(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】車載機器用操作ユニット、特に車両用ヒューマンマシンインターフェース
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220301BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20220301BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/01 560
B60R16/02 630L
(21)【出願番号】P 2019543335
(86)(22)【出願日】2018-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2018053927
(87)【国際公開番号】W WO2018149988
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】102017103162.6
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017103166.9
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017208243.7
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508066083
【氏名又は名称】ベーア-ヘラー サーモコントロール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】キルシュ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァープ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー,ヤン へニング
(72)【発明者】
【氏名】ランゲナー,サッシャ
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518990(JP,A)
【文献】特開2004-192412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0127755(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041 - 3/047
G06F 3/01
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載機器用操作ユニット、特に車両用ヒューマンマシンインターフェース(MMI又はHMI)であって、
枠(16)を有する筐体(14)と、
上記筐体(14)内及び/又は上記筐体(14)に配置されるディスプレイ(62)であって、上記枠(16)で囲まれる縁部(22)を有する透明なカバー板(18)を含むディスプレイ(62)と、
上記筐体(14)内及び/又は上記筐体(14)に配置されるタッチセンサシステム(40)と、
上記カバー板(18)に屈曲波を導入するために、上記カバー板(18)の縁部(22)に沿って隣接して配置される複数のアクチュエータ(24)と
を備え、
上記カバー板(18)上の上記アクチュエータ(24)それぞれに1の接触面(34)が割り当てられ、上記カバー板(18)に屈曲波を導入するために上記接触面(34)を介して上記アクチュエータ(24)が上記カバー板(18)に作用し、
上記複数のアクチュエータ(24)によって上記カバー板(18)に導入された屈曲波が上記カバー板(18)内で重ねられ、かつ、触覚的に知覚可能な局所的に分解された表面構造を上記カバー板(18)に与え、
上記複数の接触面(34)が、それぞれ上記筐体(14)の枠(16)から距離を空けて配置され、これにより、上記カバー板(18)への屈曲波の導入及び/又は上記カバー板(18)内の屈曲波の伝播が、上記距離の大きさから生じる波長又は周波数のために減衰され、
上記距離が、可聴周波数範囲内の周波数を有する屈曲波が減衰されるように選択され、
上記タッチセンサシステム(40)によって与えられる信号を評価すべく上記タッチセンサシステム(40)を制御するため、及び上記タッチセンサシステム(40)によって与えられる信号に応じて上記複数のアクチュエータ(24)を制御するために、上記タッチセンサシステム(40)と上記複数のアクチュエータ(24)とに接続される評価及び制御ユニット(38)をさらに備える操作ユニット。
【請求項2】
上記距離が、上記枠(16)と、それに直交する方向におけるそれぞれの上記接触面(34)との間の空間であることを特徴とする請求項1に記載の操作ユニット。
【請求項3】
上記距離が、上記枠(16)と、上記接触面(34)の幾何学的中心との間の空間であることを特徴とする請求項2に記載の操作ユニット。
【請求項4】
上記各接触面(34)が円形面であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項5】
上記カバー板(18)が、上記ディスプレイ(62)に対する空隙を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項6】
上記カバー板(18)が、透明な弾性接着材料の層によって上記ディスプレイ(62)又はタッチセンサシステム(40)に接合されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項7】
上記カバー板(18)に接着される複数のアーム(44)が、上記筐体(14)の枠(16)から内側に延び、上記枠(16)に沿って配置される個別の複数のチャンバ(48)を形成し、上記チャンバ(48)のそれぞれに接触面(34)が配置され、上記チャンバ(48)が、上記カバー板(18)の中央領域(50)に対向する内側にて開口していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項8】
上記複数のアーム(44)が、それらの上記枠(16)に対向する複数の端部で複数の基部(46)によって接続され、上記複数のアーム(44)と上記複数の基部(46)とが、上記カバー板(18)に接着される櫛型構造要素(42)を形成することを特徴とする請求項7に記載の操作ユニット。
