(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】血管内治療部位アクセス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20220301BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
A61M25/00 530
A61M25/00 600
A61M25/00 650
A61M25/09
(21)【出願番号】P 2018561192
(86)(22)【出願日】2017-02-10
(86)【国際出願番号】 US2017017551
(87)【国際公開番号】W WO2017139696
(87)【国際公開日】2017-08-17
【審査請求日】2020-02-10
(32)【優先日】2016-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517416374
【氏名又は名称】マイクロベンション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROVENTION, INC.
【住所又は居所原語表記】35 Enterprise, Aliso Viejo, California 92656 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】住田 哲太郎
(72)【発明者】
【氏名】ゴヤル,マヤンク
(72)【発明者】
【氏名】グラチェンスキー,ジョゼフ,エー.
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0022964(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0312745(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管分岐領域を介して進行するために用いられるマイクロカテーテルであって、
第一のセクション(11)と、
前記第一のセクションの遠位の第二のセクション(14)であって、前記第二のセクションの外径は、前記マイクロカテーテルの最大断面部分であり、かつ、前記第一のセクションの外径よりも大きい、第二のセクションと、
前記第二のセクションの遠位先端に位置する遠位マーカーバンド(16a)と、
前記第二のセクションの近位先端に位置する近位マーカーバンド(16b)と、
前記第二のセクションの遠位の遠位先端であって、前記遠位先端の外径は、前記第二のセクションの前記外径よりも小さい、第二のセクションの遠位の遠位先端と、を含み、
前記第二のセクションは、前記マイクロカテーテルと、外周面側にあるガイドカテーテル(38)との間の開口空間を最小化するためのインターフェース(26)を形成して、任意の開口露出が血管分岐領域に捕捉されることを防止するように構成されていることを特徴とし、
前記遠位マーカーバンド(16a)と前記近位マーカーバンド(16b)は、前記外周面側にあるガイドカテーテル(38)の遠位先端マーカーバンド(40)の両側に整列するように構成されて、前記第二のセクション(14)が前記外周面側にあるガイドカテーテル(38)の遠位先端を超えて遠位に配置されるようにされ、かつ前記外周面側にあるガイドカテーテル(38)内の空間をも占め、
前記外周面側にあるガイドカテーテル(38)が血管分岐領域を介して前進させられる、マイクロカテーテル。
【請求項2】
該第二のセクションが拡張形状を有する、請求項1記載のマイクロカテーテル。
【請求項3】
該第二のセクションが、ポリマー材料からなる、請求項2記載のマイクロカテーテル。
【請求項4】
該拡張形状が線形テーパの端部を備える円筒形部を含む、請求項2記載のマイクロカテーテル。
【請求項5】
該第二のセクションが2つのマーカーバンド(16a、16b)を有する、請求項4記載のマイクロカテーテル。
【請求項6】
該2つのマーカーバンドが、該第二のセクションの該拡張形状の内側となるように、各々、該第二のセクションの各端部に位置する、請求項5記載のマイクロカテーテル。
【請求項7】
該遠位先端に第3のマーカーバンドをさらに備える、請求項6記載のマイクロカテーテル。
【請求項8】
該第二のセクションの外径が
1.7018mmである、請求項1記載のマイクロカテーテル。
【請求項9】
外周面上のガイドカテーテルが
1.778mmの内径を有する先端アクセスカテーテルである、請求項1記載のマイクロカテーテル。
【請求項10】
該マイクロカテーテルの該第二のセクションと該遠位アクセスカテーテルの間の隙間が、該マイクロカテーテルの全側面の隙間を表し、
0.0381mmである、請求項1記載のマイクロカテーテル。
【請求項11】
該第二のセクションの長さが0.5cmから3cmである、請求項1記載のマイクロカテーテル。
【請求項12】
該マイクロカテーテルがその全長において一定の内径を有する、請求項1記載のマイクロカテーテル。
【請求項13】
該遠位先端の外径が該第一のセクションの外径と略等しい、請求項1記載のマイクロカテーテル。
【請求項14】
該遠位先端が1.5cmから5cmの長さを有する、請求項1記載のマイクロカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、血管内治療部位アクセス(Intravascular Treatment Site Access)と題された2016年2月10日に出願された米国仮出願第62/293,522号に対する優先権を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の背景】
【0002】
ガイドワイヤは、典型的には、治療領域にアクセスするための低侵襲性処置(interventional procedures)において使用される。ガイドカテーテルは、典型的には、標的領域にアクセスするためにガイドワイヤの外周面側を摺動し、その後に配置されるマイクロカテーテルおよび/または治療/処置装置のための導管として機能する。
【0003】
血管系は、とりわけ巻かれているかまたは蛇行している可能性がある。蛇行した小さな血管が多く存在し、標的領域にアクセスして治療装置を供給することを非常に困難にする神経血管系においては特にそうである。レッジ効果(ledge effect)として知られている現象では、ガイドワイヤとガイドカテーテルの遠位端(distal end)との間には、血管分岐に沿って捕捉され得る隙間があり、カテーテルが血管系を介して効果的に移動することを妨げる。眼動脈は、分岐があって血管の著しい屈曲も存在する領域の一例であり、カテーテルが詰まり得る多くの領域の一例である。
【0004】
