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特許7032338振動検出装置、振動検出システムおよび振動検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】振動検出装置、振動検出システムおよび振動検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019015935
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020122755
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓也
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-033050(JP,A)
【文献】特開平06-064565(JP,A)
【文献】特開2010-020504(JP,A)
【文献】特開2004-164103(JP,A)
【文献】特開2011-202961(JP,A)
【文献】米国特許第04209776(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 17/00
G08B 13/00-15/02
G08B 19/00-21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網柵に設けられて振動を検出する振動検出装置であって、
加速度を検出するセンサを有し、前記センサによって検出された加速度に基づいて振動の発生を検出する振動情報検出部と、
前記センサによって検出された前記加速度のデータを記憶するレジスタと、
前記レジスタに記憶された前記加速度のデータのうちの所定のデータを取得し、取得されたデータに関する処理を行う演算部と、を備え、
前記振動情報検出部は、前記振動の発生が検出された場合に前記演算部に第1の通知を行い、
前記演算部は、低消費電力状態である第1状態にあるときに前記第1の通知を受けた場合に、前記第1状態よりも消費電力が大きい第2状態へ移行し、前記振動の発生よりも所定の第1時間だけ過去にある時点を、前記加速度のデータを前記レジスタから取得する初めの時点とし、
前記振動情報検出部は、前記振動の発生が検出された後に、前記センサによって検出された加速度に基づいて前記振動の終了を検出し、前記振動の終了が検出された場合に前記演算部に第2の通知を行い、
前記演算部は、前記第2の通知を受けた場合に、前記振動の終了よりも所定の第2時間だけ未来にある時点を、前記加速度のデータを前記レジスタから取得する終わりの時点とし、
前記演算部は、前記第1の通知を受けた後に、前記第2の通知を受ける前に所定の期間が経過した場合に、前記加速度のデータを前記レジスタから取得することを停止し、前記第1状態へ移行する、
振動検出装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記第1状態にあるときに前記第2の通知を受けた場合に、前記第2状態へ移行し、前記振動の終了よりも所定の第3時間だけ過去にある時点を、前記加速度のデータを前記レジスタから取得する再開の時点とする、
請求項に記載の振動検出装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記終わりの時点以降に、前記第1状態へ移行する、
請求項1または請求項に記載の振動検出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の振動検出装置を複数備え、
複数の前記振動検出装置がそれぞれの箇所に設けられる前記網柵と、
前記振動検出装置によって得られる前記振動に関する情報を管理する管理装置と、
を備える、振動検出システム。
【請求項5】
網柵に設けられて振動を検出する振動検出装置における振動検出方法であって、
前記振動検出装置に備えられた振動情報検出部が、加速度を検出するセンサを有し、前記センサによって検出された加速度に基づいて振動の発生を検出し、
前記振動検出装置に備えられたレジスタが、前記センサによって検出された前記加速度のデータを記憶し、
前記振動検出装置に備えられた演算部が、前記レジスタに記憶された前記加速度のデータのうちの所定のデータを取得し、取得されたデータに関する処理を行い、
前記振動情報検出部は、前記振動の発生が検出された場合に前記演算部に第1の通知を行い、
前記演算部は、低消費電力状態である第1状態にあるときに前記第1の通知を受けた場合に、前記第1状態よりも消費電力が大きい第2状態へ移行し、前記振動の発生よりも所定の第1時間だけ過去にある時点を、前記加速度のデータを前記レジスタから取得する初めの時点とし、
前記振動情報検出部は、前記振動の発生が検出された後に、前記センサによって検出された加速度に基づいて前記振動の終了を検出し、前記振動の終了が検出された場合に前記演算部に第2の通知を行い、
前記演算部は、前記第2の通知を受けた場合に、前記振動の終了よりも所定の第2時間だけ未来にある時点を、前記加速度のデータを前記レジスタから取得する終わりの時点とし、
前記演算部は、前記第1の通知を受けた後に、前記第2の通知を受ける前に所定の期間が経過した場合に、前記加速度のデータを前記レジスタから取得することを停止し、前記第1状態へ移行する、
振動検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動検出装置、振動検出システムおよび振動検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
網柵を利用した侵入防護柵が用いられている。また、網柵に対する衝突あるいは柵の破損などを検出する網柵監視装置が用いられている。
【0003】
特許文献1に記載された落石・土砂崩落検知システムでは、落石防護設備における落石および土砂崩落を検知する。当該落石・土砂崩落検知システムでは、落石検知装置と管理装置とが無線で接続される。当該落石検知装置は、半導体センサ素子とA/D変換器により振動波形の計測を行う。当該落石検知装置は、電池で駆動することから、落石および土砂崩落による微振動を無給電微振動センサにより検出した後に半導体センサ素子とA/D変換器を稼働させることで、消費電力の低減が図られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-47252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
網柵の利用例として、害獣に対する侵入防護柵がある。このような網柵は、商用電源が無い山間部に設置される場合がある。例えば、安価で軽量なポリエチレン製の網などが利用されるが、網の破れから害獣が侵入を試みること、あるいは、害獣の衝突によって柵の破壊または柵の歪みが生じることがある。このような事象を検出することが必要となる。
