(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】免疫調節を使用してがんを処置するための新規手法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/69 20060101AFI20220301BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220301BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220301BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220301BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220301BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20220301BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220301BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20220301BHJP
C12N 9/99 20060101ALN20220301BHJP
C12N 9/64 20060101ALN20220301BHJP
C07K 16/40 20060101ALN20220301BHJP
【FI】
A61K31/69 ZMD
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K38/02
A61K39/00 H
A61K31/713
C12N9/99 ZNA
C12N9/64 Z
C07K16/40
(21)【出願番号】P 2018521501
(86)(22)【出願日】2016-07-18
(86)【国際出願番号】 US2016042798
(87)【国際公開番号】W WO2017011831
(87)【国際公開日】2017-01-19
【審査請求日】2019-05-13
(32)【優先日】2015-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518014933
【氏名又は名称】バイオエクセル セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】メータ,ヴィマル ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ラステッリ,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】サプラ,アパーナ カトッチ
【審査官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513079(JP,A)
【文献】国際公開第2015/100282(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/69
A61K 45/06
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 43/00
A61K 39/395
A61K 38/02
A61K 39/00
A61K 31/713
C12N 9/99
C12N 9/64
C07K 16/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがん性腫瘍を処置するための、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて使用するための有効量のタラボスタットを含む医薬組成物であって、タラボスタットがメシル酸タラボスタットであり、前記免疫チェックポイント阻害薬が、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、及びCTLA4アンタゴニストからなる群から選択される、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記タラボスタットが、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、液剤、持続放出錠剤、制御放出錠剤、持続放出カプセル剤、制御放出カプセル剤、リポソーム剤、マイクロ粒子剤、ナノ粒子剤などとして製剤化されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記免疫チェックポイント阻害薬を約0.01~30mg/kgの用量で投与する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記タラボスタットを約0.001~10mg/kgの用量で投与する、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
PD-1アンタゴニストが、ANA011、BGB-A317、KD033、ペムブロリズマブ、MCLA-134、mDX400、MEDI0680、muDX400、ニボルマブ、PDR001、PF-06801591、ピジリズマブ、REGN-2810、SHR1210、STI-A1110、TSR-042、244C8、
及び388D4、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項6】
PD-L1アンタゴニストが、アベルマブ、BMS-936559、CA-170、デュルバルマブ、MCLA-145、SP142、STI-A1011、STI-A1012、STI-A1010、STI-A1014、KY1003、及びアテゾリムマブ、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項7】
PD-L2アンタゴニストが、AMP-224及びrHIgM12B7、並びにそれらの組み合わせから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項8】
CTLA4アンタゴニストが、KAHR-102、AGEN1884、ABR002、KN044、トレメリムマブ、及びイピリムマブ、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項9】
前記対象が充実性腫瘍または血液がんを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記充実性腫瘍が、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、乳癌、神経膠芽細胞腫、胃癌、星状膠細胞癌、神経外胚葉腫瘍、頭頚部癌、三重陰性乳癌、胃食道癌及び非小細胞肺癌から成る群から選択される、請求項9に記載の組成物又は医薬組成物。
【請求項11】
前記タラボスタットが経口で、静脈内で、筋肉内で、皮下で、局所で、直腸で、経皮で、気管内で、膣で、腹腔内で、眼窩内で、移植によって、吸入によって、髄腔内で、心室内で、または鼻腔内で、及びそれらの任意の組み合わせで投与される、請求項1、2若しくは4に記載の医薬組成物。
【請求項12】
タラボスタットが前記免疫チェックポイント阻害薬と同時に、連続的に、または断続的に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
タラボスタットが錠剤あたり200マイクログラム投与される、請求項1~12のいずれか一項に医薬組成物。
【請求項14】
タラボスタットが錠剤あたり400マイクログラム投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
タラボスタットが錠剤あたり600マイクログラム投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物または医薬組成物。
【請求項16】
タラボスタットが0.001mg/kg~1mg/kgの用量で投与される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項17】
タラボスタットが0.001mg/kg~0.035mg/kgの用量で投与される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記免疫チェックポイント阻害薬がペムブロリズマブである、請求項1又は5に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記免疫チェックポイント阻害薬がニボルマブである、請求項1又は5に記載の医薬組成物。
【請求項20】
タラボスタット
が錠剤あたり
300マイクログラム
投与される、請求項1
~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫腫瘍学の分野の発明である。より具体的には、ジペプチジルペプチダーゼ(例えば、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)またはジペプチジルペプチダーゼ8/9(DPP8/9))を選択的に阻害する小分子、抗体、ナノボディ、操作ペプチド、操作受容体、自己免疫増強手法、またはsiRNAを包含する治療薬を、免疫調節をもたらす免疫チェックポイント阻害薬(複数可)と組み合わせて使用する免疫調節によって、がんまたは腫瘍を処置することに関する。好ましい選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬は、小分子、例えば、タラボスタットである。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれ2015年7月16日及び2015年8月13日出願の米国特許仮出願第62/193,348号及び同第62/204,495号をあらゆる目的のためにその全体を包含する。
【0003】
電子提出されたテキストファイルの記載
本明細書と共に電子提出されたテキストファイルの内容は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる:配列一覧のコンピュータ可読形式(ファイル名:BIOX_008_02WO_SeqList、記録日:2016年7月13日;ファイルサイズ:6キロバイト)。
【背景技術】
【0004】
がんは、僅かな新生物発生前変化から始まり、それが新生物形成へと進行し得て、その新生物病変がおそらく、浸潤、増殖、転移、及び異質性の漸増能力を発展させる、マルチステッププロセスである。がんを処置するための現行の治療は、外科手術、ホルモン療法、放射線療法、化学療法、及び免疫療法を含む。がんを処置するための免疫療法は、我々の免疫系の理解の向上と並行して発達してきた。殊に、抗腫瘍免疫応答を打倒するがん細胞の能力の理解が、免疫系による検出及び破壊からの腫瘍細胞の逃避を担っている免疫チェックポイントを標的とする新規免疫療法を開発するための根拠を提供してきた。そのような免疫逃避機構は、直接、腫瘍細胞によってか、または腫瘍微小環境によって媒介される。腫瘍細胞は、膜タンパク質、分泌産物、酵素、抗炎症性サイトカイン、及びケモカインを発現して、それらのゲノムに変化をもたらし、免疫回避及び免疫阻害を援助することが公知である。同時に、重要な役割が、腫瘍微小環境によって果たされている。
【0005】
免疫チェックポイント分子、例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4は、細胞表面シグナル伝達受容体であり、腫瘍微小環境においてT細胞応答を調節する際に重要な役割を果たす。それらの発現及び活性を上方制御することによって、腫瘍細胞は、それらに有利となるように、これらのチェックポイントを利用することが示されている。したがって、免疫系のがん破壊特性を解放することができる免疫チェックポイント阻害薬が開発されてきた。最近の発見によって、免疫チェックポイントまたは標的、例えば、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、TIM3、LAG3、CCR4、OX40、OX40L、IDO、及びA2ARが、免疫回避を担い、免疫系のブレーキとして機能するタンパク質として同定されている。CTLA-4、PD-1受容体またはそのリガンドPD-L1に対する抗体を包含する一定の免疫チェックポイント阻害薬は、広範ながんの臨床において優れた結果をもたらしていて、多数の腫瘍適応症におけるYervoy(登録商標)(イピリムマブ;CTLA-4アンタゴニスト)、Opdivo(登録商標)(ニボルマブ;PD-1アンタゴニスト)及びKeytruda(登録商標)(ペムブロリズマブ;PD-1アンタゴニスト)のFDA認可につながっており、さらに多くで、治験が進行中である。免疫チェックポイント阻害薬は、多くの、またはたいていの腫瘍型において活性を示すことができるであろうので、この種の治療での市場は、2020年までに1000億ドル超にまで成長し得るであろうと推定される。
【0006】
しかし残念なことに、チェックポイント阻害薬は、いくつかの限界に苦しんでいる。チェックポイント阻害薬で処置を受けた患者のうちの少数しか、強固な抗腫瘍応答を示さず、たいていの応答は部分的及び一時的である。多くの患者が最初は応答するが、その後で、多くの理由によって、主に、免疫チェックポイント阻害薬の作用を克服する非免疫許容微小環境を形成する腫瘍細胞;いわゆる「非炎症性」腫瘍による生成によって生じ得る抵抗経路の出現によって再発するか、またはいずれかのT細胞が、腫瘍部位に動員されていないか、またはなお存在するとしても、それらは活性化されない。これらの場合、ブレーキを解除するだけでは、免疫系の完全な抗腫瘍能を達成するには十分ではない。さらに、がん免疫サイクルは、いくつかのステップからなり、現行の仮説は、このサイクルにおける異なる段階で作用する様々な阻害薬の組み合わせが、免疫腫瘍学療法を最適化し、かつより広い個体群に対する有効性を改善し、かつ抵抗性を低下させることを可能にするというものである。
【0007】
この仮説は、がん免疫サイクルの様々な部位で作用する2種のチェックポイント阻害薬:イピリムマブ及びニボルマブの組み合わせの最近の認可によって、その第1の確認を受けており、それらは、黒色腫患者において応答率を、それぞれの単剤治療で見られた11%及び32%から、組み合わせでの60%まで上昇させた。しかし残念なことに、多くの患者が間質性肺炎、肝炎、大腸炎、及び他の免疫関連障害をもたらす過剰な免疫応答に関連する異常な毒性を経験するので、この組み合わせは、高い毒性という大きな欠点を有する。この組み合わせが、黒色腫に加えて、他の腫瘍において応答率を上昇させるかどうかも、いまだ分かっていない。したがって、発がん現象の現行の研究は、腫瘍または腫瘍微小環境に影響を及ぼす免疫調節薬として作用する治療薬の使用を同定することを対象としている。より良好な処置応答のために相乗的に標的とすべきそのような個々の標的を同定するために、詳細にはゲノミクス、プロテオミクス、及びバイオインフォマティクスに関連する様々なデータベースが使用されている。本発明の発明者らは、具体的にはFAP及びDPP8/9、免疫回避に関連するジペプチジルペプチダーゼを包含する標的ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)を利用する。
【0008】
分析によって、具体的にはFAP及びDPP8/9を包含するジペプチジルペプチダーゼ(DPP)を標的とするいくつかの手法の存在が明らかになった。様々な手法には、小分子、抗体、操作ペプチド、操作受容体、自己免疫増強手法、またはsiRNAが包含され、小分子手法、すなわち、小分子阻害薬、例えば、タラボスタットが好ましい。この臨床的に確認されている免疫調節性小分子は、免疫回避において重要な役割を果たし、かつ先天及び/または後天免疫の両方を調節する。
【0009】
PT-100(Val-boroPro;L-バリニル-L-ボロプロリン)としても公知のタラボスタットは元々、Point Therapeuticsによって、2000年から2007年の間に開発された。これは、FAP及びDPP8及びDPP9などのジペプチジルペプチダーゼの経口利用可能な合成選択的阻害薬である。タラボスタット分子の立体異性体は、米国特許第6,825,169号において開示されたが、その経口製剤、例えば、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ剤は、米国特許第7,265,118号において開示されている。
【0010】
Point Therapeutics,Inc.に付与された米国特許第6,949,514号は、タラボスタットの投与によって、異常な哺乳類細胞増殖を処置する方法を開示している。Point Therapeutics,Inc.に付与されたPCT出願番号2007058957は、タラボスタットと、少なくとも1つのサイトカイン、例えば、IL-2、インターフェロン、G-CSF、またはGM-CSFとの組み合わせを開示している。これらのサイトカインは、免疫チェックポイント阻害薬ではなく、ただし、それらは、免疫系を刺激するが、ブレーキを解除せず、したがって、本発明は、この開示とは全く異なる。
【0011】
Point Therapeutics,Inc.に付与された米国特許第6,890,904号は、タラボスタットと、少なくとも1つの抗がん薬との組み合わせを開示している。しかしながら、単独か、またはサイトカインもしくは化学療法薬と組み合わせてのタラボスタットのこれらの治療は、がんの処置のために、ならびに膵臓癌及び肺癌の治験において有効ではない。タラボスタットは、一次、さらには二次の終点に達することができなかった。
【0012】
Point Therapeutics,Inc.に付与されたPCT出願番号2007059099は、タラボスタットと、ペメトレキセドまたはエルロチニブまたはドセタキセルとの組み合わせを開示している。これはさらに、その組み合わせ療法が、がん抗原、例えば、B7-H1の投与をさらに含むことを開示している。しかしながら、WO’099は、タラボスタットと免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせについてのいかなる開示も提供していない。
【0013】
Trustees of Tufts Collegeに付与された欧州特許第2,782,994号は、哺乳類DASHセリンプロテアーゼの活性を阻害するARI-4175化合物または他の化合物を単独で、または免疫療法との組み合わせで、がんを処置するために開示しており、この場合、化合物は、val-boro-proではない。したがって、EP’994は、がんを処置するために、化合物ARI-4175の使用に焦点を当てており、その場合、タラボスタットは放棄されている。しかしながら、本発明は、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせてのタラボスタットの使用に焦点を当てている。
【0014】
タラボスタットは、様々な有害事象を示し、最も一般的な有害事象は、浮腫/末梢腫脹、低血圧、血液量減少、及び眩暈である。これらの有害事象、さらには、治験における不十分な一次及び二次結果が、タラボスタット分子の中止例につながり得る。
【0015】
この点についての新規の発見は、いくつかの要素からなる免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせでの選択的ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)阻害薬を包含する。第1に、この組み合わせ療法は意外にも、治療量未満で、より有効である。加えて、DPP阻害薬は、浮腫を誘発することが示されており、浮腫はまた、化学療法薬と関連する主な毒性であり、したがって、化学療法薬との組み合わせは、相加的な、もしかすると相乗的な毒性を誘発し、中止及び有効性の限界をもたらす。免疫チェックポイント阻害薬は、関連毒性として浮腫を有さず、したがって、この新たな組み合わせ手法は、先行する組み合わせで観察された限界を有さないであろう。
【0016】
最後の要素は、強力な相加的/相乗的作用機序を持つ新規の組み合わせ(すなわち、選択的DPP阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬)の同定からなる。
【0017】
まとめると、本発明の発明者らは、免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍及び免疫調節作用を増強または延長し得て、腫瘍微小環境の破壊をもたらすか、免疫細胞による浸潤及び攻撃を増強するか、非免疫原性腫瘍を免疫原性腫瘍に変換するか、対象が非応答がんに対して応答し得るようにするか、またはタラボスタット及び/もしくは免疫チェックポイント阻害薬の用量または毒性を低下させる、従来技術における問題を克服する選択的DPP阻害薬、例えば、タラボスタットと、免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせを考え出した。
【0018】
したがって、本発明の目的は、がんを処置するために新規の組み合わせを用いる、改善された方法を提供することである。
【発明の概要】
【0019】
本発明者らは意外にも、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせを正当化する強力な相加的/相乗的作用機序が存在することを見い出した。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬、殊に、FAP(線維芽細胞活性化タンパク質)及びDPP8/9阻害薬は、腫瘍への先天及び後天免疫の両方のエフェクター細胞の遊走をもたらすケモカインの上方制御を引き起こす。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬は、免疫チェックポイント阻害薬と共に相乗的な抗腫瘍作用を示すが、それというのも、それが、腫瘍細胞を認識することができる免疫細胞の生成を刺激することができ、次いで、腫瘍へのこれらの免疫細胞の遊走を刺激するためである。PD-1アンタゴニストなどの免疫チェックポイント阻害薬は、免疫系に対して腫瘍細胞が作るブレーキを解除することによって作用する。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬、殊に、FAP及びDPP8/9阻害薬は、免疫系を刺激し、かつ応答の数及び期間を増加させるように、非許容微小環境を有する非応答性腫瘍を応答性で免疫許容環境に変換するアクセレレーターとして作用する。
【0020】
主要な態様では、本発明は、腫瘍を処置するための、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせての、ジペプチジルペプチダーゼを選択的に阻害し、かつ標的とする既存の、または新たな治療薬の新規の利用を提供する。治療薬には、小分子、抗体、ナノボディ、操作ペプチド、操作タンパク質、ワクチン、siRNA治療、または自己免疫増強手法が包含される。
【0021】
したがって、本発明の別の態様は、免疫応答を増強する方法であって、対象に、ジペプチジルペプチダーゼ、具体的には、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)またはジペプチジルペプチダーゼ8/9(DPP8/9)を選択的に阻害し、かつ標的とする治療薬の有効量を、免疫チェックポイントまたは標的を介して免疫応答または腫瘍増殖に影響を及ぼすであろう免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて投与することを含む方法に関する。そのような免疫チェックポイントまたは標的の例には、これらだけに限定されないが、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、VISTA、TIM3、LAG3、KIR、IDO、A2ARが包含されるであろう。
【0022】
また別の態様では、対象において免疫応答を増強する方法であって、ジペプチジルペプチダーゼの活性の選択的阻害によって腫瘍、それらの微小環境中の細胞、免疫細胞、または分泌産物に対して作用する治療薬(複数可)の有効量を、腫瘍について診断されている対象において免疫応答を増強する免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて投与することを含む方法を、本明細書において提供する。
【0023】
また別の態様では、治療薬が、小分子、抗体、ナノボディ、操作ペプチド、操作タンパク質、ワクチン、siRNA治療、または自己免疫増強治療、好ましくは小分子からなる群から選択される方法を、本明細書において提供する。治療薬は、線維芽細胞活性化タンパク質及び/またはジペプチジルペプチダーゼ8/9の阻害を包含する選択的ジぺプチジルぺプチダーゼ阻害薬を含む。好ましい治療薬は、小分子または抗体である。好ましい小分子の例は、タラボスタットである。