ガイドワイヤとガイドカテーテルとの間の隙間を最小化または排除するシステムは、カテーテルが血管系内で行き詰まることを防止するために望ましい。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、拡大遠位セクションを有するマイクロカテーテルが記載される。マイクロカテーテルの拡大部分は、マイクロカテーテルとガイドカテーテルとの間の任意の開口空間を減少させるために、ガイドカテーテルの内径に近接して配置され、ガイドワイヤは、マイクロカテーテルを介して配置され、システムをガイドするために使用され得る。マイクロカテーテルは、ガイドカテーテルに対してマイクロカテーテルを正確に整列させるのを助けるために、1つ以上のマーカーバンドを含むことができる。ガイドカテーテルおよびマイクロカテーテルを適切な治療部位へと移動させた後、マイクロカテーテルを使用して、患者を治療するための様々な医療機器を展開することができる。
【0006】
一実施形態では、拡大遠位セクションを有するマイクロカテーテルは、視覚化を補助するために複数のマーカーバンドを含む。マーカーバンドは、マイクロカテーテルの拡大遠位セクションが、ガイドカテーテルの遠位先端と一致するように、マイクロカテーテルをガイドカテーテルに対して適切に整列させるために使用することができる。ガイドワイヤは治療部位にアクセスするために使用され、マイクロカテーテルおよびガイドカテーテルをガイドワイヤの外周面側で移動させることができる。
【0007】
一実施形態では、障害物除去システムが記載される。障害物除去システムは、ガイドカテーテルと、ガイドカテーテルを介して供給され、拡大遠位セクションを有するマイクロカテーテルと、マイクロカテーテルを介して供給される障害物除去装置とを含む。ガイドワイヤをマイクロカテーテルを介して移動させ、そのガイドワイヤは、マイクロカテーテルを移動するのを助け、治療部位の近くのカテーテルをガイドするために用いられる。治療部位がアクセスされると、障害物(例えば血餅)を除去するために、マイクロカテーテルを使用して血餅回収装置(ステントリトリーバー(stentriever)など)のような障害物除去装置を供給することができる。
【0008】
一実施形態では、ガイドワイヤが記載される。ガイドワイヤは、ガイドワイヤとガイドカテーテルとの間の隙間を最小化または排除するための突出部を含む。一実施形態では、突出部は拡張形状(bulbous)である。突出部は、ガイドワイヤのイメージングおよび配置について補助する放射線不透過性マーカーをさらに含むことができる。
【0009】
一実施形態では、ガイドワイヤは、形造られた(shapeable)または可鍛性の遠位先端およびトルク装置を含む。形造られたまたは可鍛性の遠位先端は特定の方向に曲げることができ、トルク装置はガイドワイヤをクランプして固定する。その後、血管系を介してガイドワイヤを移動するのを補助するために、遠位先端が特定の血管と整列するように、ガイドワイヤを特定の方向に回転させることができる。
【0010】
一実施形態では、ガイドワイヤを使用する方法が記載される。ガイドワイヤは、遠位突出部および放射線不透過性マーカーを含む。ガイドカテーテルはまた、放射線不透過性マーカーを含む。ガイドワイヤの突出部がガイドカテーテルに接触するように、ガイドワイヤが後退させられるか、またはガイドカテーテルが押し進められる。次いで、ガイドカテーテルを押すことによって、ガイドワイヤおよびガイドカテーテルを一緒に前進させることができる。ガイドカテーテルの放射線不透過性マーカーおよびガイドワイヤの放射線不透過性マーカーはいずれも、同一平面上に位置しているか、または互いに隣り合うように位置しており、従来のイメージングシステムで映されるとき、増強された放射線不透過性のために、ユーザは見分けることができる。血管系を介してガイドワイヤを進行させることを補助するために、遠位先端が特定の方向に向けられるように、ユーザは、必要に応じて、トルカ(torquer)を使用して、ガイドワイヤをロックし回転させることができる。
【0011】
一実施形態では、迅速交換システム(rapid exchange system)が記載される。カテーテルが血管分岐で捕捉され、迅速交換システムが、ガイドワイヤの外周面側を移動して、ガイドワイヤとガイドカテーテルとの間の隙間を橋渡しするように遠位拡大セクションを含むシナリオにおいて、ガイドワイヤとガイドカテーテルとの間の隙間を迅速交換システムは最小化する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の実施形態におけるこれらのおよび他の態様、特徴および利点は、添付図面を参照して、本発明の実施形態の以下の説明から明白かつ明瞭になるであろう。
【0013】
図1は、血管分岐で行き詰った従来のガイドカテーテル(レッジ効果として知られている現象)を示す。
【0014】
図2ないし
図3は、一実施形態による拡大遠位セクションを有するマイクロカテーテルを示しており、このマイクロカテーテルは、レッジ効果の問題に対処するために使用することができる。
【0015】
図4は、一実施形態による突出部を有するガイドワイヤを示す。
【0016】
図5は、一実施形態による、突出部およびガイドカテーテルを有するガイドワイヤを示す。
【0017】
図6は、一実施形態による、ガイドワイヤを操作するために使用されるトルカ、カテーテル、および突出部を有するガイドワイヤを示す。
【0018】
図7aないし7bは、一実施形態による、半径方向に縮小された遠位セクションを有するカテーテルを示す。
【0019】
図8は、一実施形態によるくさび形の突出部を有するガイドワイヤを示す。
【0020】
図9は、一実施形態によるガイドワイヤの外周面側に配置される迅速交換システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の特定の実施形態を添付の図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。添付の図面に示される実施形態の詳細な説明に使用される用語は、本発明を限定することを意図するものではない。図面において、同様の番号は同様の要素を示す。
【0022】
多くの低侵襲性処置は、遠位アクセスカテーテル(DAC)としても知られているガイドカテーテルを利用して、治療部位の近傍にアクセスする。薄い可撓性のガイドワイヤを血管系を介して移動させ、このガイドワイヤの外周面側でガイドカテーテル/DACを移動させて治療部位にアクセスする。領域がアクセスされると、マイクロカテーテルがガイドカテーテルを介して配置され、ガイドワイヤが引き抜かれる。次いで、マイクロカテーテルを使用して、ステント、血餅回収装置(clot retrieval device)、または動脈瘤を充填するために使用されるコイルなどの治療手段(therapeutic or treatment agent)の供給を助け、供給する。ガイドカテーテルは、典型的には、ガイドワイヤとマイクロカテーテルの両方を収容しなければならないため、比較的大きな直径を有する。血管系を介したガイドカテーテルの移動は、解剖学的構造の複雑な性質のため困難である。血管が小さくかつ入り組んでおり、枝状血管が豊富であり、適切な治療部位へカテーテルを移動することが困難となる脳または神経血管系においては特に困難である。
