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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】強化された調節型眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018544426
(86)(22)【出願日】2016-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-15
(86)【国際出願番号】 ES2016070813
(87)【国際公開番号】W WO2017085344
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-11-13
(31)【優先権主張番号】P201531654
(32)【優先日】2015-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】518168650
【氏名又は名称】レンズ アンダーゴーン ゾーネラ グローバル,エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オルシナ ポルティーラ,ルイス イグナシオ
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-522592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0310345(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0204790(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、ハプティックと、リング状の支持体とを含むタイプの調節型眼内レンズであって、
前記支持体は、内側リング(9)と外側リング(11)を含み、
光学部(1)と、レバー(8)を介して剛性ハプティック(5)に結合される軟性ハプティック(14)とを含む第1の群と、
前記外側リング(11)内に収容された湾曲フラップ(10)を含む前記内側リング(9)を含む第2の群との2つの要素の群を含み、
前記第1の群は、前記第2の群と固定点を介して一体化される
ことを特徴とする調節型眼内レンズ。
【請求項2】
前記軟性ハプティック(14)は、少なくとも、センタリング孔(4)、挿入チャネル(3)及び突出部(18)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項3】
前記軟性ハプティック(14)は、前記光学部(1)の周囲から径方向に延在する
ことを特徴とする請求項1に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項4】
少なくとも2つの軟性ハプティックを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項5】
前記軟性ハプティックは、前記レンズの水平軸(19)に対して5°~180°の角度をなす
ことを特徴とする請求項1に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項6】
同じ数の軟性ハプティックと剛性ハプティックとがある
ことを特徴とする請求項1に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項7】
前記剛性ハプティックは、厚肉部(7)及びレバー(8)を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項8】
前記剛性ハプティックは、少なくとも1つのセンタリング孔を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項9】
前記軟性ハプティック(14)は、挿入チャネル(3)を備え、
前記剛性ハプティックは、レバー(8)を備え、
前記レバー(8)は、前記挿入チャネル(3)内に挿入されている
ことを特徴とする請求項1記載の調節型眼内レンズ。
【請求項10】
前記外側リングは、軟性であり、
前記内側リングは、剛性であり、
少なくとも前記内側リングは、不完全である
ことを特徴とする請求項1に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項11】
前記内側リング(9)は、湾曲フラップ(10)を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項12】