【0024】
また別の態様では、対象において望ましい免疫応答を増強し、増加させ、促進し、発現し、調節する方法であって、ジペプチジルペプチダーゼ(例えば、FAPまたはDPP8/9)を選択的に阻害する小分子または抗体の有効量を、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストからなる群から選択される免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて投与することを含み、その際、対象が、FAPまたはDPP8/9のレベルの上昇と関連する腫瘍について診断されている方法を、本明細書において提供する。小分子は、好ましくはタラボスタットである。抗体は、抗FAP-抗体である。
【0025】
また別の態様では、本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質またはジペプチジルペプチダーゼ8/9が上方制御されていて、がん患者において、それらの活性を阻害すること、及びPD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストからなる群から選択される免疫チェックポイント阻害薬での処置と組み合わせることによって利益が得られるであろう腫瘍を同定する方法を提供する。
【0026】
別の態様では、腫瘍を包含する増殖性疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象に、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の相乗的治療有効量を免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて投与することを含む方法を、本明細書において提供する。
【0027】
一部の態様では、免疫応答の刺激によって寛解される腫瘍の処置であって、免疫チェックポイント阻害薬が同時投与される処置において使用するための選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を、本明細書において提供する。
【0028】
一部の態様では、腫瘍を処置するための組み合わせ療法であって、前記組み合わせが、
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び
(ii)免疫チェックポイント阻害薬
を含む組み合わせ療法を、本明細書において提供する。
【0029】
一部の態様では、本発明は、腫瘍の処置における、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬、殊に、タラボスタット及びPD-1軸アンタゴニストの組み合わせを対象とする。
【0030】
一部の態様では、本発明は、腫瘍の処置における、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬、殊に、タラボスタット及びCTLA4アンタゴニストの組み合わせを対象とする。
【0031】
一部の態様では、本発明は、腫瘍を処置するために、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト及びCTLA4アンタゴニストを含む免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて使用するための医薬組成物であって、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバント(複数可)と共に含む医薬組成物を提供する。
【0032】
別の態様では、腫瘍を処置するための医薬組成物の製造における、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせての選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の使用を、本明細書において提供する。
【0033】
一部の態様では、本発明は、
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(複数可)を含む第1の組成物、及び
(ii)免疫チェックポイント阻害薬(複数可)を含む第2の組成物
を含むキットを提供する。
【0034】
説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から、本発明の他の特徴、目的、利点が明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】結腸腺癌のMC38マウスモデルにおける、単一薬剤としての、さらには、PD-1アンタゴニスト5mg/kg(BioXcell;Cat.No.BPO146)と組み合わせてのタラボスタットの抗腫瘍有効性が示されている。この研究は、処置後11日目での腫瘍増殖の有意な阻害も示している。
【
図2】結腸腺癌のMC38マウスモデルにおける、単一薬剤としての、または5mg/kg PD1アンタゴニスト(BioXcell;Cat.No.BPO146)と組み合わせてのタラボスタットの用量依存性抗腫瘍有効性を示している。これは、この組み合わせの相乗的抗腫瘍作用も示しており、かつタラボスタットの同等の有効性用量も示している(20μg qdは、10μg bidと同等に有効である)。
【
図3A】
図3A~
図3Gは、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの放出について、単一薬剤の作用を、タラボスタット及びPD-1アンタゴニスト(BioXcell;Cat.No.BPO146)の組み合わせの作用に対して示している。指示処置群及び時点と共に、MC38結腸腺癌を担持するマウスの血清サンプルにおいてLuminexによって分析した場合のIL-2(
図3A)、GM-CSF(
図3B)、IL-12p40(
図3C)、IL-6(
図3D)、G-CSF(
図3E)、IL-15(
図3F)、IL-7(
図3G)放出の分泌プロファイルの増加で見られるように、この組み合わせは、単一薬剤と比較して、顕著な相乗作用を示している。
【
図3B】
図3A~
図3Gは、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの放出について、単一薬剤の作用を、タラボスタット及びPD-1アンタゴニスト(BioXcell;Cat.No.BPO146)の組み合わせの作用に対して示している。指示処置群及び時点と共に、MC38結腸腺癌を担持するマウスの血清サンプルにおいてLuminexによって分析した場合のIL-2(
図3A)、GM-CSF(
図3B)、IL-12p40(
図3C)、IL-6(
図3D)、G-CSF(
図3E)、IL-15(
図3F)、IL-7(
図3G)放出の分泌プロファイルの増加で見られるように、この組み合わせは、単一薬剤と比較して、顕著な相乗作用を示している。
【
図3C】
図3A~
図3Gは、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの放出について、単一薬剤の作用を、タラボスタット及びPD-1アンタゴニスト(BioXcell;Cat.No.BPO146)の組み合わせの作用に対して示している。指示処置群及び時点と共に、MC38結腸腺癌を担持するマウスの血清サンプルにおいてLuminexによって分析した場合のIL-2(
図3A)、GM-CSF(
図3B)、IL-12p40(
図3C)、IL-6(
図3D)、G-CSF(
図3E)、IL-15(
図3F)、IL-7(
図3G)放出の分泌プロファイルの増加で見られるように、この組み合わせは、単一薬剤と比較して、顕著な相乗作用を示している。
【
図3D】
図3A~
図3Gは、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの放出について、単一薬剤の作用を、タラボスタット及びPD-1アンタゴニスト(BioXcell;Cat.No.BPO146)の組み合わせの作用に対して示している。指示処置群及び時点と共に、MC38結腸腺癌を担持するマウスの血清サンプルにおいてLuminexによって分析した場合のIL-2(
図3A)、GM-CSF(
図3B)、IL-12p40(
図3C)、IL-6(
図3D)、G-CSF(
図3E)、IL-15(
図3F)、IL-7(
図3G)放出の分泌プロファイルの増加で見られるように、この組み合わせは、単一薬剤と比較して、顕著な相乗作用を示している。
【
図3E】
図3A~
図3Gは、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの放出について、単一薬剤の作用を、タラボスタット及びPD-1アンタゴニスト(BioXcell;Cat.No.BPO146)の組み合わせの作用に対して示している。指示処置群及び時点と共に、MC38結腸腺癌を担持するマウスの血清サンプルにおいてLuminexによって分析した場合のIL-2(
図3A)、GM-CSF(
図3B)、IL-12p40(
図3C)、IL-6(
図3D)、G-CSF(
図3E)、IL-15(
図3F)、IL-7(
図3G)放出の分泌プロファイルの増加で見られるように、この組み合わせは、単一薬剤と比較して、顕著な相乗作用を示している。
【
図3F】
図3A~
図3Gは、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの放出について、単一薬剤の作用を、タラボスタット及びPD-1アンタゴニスト(BioXcell;Cat.No.BPO146)の組み合わせの作用に対して示している。指示処置群及び時点と共に、MC38結腸腺癌を担持するマウスの血清サンプルにおいてLuminexによって分析した場合のIL-2(
図3A)、GM-CSF(
図3B)、IL-12p40(
図3C)、IL-6(
図3D)、G-CSF(
図3E)、IL-15(
図3F)、IL-7(
図3G)放出の分泌プロファイルの増加で見られるように、この組み合わせは、単一薬剤と比較して、顕著な相乗作用を示している。
【
図3G】
図3A~
図3Gは、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの放出について、単一薬剤の作用を、タラボスタット及びPD-1アンタゴニスト(BioXcell;Cat.No.BPO146)の組み合わせの作用に対して示している。指示処置群及び時点と共に、MC38結腸腺癌を担持するマウスの血清サンプルにおいてLuminexによって分析した場合のIL-2(
図3A)、GM-CSF(
図3B)、IL-12p40(
図3C)、IL-6(
図3D)、G-CSF(
図3E)、IL-15(
図3F)、IL-7(
図3G)放出の分泌プロファイルの増加で見られるように、この組み合わせは、単一薬剤と比較して、顕著な相乗作用を示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の詳細な説明
略語:
本明細書において使用される場合、次の略語は、次の意味を有する:
A2AR:A2Aアデノシン受容体
B.I.D:1日2回
CTLA4:細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4
CART:キメラ抗原受容体T細胞
DPP:ジペプチジルペプチダーゼ
DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地
FAP:線維芽細胞活性化タンパク質
GM-CSF:顆粒球マクロファージコロニー刺激因子G-CSF:
G-CSF:顆粒球コロニー刺激因子
HBSS:ハンクス平衡塩類溶液
IL:インターロイキン
IDO:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ
LAG3:リンパ球活性化遺伝子3タンパク質
PD-1:プログラム細胞死1
KIR:リンパ球活性化遺伝子3タンパク質
KLH:キーホールリンペットヘモシアニン
NK:ナチュラルキラー
Q.D:1日1回
TIM3:T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有-3
VISTA:T細胞活性化のVドメイン含有Ig抑制因子
【0037】
ここで、本発明をさらに記載する。次節では、本発明の種々の態様をより詳細に定義する。そうして定義される各態様を、矛盾が明らかに示されない限り、任意の1つまたは複数の他の態様と組み合わせてよい。殊に、好ましいか、または有利であると示されている任意の特徴を、好ましいか、または有利であると示されている任意の他の1つまたは複数の他の特徴と組み合わせてよい。
【0038】
本発明は、腫瘍細胞及びその微小環境によって選択される免疫逃避を妨害するように様々な治療薬と組み合わせて標的とされ得る免疫調節性免疫逃避機構を提供する。これは、免疫忌避(immune repelling)機構に拮抗するか、阻害免疫経路に拮抗することによって、または免疫刺激経路を活性化することによって、腫瘍への免疫細胞のアクセスを増加させることなどの複数の免疫調節手法を組み合わせることを含むであろう。これらの免疫調節を標的とした薬剤は、免疫原性として慣例的に分類されないものを含めて、様々な悪性疾患において臨床的に活性である。
【0039】
標的の1つは、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、ジペプチジルペプチダーゼ活性を有する完全膜プロテアーゼ(integral membrane protease)、及びジペプチジルペプチダーゼ(DPP8/9)を包含するジペプチジルペプチダーゼであり、これらが、プログラム死リガンド1もしくはPD-1または細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)または他の免疫調節標的を標的とすることを伴う第2の免疫調節手法と組み合わせて腫瘍を処置するための治療手法の1つとして使用される。プログラム死1(PD-1)受容体、そのリガンド(PD-L1/2)及びCTLA4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)は、腫瘍誘発性免疫抑制において役割を有し、かつ免疫治療薬の開発における重要な進歩である。
【0040】
選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬と免疫チェックポイント分子を標的とする治療手法との組み合わせの利点は、哺乳類宿主において腫瘍の進展を減少させるか、腫瘍量を減少させるか、または腫瘍退縮をもたらす。
【0041】
本発明は、有効な抗腫瘍応答を促進するための、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせに関する。本発明の様々な特徴の詳細は次のとおりである:
【0042】
本発明の様々な治療薬/抗体を下に記載する:
I.治療薬
ジペプチジルペプチダーゼを選択的に標的とし、かつ阻害する治療薬は、抗体(抗FAP抗体またはナノボディを包含)または小分子(例えば、タラボスタット)を包含する選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬である。好ましい選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬は、小分子(例えば、タラボスタット)である。
【0043】
a)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬
ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)様遺伝子ファミリーは、関連タンパク質構造及び機能を有する分子のファミリーである。この遺伝子ファミリーには、次の分子が包含される:DPPIV(CD26)、ジペプチジルアミノ-ぺプチダーゼ様タンパク質6(DPP6)、ジペプチジルアミノ-ぺプチダーゼ様タンパク質8(DPP8)、ジペプチジルアミノ-ぺプチダーゼ様タンパク質9(DPP9)、及び線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬には、具体的には、FAP及びDPP8/9阻害薬が包含される。腫瘍学に関して、DPP(殊に、FAP及びDPP8/9)についての現行の見解は、タラボスタット作用機序について重要である。
【0044】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)阻害薬
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)またはセプラーゼは、セリン完全膜ペプチダーゼの膜であり、プロピルオリゴペプチダーゼファミリーに属する。これは、エンドペプチダーゼ及びジペプチジルペプチダーゼ活性の両方を示すプロピル特異的酵素である。FAPは、腫瘍微小環境中に存在する線維芽細胞上で発現されるタンパク質である。これは、細胞表面上と、血液中の可溶性循環形態との両方で、二量体として存在する。これは、上皮癌の多くの組織型、例えば、膵臓、乳房、肺、結腸直腸、神経膠芽細胞腫の反応性間質性線維芽細胞中で選択的に発現される。これは、治癒中の創傷の肉芽組織、ならびにある種の骨及び軟部組織肉腫の悪性細胞とも関連する。FAPは、そのペプチダーゼ活性を介して、腫瘍の周囲の細胞外マトリックスの分解を担っていて、かつ転移プロセスを促進することが示された。これは、血管新生を増加させ、したがって、腫瘍増殖をもたらすことも示されている。同時に、FAPを発現する線維芽細胞は、腫瘍の免疫侵襲を減少させるケモカイン及びサイトカインを産生することができる。したがって、FAP阻害薬または抗体は、腫瘍増殖を減弱させるために開発されてきた。
【0045】
タラボスタット(PT-100、Val-boro-pro)及びシブロツズマブ(Sibrotuzumab)として市場で入手可能なFAP阻害薬。
【0046】
タラボスタットは、互換的に、PT-100、タラボスタット(USAN)、及び[(2R)-I-I[(2S)-2-アミノ-3-メチル-1-オキソブチル]-2-ピロリジニル]ボロン酸と称される。タラボスタットは、CAS登録番号149682-77-9を有する。一部の態様では、その遊離塩基を使用してよい。他の態様では、タラボスタットは、溶媒和物であってよい。また他の態様では、タラボスタット誘導体を使用してよい。たいていの臨床製剤では、タラボスタットは、塩形態として提供される。好ましくは、その塩形態は、遊離塩基としてのタラボスタットをメタンスルホン酸塩と組み合わせることによって作製される。その塩形態は、メシル酸タラボスタットであってよい。したがって、本明細書において使用される場合、「タラボスタット」には、メシル酸タラボスタットが包含される。APIは、R,S立体配置を有する単一の鏡像異性体である。タラボスタットは、直鎖及び環式形態の両方として存在し得る。
【0047】
タラボスタットは、多数の細胞内及び細胞外ジペプチジルペプチダーゼを調節することによって、がんまたは腫瘍を処置するために有効である。より具体的には、細胞内及び細胞外ジペプチジルペプチダーゼは、線維芽細胞活性化タンパク質、DPP8/9、CD26/DPP4及びDPP2からなる。タラボスタットは、FAP阻害を介しての間質標的化活性、及びDPP8/9阻害を介しての標的化免疫賦活活性を包含する二重の作用機序を有する。タラボスタットは、FAP酵素活性を阻害し、それによって、腫瘍増殖を抑制する。また、DPP8/9を阻害し、それによって、腫瘍及びリンパ節の間質においてIL 1β応答(カスパーゼ-1を介する)を誘発する。タラボスタット二重作用機序は、がんの処置に新規の手法を導入する。それというのも、これは、腫瘍標的化及び免疫賦活活性の両方を、単一の薬剤において組み合わせているためである。
【0048】
シブロツズマブは、Boehringer Ingelheim.International Gmbhに付与された米国特許第6,455,677号において開示されており、これは、FAP-αに結合するモノクローナル抗体を開示している。
【0049】
他のFAP阻害薬には、これらだけに限定されないが、例えば、Sarah E.Poplawski et al..,2013、Vol.56(9),Page no.3467-3477において開示されているとおりのARI-3099(N-(ピリジン-4-カルボニル)-d-Ala-boroPro);米国特許出願第20140255300号において開示されているとおりのARI-3996;米国特許出願第20100098633号において開示されているとおりのMIP-1231(MIP-1232またはMIP-1233);Koen Jansen et al.,2013,Vol.4(5),Page no.491-496による開示のとおりの(4-キノリノイル)-グリシル-2-シアノピロリジン;米国特許第8,183,280号において開示されているとおりの(2S)-1-(2-(1-ナプトイルアミノ)アセチル)ピロリン-2-カルボニトリル;PCT出願番号2013107820において開示されているとおりの(S)-A-(2-(2-シアノ-4,4-ジフルオロピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-1-ナフタミド及び他の関連誘導体;米国特許出願第20120053222号において開示されているとおりの(2S)-1-((2S)-2-(2-メトキシベンゾイルアミノ)-3-メチルペンタノイル)ピロリジン-2-カルボニトリル及び他の関連誘導体;Conrad Yap Edosada et al.2006、Vo.281(11)Page no.7437-7444による開示のとおりのAc-Gly-BoroPro;Ting-yueh Tsai et al.,2010、Vol.53(18),6572-6583において開示されているとおりの置換4-カルボキシルメチルピログルタミン酸ジアミド;P.Iveson et al.,2014,Vol.41(7),620による開示のとおりのGEH200200;米国特許第9,346,814号において開示されているとおりのUAMC-1110;PCT出願番号2002038590、米国特許第7,399,869号;米国特許第7,998,997号にも開示の数種のFAP阻害薬が包含される。
【0050】
FAP-α抗体を開示している他の特許、例えば、米国特許第8,568,727号(Boehringer Ingelheim.International Gmbhに付与)、欧州特許第1,268,550号(Boehringer Ingelheim.International Gmbhに付与)、米国特許第8,999,342号(Ludwig Institute for Cancer Research Ltdに付与)、米国特許第9,011,847号(Roche Glycartに付与)。DR-5を有するFAPの二重特異性抗体は、米国特許出願第20140370019号及び同第20120184718号において開示されており;キメラ抗原受容体及びFAPの組み合わせは、米国特許出願第20140099340号において開示されている。
【0051】
F11-24抗体は、FAPを標的とするマウスモノクローナル抗体である。抗FAP-α抗体には、N末端領域から15~41アミノ酸;Leu26-Asp760アミノ酸;及び525~625アミノ酸の間でキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)コンジュゲートした合成ペプチドのエピトープに対してマウスで増加する抗体が包含される。
(PPQFDRSKKYPLLIQVYGGPCSQSVRSVFAVNWISYLASKEGMVIALVDGRGTAFQGDKLLYAVYRKLGVYEVEDQITAVRKFIEMGFIDEKRIAIWGWS-(配列番号1))。
【0052】
同様に、抗FAP抗体には、配列FFPNWISGQEYLHQSAD(配列番号2)を有する57~73アミノ酸のヒト線維芽細胞活性化タンパク質、アルファのN末端;26~280アミノ酸;95~337アミノ酸;300~380アミノ酸;ヒトFAP-1の内部領域からの331~380アミノ酸;350~400アミノ酸;396~426アミノ酸、Lys366アミノ酸のkLH-コンジュゲートした合成ペプチド;E.coliで発現するヒトセプラーゼのIle523~Asp760アミノ酸;525~625アミノ酸;544~599アミノ酸;Gly542~Asp761アミノ酸;652~701アミノ酸;免疫原配列:
SWEYYASVYTERFMGLPTKDDNLEHYKNSTVMARAEYFRNVDYLLIHGTA(配列番号3);
