を調整した上で、ステータ端子を他の装置へ組み付ける手法が考えられる。しかしながら、この手法では、ステータコイルに樹脂成形した後に、ステータ端子の位置を調整するための専用の装置を用意してステータを専用の装置へセットするための時間が必要となり、ステータコアにステータコイルを装着してから他の装置へ組み付けるまでの所要時間が増加してしまう。
【0005】
本発明の樹脂成形方法は、ステータコアにステータコイルを装着してからステータ端子を他の装置へ組み付けるまでの所要時間の増加を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の樹脂成形方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の樹脂成形方法は、
ステータコアに装着されるステータコイルのコイルエンドを被覆する絶縁樹脂を成形する樹脂成形方法であって、
前記ステータコイルに接続され前記ステータコアの外側に配置されるステータ端子を載置する通電および昇降可能な通電端子台と、昇降可能で前記通電端子台と対となり前記ステータ端子をクランプする端子押さえと、を用いて、前記ステータ端子をクランプした状態で前記ステータ端子を介して前記ステータコイルを通電して加熱する第1ステップと、
加熱した前記ステータコイルの前記コイルエンドを前記絶縁樹脂で被覆すると共に前記絶縁樹脂を成形する第2ステップと、
を備え、
前記第1ステップは、前記ステータ端子をクランプした状態で前記ステータ端子を介して前記ステータコイルを通電して加熱する前に、前記通電端子台と前記端子押さえとによる前記ステータ端子のクランプを解除した状態で前記通電端子台に前記ステータ端子を載置し、前記通電端子台を上方向または下方向へ移動させて前記ステータ端子の位置を所定範囲内とする、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の樹脂成形方法では、ステータコイルに接続されステータコアの外側に配置されるステータ端子を載置する通電および昇降可能な通電端子台と、昇降可能で通電端子台と対となりステータ端子をクランプする端子押さえと、を用いて、ステータ端子をクランプした状態でステータ端子を介してステータコイルを通電して加熱し、加熱したステータコイルのコイルエンドを絶縁樹脂で被覆すると共に絶縁樹脂を成形する。そして、ステータ端子をクランプした状態でステータ端子を介して前記ステータコイルを通電して加熱する前に、通電端子台と端子押さえとによるステータ端子のクランプを解除した状態で通電端子台にステータ端子を載置し、前記通電端子台を上方向または下方向へ移動させて前記ステータ端子の位置を所定範囲内とする。ここで、「所定範囲」は、ステータ端子を良好に他の装置へ組み付けることが可能なステータ端子の位置の範囲として予め定められた範囲である。通電端子台を上方向または下方向へ移動させるのは、通電端子台を上方向または下方向の移動により、ステータ端子が、ステータコアの内径方向または外径方向へ移動することに基づく。これにより、ステータ端子の位置の調整とステータコイルの通電とを同一の装置で一連の工程として行なうことができるから、ステータコイルを被覆する絶縁樹脂を成形した後にステータを専用の装置にセットしてステータ端子の位置を調整するものに比して、ステータコアにステータコイルを装着してから他の装置へステータ端子を組み付けるまでの所要時間の増加を抑制することができる。
【0009】
こうした本発明の樹脂成形方法において、前記第1ステップは、前記ステータ端子の位置を検出する位置検出装置により検出された前記ステータ端子の位置が前記所定範囲内となるように前記通電端子台を上方向または下方向へ移動させてもよい。こうすれば、より精度よく、ステータ端子の位置を所定範囲内とすることができる。
【0010】
また、本発明の樹脂成形方法において、前記第1ステップは、前記端子押さえと前記通電端子台とで前記ステータ端子をクランプしたときの前記ステータ端子の移動量を用いて前記ステータ端子の位置が前記所定範囲内となるように前記通電端子台を上方向または下方向へ移動させてもよい。こうすれば、より精度よく、ステータ端子の位置を所定範囲内とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例としての樹脂成形方法により絶縁樹脂18が形成されたステータ10の構成の一例を示す説明図である。
【
図2】絶縁樹脂18を形成する樹脂成形工程を説明するための工程図である。
【
図3】ステータコイル14を装着したステータコア12が予備加熱装置20にセットされている様子を説明するための説明図である。
【
図4】
図3の要部を
図3における右斜め上方向から視た様子の概略を示す概略図である。
【
図5】
図3の要部を
図3における上方向から視た様子の概略を示す概略図である。
【
図6】通電端子台38u,38v,38wを下方向へ移動させたときのステータ端子16u,16v,16wの移動方向を説明するための説明図である。
【
図7】通電端子台38u,38v,38wを上方向へ移動させたときのステータ端子16u,16v,16wの移動方向を説明するための説明図である。
