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特許7032416フルオレニルアミノケトン類光開始剤、その調製方法及びフルオレニルアミノケトン類光開始剤を含有するUV光硬化性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】フルオレニルアミノケトン類光開始剤、その調製方法及びフルオレニルアミノケトン類光開始剤を含有するUV光硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/00 20060101AFI20220301BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20220301BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20220301BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20220301BHJP
   C07C 225/16 20060101ALN20220301BHJP
【FI】
C08F4/00
C08F2/50
C09D11/101
C09D4/02
C07C225/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019544745
(86)(22)【出願日】2018-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 CN2018076209
(87)【国際公開番号】W WO2018149370
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2019-08-16
(31)【優先権主張番号】201710088234.X
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710353951.0
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515324604
【氏名又は名称】常州強力先端電子材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY ADVANCED ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Wucheng Industrial Park, Zhenglu Town, Tianning,Changzhou, Jiangsu 213159,China
(73)【特許権者】
【識別番号】517427152
【氏名又は名称】常州強力電子新材料股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Qianjia Industrial Park, Yaoguan Town, Wujin District Changzhou city, Jiangsu 213011, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】銭 暁 春
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-029859(JP,A)
【文献】特開2009-019142(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0144809(KR,A)
【文献】特許第6725663(JP,B2)
【文献】特表2019-528331(JP,A)
【文献】特表2017-533288(JP,A)
【文献】特開2010-024291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 4/58
4/72- 4/82
C09D 4/00- 4/06
11/00-13/00
C07C 225/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示される構造を有する化合物又はその誘導体化合物を含むことを特徴とするフルオレニルアミノケトン類光開始剤。
【化1】

(ただし、
Aは、水素原子、ハロゲン、ニトロ基、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基、
【化2】

-COR、又は-CO-CR基を表し、ただし、-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよい。
は、水素原子、ハロゲン、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基又はC-C20のアルケニル基を表し、Rにおける-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよく、R同士が環を形成してもよい。
およびRは、それぞれ独立的にC-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、これらの基における一つ又は複数の水素原子は、互いに独立的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、又はニトロ基で置換されてもよく、且つRおよびRにおける-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよく、且つRおよびRは互いに環を形成してもよい。
或いは、Rは、C-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はC-C20のアルケニル基を表し、Rは、下記の基から選ばれるいずれか1つである。
a)化学式が
【化3】

である基。ただし、Rは水素原子、C-Cのアルキル基又はフェニル基を表し、R10、R11およびR12は互いに独立的に水素原子、C-Cのアルキル基を表す。又は
b)化学式が
【化4】

である基。ただし、nは0、1、2又は3である。又は
c)化学式が
【化5】

である基。ただし、Arは、置換又は無置換のフェニル基、ナフチル基、フラニル基、チエニル基又はピリジル基である。
は、N-ピペリジニル基又はN-ピロリル基を表し、これらの基における一つ又は複数の水素原子はハロゲン、ヒドロキシ基で置換されてもよい。
、R’は、互いに独立的にC-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のアルケニル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、ここで、これらの基における一つ又は複数の水素原子は互いに独立的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、又はニトロ基で置換されてもよく、且つ、これらの基における-CH-が-O-で置換されてもよい。或いは、RおよびR’同士は、連結してもよく、又は、-O-、-S-、-NH-を介して五員又は六員環を形成してもよい。
は、C-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、又はC-C20のアルケニル基を表し、これらの基における-CH-が-O-、-S-で置換されてもよく、且つこれらの基における一つ又は複数の水素原子は独立的にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、SR、及びORから選ばれる基で置換されてもよい。
およびRは、互いに独立的に水素原子、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を表す。)
前記誘導体化合物は、一般式(II)又は(III)で示される構造を有する化合物である。
【化6】

(ただし、Mは、二量化して形成される連結基を表し、結合手、C-C10の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、C-C12のアリーレン基又はヘテロアリーレン基であってもよく、Mにおける-CH-が硫黄、酸素、NH又はカルボニル基で置換されてもよく、水素原子がOH又はNOで置換されてもよい。)
【請求項2】
エチレン系不飽和光重合可能化合物と、請求項1に記載のフルオレニルアミノケトン類光開始剤である光開始剤とを含むことを特徴とするフルオレニルアミノケトン類光開始剤を含有するUV光硬化性組成物。
【請求項3】
前記光開始剤は、一般式(I)で示される構造を有する光開始剤及びその誘導体化合物から選択される二種又は数種の化合物の混合物であることを特徴とする請求項2に記載のUV光硬化性組成物。
【請求項4】
前記エチレン系不飽和光重合可能化合物は、一つの炭素-炭素二重結合を含む化合物であり、又は、
前記エチレン系不飽和光重合可能化合物は、2つ以上の炭素-炭素二重結合を含む化合物であることを特徴とする請求項2に記載のUV光硬化性組成物。
【請求項5】
前記UV光硬化性組成物をUVエッチングレジストインク用途又はUVソルダーレジストインク用途に用いる場合、使用される前記エチレン系不飽和光重合可能化合物の少なくとも一種は、アルカリ可溶性基を有すること特徴とする請求項2に記載のUV光硬化性組成物。
【請求項6】
前記UV光硬化性組成物は、さらに他の光開始剤を含み、
前記他の光開始剤は、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-アセトン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-オン、イソプロピルチオキサンテン、(2,4,6-トリメチル-ベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドからなる群より選ばれる一種又は多種であることを特徴とする請求項2に記載のUV光硬化性組成物。
【請求項7】
以下のステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のフルオレニルアミノケトン類光開始剤の調製方法。
(1)原料aと原料bがフリーデル・クラフツ反応により中間体aを生成する。反応式は以下の通りである。
【化7】

前記原料bが、
【化7-1】

である。
(2)前記中間体aが置換反応により中間体bを生成する。
【化8】

(3)前記中間体bが置換反応により中間体cを生成する。
【化9】

(4)前記中間体cがStevens転位反応により中間体dを生成する。
【化10】

(5)A=Hの生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Hであり、中間体dが一般式(I)の化合物である。
【化11】

の生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Fであり、中間体dが置換反応により下記の一般式(I)で示される化合物を生成する。
【化12】

【化13】

の生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Hであり、中間体dがフリーデル・クラフツ反応により下記の一般式(I)で示される化合物を生成し、この場合、Yは
【化13-1】