【0006】
特許文献1に記載された技術では、安価な半導体センサを利用している。当該技術では、半導体センサは内蔵電池で稼働されており、消費電力を低減させるために、落石および土砂崩落による微振動を検出してから振動の計測を開始する。
しかしながら、害獣が網柵に衝突する場合には検出のために十分な大きさの微振動が発生しづらい場合があり、当該技術では、衝突の発生以降の計測しかできない。このため、当該技術では、計測されるデータが不十分な場合があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、消費電力を低減させつつ、十分なデータを検出することができる振動検出装置、振動検出システムおよび振動検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一構成例として、網柵に設けられて振動を検出する振動検出装置であって、加速度を検出するセンサを有し、前記センサによって検出された加速度に基づいて振動の発生を検出する振動情報検出部と、前記センサによって検出された前記加速度のデータを記憶するレジスタと、前記レジスタに記憶された前記加速度のデータのうちの所定のデータを取得し、取得されたデータに関する処理を行う演算部と、を備え、前記振動情報検出部は、前記振動の発生が検出された場合に前記演算部に第1の通知を行い、前記演算部は、低消費電力状態である第1状態にあるときに前記第1の通知を受けた場合に、前記第1状態よりも消費電力が大きい第2状態へ移行し、前記振動の発生よりも所定の第1時間だけ過去にある時点を、前記加速度のデータを前記レジスタから取得する初めの時点とし、前記振動情報検出部は、前記振動の発生が検出された後に、前記センサによって検出された加速度に基づいて前記振動の終了を検出し、前記振動の終了が検出された場合に前記演算部に第2の通知を行い、前記演算部は、前記第2の通知を受けた場合に、前記振動の終了よりも所定の第2時間だけ未来にある時点を、前記加速度のデータを前記レジスタから取得する終わりの時点とし、前記演算部は、前記第1の通知を受けた後に、前記第2の通知を受ける前に所定の期間が経過した場合に、前記加速度のデータを前記レジスタから取得することを停止し、前記第1状態へ移行する、振動検出装置である。
【0009】
構成例として、振動検出装置において、前記演算部は、前記第1状態にあるときに前記第2の通知を受けた場合に、前記第2状態へ移行し、前記振動の終了よりも所定の第3時間だけ過去にある時点を、前記加速度のデータを前記レジスタから取得する再開の時点とする、構成であってもよい。
一構成例として、振動検出装置において、前記演算部は、前記終わりの時点以降に、前記第1状態へ移行する、構成であってもよい。
【0010】
一構成例として、以上のような振動検出装置を複数備え、複数の前記振動検出装置がそれぞれの箇所に設けられる前記網柵と、前記振動検出装置によって得られる前記振動に関する情報を管理する管理装置と、を備える、振動検出システムである。
【0011】
一構成例として、網柵に設けられて振動を検出する振動検出装置における振動検出方法であって、前記振動検出装置に備えられた振動情報検出部が、加速度を検出するセンサを有し、前記センサによって検出された加速度に基づいて振動の発生を検出し、前記振動検出装置に備えられたレジスタが、前記センサによって検出された前記加速度のデータを記憶し、前記振動検出装置に備えられた演算部が、前記レジスタに記憶された前記加速度のデータのうちの所定のデータを取得し、取得されたデータに関する処理を行い、前記振動情報検出部は、前記振動の発生が検出された場合に前記演算部に第1の通知を行い、前記演算部は、低消費電力状態である第1状態にあるときに前記第1の通知を受けた場合に、前記第1状態よりも消費電力が大きい第2状態へ移行し、前記振動の発生よりも所定の第1時間だけ過去にある時点を、前記加速度のデータを前記レジスタから取得する初めの時点とし、前記振動情報検出部は、前記振動の発生が検出された後に、前記センサによって検出された加速度に基づいて前記振動の終了を検出し、前記振動の終了が検出された場合に前記演算部に第2の通知を行い、前記演算部は、前記第2の通知を受けた場合に、前記振動の終了よりも所定の第2時間だけ未来にある時点を、前記加速度のデータを前記レジスタから取得する終わりの時点とし、前記演算部は、前記第1の通知を受けた後に、前記第2の通知を受ける前に所定の期間が経過した場合に、前記加速度のデータを前記レジスタから取得することを停止し、前記第1状態へ移行する、振動検出方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る振動検出装置、振動検出システムおよび振動検出方法によれば、消費電力を低減させつつ、十分なデータを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る振動検出システムの概略的な構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る振動検出端末装置の概略的な構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る振動発生前後の処理の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る加速度センサデバイスにおいて行われる処理の手順の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る演算部において行われる処理の手順の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態(第2実施形態)に係る振動発生前後の処理の一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態(第2実施形態)に係る演算部において行われる処理の手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
[振動検出システム]
図1は、本発明の一実施形態に係る振動検出システム1の概略的な構成を示す図である。
本実施形態では、振動検出システム1は、網柵に発生する振動を検出して、網柵を監視するシステムとして用いられている。
振動検出システム1は、N(Nは、1以上の整数)個の単位柵部11-1~11-Nと、管理端末装置12を備える。本実施形態では、Nは複数であるとする。
本実施形態では、すべての単位柵部11-1~11-Nが同じ構成である場合を示す。他の構成例として、複数の単位柵部11-1~11-Nのそれぞれは、任意の構成であってもよい。
なお、本実施形態では、管理端末装置12は、管理装置の一例である。
【0016】
i(i=1~N)番目の単位柵部11-iは、3個の支柱51-i、52-i、53-iと、これらの支柱51-i、52-i、53-iのうちの隣接する2個の間に張られて設けられる2個の網61-i、62-iと、3個の振動検出端末装置31-i、32-i、33-iと、中継機71-iを備える。