【
図8】軸中心Oとステータ端子16uの位置Ptとの関係の一例を示す説明図である。
【
図9】移動量dZと移動量dX,dYとの関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としての樹脂成形方法により絶縁樹脂18が形成されたステータ10の構成の一例を示す説明図である。ステータ10は、図示しないロータと組み合わされて3相交流発電電動機を構成し、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車などの走行用の電動機や発電機に用いられる。ステータ10は、ステータコア12と、三相(U相,V相,W相)のステータコイル14と、を備えている。
【0014】
ステータコア12は、例えばプレス加工により円環状に形成された無方向性電磁鋼板を複数積層して構成されている。ステータコア12は、周方向に間隔をもって径方向内側に突出する図示しない複数のティースと、それぞれ互いに隣り合うティースの間に形成された図示しない複数のコアスロットとを備える。
【0015】
三相のステータコイル14は、ステータコア12の軸方向における端面ES1,ES2から2つのコイルエンド14a,14bが外側に突出するように、ステータコア12の複数のティースに集中巻または分布巻によって巻回されている。コイルエンド14aからは、U相,V相,W相の3つの動力線15u,15v,15wがステータコア12より外側に引き出されてステータ端子16u,16v,16wに接続されている。ステータ端子16u,16v,16wは、上側の端面ES1より低い位置に配置されている。
【0016】
コイルエンド14bは、保護および固定のため、絶縁性の高い熱硬化性の樹脂により形成された絶縁樹脂18により被覆されている。
【0017】
次に、絶縁樹脂18を成形する方法について説明する。
図2は、絶縁樹脂18を成形する樹脂成形工程を説明するための工程図である。
【0018】
樹脂成形工程では、最初に、ステータコイル14を装着したステータコア12を予備加熱装置20にセットして固定し、ステータ10のステータ端子16u,16v,16wの位置を調整する工程を実行する(ステップS100)。ここで、予備加熱装置20の構成について説明する。
【0019】
図3は、ステータコイル14を装着したステータコア12が予備加熱装置20にセットされている様子を説明するための説明図である。
図4は、
図3の要部を
図3における右斜め上方向から視た様子の概略を示す概略図である。
図5は、
図3の要部を
図3における上方向から視た様子の概略を示す概略図である。予備加熱装置20は、図示するように、ステージ22と、クランプ装置24と、カメラ46と、制御装置50と、を備えている。
【0020】
ステージ22には、ステータコア12がセットされて固定される。
【0021】
クランプ装置24は、端子押さえ26u,26v,26wと、昇降シリンダ32と、通電端子台38u,38v,38wと、昇降シリンダ42と、を備えている。
【0022】
端子押さえ26u,26v,26wは、取付部材28を介してアーム30の先端に取り付けられている。アーム30は、昇降シリンダ32に片持ち支持されており、昇降シリンダ32により
図1における上下方向へ移動する。
【0023】
昇降シリンダ32は、
図4において左上から右下方向へ延在するガイドレール34上を摺動するアーム35の端部に取り付けられた支持台36上に取り付けられている。昇降シリンダ32は、制御装置50により制御されている。
【0024】
通電端子台38u,38v,38wは、支持台40上に取り付けられている。支持台40は、昇降シリンダ42に支持されており、昇降シリンダ42により
図3における上下方向へ移動する。通電端子台38u,38v,38wは、電極44u,44v,44wを介して電源44に接続されている。
【0025】
昇降シリンダ42は、制御装置50により制御されている。
【0026】
カメラ46は、ステータコア12とステータ端子16u,16v,16wとを撮影可能な位置に配置されている。カメラ46で撮影された画像は、制御装置50へ出力される。
【0027】
制御装置50は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。制御装置50には、カメラ46からの画像が入力ポートを介して入力されている。制御装置50からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。制御装置50から出力される信号としては、例えば、昇降シリンダ32,42への駆動信号や電源44への制御信号,カメラ46への制御信号などを挙げることができる。
【0028】
こうして構成されたクランプ装置24では、図示しない横行シリンダを作動することにより、アーム35が
図4において左上から右下の方向へ移動する。アーム35がこうして移動することにより、アーム35に支持されている支持台36や昇降シリンダ32,アーム30,取付部材28,端子押さえ26u,26v,26wが
図4において左上から右下方向へ移動する。昇降シリンダ32を作動することにより、アーム30が