ERCQYYTASFSDYAKYYALVCYGPGIPISTLHDGRTDQEIKILEENKELE NALKNIQLPK EEIKKLEVDE ITLWYKM(配列番号4)
のヒトFAPのC末端領域のエピトープに対してウサギで増加する抗体が包含される。
【表1】
【0053】
ジペプチジルペプチダーゼ8/9
DPP8及びDPP9は、プロピルオリゴペプチダーゼS9bサブファミリーの2つのメンバーとして発見されており、これらはまた、DPPIV及びFAPを含有する。これは、基質のN末端から2つの残基のプロリン後結合を切断する稀な能力によって特徴づけられる。DPP8及びDPP9は、独特の細胞局在パターンを有し、組織及び細胞系において遍在的に発現され、かつ細胞行動、がん生物学、病因、及び免疫応答を包含する様々な生物学的プロセスに対して重要な寄与を有する。
【0054】
ジペプチジルペプチダーゼ(DPP8/9)及びDPP8/9の阻害は、腫瘍及びリンパ節の間質においてIL-1β誘発(カスパーゼ-1活性化を介して)をもたらし、サイトカイン及びケモカインの産生をもたらし、第2の免疫調節手法と組み合わせてがんを処置するための治療手法の1ツとして使用される。
【0055】
DPP8遺伝子は、ヒト染色体15q22に局在化されており、882アミノ酸のタンパク質をコードする。これは、細胞質に局在化されており、100kDaの分子量を有する。
【0056】
DPP8/9特異的阻害薬は、(2S,3R)-2-アミノ-1-(イソインドリン-2-イル)-3-メチルペンタン-1-オン(allo-Ile-イソインドリン(UAMC00132);(S)-2,6-ジアミノ-1-(イソインドリン-2-イル)ヘキサン-1-オン(Lys-イソインドリン(UAMC00071);1G244(PTX-1210;(S)-2-アミノ-4-{4-[ビス-(4-フルオロフェニル)-メチル]ピペラジン-1-イル}-1-(1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ブタン-1,4-ジオン);PTX-1200(シクロヘキシルグリシン-イソインドリン);(2S)-2-アミノ-4-(4-((4-クロロフェニル)(フェニル)メチル)ピペラジン-1-イル)-1-(5-フルオロイソインドリン-2-イル)ブタン-1,4-ジオンビス-(2,2,2-トリフルオロアセタート);(2S)-2-アミノ-4-(4-((4-クロロフェニル)(フェニル)メチル)ピペラジン-1-イル)-1-(イソインドリン-2-イル)ブタン-1,4-ジオンビス(2,2,2-トリ-フルオロアセタート);(S)-2-アミノ-4-((S)-4-(ビス(4-フルオロフェニル)メチル)-3-メチル-ピペラジン-1-イル)-1-(イソインドリン-2-イル)ブタン-1,4-ジオンビス(2,2,2-トリ-フルオロアセタート);(2S)-2-アミノ-4-((3R)-4-((3-フルオロフェニル)(4-フルオロフェニル)-メチル)-3-メチルピペラジン-1-イル)-1-(イソインドリン-2-イル)ブタン-1,4-ジオンビス(2,2,2-トリフルオロアセタート、SUMO1 EILペプチド(米国特許出願第20150266922号において開示されているとおり)である。
【0057】
他の態様では、抗FAP抗体は、ナノボディであってよい。ナノボディ技術は、ラクダ及びラマ(Camelidae、camelids)からの抗体が重鎖は有するが、軽鎖は有さないという発見から開発された。そのような抗体の抗原結合性部位は、一本鎖ドメインであり、VHHと称されることもある。例えば、参照によって組み込まれる米国特許第5,800,988号及び同第6,005,079号及び国際出願公開番号WO94/04678、WO94/25591、及び欧州特許第2673297号を参照されたい。
【0058】
免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイント阻害薬には、PD1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、VISTAアンタゴニスト、TIM3アンタゴニスト、LAG3アンタゴニスト、IDOアンタゴニスト、KIR2Dアンタゴニスト、A2ARアンタゴニスト、B7-H3アンタゴニスト、B7-H4アンタゴニスト、BTLAアンタゴニストが包含され、好ましいものは、PD-1軸アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストまたはそれらの組み合わせである。
【0059】
PD-1軸アンタゴニスト
PD1軸アンタゴニストには、PD1アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体)、PD-L1アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)、及びPD-L2アンタゴニスト(例えば、抗PD-L2抗体)が包含される。
【0060】
本明細書において使用される場合、「プログラム死1」、「プログラム細胞死1」、「タンパク質PD-1」、「PD-1」、「PD1」、「PDCD1」、「hPD-1」、及び「hPD-I」という用語は、互換的に使用され、ヒトPD-1のバリアント、アイソフォーム、種同族体、及びヒトPD-1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を包含する。完全ヒトPD-1配列は、Genbankアクセッション番号U64863で見い出され得る。特定の態様では、PD-1アンタゴニストは、配列番号5(uniprot ID Q15116)のPD-1タンパク質に結合する。
【0061】
本明細書において使用される場合、「プログラム細胞死1リガンド1」、「PD-L1」、「PDL1」、「PDCD1L1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7同族体1」、「B7-H1」、「B7-H」、及び「B7H1」という用語は互換的に使用され、ヒトPDL-1のバリアント、アイソフォーム、種同族体、及びヒトPDL-1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を包含する。
【0062】
タンパク質プログラム死1(PD-1)は、CD28、CTLA-4、ICOS、及びBTLAも包含される受容体のCD28ファミリーの阻害メンバーである。
【0063】
PD-1のための2つのリガンド、PD-Ll及びPD-L2が同定されおり、これらは、PD-1と結合すると、T細胞活性化を下方制御することが示されている(Freeman et al.(2000)J Exp.Med.192:1027-34;Latchman et al.(2001)Nat Immunol.2:261-8;Carter et al.(2002)Eur.J Immunol 32:634-43)。PD-Ll及びPD-L2は両方とも、PD-1には結合するが、他のCD28ファミリーメンバーには結合しないB7同族体である。PD-Llは、様々なヒトがんにおいて豊富である(Dong et al.(2002)Nat.Med.8:787-9)。PD-1及びPD-Llの間の相互作用は、腫瘍浸潤性リンパ球の減少、T細胞受容体媒介性増殖の減少、及びがん細胞による免疫回避をもたらす(Dong et al.(2003)J.Mol.Med.81:281-7;Blank et al.(2005)Cancer Immunol.Immunother.54:307- 314;Kenosha et al.(2004)Clin.Cancer Res.10:5094-100)。PD-1とPD-Llとの局所相互作用を阻害することによって、免疫抑制を逆転することができ、その作用は、PD-1とPD-L2との相互作用も遮断される場合に、相加的である(Iwai et al.(2002)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 99:12293-7;Brown et al.(2003)J.Immunol.170:1257-66)。
【0064】
本発明の方法は、腫瘍またはがんを処置するために、PD-1アンタゴニスト(例えば、抗体)を選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬と組み合わせて使用することを伴う。したがって、本発明のPD-1アンタゴニストは、PD-1のリガンドに結合し、PD-1受容体への1つまたは複数のリガンドの結合を妨害するか、減少させるか、もしくは阻害するか、またはPD-1受容体を介してのシグナル伝達に関係することなくPD-1受容体に直接結合する。一実施形態では、PD-1アンタゴニストは、PD-1に直接結合し、PD-1阻害シグナル伝達を遮断する。別の実施形態では、PD-1アンタゴニストは、PD-1の1つまたは複数のリガンド(例えば、PD-Ll及びPD-L2)に結合し、リガンド(複数可)がPD-1を介して阻害シグナル伝達を引き起こすことを減少させるか、または阻害する。一実施形態では、PD-1アンタゴニストは、PD-Llに直接結合して、PD-LlがPD-1に結合することを阻害または防止し、それによって、PD-1阻害シグナル伝達を遮断する。
【0065】
本発明の方法及び組成物において使用されるPD-1アンタゴニストには、PD-1結合性骨格タンパク質が包含され、かつこれらだけに限定されないが、PD-lリガンド、抗体、及び多価薬剤が包含される。特定の一実施形態では、アンタゴニストは、AMP-224などの融合タンパク質である。別の実施形態では、アンタゴニストは、抗PD-1抗体(「PD-1抗体」)である。本発明において使用するために適した抗ヒト-PD-1抗体(またはそれに由来するVH及び/もしくはVLドメイン)は、当技術分野で周知の方法を使用して作成することができる。
【0066】
一部の実施形態では、PD-1に干渉する抗体は、抗PD-1抗体またはPD-1アンタゴニスト(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、及びOpdivo(登録商標)としても公知)、Merck3475(ペムブロリズマブ、MK-3475、ラムブロリズマブ、Keytruda(登録商標)、及びSCH-900475としても公知)、及びCT-011(ピジリズマブ、hBAT、及びhBAT-1としても公知)からなる群から選択される。一部の実施形態では、PD-1結合性アンタゴニストは、AMP-224(B7-DCIgとしても公知)である。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A、MDX-1105、及びMEDI4736からなる群から選択される。BMS-936559としても公知のMDX-1105は、WO2007/005874に記載の抗PD-L1抗体である。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634A1に記載の抗PD-L1である。MEDI4736は、WO2011/066389及び米国特許出願公開第2013/034559号に記載の抗PD-L1抗体である。MDX-1106-04、ONO-4538またはBMS-936558としても公知のMDX-1106は、米国特許第8,008,449号及びWO2006/121168に記載の抗PD-1抗体である。MK-3475またはSCH-900475としても公知のMerck3745は、米国特許第8 345 509号及びWO2009/114335に記載の抗PD-1抗体である。hBATまたはhBAT-1としても公知のCT-011(ピジジルマブ(Pidizilumab))は、WO2009/101611に記載の抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても公知のAMP-224は、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載のPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。アテゾリムマブ(atezolimumab)は、米国特許第8,217,149号に記載の抗PD-L1抗体である。アベルマブは、米国特許出願公開第20140341917号に記載の抗PD-L1抗体である。CA-170は、WO2015033301及びWO2015033299に記載のPD-1アンタゴニストである。他の抗PD1抗体が、米国特許第8,609,089号、米国特許出願公開第2010028330号、及び/または米国特許出願公開第20120114649号において開示されている。
【0067】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、MDX-1106である。「MDX-1106」の別の名称には、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、またはニボルマブが包含される。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。
【0068】
一部の実施形態では、抗PD-L2抗体は、AMP-224またはrHIgM12B7である。
【0069】
一実施形態では、PD-1阻害薬は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはピジリズマブから選択される抗PD-1抗体である。
【0070】
本発明の方法に有用な抗PD-L1抗体の例、及びそれらを作製するための方法は、参照によって本明細書に組み込まれるPCT特許出願WO2010/077634A1において記載されている。
【0071】
本発明において有用な抗PD-L1抗体またはPD-L1アンタゴニスト(そのような抗体を含有する組成物を包含)、例えば、WO2010/077634A1及び米国特許第8,217,149号に記載のものを、がんを処置するために、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬と組み合わせて使用し得る。
【0072】
抗体またはその抗原結合性断片を、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、既に記載の抗PD-L1、抗PD-1、もしく抗PD-L2抗体、または抗原結合性断片のいずれかをコードする核酸を発現に適した形態で含有する宿主細胞を、そのような抗体または断片を生成するために適した条件下で培養し、かつそれらの抗体または断片を回収することを含むプロセスによって作製してよい。
【0073】
抗PD-1抗体またはPD-1アンタゴニストに関しては、これらは、公知であり、ニボルマブ及びラムブロリズマブ、AMP-224、MDPL3280A、MEDI4736、及びMSB0010718Cが包含される。抗PD-1抗体は、BPS Biosciences及びBio X cellから入手し得る。
【0074】
一実施形態では、PD-1アンタゴニストは、ANA011、AUNP-12、BGB-A317、KD033、ペムブロリズマブ、MCLA-134、mDX400、MEDI0680、muDX400、ニボルマブ、PDR001、PF-06801591、ピジリズマブ、REGN-2810、SHR-1210、STI-A1110、TSR-042、ANB011、244C8、388D4、TSR042、及びXCE853からなる群から選択され、好ましいものは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、またはピジリズマブである。
【0075】
一実施形態では、PD-L1アンタゴニストは、アベルマブ、BMS-936559、CA-170、デュルバルマブ、MCLA-145、SP142、STI-A1011、STIA1012、STI-A1010、STI-A1014、A110、KY1003、及びアテゾリムマブ(Atezolimumab)からなる群から選択され、好ましいものは、アベルマブ、デュルバルマブ、またはアテゾリムマブである。
【0076】
一実施形態では、PD-L2アンタゴニストは、AMP-224またはrHIgM12B7からなる群から選択される。
【0077】
CTLA4アンタゴニスト
本発明の方法において使用するために適した抗CTLA4アンタゴニストには、限定ではないが、抗CTLA4抗体、ヒト抗CTLA4抗体、マウス抗CTLA4抗体、哺乳類抗CTLA4抗体、ヒト化抗CTLA4抗体、モノクローナル抗CTLA4抗体、ポリクローナル抗CTLA4抗体、キメラ抗CTLA4抗体、MDX-010(イピリムマブ)、トレメリムマブ、抗CD28抗体、抗CTLA4アドネクチン、抗CTLA4ドメイン抗体、一本鎖抗CTLA4断片、重鎖抗CTLA4断片、軽鎖抗CTLA4断片、同時刺激経路を刺激するCTLA4の阻害薬、PCT公開No.WO2001/014424において開示されている抗体、PCT公開No.WO2004/035607において開示されている抗体、米国特許出願公開第2005/0201994号において開示されている抗体、及び付与された欧州特許第1212422B号において開示されている抗体が包含される。追加のCTLA-4抗体は、米国特許第5,811,097号;同第5,855,887号;同第6,051,227号;及び同第6,984,720号において;PCT公開No.WO01/14424及びWO00/37504において;ならびに米国特許出願公開第2002/0039581号及び同第2002/086014号において記載されている。本発明の方法において使用することができる他の抗CTLA-4抗体には、例えば、WO98/42752;米国特許第6,682,736号及び同第6,207,156号;Hurwitz et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95(17):10067-10071(1998);Camacho et al.,J.Clin:Oncology、22(145):Abstract No.2505(2004)(antibody CP-675206);Mokyr et al.、Cancer Res.、58:5301-5304(1998)、及び米国特許第5,977,318号、同第6,682,736号、同第7,109,003号、及び同第7,132,281号において開示されているものが包含される。
【0078】
好ましい臨床的CTLA-4抗体は、ヒトモノクローナル抗体(MDX-010及びイピリムマブとも称され、CAS番号477202-00-9を有し、Medarex、Inc.、Bloomsbury、NJから入手可能)であり、WO01/14424において開示されている。
【0079】
CTLA-4アンタゴニスト(抗体)に関しては、これらは、公知であり、トレメリムマブ(CP-675,206)及びイピリムマブが包含される。
【0080】
CTLA4アンタゴニストは、KAHR-102、AGEN1884、ABR002、KN044、トレメリムマブ、またはイピリムマブからなる群から選択され、好ましいものは、トレメリムマブまたはイピリムマブである。
【0081】
II.使用方法:
本発明は、一部では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬、例えば、タラボスタット及び免疫チェックポイント阻害薬、例えば、PD-1アンタゴニスト、PDL1アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストの同時投与が、いずれか単独と比較して、有意に高い抗腫瘍有効性をもたらすという意外な発見に基づく。この組み合わせが、抗がん作用の総体的な増強、例えば、T細胞プライミングの改善、T細胞刺激の増加、腫瘍微小環境全体にわたる好中球及びマクロファージの浸潤の増加、腫瘍体積の減少、ナチュラルキラー細胞の活性化の上昇、樹状細胞の活性化の増強、炎症誘発性サイトカイン(IL2、IL6、IL12p40、IL15、IL7、G-CSF及びGM-CSF)の相乗的増加、抗腫瘍メモリー応答の増強、ならびに毒性の低下をもたらすので、この発見は予測外であった。
【0082】
一実施形態では、本発明は、
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の有効量及び
(ii)免疫チェックポイント阻害薬の有効量
を含む新規の組み合わせ手法を提供する。
【0083】
一実施形態では、本発明は、腫瘍またはがんを予防及び/または処置するための、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせての線維芽細胞タンパク質活性化(FAP)またはジペプチジルペプチダーゼ8/9(DPP8/9)活性の阻害薬の使用、さらには、医薬組成物を提供する。
【0084】
一実施形態では、腫瘍を有する対象において、腫瘍を処置するか、その進行を遅延させるか、または腫瘍再発、腫瘍増殖、もしくは腫瘍展開を予防するか、もしくは遅延させるための方法であって、対象に、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び免疫チェックポイント阻害薬(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)の有効量を投与することを含む方法を、本明細書において提供する。
【0085】
一実施形態では、腫瘍を有する対象において、腫瘍を処置するか、その進行を遅延させるか、または腫瘍再発、腫瘍増殖、もしくは腫瘍展開を予防するか、もしくは遅延させるための方法であって、対象に、選択的ジペプチジルぺプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害薬(例えば、PD-1軸結合アンタゴニストの組み合わせ)の有効量を投与することを含む方法を、本明細書において提供する。
【0086】
一実施形態では、がんを有する対象において、免疫機能を増強する方法であって、対象に、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び免疫チェックポイント阻害薬(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)の有効量を投与することを含む方法を、本明細書において提供する。
【0087】
別の実施形態では、本発明は、抗腫瘍免疫応答を開始させるか、持続させるか、または増強するための方法であって、対象に:
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の有効量及び
(ii)免疫チェックポイント阻害薬の有効量
を投与することを含む方法を提供する。
【0088】
別の実施形態では、本発明は、抗腫瘍免疫応答を開始させるか、持続させるか、または増強するための方法であって、対象に、(a)タラボスタット及び(b)PD-1軸結合アンタゴニストを投与することを含む方法を提供する。
【0089】
さらに、本明細書に記載の(a)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び(b)免疫チェックポイント阻害薬の投与は、対象または患者に投与すべきチェックポイント阻害薬の有効量を減少させ得る。さらに、チェックポイント阻害薬の量の減少は、チェックポイント阻害薬の毒性を低下させ、かつチェックポイント阻害薬に対する対象の耐性を上昇させ得る。
【0090】
下記のがんを、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及びPD-1軸結合アンタゴニストで処置することができ、FAPを発現するがんの処置を包含する。一部の実施形態では、処置を受ける個体は、FAPを発現するがんに罹患している。
【0091】
一部の実施形態では、対象は、がんを有するか、がんを発症するリスクを有する。一部の実施形態では、当該処置は、処置を中止した後に、個体において持続的な応答をもたらす。一部の実施形態では、個体は、初期段階または後期段階であってよいがんを有する。一部の実施形態では、がんは、転移性である。一部の実施形態では、個体は、ヒトである。
【0092】
一実施形態では、本発明は、
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の有効量;
(ii)免疫チェックポイント阻害薬の有効量;及び
(iii)薬学的に許容される賦形剤(複数可)または担体(複数可)
を含む医薬組成物であって、腫瘍を有する対象へのその組成物の投与が、対象において腫瘍増殖または転移を処置するか、予防するか、または遅延させる医薬組成物を提供する。
【0093】
別の実施形態では、本発明は、1つまたは複数の選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(複数可)を1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害薬(複数可)との組み合わせで、任意選択の抗腫瘍薬(複数可)及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)及び/またはアジュバントと共に含む医薬組成物を開示する。