【0023】
血管分岐では、ガイドワイヤとガイドカテーテルの遠位端との間の隙間に起因する進行障害(navigational obstacle)があり、ガイドカテーテルの遠位端は、その分岐で行き詰まる可能性がある。この現象はレッジ効果として知られており(
図1参照)、ガイドワイヤ4とガイドカテーテル8との間の隙間6が、血管分岐5で捕捉される。一例では、典型的なガイドカテーテル8の内径は0.07インチであり、ガイドワイヤ4の直径は0.014インチ~0.035インチである。隙間サイズ6(ガイドカテーテル8の半径からガイドワイヤ4の半径を差し引いたものとして定義される)は、典型的には、0.0175インチ~0.028インチの間となる。この隙間サイズ4は、全般的なガイドカテーテルの内径の25~40%の間に相当し、有意な量の開口空間を表す。ガイドカテーテル移動の問題は、治療を遅らせ、または治療を不可能にすることさえあり、患者のリスクを増大させ得る。以下の実施形態は、この問題に対処する。
【0024】
Goyalの「頭蓋内血管アクセスのためのシステムおよび方法」と題するUS2016/0022964号公報は、外周面側にあるガイドカテーテルと内周面側にあるガイドワイヤとの間の隙間を橋渡しするように設計された拡大領域を有するガイドワイヤにて、レッジ効果の複雑な関係を扱うガイドワイヤ系システムを開示している。US2016/0022964号公報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
図2~
図3および以下の開示は、ガイドワイヤ22と外周面側にある外側ガイドカテーテル38との間の任意の隙間を最小にする拡大領域14を有する中間マイクロカテーテル10に関する。換言すれば、中間マイクロカテーテル10はガイドワイヤ22の外周面側を摺動し、その拡大遠位端14は外側ガイドカテーテル38の内腔内の開口空間を占める。拡大領域14が外側ガイドカテーテル38の遠位端に、またはそれを幾分超えて配置されると、外側ガイドカテーテル38によって生成される「レッジ」が減少または排除され、それによって血管分岐および他の血管形状で捕捉されることを回避する。さらに、本明細書の後述するいくつかの実施形態(
図4-9参照)は、ガイドワイヤが、外周面側にあるガイドカテーテルとガイドワイヤとの間の隙間を橋渡しする拡大領域を有する、改善されたガイドワイヤ系システムを開示する。
【0026】
図2は、拡張形状遠位セクションまたは拡大遠位セクション14を有するマイクロカテーテル10を示す。拡張形状/拡大遠位セクション14は、テーパエンドである略円筒形の形状、長手方向に丸みを帯びた形状、または任意の他の一般的な形状を有することができる。遠位セクション14は拡大されているが、マイクロカテーテル10における内腔12を画定する内径は、好ましくは、マイクロカテーテル10の全長にわたって一定である。好ましくは、マイクロカテーテル10の拡張形状または拡大遠位セクション14は、外周面側にあるガイドカテーテル38の内径と正確に一致するか、またはそれよりわずかに小さい。
図3に見られるように、拡大された遠位セクション14のこの密接ないし近接(close fit)は、中間マイクロカテーテル10とガイドカテーテル38との間の隙間を橋渡しするか、または充填する。これにより、2つのカテーテルの間に適合したインターフェースを生成し、そうでなければ血管分岐に捕捉され得る任意の開口露出面を防止する。例えば、外側ガイドカテーテル38の内径は約0.070インチであり、拡大遠位セクション14の直径は約0.067インチである。これにより、隙間サイズ26が全側面で約0.0015インチに減少する。これは、ガイドワイヤ22と外側ガイドカテーテル38との間の隙間サイズ6が、(0.014~0.035インチのガイドワイヤを用いた)全側面で約0.0175~0.028インチであるのとは対照的である。0.0015インチの隙間サイズは、外側ガイドカテーテル38の全内径の約2%にすぎない。他の例では、拡大遠位セクション14は、ガイドカテーテル38の内径とほぼ同じ直径である直径を有する。これらの2つの例のいずれにおいても、拡大遠位セクション14の直径は、外側ガイドカテーテル38の内径に近く、限定された開口空間は、血管によって捕捉される十分な空間を提供しない。拡張/拡大セクション14は、
図2に示すような線形テーパ20を有していてもよいし、テーパの形状は、丸みを帯びていてもよいし、楕円形であってもよい。マイクロカテーテル10の内径とガイドワイヤ22との間の隙間を最小にするために、中間マイクロカテーテル10の遠位先端18は、中間カテーテル10の近位部と略同一の(すなわち、ガイドワイヤ22と比較的密接ないし近接である)内径サイズを好ましくは維持する。
【0027】
別の実施形態では、マイクロカテーテル10の内腔の内径は、拡大領域14内でより大きい。しかし、この実施形態では、血管とマイクロカテーテル10との間の面を捕捉する任意の開口を防止するために、マイクロカテーテル10の遠位先端18は、比較的低減された内径を有し、ガイドワイヤ22と中間マイクロカテーテル10との間の任意の大きな隙間を排除することが望ましい。
【0028】
遠位マーカーバンド16aおよび近位マーカーバンド16bは、それぞれ、拡大遠位セクション14の遠位端および近位端でマイクロカテーテル本体11に配置されて、中間マイクロカテーテル10(特にマイクロカテーテル10の遠位セクション)の位置を視覚化することを助ける。一実施形態では、装置での遠位先端18が患者内で視認できるように、拡大遠位セクション14を超えて、中間マイクロカテーテル10の遠位先端18に第3のマーカーバンド(図示せず)を配置することができる。
【0029】
本発明の拡張中間マイクロカテーテル(bulbed intermediate microcatheter)10の一例では、外側ガイドカテーテル30は約0.07インチの内径を有し、中間マイクロカテーテル10の拡大遠位セクション14は約0.067インチの外径を有し、拡大セクション14の近位のマイクロカテーテル本体11の領域は約0.033インチの外径を有し、遠位先端18は約0.031インチの外径を有する。遠位先端18のより小さい外径は、可撓性および追従性の向上を促進する一方、マイクロカテーテル本体11の近位セクションのより大きな外径は、押圧強度の増大を促進する。中間マイクロカテーテル10の内径は約0.021インチで一定である。これらの寸法は、用いられるガイドワイヤまたはガイドカテーテルに基づいて変化し得る。例えば、中間マイクロカテーテル10の外径は、約0.013インチないし約0.073インチの範囲であり、拡大セクション14の長さは、約0.5cmないし約3cmであり、遠位先端18の長さは、約0.5cmないし約6cmである。中間マイクロカテーテル10の内径は、その長さ全体にわたって、約0.01インチないし約0.045インチで一定である。中間マイクロカテーテル10の作動長さ(working length)は、約148~168cmである。必要に応じて、中間マイクロカテーテル10の拡大セクション14の外周面側に潤滑性コーティングを使用することができる。