【請求項9】
上記複数のアーム(44)が、一体的に上記枠(16)に接続されることを特徴とする請求項7に記載の操作ユニット。
【請求項10】
上記複数のチャンバ(48)が、それらの上記カバー板(18)の中央領域(50)に対向する内側に、上記それぞれのチャンバの周囲の60°を超えて120°まで、特に90°を超えて延びる1の開口(52)をそれぞれ含むことを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項11】
上記開口(52)が、上記枠(16)に直交して延びる上記チャンバの対称軸に対して対称であることを特徴とする請求項10に記載の操作ユニット。
【請求項12】
上記複数のチャンバ(48)がそれぞれ対称であることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項13】
上記各接触面(34)が円形面であり、上記複数のアーム(44)と上記枠(16)とが、上記接触面(34)ごとに、上記接触面(34)と同心円状に延びる内周及び上記接触面(34)と同心円状に延びる底面を有するチャンバ(48)を形成することを特徴とする請求項
7から12のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項14】
上記複数のアクチュエータ(24)が、それぞれ1の特に円形のディスク形状の単層又は複層の圧電素子(26)を有する複数の圧電アクチュエータとして設計され、この圧電素子(26)が、上記それぞれの接触面(34)で上記カバー板(18)に接着されることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項15】
上記タッチセンサシステム(40)が、上記カバー板(18)に強固に接合、特に接着される複数の超音波送信機及び超音波受信機であって、物体、特に人の指によってタッチされたカバー板(18)上のポイント(56)を局所分解検出すべく上記カバー板(18)に超音波の屈曲波を印加するための複数の超音波送信機及び超音波受信機を含むことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【請求項16】
上記超音波送信機及び超音波受信機が、それぞれ単層又は複層の圧電素子(26)として形成されることを特徴とする請求項15に記載の操作ユニット。
【請求項17】
上記複数のアクチュエータ(24)のいくつかによって、すなわち上記カバー板(18)にタッチする第1段階にて、上記複数の超音波送信機及び超音波受信機の機能が実行可能であり、それぞれ予め検出されたタッチポイント(56)でのタッチでの触覚フィードバックのために上記カバー板(18)に屈曲波を印加すべくタッチする第2段階にて、対応する複数の第1アクチュエータ(24)が提供されることを特徴とする請求項15又は16に記載の操作ユニット。
【請求項18】
上記タッチセンサシステム(40)が、上記カバー板(18)とディスプレイ(62)との間に配置されたタッチパネル(60)であって、物体、特に人の指によってタッチされた上記カバー板(18)上のポイント(56)を局所分解検出するためのタッチパネル(60)を含むことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年2月16日の独国特許出願10 2017 103 162.6、2017年2月16日の独国特許出願10 2017 103 166.9、及び2017年5月16日の独国特許出願10 2017 208 243.7の優先権を主張し、その内容が参照により本特許出願に援用される。
【0002】
本発明は、例えば、手動操作を確認するための局所的に分解された触覚を有するヒューマンマシンインターフェース(HMI)としての車載機器用操作ユニットに関する。本発明は、特に、屈曲波による触覚フィードバックのためのノイズ抑制に関する。上記操作ユニットは、車載機器用に又は車両内で使用されるだけでなく、他のタッチスクリーン入力装置にも使用され得る。
【背景技術】
【0003】
タッチスクリーン又はタッチパッドによって車載機器を操作するためのコマンドを入力することが、ますます一般的になっている。便宜上、効果的なコマンドの入力、すなわち効果的な手動操作のフィードバックを人間が受け取ることが望ましい。この点に関し、触覚フィードバックを伴ういわゆるハプティックフィードバックの概念が効果的であることが、証明されている。この場合、タッチパネル又はタッチスクリーンが全体として機械的に励振され、ここにおいては、快適さの理由からも振動が最小限に抑えられるべきである。理想的には、タッチパネル又はタッチスクリーンは、その後に静止位置に留まるべく、短時間に一度だけ歪む。
【0004】
特に、ますます車両に搭載されるより大型のタッチスクリーンにとって、ハプティックフィードバックの従来の概念は、移動されるべき機器の重量が増加するため、不利である。
【0005】
タッチセンシティブな表面のハプティックフィードバックのために、そこに屈曲波が印加されなければならないことが知られている。これは、例えば欧州特許出願公開第2 684 111 A1号明細書、米国特許第9 436 284 B2号明細書及び米国特許第9 449 476 B2号明細書に記載されている。その公知の方法では、例えば、タッチスクリーンのカバー板(cover pane)といった板(pane)に屈曲波を印加するために、アクチュエータが使用される。とりわけ圧電アクチュエータが、単層又は複数層(いわゆる複層圧電素子)のいずれかを有するアクチュエータとして使用される。そのような圧電セラミック素子(以下、圧電素子という)は、一般的に知られており、例えばカバー板に屈曲波を印加するために、それらは例えば接着接合によるせん断抵抗方式でカバー板に接続される。電気的に作動中の圧電素子の伸長により、屈曲波がカバー板内を伝播することができるように圧電素子がカバー板を局所的に変形する。様々な方法及び様々な時間で制御されるアクチュエータ(制御パターン)を重ねることにより、触覚的に知覚可能な局所的に分解された表面構造であって、様々な位置にて種々に又は同一に構成され得る表面構造が、カバー板に印加され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開第2 684 111 A1号明細書