【0094】
別の実施形態では、本発明は、
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(複数可)の有効量;
(ii)PD-1軸アンタゴニスト(複数可)の有効量、
(iii)1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバント(複数可)
を含む医薬組成物であって、腫瘍を有する対象へのその組成物の投与が、対象において腫瘍増殖または転移を処置するか、予防するか、または遅延させる医薬組成物を提供する。
【0095】
また別の実施形態では、本発明は、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬をPD-1アンタゴニストとの組み合わせで、任意選択の抗腫瘍薬(複数可)及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバントと共に含む医薬組成物を提供する。
【0096】
別の実施形態では、本発明は、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬をPD-L1アンタゴニストとの組み合わせで、任意選択の抗腫瘍薬(複数可)及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバントと共に含む医薬組成物を提供する。
【0097】
別の実施形態では、本発明は、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬をPD-L2アンタゴニストとの組み合わせで、任意選択の抗腫瘍薬(複数可)及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバントと共に含む医薬組成物を提供する。
【0098】
別の実施形態では、本発明は、
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(複数可)の有効量;
(ii)CTLA4アンタゴニスト(複数可)の有効量及び
(iii)1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバント(複数可)
を含む医薬組成物であって、腫瘍を有する対象へのその組成物の投与が、対象において腫瘍増殖または転移を処置するか、予防するか、または遅延させる医薬組成物を提供する。
【0099】
別の実施形態では、本発明は、
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(複数可)の有効量;
(ii)PD-1軸アンタゴニスト(複数可)の有効量;
(iii)CTLA4アンタゴニスト(複数可)の有効量及び
(iv)1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバント(複数可)
を含む医薬組成物であって、腫瘍を有する対象へのその組成物の投与が、対象において腫瘍増殖または転移を処置するか、予防するか、または遅延させる医薬組成物を提供する。
【0100】
また別の実施形態では、本発明は、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬をCTLA4アンタゴニストとの組み合わせで、任意選択の抗腫瘍薬(複数可)及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバントと共に含む医薬組成物を提供する。
【0101】
抗腫瘍薬は、抗体、または小分子からなる群から選択され得る。抗腫瘍薬の例には、これらに限定されないが:低用量シクロフォスファミド、トラスツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、テムシロリムス、アドトラスツズマブ、エムタンシン、クリゾチニブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、レゴラフェニブ、ベムラフェニブ、アビラテロン酢酸エステル、ジブ-アフリベルセプトなどが包含される。別法で、または前記組み合わせとの組み合わせで、本明細書に記載の方法及び組成物を、1つまたは複数のワクチン、例えば、治療用がんワクチン;または細胞免疫療法の他の形態と組み合わせて投与することができる。
【0102】
別の実施形態では、本発明は、対象において望ましい免疫応答を増強し、増加させ、促進し、調節する方法であって、対象に、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の有効量を含む第1の組成物、及び免疫チェックポイント阻害薬の有効量を含む第2の組成物を投与することを含み、その際、前記対象が、FAPもしくはDPP8/9及び/または免疫チェックポイント分子(複数可)のレベルの上昇と関連する腫瘍またはがんを有すると診断されている方法を開示する。
【0103】
別の実施形態では、対象において腫瘍を処置するか、予防するか、またはその進行を遅延させるための第1の医薬組成物の製造における選択的ジぺプチジルぺプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)の使用であって、第1の医薬組成物が、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含み、その処置が、免疫チェックポイント阻害薬及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含む第2の医薬組成物と組み合わせての第1の医薬組成物の投与を含む使用を、本明細書において提供する。
【0104】
別の実施形態では、対象において腫瘍を処置するか、またはその進行を遅延させる際に使用するための、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含む第1の医薬組成物であって、その処置が、第2の組成物と組み合わせての前記第1の医薬組成物の投与を含み、第2の組成物が、免疫チェックポイント阻害薬及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含む医薬組成物を、本明細書において提供する。
【0105】
別の実施形態では、対象において腫瘍を処置するか、またはその進行を遅延させる際に使用するための、免疫チェックポイント阻害薬及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含む第2の医薬組成物であって、その処置が、第1の組成物との組み合わせでの前記第2の医薬組成物の投与を含み、第1の組成物が、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含む第2の医薬組成物を、本明細書において提供する。
【0106】
別の実施形態では、がんまたは腫瘍を有する対象において免疫機能を増強するための第1の医薬組成物の製造における、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)の使用であって、第1の医薬組成物が、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含み、かつ処置が、免疫チェックポイント阻害薬及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含む第2の組成物と組み合わせての医薬組成物の投与を含む使用を、本明細書において提供する。
【0107】
別の実施形態では、がんを有する対象において免疫機能を増強するための第2の医薬組成物の製造における免疫チェックポイント阻害薬の使用であって、第2の医薬組成物が、免疫チェックポイント阻害薬及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含み、かつ処置が、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含む第1の組成物と組み合わせての第2の医薬組成物の投与を含む使用を、本明細書において提供する。
【0108】
別の実施形態では、本発明は、選択的DPP阻害薬の毒性を低下させるか、または低用量の選択的DPP阻害薬で治療効果を得ることを可能にするための方法であって、対象に、本明細書に記載の選択的DPP阻害薬及びチェックポイント阻害薬を投与することを含む方法を提供する。
【0109】
追加の一実施形態では、本発明は、チェックポイント阻害薬を投与する前に、免疫応答を誘発するための方法であって、選択的DPP阻害薬を使用して、抗腫瘍免疫応答を開始させるか、もしくは可能にすること、または先在の抗腫瘍免疫応答を増強すること、続いて、本明細書に記載の1つまたは複数のチェックポイント阻害薬を投与することを含む方法を提供する。
【0110】
別の実施形態では、本発明は、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及びCAR-TまたはCAR-NK細胞を組み合わせる根拠を提供する。本発明の発明者らは、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬が、所望のとおりにCARTの活性を増強する可能性を反映する多機能性作用機序を包含することを明らかにした。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及びPD-1アンタゴニストは、IL-15及びIL-7の放出において相乗作用を示し、これらのサイトカインは、メモリーT細胞生成に必要な代謝経路と関連していて、したがって、CARTの抗腫瘍免疫応答を延長するであろう。
【0111】
より具体的には、本発明は、
(i)タラボスタット
(ii)免疫チェックポイント阻害薬
(iii)操作CAR-TまたはCAR-NK細胞
を含む組み合わせを提供する。
【0112】
別の実施形態では、本発明は、これらだけに限定されないが、CTLA4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM3、LAG3、VISTA、KIR2D、IDO、A2AR、OX40のリストを包含する1つまたは複数の腫瘍抗原を標的とする操作T細胞またはNK細胞を使用する免疫調節手法と組み合わせて、ジペプチジルペプチダーゼ(例えば、FAPまたはDPP8/9)の活性を選択的に阻害するタラボスタットで、がんを処置する方法に関する。
【0113】
III.がん/腫瘍:
提供する方法のいずれも、腫瘍であるがん、例えば、充実性腫瘍である腫瘍を処置するために使用することができる。一部の例では、腫瘍は、中程度から高度なジペプチジルペプチダーゼ発現、具体的には、FAP発現またはDPP8/9発現を有すると特徴づけられる。提供する方法によって処置され得る例示的ながんには、これらだけに限定されないが、膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、乳癌、神経膠芽細胞腫、胃癌、星状膠細胞、神経外胚葉腫瘍、頭頚部癌、三重陰性乳癌、胃食道癌、非小細胞肺癌が包含される。
【0114】
本発明はまた、転移癌、特に、PD-L1またはCTLA4を発現する転移癌を処置するために有用である。
【0115】
一部の実施形態では、本発明は、対象において癌を処置する方法であって、対象に、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、FAP阻害薬またはDPP8/9阻害薬)の治療有効量及び免疫チェックポイント阻害薬の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0116】
その増殖が選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬、例えば、タラボスタット及びPD-1アンタゴニストの組み合わせ療法を使用することで阻害され得る好ましいがんには、免疫療法に典型的に応答するがんが包含される。処置するために好ましいがんの非限定的例には、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎臓癌、ホジキン病、胃癌、神経膠芽細胞腫;頭頚部癌、肝細胞癌、多発性骨髄腫、食道癌、小細胞肺癌、尿生殖器癌、急性骨髄性白血病、乳癌、慢性リンパ球性白血病、びまん性大B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫;骨髄異形成症候群;卵巣癌;ブドウ膜黒色腫、結腸直腸癌、血液悪性疾患、非ホジキンリンパ腫、慢性骨髄性白血病、及び膠腫が包含される。加えて、本発明は、その増殖が本発明の抗体を使用することで阻害され得る難治性または再発性悪性疾患を包含する。
【0117】
その増殖が選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬、例えば、タラボスタット及びCTLA4アンタゴニストの組み合わせ療法を使用することで阻害され得る好ましいがんには、免疫療法に典型的に応答するがんが包含される。処置するために好ましいがんの非限定的例には、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓癌(例えば、明細胞癌)、前立腺癌(例えば、ホルモン抵抗性前立腺腺癌)、乳癌、神経膠芽細胞腫、結腸癌及び肺癌(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、胃癌、骨髄異形成症候群;食道癌;卵巣癌;尿生殖器癌;ブドウ膜黒色腫、副腎癌;肝臓癌が包含される。加えて、本発明は、その増殖が本発明の抗体を使用することで阻害され得る難治性または再発性悪性疾患を包含する。
【0118】
本明細書に記載の方法、使用、組成物、及びキットの一部の実施形態では、がんは、充実性腫瘍である。一部の実施形態では、がんは、尿生殖器癌(前立腺癌、腎細胞癌、膀胱癌など)、甲状腺癌、睾丸癌、外陰癌、ウィルムス腫瘍、ホルモン感受性またはホルモン抵抗性前立腺癌、婦人科癌(卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮癌など)、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、胃腸間質癌、胃腸癌(非転移性または転移性結腸直腸癌、膵臓癌、胃癌、食道癌、肝細胞癌、胆管細胞癌など)、悪性神経膠芽細胞腫、悪性中皮腫、非転移性または転移性乳癌(ホルモン抵抗性転移性乳癌、三重陰性乳癌など)、悪性黒色腫、黒色腫、転移性黒色腫、メルケル細胞癌または骨及び軟部組織肉腫、口腔扁平上皮細胞癌、神経膠芽細胞腫、脳癌、骨肉腫、神経芽細胞腫、進行転移性、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT)、胆管癌、嚢胞腺癌、エナメル上皮腫、軟骨肉腫、皮膚線維肉腫、神経節膠腫、平滑筋肉腫、髄芽細胞腫、骨芽細胞腫、ならびに手術不能の非炎症性局所進行疾患などである。最も好ましいがんは、充実性腫瘍(膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、乳癌、神経膠芽細胞腫、胃癌、星状膠細胞、神経外胚葉腫瘍、頭頚部癌、三重陰性乳癌、胃食道癌、非小細胞肺癌など)または造血性がん(白血病、リンパ腫、リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病)である。
【0119】
一部の実施形態では、その増殖が選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(複数可)及び免疫チェックポイント阻害薬(複数可)の組み合わせ療法を使用することで阻害され得るがんは、ウイルス関連がんである。例示的なウイルス関連がんには、これらだけに限定されないが、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒトTリンホトロピックウイルス1型(HTLV-1)、ヒトTリンホトロピック2型(HTLV-2)、及びヒトヘルペスウイルス、例えば、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)と関連するがんが包含される。特定のウイルスと関連するがんは、通常の技能の当業者には公知である。例えば、EBV関連がんの例には、これらだけに限定されないが、リンパ腫、鼻咽頭癌、胃癌、耳下腺癌、乳癌、及び平滑筋肉腫が包含される。B型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)と関連するがんの例には、これらだけに限定されないが、肝臓癌が包含される。ヒトパピローマウイルス(HPV)と関連するがんの例には、これらだけに限定されないが、口咽頭頭頚部癌、鼻咽頭頭頚部癌、ならびに子宮頸、外陰、膣、陰茎、及び肛門の癌が包含される。ヒトTリンホトロピックウイルス1型(HTLV-1)及び2型(HTLV-2)と関連するがんの例には、これらだけに限定されないが、それぞれ、成人T細胞白血病及び毛様細胞性白血病が包含される。ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)と関連するがんの例には、これらだけに限定されないが、カポジ肉腫が包含される。一部の実施形態では、ウイルス関連がんは、HPVと関連するがんである。他の実施形態では、ウイルス関連がんは、HCVと関連するがんである。
【0120】
一実施形態では、本発明は、がんを処置するために受容者において免疫応答を誘発または増強するための方法及び組成物を提供する。これらの方法は、T細胞及びNK細胞上の阻害性受容体を遮断することで免疫応答を増強することによって作用するので、これらは、非常に幅広いがんに適用可能である。
【0121】
本明細書に記載の方法、使用、組成物、及びキットの一部の実施形態では、対象は、ヒトである。一部の実施形態では、対象は、がんを有するか、またはがんと診断されている。一部の実施形態では、対象は、置換(replaced)または難治性がん(充実性腫瘍など)に罹患している。一部の実施形態では、対象は、充実性腫瘍(膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、乳癌、神経膠芽細胞腫、胃癌、星状膠細胞、神経外胚葉腫瘍、頭頚部癌、三重陰性乳癌、胃食道癌、非小細胞肺癌など)に罹患している。
【0122】
一部の実施形態では、対象は、がんを有するか、またはがんと診断されている。一部の実施形態では、対象は、まれな非免疫原性がんに罹患しており、それらには、これらだけに限定されないが、髄様上皮腫、肺胞軟部組織肉腫、胸膜中皮腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、頭頚部の扁平上皮細胞癌、胸腺癌、胸腺腫、未分化多形性肉腫、膣癌が包含される。
【0123】
本発明の方法は、免疫原性の増強、例えば、がんを処置するために腫瘍免疫原性の上昇が望ましい状態を処置する際に使用し得る。これらだけに限定されないが、充実性腫瘍であるがんを包含する様々ながんを処置し得るか、またはそれらの進行を遅延させ得る。一部の実施形態では、がんは、難治性または転移がんである。一部の実施形態では、がんは、リンパ腫または白血病である。一部の実施形態では、白血病は、慢性リンパ球性白血病(CLL)または急性骨髄性白血病(AML)である。一部の実施形態では、リンパ腫は、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)、または非ホジキンリンパ腫(NHL)である。
【0124】
IV.投与
対象においてがんまたは腫瘍を処置するための適切な投与/処置プロトコルは、例えば、患者に、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び免疫チェックポイント阻害薬の有効量を投与することを包含する。
【0125】
一部の実施形態では、本発明の組み合わせ療法は、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び免疫チェックポイント阻害薬の投与を含む。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬を、当技術分野で公知の任意の適切な手法で投与してよい。例えば、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬を連続的に(異なる時間に)、または同時に(同じ時間に)投与してよい。
【0126】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬を、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)を投与する前に投与する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬を、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の投与と同期で投与する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬を選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を投与した後に投与する。
【0127】
一部の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬または免疫チェックポイント阻害薬を連続的に投与する。一部の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬または免疫チェックポイント阻害薬を断続的に投与する。
【0128】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬及び選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の同時投与、例えば、2つの別々の製剤としての前記免疫チェックポイント阻害薬及び選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)を投与する。同時投与は、同期であり得るか、またはいずれかの順序で逐次であり得る。さらなる一実施形態では、その間に両方の(またはすべての)治療薬がそれらの生物学的活性を同期で発揮する期間が存在する。前記免疫チェックポイント阻害薬及び選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)を同期で、または連続的に、例えば、経口で、または連続注入を介して静脈内(i.v.)で同時投与する。両方の治療薬を連続的に同時投与する場合、治療薬を、「一定期間」によって分離される2つの別々の投与で投与する。一定期間という用語は、1時間から30日間のいずれも意味する。例えば、薬剤の1つを、他の治療薬の投与から約30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1日、または24、23,22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1時間以内に投与することができ、かつ一実施形態では、一定期間は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1日、または24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5,4、3、2、もしくは1時間である。一部の実施形態では、同期投与は、同時、または短期間内、通常は1時間未満以内を意味する。
【0129】
投与期間は、本明細書において使用される場合、その間に各治療薬が少なくとも1回投与されている期間を意味する。投与期間は通常、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日間であり、一実施形態では、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、または24日間であり、例えば、8または16または24日間である。
【0130】
特定の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)の複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の)用量及び免疫チェックポイント阻害薬の複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の)用量を、処置を必要とする対象に投与する。
