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特許7032325過電圧保護装置の過負荷保護のための構成
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  • 特許-過電圧保護装置の過負荷保護のための構成 図1
  • 特許-過電圧保護装置の過負荷保護のための構成 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】過電圧保護装置の過負荷保護のための構成
(51)【国際特許分類】
   H01T 1/14 20060101AFI20220301BHJP
   H01T 4/08 20060101ALI20220301BHJP
   H02H 9/04 20060101ALI20220301BHJP
   H02H 9/06 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
H01T1/14 B
H01T4/08 A
H02H9/04 A
H02H9/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018554766
(86)(22)【出願日】2017-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2017058001
(87)【国際公開番号】W WO2017182267
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2018-12-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】102016004736.4
(32)【優先日】2016-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102016011076.7
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507059923
【氏名又は名称】デーン エスエー プルス ツェオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロッケ、ラルフ
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】中村 大輔
【審判官】平田 信勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-51364(JP,A)
【文献】実開昭53-127147(JP,U)
【文献】実開昭57-199988(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 1/00-4/20
H02H 9/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過電圧保護装置の過負荷保護のための構成であり、少なくとも1つのサージアレスタ(2)、特に過負荷の場合に応答する熱断路装置(3)の有無に関係なくタイプIIのサージアレスタ(2)からなる構成であって、
構造的に接続された前記少なくとも1つのサージアレスタ(2)は、可動接点がなく、少なくとも2つの固定された狭い間隔で離間したスイッチング接点(7、8)を備えるスイッチングユニット(6)と直列に接続され、前記個々のスイッチング接点(7、8)の間隔は、全てのサージ電流または放電プロセスの場合に、アークが形成された結果として前記スイッチングユニット(6)が準閉状態に変化するように特定され、アイドル状態では、直列に配置された前記サージアレスタ(2)が漏れ電流のない状態で、接続された主電源の電圧が前記スイッチングユニット(6)で降下し、
前記スイッチングユニット(6)は、サージ電流が発生した場合に、サージ電流によって発生したアークが、スイッチング接点(7,8)間の領域から離れ、それによって延長および冷却されるようなオープンスパークギャップとして形成され、それによってアークのアーク電圧が上昇し、残留電流制限が達成されることを特徴とする、構成。
【請求項2】
前記スイッチングユニット(6)は、配線続流のゼロ電流が流れた場合に開状態に変化するスイッチとして設計されることを特徴とする、請求項1に記載の構成。
【請求項3】
前記サージアレスタは、バリスタとして、特に酸化金属バリスタ(MOV)として具現化されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の構成。
【請求項4】
固定された離間接点(7、8)を有する前記スイッチングユニット(6)は、サージ電流が発生した場合に、前記アレスタ(2)を介して電流の準スイッチングプロセスをトリガすることができるように設計されることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の構成。
【請求項5】
過負荷インジケータは、前記スイッチングユニット(6)が過負荷状態になって、初めてサージアレスタを無効化または交換するためにトリガされたときに作動されることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の構成。
【請求項6】
前記スイッチングユニット(6)の初期過負荷および作動時に、サージアレスタが無効化または破壊されることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の構成。
【請求項7】
直列接続部を備えるハウジング内に配置される過負荷保護ユニット(1)であって、前記直列接続部の2つの外部端子(4、5)が設けられる、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の過負荷保護ユニット(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱断路装置の有無に関係なく過負荷の場合に応答する少なくとも1つのサージアレスタからなる、請求項1に記載の過電圧保護装置の過負荷保護のための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