本実施形態では、それぞれの支柱51-i、52-i、53-iは、同じ構造を有している。
3個の振動検出端末装置31-i、32-i、33-iのそれぞれは、網柵のそれぞれの箇所に設けられており、本実施形態では、3個の支柱51-i、52-i、53-iのそれぞれの上端に設けられている。
なお、本実施形態では、振動検出端末装置31-i、32-i、33-iのそれぞれは、振動検出装置の一例である。
【0017】
単位柵部11-iでは、それぞれの振動検出端末装置31-i、32-i、33-iがセンサによって検出したデータに基づく情報を無線により中継機71-iに送信する。当該情報は、例えば、当該データそのままであってもよく、あるいは、当該データに基づいて所定の処理が行われた結果の情報であってもよい。
中継機71-iは、それぞれの振動検出端末装置31-i、32-i、33-iと無線により接続される。
中継機71-iは、それぞれの振動検出端末装置31-i、32-i、33-iから送信される情報を受信し、受信された情報を無線により管理端末装置12に送信する。
【0018】
管理端末装置12は、それぞれの中継機71-iと無線により接続される。
管理端末装置12は、それぞれの中継機71-iから送信される情報を受信し、受信された情報を収集して管理する。すなわち、管理端末装置12は、網柵における振動に関する情報を管理する。
管理端末装置12は、収集された情報に基づいて、所定の処理を行う。管理端末装置12は、例えば、測定された加速度データの時間的な変化に基づいて、柵に対する害獣の衝突および柵の形状変化を検出する。
【0019】
[振動検出端末装置]
本実施形態では、すべての振動検出端末装置31-i、32-i、33-iは、同じ構成であり、同様な動作を行う。このため、以下では、振動検出端末装置31-1を代表させて説明する。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係る振動検出端末装置31-1の概略的な構成を示す図である。
振動検出端末装置31-1は、加速度センサデバイス111と、演算部112と、通信部113と、電源部114を備える。
加速度センサデバイス111は、センサ部131と、レジスタ132を備える。
【0021】
センサ部131は、加速度を検出するセンサである加速度センサを有しており、当該加速度センサによって加速度を検出する。センサ部131は、検出された加速度のデータを時系列順にレジスタ132に記憶する。これにより、加速度センサデバイス111では、センシングされた加速度のデータがレジスタ132に格納されて保存される。
【0022】
ここで、本実施形態では、加速度センサは、リセット時(例えば、静止状態にあるとき)の検出値を基準値として、当該基準値からの変化に相当する値を検出する。加速度センサは、例えば、振動の発生と終了を経て静止状態になるたびに、当該基準値を再設定する。
また、加速度センサは、例えば、三次元直交座標系であるXYZ座標におけるX、Y、Zのそれぞれの加速度を検出する。本実施形態では、X、Y、Zのうちの任意の1以上の検出値が閾値を超えた場合に、検出された加速度が当該閾値を超えたとする。同様に、本実施形態では、X、Y、Zのうちの任意の1以上の検出値が閾値未満である場合に、検出された加速度が当該閾値未満であるとする。なお、他の例として、X、Y、Zの検出値が組み合わされた総合的な値が、閾値との比較対象として用いられてもよい。
また、本実施形態では、加速度センサによって、一定の時間間隔ごとに、加速度が検出される。
【0023】
レジスタ132は、所定の記憶領域を有しており、当該記憶領域にデータを一時的に記憶する。本実施形態では、レジスタ132は、センサ部131によって検出された加速度のデータを記憶し、データの記憶領域が満杯になったときには最初に記憶されたデータの部分を消去しながら空いた記憶領域に新たなデータを記憶する。
【0024】
加速度センサデバイス111は、振動が発生したことを判定するための条件を満たす加速度が検出された場合には、その旨を示す信号(振動が発生したことを示す信号)を演算部112に出力することで通知する。当該条件は、例えば、検出された加速度が、振動が発生したことを判定するための閾値(振動発生閾値)を超えること、あるいは、このようなことが所定の回数連続して生じることである。このような通知を行う機能は、例えば、センサ部131に備えられてもよく、あるいは、加速度センサデバイス111における他の機能部に備えられてもよい。
【0025】
加速度センサデバイス111は、振動が終了したことを判定するための条件を満たす加速度が検出された場合には、その旨を示す信号(振動が終了したことを示す信号)を演算部112に出力することで通知する。当該条件は、例えば、検出された加速度が、振動が終了したことを判定するための閾値(振動非検出閾値)未満となること、あるいは、このようなことが所定の回数連続して生じることである。このような通知を行う機能は、例えば、センサ部131に備えられてもよく、あるいは、加速度センサデバイス111における他の機能部に備えられてもよい。
【0026】
ここで、本実施形態では、加速度センサデバイス111においてセンサによって検出された加速度に基づいて振動の発生を検出する機能および振動の終了を検出する機能により、振動情報検出部の機能が構成されている。
本実施形態では、振動が無い状態からの振動の発生は、振動の開始に相当する。
【0027】
ここで、一例として、振動非検出閾値は、振動発生閾値よりも小さい値である。
他の例として、振動発生閾値と振動非検出閾値とが同じ値であってもよい。この場合、当該値が、振動が存在するか否かを判定するための閾値であると、捉えられる。
また、閾値(振動発生閾値、振動非検出閾値)および回数(振動発生閾値に関する回数、振動非検出閾値に関する回数)は、例えば、初期設定時に、演算部112から加速度センサデバイス111に設定される。
【0028】
本実施形態では、加速度センサデバイス111から演算部112に通知される信号によって、演算部112がスリープ状態から起動される。本実施形態では、演算部112は、加速度のデータの検出結果に応じて起動される。
【0029】
演算部112は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを備える。演算部112は、スリープ状態にあるときに、センサ部131からの信号によってスリープ状態を解除して、稼働状態となって、通常の動作を行う。当該信号は、振動が発生(開始)したことを示す信号、および、振動が終了したことを示す信号である。
なお、演算部112では、スリープ状態は稼働状態と比べて低消費電力状態であり、稼働状態はスリープ状態よりも消費電力が大きい。演算部112のスリープ状態および稼働状態は、それぞれ、他の名称で呼ばれてもよく、あるいは、本実施形態と同様な消費電力の関係にある他の状態が用いられてもよい。