【0030】
中間マイクロカテーテル10は、様々な方法で製造することができる。一例では、中間マイクロカテーテル10の内側ライナは、PTFE、LDPE、LLDPE、またはHDPEで構成される。ステンレス鋼コイルは、内側ライナの外周面側に配置され、約0.00075インチないし約0.0015インチのコイル状ワイヤまたはフラット巻きワイヤのいずれかである。ステンレス鋼のフラットワイヤまたはブレードは、コイルの外周面側に配置される。外側シャフト層を補強材の外周面側に配置することができ、この外側層は、異なるデュロメータと、異なる種類および量の材料を含むことができ、例えばショア硬度が10Aないし72Dの範囲内である。一般に、近位端(proximal end)でより高い剛性を有し、遠位端(distal end)でより高い可撓性を有することが望ましく、したがって、外層近位セクションは、概して、外層遠位セクションよりも剛性の高い材料を含む。中間マイクロカテーテル10の遠位先端18に配置された追加のマーカーバンドとともに、視覚化のために、1つまたは2つの白金/イリジウム(90%/10%)マーカーバンドを、バルブの内周面側に配置する。バルブを含む拡大外径領域14は、ポリブレンド18A、30A、バルーンまたは任意のショア硬度Aのデュロメータ材料のような比較的軟質のポリマー材料からなる。この柔らかさは、外側ガイドカテーテル38の内径が、拡張セクション(bulbed section)14の外径と密接するシナリオにおいて、または、拡張セクション14が血管の一部と接触し、軟質材料が(例えば、血管分岐での)血管外傷を防止することを助けるシナリオにおいて、ガイドカテーテル38を介した進行と、柔軟性を補助する。
【0031】
マイクロカテーテル10は、その全体の長さに沿って、または選択的に特定の部分に沿って、潤滑性コーティングを利用して、マイクロカテーテルの追従性を高めることができる。潤滑性コーティングは、マイクロカテーテル10の拡張領域14において特に有用である。なぜなら、拡張領域14が、マイクロカテーテル10の最大断面部分であり、外周面側にあるガイドカテーテル38と接触する可能性が最も高いマイクロカテーテルの部分でもあるからである。一例では、潤滑性コーティングは親水性であり、複数の層(例えば、架橋剤から形成されたよく付着するベースコート層と、ベースコート層に化学的に付着した高潤滑性のトップコート層)を利用することができる。
【0032】
ガイドカテーテル38は、典型的には、その遠位先端から約3cmに位置するマーカーバンド40を利用するので、ユーザは、患者内の遠位先端を視覚化することができる(
図3参照)。ユーザは、
図3に示すように、中間カテーテル10の拡張/拡大領域14が外側ガイドカテーテル38の遠位先端と同一平面上に配置されるように、ガイドカテーテル38を介してマイクロカテーテル10を移動する。これは、ガイドカテーテル38とマイクロカテーテル10との間に隙間がないこと、またはその間の隙間が最小化されることを確保する。この最小化された隙間は要素26として示されている一方、近位隙間36はガイドカテーテル38とマイクロカテーテル10の縮小近位部(reduced proximal portion)との間の隙間を反映する。近位隙間36は、拡張マイクロカテーテルではなく典型的なマイクロカテーテルが使用されるシナリオにおいて、マイクロカテーテルとガイドカテーテルとの間の通常の隙間と考えることができる。前述したように、隙間6は、ガイドカテーテルをガイドワイヤの外周面側で直接的に移動させる典型的な手順において、ガイドワイヤ22とガイドカテーテル38との間に存在する典型的な隙間を表す。
【0033】
拡張中間マイクロカテーテル10は、前述したように、ガイドワイヤ22とガイドカテーテル38との間の中間部(intermediary)として作用する。中間マイクロカテーテル10が
図3に示すように適切に配置されると、使用者は、マイクロカテーテル遠位マーカーバンド16a、外側ガイドカテーテル3cmマーカーバンド40、および近位マーカーバンド16bのマーカーバンドのラインを見ることになる。これらのマーカーバンドの各々は、間に隙間を伴う一連の分離セグメント(各マーカーバンドに対して1つ)、または細長および連続セグメントのいずれかであり得る。このマーカーバンドのラインは、正確なアライメントを確保し、そのため、マイクロカテーテル10の拡大セクション14がガイドカテーテル38内のスペースを占めるように、マイクロカテーテル10の拡大遠位セクションが、ガイドカテーテル38の遠位先端を通り過ぎていることをユーザは知ることができる。ユーザがこれを確認すると、ユーザは、ガイドワイヤ、ガイドワイヤの外周面側の中間マイクロカテーテル、および中間マイクロカテーテルの外周面側のガイドカテーテルの移動に進むことができる。
【0034】
中間マイクロカテーテル10は、ガイドワイヤ22とガイドカテーテル38との間の架橋装置として使用されるので、ガイドワイヤ22とマイクロカテーテル10との間にも小さな隙間30が存在することになる。この隙間30は、ガイドワイヤ22と中間マイクロカテーテル10との間の摩擦を避けるために、完全に排除されないことが望ましい。しかしながら、この隙間30は比較的小さく、従って、血管分岐によって捕捉されないであろう。一例では、マイクロカテーテル10は、約0.021インチの一定の内径を有し、0.014インチないし0.018インチのサイズのガイドワイヤ22を収容する。隙間サイズを規定する前述の式を適用して、外側要素(ここではマイクロカテーテル10)の半径から内側要素(ここではガイドワイヤ22)の半径を引くと、マイクロカテーテルとガイドワイヤの間の隙間サイズは、約0.00205インチないし約0.0035インチとなる。仮に、マイクロカテーテルが、前述したようには全く使用されなかった場合、隙間サイズは約0.0175インチ~0.028インチの範囲となり得る。換言すると、隙間サイズは、マイクロカテーテルを単に使用することで、その初期値の約7~20%に減少する。拡張形状マイクロカテーテルを前述したように使用することにより、マイクロカテーテルと外周面側にあるガイドカテーテルとの間の隙間がさらに減少する。したがって、ガイドワイヤ22とガイドカテーテル38との間の中間要素として拡張マイクロカテーテル10を使用する利点は2つある。すなわち、第1に、ガイドワイヤとガイドカテーテルとの間に通常存在する隙間を最小にする。第2に、マイクロカテーテル10の拡張/拡大セクション14の存在は、マイクロカテーテル10とガイドカテーテル38との間の隙間を最小化する。隙間を減少または最小化することは、血管分岐に捕捉され得る開口空間の量を最小化し、ひいては複雑な解剖学的構造を介する装置の追従性を実質的に高める。