【0131】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬を、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.lmg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.7mg/kg、lmg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、l0mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、または30mg/kgの用量で投与する。免疫チェックポイント阻害薬の用量は、約0.01mg/kg~30mg/kg、好ましくは0.1mg/kg~20mg/kg、より好ましくは1mg/kg~10mg/kgで変動し得る。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬を注射によって(例えば、皮下で、または静脈内で)、約0.01mg/kg~30mg/kg、例えば、約0.1mg/kg~20mg/kg、約1mg/kg~10mg/kg、約1mg/kg~5mg/kg、または約1~3mg/kgの用量で投与する。
【0132】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬を、1日1回の投与、2日ごとに1回の投与、3日ごとに1回の投与、4日ごとに1回の投与、5日ごとに1回の投与、週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、または4週間ごとに1回、好ましくは週1回で投与する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬を単回投与として、2回投与で、3回投与で、4回投与で、5回投与で、または6回もしくはそれ以上の投与で投与する。投与スケジュールは、例えば、週1回から、2、3、または4週間ごとに1回まで変動し得る。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬を約1mg/kg~10mg/kgの用量で週1回投与する。
【0133】
特定の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)を0.001mg/kg、0.002mg/kg、0.003mg/kg、0.004mg/kg、0.005mg/kg、0.006mg/kg、0.007mg/kg、0.008mg/kg、0.009mg/kg、0.010mg/kg、0.012mg/kg、0.013mg/kg、0.014mg/kg、0.020mg/kg、0.025mg/kg、0.030mg/kg、及び0.035mg/kgの用量で投与する。好ましい実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の各用量を、0.002mg/kg、0.003mg/kg、0.004mg/kg、0.005mg/kg、0.006mg/kg、0.007mg/kg、0.009mg/kg、0.01mg/kg、0.013mg/kg、及び0.014mg/kgで投与する。別の実施形態では、患者においてFAPまたはDPP8/9のレベルの上昇と関連するがんを予防及び/または処置するために投与される本発明の選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の投薬量は、約0.001mg/kg~約10mg/kg、0.001mg/kg~約1mg/kg、約0.001mg/kg~0.05mg/kg、約0.001mg/kg~0.035mg/kg、約0.002mg/kg~約5mg/kg、約0.002mg/kg~約3mg/kg、約0.002mg/kg~約2mg/kg、約0.002mg/kg~約0.05mg/kg、約0.002mg/kg~約0.035mg/kg、約0.003mg/kg~約2.0mg/kg、約0.003mg/kg~約2.0mg/kg、約0.004mg/kg~約2.5mg/kg、約0.005mg/kg~約2.5mg/kg、約0.006mg/kg~約2.5mg/kg、約0.007mg/kg~約2.5mg/kg、約0.008mg/kg~約2.5mg/kg、約0.009mg/kg~約2.5mg/kg、約0.010mg/kg~約1.5mg/kg、約0.011mg/kg~約1.5mg/kg、約0.012mg/kg~約1mg/kg、約0.013mg/kg~約1mg/kgの単位用量であり、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の全1日用量は、約100mcg~200mg、好ましくは約100mcg~50mg、最も好ましくは約100mcg~10mgで変動し得る。タラボスタットの全1日用量は、約50mcg~3mg、好ましくは約100mcg~2.5mg、最も好ましくは約100mcg~2.0mgで変動し得る。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の用量は、約0.001mg/kg~10mg/kg、好ましくは0.001mg/kg~3mg/kg、より好ましくは約0.001mg/kg~2mg/kgで変動し得る。タラボスタットの用量は、約0.001mg/kg~1mg/kg、好ましくは0.001mg/kg~0.05mg/kg、より好ましくは約0.001mg/kg~0.035mg/kgで変動し得る。
【0134】
特定の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を、1日2回、1日1回の投与、2日ごとに1回の投与、3日ごとに1回の投与、4日ごとに1回の投与、5日ごとに1回の投与、週1回で、2週ごとに1回、または4週ごとに1回、好ましくは1日1回の投与で投与する。特定の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を単回投与として、2回投与で、3回投与で、4回投与で、5回投与で、または6回またはそれ以上の投与で投与する。投与スケジュールは、例えば、1日1回から、2、3、または4週ごとに1回まで変動し得る。一実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を、約0.001mg/kgから3mg/kgの用量で、1日1回投与する。特定の実施形態では、投与頻度は、1日2回から1カ月ごとに1回まで変動し得る。
【0135】
がんに罹患しているヒト患者を処置するために適した処置プロトコルは、例えば、患者に、
(i)タラボスタット、
(ii)PD-1軸アンタゴニスト
のそれぞれの有効量を投与することを包含し、その際、その方法は、少なくとも1つの投与サイクルを含み、そのサイクルは24日間であり、少なくとも1つのサイクルのそれぞれでは、タラボスタットを連続して7日間にわたって約0.001mg/体重kg~0.035mg/体重kgの用量で投与し、かつPD-1軸アンタゴニストを0.1~20mg/体重の用量で8日目ごとに投与し、この24日間のサイクルの後に、7日間の休止期間が推奨され、次いで、病態の軽減があるまでか、または医師によって指示されるとおりに、次の投与サイクルを開始する。これは、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)を投与した後に、規則的な間隔(例えば、週1回)でのPD-1軸アンタゴニストの投与を包含した。
【0136】
別の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を経口投与のために製剤化し、かつ/またはPD-1軸アンタゴニストを静脈内投与のために製剤化する。一実施形態では、PD-1軸アンタゴニストを、各サイクルの8、16、24日目に投与する。別の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を毎日投与する。好ましい実施形態では、投与サイクルは、1、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、15、17、18、19、20、21、22、及び23目でのタラボスタットの1日1回の投与;ならびに8、16、及び24日目でのPD-1軸アンタゴニストの1日1回の投与、ならびに続く、1週間の休止期間を含む。
【0137】
別の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の21回の投与を、24日サイクルにおいて投与する。別の実施形態では、PD-1軸アンタゴニストの3回の投与を、24日サイクル内で8日目ごとに投与する。
【0138】
別の実施形態では、投与の1サイクルは24日間であり、これを、必要に応じて繰り返すことができる。別の実施形態では、処置は、12サイクルまでからなる。
【0139】
特定の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の各用量を、0.001、0.003、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.012、0.013、0.020、0.025,.030mg/体重kg及び0.035mg/体重kgで投与する。好ましい実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、FAP阻害薬またはDPP8/9阻害薬)の各用量を、約0.003mg/kg、約0.004mg/kg、約0.005mg/kg、約0.006mg/kg、約0.007mg/kg、約0.009mg/kg、約0.01mg/kg、約0.013mg/kg、及び約0.014mg/kgで投与する。
【0140】
他の実施形態では、PD-1軸アンタゴニストの各用量を、0.1、0.3、1、3、6、10、または20mg/体重kgで投与する。好ましい実施形態では、PD-1軸アンタゴニストの各用量を0.3、1、3または10mg/kgで投与する。より好ましい実施形態では、PD-1軸アンタゴニストを、3週ごとに2mg/kg(Keytruda(登録商標))または2週ごとに3mg/kg(Opdivo(登録商標))または3週ごとに1200mg(Tecentriq(登録商標))の用量で投与する。
【0141】
一実施形態では、タラボスタット及びPD-1軸アンタゴニストまたはCTLAアンタゴニストを、次の用量で投与する:
a)タラボスタット約0.002mg/kg、及びPD-1軸アンタゴニスト2mg/kgもしくは3mg/kgもしくは1200mg、またはCTLA4アンタゴニスト3mg/kg;
b)タラボスタット約0.003mg/kg、及びPD-1軸アンタゴニスト2mg/kgもしくは3mg/kgもしくは1200mg、またはCTLA4アンタゴニスト3mg/kg;
c)タラボスタット約0.004mg/kg、及びPD-1軸アンタゴニスト2mg/kgもしくは3mg/kgもしくは1200mg、またはCTLA4アンタゴニスト3mg/kg;
d)タラボスタット約0.005mg/kg、及びPD-1軸アンタゴニスト2mg/kgもしくは3mg/kgもしくは1200mg、またはCTLA4アンタゴニスト3mg/kg;
e)タラボスタット約0.006mg/kg、及びPD-1軸アンタゴニスト2mg/kgもしくは3mg/kgもしくは1200mg、またはCTLA4アンタゴニスト3mg/kg;
f)タラボスタット約0.007mg/kg、及びPD-1軸アンタゴニスト2mg/kgもしくは3mg/kgもしくは1200mg、またはCTLA4アンタゴニスト3mg/kg;
g)タラボスタット約0.008mg/kg、及びPD-1軸アンタゴニスト2mg/kgもしくは3mg/kgもしくは1200mg、またはCTLA4アンタゴニスト3mg/kg;
h)タラボスタット約0.009mg/kg、及びPD-1軸アンタゴニスト2mg/kgもしくは3mg/kgもしくは1200mg、またはCTLA4アンタゴニスト3mg/kg;
i)タラボスタット約0.010mg/kg、及びPD-1軸アンタゴニスト2mg/kgもしくは3mg/kgもしくは1200mg、またはCTLA4アンタゴニスト3mg/kg;
j)タラボスタット約0.012mg/kg、及びPD-1軸アンタゴニスト2mg/kgもしくは3mg/kgもしくは1200mg、またはCTLA4アンタゴニスト3mg/kg;
k)タラボスタット約0.013mg/kg、及びPD-1軸アンタゴニスト2mg/kgもしくは3mg/kgもしくは1200mg、またはCTLA4アンタゴニスト3mg/kg。
【0142】
別の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び/またはPD-1軸アンタゴニストの用量を経時的に変動させる。例えば、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び/またはPD-1軸アンタゴニストを初めは高用量で投与してよく、かつ経時的に低下させてよい。別の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び/またはPD-1軸アンタゴニストを初めは低用量で投与し、かつ経時的に増加させる。
【0143】
別の実施形態では、投与される選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び/またはPD-1軸アンタゴニストの量は、各投与で一定である。別の実施形態では、投与される治療薬の量は、各投与で変動する。例えば、治療薬の維持(または継続)用量は、最初に投与された負荷量よりも多いか、または同じであり得る。別の実施形態では、治療薬の維持用量は、その負荷量よりも少ないか、または同じであり得る。
【0144】
免疫チェックポイント阻害薬を、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬と同じ頻度で、または異なる頻度で投与することができ、その際、免疫チェックポイント阻害薬の各投与を、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の投与よりも、48時間未満先にする。例えば、免疫チェックポイント阻害薬を、週2回、週1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、6週ごとに1回、2カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回、4カ月ごとに1回、5カ月ごとに1回、または6カ月ごとに1回で投与することができ;免疫チェックポイント阻害薬の各投与は、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の投与よりも10日以下、9日以下、8日以下、7日以下、6日以下、5日以下、4日以下、3日以下、2日以下、1日以下先にする。
【0145】
他の実施形態では、臨床的有用性が観察される限り、または完全な応答、進行性疾患の確認、もしくは制御不可能な毒性が存在するまで、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び/またはPD-1アンタゴニストを投与する。
【0146】
別の実施形態では、PD-1アンタゴニスト及び選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を、処置のファーストライン(例えば、初回または一次処置)として投与する。別の実施形態では、PD-1アンタゴニスト及び選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を処置のセカンドライン(例えば、初回または一次処置の後に、再発後及び/または第1の処置が失敗した場合を包含)として投与する。
【0147】
別の態様では、本発明は、PD-1アンタゴニストがPD-L1アンタゴニストまたはPD-L2アンタゴニストに置き換えられるか、またはそれらと組み合わされた上述の実施形態のいずれをも特徴とし、PD-1軸アンタゴニストには、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、及びPD-L2アンタゴニストが包含される。
【0148】
選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び/または免疫チェックポイント阻害薬の適切な投薬量は、処置を受ける疾患の種類、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬の種類、疾患の重症度及び経過、対象の臨床状態、対象の臨床履歴及び処置に対する応答、関係する症状、対象の体重、性別、免疫状態、ならびに主治医の判断に基づき決定され得る。適切なレジメンは、熟練した当業者によって、そのような因子を考慮することによって、かつ例えば、文献において報告されていて、かつPhysician’s Desk Reference(59th ed.、2005)において推奨されている投薬量に従って選択され得る。
【0149】
好ましくは、本発明の組み合わせ療法において使用される治療薬の投薬量は、FAPもしくはDPP8/9及び/または免疫チェックポイント分子のレベルの上昇と関連する腫瘍を予防及び/または処置するために使用されてきたか、または現在使用されている投薬量よりも少ない。
【0150】
一部の実施形態では、がんを処置する方法を、成功する可能性が低くても行うが、それにもかかわらず、これは、患者の病歴及び推定される生存能力からして、作用の全体的に有利な経過を誘発すると考えられる。
【0151】
したがって、一実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬の用量は、mg/体重kgとして計算される。しかしながら、別の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び/または免疫チェックポイント阻害薬の用量は、患者の体重にかかわりなく固定されている均一の固定用量である。
【0152】
選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び免疫チェックポイント阻害薬を、同じ投与経路によって、または別の投与経路によって投与してよい。一部の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を、経口で、静脈内で、筋肉内で、皮下で、局所で、直腸で、経皮で、気管内で、膣で、腹腔内で、眼窩内で、移植によって、吸入によって、髄腔内で、心室内で、または鼻腔内で投与する。好ましい投与経路は経口である。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を、対象に、阻害薬を罹患部位に直接的または間接的に送達する任意の経路によって投与することができる。送達は、局所的(例えば、粘膜)または全身的であってよい。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を経口で投与し、かつ免疫チェックポイント阻害薬を非経口経路によって投与する。
【0153】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬を、静脈内で、筋肉内で、皮下で、局所で、経口で、経皮で、腹腔内で、眼窩内で、移植によって、吸入によって、髄腔内で、心室内で、または鼻腔内で、好ましくは静脈内で投与する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、PD-L1アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)である。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体を対象に、静脈内で、120mgの用量で、3週ごとに1回投与する。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体を、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタットまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、その誘導体)と共に投与する。
【0154】
V.医薬組成物/製剤
選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び/または免疫チェックポイント阻害薬及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバント(複数可)を含む医薬組成物または製剤も本明細書において提供する。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(タラボスタット)を、免疫チェックポイント阻害薬と別々に、または一緒に製剤化してよい。一緒に製剤化されるということは、複数の薬剤が、対象に投与する前に同じ組成物中に存在することを意味する。別々に製剤化されるということは、複数の薬剤が、対象に投与する前に別々及び別個の組成物中に存在することを意味する。
【0155】
一実施形態では、本発明は、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含む組成物を提供する。本明細書において記載されているか、または当技術分野で公知の薬学的に許容される担体のいずれも使用してよい。
【0156】
いっそうさらなる一実施形態では、本発明は、本明細書において提供されるとおりの免疫チェックポイント阻害薬、例えば、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、またはPD-L2アンタゴニストまたはCTLA4アンタゴニスト、及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバント(複数可)を含む組成物を提供する。本明細書において記載されているか、または当技術分野で公知の薬学的に許容される担体のいずれも使用してよい。
【0157】
本明細書において使用される場合、「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの活性な治療薬(例えば、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬または免疫チェックポイント阻害薬)及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含む組成物を指す。薬学的に許容される担体またはアジュバントは、当業者に周知であり、かつ通常、選択される投与経路に依存し、水も、担体またはアジュバントの例として包含される。一部の実施形態では、混合物は、少なくとも1つの選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)を、対象において少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害薬との相加または相乗作用を、その両方が同期で(例えば、単一の製剤で、または別々の製剤として同時に)投与された場合にもたらす量で含む。一部の実施形態では、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含む第1の組成物、ならびに免疫チェックポイント阻害薬及び1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)を含む第2の組成物は両方とも、その両方が連続的に(別の製剤として)対象に投与された場合に、相加または相乗作用をもたらす量で存在する。別の好ましい実施形態では、腫瘍を処置し、予防し、寛解するために使用される本組み合わせを経口で、かつ/または皮下で、もしく静脈内で投与する。
【0158】