【0030】
演算部112は、加速度センサデバイス111に対して、初期の設定を行う。当該設定には、例えば、閾値および回数の設定が含まれる。
演算部112は、加速度センサデバイス111から振動の発生の通知を受けた場合に、レジスタ132に記憶されている所定の部分のデータを読み出して取得することを開始する。本実施形態では、演算部112は、振動の発生よりも所定の時間だけ過去にある時点を、加速度のデータをレジスタ132から取得する初めの時点とする。
また、演算部112は、加速度センサデバイス111から振動の終了の通知を受けた場合に、レジスタ132に記憶されている所定の部分のデータを取得することを終了する。本実施形態では、演算部112は、振動の終了よりも所定の時間だけ未来にある時点を、加速度のデータをレジスタ132から取得する終わりの時点とする。
【0031】
演算部112は、レジスタ132から読み出されて入力されたデータに関する処理を行う。本実施形態では、演算部112は、レジスタ132から読み出されて入力されたデータに基づく情報を通信部113に出力する。この場合に、演算部112は、当該情報として、当該データそのままの情報を用いてもよく、あるいは、当該データに基づいて所定の分析等を行い、当該分析等の結果の情報を用いてもよい。
【0032】
通信部113は、演算部112から入力される情報を中継機71-1に無線により送信する。
ここで、通信部113は、例えば、演算部112と同様に、スリープ状態を有してもよい。この場合、通信部113は、例えば、加速度センサデバイス111からの信号によってスリープ状態から起動されて稼働状態になってもよく、あるいは、演算部112が起動されたときなどに、演算部112からの信号によってスリープ状態から起動されて稼働状態になってもよい。
なお、通信部113では、スリープ状態は稼働状態と比べて低消費電力状態であり、稼働状態はスリープ状態よりも消費電力が大きい。通信部113のスリープ状態および稼働状態は、それぞれ、他の名称で呼ばれてもよく、あるいは、本実施形態と同様な消費電力の関係にある他の状態が用いられてもよい。
【0033】
電源部114は、加速度センサデバイス111、演算部112、通信部113のそれぞれに、電力を供給する。
電源部114は、例えば、電池である。
【0034】
ここで、本実施形態では、振動検出端末装置31-1は、1個の加速度センサデバイス111を備えるが、他の構成例として、2個以上の加速度センサデバイスを備えてもよい。
【0035】
[振動検出端末装置における動作の例]
図3は、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る振動発生前後の処理の一例を示す図である。
横軸は、時間を表している。時間T1、時間T2、時間T3、時間T4、時間T5の順に時間が進んでいるとする。
【0036】
振動が発生したときの時間T3に、レジスタ132に記憶されている最も古いデータが時間T1のデータであるとする。
このとき、演算部112は、振動が発生した時間T3よりも所定の時間だけ過去である時間T2以降のデータをレジスタ132から取得する。そして、演算部112は、振動が終了したときの時間T4よりも所定の時間だけ経過した時間T5までのデータをレジスタ132から取得する。
演算部112は、レジスタ132から取得された時間T2から時間T5までの期間M1のデータを分析する。
【0037】
ここで、振動が発生した時間よりも所定の時間だけ過去である時間(振動発生時と比べて取得対象とする最も古いデータの相対的な時間)は、例えば、演算部112に設定されている。
また、振動が終了したときの時間よりも所定の時間だけ経過した時間(振動終了時と比べて取得対象とする最も新しいデータの相対的な時間)は、例えば、演算部112に設定されている。
【0038】
図4は、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る加速度センサデバイス111において行われる処理の手順の一例を示す図である。
【0039】
(ステップS1)
加速度センサデバイス111において、振動の発生(振動の開始)を検出したか否かを判定する。
この判定の結果、加速度センサデバイス111において、振動の発生を検出したことを判定した場合には(ステップS1、YES)、ステップS2の処理へ移行する。
一方、この判定の結果、加速度センサデバイス111において、振動の発生を検出していないと判定した場合には(ステップS1、NO)、ステップS1の処理を繰り返す。
【0040】
(ステップS2)
加速度センサデバイス111において、振動の発生を演算部112に通知する。そして、ステップS3の処理へ移行する。
【0041】
(ステップS3)
加速度センサデバイス111において、振動の終了を検出したか否かを判定する。
この判定の結果、加速度センサデバイス111において、振動の終了を検出したことを判定した場合には(ステップS3、YES)、ステップS4の処理へ移行する。
一方、この判定の結果、加速度センサデバイス111において、振動の終了を検出していないと判定した場合には(ステップS3、NO)、ステップS3の処理を繰り返す。
【0042】
(ステップS4)
加速度センサデバイス111において、振動の終了を演算部112に通知する。そして、本フローの処理を終了する。
【0043】
図5は、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る演算部112において行われる処理の手順の一例を示す図である。
【0044】
(ステップS31)
演算部112において、振動の発生の通知があったか否かを判定する。
この結果、演算部112において、振動の発生の通知があったと判定した場合には(ステップS31:YES)は、ステップS32の処理へ移行する。この場合、演算部112は、例えば、スリープ状態にあったときには、稼働状態へ移行する。
一方、この結果、演算部112において、振動の発生の通知がなかったと判定した場合には(ステップS31:NO)は、ステップS31の処理を繰り返す。
【0045】
(ステップS32)
演算部112において、データの取得を開始する。そして、ステップS33の処理へ移行する。
【0046】
(ステップS33)
演算部112において、振動の終了の通知があったか否かを判定する。
この結果、演算部112において、振動の終了の通知があったと判定した場合には(ステップS33:YES)は、ステップS34の処理へ移行する。
一方、この結果、演算部112において、振動の終了の通知がなかったと判定した場合には(ステップS33:NO)は、ステップS33の処理を繰り返す。
【0047】
(ステップS34)
演算部112において、データの取得を終了する。そして、ステップS35の処理へ移行する。
【0048】
(ステップS35)
演算部112において、取得されたデータに基づいて、所定の処理を行う。そして、本フローの処理を終了する。その後、演算部112は、スリープ状態へ移行してもよい。