である。
【化14】
【請求項8】
請求項2~6のいずれか一項に記載のUV光硬化性組成物のUV塗料およびUVインクにおける応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なUV放射ラジカル重合性材料の技術分野に関し、具体的に、フルオレニルアミノケトン類光開始剤、その調製方法及びフルオレニルアミノケトン類光開始剤を含有するUV光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
α-アミノアルキルフェノン類光開始剤は、反応活性の非常に高い光開始剤である。その中で、商品化した光開始剤は、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノンおよび2-(4-メチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノンがあり、これらはCiba会社が研究したα-アミノアルキルフェニルケトン類光開始剤であり、商品名はそれぞれ「Irgacure 369」と「Irgacure 379」であり、構造は以下の通りである。
【0003】
【化1】
【0004】
このような光開始剤は、チオキサントン類の光開始剤と配合して着色系の光硬化に応用することが多く、優れた光開始剤性能を示し、例えば、セラミックインクジェットの技術において、このような光開始剤は広く応用されている。しかしながら、これらの光開始剤は、マトリックス樹脂との相溶性が悪く、大量の有機溶剤を添加する必要があり、生産作業者の健康に不利であるだけではなく、環境汚染を引き起こす。また、溶剤を添加すると、インクが拡散しやすく、パターンがぼやけて、高解像度、高精度の装飾効果を達成できない。もう一方、着色系に応用するため、性能の面では硬化速度が遅く、深層部位が完全に硬化しにくく、塗層の厚さが制限されているなどの欠点があり、その応用を制限している。
【0005】
2001年、特許文献JP2001348412Aでは、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-アセトン(商品名Irgacure 907)を光開始剤成分とする液状硬化性樹脂組成物が開示された。しかし、この化合物の構造には、芳香族環系がメチルチオ基を有するため、光照射分解後に悪臭を発し、硬化製品がひどく黄変するなどの問題が不可避に存在するので、食品包装、ワニス塗料、白いインク等の分野に応用できなくなる。
【0006】
上記の欠陥について、近年、Irgacure 907光開始剤の代替品に対する研究も報道されており、例えば、特許出願番号CN101724099には、ビフェニル基誘導体である一連のα-アミノケトン類化合物が開示され、中でも、1-([1,1-ビフェニル]-4-イル)-2-メチル-2-モルホリニルプロパン-1-オンはIrgacure 907の有効な代替品である。この化合物は、硫黄元素を含まず、UVラジカル光重合硬化系に応用する場合、優れた耐黄変性を示し、光照射分解後に悪臭を発さない。しかし、実際の応用において、このような光開始剤は、溶解性が悪く、昇華しやすく、生産設備や光源を汚染するため、完璧な代替品ではない。
【0007】
これらの問題は業界で広く懸念されており、光開始剤の臭気性、黄変性、毒性などの問題によって、家具、電器、自動車内装品、タバコ、食品、医薬及び化粧品などの多くの分野におけるUV塗料及びUVインクの応用が制限されている。上記の問題を効果的に解決し、且つ経済および環境配慮の面で優位になる光硬化性組成物を開発することは、今この産業分野が面している重要な課題の一つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、伝統的な光開始剤の溶解性を改善し、小分子活性希釈剤の使用量を低減させるフルオレニルアミノケトン類光開始剤、その調製方法及びフルオレニルアミノケトン類光開始剤を含有するUV光硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を実現するために、本発明の一つの局面によれば、フルオレニルアミノケトン類光開始剤を提供する。該光開始剤は、一般式(I)で示される構造を有する化合物又はその誘導体化合物を含む。
【0010】
【化2】
【0011】
ただし、
Aは、水素原子、ハロゲン、ニトロ基、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基、
【0012】
【化3】
【0013】
-COR、又は-CO-CR基を表し、ただし、-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよい。
【0014】
は、水素原子、ハロゲン、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基又はC-C20のアルケニル基を表し、Rにおける-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよく、R同士が環を形成してもよい。
【0015】
およびRは、それぞれ独立的にC-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、これらの基における一つ又は複数の水素原子は、互いに独立的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、又はニトロ基で置換されてもよく、且つRおよびRにおける-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよく、且つRおよびRは互いに環を形成してもよい。
【0016】
或いは、Rは、C-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はC-C20のアルケニル基を表し、Rは、下記の基から選ばれるいずれか1つである。
【0017】
a)化学式が
【0018】
【化4】
【0019】
である基。ただしは水素原子、C-Cのアルキル基又はフェニル基を表し、R10、R11およびR12は互いに独立的に水素原子、C-Cのアルキル基を表す。又は
b)化学式が
【0020】
【化5】
【0021】
である基。ただし、nは0、1、2又は3である。又は
c)化学式が
【0022】
【化6】
【0023】
である基。ただし、Arは、置換又は無置換のフェニル基、ナフチル基、フラニル基、チエニル基又はピリジル基である。
【0024】
は、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、N-ピロリル基又はN-ジアルキル基を表し、これらの基における一つ又は複数の水素原子はハロゲン、ヒドロキシ基で置換されてもよい。
【0025】
、R’は、互いに独立的にC-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のアルケニル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、ここで、これらの基における一つ又は複数の水素原子は互いに独立的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、又はニトロ基で置換されてもよく、且つ、これらの基における-CH-が-O-で置換されてもよい。或いは、RおよびR’同士は、連結してもよく、又は、-O-、-S-、-NH-を介して五員又は六員環を形成してもよい。