【0035】
代替の実施形態は、より多くのまたはより少ないマーカーバンドを有する拡張中間マイクロカテーテル10を利用することができる。一例では、拡張中間マイクロカテーテル10は、第3の中間マーカーバンドが遠位マーカーバンド16aと近位マーカーバンド16bとの間に位置する3つのマーカーバンドを使用することができる。この中間マーカーバンドは、ガイドカテーテル3cm遠位先端マーカー40と整列する。非常に多くのマーカーバンドが存在すると、それらを個別に見ることが困難になる可能性があるので、そのような実施形態は、細長い拡大領域14を有するより大きなマイクロカテーテルに最も役立つだろう。別の例では、中間マイクロカテーテル10は、中間マイクロカテーテルの適切な位置決めを確保するために、マイクロカテーテルマーカーバンドがガイドカテーテル遠位先端マーカーバンド40と整列する1つのマーカーバンドを使用することができる。
【0036】
1つの使用方法では、ガイドワイヤ22を患者の血管を介して移動させ、ガイドカテーテル38をガイドワイヤ22の外周面側で移動させる。ガイドワイヤ22が血管分岐領域を介して進行する時、ユーザは、拡張中間マイクロカテーテル10をガイドワイヤ22の外周面側で移動させる。この移動は、マイクロカテーテル10が、ガイドカテーテル38の遠位領域に配置され、ガイドカテーテル38の遠位先端から伸びるように行われる。この際、中間マイクロカテーテル10の遠位先端18は、外側ガイドカテーテル38の遠位に配置され、中間マイクロカテーテル10の拡大領域14は、ガイドワイヤ22とガイドカテーテル38との間の隙間を橋渡しする。所望の位置を達成するために、中間マイクロカテーテル10は、
図2~
図3に示すように、2つのマーカーバンド16aおよび16bを有する。ユーザは、2つのマーカーバンド16aおよび16bがガイドカテーテル3cm遠位先端マーカーバンド40の両側にそれぞれ配置されるように、中間マイクロカテーテル10を操作する。ユーザは、中間マイクロカテーテル10およびガイドカテーテル38をユニットとして一緒に、両方を同時に押すことによって、分岐領域を介してガイドワイヤ22の外周面側で移動させる。
【0037】
別の実施形態では、拡張中間マイクロカテーテル10は、インプラント供給システムの一部として使用される。拡張マイクロカテーテル10は、レッジ効果の問題に対処すると同時に、ステント、血餅回収装置または塞栓コイルなどのインプラントを供給するための導管としても使用される。ガイドワイヤ22を使用して中間マイクロカテーテル10を治療部位に進行させた後、ガイドワイヤ22は中間マイクロカテーテル10を介して引き抜かれる。その後、中間マイクロカテーテル10を用いてインプラントを供給する。
【0038】
一実施形態では、拡張中間マイクロカテーテル10は血餅回収システムの一部である。血餅は、血餅の遠位の領域への血流の減少に起因する虚血性脳卒中などの問題を引き起こす可能性がある。血餅回収装置は、血管系から血餅をつかみ、保持し、除去するように設計された機械的構造である。「障害物除去システム」と題する米国特許第9,211,132号公報は、血餅回収装置を開示しており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ステントリトリーバーは、血餅を保持するように設計された、単一の管状ワイヤメッシュまたは円筒形レーザーカットシート要素の形態をとる血餅回収装置の一種である。US8679142号公報、US8357179号公報、US6402771号公報は、さらに、ステントリトリーバー装置を開示し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
一実施形態では、拡張中間マイクロカテーテル10は血餅回収システムの一部である。別の実施形態では、拡張マイクロカテーテル10は、ステントリトリーバーシステムの一部として使用される。拡張中間マイクロカテーテル10は、レッジ効果の問題に対処する。ここで、当該システムは、血餅リトリーバーが問題のある領域(例えば、神経血管系内の分岐領域)にアクセスするのを助ける。当該システムは、ガイドカテーテル38と、中間マイクロカテーテル10と、ガイドワイヤ22と、血餅レトリーバーまたはステントリトリーバー(図示せず)とを含む。ガイドカテーテル38は、マイクロカテーテル10よりも構造的に剛直であり、血管系の大部分を介して、供給手順の一般的領域へ移動する。中間マイクロカテーテル10は、ガイドカテーテル38よりも小さく、ガイドカテーテルを介して供給され、実際の治療部位にアクセスし、これにより、治療部位への導管が提供される。ガイドワイヤ22は、治療部位へアクセスするために、血管系を介してマイクロカテーテル10およびガイドカテーテル38を移動することを助ける。供給手順は、マイクロカテーテルを、ガイドワイヤの外周面側で移動させ、ガイドカテーテルの遠位先端を越えて配置させて、血管分岐領域を介してシステムを移動することができる、上記のものと同様である。システムが適切に配置されると、ガイドワイヤ22は、拡張中間マイクロカテーテル10を介して引き抜かれ、マイクロカテーテル10は、血餅レトリーバーまたはステントリトリーバー用の導管として使用される。
【0040】
一実施形態では、血餅回収装置またはステントリトリーバーは、拡張中間マイクロカテーテル10を介して、中間マイクロカテーテル10の遠位セクションへと予め供給される。この際、血餅レトリーバー装置またはステントリトリーバーの遠位端は、中間マイクロカテーテル10の遠位端と同一平面に配置されるか、または中間マイクロカテーテル10の遠位端を越えて配置される。中間マイクロカテーテル10は、
図3と同様にガイドカテーテル38内に収容されている。血餅回収装置によって提供される外向きの力(outward force)は、カテーテルおよびステントリトリーバーが、血管分岐領域および複雑な解剖学的構造を介して進行することを助けるために使用することができる。すなわち、血餅回収装置によってマイクロカテーテルに対して与えられる力は、システムを血管分岐で特定の方向において方向付けることを助け、複雑な解剖学的構造を介したシステムの方向付けを助けることもできる。
【0041】
いくつかの実施形態では、拡張中間マイクロカテーテル10は、ガイドワイヤ22なしで、ガイドカテーテル38の移動のために使用され、続いて供給される治療材料の供給装置のためにその後使用される。拡張中間マイクロカテーテル10の遠位セクション14は、好ましくは潤滑性コーティングで被覆されており、このコーティングは、ガイドカテーテル38を介した摩擦を減らし、かつ血管系を介した滑らかな移動を促進する。さらに、拡張中間マイクロカテーテル10の遠位内径は、外側ガイドカテーテル38の内径よりもかなり小さいので、血管分岐に捕捉され得る開口内腔表面がより少ない。
