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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20220301BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20220301BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018188277
(22)【出願日】2018-10-03
(62)【分割の表示】P 2013165643の分割
【原出願日】2013-08-08
(65)【公開番号】P2018202222
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2018-10-03
【審判番号】
【審判請求日】2020-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(72)【発明者】
【氏名】西尾 公良
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】藤田 年彦
【審判官】吉村 尚
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-131970(JP,A)
【文献】特開2003-24484(JP,A)
【文献】特開2002-35178(JP,A)
【文献】特開2000-126340(JP,A)
【文献】特開2007-527259(JP,A)
【文献】特開2015-27395(JP,A)
【文献】特開2009-247497(JP,A)
【文献】特開2008-99903(JP,A)
【文献】特開2005-6698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00-53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドであって、
クラウン部、ソール部、及びサイド部を有するとともに、前記クラウン部、ソール部、及びサイド部で囲まれた開口を有する、ゴルフクラブヘッド本体と、
前記ゴルフクラブヘッド本体の開口を塞ぐフェース部と、
を備え、
前記フェース部は、平坦な板状に形成された本体部と、前記本体部の周縁から延びる周縁部とを有するカップ状に形成され、
フェース-バック方向において、トゥ側における前記周縁部の平面視の幅が、ヒール側における前記周縁部の平面視の幅より、長く形成されており、
前記フェース部におけるトゥ-ヒール方向の中心よりも、前記ゴルフクラブヘッドの重心を通る前記フェース面の法線と当該フェース面との交点がヒール側に位置しており、
前記フェース部は、
前記フェース部の中心部の主な領域であり、前記交点が位置する第1部位と、
前記フェース部のトゥ側の主な領域であり、前記第1部位よりも肉厚が小さく、前記第1部位よりもトゥ-ヒール方向のトゥ側に位置する第2部位と、
前記フェース部のヒール側の主な領域であり、前記第2部位よりも肉厚が小さく、前記第1部位よりもトゥ-ヒール方向のヒール側に位置する第3部位と、
を備え、
前記第2部位と、前記第3部位とは、トゥ-ヒール方向に離間しており、
前記第2部位及び前記第3部位は、それぞれ、前記第1部位よりも上方及び下方に延びている、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
トゥ側における前記周縁部の平面視の幅が、ヒール側における前記周縁部の平面視の幅より、3mm以上長い、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
トゥ側における前記周縁部の平面視の幅は、6~12mmである、請求項1または2に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ウッド型のゴルフクラブのヘッドは、従来から、多くの改良がなされてきており、特に、ドライバーに関しては、飛距離を延ばすために種々の提案がなされている。例えば、特許文献1に示すように、いわゆるカップフェース構造と呼ばれるフェース部を採用しているものがある。具体的には、ヘッドを、開口が形成されたヘッド本体と、ヘッド本体の開口を塞ぐフェース部とで構成し、フェース部の周縁に、開口の周縁を囲むように延びる周縁部を形成している。