【0026】
は、C-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、C-C20のアルケニル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、これらの基における-CH-が-O-、-S-で置換されてもよく、且つこれらの基における一つ又は複数の水素原子は独立的にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、SR、及びORから選ばれる基で置換されてもよい。
【0027】
およびRは互いに独立的に水素原子、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を表す。
【0028】
さらに、一般式(I)で示される構造を有する光開始剤の誘導体化合物は、式(I)化合物の主体構造を保持するとともに、その分岐鎖を置換又は互いに連結して得られた誘導体化合物を含む。
【0029】
さらに、誘導体化合物は、一般式(II)又は(III)で示される構造を有する化合物である。
【0030】
【化7】
【0031】
ただし、Mは、二量化して形成される連結基を表し、結合手、C-C10の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、C-C12のアリーレン基又はヘテロアリーレン基であってもよく、Mにおける-CH-が硫黄、酸素、NH又はカルボニル基で置換されてもよく、水素原子がOH又はNOで置換されてもよい。
【0032】
本発明の他の局面によれば、フルオレニルアミノケトン類光開始剤を含有するUV光硬化性組成物を提供する。該UV光硬化性組成物は、エチレン系不飽和光重合可能化合物と光開始剤を含み、ここで、該光開始剤は前記のいずれか一種のフルオレニルアミノケトン類光開始剤である。
【0033】
さらに、光開始剤は、一般式(I)で示される構造を有する光開始剤及びその誘導体化合物から選択される二種又は数種の化合物の混合物である。
【0034】
さらに、エチレン系不飽和光重合可能化合物は、一つの炭素-炭素二重結合を含む化合物であり、アクリレート化合物又はメタクリレート化合物であることが好ましく、或いは、エチレン系不飽和光重合可能化合物は、2つ以上の炭素-炭素二重結合を含む化合物であり、アルキレングリコール、ポリオールのアクリレート又はメタクリレート、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、ポリウレタンポリオールのアクリレート、ビニルエーテル、および不飽和ジカルボン酸とポリオールとの不飽和ポリエステルであることが好ましい。
【0035】
さらに、UV光硬化性組成物をUVエッチングレジストインク用途又はUVソルダーレジストインク用途に用いる場合、使用されるエチレン系不飽和光重合可能化合物の少なくとも一種は、アルカリ可溶性基を有し、好ましくは、カルボキシル基含有樹脂である。
【0036】
さらに、カルボキシル基含有樹脂は、(メタ)アクリレート、エチレン系不飽和カルボン酸と他の共重合可能なモノマーから共重合してなる(メタ)アクリレート系重合物である。好ましくは、(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる一種又は多種である。好ましくは、エチレン系不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、イタコン酸、ブテン酸、ケイ皮酸、アクリル酸二量体、ヒドロキシ基を有するモノマーおよび環状酸無水物の付加物、ω-カルボキシル-ポリカプロラクトン-(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる一種又は多種であり、より好ましくは、エチレン系不飽和カルボン酸は、(メタ)アクリル酸である。好ましくは、他の共重合可能なモノマーは、(メタ)アクリルアミド、n-ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルナフタレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルシクロヘキサンからなる群より選ばれる一種又は多種である。
【0037】
さらに、UV光硬化性組成物は、他の光開始剤も含む。好ましくは、他の光開始剤は、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-アセトン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-オン、イソプロピルチオキサンテン、(2,4,6-トリメチル-ベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドからなる群より選ばれる一種又は多種である。
【0038】
さらに、UV光硬化性組成物は、増感剤も含む。好ましくは、増感剤は、ピラゾリン類化合物、アクリジン類化合物、アントラセン類化合物、クマリン類化合物、又は第三級アミン類化合物である。
【0039】
さらに、UV光硬化性組成物は、着色剤も含む。着色剤は、無機顔料又は有機顔料である。
【0040】
さらに、UV光硬化性組成物は、添加剤も含む。添加剤は、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、レオロジー改質剤、消泡剤、及び貯蔵安定剤の一種又は多種を含む。
【0041】
本発明の他の局面によれば、以下のステップを含む前記フルオレニルアミノケトン類光開始剤の調製方法を提供する。
【0042】
(1)原料aと原料bがフリーデル・クラフツ反応により中間体aを生成する。反応式は以下の通りである。
【0043】
【化8】
【0044】
(2)中間体aが置換反応により中間体bを生成する。
【0045】
【化9】
【0046】
(3)中間体bが置換反応により中間体cを生成する。
【0047】
【化10】
【0048】
(4)中間体cがStevens転位反応により中間体dを生成する。
【0049】
【化11】
【0050】
(5)A=Hの生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Hであり、中間体dが一般式(I)の化合物である。
【0051】
【化12】
【0052】
の生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Fであり、中間体dが置換反応により下記の一般式(I)で示される化合物を生成する。
【0053】
【化13】
【0054】
【化14】
【0055】
の生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Hであり、中間体dがフリーデル・クラフツ反応により下記の一般式(I)で示される化合物を生成し、この場合、Yは