【文献】米国特許第9 436 284 B2号明細書
【文献】米国特許第9 449 476 B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アクチュエータを制御するための理論的基礎は、Hudinらの論文「Localized Tactile Feedback on a Transparent Surface through Time-Reversal Wave Focusing」に見出される(DOI:10.1109/TOH.2015.2411267)。
【0008】
屈曲波によるハプティックフィードバックの特定の欠点は、不快なノイズの発生である。この理由は、屈曲波によって発生する振動が、数Hzから約16,000Hz~20,000Hzまでの周波数領域内で可聴であるからである。
【0009】
本発明の目的は、屈曲波によるハプティックフィードバック用であって、ノイズが抑制されたタッチセンシティブ操作面を有する操作ユニットを創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、本発明の目的は車載機器、特に車両用ヒューマンマシンインターフェース(HMI)用の操作ユニットによって達成され、この操作ユニットは、
枠を有する筐体と、
上記筐体内及び/又は上記筐体に配置されるディスプレイであって、上記枠に強固に囲まれる縁部を有する透明なカバー板を含むディスプレイと、
上記筐体内及び/又は上記筐体に配置されるタッチセンサシステムと、
上記カバー板に屈曲波を導入するために、上記カバー板の縁部に沿って隣接して配置される複数のアクチュエータと
を備え、
上記カバー板上の上記アクチュエータそれぞれに1の接触面が割り当てられ、上記カバー板に屈曲波を導入するために上記接触面を介して上記アクチュエータが上記カバー板に作用し、
上記複数のアクチュエータによって上記カバー板に導入された屈曲波が、上記カバー板内で重ねられ、上記カバー板の様々な位置にて種々又は同一であり得る触覚的に知覚可能な局所的に分解された表面構造を、衝動的に上記カバー板に与え、
上記複数の接触面が、それぞれ上記筐体の枠から距離を空けて配置され、これにより、上記カバー板への屈曲波の導入及び/又は上記カバー板内の屈曲波の伝播が、上記距離の大きさから生じる波長又は周波数のために減衰され、
上記距離が、可聴周波数範囲内の周波数を有する屈曲波が減衰されるように選択され、
上記タッチセンサシステムによって与えられる信号を評価すべく上記タッチセンサシステムを制御するため、及び上記タッチセンサシステムによって与えられる信号に応じて上記複数のアクチュエータを制御するために、上記タッチセンサシステムと上記複数のアクチュエータとに接続される評価及び制御ユニットをさらに備える。
【0011】
本発明のそれぞれの実施形態は、従属請求項の主題である。
【0012】
従って、本発明の目的は、操作ユニットの操作面キャリア(以下、「カバー板」又は「カバーガラス」ともいう)の縁部に沿ったアクチュエータの配置である。用語「カバー板」及び「カバーガラス」は、本発明の文脈において「操作面」に対して同義的に使用されることが強調されるべきである。本発明によれば、カバー板の縁部まで、従ってカバー板を強固に囲む枠までのアクチュエータの距離は、可聴周波数範囲内(例えば、最大で20,000Hz)の周波数を有する屈曲波の発生ができるだけ抑制されるように、すなわち、そのような屈曲波の伝播が大幅に減衰されるように選択される。これを、以下に説明する。
【0013】
本発明は、操作面キャリアに屈曲波を印加する概念を利用し、そのため、全てのアクチュエータは、適応され、予め計算され、保存された信号を、局所的に制限された機械的励振に変換する。この機械的励振は、定められた時間及び位置にて屈曲波の形で強め合うように互いを重ね、他の時間及び位置では知覚できるしきい値を下回っている。縁部での反射が、枠にカバー板を強固に拘束することにより、積極的に利用される。複数の位置での同時の強め合う干渉のために、様々な信号を重ねることが可能である。指(複数でもよい)の影響による屈曲波の減衰が考慮された方法が存在する。
【0014】
ハプティックフィードバックを目的としてタッチスクリーン又はタッチパネルのカバー板内で屈曲波を励振すると、通常、人間の耳に聞こえ易い周波数成分が発生する。カバー板へのアクチュエータの移行の非線形効果により、これらの周波数は、アクチュエータ励振信号のターゲットフィルタリングを用いることでも生じる。
【0015】
通常、屈曲波はカバーペインの縁部の近くで印加される。この縁部が固定的に拘束されている場合、すなわちどの空間方向にも移動されることができない場合、カバー板の縁部又は枠からアクチュエータまでの距離を調整することにより、「強固な縁部状態」によって特定の波長(及び従って特定の周波数)が強く減衰されることが達成され得る。非常に短い距離(カバー板用の一般的な材料パラメータとしてのミリメートルのオーダー)では、より長い波長が強く減衰されるしきい値がまさに可聴範囲内である。より短い波長、従ってより高い(超音波の)周波数のみが、著しいエネルギーでカバー板に印加される。カバー板は、通常、本発明に特に適した硬化ガラスによって形成される。
【0016】
アクチュエータと縁部との間の距離は、カバー板に周波数が屈曲波として印加され得ないか、又は減衰された屈曲波としてのみ印加され得るような所定の材料及び形状パラメータを制御するために使用される。特に、耐破壊性、従って比較的厚いカバーガラスに対する自動車産業の要求は、アクチュエータ及び電子機器の特別な高性能設計によって満たされ得る。
【0017】
以下に、材料及び形状パラメータと、減衰されない印加可能な最小の周波数との関係が、式によって大まかに示される。カバーガラスが厚さd、弾性率Y、密度ρ及びポアソン比vを有すると仮定する。波長λと周波数fとの関係は、以下の結果となる(例えばK.F.Graff、「Wave Motion in Elastic Solids」,Courier Dover Publications、1975)。
【0018】
【0019】
強固な枠により、(λ/4)<αである波のみがほとんど制限なしで伝播することができると仮定すると、以下の最小周波数の大まかな推定が結果として生じ、これは、いかなる制限もなく屈曲波の形でカバーガラス内に含められ得る。