フェース部にこのような周縁部を設けると、ボールを打撃したときのフェース部の撓み量が大きくなるため、反発性能が向上し、飛距離が伸びるという効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-36050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドライバーにおいて飛距離を伸ばすためには、ボールの捕まりを向上させる必要があり、そのためにはヘッドの重心をヒール側に移動させるという検討がなされている。しかしながら、このようにすると、フェース部におけるトゥ側の反発が低下するという新たな問題が生じる。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ヘッドの重心をヒール側に移動させたとしても、トゥ側の反発性能の低下を抑制することができるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、クラウン部、ソール部、及びサイド部を有するとともに、前記クラウン部、ソール部、及びサイド部で囲まれた開口を有する、ゴルフクラブヘッド本体と、前記ゴルフクラブヘッド本体の開口を塞ぐフェース部と、を備え、前記フェース部は、平坦な板状に形成された本体部と、前記本体部の周縁から延びる周縁部とを有するカップ状に形成され、フェース-バック方向において、トゥ側における前記周縁部の平面視の幅が、ヒール側における前記周縁部の平面視の幅より、長く形成されている。
【0006】
上記ゴルフクラブにおいて、トゥ側における前記周縁部の平面視の幅が、ヒール側における前記周縁部の平面視の幅より、3mm以上長くすることができる。
【0007】
上記各ゴルフクラブにおいて、トゥ側における前記周縁部の平面視の幅は、6~12mmとすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フェース部に設けた周縁部を、平面視においてトゥ側を長くしているため、ボールの打撃時に、フェース部におけるトゥ側の撓み量を大きくすることができる。その結果、フェース部におけるトゥ側の反発性能を向上することができる。そのため、例えば、ドライバーにおいて、ボールの捕まりを向上させるために、ヘッドの重心をヒール側に移動した場合でも、トゥ側の反発性能が低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るゴルフクラブヘッドの基準状態の斜視図である。
図2図1の平面図である。
図3】フェース部の境界を説明する図である。
図4】ヘッドの組み立てを示す斜視図である。
図5図1に示すゴルフクラブヘッドにおけるヘッド本体とフェース部との接合部を明示した平面図である。
図6図5のA-A線断面図である。
図7】実施例及び比較例1のフェース部の背面図である。
図8】比較例2のフェース部の背面図である。
図9】実施例に係るヘッドの平面図である。
図10】比較例1,2に係るヘッドの平面図である。
図11】実施例及び比較例1に係る反発係数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るゴルフクラブヘッドの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係るゴルフクラブヘッドの基準状態の斜視図、図2図1の平面図である。なお、ゴルフクラブヘッドの基準状態については、後述する。
【0011】
<1.ゴルフクラブヘッドの概要>
図1に示すように、本実施形態に係るゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある)は、中空構造であり、フェース部1、クラウン部2、ソール部3、サイド部4、及びホーゼル部5によって壁面が形成されている。
【0012】
フェース部1は、ボールを打球する面であるフェース面を有しており、クラウン部2はフェース部1と隣接し、ヘッドの上面を構成する。ソール部3は、ヘッドの底面を構成し、フェース部1及びサイド部4と隣接する。また、サイド部4は、クラウン部2とソール部3との間の部位であり、フェース部1のトウ側からヘッドのバック側を通りフェース部1のヒール側へと延びる部位である。さらに、ホーゼル部5は、クラウン部2のヒール側に隣接して設けられる部位であり、ゴルフクラブのシャフト(図示省略)が挿入される挿入孔51を有している。そして、この挿入孔51の中心軸線Zは、シャフトの軸線に一致している。ここで説明するヘッドは、ドライバー(#1)又はフェアウェイウッドといったウッド型であるが、そのタイプは限定されず、いわゆるユーティリティ型及びハイブリッド型等であってもよい。