である。
【0056】
【化15】
【0057】
さらに、ステップ(1)において、中間体aと原料は、触媒条件下でフリーデル・クラフツ反応により中間体bを生成する。原料bが
【0058】
【化16】
【0059】
である。
さらに、ステップ(2)において、中間体aと原料cは、有機溶剤の中で置換反応により中間体bを生成する。原料cが塩化チオニル又は液体臭素である。
【0060】
さらに、ステップ(3)において、中間体bと原料dは、有機溶剤の中で置換反応により中間体cを生成する。ただし、原料dがHXである。
【0061】
さらに、ステップ(4)において、中間体cと原料eは、塩基性条件で、有機溶剤の中でStevens転位反応により中間体dを生成する。ただし、原料eがR-Brである。
【0062】
さらに、ステップ(5)において、A=Hの生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Hであり、中間体dが一般式(I)の化合物である。
【0063】
【化17】
【0064】
の生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Fであり、中間体dと原料fが、塩基性条件で、有機溶剤の中で置換反応により一般式(I)で示される化合物を生成する。原料fがHAである。
【0065】
【化18】
【0066】
の生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Hであり、中間体dと原料gが触媒条件下でフリーデル・クラフツ反応により一般式(I)で示される化合物を生成する。原料gがACl又はABrである。
【0067】
本発明の他の局面によれば、上記のUV光硬化性組成物のUV塗料およびUVインクにおける応用を提供する。
【0068】
上記の目的を実現するために、本発明の一つの局面によれば、フルオレニルアミノケトン類光開始剤を含有するUV光硬化性組成物を提供する。該UV光硬化性組成物は、エチレン系不飽和光重合可能化合物と光開始剤を含み、ここで、光開始剤は、一般式(I)で示される構造を有する化合物又はその誘導体化合物を含む。
【0069】
【化19】
【0070】
ただし、
Aは、水素原子、ハロゲン、ニトロ基、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基、
【0071】
【化20】
【0072】
-COR、又は-CO-CR基を表し、ただし、-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよい。
【0073】
は、水素原子、ハロゲン、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基又はC-C20のアルケニル基を表し、Rにおける-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよく、R同士が環を形成してもよい。
【0074】
およびRは、それぞれ独立的にC-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、これらの基における一つ又は複数の水素原子は、互いに独立的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、又はニトロ基で置換されてもよく、且つRおよびRにおける-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよく、且つRおよびRは互いに環を形成してもよい。
【0075】
は、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、N-ピロリル基又はN-ジアルキル基を表し、これらの基における一つ又は複数の水素原子はハロゲン、ヒドロキシ基で置換されてもよい。
【0076】
、R’は、互いに独立的にC-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のアルケニル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、ここで、これらの基における一つ又は複数の水素原子は互いに独立的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、又はニトロ基で置換されてもよく、且つ、これらの基における-CH-が-O-で置換されてもよい。或いは、RおよびR’同士は、連結してもよく、又は、-O-、-S-、-NH-を介して五員又は六員環を形成してもよい。
【0077】
は、置換されていないフェニル基であり、又は、一つ又は複数のC-C20アルキル基、ハロゲン、シアノ基、SR、ORで置換されたフェニル基である。
【0078】
およびRは、互いに独立的に水素原子、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を表す。
【0079】
さらに、エチレン系不飽和光重合可能化合物の使用量が5-95質量部であり、光開始剤の使用量が0.05-15質量部である。
【0080】
さらに、エチレン系不飽和光重合可能化合物の使用量が10-90質量部であり、光開始剤の使用量が1-10質量部である。
【0081】
さらに、一般式(I)で示される構造を有する光開始剤は、
【0082】
【化21】
【0083】
【化22】
【0084】
【化23】
【0085】
からなる群より選ばれる一種又は多種である。
さらに、一般式(I)で示される構造を有する光開始剤の誘導体化合物は、式(I)化合物の主体構造を保持するとともに、その分岐鎖を置換又は互いに連結して得られた誘導体化合物を含む。
【0086】
さらに、誘導体化合物は、一般式(II)又は(III)で示される構造を有する化合物である。
【0087】
【化24】
【0088】
ただし、Mは、二量化して形成される連結基を表し、結合手、C-C10の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、C-C12のアリーレン基又はヘテロアリーレン基であってもよく、Mにおける-CH-が硫黄、酸素、NH又はカルボニル基で置換されてもよく、水素原子がOH又はNOで置換されてもよい。
【0089】
さらに、誘導体化合物は、
【0090】
【化25】
【0091】
である。
さらに、光開始剤は、一般式(I)で示される構造を有する光開始剤及びその誘導体化合物から選択される二種又は数種の化合物の混合物である。
【0092】
さらに、エチレン系不飽和光重合可能化合物は、モノマー化合物又はオリゴマーである。
【0093】
さらに、エチレン系不飽和光重合可能化合物は、一つの炭素-炭素二重結合を含む化合物であり、アクリレート化合物又はメタクリレート化合物であることが好ましく、又は、エチレン系不飽和光重合可能化合物は、2つ以上の炭素-炭素二重結合を含む化合物であり、アルキレングリコール、ポリオールのアクリレート又はメタクリレート、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、ポリウレタンポリオールのアクリレート、ビニルエーテル、および不飽和ジカルボン酸とポリオールとの不飽和ポリエステルであることが好ましい。
【0094】
さらに、UV光硬化性組成物をUVエッチングレジストインク用途又はUVソルダーレジストインク用途に用いる場合、使用されるエチレン系不飽和光重合可能化合物の少なくとも一種は、アルカリ可溶性基を有し、好ましくは、カルボキシル基含有樹脂である。
【0095】
さらに、カルボキシル基含有樹脂は、(メタ)アクリレート、エチレン系不飽和カルボン酸と他の共重合可能なモノマーから共重合してなる(メタ)アクリレート系重合物である。
【0096】
好ましくは、(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる一種又は多種である。
【0097】
好ましくは、エチレン系不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、イタコン酸、ブテン酸、ケイ皮酸、アクリル酸二量体、ヒドロキシ基を有するモノマーおよび環状酸無水物の付加物、ω-カルボキシル-ポリカプロラクトン-(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる一種又は多種であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0098】
好ましくは、他の共重合可能なモノマーは、(メタ)アクリルアミド、n-ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルナフタレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルシクロヘキサンからなる群より選ばれる一種又は多種である。
【0099】
さらに、UV光硬化性組成物は、さらに他の光開始剤を含み、好ましくは、他の光開始剤は、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-アセトン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-オン、イソプロピルチオキサンテン、(2,4,6-トリメチル-ベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドからなる群より選ばれる一種又は多種である。
【0100】