【0042】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ22が最初に展開された後に拡張マイクロカテーテル10をガイドワイヤ22の外周面側で移動させる一方、ガイドカテーテル38を拡張マイクロカテーテル10の外周面側で別個に移動させる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ22が最初に展開される一方、拡張マイクロカテーテル19およびガイドカテーテル38は、同時にかつ一緒に、ガイドワイヤの外周面側で展開される。
【0043】
レッジ効果の問題に対処するために使用される他の考えられる実施形態は、ガイドワイヤとガイドカテーテルとの間の隙間を橋渡しする拡大領域を有するガイドワイヤを利用する。例えば、
図4に示されるガイドワイヤ110は、その遠位端に放射状突出部(radial projection)116を有し、ガイドカテーテル38内の隙間を半径方向に橋渡しする。これに関し、先の実施形態で述べた拡大遠位端を有する中間マイクロカテーテルは、不要である。
【0044】
放射状突出部116は、ガイドワイヤ110の遠位セクション110b内に配置され、楕円体、長円形、円形、拡張形状、または菱形を含む多くの形状を有することができる。突出部116は、1つの特定の例では、拡張形状である。突出部116は、好ましくは、軟質ポリマー材料からなり、患者の血管を介した移動を促進する。軟質ポリマーは、硬質ポリマーより剛性が低く、より可鍛性になり、放射状突出部116が血管壁に接触する時、跳ねたり突然動くことが少なくなる。任意の大きな予想外の動きを防止するために、突出部116が、血管壁に対して跳ねるのではなく、摺動することも好ましい。突出部116でのテーパ116aによって形成される滑らかな移行は、ガイドワイヤ110が、血管系内の血管壁に接触した後に飛び跳ねるのをさらに防止する。
【0045】
突出部116は、放射線不透過性マーカー118をさらに含み、放射線不透過性マーカー118は、一例では、ポリマー放射状突出部116の周りに配置された円形マーカーバンドである。マーカーバンドは、白金、タンタル、パラジウム、金、または任意の同様の高密度金属元素、合金、または画像技術によって可視化される化合物を含むことができる。
【0046】
ガイドワイヤ110の遠位セクション110bはまた、テーパセクション132と、縮径セクション134と、縮径セクション134の外周面側に配置されたコイル117とを含む。コイル117は、2つの異なるコイル要素、すなわち(一例ではステンレス鋼からなる)第1の非放射線不透過性コイル部114と、カテーテルの遠位セクションを撮像して見るのに有用な(一例では白金からなる)第2の放射線不透過性コイル部122とで構成される。コイル117は、ガイドワイヤ先端が血管壁に当たった場合に血管外傷を避けるために、軟質接触面を提供し、可撓性において補助する。
【0047】
ガイドワイヤ110はまた、血管系を介してガイドワイヤを進行させるのを補助するように形造られた遠位先端120を含む。成形マンドレル(shaping mandrel)は、ガイドワイヤ110の遠位先端120を成形するのを助けるために(遠位先端が特定の方向に曲がるように)使用され得る。ガイドワイヤ成形マンドレルは、現在、ガイドワイヤの遠位先端を予め成形するために使用されている。これらの成形マンドレルは、典型的には、ガイドワイヤと共にパッケージされ、ユーザは、ガイドワイヤを患者の血管系内に配置する前に、マンドレルを使用して、ガイドワイヤの遠位先端に曲げ形状を付与する。曲げ形状は、血管系を進行するようにガイドワイヤを適応させるために有用である。ユーザは、ガイドワイヤを回転させて、例えば血管分岐点で、ユーザが望むガイドワイヤの進行方向に湾曲した先端部を合わせて、複雑な解剖学的構造を介してガイドワイヤの外周面側で移動するカテーテルおよびガイドワイヤの進行を補助する。
【0048】
ガイドワイヤ110は、好ましくは、その近位セクション110aが遠位セクション110bよりも大きな直径を有するように、先細になっている。このテーパ形状は、トルク応答を補助し、システムの近位端にトルクを付与する(torqueing)ことによって生成されるトルクは、ガイドワイヤ110を介して容易に伝わり、ガイドワイヤ110の遠位先端120で十分なトルク応答をもたらす。一例では、ガイドワイヤ110は、約0.013インチないし約0.014インチの近位直径112を有し、より具体的な例では、約0.0135インチの直径を有する。この直径はわずかに先細りであってもよく、または実質的に一定であってもよい。ガイドワイヤ110は、約0.012インチの遠位セクション直径124を有する。遠位セクション直径124は、コイル要素114および122を含む遠位コイル117の直径のみを対象とする。
【0049】
図4~
図6は、任意のドッキング要素130を示す。ドッキング要素130は、ガイドワイヤ110の近位部に配置され、医師がガイドワイヤ110をより良く把持することを可能とする近位ガイドワイヤ延長部として機能する。したがって、ガイドワイヤ110の前進、後退、およびトルク付与(torqueing)の容易さが増す。一例では、ドッキング要素130は近位ワイヤであり、ドッキング要素130の遠位セクションの外周面側にガイドワイヤ110が構築される。ここで、ドッキング要素130はガイドワイヤ110の近位セクション内で途切れる。
【0050】
一例では、ガイドワイヤ110の近位セクション110aはステンレス鋼コアワイヤで構成され、ガイドワイヤ110の遠位セクション110b(テーパセクション132および縮径セクション134を含む)はニチノールコアワイヤで構成される。
【0051】
一例では、ガイドワイヤ110は約200センチメートルである。近位セクション110aを含むステンレス鋼コアワイヤは、約140センチメートルにわたって延在し、遠位セクション110bを含むステンレス鋼コアワイヤは、約60センチメートルにわたって延在する。ステンレス鋼コイル114は約37センチメートルにわたって延在する一方、白金コイル122は約3センチメートルをカバーする。形造られた長さセクション120は、約1.4センチメートルにわたって延在する。ガイドワイヤ110の遠位セクション上の親水性コーティングは、約140センチメートルにわたって延在する(ガイドワイヤの遠位部をカバーし、ガイドワイヤの遠位先端まで延在する)。
【0052】
図5~
図6は、ガイドカテーテル38内に沿った
図4のガイドワイヤ110を示す。
図5において、ガイドワイヤ110は、突出部116および放射線不透過性マーカー118を示すとともに、ガイドワイヤ110の遠位部は、ガイドカテーテル38の遠位端を超えて配置されている。この構成では、標的治療部位の近傍にアクセスするためにガイドワイヤが使用され、続いてガイドカテーテル38をガイドワイヤ110の外周面側で押し進めるかまたは移動させる。
【0053】