ここで、所定の処理としては、任意の処理であってもよく、例えば、取得されたデータの情報を中継機71-1に送信する処理、あるいは、取得されたデータについて分析等を行った結果の情報を中継機71-1に送信する処理などであってもよい。
【0049】
ここで、図5の例では、ステップS34~ステップS35の処理において、演算部112は、データの取得を終了した後に、取得されたデータに基づいて所定の処理を行う場合を示したが、これに限られない。
他の例として、演算部112は、ステップS34の処理とステップS35の処理とを並列に行ってもよい。すなわち、演算部112は、データを取得する処理をしながら、同時に、既に取得されたデータの一部または全部について、順次、所定の処理を行ってもよい。具体例として、演算部112は、振動発生中であってデータを取得する処理が継続しているときにおいても、既に取得されたデータの情報を、逐次、中継機71-1に送信する処理を行ってもよい。このような構成では、例えば、演算部112によって取得されたデータを一時的に記憶するメモリ(演算部112のメモリ)のサイズが、1回の振動発生で取得されるであろうデータのすべてを記憶するサイズよりも小さいような場合に、特に有効である。ここで、1回の振動発生で取得されるであろうデータは、実際には変動し得るが、例えば、予想される最大のデータ、あるいは、過去の経験に基づく最大のデータなど、任意に設定されてもよい。
【0050】
[具体的な動作の例]
単位柵部11-1を代表させて、具体的な動作の例を示す。なお、他の単位柵部11-2~11-Nについても同様である。
振動検出端末装置31-1の起動時に、電源部114から加速度センサデバイス111、演算部112、通信部113へ電力供給が開始されると、演算部112は加速度センサデバイス111への初期設定を行う。
当該初期設定では、例えば、センサ部131によって加速度を検出する時間間隔であるサンプリング間隔、加速度のデータに基づいて振動を検出する方式、加速度のデータに基づいて振動の発生を検出するための閾値および回数、加速度のデータに基づいて振動が非検出である(つまり、振動の終了を検出した)とする閾値および回数、振動の発生の検出を演算部112に通知することを有効化すること、加速度のデータをレジスタ132に一時的に保存することなどの設定が行われる。
当該初期設定の内容は、レジスタ132に記憶される。
【0051】
ここで、本実施形態では、加速度センサデバイス111は、初期設定時にセンサ部131によって検出される加速度のデータを基準値として、レジスタ132に記憶する。そして、加速度センサデバイス111では、当該基準値を基準として、センサ部131によって加速度のデータに基づいて、振動の発生および振動の終了を判定する。
【0052】
初期設定の完了後に、演算部112は、当該演算部112および通信部113をスリープ状態へ移行させて、消費電力を低減させる。
【0053】
加速度センサデバイス111は、センサ部131によって加速度のデータを計測し、計測された結果をレジスタ132に保存する。レジスタ132では、当該レジスタ132のデータ保存領域が一杯となった場合には、最も古いデータから順に消去されていく。
加速度センサデバイス111は、計測された加速度のデータと基準値(基準値となる加速度のデータ)とを比較し、計測された加速度のデータから基準値を減算した結果(差分)が所定の閾値(振動発生閾値)を所定の回数(1以上であるC回)以上連続して超過した場合に、振動の発生を検出する。
振動の発生が検出された後、加速度センサデバイス111は、演算部112に割り込み通知のための信号を出力する。
ここで、振動検出端末装置31-1における振動発生閾値は、例えば、電源容量と要求される検出の感度との兼ね合いで決定される。
【0054】
演算部112は、割り込み通知の信号を受けると、スリープ状態から稼働状態へ移行する。そして、演算部112は、レジスタ132のデータ保存領域から、振動の発生が検出されたときの直前の加速度のデータをM(Mは、1以上の整数)サンプル分収集する。その後、演算部112は、定期的に、レジスタ132から、振動の発生が検出された後の加速度のデータを収集する。
【0055】
演算部112は、収集されたデータに基づく情報を、中継機71-1に送信する。
一例として、演算部112は、データの収集が終了した後に、通信部113をスリープ状態から稼働させる。そして、演算部112は、通信部113を介して、収集された加速度のデータに基づく情報を、中継機71-1に送信する。
他の例として、演算部112は、収集された加速度のデータが一定量に達したときに、通信部113をスリープ状態から稼働させる。そして、演算部112は、通信部113を介して、収集された加速度のデータに基づく情報を、中継機71-1に送信する。
ここで、送信される情報は、加速度センサデバイス111の識別番号、加速度のデータ、メッセージごとのシーケンス番号を含む。
【0056】
加速度センサデバイス111は、加速度のデータが所定の閾値(振動非検出閾値)を所定の回数(1以上であるD回)以上連続して下回った場合、振動の非検出を判定する(振動の終了を検出する)。そして、加速度センサデバイス111は、その旨を演算部112に通知する。
これに応じて、演算部112は、振動の非検出が判定された後における所定の数L(Lは、例えば、1以上の整数)のサンプルまでのデータに基づく情報を送信する。そして、演算部112は、当該演算部112および通信部113をスリープ状態へ移行させる。
【0057】
中継機71-1は、振動検出端末装置31-1から送信された情報を受信し、受信された情報に受信時刻の情報を付与した情報を生成した後に、当該情報を管理端末装置12に送信(転送)する。
ここで、中継機71-1は、振動検出端末装置31-1からの通信を待ち受ける必要があり、相応の電力を消費する。このため、中継機71-1では、例えば、太陽光パネルなどを用いて長期の稼働を維持することができるように、電源容量が設計される。
【0058】
管理端末装置12は、収集された情報、および、当該管理端末装置12が持つ加速度センサデバイス111の識別番号と設置位置との紐づけ情報(対応情報)に基づいて、衝突の判定および柵形状変化の判定を行う。
ここで、管理端末装置12では、当該管理端末装置12の記憶部に、加速度センサデバイス111の識別番号と設置位置との対応情報が記憶されている。
【0059】
ここで、衝突の判定としては、様々な判定の手法が用いられてもよい。
例えば、衝突の判定では、所定の時間幅の範囲に存在する、複数の加速度センサデバイス111から収集された加速度のデータ(または、当該データが加工されたデータでもよい。)が用いられる。
管理端末装置12は、特定の地点の加速度センサデバイス111からの情報のみが存在する場合には、当該地点における衝突を検出する。一方、管理端末装置12は、広範囲の地点の加速度センサデバイス111からの情報が存在する場合には、強風などの環境要因による振動が疑われるため、加速度のデータの平均値あるいは分散などの特徴量を利用して異常検出の判定を行う。