さらに、UV光硬化性組成物は、さらに増感剤を含む。好ましくは、増感剤は、ピラゾリン類化合物、アクリジン類化合物、アントラセン類化合物、クマリン類化合物、又は第三級アミン類化合物である。より好ましくは、増感剤の使用量が0-5質量部であり、さらに好ましくは、増感剤の使用量が0-2質量部である。
【0101】
さらに、UV光硬化性組成物は、さらに着色剤を含む。着色剤は、無機顔料又は有機顔料であり、着色剤の使用量が0-50質量部であり、好ましくは、着色剤の使用量が0-20質量部である。
【0102】
さらに、UV光硬化性組成物は、さらに添加剤を含む。添加剤は、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、レオロジー改質剤、消泡剤、及び貯蔵安定剤の中の一種又は多種を含む。好ましくは、添加剤の使用量が0-5質量部であり、より好ましくは、添加剤の使用量が0-3質量部である。
【0103】
本発明の他の局面によれば、上記のいずれか一つのUV光硬化性組成物のUV塗料およびUVインクにおける応用を提供する。
【0104】
さらに、UVインクは、UVエッチングレジストインク、UVソルダーレジストインク、フレキソ印刷インク、およびオフセット印刷インク等を含む。
【発明の効果】
【0105】
本発明が提供するフルオレニンアミノケトン類含有光開始剤は、伝統的な光開始剤の溶解性を改善し、小分子活性希釈剤の使用量を低減させることができ、且つ感度が高く、深層硬化効果が良いである。これは、光硬化性組成物、特に着色インク体系の光硬化分野における応用促進に対して、良い推進効果を有する。
【0106】
そして、本発明の調製方法において、使用される原料は、いずれも従来技術における既知の化合物であり、市販のものを購入してもよく、既知の合成方法により簡単に調製してもよく、調製方法が簡単で、製品の純度が高く、工業化生産に非常に適している。
【0107】
本発明のフルオレニルアミノケトン光開始剤を含有するUV光硬化性組成物は、高感度を有し、現像後の残留物が無く、パターン完全性が良く、且つ硬化後の塗層が無臭又は低臭であり、また耐黄変性能も優れている。
【発明を実施するための形態】
【0108】
なお、矛盾がなければ、本願における実施例及び実施例における特徴は、組み合わせることができる。以下、実施例により、本発明を詳しく説明する。
【0109】
従来技術の欠点を解決するために、本発明は、以下の技術形態を提供する。
本発明の一つの典型的な実施形態によれば、フルオレニルアミノケトン類光開始剤を提供する。該光開始剤は、一般式(I)で示される構造を有する化合物又はその誘導体化合物を含む。
【0110】
【化26】
【0111】
ただし、
Aは、水素原子、ハロゲン、ニトロ基、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基、
【0112】
【化27】
【0113】
-COR、又は-CO-CR基を表し、ただし、-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよい。
【0114】
は、水素原子、ハロゲン、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基又はC-C20のアルケニル基を表し、Rにおける-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよく、R同士が環を形成してもよい。
【0115】
およびRは、それぞれ独立的にC-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、これらの基における一つ又は複数の水素原子は、互いに独立的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、又はニトロ基で置換されてもよく、且つRおよびRにおける-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよく、且つRおよびRは互いに環を形成してもよい。
【0116】
或いは、Rは、C-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はC-C20のアルケニル基を表し、Rは、下記の基から選ばれるいずれか1つである。
【0117】
a)化学式が
【0118】
【化28】
【0119】
である基。ただしは水素原子、C-Cのアルキル基又はフェニル基を表し、R10、R11およびR12は互いに独立的に水素原子、C-Cのアルキル基を表す。又は
b)化学式が
【0120】
【化29】
【0121】
である基。ただし、nは0、1、2又は3である。又は
c)化学式が
【0122】
【化30】
【0123】
である基。ただし、Arは、置換又は無置換のフェニル基、ナフチル基、フラニル基、チエニル基又はピリジル基である。
【0124】
は、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、N-ピロリル基又はN-ジアルキル基を表し、これらの基における一つ又は複数の水素原子はハロゲン、ヒドロキシ基で置換されてもよい。
【0125】
、R’は、互いに独立的にC-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のアルケニル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、ここで、これらの基における一つ又は複数の水素原子は互いに独立的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、又はニトロ基で置換されてもよく、且つ、これらの基における-CH-が-O-で置換されてもよい。或いは、RおよびR’同士は、連結してもよく、又は、-O-、-S-、-NH-を介して五員又は六員環を形成してもよい。
【0126】
は、C-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、C-C20のアルケニル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、これらの基における-CH-が-O-、-S-で置換されてもよく、且つこれらの基における一つ又は複数の水素原子は独立的にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、SR、及びORから選ばれる基で置換されてもよい。
【0127】
およびRは、互いに独立的に水素原子、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を表す。
【0128】
本発明が提供するフルオレニンアミノケトン類含有光開始剤は、伝統的な光開始剤の溶解性を効果的に改善し、小分子活性希釈剤の使用量を低減させ、且つ感度が高く、深層硬化効果が良いである。これは、光硬化性組成物、特に着色インク体系の光硬化分野における応用促進に対して、良い推進効果を有する。
【0129】
本発明の一つの典型的な実施形態によれば、一般式(I)で示される構造を有する光開始剤の誘導体化合物は、式(I)化合物の主体構造を保持するとともに、その分岐鎖を置換又は互いに連結して得られた誘導体化合物を含む。
【0130】
好ましくは、誘導体化合物は、一般式(II)又は(III)で示される構造を有する化合物である。
【0131】
【化31】
【0132】
ただし、Mは、二量化して形成される連結基を表し、結合手、C-C10の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、C-C12のアリーレン基又はヘテロアリーレン基であってもよく、Mにおける-CH-が硫黄、酸素、NH又はカルボニル基で置換されてもよく、水素原子がOH又はNOで置換されてもよい。
【0133】
例示的に、上記の誘導体化合物は、下記の構造の化合物であってもよい。
【0134】
【化32】
【0135】
場合によっては、二種又は二種以上の前記開始剤の混合物を使用することは有利である。
【0136】
当然、一般式(I)で示される構造を有する光開始剤は、既知の他の光開始剤と混合して使用してもよい。
【0137】
本発明の一つの典型的な実施形態によれば、以下のステップを含む前記フルオレニルアミノケトン類光開始剤の調製方法を提供する。
【0138】
(1)原料aと原料bがフリーデル・クラフツ反応により中間体aを生成する。反応式は以下の通りである。
【0139】
【化33】
【0140】
(2)前記中間体aが置換反応により中間体bを生成する。
【0141】
【化34】
【0142】
(3)前記中間体bが置換反応により中間体cを生成する。
【0143】
【化35】
【0144】
(4)前記中間体cがStevens転位反応により中間体dを生成する。
【0145】
【化36】
【0146】
(5)A=Hの生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Hであり、中間体dが一般式(I)の化合物である。
【0147】
【化37】
【0148】
の生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Fであり、中間体dが置換反応により下記の一般式(I)で示される化合物を生成する。
【0149】
【化38】
【0150】
【化39】
【0151】
の生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Hであり、中間体dがフリーデル・クラフツ反応により下記の一般式(I)で示される化合物を生成し、
この場合、Yは