前記湾曲フラップ(10)は、クリッピング孔(15)を含む
ことを特徴とする請求項11に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項13】
前記外側リング(11)は、内側に開いた溝付き体(12)を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項14】
前記外側リングは、傾斜したフラップ(13)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項15】
前記傾斜したフラップ(13)は、センタリング孔(16)を含む
ことを特徴とする請求項14に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項16】
前記軟性ハプティック(14)は、突出部(18)を備え、
前記外側リングは、二重傾斜フラップを備え、
前記突出部(18)は、前記二重傾斜フラップに固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項17】
前記剛性ハプティックは、厚肉部(7)を備え、
前記厚肉部(7)は、前記クリッピング孔(15)に挿入されている
ことを特徴とする請求項12に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項18】
前記厚肉部(7)は、剛性ハプティック(5)における前記レバー(8)の逆端部に配置されている
ことを特徴とする請求項7に記載の調節型眼内レンズ。
【請求項19】
前記厚肉部(7)は、剛性ハプティック(5)における前記レバー(8)の反対側に配置されている
ことを特徴とする請求項7に記載の調節型眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの変位によりその焦点を変えることを可能にし、湾曲により厚さを変化させる調節型眼内レンズ(accomodating IOL)の新しいモデルに関する。
【0002】
本発明が関する技術分野は、眼内レンズインプラントの分野、より具体的には水晶体抽出の後に水晶体嚢内に移植されるレンズの分野である。
【背景技術】
【0003】
自然の水晶体をインプラントに交換することは眼科手術の分野ではありふれた技法になっている。
【0004】
この手術後に生じる問題のうちの1つは、単焦点のIOLを使用する場合にそれが水晶体嚢の内部で固定され、1つの焦点しか選ぶことができないので、近い範囲や遠い範囲を見ることができないことであり、したがって外付けレンズがさらに必要である。
【0005】
対照的に、多焦点のIOLはすべての距離で視力矯正を可能にするので、外付けレンズの使用を回避する2つ以上の焦点距離を提供する。
【0006】
しかしながら、多焦点のIOLは低い視力、とりわけ光源のまわりのハローの出現等の欠点を有する。
【0007】
これらの制限は、1つの焦点を備えたレンズである調節型レンズを移植する可能性の研究を促進したが、それらは水晶体の機構に似た継手を有するように及び眼筋の作用により設計される際に多焦点のIOLのように作用し、したがって、単一の焦点は変化する距離で対象物に焦点を当てるために変化することができる。
【0008】
調節機構の中で、目は、瞳孔収縮、毛様体筋収縮、小帯リガメント(zonular ligament)の緩和等の一連の改変、並びに水晶体の厚さ、及び水晶体の前面の曲率の増加等の水晶体のサイズの変化を受けることが認められている。
【0009】
Helmholtz、Tscherning、Gulstrand及びPflugkによる理論を含む調節の生理学的機構を説明する理論がいくつかあり、目の毛様体筋の作用、水晶体及びその前面の湾曲は注目すべき態様である。
【0010】
重要なことに、水晶体嚢が空のとき現われ水晶体嚢が拡大するとき完全に消失する折り畳みと同様に、水晶体嚢は、水晶体が破裂するとき破裂が拡大するように後退するので、強い弾性を有する。
【0011】
水晶体の抽出後、前嚢が開くと後嚢は緩み、それにより眼内のその影響を除去し、後嚢が前嚢によって保持されないため後嚢はさらに前部センス(anterior sense)中に移動さえすることもできる。
【0012】
この現象は水晶体手術中に認められ、時々、後部のカプセルは後部硝子体圧の上昇時にカプスロレキシスにより破裂する。
【0013】
水晶体の機能を代替することができるレンズにより、実際の調節に近づくであろう。
【0014】
調節のための望ましいレンズは、水晶体赤道にかかる力の反応により変形するレンズである。
【0015】