【0020】
【0021】
さらにより小さい周波数は、距離aの4倍を超える波長に対応し、従って、縁部への近接によって機械的に減衰される。極端な場合、枠は1つのポイントでアクチュエータまでの距離aを含むだけであるため、限界範囲におけるこの減衰が非常に弱くなり得るということが考慮されなければならない。小さい周波数、すなわちより大きな波長によって、枠のより大きな部分が減衰に関与するため、減衰はますます強くなる。
【0022】
従って、距離aは、可聴スペクトルの一部が減衰されるように調整され得る。
【0023】
その配置は、(強固な)縁部までのアクチュエータの距離によって周波数応答が調整され得る機械的なフィルターとして理解され得る。実用的な観点からは、電気的ハイパスフィルタでアクチュエータの制御信号をハイパスフィルタ処理するというより簡単な方法は、実用的ではない。その理由は、アクチュエータ(電気的)からカバーガラス(機械的)への移行は、通常、非線形特性を有し、従って、可聴スペクトル内の機械的な波が、それにもかかわらず発生するからである。
【0024】
可聴範囲内の周波数を有する屈曲波の発生又は伝播を抑制するために本発明によって選択される上述の距離は、枠と、アクチュエータができる限りせん断抵抗としてカバー板に接続される各接触面との間の空間であり、この距離は、枠に直交する方向で考慮されなければならない。上記距離は、特に枠と、好適には円形の面である接触面の幾何学的中心との間の空間であり、それに対応して、圧電素子も単一層または複数層を有する円形の板(pane)要素として設計される。
【0025】
本発明のさらなる好適な実施形態では、カバー板が枠に接着され、カバー板の縁部領域が枠の支持面に置かれ、全面接触でカバー板に接着されることが提供され得る。従って、枠はカバー板を強固に囲む。代替的又は追加的に、枠はカバー板の縁部を、締め付けられる方法で囲むこともできる。
【0026】
さらなる調査により、各アクチュエータ、従って、アクチュエータ又は接触面が配置されるカバー板の縁部に沿って、各接触面にチャンバを割り当てることにより、屈曲波の減衰されるべき周波数範囲が、より正確に調整され、維持され得ることが示されている。本発明の有利な実施形態によれば、複数のアームが、筐体の枠からカバー板の中央領域まで延び、カバー板に耐せん断方式で接着されるか、又は別の方法で接着される。複数のアームが枠から実質的に直角に突き出ているため、個別の複数のチャンバが、枠に沿い、内側で各チャンバが開口を有し、この内側がカバー板の中央領域に面するように形成される。複数のアーム、すなわちチャンバの側壁でさえも、望ましくない周波数を有する屈曲波の発生及び伝播を減衰又は防止する。この場合には、接触面とチャンバ壁との間の距離がそれに応じて選択されることも適用される。円形の接触面では、チャンバも平面図で円形であり、そのチャンバ壁が接触面と同心円状に延びることが有利である。
【0027】
好適には、アームには基部が設けられ、この基部によって、枠に面する端部でそれらアームが互いに接続される。従って、複数のアーム及びチャンバは、枠に挿入され得る櫛構造要素であって、できる限り耐剪断性を有するようカバー板に接合される櫛構造要素として設計され得る。好適には、チャンバの開口は、それぞれのチャンバの周囲の60°を超えて120°まで、好ましくは90°を超えて延び、枠に直交して延びるチャンバの中心軸または対称軸に対して対称に配置される。好適には、チャンバ自体もこの軸に対して対称である。
【0028】
本発明のこの実施形態によって提案される個別のアクチュエータの「囲み」により、可聴周波数範囲内の屈曲波は、チャンバの境界を越えて伝わらないか、又は減衰した形でのみ伝わる。アクチュエータとチャンバ境界との間の選択された距離は、チャンバの直径(丸いチャンバの場合)を選択することによって調整され得るように、減衰された周波数範囲を定め、このチャンバから、周波数としての屈曲波がカバーガラス内を(制限なしで)伝播することができる。一般に、より大きい直径では、印加可能な最小の周波数が減少する、すなわち、印加可能な最大の周波数が増加するといえる。正確な関係を式によって示すことはできないが、それは有限要素シミュレーションを介して推定され得る。
【0029】
本発明のさらに有利な実施形態は、タッチスクリーン又はタッチパッドのディスプレイへのカバーガラスの「柔軟な」接合に関する。本発明の好適なさらなる実施形態によれば、弾性のある柔軟な接着接合によって全面接触でディスプレイの前面にカバーガラスを接合することが提案される。接着接合のための要求は、色の再現にほとんど又は顕著な影響の無い、可能な限り100%の透明度、及び低い弾性率である。接着接合に適した材料は、例えば光学的な接合に使用される材料であり、これらの材料は、例えば、柔軟で、弾性があり、柔らかく伸縮可能でなければならない、及び/又は機械的減衰効果が無いか又は弱いだけでなければならない、及び/又はゲル状であり得る。
【0030】
上述から、本発明はタッチスクリーンに有利に使用され得ると結論付けられ得る。タッチスクリーンは、通常、カバーガラスの真下に配置されるタッチパネルを備える。タッチパネルは、通常、静電容量方式で作動するが、光学方式又は抵抗方式で作動するタッチパネルも使用され得る。
【0031】
タッチパネルは、従来の方法でカバーガラスに接合され得る。弾性のある柔軟な接着接合は、カバーガラス内での大きく減衰しない屈曲波の形成には必ずしも必要とされない。通常、カバーガラスは、ディスプレイの前面に全面接触でタッチパネルによって連結される。タッチパネル自体は、柔軟で薄い方式で形成され得るため、屈曲波がタッチパネルによって過度に減衰されることなくカバーガラス内を伝播することができる。ディスプレイの前面へのカバーガラスの強固な接合は(タッチパネルが2つの間に任意で配置される場合であっても)、強固なディスプレイによる屈曲波の減衰が強過ぎるため、回避されなければならず、これは、例えば上述したように、エアギャップ又は柔軟な連結によって回避され得る。
【0032】
本発明によるディスプレイの操作要素におけるハプティックフィードバックのためのアプローチは、上述のように、ハプティックフィードバックを提供するがその表面を平行移動させないカバーガラス内の屈曲波に基づく。しかし、接合物が強固であるほど、すなわちその弾性率が高いほど、屈曲波が強く減衰され、これにより、このアプローチの実装を妨げる。さらに、効果的に移動されるべき物体が顕著に増加する。