【0060】
また、柵形状変化の判定としては、様々な判定の手法が用いられてもよい。
例えば、柵形状変化の判定では、同一の加速度センサデバイス111から収集された情報(加速度の情報)が用いられる。
管理端末装置12は、各々の加速度のデータのうち、先頭のM個のサンプルを振動の発生の直前における加速度のデータとし、最後のL個のサンプルを振動の終了の直後における加速度のデータとし、これらに基づいて、振動の前後での傾斜差を算出する。管理端末装置12は、当該傾斜差が事前に定められた所定の閾値を超過した場合に、柵形状変化が発生したことを検出する。
【0061】
[具体的な設置の例]
山間部において、害獣の侵入を防護する柵のシステムとして、本実施形態に係る振動検出システム1が設置される場合の例を示す。
振動検出端末装置31-i~33-iおよび中継機71-iとしては、それぞれ、複数台が適切な間隔で配置される。
【0062】
図1の例は、振動を検出する振動検出システム1の設置が想定される環境の一例である。
それぞれの単位柵部11-iにおいて、害獣侵入防護柵は、4mごとに地面に突き立てられた高さ2mの支柱51-i~53―iと、支柱51-i~53―iの間に張られたポリエチレン製の網61-i~62-iから構成されている。
すべての単位柵部11-1~11-Nを合わせると、全長数百m~数kmに及ぶ。本実施形態では、このような全長をN個に分割して、N個の単位柵部11-1~11-Nが並べて配置されている。
【0063】
ここで、このような柵の分割数Nは、一例として、3である。なお、当該分割数Nは、他の値であってもよく、例えば、2であってもよく、4以上であってもよい。当該分割数Nは、適宜変更されてもよい。また、当該分割数Nは、1であってもよく、つまり、分割されなくてもよい。
【0064】
柵を構成する各支柱51-i~53-iに、振動検出端末装置31-i~33-iが設置される。
ここで、支柱51-i~53-iの上部と下部とで振動の仕方が異なるため、すべての振動検出端末装置31-i~33-iは、地面から一定の高さに設置されることが望ましい。一例として、振動検出のし易さおよび通信感度を考慮して、すべての振動検出端末装置31-i~33-iが、地面からの高さ1.8mの位置に設置されてもよい。
【0065】
振動検出端末装置31-i~33-iは、例えば、屋外の支柱51-i~53-iに付属的に設置でき、かつ、計測に影響を与えない軽量な構成であることが望ましい。例えば、振動検出端末装置31-i~33-iは、結束バンドで支柱51-i~53-iに固定することができるように四隅に穴を開けた基板上に回路を構築して、電子部品および回路を防水用樹脂で覆ったものであってもよい。
【0066】
中継機71-iは、それぞれの柵(単位柵部11-i)ごとに1台ずつ設置される。
中継機71-iの設置間隔、すなわち柵(単位柵部11-i)の分割間隔は、例えば、振動検出端末装置31-i~33-iと中継機71-iとの間の通信可能距離に依存する。一例として、近距離無線通信が使用される場合、通信可能距離は50~100m程度であるため、柵(単位柵部11-i)が直線上にある場合、その分割間隔は100~200m程度となり得る。なお、近年では、長距離通信に適したLPWA(Low Power, Wide Area)があり、規格にも依るが、数百m~数km間の通信も可能である。
【0067】
管理端末装置12は、現地(単位柵部11-iが設置される場所)から離れた場所に設置される。そして、管理端末装置12は、中継機71-iとは公衆データ通信網などのように、1km以上の遠隔通信が可能な無線通信で接続される。山間部で公衆データ通信網が利用できない場合には、中継機71-iを多段構成にする構成が用いられてもよい。管理端末装置12は、例えば、NTP(Network Time Protocol)同期された時刻情報を保持しており、中継機71-iも管理端末装置12から時刻情報を受信する。
【0068】
なお、山間部では、商用電源が利用できないため、振動検出端末装置31-i~33-iおよび中継機71-iについて電源管理が重要となる。特に、振動検出端末装置31-i~33-iは多数設置されるため、安価な構成が望ましい。
また、本実施形態では、支柱51-i、52-i、53-iに振動検出端末装置31-i、32-i、33-iが設けられる場合を示したが、他の例として、他の箇所に振動検出端末装置31-i、32-i、33-iが設けられてもよい。当該他の箇所は、例えば、網61-i、62-iなどであってもよい。
【0069】
[第1実施形態について]
以上のように、本実施形態に係る振動検出システム1では、加速度センサによって検出されたデータを収集する場合に、振動の発生が検出されたときに、振動の発生前のデータを含めて収集する。このように、本実施形態に係る振動検出システム1では、振動の発生時に振動の発生前の加速度の情報を収集することで、振動の発生時および非振動時(振動の開始時およびそれよりも前の時間)における加速度の情報の伝達にかかる消費電力の低減を図ることができる。
【0070】
これにより、本実施形態に係る振動検出システム1では、例えば、振動の発生前のデータに基づいて、振動の発生前における、支柱51-i、52-i、53-iおよび網61-i、62-iの傾きを推定することが可能である。また、本実施形態に係る振動検出システム1では、例えば、振動の発生後のデータに基づいて、振動の発生後における、支柱51-i、52-i、53-iおよび網61-i、62-iの傾き(重力がかかる向き)等を推定することが可能である。
【0071】
本実施形態に係る振動検出システム1では、例えば、衝突の検出および柵の形状変化の検出を行う場合に、環境雑音による誤検出を低減することが可能である。また、例えば、複数の振動検出端末装置31-i、32-i、33-iによって得られる加速度の情報(例えば、閾値を超えた加速度の情報)に基づいて、環境雑音等の分析を行うことができる。
本実施形態に係る振動検出システム1では、安価な加速度センサデバイス111を連続的に網柵に配置することで、網柵の監視を安価に実現することができる。
このように、本実施形態に係る振動検出システム1では、消費電力を低減させつつ、十分なデータを検出することができる。
なお、各種の閾値、時間あるいは期間などは、それぞれ、任意の値に設定されてもよい。
【0072】
<構成例>
一構成例として、網柵(図1の例では、支柱51-i、52-i、53-iおよび網61-i、62-iから構成される網柵)に設けられて振動を検出する振動検出装置(図1の例では、振動検出端末装置31-i、32-i、33-i)であって、次のような構成とした。