【0013】
ここで、上述した基準状態について説明する。まず、図1及び図2に示すように、上記中心軸線Zが水平面H(図6参照)に対して垂直な平面P1に含まれ、且つ所定のライ角及びリアルロフト角で水平面H上にヘッドが載置された状態を基準状態と規定する。そして、上記平面P1を基準垂直面P1と称する。また、図2に示すように、上記基準垂直面P1と上記水平面Hとの交線の方向をトウ-ヒール方向と称し、このトウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ上記水平面Hに対して平行な方向をフェース-バック方向と称することとする。
【0014】
本実施形態において、クラウン部2とサイド部4との境界は次のように定義することができる。すなわち、クラウン部2とサイド部4との間に稜線が形成されている場合には、これが境界となる。これに対して、明確な稜線が形成されていない場合には、ヘッドを基準状態に設置し、これをヘッドの重心の真上から見たときの輪郭が境界となる。また、フェース部1とクラウン部2、ソール部3との境界についても、同様であり、稜線が形成されている場合には、これが境界となる。一方、明確な稜線が形成されていない場合には、図3(a)に示されるように、ヘッド重心GとスイートスポットSSとを結ぶ直線Nを含む各断面E1、E2、E3…において、図3(b)に示されるように、フェース外面輪郭線Lfの曲率半径rがスイートスポット側からフェース外側に向かって初めて200mmとなる位置Peがフェース部1の周縁(境界)として定義される。なお、スイートスポットSSとは、ヘッド重心Gを通るフェース面の法線(直線N)とこのフェース面との交点である。
【0015】
このゴルフクラブヘッドの体積は、例えば、300cm3以上であることが好ましく、400cm3以上であることがさらに好ましく、420cm3以上であることが特に好ましい。このような体積を有するヘッドは、構えた際の安心感が増し、かつ、スイートエリア及び慣性モーメントを増大させるのに役立つ。なお、ヘッド体積の上限は特に定めないが、実用上、例えば500cm3以下が望ましく、またR&AやUSGAのルール規制に従う場合には470cm3以下が望ましい。
【0016】
また、ヘッドは、例えば、比重がほぼ4.4~4.5程度のチタン合金(Ti-6Al-4V)で形成することができる。また、チタン合金以外にも、例えばステンレス鋼、マレージング鋼、アルミ合金、マグネシウム合金、またはアモルファス合金などの中から1種または2種以上を用いて形成することもできる。このようなゴルフクラブヘッドは、種々の方法で作製することができるが、例えば、公知のロストワックス精密鋳造法などの鋳造によって製造することができる。
【0017】
ところで、本実施形態に係るヘッドは、クラウン部2、ソール部3、及びサイド部4を有するヘッド本体と、フェース部1とを組み立てることで構成される。このヘッド本体は、クラウン部2、ソール部3、及びサイド部4で囲まれた開口を有し、この開口を塞ぐようにフェース部1が取り付けられる。以下では、このフェース部1の構造について詳細に説明する。
【0018】
<2.フェース部の構造>
以下、図4図6も参照しつつ、フェース部1について説明する。図4はヘッドの組み立てを示す斜視図、図5は基準状態のヘッドにおいて、ヘッド本体とフェース部との接合状態を示す平面図、図6図5のA-A線断面図である。図4に示すように、フェース部1は、板状に形成された本体部11と、この本体部11の周縁から延びる周縁部12とを有するカップ状に形成されており、これがヘッド本体の開口61を塞ぐように取付けられる。このとき、周縁部12は、開口61の外周縁に配置される。
【0019】
図4に示すように、フェース部1の周縁部12は、ヘッド本体の開口61を囲む外周縁部と接触するように接合される。外周縁部は、クラウン部2、ソール部3、及びサイド部4の端縁を連続的に結ぶ接合領域62であり薄肉に形成されている。これにより、フェース部1の周縁部12が接合されたときに、クラウン部2、ソール部3、及びサイド部4と面一になる。
【0020】