この力の影響下で、レンズは軸方向に膨脹し、その結果後面及び/又は前面がさらに湾曲し、それによりレンズの調節能力が増加し、すなわち、レンズが変形する能力が大きいほど、レンズの調節の能力も大きくなる。
【0016】
目の光学容量を変化させるために毛様体筋の収縮及び緩和を用いることを試みる、多くのインプラントが設計されている。
【0017】
一般に、IOLは、光学及び特に屈折の補正を保証する光学部、及びレンズの移動を可能にするハプティック(haptic)部を含む。
【0018】
特許US2002/0138140 A1は、毛様体筋が収縮するとき柔軟で変形可能なリング装置を用い、その設計は、レンズハプティック(haptics)の運動を可能にし、かつ毛様体筋の効果を奏すること、調節を支持することを目的とし、後嚢の後方膨張を説明する図中で示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】特許US2002/0138140 A1
【文献】特許US666003B1
【文献】スペイン特許P201000246
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、特許US2002/0138140 A1のIOLのデザインは、移動増幅機構として嚢が膨張するときにいつでも使用できるわけではなく、レンズの曲率又は厚さのいずれかを変化させるわけでもない。
【0021】
特許US666003B1は、レバーシステムであって、水晶体嚢の放射状の移動をレンズの軸増幅の移動に変換することにより調節を増加させ、いくつかの部分が他の部分を中心に回転し、ハプティック又はリングは柔軟で、これにより毛様体筋の収縮を伝達するように設計されているレバーシステムについて記載している。しかしながら、その設計ではハプティックの移動は可能にならず、その結果、水晶体嚢の最大緩和は達成することができない。
【0022】
最も近い参照が出願人にも属するスペイン特許P201000246に認められ、水晶体の抽出後に水晶体嚢中に配置され、少なくとも光学部、ハプティック部、湾曲フラップ(curving flap)、不完全な湾曲リング、及びハプティック部の変位のための手段を含み、調節能力を増加させる調節型IOLを記載している。
【0023】
この特許は、IOLの水晶体嚢内へのより容易な配置及び配列のための要素を加えることにより、その製造の単純化により上述のIOLを強化する。
【0024】
したがって、レンズの前面及び/又は後面の変形を増加させるとともにレンズの移動も可能にするための手段を含み、調節の容量をより大きくするIOLを提供する必要がある。
【0025】
したがって、本発明の目的は、レンズの調節力を増幅する新しい調節型IOLである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、水晶体の抽出後に水晶体嚢に配置され、調節の容量を増加させ、少なくとも光学部、軟性ハプティック部(soft haptics)、剛性ハプティック部(rigid haptics)、少なくとも1つの湾曲フラップを備えた不完全な剛性且つ変形可能な内側湾曲リング、及び傾斜したフラップを備えた軟性外側湾曲リングを含む調節型IOLを提供する。
【0027】
「軟性」及び「剛性」の用語は互いに関連して理解されるべきであり、したがってハプティック部は、2つのうち、弾性変形に対して低抵抗である方が「軟性」部と考えられ、弾性変形に対して高抵抗であるハプティック部が「剛性」部と考えられる。同様にリング、好ましくは外側リングは、弾性変形に対して低抵抗である方が「軟性」リングと考えられ、2つのうち弾性変形に対して高抵抗である方が「剛性」リングと考えられる。
【0028】
[1.少なくとも1つの光学部]
光学部は、変形可能な可撓性材料、及びその屈折率が眼内使用のためのあらゆるレンズの屈折率と同様の材料から作られ、レンズの中心を通る軸と平行に配置された1つ以上のノッチをその周端縁上に含んでもよい。
【0029】
レンズの周端縁が2つ以上のノッチを含む場合、ノッチは対称又は等距離及びレンズの中心を通る軸に平行に配置されてもよい。
【0030】
ノッチの最大数はレンズの周長によって可能となる数によって決定される。そのような(単数又は複数の)ノッチは任意である。
【0031】
[2.軟性ハプティック部]
軟性ハプティック部は、好ましくは4つ、及び好ましくは互いに等距離であり、好ましくはレンズと同じ材料の軟性材料からなる放射状の拡張部を含む。
【0032】
放射状という語は、そのような拡張部が光学部の周囲で始まり光学部から離れて外側に向かって延伸するものとして理解される。
【0033】