である。
【0152】
【化40】
【0153】
好ましくは、ステップ(1)において、中間体aと原料は、触媒条件下でフリーデル・クラフツ反応により中間体bを生成する。原料bが
【0154】
【化41】
【0155】
である。
好ましくは、ステップ(2)において、中間体aと原料cは、有機溶剤の中で置換反応により中間体bを生成する。原料cが塩化チオニル又は液体臭素である。
【0156】
好ましくは、ステップ(3)において、中間体bと原料dは、有機溶剤の中で置換反応により中間体cを生成する。ただし、原料dがHXである。
【0157】
好ましくは、ステップ(4)において、中間体cと原料eは、塩基性条件で、有機溶剤の中でStevens転位反応により中間体dを生成する。ただし、原料eがR-Brである。
【0158】
好ましくは、ステップ(5)において、A=Hの生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Hであり、中間体dが一般式(I)の化合物である。
【0159】
【化42】
【0160】
の生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Fであり、中間体dと原料fが、塩基性条件で、有機溶剤の中で置換反応により一般式(I)で示される化合物を生成する。原料fがHAである。
【0161】
【化43】
【0162】
の生成物を得ようとする場合、原料aにおいてB=Hであり、中間体dと原料gが触媒条件下でフリーデル・クラフツ反応により一般式(I)で示される化合物を生成する。原料gがACl又はABrである。
【0163】
本発明の調製方法において、使用される原料は、いずれも従来技術における既知の化合物であり、市販のものを購入してもよく、既知の合成方法により簡単に調製してもよい。ステップ(1)-(5)にかかる反応は、いずれも本分野で類似する化合物を合成する慣例的な反応であり、本発明に開示された合成思想を知っている上で、当業者にとって具体的な反応条件を確定することは容易である。本発明の調製方法が簡単であり、製品純度が高く、工業化生産に適している。
【0164】
本発明の他の局面によれば、上記のUV光硬化性組成物のUV塗料およびUVインクにおける応用を提供する。
【0165】
本発明の一つの典型的な実施形態によれば、フルオレニルアミノケトン類光開始剤を含有するUV光硬化性組成物を提供する。該UV光硬化性組成物は、エチレン系不飽和光重合可能化合物と光開始剤を含み、ここで、光開始剤は、一般式(I)で示される構造を有する化合物又はその誘導体化合物を含む。
【0166】
【化44】
【0167】
ただし、
Aは、水素原子、ハロゲン、ニトロ基、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基、
【0168】
【化45】
【0169】
-COR、又は-CO-CR基を表し、ただし、-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよい。
【0170】
は、水素原子、ハロゲン、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基又はC-C20のアルケニル基を表し、Rにおける-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよく、R同士が環を形成してもよい。
【0171】
およびRは、それぞれ独立的にC-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、これらの基における一つ又は複数の水素原子は、互いに独立的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、又はニトロ基で置換されてもよく、且つRおよびRにおける-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよく、且つRおよびRは互いに環を形成してもよい。
【0172】
或いは、Rは、C-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はC-C20のアルケニル基を表し、Rは、下記の基から選ばれるいずれか1つである。
【0173】
a)化学式が
【0174】
【化46】
【0175】
である基。ただしは水素原子、C-Cのアルキル基又はフェニル基を表し、R10、R11およびR12は互いに独立的に水素原子、C-Cのアルキル基を表す。又は
b)化学式が
【0176】
【化47】
【0177】
である基。ただし、nは0、1、2又は3である。又は
c)化学式が
【0178】
【化48】
【0179】
である基。ただし、Arは、置換又は無置換のフェニル基、ナフチル基、フラニル基、チエニル基又はピリジル基である。
【0180】
は、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、N-ピロリル基又はN-ジアルキル基を表し、これらの基における一つ又は複数の水素原子はハロゲン、ヒドロキシ基で置換されてもよい。
【0181】
、R’は、互いに独立的にC-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のアルケニル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、ここで、これらの基における一つ又は複数の水素原子は互いに独立的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、又はニトロ基で置換されてもよく、且つ、これらの基における-CH-が-O-で置換されてもよい。或いは、RおよびR’同士は、連結してもよく、又は、-O-、-S-、-NH-を介して五員又は六員環を形成してもよい。
【0182】
は、C-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、C-C20のアルケニル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、これらの基における-CH-が-O-、-S-で置換されてもよく、且つこれらの基における一つ又は複数の水素原子は独立的にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、SR、及びORから選ばれる基で置換されてもよい。
【0183】
およびRは、互いに独立的に水素原子、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を表す。
【0184】
本発明のフルオレニルアミノケトン光開始剤を含有するUV光硬化性組成物は、高感度を有し、現像後の残留物が無く、パターン完全性が良く、且つ硬化後の塗層が無臭又は低臭であり、また耐黄変性能も優れている。
【0185】
本発明のUV光硬化性組成物は、調製プロセスが簡単であり、本発明の一つの典型的な実施形態によれば、暗室中又は黄色光ランプ環境において、上記の成分を均一に攪拌混合すればよい。
【0186】
本発明の典型的な実施形態によれば、UV光硬化性組成物は、さらに他の光開始剤を含み、好ましくは、他の光開始剤は、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-アセトン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-オン、イソプロピルチオキサンテン、(2,4,6-トリメチル-ベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドからなる群より選ばれる一種又は多種である。
【0187】
本発明の一つの典型的な実施形態によれば、UV光硬化性組成物は、さらに着色剤を含む。着色剤は、無機顔料又は有機顔料であり、着色剤の使用量が0-50質量部であり、好ましくは、着色剤の使用量が0-20質量部である。
【0188】
本発明の一つの典型的な実施形態によれば、UV光硬化性組成物は、さらに添加剤を含む。添加剤は、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、レオロジー改質剤、消泡剤、及び貯蔵安定剤の中の一種又は多種を含む。
【0189】
以下、本発明のUV光硬化性組成物の各成分について、詳しく説明する。
1)エチレン系不飽和光重合可能化合物
エチレン系不飽和光重合可能化合物:ラジカル重合可能なエチレン系不飽和結合を有する化合物である。モノマー化合物(低分子量)又はオリゴマー(比較的に高分子量)であってもよい。
【0190】
一つの炭素-炭素二重結合を含む化合物は、好ましくは、アクリレート化合物やメタクリレート化合物であり、例えば、一価アルコールのアクリレート又はメタクリレートとして、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、およびアクリロニトリル、N-ジアルキルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、ビニルベンゼン、酢酸ビニル、ビニルエーテルが挙がられる。
【0191】
2つ以上の炭素-炭素二重結合を含む化合物は、アルキレングリコール、ポリオールのアクリレート若しくはメタクリレート;ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、ポリウレタンポリオールのアクリレート;ビニルエーテル;および、不飽和ジカルボン酸とポリオールとの不飽和ポリエステルを含み、例として、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、ポリエトキシ化トリヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリエステルオリゴマーアクリレート、ポリウレタンオリゴマーアクリレート、芳香族エポキシ樹脂アクリレート、マレイン酸エチレングリコールポリエステルが挙げられる。