図6では、ガイドワイヤ110がガイドカテーテル38へ引き戻されるか、またはガイドカテーテル38がガイドワイヤ110の外周面側で押し進められる。これらは、突出部116が、ガイドカテーテル38に接触し密接するように行われる(例えば、突出部116が、ガイドカテーテル38の内腔と比較してアンダーサイズであるか、またはわずかにオーバーサイズであるが変形してカテーテル38内に引き抜くことができる可鍛性材料(malleable material)で構成される)。あるいは、押し進め/引き抜きの組合せ技術を使用することができる。突出部116が
図4~
図6に示されるように拡張形状を有する場合には、ガイドカテーテル38は、最も大きな直径を有する突出部116の領域に接触すべきである。ガイドカテーテル38は、放射線不透過性マーカー127を含む。ガイドワイヤ放射線不透過性マーカー118が、ガイドカテーテルの放射線不透過性マーカー127と同一平面上に配置されるか、またはガイドワイヤ放射線不透過性マーカー118が、ガイドカテーテル放射線不透過性マーカー127のちょうど遠位に配置される。いずれにしても、互いに近接した2つの放射線不透過性要素の存在は、ユーザが見る時にシステムの画像化を増大させる。したがって、ユーザは、2つの要素が整列していること、およびガイドワイヤ110がガイドカテーテル38と適合しており、システムが血管系を介して押し進められることができることを知ることができる。
【0054】
ガイドワイヤ突出部116がガイドカテーテル38に接触する時、ガイドワイヤ110とガイドカテーテル38との間には実質的に隙間がない。これは、血管が引っ掛かる隙間または開口表面が実質的にないので、レッジ効果を緩和するのに役立つ。通常、隙間の存在は、ボイドを生成し、ここで、ガイドカテーテルが行き詰まることがある。しかしながら、ガイドワイヤ突出部116がガイドカテーテル38と適合して配置される時、そのような隙間はなく、突出部は、ガイドカテーテルが血管分岐で捕捉されないように、血管に対して摺動する。前述したように、突出部は、突出部が血管に接触した時に摺動効果を促進するように、軟質ポリマーを含むことが好ましい。追加の親水性コーティング、追加の潤滑性コーティング、または潤滑性ポリマーを使用して、突出部を血管壁に対して摺動可能にすることができる。
【0055】
図4~
図6のガイドワイヤ110は、いくつかの異なる方法で前進させることができる。第1の方法では、ガイドワイヤ110をガイドカテーテル126の遠位に展開し、ガイドカテーテル38をガイドワイヤ110の外周面側で押し進める。ガイドカテーテル38が捕捉された場合(例えば、レッジ効果に起因して)、ガイドワイヤ突出部116がガイドカテーテル38に接触するように、ガイドワイヤ110が後退させられる。次いで、ガイドカテーテル38が前方に押し進められ、ガイドワイヤ110とガイドカテーテル38の両方がユニットとして前進する。ガイド突出部116がガイドカテーテル38に接触するので、ガイドカテーテル38が前進すると、ガイドワイヤ110も前進する。第2の方法では、ユーザは、ガイドカテーテル38の遠位セクションにガイドワイヤ突出部116を配置し、ガイドワイヤ110およびガイドカテーテル38を、ユニットとして一緒に血管系を介して押し進める。ガイドカテーテル38が適切に配置されると、マイクロカテーテルをガイドカテーテルを介して移動させることができ、ガイドワイヤ110が引き抜かれる。また、マイクロカテーテルを使用して治療剤(例えば、ステント、コイル、血餅回収装置)を供給するか、あるいはガイドカテーテル38自体を使用して治療剤を供給することができる。
【0056】
拡張マイクロカテーテル10の実施形態に関して前述したように、小さな隙間は、血管分岐に捕捉されるには小さすぎる限り許容され得る。したがって、いくつかの実施形態は、突出部116がガイドカテーテル38に必ずしも接触しないように、ガイドワイヤ突出部116とガイドカテーテル38との間の小さな隙間を利用してもよい。
【0057】
図6は、ガイドワイヤ110をロックしトルクを付与するように使用されるトルカ(torquer)128を示す。トルカ128は、ガイドワイヤ110を押し下げてロックする押込可能なコレットを含む。トルカ128をねじるか回転させて、コレットを押し込み、ガイドワイヤ110をロックすることができる。または、トルカ128は、コレットにリンクされた可動要素を含み、コレットを介してガイドワイヤ110をロックすることができる。
図6では、ガイドワイヤ110の近位セクションに適用されているトルカ128が示されている。トルカ128は、ガイドワイヤ110をロックするように使用される。したがって、ガイドワイヤ遠位先端120がトルカ128に対して固定位置にある。ユーザは、ガイドワイヤ110をロックし、次いで、血管系を介してガイドワイヤ110を押し進める。ガイドワイヤ110は、トルカ128を介して所定の位置にロックされるので、トルカ128が回転しない限り、湾曲した遠位先端120の方向は変化しない。ガイドワイヤ110を押し進め血管を介して前記ガイドワイヤを前進させる間に、トルカ128は、ガイドワイヤの方向をロックすることを可能にし、ガイドワイヤ110の偶発的な回転を防止する。ユーザが分岐で行き詰まりガイドワイヤ110の方向を変えたい場合、ユーザは、ガイドワイヤ110を回転させるトルカ128を回転させ、別の方向に整列させるようにガイドワイヤ遠位先端120の方向を変えることができる。
【0058】
他の実施形態では、ガイドワイヤ突出部116は、ガイドカテーテル38を選択的にロックすることができる。一例では、突出部116は、ガイドカテーテル38の対応する溝に螺合するねじ要素を含むことができる。これにより、ねじと同様に、2つの要素を一緒にロックすることができる。別の例では、突出部116は、ガイドカテーテル38の対応する凹部と嵌合する拡大リングを含むことができる。別の例では、ガイドワイヤ突出部116は凹部を含み、ガイドカテーテル38は前記凹部と嵌合する突出リングを含む。嵌合は力によってなされる。ここで、ユーザが十分な力を加えると、要素は互いに嵌合する(ロックされる)、また、分離する(アンロックとなる)。一例では、2つの要素が互いに接触するか、または互いに嵌合する時、上述のものと同様のトルカを使用して、ガイドカテーテル38に対してガイドワイヤ110をロックすることができる。
【0059】
前述の記載では、ガイドワイヤ突出部116のために使用される軟質ポリマーの利点が論じられた。ここで、1つの利点は、軟質ポリマーの材料特性が、ガイドワイヤ突出部116と血管との間の摺動接触界面を助長することである。突出部のために使用される軟質ポリマーのもう1つの利点は、可鍛性である。ガイドワイヤ116が引き抜かれる時、ユーザは、ガイドカテーテル38を介してガイドワイヤ116を後退させることができる。軟質ポリマーの可鍛性は、ガイドワイヤ突出部116を、押し込み、ガイドカテーテル38を介して容易に後退させることを可能とする。
【0060】