過電圧保護装置の過負荷保護のための構成は、特許文献1から公知である。
【0003】
この構成は、少なくとも1つの電圧制限素子と、少なくとも1つの電圧スイッチング素子と、さらに代替の直列ヒューズとを備える。電圧制限素子はバリスタとして設計され、電圧スイッチング素子はスパークギャップとして設計され、これらの素子は直列に接続される。
【0004】
さらに、許容できないパルス電流から電圧制限素子を保護するために、バイパスを形成する監視スパークギャップが直列接続部に対して並列に接続される。
【0005】
さらに、経年劣化の影響を受けて、許容できない高い主システム電圧および/または低エネルギーの周期的な高周波パルスが監視スパークギャップおよび電圧スイッチング素子の両方をバイパスする温度監視装置が設けられ得る。この装置は、高パルス電流による過負荷からの保護を行うが、さらに電圧制限素子の許容できないほどの強い加熱からの保護を保証する。
【0006】
特許文献2に従って一体型保護装置を有するサージアレスタには、少なくとも1つのバリスタと、バリスタと熱的に接触するPTC抵抗が設けられている。バリスタとPTC抵抗は、電気的に直列に接続されている。さらに、PTC抵抗挙動を有するセラミックディスクは、サンドイッチ構造の2つのバリスタディスク間に配置され、前記素子は機械的かつ電気的に直接的に相互接続されている。このような保護装置は、特に、長い主電源の周波数の過電圧を防止するために使用される。
【0007】
基本的には、本質的に安全な挙動を持つサージアレスタを作成する必要がある。これは、それぞれのサージアレスタが、ギャップおよび追加の外部過電流保護装置なしに、可能な回線周波数の予想される短絡回路電流の全範囲(例えば、0kA~25kA)にわたる内部故障状態と同様に、全ての過負荷ケースに対処できることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102013019391(A1)号
【文献】独国特許出願公開第102009004318(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の先行技術は、内部ヒューズまたは熱断路装置に基づいた技術である。このような手段では、故障または過負荷の場合に欠点が見られる。すなわち、中程度の短絡電流までの主要な漏れ電流の全範囲を確実にカバーすることはできない。
【0010】
本質的に安全なサージアレスタの代替のスイッチング概念では、例えば、サージアレスタと過電圧保護装置の組み合わせでは、追加の外付け部品が必要となるが、そのうちのいくつかは非常にコストがかかり、追加の設置スペースが必要であり、かつ非常に複雑な設計が必要になる。さらに、多くの場合、所望の放電容量に対する効率の制限状態が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、上記を鑑み、本発明の目的は、少なくとも1つのサージアレスタ、特に熱断路装置の有無に関係なくタイプIIのサージアレスタからなる過電圧保護装置の過負荷保護のための高度な構成であって、過負荷の場合に応答し、想定されるすべての過負荷および故障の場合に完全な調整を可能にすると同時に、保護機能を伴わない正常動作時の使用されるサージアレスタが、好ましくは経年劣化に関係する負荷に影響されないようにする構成を特定することである。
【0012】
本発明の課題は、請求項1に記載の特徴の組合せに従った過電圧保護装置の過負荷保護のための構成によって解決され、従属請求項は、少なくとも適切な実施形態およびさらなる発展形態を表す。
【0013】
例えば、酸化金属バリスタ(MOV)として設計された少なくとも1つ、特に1つのタイプIIのサージアレスタを備えた本発明の過電圧保護装置の過負荷保護のための構成は、可動接点のない、構造的に接続されたスイッチングユニットを備える。
【0014】
可動接点のないこのスイッチングユニットは、少なくとも1つのサージアレスタと直列に接続されている。
【0015】
スイッチングユニットは、少なくとも2つの固定された狭い間隔で離間したスイッチング接点を備え、スイッチング接点の間隔は、あらゆるサージ電流または放電プロセスの場合に、スイッチングユニットが、発生したアークの結果として準閉状態に変化するように指定される。
【0016】
しかしながら、アイドル状態では、直列に配置されたサージアレスタは電圧負荷がない状態で、したがって漏れ電流がなく、すなわち応力がなく、したがって経年劣化の影響を受けない状態で、接続された主電源の電圧がスイッチングユニットで降下する。
【0017】
サージアレスタと特別なスイッチングユニットとの構造的に組み合わされた直列接続部は、全ての過負荷および故障の場合に、望ましい調整を提供する高度な過負荷保護部として、新しいユニットを形成する。それと同時に、この構成は、使用されるサージアレスタの保護特性の劣化を伴わないことを特徴とする。一方で、使用されるサージアレスタの定格電圧を低く選択することができ、保護挙動が改善される。
【0018】
本発明の一実施形態では、固定スイッチング接点は、放電の際に発生するアークが静的な状態のままであり、アーク燃焼電圧の上昇がないように実現される。
【0019】
固定スイッチング接点は、製造業者または出願人の側で接点間のギャップを指定または変更することは可能であるが、関連する接点を橋絡する電気導体を有する可動部品を備えない技術的解決策として理解されるべきである。
【0020】
スイッチングユニットは、配線続流のゼロ電流通過の場合に開状態に変化するスイッチとして、直流電流使用および本発明のさらなる開発の両方に適合される。
【0021】
サージアレスタの過負荷の場合、スイッチングユニットは既にアクティブであるため、発生する主電源の周波数の配線続流は遮断され、構成は破壊されない。
【0022】