軟性ハプティックという語は、軟性ハプティック部という語がすべての軟性ハプティックの組をいう一方、これらの拡張部の各々のことをいう。
【0034】
これらの軟性ハプティックはそれぞれ、挿入チャネル及びセンタリング孔(centering hole)を含み、挿入チャネルは以下で説明するような剛性ハプティックのレバーを調節することを意図される。
【0035】
軟性ハプティックの数は、最小で2つ、及びレンズの周長によって可能となる最大数まで可変でありえる。
【0036】
[3.1以上の剛性ハプティック]
軟性ハプティックより弾性変形に対して高抵抗である材料からなる剛性ハプティックは、本質的に水平で、その端部の1つに厚肉部を、反対側、好ましくは逆側にタブを備える本体を含む。
【0037】
このタブは、軟性ハプティックの挿入チャネル内に収容され、かつ光学部を変位及び変形させるレバーの抵抗アーム(resistance arm)として機能するのに好適な形状を有する。
【0038】
タブは、そのレバー効果を促進するために、好ましくは軟性ハプティックの縦軸に対して垂直の位置を示す。これらのタブをレバーというものとする。
【0039】
これらの剛性ハプティックの本体はセンタリング孔を示す。好ましくは軟性ハプティックと同数の剛性ハプティックがある。
【0040】
[4.-不完全な内側湾曲リング、好ましくは剛性]
この内側リングは、好ましくはより剛性の材料で作られていても弾性変形に弱く所定の変形を可能にするように不完全である。
【0041】
内側リングはクリッピングスロットを有する一連の湾曲フラップを提示し、湾曲フラップと呼ばれ、これらのスロットは、剛性ハプティックの端部に存在する厚肉部(thickening)の挿入に適している。
【0042】
[5.-外側リング、好ましくは軟性]
外側リングは溝付き体を有し、内側に向かって開き、剛性湾曲リングを内側に収容するのに好適である。
【0043】
外側リングは、外側リングの傾斜フラップと呼ばれる一連の傾斜フラップを有する。
【0044】
外側リングのこれらの傾斜フラップはセンタリング孔である。
【0045】
示されるように、好適な実施形態では、外側リングは、内側リングと偶然同じ剛性又は同じ弾性を有することはありえるが、外側リングは、内側リングの場合よりも弾性変形に低抵抗を示す材料から作られる。
【0046】
剛性リング及び軟性リングは、連結され、それらがより容易に水晶体嚢に挿入されるための単一片を形成する。
【0047】
記載された様々な要素はグループ化され、2つの区別できる群をともに形成して、それにより手術を容易にする。
【0048】
1. 光学部
2. 挿入チャネルとセンタリング孔とを備える軟性ハプティックを含む軟性ハプティック部
3. センタリング孔、厚肉部及びレバーを備える剛性ハプティック
を含む要素の第1の群(first group)
【0049】
4. 好ましくは剛性で、不完全(incomplete)で、クリッピング孔(clipping hole)を有する湾曲フラップを有する内側リング
5. 好ましくは軟性で、内側に開口している溝付き体及びセンタリング孔を有する傾斜フラップを有する外側リング
を含む要素の第2の群(second group)
【0050】
光学部及び軟性ハプティック部は、一体に組み合わされ又は単一片として作製され、両部分は柔軟で変形可能な材料で作製され、少なくとも光学部は眼内使用のためのあらゆるレンズの屈折率と同様の屈折率を有する。
【0051】
軟性ハプティック部は一連の拡張部を含み、そのそれぞれは既に説明されているように軟性ハプティックという。
【0052】
光学部は、軟性ハプティックが外側に、好ましくは放射状に延伸する中央位置を占める。
【0053】
これらの軟性ハプティックはそれぞれ、挿入チャネル、センタリング孔及びその逆の側に突出部を示し、光学部の水平軸に対してわずかに傾斜している。
【0054】
光学部の水平軸に対する軟性ハプティックの傾斜角は、5°~180°である。
【0055】
軟性ハプティックのそれぞれに結合して、そのレバーを軟性ハプティックのそれぞれの挿入チャネルに挿入する剛性ハプティックが設けられる。
【0056】
選択され及び記載が基づく実施形態は軟性ハプティックのそれぞれが剛性ハプティックに結合しているが、すべての軟性ハプティックが剛性ハプティックと結合しているわけではないという実施形態は可能であろう。
【0057】
装着されたレンズ上で、軟性ハプティックのセンタリング孔及び剛性ハプティックのセンタリング孔とは一致、つまり、重複する。
【0058】
光学部、軟性ハプティック及び剛性ハプティックによって形成される群は、剛性ハプティック上に存在する厚肉部を湾曲フラップ上に存在するクリッピングスロットと一致させ、内側リングに収容される。