一実施形態では、ガイドワイヤ突出部116は、軟質プラスチックポリマー(具体的にはガイドワイヤが貫通する孔を有する単一ポリマー片)を含む。あるいは、ポリマー突出部は、ガイドワイヤ110の外周面側で押し進めることができる。代替的に、突出部は、別個に製造され、接着剤を介してガイドワイヤ110の外周面側に付着させてもよい。突出部116は、先に考察したように、多数の形状を有することができる。特に、側面の形状は、血管壁との接触に突出部116がどのように作用するかに影響を及ぼす。突出部116の形状例は、
図8に要素116aとして示されているような緩やかな円錐形、または凹状ないし凸状の丸みを帯びた形状を含む。
【0061】
一例では、ガイドワイヤ110の近位部110aおよび遠位部110bは別々に製造される。突出部116は、上述した技術のいずれかを利用して、ガイドワイヤ110の遠位部分110bの外周面側に配置される。次に、ガイドワイヤ110の遠位部110bおよび近位部110aは、熱処理、接着剤、はんだ付け、溶接などの様々な技術を利用して対となる。別の例では、ガイドワイヤ110は一体として製造され、上述した技術のいずれかを使用して、ガイドワイヤ110の遠位部の外周面側に突出部116を配置する。
【0062】
ガイドワイヤ110は、吸引カテーテル(aspiration/suction catheter)と共に使用することができる。ここで、真空源が吸引カテーテルの近位端に配置される。吸引は、血餅回収の補助に使用されることがあり、前記吸引を用いて血管系内に留まった血餅を除去する。ここで、ガイドカテーテル38に対してガイドワイヤ110をシールするために、吸引を使用することができる。一例では、吸引を使用して、ガイドカテーテル38に対してガイドワイヤ突出部16をシールし、ガイドワイヤ110とガイドカテーテル38との間の隙間をシールする。次いで、ガイドカテーテル38の近位端で吸引が適用され、カテーテルに対してガイドワイヤ突出部をシールし続けている間、ガイドカテーテル38は血管系を介して前進させられる。
【0063】
一実施形態では、ガイドカテーテル38の遠位部は、ガイドカテーテルの残りの部分と比較して半径方向に小さい。突出部116を有するガイドワイヤ110は、ガイドカテーテル38を介して押し進められる一方、突出部116は、ガイドカテーテル126の半径方向に縮小された遠位部に接触して、ガイドカテーテル38とガイドワイヤ110との間の隙間をシールする。遠位先端セグメント138は、
図7aに示されるように半径方向に小さくすることができ、あるいは、遠位先端138は、
図7bに示すように、突出部に接触するために、内側に向けて先細にすることができる。いくつかの実施形態では、
図7aに示すようなマーカーバンド129を、半径方向に縮小された領域のすぐ隣に任意に使用することができる。ここで、ガイドワイヤ突出部マーカーバンド118は、ガイドカテーテル38の半径方向に縮小されたセクションマーカバンド129と整列する。そのため、ユーザは、ガイドカテーテル38に対するガイドワイヤ110の適切な配置を確認することができる。別の実施形態では、ガイドカテーテル38は相対的に一定の直径を有し、ユーザがガイドワイヤ110を押し進め、また引き抜く時、ガイドワイヤ突出部116が縮小してガイドカテーテル38を容易に通過するように、ガイドワイヤ突出部116は十分に可鍛性である。
【0064】
図8に示す一実施形態では、ガイドワイヤ突出部116はくさび形をとり、先細の遠位面116aおよび近位面116bを有する。先細の近位面は、ガイドワイヤ116とガイドカテーテル38との間のいかなる隙間も排除するために、ガイドカテーテル116の直径にほぼ等しいか、またはガイドカテーテルの直径に比べてわずかに大きい。ガイドワイヤ突出部116がガイドカテーテル38に比べてわずかに大きい場合、ガイドワイヤ突出部は可鍛性を有し、ガイドカテーテル38を介してガイドワイヤ110を問題なく移動させる(押し進める/引き抜く)ことができるようにするための押込を可能にすべきである。
【0065】
図9に示す別の実施形態は、中間迅速交換システム(intermediate rapid exchange system)を利用することができる。ここで、容易に展開可能な装置は、ガイドワイヤとガイドカテーテルとの間の隙間を橋渡しし、この装置は、この隙間を排除するようにガイドワイヤの外周面側を移動させることができる。操作において、従来のガイドワイヤが使用され、ガイドワイヤと外周面側にあるガイドカテーテルとの間に隙間があり、この隙間が血管分岐に捕捉される場合、ユーザはガイドワイヤの外周面側で迅速交換装置を移動させて隙間を排除することができる。あるいは、ユーザが分岐領域を介してガイドワイヤを操作していた場合、ガイドワイヤの外周面側で迅速交換システムを先制して移動させ、ガイドワイヤとガイドカテーテルとの間の隙間を橋渡しし、レッジ効果による潜在的な問題を軽減することができる。
【0066】
図9は、迅速交換中間カテーテル(rapid exchange intermediate catheter)151を示し、ユーザがカテーテル151を操作する(例えば、押し進めおよび引き抜く)ために使用する近位ハンドル144aを有するコアワイヤ144が利用されている。コアワイヤ144の遠位部は、管状部148と繋がっている。管状部148は、近位開口146および遠位開口154を有し、ガイドワイヤ22の通過を可能にする。管状部148は、放射線不透過性マーカーバンド152を任意に使用することができる。ガイドカテーテルは、典型的には、遠位先端から3センチメートルの点にマーカーバンドを含む。そのため、管状部のマーカーバンド152を使用して、ガイドカテーテルの遠位先端との正確なアライメントを確保することができる。管状部148の遠位部は、管状部148とガイドカテーテル38の内側との間の隙間を橋渡しする拡張形状または拡大領域150を含む。領域150は、ガイドワイヤ151とガイドカテーテル38の遠位開口との間の隙間が排除されるように、ガイドカテーテル38の遠位先端へと進行させられる。実際には、ガイドカテーテル内に既に展開されたガイドワイヤとガイドカテーテルとの間のガイドカテーテル遠位先端隙間を排除することをユーザが望む場合、ユーザは、ガイドワイヤの外周面側で迅速交換システムの管状部148を移動させる。この際、拡大領域150が、ガイドカテーテルとガイドワイヤとの間の隙間を充填するように、システムが適切に配置されるまで、コアワイヤ144を介してシステムを押し進める。
【0067】
提示された図は、解釈に役立つ理解を助ける視覚的な例として提供されていることに留意されたい。サイズおよび測定値は、理解を助ける例としてのみ提供され、文字通り記載されたものに具体的に限定されることを意味するものではない。
【0068】
本発明は、特定の実施形態および用途に関して説明されているが、当業者は、この教示に照らして、特許請求の範囲に記載の発明の精神から逸脱することなくその範囲内で、追加の実施形態および修正を生成することができる。したがって、本願の図面および明細書は、本発明の理解を容易にするための例として提供され、その範囲を限定するように解釈されるべきではないことを理解されたい。