ヒト患者に投与するために適した医薬組成物は典型的には、例えば、液体担体中で、非経口投与のために製剤化されるか、または非経口投与のための液体溶液または懸濁液に再構成するために適している。一般に、そのような組成物は典型的には、薬学的に許容される担体を含む。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、政府規制当局によって承認されているか、または動物、殊にヒトおいて使用するために米国薬局方または別の一般に認められている薬局方において列挙されていることを意味する。本明細書に記載のとおりの医薬組成物及び製剤は、所望の純度を有する治療薬(例えば、抗体)を1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製することができる。「担体」という用語は、化合物がそれと共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。薬学的に許容される担体は一般に、使用される投薬量及び濃度で、受容者に対して非毒性であり、それらには、これらだけに限定されないが:緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを包含する抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール、クロロブタノール、チメロサール、アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン;キレート化剤、例えば、EDTA;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール、グルコース、マンノース、またはデキストリンなどの糖を包含する、単糖、二糖、及び他の炭水化物;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が包含される。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体にはさらに、間質薬物分散剤(interstitial drug dispersion agent)、例えば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International、Inc.)が包含される。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物を含有する溶媒または再構成媒体または分散媒体であってよい。静脈内投与では、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、クレモフォールEL(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が包含される。組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによって、注射用組成物の遷延性吸収をもたらすことができる。
【0159】
皮下適用のために使用される液剤または懸濁剤は典型的には、次の成分の1つまたは複数を包含する:滅菌担体、例えば、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩;及び張性を調節するための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHを、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムで調節することができる。そのような製剤を、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または多回投与用バイアル内に封入してよい。本発明はまた、他の製剤、例えば、マイクロカプセル剤、ナノ粒子または持続放出組成物、鼻腔内組成物、経口組成物を提供する。活性薬剤を、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタアシラート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に封入してよい。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)において開示されている。特定の実施形態では、本明細書において開示されている治療薬を、身体からの急速な排除から化合物を保護するであろう担体で、例えば、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を包含する制御放出製剤で調製する。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を使用することができる。そのような製剤を調製する方法は、当業者には明らかであろう。本明細書において開示されている抗体を含有するリポソーム懸濁液も、薬学的に許容される担体として使用することができる。持続放出製剤の適切な例には、治療薬(例えば、抗体)を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが包含され、その際、そのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。in vivo投与のために使用される製剤は一般に、無菌である。無菌性は、例えば、滅菌濾過膜を通しての濾過によって容易に達成され得る。
【0160】
経口使用では、本発明の医薬組成物を、例えば、錠剤もしくはカプセル剤、散剤、分散性顆粒剤、もしくはカシェ剤の形態で、または水性液剤もしくは懸濁剤として投与してよい。経口組成物は一般に、不活性な担体(例えば、希釈剤)または可食担体を包含する。それらを、ゼラチンカプセルに封入するか、または錠剤に圧縮することができる。経口投与では、治療薬を、担体と組み合わせ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用することができる。薬学的に適合性な結合剤、及び/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、次の成分、または同様の性質の化合物のいずれも含有することができる;結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンもしくはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル(primogel)、もしくはトウモロコシデンプン;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸塩;流動化促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロースもしくはサッカリン;または香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香味剤を含有することができる。
【0161】
液体製剤には、鼻腔内投与用液剤も包含され得る。
【0162】
吸入に適したエアロゾル製剤には、薬学的に許容される担体、例えば、不活性な圧縮ガスとの組み合わせであってよい液体及び粉末形態の固体が包含され得る。
【0163】
組成物中に存在する選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)の量は一般に、組成物の約0.01~約30%w/wの範囲であり、好ましくは0.5~20%w/wの量であるべきである。同様に、組成物中に存在する免疫チェックポイント阻害薬の量は、組成物の約0.01~約30%w/wの範囲、好ましくは0.5~20%w/wの量である。免疫チェックポイント阻害薬は、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストからなる群から選択される。
【0164】
製剤中で使用される正確な用量は、投与経路、及びがんの重症度にも依存し、診療医の判断及び各患者の状況に従って決定されるべきである。有効な用量を、in vitroまたは動物モデル試験システムに由来する用量反応曲線から外挿してよい。
【0165】
一部の実施形態では、本明細書に記載の選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬は、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の有効量、及び増量剤、緩衝剤、界面活性剤、pH調整剤からなる群から選択される1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバント(複数可)を含む製剤の形であり、その製剤は、適切なpHを有する。
【0166】
一部の実施形態では、本明細書に記載の選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬は、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)の有効量、及び希釈剤、結合剤、崩壊剤、流動化促進剤、界面活性剤からなる群から選択される1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバント(複数可)を含む製剤の形であり、その錠剤は、有機酸を含有しない。
【0167】
一部の実施形態では、本明細書に記載のPD-L1アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)は、約60mg/mLの量の抗体、約20mMの濃度の酢酸ヒスチジン、約120mMの濃度のスクロース、及び0.04%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含む製剤の形であり、その製剤は、約5.8のpHを有する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗PD-L1抗体は、約125mg/mLの量の抗体、約20mMの濃度の酢酸ヒスチジン、約240mMの濃度のスクロース、及び0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含む製剤の形であり、その製剤は、約5.5のpHを有する。
【0168】
特定の実施形態では、上述の製剤または組成物を作製する様々なプロセスが包含され、そのような組成物を、当技術分野で公知のプロセスのいずれによっても製造することができる。
【0169】
別の実施形態では、本発明は、経口投与用のタラボスタットの医薬組成物、及びそのような製剤を調製するプロセスに関する。一部の好ましい実施形態では、タラボスタットを、経口錠剤として製剤化する。医薬錠剤は、即時放出または放出調節錠剤であってよい。錠剤は、マトリックスの形態、またはコーティングされた形態であってよい。
【0170】
例示的な即時放出錠剤は、タラボスタットの有効量を含み、薬学的に許容される担体は、希釈剤、結合剤、崩壊剤、流動促進剤、滑沢剤、pH調整剤、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0171】
希釈剤:1つまたは複数の希釈剤は、これらだけに限定されないが、第二リン酸カルシウム、プルラン、マルトデキストリン、イソマルト、糖ペレット、マンニトール、噴霧乾燥マンニトール、微結晶性セルロース、第二リン酸カルシウム二水和物、ラクトース、糖、ソルビトール、微結晶性セルロース及びガーゴムの混合物(Avicel CE-15)、マンニトール、ポリプラスドン及びサイロイドの混合物(Pharmaburst)、マンニトール、クロスポビドン及びポリビニル酢酸の混合物(Ludiflash)、イソマルト、Panexcea、F-Melt、スクロース、カルシウム塩及び同様の無機塩、重質炭酸マグネシウムなど、ならびにそれらの混合物を含む。好ましくは、これは、ラクトースまたは微結晶性セルロースである。
【0172】
結合剤:1つまたは複数の結合剤は、これらだけに限定されないが、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ザンサンガム、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ゼラチン、糖、グルコース、天然ゴム、ゴム、合成セルロース、ポリメタクリラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、及び他のセルロース誘導体など、ならびにそれらの混合物を含む。好ましくは、結合剤は、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0173】
崩壊剤:1つまたは複数の結合剤は、これらだけに限定されないが、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、アルギン酸ナトリウム、ゴム、デンプン、及びケイ酸マグネシウムアルミニウムの少なくとも1つまたは混合物を含む。好ましくは、崩壊剤は、デンプングリコール酸ナトリウムである。
【0174】
滑沢剤:1つまたは複数の滑沢剤は、これらだけに限定されないが、ステアリルフマル酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ステアリン酸金属、硬化ヒマシ油など、及びそれらの混合物を含む。好ましくは、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0175】
流動促進剤:1つまたは複数の流動促進剤は、これらだけに限定されないが、ステアリン酸、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ケイ酸アルミニウムなど、及びそれらの混合物を含む。好ましくは、それは、タルクである。
【0176】
pH調整剤:1つまたは複数のpH調整剤は、これらだけに限定されないが、有機酸またはその塩、例えば、リン酸、クエン酸などを含む。
【0177】
一実施形態では、本発明は、以下に作表するとおりの薬学的に許容される添加剤のパーセンテージまたは濃度を提供する:
【表2】
【0178】
好ましくは、タラボスタットの例示的な即時放出錠剤は、次を包含する:
【表3】
【0179】
一部の好ましい実施形態では、単位用量中のタラボスタットの量は、1錠剤当たり約100マイクログラム、1錠剤当たり約200マイクログラム、1錠剤当たり約300マイクログラム、1錠剤当たり約400マイクログラム、1錠剤当たり約500マイクログラム、1錠剤当たり約600マイクログラム、1錠剤当たり約700マイクログラム、1錠剤当たり約800マイクログラムである。
【0180】
一部の好ましい実施形態では、タラボスタットを、放出調節マトリックス錠剤として製剤化する。例示的な持続放出錠剤は、タラボスタットの有効量を含み、薬学的許容される担体またはアジュバントは、希釈剤、結合剤、放出調節物質、流動促進剤、滑沢剤、着色剤、及びそれらの組み合わせから選択される。別法では、放出調節錠剤は、即時放出核及びコーティングを含み、その際、前記コーティングは、放出調節物質及び他の医薬品添加剤を含む。
【0181】
放出調節物質は、これらだけに限定されないが、ポリビニルピロリドン(K90)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(K4M、K10)、ヒドロキシプロピルセルロース(高粘度)、カルナウバろう、ベヘン酸グリセリル、キャスターワックス、ポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルエチルセルロース、エチルセルロース、フタル酸またはコハク酸セルロース、殊に、酢酸フタル酸セルロース及びフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;高分子ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーなどを含む。好ましくは、これは、ポリビニルピロリドン(K90)またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(K4M、K10)またはヒドロキシプロピルセルロース(高粘度-HF)、ポリエチレンオキシドなどである。放出調節物質は、錠剤の10~50%wtの範囲で存在する。
【0182】
好ましくは、タラボスタットの例示的な放出調節錠剤は、次を包含する:
【表4】
【0183】
したがって、一態様では、本発明は、本質的にタラボスタット、希釈剤(例えば、ラクトース一水和物)及び任意選択で結合剤からなる粒子を含む医薬錠剤を提供する。その粒子を、結合剤、滑沢剤、及び崩壊剤の1つまたは複数とブレンドし、次いで、圧縮してよい。
【0184】
本発明による錠剤を製造するために、様々な方法を使用することができる。より好ましくは、そのプロセスは、タラボスタットを適切な溶媒(結合剤を含むか、または含まない)中に溶解させることを包含し、この溶液を増量剤粒子(他の物質を含有してもよい)全体に均一に分散させて、凝集粒子/顆粒を形成する。湿式造粒またはコーティングまたは噴霧プロセスを同じことのために使用することができる。得られた顆粒を、必要に応じてサイズ調整するか、または顆粒を乾式造粒/スラッギング(slugging)/ローラ圧縮法、続く、摩砕ステップによってさらに加工して、特定の粒径分布の適切な顆粒を得ることができる。サイズ調整された顆粒を他の成分とさらにブレンドし、かつ/または次いで、適切なブレンダー内で滑らかにし、かつ適切な工具を使用して特定の寸法の錠剤に圧縮する。コーティングを、適切な装置で行うことができる。
【0185】
VI.キット
一部の実施形態では、組み合わせは、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬の製剤を、併用するための、または組み合わせ製品に対する指示書と共に、またはそれを伴わずに包含する。組み合わせ治療薬は、同じか、または異なる製造者によって製造及び/または製剤化され得る。したがって、組み合わせ治療薬は、互いに独立に販売もされている完全に別の医薬剤形または医薬組成物であり得る。実施形態では、それらを併用するための指示書は、(i)医師に発表する前に(例えば、第1の治療薬及び他の治療薬を含む「パーツキット」の場合に);(ii)投与の直前に医師自身によって(または、医師の指導下で);(iii)医師または医療スタッフによって患者自身によって提供される。
【0186】
別の態様では、対象においてがんを処置するか、もしくはその進行を遅延させるための、またはがんを有する対象の免疫機能を増強するための選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び/または免疫チェックポイント阻害薬を含むキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬、及び対象においてがんを処置するか、もしくはその進行を遅延させるための、またはがんを有する対象の免疫機能を増強するために、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を使用するための指示書を含む添付文書を含む。一部の実施形態では、キットは、免疫チェックポイント阻害薬、及び対象においてがんを処置するか、もしくはその進行を遅延させるための、またはがんを有する対象の免疫機能を増強するために、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬と組み合わせて免疫チェックポイント阻害薬を使用するための指示書を含む添付文書を含む。一部の実施形態では、キットは、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬、ならびに対象においてがんを処置するか、もしくはその進行を遅延させるための、またはがんを有する対象の免疫機能を増強するために、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬を使用するための指示書を含む添付文書を含む。本明細書に記載の選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)及び/または免疫チェックポイント阻害薬のいずれも、キットに包含されてよい。
【0187】
一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載の選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬の1つまたは複数を含有する容器を含む。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル(例えば、デュアルチャンバーバイアル)、シリンジ(シングルまたはデュアルチャンバーシリンジなど)、及び試験管が包含される。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されていてよい。一部の実施形態では、キットは、ラベル(例えば、コンテナ上に、またはコンテナに付随して)または添付文書を含んでよい。ラベルまたは添付文書は、その中に含有される化合物が、対象においてがんを処置するか、もしくはその進行を遅延させるために、またはがんを有する対象の免疫機能を増強するために有用であり得るか、またはそのために意図され得ることを示していてよい。キットはさらに、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、ニードル、及びシリンジを包含する、商業及び使用者の立場から望ましい他の物質を含んでよい。本発明の一実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、またはCTLA4アンタゴニストである。
【0188】
したがって、一部の実施形態では、本発明は、1つまたは複数の選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を含む第1の組成物、及び1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害薬を含む第2の組成物を含むキットを対象とする。一部の実施形態では、対象に投与する前に、第1及び第2の組成物を一緒に混合してよい。一部の実施形態では、組み合わせの最大有効性、相加作用、相乗作用、それらの組み合わせが得られるように、第1及び第2の組成物を同期で、または連続的に(すなわち、ある期間を空けて)投与してよい。
【0189】
本明細書に記載の活性成分及び医薬組成物の投与計画は、監督官庁によって公開された情報を含めて、処方医の当分野の知識に基づき、その処方医によって選択され得る。例えば、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))は典型的には、静脈内投与される。アメリカ食品医薬品局(FDA)によれば、Opdivo(登録商標)の推奨用量は、疾患進行まで、2週ごとに60分かけて静脈内注入として投与される3mg/kgである。
【0190】
本明細書に記載の方法、使用、組成物、及びキットの一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、及びPD-L2アンタゴニストからなる群から選択される。一部の実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1アンタゴニストである。一部の実施形態では、抗PD-1アンタゴニストは、そのリガンド結合性パートナーへのPD-1の結合を阻害する。一部の実施形態では、PD-1アンタゴニストは、PD-L1へのPD-1の、PD-L2へのPD-1の、またはPD-L1及びPD-L2の両方へのPD-1の結合を阻害する。
【0191】
VII.結果
本明細書において開示されている方法に従って処置を受けた患者は好ましくは、がんの少なくとも1つの徴候の改善を経験する。一実施形態では、改善を、測定可能な腫瘍病変の量及び/またはサイズの減少によって測定する。別の実施形態では、病変を、胸部X線またはCTもしくはMRIフィルムで測定することができる。別の実施形態では、細胞学または組織学を使用して、治療に対する応答性を評価することができる。別の実施形態では、無増悪生存及び/または全生存期間の延長が得られる。
【0192】
特定の一態様では、抗腫瘍応答は、腫瘍特異的応答、臨床応答、腫瘍サイズ/体積の減少、腫瘍特異的バイオマーカーの減少、抗腫瘍サイトカインの増加、またはそれらの組み合わせである。
【0193】
特定の一態様では、臨床応答は、腫瘍増殖の減少及び/または腫瘍サイズの減少である。特定の一態様では、抗腫瘍免疫応答の開始、持続、または増強が、がんの処置による。
【0194】
さらなる一態様では、抗腫瘍応答は、腫瘍増殖を阻害し、腫瘍細胞死、腫瘍退縮を誘発し、腫瘍再発、腫瘍増殖、腫瘍の広がり、または腫瘍排除を予防するか、または遅延させている。
【0195】
特定の実施形態では、腫瘍応答は、腫瘍細胞の数の減少である。特定の実施形態では、腫瘍応答は、腫瘍増殖の速度の低下である。特定の実施形態では、腫瘍応答は、ジペプチジルペプチダーゼ酵素活性の遮断である。特定の実施形態では、腫瘍応答は、炎症誘発性サイトカイン応答及び細胞傷害性T細胞応答の誘発である。
【0196】
本方法は、約10%超、約20%超、約30%超、約35%超、約42%超、約43%超、約44%超、約45%超、約46%超、約47%超、約48%超、約49%超、約50%超、約51%超、約52%超、約53%超、約54%超、約55%超、約56%超、約57%超、約58%超、約59%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超,または約100%超の腫瘍サイズの阻害をもたらす。