また、フェース部1の周縁部12は、すべて同じ長さではない。例えば、図6に示すように、フェース部1とクラウン部2やサイド部4とのなす角αは概ね鈍角であり、フェース部1とソール部3とのなす角βは概ね鋭角であることから、接合強度を高めるため、フェース部1の周縁部12は、ソール部3側が、クラウン部2側やサイド部4側よりも長くなっている。周縁部12の幅、つまり接合領域62と接触する幅は、ソール部3側で、例えば、4~10mmとすることができ、クラウン部2側及びサイド部4側で、例えば、3~8mmとすることができる。なお、ここでいう周縁部12の幅を測定するには、本体部11と周縁部12との境界である稜線、及び周縁部12の端縁を基準とする。この点は、以下の説明でも同じである。
【0021】
ここで、トゥ側とヒール側の周縁部12の幅について説明する。図5及び図6に示すように、周縁部12は、ヘッドを基準状態においたとき、平面視でのフェース-バック方向の長さが相違しており、最もトゥ側の周縁部12の幅D1が、最もヒール側の周縁部12の幅D2よりも長くなっている。トゥ側の周縁部12の幅D1は、6~10mmであることが好ましく、6~12mmであることがさらに好ましい。一方、ヒール側の周縁部12の幅D2は、3~6mmであることが好ましく、3~8mmであることがさらに好ましい。そして、幅D1は、3mm以上、幅D2よりも長いことが好ましい。なお、ここでいう周縁部の幅D1,D2は、平面視での幅であり、接合領域62と実際に接触する幅ではない。なお、ヒール側の周縁部12は、ホーゼル部5と干渉しないような凹部15を有する形状になっている。
【0022】
上記のように、周縁部12の幅は、トゥ側が長く、ヒール側が短いため、トゥ側からヒール側にかけては緩やかに周縁部の幅が変化するように形成されている。
【0023】
<3.ヘッドの重心>
本実施形態のゴルフクラブヘッドでは、ボールの捕まりを向上させるために、ヘッドの重心をヒール側に移動させている。重心の移動は、例えば、ソール部3のヒール側に錘を設けることで、行うことができる。あるいは、ソール部3、サイド部4、フェース部1の少なくとも1つにおいて、ヒール側の肉厚を厚くし、トゥ側を薄くすることでも重心を移動させることができる。これにより、ヘッドの重心をヒール側へ1~5mm移動することができる。
【0024】
<4.特徴>
本実施形態に係るゴルフクラブヘッドによれば、フェース部1に設けた周縁部12を、平面視においてトゥ側を長くしているため、ボールの打撃時に、フェース部1におけるトゥ側の撓み量を大きくすることができる。その結果、フェース部1におけるトゥ側の反発性能を向上することができる。そのため、例えば、ドライバーにおいて、ボールの捕まりを向上させるために、ヘッドの重心をヒール側に移動した場合でも、トゥ側の反発性能が低下するのを防止することができる。
【0025】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。
【0026】
上記実施形態では、フェース部1の構成、特に、フェース部1の周縁部12の構造について説明したが、フェース部1の本体部11の構造については、特には限定されない。例えば、本体部11の中央は打撃に対する機械的強度を上げるために、肉厚を大きくするが、その他の領域を含め、肉厚については特には限定されない。
【0027】
また、フェース部1以外の他の部位の構成についても特には限定されない。すなわち、クラウン部2、ソール部3、及びサイド部4においては、フェース部1を取付けることができるように構成されていれば、どのような構成であってもよい。例えば、上記実施形態では、クラウン部2の肉厚を一定にしているが、クラウン部2の一部に薄肉部を形成することができる。これにより、クラウン部2を軽量化することができる。そして、軽量化のために小さくした肉厚に係る重量は、ヘッドの他の部分に配分することができる。これにより、ヘッドの設計の自由度を向上することができる。例えば、クラブヘッドのソール部3に上述した重量を配分すると、低重心化を図ることができ、その結果、打ち出し角度を高くすることができる。あるいは、サイド部4に重量を分配すると、ヘッドの重心を通る鉛直軸周りの慣性モーメントを大きくすることができるため、これによって、打球の方向性を向上することができる。
【実施例
【0028】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0029】
(1)実施例及び比較例の準備