【0059】
内側リングは、内側に開いている後者の本体の溝付き形状のおかげで、外側リングの内側形状によって収容される。
【0060】
軟性ハプティックのセンタリング孔と外側リングの傾斜フラップのセンタリング孔が重複する時、外側リングに対する内側リング、光学部、軟性ハプティック及び剛性ハプティックによって形成されるアセンブリの適正な位置が存在する。
【0061】
いくつかの利点はこの構造に起因する。
【0062】
ハプティック等の必要な手段によって引き起こされたレンズ変位に加えて、湾曲及び/又はレンズの厚さの変化及び/又は後嚢及び前嚢の膨張により、調節は増加する。
【0063】
水晶体を除去する時生じる最も重要な変化が、手術後、前嚢の中央部が除去され、嚢が空の時前嚢及び後嚢の張力が失われるということであると思われる場合、レンズの前後の変位、レンズの曲率の変更、及び水晶体嚢の最大膨張によって支持されたレンズ厚さの変化を達成し、できる限り弾性であることはこの移動を支持することができる、レンズの新しいモデルが提案されている。
【0064】
レンズは、毛様体筋の収縮を用いて、及び硝子体の圧力による後嚢の前方への変位によるとともにカプセルの弾性回復により移動し、変位に湾曲を加えることにより、より大きな調節容量を達成する。
【0065】
本記載では、「前部」及び「後部」という語は、眼科で用いられる意味として理解される。つまり「前部」とは、レンズが角膜に近いことを意味し、「後部」はレンズが角膜から離間していることを意味する。これらの形容詞は、レンズを含むデバイスにも用いられる。
【0066】
この目的のために、本発明の調節型レンズは、ハプティック、及び嚢の弾性容量が大部分は完全なままであるように水晶体嚢を開き緊張させた状態を維持するために十分な剛性を有する不完全な内側湾曲リングを備える。
【0067】
嚢を完全に膨脹させ開いておくことの利点は、後者が、毛様体筋の収縮及び硝子体腔とその内容物の圧力の上昇時の後嚢の弾性移動及び前後変位を受けやすく、毛様体筋の収縮が止まるとき障害なくレンズの移動及びレンズの休止位置への回復の両方を容易にするということである。
【0068】
不完全な内側湾曲リングは、その剛性により、調節しないときはレンズが安定しているままであることを可能にし、調節するときはレンズが湾曲フラップを保持するのでレンズの曲率及び厚さの変化を引き起こし、レンズが上昇するときは、中心への移動を可能にする。
【0069】
レンズがその周囲にノッチを有する場合、レンズ曲率を修正することができ、それにより、より大きな調節容量を達成する。
【0070】
調節は同じレンズのいくつかの光学部を組み合わせることによっても増大される。
【0071】
調節型IOLの様々な構成要素が作製される材料は、眼内使用のための生物適合性材料、とりわけアクリレート及びメタクリレート(例えばポリメチルメタクリレート)、シリコーン、エラストマーである。
【0072】
これらの材料は弾性的に変形可能であるため、レンズが小さな創口を介して水晶体嚢中に挿入されるために折り畳まれることが可能になる。また、同時に、それらの材料は水晶体嚢が完全に開いて緊張した状態を維持するのに十分に剛性である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】IOLの様々な要素の分解図であり、・ 光学部品(1)・ 軟性ハプティック(14)を含む軟性ハプティック部(2)・ 挿入チャネル(3)・ 軟性ハプティックのセンタリング孔(4)・ 突出部(18)・ 剛性ハプティック(5)・ 剛性ハプティックのセンタリング孔(6)・ 厚肉部(7)・ レバー(8)・ 不完全な内側リング(9)・ クリッピング孔(15)を備えた湾曲フラップ(10)・ 外側リング(11)・ 溝付き体(12)・ センタリング孔(16)を備えた傾斜フラップ(13)を含む。
図2】剛性ハプティックの前面側(14)及び裏面側(15)を詳細に示し、裏面側は柔軟ハプティックと対向する側と解され、この図は図1に引用されたレバー(8)及び厚肉部(7)を示す。
図3】レンズ及び軟性ハプティック(17)の裏面と同様にレンズ及び軟性ハプティック(16)の前面を示し、軟性ハプティック(14)の端部の裏面側(17)上に存在する突出部(18)を強調し、この図はさらに、光学部(1)、挿入チャネル(3)、及び軟性ハプティックのセンタリング孔(4)を示す。
図4】装着されたレンズ及び突き出している不完全な内側リング(9)を収容する外側リング(11)、剛性ハプティックのためのそれらのセンタリング孔(6)を備えた剛性ハプティック(5)、光学部(1)及びハプティック部(2)を示す。