【0192】
UV光硬化性組成物をUVエッチングレジストインク用途又はUVソルダーレジストインク用途に用いる場合、使用されるエチレン系不飽和光重合可能化合物の少なくとも一種の化合物は、アルカリ可溶性基を有する。このような化合物は、架橋重合が起こされうる以外、画像パターンを形成する時に現像処理工程に用いられる現像液(一般的にアルカリ性現像液)に対して可溶性を有する必要があり、カルボキシル基含有樹脂であることが好ましい。特に、(メタ)アクリレート、エチレン系不飽和カルボン酸と他の共重合可能なモノマーから共重合してなる(メタ)アクリレート系重合物である。前記(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートであってもよく、これらの(メタ)アクリレートは、単独に使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。前記エチレン系不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、イタコン酸、ブテン酸、ケイ皮酸、アクリル酸二量体、ヒドロキシ基を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル等)および環状酸無水物(例えば、マレイン酸無水物又はフタル酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物)の付加物、ω-カルボキシル-ポリカプロラクトン-(メタ)アクリレートなどであってもよい。共重合性又はコスト、溶解性等の観点から、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。これらのエチレン系不飽和カルボン酸は、単独に使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。前記他の共重合可能なモノマーは、(メタ)アクリルアミド、n-ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルナフタレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルシクロヘキサンであることが好ましく、これらのモノマーは、単独に使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0193】
これらの炭素-炭素二重結合化合物は、単独に使用できるだけではなく、二種以上を混合して使用してもよく、或いは、混合物を予め共重合してオリゴマーを形成し、組成物に配合して使用してもよい。光硬化性組成物に存在するラジカル重合性樹脂の使用量が5-95質量部であり、好ましくは約10-90質量部である。
【0194】
2)一般式(I)で示される構造を有する光開始剤
本発明光硬化性組成物に用いられる光開始剤は、少なくとも、一般式(I)で示されるフルオレン類化合物を主体構造として有する化合物又はその誘導体化合物の一種を含む。
【0195】
【化49】
【0196】
ただし、
Aは、水素原子、ハロゲン、ニトロ基、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基、C-C10のアルキルシクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基、
【0197】
【化50】
【0198】
-COR、又は-CO-CR基を表し、ただし、-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよい。
【0199】
は、水素原子、ハロゲン、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基又はC-C20のアルケニル基を表し、Rにおける-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよく、R同士が環を形成してもよい。
【0200】
およびRは、それぞれ独立的にC-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、これらの基における一つ又は複数の水素原子は、互いに独立的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、又はニトロ基で置換されてもよく、且つRおよびRにおける-CH-がO、N、S又はC(=O)で置換されてもよく、且つRおよびRは互いに環を形成してもよい。
【0201】
或いは、Rは、C-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はC-C20のアルケニル基を表し、Rは、下記の基から選ばれるいずれか1つである。
【0202】
a)化学式が
【0203】
【化51】
【0204】
である基。ただしは水素原子、C-Cのアルキル基又はフェニル基を表し、R10、R11およびR12は互いに独立的に水素原子、C-Cのアルキル基を表す。又は
b)化学式が
【0205】
【化52】
【0206】
である基。ただし、nは0、1、2又は3である。又は
c)化学式が
【0207】
【化53】
【0208】
である基。ただし、Arは、置換又は無置換のフェニル基、ナフチル基、フラニル基、チエニル基又はピリジル基である。
【0209】
は、N-モルホリニル基、N-ピペリジニル基、N-ピロリル基又はN-ジアルキル基を表し、これらの基における一つ又は複数の水素原子はハロゲン、ヒドロキシ基で置換されてもよい。
【0210】
、R’は、互いに独立的にC-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のアルケニル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、ここで、これらの基における一つ又は複数の水素原子は互いに独立的にアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、又はニトロ基で置換されてもよく、且つ、これらの基における-CH-が-O-で置換されてもよい。或いは、RおよびR’同士は、連結してもよく、又は、-O-、-S-、-NH-を介して五員又は六員環を形成してもよい。
【0211】
は、C-C20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C-C20のシクロアルキル基、C-C20のアルキルシクロアルキル基、C-C20のアルケニル基、C-C20のアリール基、又はC-C20のアルキルアリール基を表し、これらの基における-CH-が-O-、-S-で置換されてもよく、且つこれらの基における一つ又は複数の水素原子は独立的にアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、SR、及びORから選ばれる基で置換されてもよい。
【0212】
およびRは、互いに独立的に水素原子、C-C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基を表す。
【0213】
好ましい形態として、式(I)で示されるフルオレニルアミノケトン類化合物は、以下の構造で示される化合物を含む。
【0214】
【化54】
【0215】
【化55】
【0216】
【化56】
【0217】
【化57】
【0218】
式(I)で示される化合物を主体構造とする誘導体化合物とは、式(I)化合物の主体構造を保持するとともに、その分岐鎖を置換又は互いに連結して得られた誘導体である。本発明において、光開始剤として用いる時、前記の式(I)で示される化合物を主体構造とする誘導体化合物は、下式(II)、(III)で示される化合物である。
【0219】
【化58】
【0220】
式(II)と式(III)は、式(I)の二量体であり、Mは、二量化して形成される連結基を表し、結合手、C-C10の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、C-C12のアリーレン基又はヘテロアリーレン基であってもよく、Mにおける-CH-が硫黄、酸素、NH又はカルボニル基で置換されてもよく、水素原子がOH又はNOで置換されてもよい。
【0221】
例示的に、上記の誘導体化合物は、下記の構造の化合物であってもよい。
【0222】
【化59】
【0223】
場合によっては、二種又は二種以上の前記開始剤の混合物を使用することが有利である。
【0224】
当然、一般式(I)で示される構造を有する光開始剤は、既知の他の光開始剤と混合して使用してもよい。
【0225】
3)他の光開始剤