【0033】
従って、記載される本発明のさらなる実施形態は、カバーガラス内の屈曲波の減衰を大幅に弱くするための弾性接合物の特定の使用に関するものであり、そのため、ディスプレイシステムの光学的な品質が依然として保証され、実用的に関連する目的のための屈曲波の伝播が可能になる。
【0034】
屈曲波の現行技術によれば、カバーガラスは、このカバーガラスが自由に振動することができるよう、ディスプレイの直前にエアギャップによって孤立して配置される。従って、例えば汚れや湿気がエアギャップに入り込み得る。さらに、エアギャップは、界面での光反射及び関連する「二重」画像の形成によって、光学特性に悪影響を与え得るが、これは、ディスプレイ構造に組み込まれた適切な箔によって回避/削減され得る。
【0035】
一方、エアギャップドの光学的な欠点は、弾性接合物によって回避され得る。その一方で、これにより、大幅に減衰の無い屈曲波の伝播が可能になる。
【0036】
ハプティックフィードバックを発生させるための屈曲波の活用に加え、屈曲波と柔軟な接合物との組み合わせが、タッチ認識及び力測定(力覚)にも使用されることができ、カバー板とタッチパネル又はディスプレイとの間の機械的な分離、すなわちカバー板の下方に配置される機器が、屈曲波の伝播性能の改善を確実にするということが強調されるべきである。
【0037】
本発明は、また、タッチセンシティブ操作面上でのタッチポイントの検出と組み合わせられる超音波によって、有利に組み合わせられ得る。そのようなタッチ検出の概念は、一般的に知られており、例えば、米国特許第9 449 476 B2号明細書及び米国特許第9 477 350 B2号明細書に記載されている。超音波による局所分解タッチ検出のために、超音波の屈曲波が、カバー板、すなわちタッチセンシティブ操作面に、例えば圧電超音波送信機によって印加され、屈曲波の伝播は、特に圧電超音波受信機によって認識される。タッチセンシティブ操作面が物体、例えば指によってタッチされる瞬間に、超音波の検出屈曲波の伝播が減衰される。そして、複数の超音波送信機及び複数の超音波受信機の使用により、受信信号と送信機及び受信機の位置とからタッチポイントを推測することができる。
【0038】
この概念では、上述のように、検出屈曲波の特定の周波数を抑制することも有利といえる。特に、ハプティック屈曲波の印加のためのいくつかのアクチュエータが、検出屈曲波を印加及び受信するために予め使用されるということが、利点として提供され得る。本発明によれば、アクチュエータはカバー板の境界全体に有利に沿って隣接して配置されるため、アクチュエータは、操作面上のタッチポイントを決定すべく検出屈曲波を送信及び受信するのに適した位置にも配置される。従って、本発明によれば、カバー板の縁部に沿って配置されるいくつかのアクチュエータは、複数回使用され得る。本発明によれば、アクチュエータ、すなわちタッチセンサシステムはそれぞれ、本発明の操作ユニットに関連して既に上述したように、評価及び制御ユニットによって制御及び評価される。
【0039】
評価及び制御ユニットは、例えば、屈曲波によるハプティックフィードバックの目的でアクチュエータを制御するための信号を決定するために活用されることもできる。以下、これらの信号が予め決定され得る例示的な手順について説明する。
【0040】
フィードバックが発生すべきポイントにレーザー振動計を合わせる。
1又は複数のノイズ信号で単一の圧電素子を励振する。
レーザー振動計で測定された屈曲から、それぞれの圧電素子の励振信号と、選択されたポイントでの屈曲との間の伝達関数を決定する。
この目的のために、励振及び測定信号を周波数領域にフーリエ変換し、双方のスペクトルを分割する。
それから、伝達関数を時間領域に再変換する(パルス応答を与える)。
最初の、特に2msのパルス応答を切り取り、時間軸を逆にする。
シグナム関数を適用することにより、決定された信号を2つの個別の電圧レベルに制限する。
まず第1に、全ての他の圧電素子について上記の手順を繰り返す。
カバーガラス上の所望数量のポイントについて上述のプロセス全体を繰り返す。
【0041】
信号(キャリブレーション目的のためのホワイトノイズと、決定された励振信号との双方)は保存され、必要に応じて(例えば、タッチフォイルによって又は周期的な繰り返しにおいて指が認識される)、さらなる使用のために取得される。
【0042】
マイクロコントローラの出力の電圧レベルを、電圧レベル±VPiezoに変換するために、それ自体が公知の電子増幅回路が使用され得る。
【0043】
以下、本発明の例示的な実施形態を、図面を参照してより詳細に説明する。それぞれの図は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】タッチセンシティブ操作面を有する操作ユニットの斜視図である。
【
図2】操作ユニット、すなわちそのタッチセンシティブ操作面を下方から見た底面図である。
【
図3】屈曲波の印加及びそれらの重畳の結果として、操作面の触覚的に知覚可能な局所的に分解された表面構造を示すための(概略)斜視図である。
【
図4】
図2の底面図と同様の下方からの斜視図である。
【
図6】タッチセンシティブ操作面の屈曲波によるハプティックフィードバック用のノイズ抑制のために与えられる本発明の様々な動作の効果を説明するためのシミュレーション曲線である。
【
図7】タッチセンシティブ操作面の屈曲波によるハプティックフィードバック用のノイズ抑制のために与えられる本発明の様々な動作の効果を説明するためのシミュレーション曲線である。
【
図8】タッチセンシティブ操作面の屈曲波によるハプティックフィードバック用のノイズ抑制のために与えられる本発明の様々な動作の効果を説明するためのシミュレーション曲線である。
【
図9】タッチセンシティブ操作面の屈曲波によるハプティックフィードバック用のノイズ抑制のために与えられる本発明の様々な動作の効果を説明するためのシミュレーション曲線である。
【
図10】タッチセンシティブ操作面の屈曲波によるハプティックフィードバック用のノイズ抑制のために与えられる本発明の様々な動作の効果を説明するためのシミュレーション曲線である。