図5】レンズの半分の断面図を示す。この図は、センタリング孔(16)を備えた傾斜フラップ(13)を備えた外側リング(11)、不完全な内側リング(9)、剛性ハプティック(5)、それらのレバー(8)、湾曲フラップ(10)のクリッピング孔(15)に挿入される厚肉部(7)、及び剛性ハプティックのセンタリング孔(6)を示す。さらに、それに対してハプティックがある程度の傾斜を示すレンズの水平軸(19)が示される。
【発明を実施するための形態】
【0074】
発明の実施形態が記載され、これは可能なただ一つの実施例でもなく発明の範囲を限定するものでもなく、単に説明のためだけのもので、発明は、請求された技術的解決手段を含む実施のいかなる形態も包含している。
【0075】
本発明は、水晶体抽出後の水晶体嚢中への挿入用の調節型IOLに関し、
・ 光学部(1)
・ 軟性ハプティック(14)を含む軟性ハプティック部(2)
・ 挿入チャネル(3)
・ 軟性ハプティックのセンタリング孔(4)
・ 突出部(18)
・ 剛性ハプティック(5)
・ 剛性ハプティックのセンタリング孔(6)
・ 厚肉部(7)
・ レバー(8)
・ 不完全な内側リング(9)
・ クリッピング孔(15)を備えた湾曲フラップ(10)
・ 外側リング(11)
・ 溝付き体(12)
・ センタリング孔(16)を備えた傾斜フラップ(13)
を含む調節型IOLに関する。
【0076】
光学部(1)及び軟性ハプティック(14)を含む軟性ハプティック部(2)は、単一片として及び弾性的に変形可能な材料で作製され、光学部は眼内使用のあらゆるレンズの屈折率と同様の屈折率を有する。
【0077】
軟性ハプティック部(2)は、拡張部として光学部の周囲から放射状に伸びる4つの軟性ハプティック(14)を含む。
【0078】
これらの軟性ハプティックはそれぞれ、挿入チャネル(3)、軟性ハプティックのセンタリング孔(4)及び突出部を含む。
【0079】
傾斜フラップ(13)内に収容される軟性ハプティック(14)の突出部(18)はレンズ及び軟性及び剛性ハプティックのアセンブリを外側リング(11)に固定するために寄与し、レンズの光学部の前後変位がある場合にレンズの湾曲を改善するための止め具としてはたらく。
【0080】
これらの軟性ハプティック(14)に結合して、剛性ハプティック(5)が設けられ、これらは弾性変形への抵抗が軟性ハプティックより大きい一連のハプティックとして理解される。
【0081】
これらの剛性ハプティック(5)のそれぞれ1つは、その逆側の端部に、軟性ハプティックの挿入チャネル(3)に挿入されるのに適切な形状を有するレバー(8)を含み、したがって軟性ハプティックは剛性ハプティックに結合するようになる。
【0082】
剛性ハプティック(5)は、レバー(8)の反対側の端部に厚肉部(7)をさらに含み、この厚肉部は内側リング(9)の湾曲フラップ(10)のクリッピング孔(15)に収容されるのに好適である。
【0083】
したがって、アセンブリは、光学部(1)、軟性ハプティック(14)及び剛性ハプティック(5)を含むように形成される。
【0084】
先の段落で説明したアセンブリは、軟性外側リング(11)の溝付き体(12)に収容される湾曲フラップ(10)を備えた剛性内側リング(9)を含む他の群又はアセンブリに結合する。
【0085】
アセンブリ間の接続及び付着点は、クリッピング孔(15)内に収容される厚肉部(7)及び外側リングの傾斜フラップ(13)に収容される突出部(18)である。
【0086】
この外側リングは、内側リング(9)の湾曲フラップ(10)と同じ方法で分配された一連の傾斜フラップ(13)を含む。
【0087】
これらのフラップは、上部及び下部に一対で二重に配置され、対のそれぞれにおいて、フラップの少なくとも1つはセンタリング孔を示す。
【0088】
前述に従って、調節型レンズは、独立した要素の2つの群で提供されるが、互いに統合されている。
【0089】
一方のアセンブリは軟性及び剛性ハプティックを備えたレンズによって形成され、他方のアセンブリは内側リング及び外側リングからなる。
【0090】
これにより、内側リング及び外側リングからなるアセンブリ、そして次に光学部、軟性ハプティック及び剛性ハプティックからなるアセンブリが、別々に挿入されるので、水晶体嚢内へのよりよい移植が提供される。また、回転の単純な機構によって2つのアセンブリは統一して連結され安定したアセンブリを形成するが大きな変位及び湾曲容量を有する。また、適切な位置は、ハプティックの位置決め孔及び傾斜フラップによって確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5