ここでは、フェース部の構造の異なる1種類の実施例と2種類の比較例に係るゴルフクラブヘッド(ドライバー(1#))を表1の通り、作製した。フェース部の本体部の背面の形態に関し、実施例及び比較例1は、図7に示す形態とし、比較例2は図8に示す形態とした。つまり、本体部の肉厚を変化させることで、本体部と周縁部との境界のうち、最もトゥ側の点から重心までの水平方向(トゥ-ヒール方向)の長さXが相違している。また、フェース部の周縁部の形態に関し、実施例は図9に示す形態とした。つまり、平面視におけるトゥ側の周縁部の幅D1を8mmとした。一方、比較例1,2は図10に示す形態とし、平面視におけるトゥ側の周縁部の幅D1を5mmとした。なお、ヒール側の周縁部の幅D2(図5参照)は、いずれも5mmとした。また、フェース部の背面の構造以外は、実施例及び比較例ともに同一とした。具体的には、各ヘッドは、Ti-6Al-4Vのロストワックス精密鋳造品からなるヘッド本体と、TIX-51AFの熱間鍛造品からなるカップ状のフェース部材とをレーザー溶接することにより形成された2ピース構造である。また、ヘッド体積は460cm3、フェース背面の全面積は42.0cm2であり、ヘッド質量は190.5gである。また、フェース部のトゥ-ヒール方向の幅は107mm、上下方向の高さは、51mmである。そして、こうして作製されたヘッドにシャフトとしてダンロップスポーツ株式会社社製ドライバー用 MP-700 Rフレックスのシャフトを接続した。
【0030】
なお、以下の表1において、重心位置Xとは、上記のように、本体部と周縁部との境界のうち、最もトゥ側の点から重心までの水平方向(トゥ-ヒール方向)の長さであり、重心距離とは、シャフトの中心線の延長線上からヘッドの重心までの垂線の距離まで指す。一般的に、この重心距離が短い方がボールがつかまりやすくなる。
【0031】
【表1】
【0032】
以上の実施例及び比較例1、2について、以下の2つの試験を行った。
(1)ボールの捕まりに関する試験
10人の右利きのプレイヤーにより、5球ずつの実打試験を行い、飛距離(キャリー)と、打撃点のズレを測定し、平均を算出した。打撃点のズレとはフェース部の中心(上下左右の中心)からトゥ-ヒール方向に沿って、トゥ側またはヒール側のズレを示すものである。ヒール側にずれた場合には(+)、トゥ側にずれた場合には(-)として、中心から打撃点までの距離を測定した。結果は以下の表2の通りである。
【0033】
【表2】
【0034】
以上の結果からすると、実施例及び比較例1は、重心をヒール側にずらしているので、打撃点のズレはトゥ側にややズレている。一方、比較例2はヒール側に大きくズレていることが分かる。したがって、実施例及び比較例1は、ボールをトゥ側で捕らえているため、捕まりがよくなっていることが分かる。一方、比較例2は、ボールをヒール側で捕らえているため、捕まりが悪いことが分かる。その結果が飛距離に表れており、比較例1と比較例2を比べると、ボールの捕まりに基づき、比較例1の方が飛距離が伸びていることが分かる。また、実施例については、重心位置に加え、周縁部の幅D1が長いことも寄与しているので、比較例1と比べて飛距離がさらに伸びている。
【0035】
(2)反発性能試験
U.S.G.A.の Procedure for Measureing the Velocity Ratio of a Club Head for Conformance to Rule 4-1e, Revision 2 (February 8, 1999) に従って、実施例と比較例1に関し、反発係数を求めた。計測位置は、図7及び図8において付したトゥ-ヒール方向に延びる直線上で行い、これを,図11に示すグラフに表した。この結果からすると、実施例と比較例1とでは、中央領域の肉厚は同じであることから,この領域での反発係数はほぼ同じである。しかしながら、トゥ領域及びヒール領域では、実施例において反発係数が高くなっている。これは、上記のように、フェース部において、トゥ側の周縁部の幅が大きくなり、フェース部が撓みやすくなっているからであると考えられる。また、ヒール側についても、重心がヒール側に移動して効果がさらに向上したと考えられる。以上より、実施例では、比較例1と重心位置が同じであっても、トゥ側及びヒール側の反発係数が向上しているので、表2に示すように、飛距離が伸びたと考えられる。
【符号の説明】
【0036】
1 フェース部
11 本体部
12 周縁部
2 クラウン部
3 ヒール部
4 サイド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11