【
図11】タッチセンシティブ操作面の屈曲波によるハプティックフィードバック用のノイズ抑制のために与えられる本発明の様々な動作の効果を説明するためのシミュレーション曲線である。
【
図12】タッチパネルに対して距離を空けて配置されるカバーガラスを備えるタッチスクリーンの概略図である。
【
図13】
図12と同様の模式図であるが、屈曲波によって励振されるカバーガラスとタッチスクリーンのタッチパネルとの間の光学的な接合物で満たされた空隙が備えられている。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1~5は、タッチセンシティブ操作面12を有する操作ユニット10の様々な図を示す。操作ユニット10は、例えば金属で形成された枠16を有する筐体14を備える。枠16は、例えば硬化ガラスで形成されるカバー板18を包含し、これは、例えば接着層20によって枠16に接着され、これにより、枠16に強固に接合される(
図4及び5も参照)。
【0046】
図1及び2に示すように、複数のアクチュエータ24がカバー板18の縁部22に沿って、従って枠16に沿って、カバー板18に屈曲波を印加するために配置される。これらのアクチュエータ24はそれぞれ、
図4及び5に示すように、円形のディスクの形状に設計される。各アクチュエータ24は、両側に電極28、30が設けられる単層又は複層の円形の圧電素子26を備え、複層圧電素子の場合、電極もそれぞれの圧電セラミック材料層の間に設けられる。このサンドイッチ構造は、カバー板18の底面36の接触面34内に、接着接合32によって耐せん断方式で比較的固定される。アクチュエータ24の接触は、図示されていない。
図1は、操作ユニット10が、タッチセンサシステム(40で示される)から信号を受信し、制御信号をアクチュエータ24に出力する評価及び制御ユニット38をさらに備えることのみを概略的に示し、これは、複数のアクチュエータ24のうちの1つのみのために
図1に図示される。
【0047】
加えて、操作ユニット10は、好ましくは金属で形成される枠状の櫛型構造要素42を備える。この櫛型構造要素42は、円周枠として形成されており、枠16又は縁部22に直交して延びる複数のアーム44によって形成される櫛型構造であって、複数のアームアーム44を連結する複数のアーム基部46を有する櫛型構造を備える。この櫛型構造により、それぞれのチャンバ48が形成され、このそれぞれに1つのアクチュエータ24が配置される。チャンバ48は中央領域50に開口しており、これらの開口は、約60°を超えて120°まで、特に90°を超えて延びている。この例示的な実施形態では、チャンバ48は円形に形成され、それらのチャンバ壁は、その内側でアクチュエータ24と同心に延びている。櫛型構造要素42は、枠16から分離した要素として設計されることができ、又は枠16を有する櫛構造要素42は、1つの部品として一体に形成される(双方の変形では、例えば機械加工又は鋳造による)。
【0048】
アクチュエータ24とそれらのそれぞれのチャンバ壁との間の距離a(
図4及び5を参照)を選択することにより、アクチュエータ24によってカバー板18に印加された屈曲波が減衰される周波数範囲が影響を与えられ得る。この周波数範囲は、好適には可聴範囲を含むため、この動作、すなわちチャンバによるアクチュエータ24の包含により、可聴周波数は放出されないか、又は可聴周波数は減衰された形でのみ放出される。
【0049】
図1及び2において、カバー板18の黒く示される境界領域は、参照符号54で表され、縁部及び櫛型構造要素42に沿ってアクチュエータ24の配置を覆うものとする。
【0050】
図3は、複数のアクチュエータ24の様々な信号を用い、可能性がある時間シフトされた制御がカバー板18に屈曲波を印加するために使用され得る方法を、概略的に示す。ここにおいて、特定のポイント56での屈曲波の重畳によって、短い、すなわちパルス状に存在する顕著な「バンプ」が生じ、これは、ユーザーによって触覚で知覚され得る。このユーザーの指は手動操作に起因してカバー板18のポイント56に(まだ)静止している。これは、タッチポイント56でのカバー板18内の短い「衝撃」によるものである。
【0051】
タッチポイントは、タッチ操作面12の第1段階にて、いくつかのアクチュエータ24によって発生及び感知される超音波の屈曲波によって検出され得るため、感知された信号によってタッチポイントを推測することができる。超音波によってタッチポイントを検出する技術は、一般的に知られている。あるいは、タッチパネルが、タッチセンサシステムとして使用され得る。通常、本有利な発明が使用されるタッチスクリーンは、カバー板18の下方に配置される静電容量方式、抵抗方式又は光学方式のタッチパネルで作動する。これを、
図12及び13に示す。ディスプレイ自体もこれらの図に示す。
【0052】
アクチュエータによってカバー板18に印加される可聴スペクトル内の周波数(例えば、最大20,000Hz)を有する屈曲波がカバー板18内で減衰形式でのみ伝播するか、又は伝播しないように距離aがほぼ決定される方法については、既に上記で説明している。
図6~10は、さまざまな距離と、その結果である周波数応答とのシミュレーション曲線を示す。
図6の参照曲線は、縁部までの大きな距離(20.0mm)を有するアクチュエータに基づく。ほぼ同じ量のエネルギーが、周波数範囲全体にわたってカバー板に加えられる。
図7~10に示される曲線は、アクチュエータが縁部に非常に近く、すなわち
図7では0.5mmの距離、
図8では1.0mmの距離、
図9では1.5mmの距離、
図10では2.0mmの距離で配置されるシステムに属する。可聴範囲(最大20,000Hz)内の減衰と、スペクトル分布への距離の影響とが、明確に認識され得る。
【0053】
上述のシミュレーション曲線は、櫛型構造を有する櫛型構造要素42を追加で使用することなく作成された。
【0054】
図11は、シミュレーションの結果、チャンバを形成する櫛型構造を有する櫛型構造要素42の使用により、チャンバが無い場合よりも遥かに良好な結果が達成され得るという事実が生じることを示す。
【0055】