図4における上下方向へ移動し、端子押さえ26u,26v,26wが上下方向へ移動する。昇降シリンダ42を作動することにより、支持台40が
図4における上下方向へ移動し、通電端子台38u,38v,38wが上下方向へ移動する。
【0029】
ステップS100では、端子押さえ26u,26v,26wをステータ端子16u,16v,16wから離した状態で、昇降シリンダ42を作動して通電端子台38u,38v,38wを上方向または下方向へ移動させて、ステータ端子16u,16v,16wを移動させる。
図6は、通電端子台38u,38v,38wを下方向へ移動させたときのステータ端子16u,16v,16wの移動方向を説明するための説明図である。
図7は、通電端子台38u,38v,38wを上方向へ移動させたときのステータ端子16u,16v,16wの移動方向を説明するための説明図である。通電端子台38u,38v,38wにステータ端子16u,16v,16wを当接している位置(
図6に破線で示す)から下方向へ移動させると、
図6に示すように、ステータ端子16u,16v,16wは、ステータコイル14の端部が引き出された位置を支点Aとしてステータコア12の内径方向へ移動する。通電端子台38u,38v,38wを上方向へ移動させると、
図7に示すように、通電端子台38u,38v,38wでステータ端子16u,16v,16wを押し上げるから、ステータ端子16u,16v,16wは、ステータコイル14の端部が引き出された位置を支点Aとしてステータコアの外径方向へ移動する。
【0030】
通電端子台38u,38v,38wの移動は、詳細には、下記のように行なわれている。最初に、制御装置50は、ステータ端子16u,16v,16wが通電端子台38u,38v,38wと当接する初期位置Pfへ通電端子台38u,38v,38wを移動するように昇降シリンダ42を制御する。そして、その状態で、カメラ46で
図1における上方からステータコア12の軸中心Oとステータ端子16u,16v,16wとを撮影する。撮影した画像は、制御装置50に入力される。
【0031】
制御装置50は、入力した画像から軸中心Oに対するステータ端子16uの位置Pt(例えば、ステータ端子16uをボルトで他の装置へ組み付けるときに用いられるボルト穴の中心の位置)が、他の装置へステータ端子16u,16v,16wを良好に組み付けることが可能な範囲として予め定めた所定範囲Rp内となっているか否かを判定する。
図8は、軸中心Oとステータ端子16uの位置Ptとの関係の一例を示す説明図である。実施例では、図示するように、通電端子台38uの移動方向(紙面に垂直方向で、紙面の裏から表へ向かう方向を正の値とする)をZ方向として、紙面に平行にX方向,Y方向を定める。
【0032】
ステータ端子16uの位置Ptが所定範囲Rp内であるときには、通電端子台38uを移動させずにその位置で保持する。
【0033】
ステータ端子16uの位置が所定範囲Rp外であるときには、ステータ端子16uの位置が所定範囲Rpとなるようにステータ端子16uの
図8のX方向,Y方向での目標移動量dX*,dY*を導出し、ステータ端子16uの
図8のX方向,Y方向での移動量が目標移動量dX*,dY*となる通電端子台38uをステータ端子16uに対する
図8のZ方向での目標移動量dZ*を導出する。実施例では、通電端子台38uのステータ端子16uに対する
図8のZ方向での移動量dZと、ステータ端子16uの
図8のX方向,Z方向での移動量dX,dYとの関係式を予め求めておき、この関係式からステータ端子16uを所定範囲Rp内の位置へ移動するための目標移動量dZ*を導出する。
図9は、移動量dZと移動量dX,dYとの関係の一例を示す説明図である。図中、菱形の点は、移動量dZに対する移動量dXの実験結果である。正方形の点は、移動量dZに対する移動量dYの実験結果である。図中、2つの関係式は、これらの実験結果に基づいて最小二乗法により求めた移動量dZに対する移動量dX,dYの関係式である。目標移動量dZ*は、これらの2つの関係式を用いて設定する。
【0034】
こうして目標移動量dZ*を設定すると、通電端子台38uのステータ端子16uに対する移動量が目標移動量dZ*となるように昇降シリンダ42を制御して、支持台40を上方向または下方向へ移動させる。実施例では、通電端子台38uと共に通電端子台38v,38wも移動する。これにより、ステータ端子16uの位置を所定範囲Rp内とすることにより、ステータ端子16u,16v,16wを他の装置へ良好に組み付け可能な位置とすることができる。
【0035】
こうしてステータ端子16u,16v,16wの位置を調整したら、通電端子台38u,38v,38wの位置を維持した状態で、端子押さえ26u,26v,26wがステータ端子16u,16v,16wを上から押さえるように昇降シリンダ32を駆動して、端子押さえ26u,26v,26wと通電端子台38u,38v,38wとによりステータ端子16u,16v,16wをクランプした状態で通電端子台38u,38v,38wを通電するように電源44を制御する(ステップS110)。これにより、後述する絶縁樹脂18の成形に備えて、ステータ端子16u,16v,16wを介してステータコイル14を通電して加熱することができる。このように、実施例では、ステータ端子16u,16v,16wの位置の調整とステータコイル14の通電とを同一の予備加熱装置20を用いて一連の工程として行なっている。