【0197】
一実施形態では、処置を受けた患者は、完全な応答(CR)、部分的応答(PR)、安定疾患(SD)、免疫関連完全疾患(irCR)、免疫関連部分的応答(irPR)、または免疫関連安定疾患(irSD)を示す。別の実施形態では、処置を受けた患者は、腫瘍の縮小及び/または増殖速度の低下、すなわち、腫瘍増殖の抑制を経験する。別の実施形態では、望ましくない細胞増殖が減少するか、または阻害される。また別の実施形態では、次の1つまたは複数が起こり得る:がん細胞の数が減少し得る;腫瘍サイズが縮小し得る;末梢器官へのがん細胞浸潤が阻害されるか、遅延するか、減速するか、または停止し得る;腫瘍転位が減速するか、または阻害され得る;腫瘍増殖が阻害され得る;腫瘍の再発が予防されるか、または遅延し得る;がんと関連する症状の1つまたは複数がある程度緩和され得る。
【0198】
他の実施形態では、本明細書において提供する方法のいずれかに従って、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、FAP阻害薬またはDPP8/9阻害薬)及びPD-1アンタゴニストの有効量を投与することで、腫瘍サイズの縮小、経時的に現れる転移病変の数の減少、完全な緩解、部分的な緩解、または安定疾患からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果が生じる。さらに他の実施形態では、当該処置方法は、単独でのFAP阻害薬またはDPP8/9阻害薬またはPD-1アンタゴニストによって達成されるよりも良好な比較可能な臨床的有用率(clinical benefit rate、CBR=CR+PR+SD≧6カ月)をもたらす。他の実施形態では、臨床的有用率の改善は、単独でのFAP阻害薬またはDPP8/9阻害薬またはPD-1アンタゴニストと比較して、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上である。一部の実施形態では、個体におけるCD8+T細胞が、単一薬剤の投与と比較して、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及びPD-1軸アンタゴニストの組み合わせの存在下で、プライミング、活性化、増殖、及び/または細胞溶解活性を増強している。
【0199】
一部の実施形態では、CD8+T細胞プライミングは、CD8+T細胞におけるCD44発現の向上及び/または細胞溶解活性の増強によって特徴づけられる。一部の実施形態では、CD8+T細胞活性化は、γ-IFN+CD8+T細胞の頻度の上昇によって特徴づけられる。一部の実施形態では、CD8+T細胞は、抗原特異的T細胞である。一部の実施形態では、免疫回避は、PD-L1表面発現を介するシグナル伝達が阻害されることによって阻害される。
【0200】
一部の実施形態では、組み合わせの投与前に対して、CD4+及び/またはCD8+T細胞の数が上昇する。一部の実施形態では、活性化CD4+及び/またはCD8+T細胞は、組み合わせの投与前に対して、γ-IFN+産生CD4+及び/またはCD8+T細胞及び/または細胞溶解活性の増強によって特徴づけられる。一部の実施形態では、CD4+及び/またはCD8+T細胞は、IFN-γ、TNF-α、及びインターロイキン(IL-2、IL-6、IL-12p40、IL-15)からなる群から選択されるサイトカインの放出の増加を示す。
【0201】
一部の実施形態では、CD4+及び/またはCD8+T細胞は、エフェクターメモリーT細胞である。一部の実施形態では、CD4+及び/またはCD8+エフェクターメモリーT細胞は、γ-IFN+産生CD4+及び/またはCD8+T細胞及び/または細胞溶解活性の増強によって特徴づけられる。一部の実施形態では、CD4+及び/またはCD8+エフェクターメモリーT細胞は、高いCD44、低いCD62Lの発現を有することによって特徴づけられ、さらには、IL-15及びIL-7サイトカイン放出と関連する。
【0202】
一部の実施形態では、個体における抗原提示細胞は、単一薬剤投与と比較して、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及びPD-1アンタゴニストの組み合わせの存在下で、成熟及び活性化の増強を有する。一部の実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞である。一部の実施形態では、抗原提示細胞の成熟は、CD83+樹状細胞の頻度の上昇によって特徴づけられる。一部の実施形態では、抗原提示細胞の活性化は、樹状細胞でのCD80+及びCD86+の発現の上昇によって特徴づけられる。
【0203】
一部の実施形態では、対象におけるサイトカインIL-2及び/またはケモカインGM-CSF、G-CSFの血清レベルは、単一薬剤投与と比較して、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及びPD-1アンタゴニストの組み合わせの存在下で上昇する。
【0204】
一部の実施形態では、がんは、単一薬剤投与と比較して、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及びPD-1アンタゴニストの組み合わせの存在下で、T細胞浸潤のレベルの上昇を有する。
【0205】
標的病変に関して、治療に対する応答には、完全な応答(CR)、部分的応答(PR)、進行疾患(PD)、安定疾患(SD)、免疫関連完全応答(irCR)、免疫関連部分的応答(irPR)、免疫関連進行疾患(irPD)、及び免疫関連安定疾患(irSD)が包含され得る。
【0206】
非標的病変に関して、治療に対する応答には、完全な応答(CR)、進行疾患(PD)、免疫関連完全応答(irCR)、及び免疫関連進行疾患(irPD)が包含され得る。
【0207】
本発明の具体的な実施形態は、次のとおりである:
【0208】
実施形態1。対象において免疫応答を増強する方法であって、腫瘍、それらの微小環境内の細胞、免疫細胞、または分泌産物に対してジペプチジルペプチダーゼの活性の阻害を介して作用する治療薬(複数可)の有効量を、対象において免疫応答を増強する免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて投与することを含み、その際、対象が腫瘍について診断されている前記方法。
【0209】
実施形態2。治療薬が、小分子、抗体、ナノボディ、操作ペプチド、操作タンパク質、ワクチン、siRNA治療、または自己免疫増強治療、好ましくは小分子からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0210】
実施形態3。前記治療薬が、線維芽細胞活性化タンパク質及び/またはジペプチジルペプチダーゼ8/9の阻害を包含する選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を含む、実施形態1及び2に記載の方法。
【0211】
実施形態4。前記小分子がタラボスタットである、実施形態2に記載の方法。
【0212】
実施形態5。腫瘍を包含する増殖性疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象に、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の相乗的治療有効量を、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて投与することを含む前記方法。
【0213】
実施形態6。腫瘍を処置するための医薬組成物の製造における、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせての、線維芽細胞活性化タンパク質またはジペプチジルペプチダーゼ8/9を包含するジペプチジルペプチダーゼの活性を選択的に阻害する治療薬の使用。
【0214】
実施形態7。腫瘍を包含する増殖性疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象に、タラボスタットの相乗的治療有効量を、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて投与することを含む前記方法。
【0215】
実施形態8。腫瘍を処置するための医薬組成物の製造における、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせてのタラボスタットの使用。
【0216】
実施形態9。免疫応答の刺激によって寛解される腫瘍の処置において使用するための選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬であって、前記処置において、免疫チェックポイント阻害薬が同時投与される前記選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬。
【0217】
実施形態10。免疫応答の刺激によって寛解される腫瘍の処置において使用するためのタラボスタットであって、前記処置において、免疫チェックポイント阻害薬が同時投与される前記タラボスタット。
【0218】
実施形態11。腫瘍を処置するための組み合わせ療法であって、前記組み合わせが、
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(複数可)の有効量及び
(ii)免疫チェックポイント阻害薬(複数可)の有効量
を含む前記組み合わせ療法。
【0219】
実施形態12。腫瘍を処置するための組み合わせ療法であって、前記組み合わせが、
i.タラボスタットの有効量及び
ii.免疫チェックポイント阻害薬(複数可)の有効量
を含む前記組み合わせ療法。
【0220】
実施形態13。腫瘍を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(複数可)の有効量及び
(ii)免疫チェックポイント阻害薬(複数可)の有効量
を投与して、それぞれ単独で投与される前記選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び前記免疫チェックポイント阻害薬の効果と比較して、治療効果の増強を有する組み合わせ療法を得ることを含む前記方法。
【0221】
実施形態14。前記免疫チェックポイント阻害薬が、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、VISTAアンタゴニスト、TIM3アンタゴニスト、LAG3アンタゴニスト、IDOアンタゴニスト、KIR2Dアンタゴニスト、A2ARアンタゴニスト、B7-H3アンタゴニスト、B7-H4アンタゴニスト、BTLAアンタゴニストからなる群から選択され、好ましいものが、PD1軸アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、またはそれらの組み合わせである、実施形態1及び5から13に記載の方法。
【0222】
実施形態15。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬が、小分子、抗体、ナノボディ、操作ペプチド、操作タンパク質、ワクチン、siRNA治療または自己免疫増強治療、好ましくは小分子からなる群から選択される、実施形態5、6、9、11、及び13に記載の方法。
【0223】
実施形態16。前記小分子がタラボスタットである、実施形態15に記載の方法。
【0224】
実施形態17。前記腫瘍が充実性腫瘍またはヘム悪性疾患(heme malignancy)である、実施形態1及び5~13に記載の方法。
【0225】
実施形態18。前記腫瘍/がんが、膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、乳癌、神経膠芽細胞腫、胃癌、星状膠細胞、神経外胚葉腫瘍、頭頚部扁平上皮細胞癌、三重陰性乳癌、胃食道癌、非小細胞肺癌、転移黒色腫などからなる群から選択される、実施形態17に記載の方法。
【0226】
実施形態19。PD-1アンタゴニストが、ANA011、BGB-A317、KD033、ペムブロリズマブ、MCLA-134、mDX400、MEDI0680、muDX400、ニボルマブ、PDR001、PF-06801591、ピジリズマブ、REGN-2810、SHR1210、STI-A1110、TSR-042、ANB011、244C8、388D4、TSR042、及びXCE853からなる群から選択され、好ましいものが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、またはピジリズマブである、実施形態14に記載の方法。
【0227】
実施形態20。PD-L1アンタゴニストが、アベルマブ、BMS-936559、CA-170、デュルバルマブ、MCLA-145、SP142、STI-A1011、STI-A1012、STI-A1010、STI-A1014、A110、KY1003、及びアテゾリムマブからなる群から選択され、好ましいものが、デュルバルマブまたはアテゾリムマブである、実施形態14に記載の方法。
【0228】
実施形態21。PD-L2アンタゴニストが、AMP-224及びrHIgM12B7から選択される、実施形態14に記載の方法。
【0229】
実施形態22。CTLA4アンタゴニストが、KAHR-102、AGEN1884、ABR002、KN044、トレメリムマブ、及びイピリムマブからなる群から選択され、好ましいものが、トレメリムマブ及びイピリムマブである、実施形態14に記載の方法。
【0230】
実施形態23。医薬組成物であって、
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(複数可)の有効量;
(ii)免疫チェックポイント阻害薬(複数可)の有効量及び
(iii)薬学的に許容される担体またはアジュバント(複数可)
を含み、腫瘍を有する対象への前記組成物の投与が、対象において、腫瘍増殖または転移を処置し、予防し、遅延させる前記医薬組成物。
【0231】
実施形態24。医薬組成物であって、
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(複数可)の有効量;
(ii)免疫チェックポイント阻害薬(複数可)の有効量及び
(iii)任意選択の抗腫瘍薬(複数可)の有効量及び
1つまたは複数の薬学的に許容される担体またはアジュバント(複数可)
を含み、腫瘍を有する対象への前記組成物の投与が、対象において、腫瘍増殖または転移を処置し、予防し、遅延させる前記医薬組成物。
【0232】
実施形態25。腫瘍を処置するために免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて使用するための医薬組成物であって、タラボスタットを1つまたは複数の薬学的に許容される担体(複数可)またはアジュバント(複数可)と一緒に含む前記医薬組成物。
【0233】
実施形態26。前記タラボスタットが、希釈剤としてのラクトース及び微結晶性セルロース、結合剤としてのα化デンプン、崩壊剤としてのクロスポビドン、滑沢剤としてのステアリン酸、ならびに任意選択で、pH調整剤としてのリン酸一ナトリウム一水和物及びリン酸を含む錠剤として製剤化されている、実施形態25に記載の医薬組成物。
【0234】
実施形態27。前記タラボスタットが、希釈剤としてのラクトース及び微結晶性セルロース、放出調節物質としてのヒドロキシルプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシルプロピルセルロースまたはポリビニルピロリドン、滑沢剤としてのステアリン酸、ならびに任意選択で、pH調整剤としてのリン酸一ナトリウム一水和物及び/またはリン酸を含む放出調節錠剤として製剤化されている、実施形態25に記載の医薬組成物。
【0235】
実施形態28。腫瘍を包含する増殖性疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象に、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の相乗的治療有効量を、CAR-TまたはCAR-NK細胞と組み合わせて投与することを含む前記方法。
【0236】
実施形態29。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を、小分子、抗体、ナノボディ、操作ペプチド、操作タンパク質、ワクチン、siRNA治療または自己免疫増強治療、好ましくは小分子からなる群から選択する、実施形態23、24、及び28に記載の方法。
【0237】
実施形態30。前記小分子がタラボスタットである、実施形態29に記載の医薬組成物。
【0238】
実施形態31。前記タラボスタットが、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、液剤、持続放出錠剤、制御放出錠剤、持続放出カプセル剤、制御放出カプセル剤、リポソーム剤、マイクロ粒子剤、ナノ粒子剤などとして製剤化されている、実施形態30に記載の医薬組成物。
【0239】
実施形態32。前記医薬組成物が有機酸を含有しない、実施形態26及び27に記載の医薬組成物。
【0240】
実施形態33。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬が、経口、頬側、静脈内、皮下、動脈内、筋肉内、経皮、吸入、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される投与経路、好ましくは経口で投与される、実施形態23及び24に記載の医薬組成物。
【0241】
実施形態34。腫瘍を包含する増殖性疾患を処置するための方法であって、小分子である選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を含む第1の組成物を投与すること;次いで、免疫チェックポイント阻害薬を含む第2の組成物を投与することを含み、前記選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を前記免疫チェックポイント阻害薬と同期で、連続的に、または断続的に投与する前記方法。
【0242】
実施形態35。前記組成物を同じ投与経路または異なる投与経路によって投与する、実施形態34に記載の方法。
【0243】
実施形態36。
(i)選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(複数可)を含む第1の組成物、及び
(ii)免疫チェックポイント阻害薬(複数可)を含む第2の組成物
を含むキット。
【0244】
実施形態37。第1の容器、第2の容器、及び添付文書を含むキットであって、前記第1の容器が免疫チェックポイント阻害薬を含む医薬組成物の少なくとも1つの用量を含み、前記第2の容器がタラボスタットを含む医薬組成物の少なくとも1つの用量を含み、かつ前記添付文書が、前記医薬組成物を使用して、がんについて対象を処置するための指示書を含む前記キット。
【0245】
実施形態38。腫瘍に罹患している対象を処置するためのキットであって、
(i)タラボスタット約0.001mg/体重kg~0.035mg/体重kgの範囲の投薬量;
(ii)免疫チェックポイント標的を阻害する免疫チェックポイント阻害薬約0.1mg/体重kg~20.0mg/体重kgの範囲の投薬量及び
(iii)タラボスタット及び免疫チェックポイント阻害薬を使用するための指示書
を含む前記キット。
【0246】
実施形態39。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬(複数可)を用いる同時投与処置治療の後に、全生存期間の改善が得られる確率の上昇を有する、ジペプチジルペプチダーゼ(FAPまたはDPP8/9)及び/または免疫チェックポイント標的(複数可)のレベルの上昇と関連する腫瘍について診断されている患者を同定するための方法。
【0247】
実施形態40。対象において、腫瘍の転移を処置するか、遅延させるか、または予防する方法であって、前記対象に、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の有効量をPD-1軸アンタゴニストと組み合わせて投与することを含み、その際、前記対象が、DPP(FAPまたはDPP8/9)及び/またはPD-1軸のレベルの上昇と関連する腫瘍について診断されている前記方法。
【0248】
実施形態41。対象において、腫瘍の転移を処置するか、遅延させるか、または予防する方法であって、前記対象に、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の有効量をCTLA4アンタゴニストと組み合わせて投与することを含み、その際、前記対象が、DPP(FAPまたはDPP8/9)及び/またはCTLA4のレベルの上昇と関連する腫瘍について診断されている前記方法。
【0249】
実施形態42。がんを処置するために免疫チェックポイント阻害薬を投与して対象を処置する方法であって、その改良が、前記免疫チェックポイント阻害薬と併せて、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の有効量を前記対象に投与することを含み、その際、作用が、前記免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍作用を増強することであり、前記免疫チェックポイント阻害薬がPD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストである前記方法。
【0250】
実施形態43。腫瘍を有するヒトにおいて炎症誘発性サイトカイン生成を増強する方法であって、(i)タラボスタット及び(ii)免疫チェックポイント阻害薬の治療有効量を、腫瘍を有するヒトに投与することを含み、その際、前記タラボスタット及び前記免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせが、炎症誘発性サイトカイン生成の相乗的増加をもたらし、前記免疫チェックポイント阻害薬がPD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストである前記方法。
【0251】
実施形態44。腫瘍においてアポトーシスを誘発する方法であって、腫瘍を有するヒトに、(i)タラボスタット及び(ii)免疫チェックポイント阻害薬の治療有効量を、腫瘍を有するヒトに投与することを含み、その際、前記タラボスタット及び前記免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせがアポトーシスの相乗的増加をもたらし、前記免疫チェックポイント阻害薬がPD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニストである前記方法。
【0252】
実施形態45。前記免疫チェックポイント阻害薬を約0.01~30mg/kg、好ましくは0.1~20mg/kg、より好ましくは1~10mg/kgの用量で投与する、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0253】
実施形態46。前記選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬を約0.001~10mg/kg、好ましくは0.001~3mg/kg、より好ましくは0.001~2mg/kgの用量で投与する、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0254】
実施形態47。選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬が、小分子、抗体、ナノボディ、操作ペプチド、操作タンパク質、ワクチン、siRNA治療または自己免疫増強治療、好ましくは小分子からなる群から選択され、先行実施形態36、39、40、41、及び42のいずれかに記載の方法。
【0255】
実施形態48。前記小分子がタラボスタットである、実施形態46に記載の方法。
【0256】
実施形態49。前記免疫チェックポイント阻害薬が、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、VISTAアンタゴニスト、TIM3アンタゴニスト、LAG3アンタゴニスト、IDOアンタゴニスト、KIR2Dアンタゴニスト、A2ARアンタゴニスト、B7-H3アンタゴニスト、B7-H4アンタゴニスト、BTLAアンタゴニストからなる群から選択され、好ましいものが、PD1軸アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、またはそれらの組み合わせである、実施形態23~25、34、36、37、38、及び39に記載の方法。