図11は、種々のシナリオの減衰プロファイルを示す。破線は、縁部からの選択された準最適な距離にアクチュエータが配置される場合の減衰プロファイルを示す。点線は、可聴範囲内に周波数を有する屈曲波を減衰させるために、特別に選択された距離にアクチュエータが配置される場合の減衰プロファイルを示す。最後に、実線は、縁部からの最適化された距離にアクチュエータが配置され、追加で櫛型構造とそれぞれのチャンバとを有する櫛型構造要素42が使用される場合の減衰プロファイルを示す。全ての減衰プロファイル曲線は、強化ガラスによって形成されるカバー板18を想定したシミュレーションである。実線によれば、可聴周波数(最大約20,000Hz)が、超音波の周波数よりも約30dB減衰される。櫛型構造要素42を使用することにより、特定の距離の選択という概念と比較して顕著に改善されることが示される。これは、可聴範囲の周波数を有する屈曲波の減衰に正の影響を与えることを既に示す。しかし、これらの屈曲波は、まだ完全に抑制されないが(
図11の点線を参照)、これは櫛構造要素42を使用する場合には可能である。
【0056】
以下、本発明の例示的な1つの実施形態によるさらなる特別な特徴を、
図12及び13を参照して説明する。
図12は、エアギャップ58がカバー板18の下方に位置することを示し、これにより、アクチュエータ24によって屈曲波が印加されると、カバー板18が自由に「振動」することが可能になる。タッチパネル60への連結、又はタッチセンサシステムがタッチパネルとしてではなく他の方法で設計される場合には、ディスプレイ62(任意にバックライトユニットを有する。不図示)への連結は逆効果となり、屈曲波の伝播を過度に減衰させ得る。しかし、エアギャップ58の欠点は、不純物及び特に湿度がそこに蓄積する可能性があるということである。
【0057】
従って、カバー板18がタッチパネル60に、又はそのようなタッチパネル60が設けられていない場合にはディスプレイ62に光学的な接合によって接合されていると、より有利である。ディスプレイのための光学的な接合は、一般的に知られている。好適には、カバー板18内を伝播する屈曲波を減衰させないか、又は著しく減衰させない接合物64として、可撓性材料が使用される。
【0058】
図12及び13に示す例示的な実施形態では、
図1~5に示す例示的な実施形態の櫛型構造要素42が、必要に応じて追加で使用され得る。
【0059】
操作ユニットにおける操作面の下方に配置される隣接する機器に対する、カバー板、又は一般には操作面の上述の弾性接合は、本明細書に記載された本発明の屈曲波の印加を必ずしも必要することなく実現され得る物体に関する。
【0060】
本発明は、ディスプレイのカバー板への屈曲波のノイズのない印加の例に基づいて上述のように説明される。しかし、本発明は、「固定された」操作領域を有する操作パネルであって、変化できない操作パネルを備える操作ユニットにも使用され得る。刻印(押印)/刻印(彫印)、又は埋め込まれたグラフィック若しくは英数字の情報は、デバイス(装置)の種々の操作可能な機能を定めるが、それは操作パネルに設置される。操作パネルは、例えば、金属又は硬化材料といった非透明の「硬い」材料によって形成される。好ましくは、少なくとも40から50GPaの弾性率を有する金属又は材料が使用される。そのような操作ユニットでは、操作パネル及び枠、並びに櫛型構造要素が一体に形成されることができ、これは、例えば、金属(又は硬化ガラスも)といった基本材料の機械加工、又は鋳造によって達成され得る。タッチ表面、屈曲波を反射するための枠、及び圧電チャンバ(すなわち、櫛型構造要素)といった本発明に不可欠な全ての要素が、共通の要素を形成する。これにより、櫛型構造要素を含むタッチ表面と枠との間における製造するのに間違いが生じ易く難しい接着接合が、完全に省略され得る。
【0061】
そのような代替的な構造システムは、以下に説明する特徴グループの少なくとも1つを備える。
【0062】
1.車載機器用操作ユニット、特に車両用ヒューマンマシンインターフェース(HMI)であって、
枠16を有する筐体14と、
筐体14内及び/又は筐体14に配置される操作パネルであって、操作領域を有する操作面を含む操作パネルと、
筐体14内及び/又は筐体14に配置されるタッチセンサシステム40と、
上記操作パネルに屈曲波を導入するために上記操作パネルの縁部22に沿って隣接して配置される複数のアクチュエータ24と
を備え、
上記操作パネル上のアクチュエータ24それぞれに1の接触面34が割り当てられ、この接触面34を介して、上記操作パネルに屈曲波を導入するために上記操作パネルにアクチュエータ24が作用し、
複数のアクチュエータ24によって上記操作パネルに導入された屈曲波が、上記操作パネル内で重ねられ、触覚的に知覚可能な局所的に分解された表面構造を上記操作パネルに与え、
複数の接触面34が、それぞれ筐体14の枠16から距離を空けて配置され、これにより、上記操作パネルへの屈曲波の導入及び/又は上記操作パネル内の屈曲波の伝播が、上記距離の大きさから生じる波長又は周波数のために減衰され、
上記距離が、可聴周波数範囲内の周波数を有する屈曲波が減衰するように選択され、
タッチセンサシステム40によって与えられる信号を評価すべくタッチセンサシステム40を制御するため、及びタッチセンサシステム40によって与えられる信号に応じて複数のアクチュエータ24を制御するために、タッチセンサシステム40と複数のアクチュエータ24とに接続される評価及び制御ユニット38をさらに備える操作ユニット。
【0063】
2.上記距離が、枠16と、それに直交する方向におけるそれぞれの接触面34との間の空間であることを特徴とする項1に記載の操作ユニット。
【0064】
3.上記距離が、枠16と、接触面34の幾何学的中心との間の空間であることを特徴とする項2に記載の操作ユニット。
【0065】
4.各接触面34が円形面であることを特徴とする項1から3のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【0066】
5.上記操作パネルに接着される複数のアーム44が、筐体14の枠16から内側に延び、枠16に沿って配置される個別の複数のチャンバ48を形成し、チャンバ48のそれぞれに接触面34が配置され、チャンバ48が、上記操作パネルの中央領域50に対向する内側にて開口していることを特徴とする項1から4のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【0067】