アイドル状態では、主電源電圧は、例えば、バリスタとして設計されたスイッチングユニットおよびサージアレスタより高い電圧に降下し、そのため主電源から切断されるので、通常動作時に漏れ電流が流れず、このことが、使用されるサージアレスタの耐用年数を伸ばす。この場合、熱的に作動する断路装置さえも省略することができる。
【0023】
既に上述したように、サージアレスタはタイプIIのアレスタであり、特にバリスタとして構成され、ここでは、具体的には酸化金属バリスタ(MOV)として実現される。
【0024】
固定された離間接点を有するスイッチングユニットは、サージ電流の場合に、所望の保護機能を果たすアレスタを介して、電流フローを伴う準スイッチングプロセスがトリガされ得るように設計される。
【0025】
放電プロセスが指定された通りに実行された場合に、断路ユニットは、主電源の続流消去のタスクから解放される。
【0026】
スイッチングユニットにおける電力変換は、スイッチング接点間のアーク電圧降下を制限することによって、サージ電流動作中に制限され得る。これは、固定されたスイッチング接点にはごくわずかで無視できる程度のバーンオフまたは摩耗しかないことを意味する。
【0027】
本発明の好適な実施形態では、スイッチングユニットは、小型化されたオープンなスパークギャップとして、またはそのようなスパークギャップの原理に従って形成される。
さらに、過負荷インジケータは、前記スイッチングユニットが過負荷状態になって、初めてサージアレスタを無効化または交換するためにトリガされたときに作動される。
さらに、スイッチングユニットの初期過負荷および作動時に、サージアレスタが無効化または破壊される。
【0028】
さらに、本発明によれば、直列配置の、スイッチングユニットとサージアレスタからなる過負荷保護ユニットであって、ハウジング内に配置された過負荷保護ユニットが設けられ、直列接続部の2つの外部端子がハウジングに設けられている。このユニットは、想定される全ての過負荷および誤動作のケースに適した、実際のサージアレスタとして使用され得る。上述した外部過電流保護装置および/またはサージアレスタを保護するための熱断路装置を省略することができる。
【0029】
以下では、例示的な実施形態に基づいて、添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】スイッチングユニットと熱断路装置付きサージアレスタとからなる直列接続部を備える過負荷保護ユニットの概略図である。
図2】過負荷の場合に応答する追加の熱断路装置を有さないタイプIIのサージアレスタを備えた図1の過負荷保護ユニットと同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
これらの図では、最初にユニット1が想定される。
共通のハウジングを特徴とするこのユニット1は、その内部にタイプIIのサージアレスタ2を備える。
【0032】
このタイプIIのサージアレスタ2は、図1の実施形態の場合、それ自体知られている過負荷の場合に応答する熱断路装置3を有する。
【0033】
さらに、ユニット1は外部端子4、5を備える。
【0034】
タイプIIのサージアレスタは、スイッチングユニット6と直列に内部で接続されている。
【0035】
スイッチングユニットは、2つの固定された非可動接点7、8を備える。
【0036】
接点7、8は、近接して配置され、サージアレスタ2の接続部の一部とすることができる。
【0037】
間隔は、どんなサージ電流または放電プロセスの場合にも、形成されたアークの結果として、スイッチングユニット6が準閉状態に変化するように選択される。
【0038】
アイドル状態では、端子4、5に接続された主電源の電圧はスイッチングユニット6で降下し、直列に配置されたサージアレスタ2はリーク電流がなく、ひいては応力のない状態のままである。
【0039】
スイッチングユニット6は、その機能に関して、ユニット1またはサージアレスタ2内の追加部品として一体化された小型のスパークギャップと比較され得る。
【0040】
スイッチングユニット6の応答特性は、それぞれの放電プロセス中にも活性化されるように選択され、したがって、過負荷または誤動作の場合に電流側で閉じられるが、通常は受動的なままである。
【0041】
スイッチングユニットは、サージ電流負荷が許容できない経年劣化または同様の影響をもたらさないように具現化される。
【0042】
これは、サージ電流動作中に点火接点に残っている新たなアークによって達成され得る。
【0043】
例示的な実施形態によれば、スイッチング接点7、8の間隔は、非常に小さくなるように選択される。このことは、アーク降下電圧の上昇を回避する。また、サージ電流負荷の場合には、20Vから30Vの範囲内のアーク電圧しか生じない。このような小さなアーク電圧は、新たなアークにおける小さな電力変換を伴うだけであり、スイッチング接点におけるバーンオフまたは摩耗を低減する。
【0044】
図2の図面は、オープンなスイッチングユニットを介して主電源からサージアレスタ2が断線されるために、通常動作中にアレスタ2に漏れ電流が流れないことから、本実施形態の代替の形態である。このことにより、熱的に作動する断線装置が不要になる。スイッチングユニットが各放電動作中にアクティブであるという事実から、新たな主電源周波数配線続流は制限され、時間遅延なしに中断される可能性がある。この場合、サージ電流によって生成されたアークは、スイッチング接点間の領域から速やかに離れ、そのことによって延長および冷却されるので、アークのアーク電圧が上昇し、所望の残留電流制限が達成される。
【0045】
機械式スイッチギヤとは異なり、スイッチングユニットは、バックアップ保護装置としてのスパークギャップに基づいて最初に接点を断路する必要がないので、接触式スイッチングデバイスの場合のような典型的なサージ電流の問題はない。スイッチングユニットは、接点7、8間の距離に位置する第3の接点によって半分トリガされ得る。
【0046】
したがって、例えば、過負荷インジケータが実現可能である。
図1
図2