【0036】
ステータコイル14を加熱したら、予備加熱装置20からステータコア12を外してステータコア12を図示しない樹脂成形装置にセットして、コイルエンド14bに絶縁樹脂18を成形して(ステップS120)、本工程を終了する。絶縁樹脂18の成形は、熱硬化樹脂を型に充填し、コイルエンド14bを型に充填した樹脂に浸漬させた状態で、IH加熱器で熱硬化樹脂を加熱して硬化させることにより行なわれる。ステップS110で予めステータコイル14を加熱しているから、ステップS120では迅速に熱硬化樹脂を昇温させて、絶縁樹脂18を成形することができる。このように、ステータ端子16u,16v,16wの位置の調整とステータコイル14の通電とを、同一の予備加熱装置20を用いて、一連の工程として行なった後に、絶縁樹脂18を成形するから、ステータコイル14を被覆する絶縁樹脂18を成形した後にステータ10を別の専用の装置にセットしてステータ端子16u,16v,16wの位置を調整するものに比して、ステータコア12にステータコイル14を装着してから他の装置へ組み付けるまでの所要時間の増加を抑制することができる。
【0037】
以上説明した実施例の樹脂成形方法によれば、通電端子台38u,38v,38wと端子押さえ26u,26v,26wとによるステータ端子16u,16v,16wのクランプを解除した状態で通電端子台38u,38v,38wにステータ端子16u,16v,16wを載置し、通電端子台38u,38v,38wを上方向または下方向へ移動させてステータ端子16uの位置を所定範囲内Rpとし、通電端子台38u,38v,38wの位置を維持した状態で通電端子台38u,38v,38wと端子押さえ26u,26v,26wとによりステータ端子16u,16v,16wをクランプし、ステータ端子16u,16v,16wを介してステータコイル14を通電して加熱することにより、ステータコア12にステータコイル14を装着してから他の装置へ組み付けるまでの所要時間の増加を抑制することができる。
【0038】
実施例の樹脂成形方法では、ステップS100で、撮影した画像に基づくステータ端子16uの位置Ptが所定範囲Pp内となるように通電端子台38uを移動させている。しかしながら、ステップS110で通電端子台38uと端子押さえ26uとでステータ端子16uをクランプすると僅かではあるがステータ端子16uの位置が移動することから、ステップS100では、通電端子台38uと端子押さえ26uとでステータ端子16uをクランプしたときに生じるステータ端子16uの移動分を考慮して、ステータ端子16uの位置Ptが所定範囲Pp内となるように通電端子台38uを移動させてもよい。
【0039】
実施例の樹脂成形方法では、ステータ端子16uの位置が所定範囲Rp外であるときには、ステータ端子16uの位置Ptが所定範囲Rp内となるように通電端子台38uを移動させている。しかしながら、ステータ端子16uに代えて、ステータ端子16vまたはステータ端子16wが所定範囲Rp外であるときには、ステータ端子16vまたはステータ端子16wの位置が所定範囲Rp内となるように通電端子台38u,38v,38wを移動させてもよい。
【0040】
実施例の樹脂成形方法では、ステップS100で、カメラ46でステータコア12の軸中心0とステータ端子16uとを撮影し、撮影した画像を用いて、ステータ端子16uの位置Ptを定めている。しかしながら、ステータ端子16uの位置Ptを定める手法は、カメラ46を用いたものに限定されるものではなく、他の手法、例えば、レーザ変位計などを用いてもよい。
【0041】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、樹脂成形工程のステップS100,S110が「第1ステップ」に相当し、ステップS120が「第2ステップ」に相当する。
【0042】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0043】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、ステータコアに装着されるステータコイルのコイルエンドに絶縁樹脂を成形する樹脂成形方法を用いる様々な製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 ステータ、12 ステータコア、14 ステータコイル、14a,14b コイルエンド、15u,15v、15W 動力線、16u,16v,16w ステータ端子、18 絶縁樹脂、20 予備加熱装置、22 ステージ、24 クランプ装置、26u,26v,26w 端子押さえ、28 取付部材、30 アーム、32,42 昇降シリンダ、34 ガイドレール、35 アーム、36 支持台、38u,38v,38w 通電端子台、40 支持台、44 電源、44u,44v,44w 電極、46 カメラ、50 制御装置、ES1,ES2 端面。