6.上記複数のアームが、それらの枠16に対向する複数の端部で複数の基部46によって接続され、複数のアーム44と複数の基部46とが、上記操作パネルに接着される櫛型構造要素を形成することを特徴とする項5に記載の操作ユニット。
【0068】
7.複数のアーム44が一体的に枠16に接続されることを特徴とする項7に記載の操作ユニット。
【0069】
8.複数のチャンバ48が、それらの上記操作パネルの中央領域50に対向する内側に、上記それぞれのチャンバの周囲の60°を超えて120°まで、特に90°を超えて延びる1の開口52をそれぞれ含むことを特徴とする項5から7のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【0070】
9.開口52が、枠16に直交して延びる上記チャンバの対称軸に対して対称であることを特徴とする項8に記載の操作ユニット。
【0071】
10.複数のチャンバ48がそれぞれ対称であることを特徴とする項5から9のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【0072】
11.各接触面34が円形面であり、複数のアーム44と枠16とが、接触面34ごとに、接触面34と同心円状に延びる内周及び接触面34と同心円状に延びる底面を有するチャンバ48を形成することを特徴とする項1から10のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【0073】
12.複数のアクチュエータ24が、それぞれ1の特に円形のディスク形状の単層又は複層の圧電素子26を有する複数の圧電アクチュエータとして設計され、この圧電素子26が、それぞれの接触面34で上記操作パネルに接着されることを特徴とする項1から11のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【0074】
13.タッチセンサシステム40が、上記操作パネルに強固に接合、特に接着される複数の超音波送信機及び超音波受信機であって、物体、特に人の指によってタッチされた上記操作パネル上のポイント56を局所分解検出すべく上記操作パネルに超音波の屈曲波を印加するための複数の超音波送信機及び超音波受信機を含むことを特徴とする項1~12のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【0075】
14.上記複数の超音波送信機及び超音波受信機が、それぞれ単層又は複層の圧電素子26として形成されることを特徴とする項13に記載の操作ユニット。
【0076】
15.複数のアクチュエータ24のいくつかによって、すなわち上記操作パネルにタッチする第1段階にて、上記複数の超音波送信機及び超音波受信機の機能が実行可能であり、それぞれ予め検出されたタッチポイント56でのタッチでの触覚フィードバックのために上記操作パネルに屈曲波を印加すべくタッチする第2段階にて、対応する複数の第1アクチュエータ24が提供されることを特徴とする項13又14のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【0077】
16.タッチセンサシステム40が、物体、特に人の指によってタッチされた上記操作パネル上のポイント56を局所分解検出するためのタッチパネル60を含むことを特徴とする項1から12のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【0078】
17.上記タッチパネルが、上記操作パネルに対して距離を空けて配置されることを特徴とする項16に記載の操作ユニット。
【0079】
18.上記距離が、空気又は接着材料で満たされることを特徴とする項17に記載の操作ユニット。
【0080】
19.上記操作パネル、上記枠及び上記櫛型構造要素が一体型ユニットとして設計され(例えば、鋳造又は機械加工、例えばフライス加工により)、上記ユニットが金属、任意に硬化金属を含むことを特徴とする上記項のいずれか1項に記載の操作ユニット。
【0081】
上述の項目及び従属請求項に含まれる特徴は、1若しくは複数の他の項目、又は1若しくは複数の他の請求項を引用することなく、本発明の独立した変形とみなされるべきであり、それぞれの項目に含まれる特徴及び/又はそれぞれの従属請求項に含まれる特徴は、車載機器用操作ユニット、特に車両用ヒューマンマシンインターフェース(HMI)を引用し、それは、以下の通りである。
車載機器用操作ユニット、特に車両用ヒューマンマシンインターフェース(HMI)であって、
枠を有する筐体と、
上記筐体内及び/又は上記筐体に配置されるディスプレイであって、上記枠で囲まれる縁部を有する透明なカバー板を含むディスプレイと、
上記筐体内及び/又は上記筐体に配置されるタッチセンサシステムと、
上記カバー板に屈曲波を導入するために、上記カバー板の縁部に沿って隣接して配置される複数のアクチュエータと
を備え、
上記カバー板上の上記アクチュエータそれぞれに1の接触面が割り当てられ、上記カバー板に屈曲波を導入するために上記接触面を介して上記アクチュエータが上記カバー板に作用し、
上記複数のアクチュエータによって上記カバー板に導入された屈曲波が、上記カバー板内で重ねられ、触覚的に知覚可能な局所的に分解された表面構造を上記カバー板に与え、
上記タッチセンサシステムによって与えられる信号を評価すべく上記タッチセンサシステムを制御するため、及び上記タッチセンサシステムによって与えられる信号に応じて上記複数のアクチュエータを制御するために、上記タッチセンサシステムと上記複数のアクチュエータとに接続される評価及び制御ユニットをさらに備える操作ユニット。
【符号の説明】
【0082】
10 操作ユニット
12 操作面
14 筐体
16 枠
18 カバー板
20 接着層
22 縁部
24 アクチュエータ
26 圧電素子
28 圧電素子の電極
30 圧電素子の電極
32 接着接合
34 接触面
36 底面
38 制御ユニット
40 タッチセンサシステム
42 櫛型構造要素
44 アーム
46 基部
48 チャンバ
50 カバー板の中央領域
52 チャンバの開口
54 暗く/黒く示された境界領域
56 タッチポイント
58 カバー板とタッチパネルとの間の空隙
60 タッチパネル
62 ディスプレイ
64 接合物