【0257】
実施形態50。前記PD1軸アンタゴニストが、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、及びPD-L2アンタゴニストからなる群から選択される、実施形態40に記載の方法。
【0258】
実施形態51。PD-1アンタゴニストが、ANA011、BGB-A317、KD033、ペムブロリズマブ、MCLA-134、mDX400、MEDI0680、muDX400、ニボルマブ、PDR001、PF-06801591、ピジリズマブ、REGN-2810、SHR1210、STI-A1110、TSR-042、ANB011、244C8、388D4、TSR042、及びXCE853からなる群から選択され、好ましいものが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、またはピジリズマブである、実施形態42、43、44、49、及び50に記載の方法。
【0259】
実施形態52。PD-L1アンタゴニストが、アベルマブ、BMS-936559、CA-170、デュルバルマブ、MCLA-145、SP142、STI-A1011、STI-A1012、STI-A1010、STI-A1014、A110、KY1003、及びアテゾリムマブからなる群から選択され、好ましいものが、デュルバルマブまたはアテゾリムマブである、実施形態42、43、44、49、及び50に記載の方法。
【0260】
実施形態53。PD-L2アンタゴニストが、AMP-224及びrHIgM12B7から選択される、実施形態42、43、44、49、及び50に記載の方法。
【0261】
実施形態54。CTLA4アンタゴニストが、KAHR-102、AGEN1884、ABR002、KN044、トレメリムマブ、及びイピリムマブからなる群から選択され、好ましいものがトレメリムマブ及びイピリムマブである、実施形態41及び49に記載の方法。
【0262】
実施形態55。前記小分子が、ARI-3099、MIP-1231、(4-キノリノイル)-グリシル-2-シアノピロリジン(cyanopyyrolidine)、-(2-(1-ナフトイルアミノ)アセチル)ピロリン-2-カルボニトリル、(2S)-1-((2S)-2-(2-メトキシベンゾイルアミノ)-3-メチルペンタノイル)ピロリジン-2-カルボニトリル、Ac-Gly-BoroPro、GEH200200、UAMC-1110、UAMC00132、1G244、PTX-1200、UAMC00071、(2S)-2-アミノ-4-(4-((4-クロロフェニル)(フェニル)メチル)ピペラジン-1-イル)-1-(5-フルオロイソインドリン-2-イル)ブタン-1,4-ジオンビス-(2,2,2-トリフルオロアセタート);(2S)-2-アミノ-4-(4-((4-クロロフェニル)(フェニル)メチル)ピペラジン-1-イル)-1-(イソインドリン-2-イル)ブタン-1,4-ジオンビス(2,2,2-トリ-フルオロアセタート);(S)-2-アミノ-4-((S)-4-(ビス(4-フルオロフェニル)メチル)-3-メチル-ピペラジン-1-イル)-1-(イソインドリン-2-イル)ブタン-1,4-ジオンビス(2,2,2-トリ-フルオロアセタート);(2S)-2-アミノ-4-((3R)-4-((3-フルオロフェニル)(4-フルオロフェニル)-メチル)-3-メチルピペラジン-1-イル)-1-(イソインドリン-2-イル)ブタン-1,4-ジオンビス(2,2,2-トリフルオロアセタート、SUMO1 EILペプチドである、実施形態2、15、29、及び47に記載の方法。
【0263】
推薦される本発明の組み合わせ:
実施形態の1つでは、充実性腫瘍またはがんを処置するために、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)を免疫チェックポイント阻害薬(例えば、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストまたはPD-L2アンタゴニストまたはCTLA4アンタゴニスト)と組み合わせて使用する。
【0264】
実施形態の1つでは、血液がんを処置するために、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)を免疫チェックポイント阻害薬(例えば、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストまたはPD-L2アンタゴニストまたはCTLA4アンタゴニスト)と組み合わせて使用する。
【0265】
実施形態の1つでは、充実性腫瘍または血液がんを処置するために、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)をニボルマブ、ペムブロリズマブ、アベルマブまたはイピリムマブと組み合わせて使用する。
【0266】
実施形態の1つでは、充実性腫瘍または血液がんを処置するために、タラボスタットを免疫チェックポイント阻害薬(例えば、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストまたはPD-L2アンタゴニストまたはCTLA4アンタゴニスト)と組み合わせて使用する。
【0267】
実施形態の1つでは、充実性腫瘍(膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、乳癌、神経膠芽細胞腫、胃癌、星状膠細胞、神経外胚葉腫瘍、頭頚部癌、三重陰性乳癌、胃食道癌、非小細胞肺癌など)または血液がん(白血病、リンパ腫、リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病)を処置するために、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬(例えば、タラボスタット)を免疫チェックポイント阻害薬(例えば、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストまたはPD-L2アンタゴニストまたはCTLA4アンタゴニスト)と組み合わせて使用する。
【0268】
実施形態の1つでは、充実性腫瘍(膵臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、乳癌、神経膠芽細胞腫、胃癌、星状膠細胞、神経外胚葉腫瘍、頭頚部癌、三重陰性乳癌、胃食道癌、非小細胞肺癌など)または血液がん(白血病、リンパ腫、リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病)を処置するために、タラボスタットを免疫チェックポイント阻害薬(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブまたはイピリムマブ)と組み合わせて使用する。
【0269】
実施形態の1つでは、黒色腫、非小細胞肺癌、腎臓癌、ホジキン病、切除不可能か、または転移性の黒色腫、胃癌、食道癌、尿生殖器癌、肝細胞癌、神経膠芽細胞腫、頭頚部癌、小細胞肺癌、乳癌、結腸直腸癌、または多発性骨髄腫を処置するために、タラボスタットを1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害薬(複数可)(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブまたはイピリムマブ)と組み合わせて使用する。
【0270】
一実施形態では、本明細書に記載の腫瘍またはがんまたは障害を処置するために、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはイピリムマブの1つをタラボスタットと組み合わせて使用する。
【実施例】
【0271】
実施例1:
材料及び方法
動物
6週から7週齢の雌のC57/BL6マウスを研究において使用した。マウスは、食物及び水を自由に与えられた。実験動物ケア評価認証協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care、AAALAC)の規制の遵守を保証するために、動物の世話及び使用に関する研究プロトコル、手順は、所内動物管理使用委員会(Institutional Animal Care及びUse Committee、IACUC)によって調査及び承認された。
【0272】
試薬及び抗体
DMEM培地(Cat.No.:11960-044)、Glutamax(Cat.No.:35050061)、トリプシン-EDTA(0.25%)(Cat.No.:25200-056)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Cat.No.:15070-063)、HBSS(Cat.No.:14175-095)はGibcoから入手し、ウシ胎児血清(FBS)Cat.No.:004-001-1Aは、Biological Industriesから購入した。PD1アンタゴニスト(Cat.No.:BE0146)は、BioXcellによって2mg/mlで供給された。2mg/mlの抗PD-1のストック溶液を使用前に4℃で保持した。抗PD-1の投与溶液を毎回の投与前に、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)中で新たに調製し、4℃で維持した。試験物タラボスタットをAptuit Ltd.から得、毎回の投与前に滅菌リン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)中で100μg/mlのストック濃度で新たに調製し、4℃で維持した。Luminexアッセイキット:MCYTOMAG-70K-32は、Milliporeから市場で入手した。
【0273】
腫瘍モデル
MC38マウス結腸癌細胞系をGenScriptから得た。腫瘍細胞を単層培養として、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%Glutamax、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充されたDMEM中で、37℃で、5%CO2の雰囲気下で維持した。細胞を2日ごとに定期的に継代して、増殖を対数期に維持した。対数増殖期で増殖している腫瘍細胞をトリプシン処理によって採取し、続いて、335xg相対遠心力(RCF)で遠心分離器内で遠心した。続いて、上清を吸引によって除去した。細胞ペレットを約10倍体積の細胞培養培地中に再懸濁させ、かつカウントした。細胞懸濁液を再び遠心し、上記のとおり処理し、最後に、1ml当たり1×107細胞の密度でHBSS-/-中に再懸濁させた。細胞生存率は、トリパンブルー染色によって≧95%であると決定された。細胞懸濁液を雌のC57/BL6マウスのマウス側腹部の皮下空間に移植した(ハンクス平衡塩類溶液0.2mL中に2.0×l06MC-38細胞)。マウスに、右下部側腹部(背側大腿領域付近)で、約1×106細胞を含有する細胞懸濁液0.1mlの単一体積を皮下接種した。
【0274】
腫瘍サイズ及び体重を週2回測定した。
腫瘍サイズを週2回、キャリパーを使用して2次元で測定した(小数点第一位まで記録)。次の式を使用して、腫瘍体積(mm3で表示)を計算した(式中、「a」及び「b」は、それぞれ腫瘍の長い方の直径及び短い方の直径である)。
V(mm3)=(a×b2)/2
【0275】
前記期間において、腫瘍の増殖にしたがって、足根の厚さ(mmで表示)をキャリパーを用いて測定した。動物を秤量し、平均腫瘍サイズが約120mm3になったときに、0日目で、処置群に無作為化した。
【0276】
統計的解析
腫瘍体積、腫瘍重量、及び体重に関連するデータは、平均及び平均の標準誤差(SEM)として示された。統計的分析を、スチューデントのt検定を使用して行った。P<0.05を統計的に有意とみなした。★及び★★は、それぞれP<0.05及びP<0.01を示す。
【0277】
腫瘍応答の終点は腫瘍増殖の遅延(T-C値)として表示され、腫瘍が所定の標的サイズに達するまでの処置(T)群と対照(C)群との間の時間(日)の差として計算された。処置群による標的サイズの達成における、>1倍の腫瘍体積倍増時間の遅延を活性な結果とみなした。治療的相乗作用は、薬剤の組み合わせが、各薬剤によって単独で示される活性に対して有意な優位性(p<0.05)を実証している抗腫瘍作用と定義された。
【0278】
様々な投与スケジュールで、単独で、かつPD-1アンタゴニストと組み合わせてのタラボスタットの単回投与(qd)、さらには、1日2回(bid)投与の抗腫瘍作用をMC-38(マウス結腸)腫瘍担持マウスにおいて評価した。腫瘍が確立された後に、マウスを、約200mm3の平均腫瘍体積を有する様々な群に選別した。試験物及び抗体を、表5及び6に記載の投与スケジュールに従って投与した。
【0279】
様々な投与スケジュールで、単独で、かつPD-1アンタゴニストと組み合わせてのタラボスタットの単回投与(qd)、さらには、1日2回(bid)投与の免疫調節作用も分析した。このために、この研究による最初の投与後に、血液100μlをそれぞれの期間で収集した。血液サンプルを、血清を得るために収集し、分析まで-80℃で貯蔵した。第1の研究の場合には、群1、2、4、及び6のIL-2、IL-6、及びG-CSFを分析し、第2の研究では、G-CSF、GM-CSF、IL-2、IL-6、IL-7、IL-12(p40)、IL-15のレベルを評価した。両方の場合に、Luminex分析を使用した。データを正規化した。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
結果:第1の研究(表5において作表されているとおり)では、マウスを、単独で、またはPD-1アンタゴニスト5及び10mg/kgと組み合わせて与えられるタラボスタット10μgまたは20μgでbidで処置した。動物を、平均腫瘍サイズが約175mm
3になったときに、0日目に処置群に無作為化した。マウスに、PD-1アンタゴニストまたはビヒクルの注射を週2回与えた。強制経口投与による生理食塩水対照またはタラボスタットをbidで投与した。腫瘍サイズが2,000mm
3を越えたので、ビヒクル対照群のマウスを投与後13日目に安楽死させた。8日目から13日目に、タラボスタット及びPD-1アンタゴニスト組み合わせ療法は、2種の薬剤のいずれかの単一薬剤投与と比較して、腫瘍体積の有意な減少を示した。さらに、タラボスタット及びPD-1アンタゴニスト単一処置群も、ビヒクル対照群と比較して、有意なより良好な作用を示した(
図1及び表7)。20μg bidタラボスタット用量は、PD-1アンタゴニストと組み合わせた場合に、不十分な耐容性を示し、複数匹の処置動物が早期に死亡した。
【0280】
第2の実験(表6において作表されているとおり)では、マウスを、単独で、または5mg/kgPD-1アンタゴニストと組み合わせて与えられるタラボスタットで、2.5、5及び10μgでbidで、または20μgでqdで処置した。動物を、平均腫瘍サイズが約120mm
3になったときに、0日目に処置群に無作為化した。マウスに、PD-1アンタゴニストまたはビヒクルの注射を週2回与えた。強制経口投与による生理食塩水対照またはタラボスタットをbidまたはqdで投与した。腫瘍サイズが3,000mm
3を越えたので、ビヒクル対照群のマウスを投与後11日目に安楽死させた。8日目から、5及び10μg bidならびに20μg qdタラボスタット及びPD-1アンタゴニスト組み合わせ療法は、対応するタラボスタット及びPD-1アンタゴニスト単一処置群と比較して、有意なより良好な作用を示した。重要なことに、10μg bid及び20μg qdの用量は、PD-1アンタゴニストと組み合わせた場合に、腫瘍体積の減少の点において同等の有効性を示したことが特記される(
図2及び表8)。
【0281】
さらに、IL-2、IL-6、IL-12p40を包含する炎症誘発性サイトカインの上方制御において、さらには、GM-CSF及びG-CSFを包含する免疫抑制微小環境を縮小するケモカインのプロファイルにおいて観察されるとおり、タラボスタットによって引き起こされる免疫調節は、PD-1アンタゴニストと組み合わせると、相乗作用を示した。腫瘍担持マウスでは、前記条件下でPD-1アンタゴニストと組み合わせて、20μg qdで投与されたタラボスタットは、処置後11日日目にGM-CSF、IL-2及びIL-12p40の放出に対して相乗作用を示し、IL-6及びG-CSFは、処置から4時間後に、組み合わせで、かなりの上昇を示した。さらに、その組み合わせは、IL-15及びIL-7の生成における相乗作用も示し、これらは、それらの受容体において共通のガンマ鎖を有する。文献において立証されているとおり、免疫環境におけるIL-15及びIL-7の存在は、解糖作用を減少させる一方で、T細胞表現型をエフェクターT細胞ではなくメモリーに傾斜させる活性化CD8+T細胞の酸化的リン酸化を増強する。このことは、その組み合わせが、メモリーT細胞応答を生じさせる可能性を有することを示した(
図3A~3G)。
【0282】
VIII.定義:
「対象」という用語は、任意の生体、好ましくは動物、より好ましくは哺乳類(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)、最も好ましくはヒトを包含する。
【0283】
本明細書において使用される場合、「がん」という用語は、「腫瘍」と互換的に使用され得る。「がん」という用語は、充実性腫瘍及び非充実性腫瘍、例えば、白血病及びリンパ腫の両方を包含する幅広い様々な種類のがんを指す。混合型を有するがんを含めて、癌腫、肉腫、骨髄腫、リンパ腫、及び白血病はすべて、本発明を使用して処置され得る。
【0284】
「約」及び「ほぼ」は一般に、測定値の性質または精度を想定して、測定された数量について許容される誤差の程度を意味することとする。例示的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、典型的には10%以内、及びより典型的には5%以内である。
【0285】
「処置」という用語は、本発明の文脈内では、障害もしくは疾患と関連する症状の緩和、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化の停止、または疾患もしくは障害の予防もしくは防止を意味する。例えば、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬と関連して患者を処置する文脈内では、処置の成功には、腫瘍接着及び固着の減少;がん性増殖もしくは腫瘍、または罹患組織の増殖に関連した症状の緩和;がんなどの疾患の進行、もしくは癌細胞の増殖の停止が包含され得る。処置は、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせての選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬の医薬製剤の投与も包含し得る。これを、外科手術及び/または放射線療法の前、その間、またはその後に投与してよい。本発明によれば、選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬及び免疫チェックポイント阻害薬をヒト対象に同時投与することができ、1日投薬量は通常、処方医によって、個々の患者の年齢、体重、及び応答、さらには患者の症状の重症度に従って一般に変動する投薬量で決定されるはずである。本明細書において開示される要素を提示する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「前記」は、その要素が1つまたは複数で存在することを意味することが意図されている。
【0286】
本明細書において使用される場合、「有効量」という用語は、「治療上有効な用量」、または「治療有効量」と互換的に使用され得、これは、所望の作用を生じさせるために十分な量を指す。
【0287】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、活性成分の生物学的活性の有効性に干渉せず、患者または対象に対して毒性ではない担体媒体を指す。本明細書において使用される場合、「担体」という用語は、「アジュバント」と互換的に使用され得る。
【0288】
「医薬組成物」という用語は、本発明に従って使用される場合、任意の従来の手法で、1つまたは複数の薬学的に許容される担体またはアジュバントを使用して製剤化することができる組成物に関する。
【0289】
「抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、広い意味で意図されており、それらには、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を包含する免疫グロブリン分子が包含され、マウス、ヒト、ヒト適合、ヒト化、及びキメラ合成、組換え、ハイブリッド、変異、操作、グラフト抗体、抗体断片、単一特異性、二重特異性、または多重特異性抗体、二量体、四量体、または多量体抗体、ナノボディ、一本鎖抗体、及び抗体薬物複合体が包含される。抗体には、組換えモノクローナル抗体も包含される。本明細書において使用される場合、別段に示さない限り、「抗体断片」または「抗原結合性断片」は、抗体の抗原結合性断片、すなわち、全長抗体が結合する抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片、例えば、1つまたは複数のCDR領域を保持している断片を指す。抗体結合性断片の例には、これらだけに限定されないが、抗原結合機能、すなわち、FAPまたはDPPに特異的に結合する能力を保持しているFab、F(ab’)2、Fv、scFv、bi-scFv、bi-Ab、Fd、dAb、及び他の抗体断片;二重特異性抗体;線状抗体;一本鎖抗体分子、例えば、sc-Fv;抗体断片から形成されるナノボディ及び多重特異性抗体が包含される。
【0290】
ナノボディ(Nb)は、天然に存在する一本鎖抗体の最小の機能性断片または単一の可変ドメイン(VHH)であり、当業者に公知である。これらは、ラクダ類において見られる重鎖のみの抗体に由来する(Hamers-Casterman et al.1993;Desmyter et al.1996)。「ラクダ類」の科では、ポリペプチド軽鎖を欠いた免疫グロブリンが見出されている。「ラクダ類」は、旧世界ラクダ類(Camelus bactrianus及びCamelus dromedarius)及び新世界ラクダ類(例えば、Lama paccos、Lama glama、Lama guanicoe及びLama vicugna)を含む。前記単一可変ドメイン重鎖抗体は本明細書において、ナノボディまたはVHH抗体と呼ばれる。Nanobody(商標)、Nanobodies(商標)及びNanoclone(商標)は、Ablynx NV(Belgium)の商標である。
【0291】
本明細書において使用される場合、「相乗作用」という用語は一般に、2つの別々の作用の合計を上回る組み合わせ作用を得ることを指す。本明細書において使用される場合、治療の文脈で置かれている場合の「治療的相乗作用」及び「相乗作用」という用語は、治療薬の組み合わせ(例えば、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストまたはCTLA4アンタゴニストと組み合わせての選択的ジペプチジルペプチダーゼ阻害薬)での患者の処置が、その最適な用量で使用された組み合わせの各個別の構成成分によって達成される結果よりも治療的に優れた結果を示す現象を指す(例えば、T.H.Corbett et al.,1982,Cancer Treatment Reports,66,1187を参照されたい)。この文脈では、治療的に優れた結果は、患者がa)組み合わせの個々の構成成分がそれぞれ単独治療として、組み合わせにおいてと同じ用量で投与された場合の治療効果と等しいか、またはそれを超える治療効果を受けながら、有害事象のより僅かな発生率を示すか、またはb)各構成成分が個々の成分として投与されるとおり、組み合わせにおいてと同じ用量で投与される場合に、組み合わせの各個別の構成成分での処置の治療効果よりも大きな治療効果を受けながら、用量限定的毒性を示さないか、またはc)組み合わせた場合に両方が、単独で投与した場合と比較して、作用の増強、例えば、IL-2放出の増加をもたらすかのいずれかである結果である。異種移植片モデルでは、組み合わせの投与によって達成される腫瘍増殖の減少が、構成成分が単独で投与される場合の最良の構成成分の腫瘍増殖の減少の値よりも大きい場合に、その最大許容用量で使用される組み合わせ(ここで、構成成分のそれぞれは、その個々の最大許容用量を一般に超えない用量で存在するであろう)は、治療的相乗作用を示す。
【配列表】