すなわち、振動検出装置は、加速度を検出するセンサ(図1の例では、センサ部131のセンサ)を有し、センサによって検出された加速度に基づいて振動の発生(振動の開始)を検出する振動情報検出部(図1の例では、加速度センサデバイス111の機能)と、センサによって検出された加速度のデータを記憶するレジスタ(図1の例では、レジスタ132)と、レジスタに記憶された加速度のデータのうちの所定のデータを取得し、取得されたデータに関する処理を行う演算部(図1の例では、演算部112)と、を備える。
振動情報検出部は、振動の発生が検出された場合に演算部に第1の通知(振動の発生の通知)を行う。
演算部は、低消費電力状態である第1状態(本実施形態では、スリープ状態)にあるときに第1の通知を受けた場合に、第1状態よりも消費電力が大きい第2状態(本実施形態では、稼働状態)へ移行し、振動の発生よりも所定の第1時間だけ過去にある時点を、加速度のデータをレジスタから取得する初めの時点とする。
【0073】
一構成例として、振動検出装置において、振動情報検出部は、振動の発生が検出された後に、センサによって検出された加速度に基づいて振動の終了を検出し、振動の終了が検出された場合に演算部に第2の通知(振動の終了の通知)を行う。演算部は、第2の通知を受けた場合に、振動の終了よりも所定の第2時間だけ未来にある時点を、加速度のデータをレジスタから取得する終わりの時点とする。
一構成例として、振動検出装置において、演算部は、上記した終わりの時点以降に、第1状態へ移行する。
【0074】
一構成例として、振動検出システムであって、次のような構成とした。
すなわち、以上のような振動検出装置を複数備え、複数の振動検出装置がそれぞれの箇所に設けられる網柵と、振動検出装置によって得られる振動に関する情報を管理する管理装置(図1の例では、管理端末装置12)と、を備える。
【0075】
一構成例として、網柵に設けられて振動を検出する振動検出装置における振動検出方法であって、次のような構成とした。
すなわち、振動検出方法では、振動検出装置に備えられた振動情報検出部が、加速度を検出するセンサを有し、センサによって検出された加速度に基づいて振動の発生を検出する。振動検出装置に備えられたレジスタが、センサによって検出された加速度のデータを記憶する。振動検出装置に備えられた演算部が、レジスタに記憶された加速度のデータのうちの所定のデータを取得し、取得されたデータに関する処理を行う。
このような構成において、振動情報検出部は、振動の発生が検出された場合に演算部に第1の通知を行う。演算部は、低消費電力状態である第1状態にあるときに第1の通知を受けた場合に、第1状態よりも消費電力が大きい第2状態へ移行し、振動の発生よりも所定の第1時間だけ過去にある時点を、加速度のデータをレジスタから取得する初めの時点とする。
【0076】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と相違する点について詳しく説明し、第1実施形態と同様な点については詳しい説明を省略する。
また、本実施形態では、説明の便宜上、第1実施形態で使用された符号と同じ符号を使用して説明する。
【0077】
本実施形態では、演算部112は、振動の発生の通知を受けてから、振動の終了の通知を受ける前に、所定の期間(所定の時間)が経過した場合に、加速度のデータをレジスタ132から取得することを停止した後、いったんスリープ状態へ移行する。その後、演算部112は、振動の終了の通知を受けた場合に、その時点の前後のデータをレジスタ132から取得する。本実施形態では、演算部112は、振動の終了よりも所定の時間だけ過去にある時点を、加速度のデータをレジスタ132から取得する再開の時点とする。
【0078】
[振動検出端末装置における動作の例]
図6は、本発明の一実施形態(第2実施形態)に係る振動発生前後の処理の一例を示す図である。
横軸は、時間を表している。時間T11、時間T12、時間T13、時間T14、時間T15、時間T16、時間T17の順に時間が進んでいるとする。
【0079】
振動が発生したときの時間T13に、レジスタ132に記憶されている最も古いデータが時間T11のデータであるとする。
このとき、演算部112は、振動が発生した時間T13よりも所定の時間だけ過去である時間T12以降のデータをレジスタ132から取得する。
そして、演算部112は、振動が発生した時間T13よりも所定の時間だけ経過した時間T14に、レジスタ132からのデータの取得を停止して、スリープ状態へ移行する。
【0080】
その後、演算部112は、振動の終了の通知を受けたときに、スリープ状態から稼働状態に起動する。そして、演算部112は、振動が終了した時間T16よりも所定の時間だけ過去である時間T15以降のデータをレジスタ132から取得する。
また、演算部112は、振動が終了したときの時間T16よりも所定の時間だけ経過した時間T17までのデータをレジスタ132から取得する。
演算部112は、レジスタ132から取得された時間T12から時間T14までの期間M11のデータ、および、時間T15から時間T17までの期間M12のデータを分析する。
【0081】
図7は、本発明の一実施形態(第2実施形態)に係る演算部112において行われる処理の手順の一例を示す図である。
【0082】
(ステップS51)
演算部112において、振動の発生の通知があったか否かを判定する。
この結果、演算部112において、振動の発生の通知があったと判定した場合には(ステップS51:YES)は、ステップS52の処理へ移行する。この場合、演算部112は、例えば、スリープ状態にあったときには、稼働状態へ移行する。
一方、この結果、演算部112において、振動の発生の通知がなかったと判定した場合には(ステップS51:NO)は、ステップS51の処理を繰り返す。
【0083】
(ステップS52)
演算部112において、データの取得を開始する。そして、ステップS53の処理へ移行する。
【0084】
(ステップS53)
演算部112において、振動の発生の通知を受けてから所定の時間が経過したか否かを判定する。
この判定の結果、演算部112において、振動の発生の通知を受けてから所定の時間が経過していないと判定した場合には(ステップS53:NO)、ステップS54の処理へ移行する。
一方、この判定の結果、演算部112において、振動の発生の通知を受けてから所定の時間が経過したと判定した場合には(ステップS53:YES)、ステップS55の処理へ移行する。
【0085】
(ステップS54)
演算部112において、振動の終了の通知があったか否かを判定する。
この結果、演算部112において、振動の終了の通知があったと判定した場合には(ステップS54:YES)は、ステップS58の処理へ移行する。
一方、この結果、演算部112において、振動の終了の通知がなかったと判定した場合には(ステップS54:NO)は、ステップS53の処理を繰り返す。
【0086】
(ステップS55)
演算部112において、データの取得を終了(本実施形態では、いったん停止)する。そして、ステップS56の処理へ移行する。
ここで、演算部112は、スリープ状態へ移行する。
【0087】
(ステップS56)
演算部112において、振動の終了の通知があったか否かを判定する。
この結果、演算部112において、振動の終了の通知があったと判定した場合には(ステップS56:YES)は、ステップS57の処理へ移行する。この場合、演算部112は、スリープ状態から稼働状態へ移行する。
一方、この結果、演算部112において、振動の終了の通知がなかったと判定した場合には(ステップS56:NO)は、ステップS56の処理を繰り返す。
【0088】
(ステップS57)
演算部112において、所定のデータの取得(本実施形態では、取得の再開)を行う。そして、ステップS58の処理へ移行する。
【0089】
(ステップS58)
演算部112において、データの取得を終了する。そして、ステップS59の処理へ移行する。
【0090】
(ステップS59)
演算部112において、取得されたデータに基づいて、所定の処理を行う。そして、本フローの処理を終了する。その後、演算部112は、スリープ状態へ移行してもよい。
ここで、所定の処理としては、任意の処理であってもよく、例えば、取得されたデータの情報を中継機71-1に送信する処理、あるいは、取得されたデータについて分析等を行った結果の情報を中継機71-1に送信する処理などであってもよい。
【0091】
ここで、図7の例では、ステップS58~ステップS59の処理において、演算部112は、データの取得を終了した後に、取得されたデータに基づいて所定の処理を行う場合を示したが、これに限られない。
他の例として、演算部112は、ステップS58の処理とステップS59の処理とを並列に行ってもよい。なお、これについては、図5の例におけるステップS34~ステップS35の処理について説明したのと同様である。
【0092】
[具体的な動作の例]
ここでは、第1実施形態とは異なる動作について詳しく説明し、同様な動作については詳しい説明を省略する。
本実施形態では、振動の発生が検出された後に、振動の終了が所定の期間にわたって検出されない場合に、演算部112がスリープ状態へ移行する。なお、演算部112とともに、通信部113もスリープ状態へ移行してもよい。
【0093】
例えば、強風などによって、長時間にわたって振動検出状態となる可能性がある。このようなときにおいても消費電力を低減するために、振動非検出状態にならなくても、一定量の加速度の情報が演算部112から送信された後に、演算部112(あるいは、演算部112および通信部113)をスリープ状態に移行させる。この場合、例えば、振動非検出状態となったときに、再度、加速度センサデバイス111から演算部112に割り込み通知を出力し、振動非検出状態となったときの前後の加速度の情報を演算部112から送信する。
ここで、振動検出状態は、振動の発生の後に、振動が継続して、振動の終了が検出されない状態である。また、振動非検出状態は、振動の発生の後に、振動が終了した状態である。
【0094】
[第2実施形態について]
以上のように、本実施形態に係る振動検出システム1では、振動の発生(振動の開始)から終了まで長期にわたる場合においても、演算部112(あるいは、演算部112および通信部113)がスリープ状態になることで、消費電力を低減することができる。また、このような場合においても、振動の終了時に演算部112によって加速度の情報を取得するため、十分なデータを取得することができる。
このように、本実施形態に係る振動検出システム1では、消費電力を低減させつつ、十分なデータを検出することができる。
なお、各種の閾値、時間あるいは期間などは、それぞれ、任意の値に設定されてもよい。
【0095】
<変形例>
ここで、以上では、振動検出システム1において、演算部112(あるいは、演算部112および通信部113)は、振動の発生(振動の開始)から終了まで長期にわたる場合にスリープ状態になることと、振動の終了時に稼働状態となって加速度の情報を取得することとの両方を行う場合を示した。他の例として、演算部112(あるいは、演算部112および通信部113)は、振動の発生(振動の開始)から終了まで長期にわたる場合にスリープ状態になることを行うが、振動の終了時に稼働状態となることは行わない構成が用いられてもよい。このような構成においても、振動の発生(振動の開始)から終了まで長期にわたる場合に、演算部112がスリープ状態になるまでの情報を取得することができ、例えば、当該情報で十分に役立つ場合に有効である。
【0096】
<構成例>
一構成例として、振動検出装置において、次のような構成とした。
演算部(図1の例では、演算部112)は、第1の通知(振動の発生の通知)を受けた後に、第2の通知(振動の終了の通知)を受ける前に所定の期間が経過した場合に、加速度のデータをレジスタから取得することを停止し、第1状態(本実施形態では、スリープ状態)へ移行する。
一構成例として、振動検出装置において、次のような構成とした。
演算部は、第1状態にあるときに第2の通知を受けた場合に、第2状態(本実施形態では、稼働状態)へ移行し、振動の終了よりも所定の第3時間だけ過去にある時点を、加速度のデータをレジスタから取得する再開の時点とする。
【0097】
[以上の実施形態について]
ここで、以上に示した実施形態に係る各装置(例えば、振動検出端末装置31-i、32-i、33-iなど)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録(記憶)して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、処理を行ってもよい。
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティング・システム(OS:Operating System)あるいは周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えば、非一時的記録媒体である。
【0098】
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバあるいはクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)あるいは電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0099】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1…振動検出システム、11-1~11-N…単位柵部、12…管理端末装置、31-1~31-N、32-1~32-N、33-1~33-N…振動検出端末装置、51-1~51-N、52-1~52-N、53-1~53-N…支柱、61-1~61-N、62-1~62-N…網、71-1~71-N…中継機、111…加速度センサデバイス、112…演算部、113…通信部、114…電源部、131…センサ部、132…レジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7