例えば、カンファーキノン;ベンゾフェノン(BP);ベンゾフェノン誘導体、例えば2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-メチルカルボニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(クロロメチル)ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシ-ベンゾフェノン、[4-(4-メチルフェニルチオ)フェニル]-ベンジルメチルケトン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、3-メチル-4’-フェニルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチル-4’-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;ケタール化合物、例えばベンジルジメチルケタール(651);アセトフェノン;アセトフェノン誘導体、例えばα-ヒドロキシシクロアルキルフェニルケトン、例えば2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-アセトン(1173)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-オン(184);1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(2959);2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(127);2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-フェノキシ]-イル}-2-メチル-プロパン-1-オン;ジアルコキシアセトフェノン;α-ヒドロキシ-又はα-アミノアセトフェノン、例えば(4-メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン(907)、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン(369)、(4-モルホリノベンゾイル)-1-(4-メチルベンジル)-1-ジメチルアミノプロパン(379)、(4-(2-ヒドロキシエチル)アミノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-ブタノン;チオキサントン及びその誘導体、例えばイソプロピルチオキサンテン(ITX)、2-クロロチオキサントン(CTX)、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン(CPTX)、2,4-ジエチルチオキサントン(DETX);ベンゾインアルキルエーテルおよびベンジルケタール;グリオキサル酸フェニル及びその誘導体、例えばオキソ-フェニル-酢酸2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)-エチル;二量化したグリオキサル酸フェニル、例えばオキソ-フェニル-酢酸1-メチル-2-[2-(2-オキソ-フェニルアセトキシ)-プロポキシ]-エチル(754);他のオキシムエステル、例えば1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(4-ベンゾイルオキシム)(OXE01)、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(4-アセチルオキシム)(OXE02)、9H-チオキサンテン-2-ホルムアルデヒド9-オキソ-2-(O-アセチルオキシム);モノアシルホスフィンオキシド、例えば(2,4,6-トリメチル-ベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(TPO);ジアシルホスフィンオキシド、例えばビス-(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(819)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジペンチロキシフェニル-ホスフィンオキシド;ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾールと結合するo-クロロヘキサフェニル-ビスイミダゾール等;が挙がられる。
【0226】
なお、一般式(I)で示される構造を有する光開始剤、さらには式(I)、式(II)及び式(III)の化合物は、特にBP、651、1173、184、ITX、TPOおよび819等の一つ又は複数と組み合わせて使用することが好適である。光開始剤、即ち一般式(I)で示される構造を有する光開始剤と他の光開始剤との光硬化性組成物における使用量が0.05-15質量部であり、好ましくは1-10質量部である。
【0227】
4)増感剤
また、本発明の光硬化性組成物において、より高い感度を得るために、又はLED光源と合わせるために、さらに増感剤を含んでもよい。
【0228】
増感剤の種類は、ピラゾリン類化合物、アクリジン類化合物、アントラセン類化合物、クマリン類化合物、第三級アミン類化合物等であってもよい。具体的に、1-フェニル-3-(4-t-ブチルスチリル)-5-(4-t-ブチルフェニル)ピラゾリン、1-フェニル-3-ビフェニル-5-(4-t-ブチルフェニル)ピラゾリン;9-フェニルアクリジン、9-p-メチルフェニルアクリジン、9-m-メチルフェニルアクリジン、9-o-クロロフェニルアクリジン;2-エチルアントラセン-9,10-ジ(4-クロロ酪酸メチル)、1,2,3-トリメチルアントラセン-9,10-ジオクチルエステル、2-エチルアントラセン-9,10-ジエチルエステル、2-エチルアントラセン-9,10-ジ(3-シクロヘキシルプロピオネート);3,3-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、3,3-カルボニルビス(7-メトキシクマリン)、7-(ジエチルアミノ)-4-メチルクマリン;N,N-ビス-[4-(2-スチリル-1-イル)-フェニル]-N,N-ビス(2-エチル-6メチルフェニル)-1,1-ビスフェニル-4,4-ジアミン、N,N-ビス-[4-(2-スチリル-1-イル)-4-メチルフェニル]-N,N-ビス(2-エチル-6メチルフェニル)-1,1-ビスフェニル-4,4-ジアミン等を例示的に挙げられる。
【0229】
増感剤の光硬化性組成物における使用量は、0-5質量部であり、好ましくは0-2質量部である。
【0230】
5)着色剤
UV光硬化性組成物において、一種又は多種の顔料を着色剤として含有してもよい。顔料は、任意の色であってもよく、黒、青、褐色、シアン、緑、白、紫、マゼンタ、赤、オレンジ、黄、およびそれらの混合物の特別な色を含むが、これらに限定されない。顔料は、無機顔料又は有機顔料であってもよい。
【0231】
UV光硬化性組成物に存在する有機顔料は、ペリレン、フタロシアニン顔料(例えば、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー)、シアニン顔料(Cy3、Cy5とCy7)、ナフタロシアニン顔料、ニトロソ顔料、アゾ顔料、ジアゾ顔料、ジアゾ縮合顔料、アルカリ性染料顔料、アルカリブルー顔料、インジゴ顔料、フロキシン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、カルバゾールジオキサジンバイオレット顔料、アリザリンレーキ顔料、フタルアミド顔料、カーマインレーキ顔料、テトラクロロイソインドリノン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料、並びにこれらの二種以上の混合物又はこれらの誘導体であってもよい。
【0232】
光硬化性組成物における無機顔料は、例えば金属酸化物(例えば二酸化チタン、導電性二酸化チタン)、鉄酸化物(例えば赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄と透明酸化鉄)、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物、カーボンブラック顔料、金属硫化物、金属塩化物、およびそれらの二種以上の混合物を含む。
【0233】
着色剤の光硬化性組成物における使用量が0-50質量部であり、好ましくは0-20質量部である。
【0234】
6)添加剤
様々な応用のニーズに応じて、塗料又はインクの性質や性能を改善するように、光硬化性組成物において他の成分又は添加剤が存在してもよい。添加剤は、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、レオロジー改質剤、消泡剤又は貯蔵安定剤における一種又は多種を含むが、これらに限定されない。
【0235】
添加剤の光硬化性組成物における使用量が0-5質量部であり、好ましくは0-3質量部である。
【0236】
本発明の光硬化性組成物は、重合反応する時に紫外線、可視光線、近赤外線等、電子線等によるエネルギーによって重合し、目的重合体が得られる。エネルギーを与える光源として、250nmから450nmまでの波長領域で発光する主波長を有する光源が好ましい。250nmから450nmまでの波長領域で発光する主波長を有する光源の例として、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、高出力メタルハライドランプ、キセノンランプ、パルス発光キセノンランプ、重水素ランプ、Ledランプ、蛍光ランプ、Nd-YAG周波数三倍化レーザー、He-Cdレーザー、窒素レーザー、Xe-Clエキシマレーザー、Xe-Fエキシマレーザー、半導体励起固体レーザー等の様々な光源が挙げられる。
【0237】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明に対する制限ではなく、当業者は、同じ又は類似する効果を得るために、本発明を脱離しない範囲で実施例を修正する能力を有する。
【0238】
実施例1
(1)9,9-ジメチル-7-フルオロフルオレン-2-ブタノン(中間体38a)の調製
【0239】
【化60】
【0240】
500mlの四つ口フラスコに80gの無水三塩化アルミニウム、106gの9,9-ジメチル-7-フルオロフルオレン、及び150mlのジクロロメタン溶剤を加え、温度を10℃以下に制御し、n-ブチリルクロリド53gを徐々に滴下し、滴下した後に、35-45℃に昇温して4-6h攪拌し、反応物を冷却した後に塩酸-氷水中に投入し、有機層を抽出し、中性になるまで洗浄し、乾燥させ、減圧蒸留して中間体38a 109gが得られ、収率78%、純度99%、MS(m/z):283(M+1)であった。
【0241】
(2)2-クロロ-9,9-ジメチル-7-フルオロフルオレン-1-ブタノン(中間体38b)の調製
【0242】
【化61】
【0243】
四つ口フラスコに141gの中間体38a及び100mlのジクロロメタン溶剤を加え、温度を30-40℃に制御して59gの塩化チオニルを滴下し、窒素ガスを導入して塩化水素を除去した。水で洗浄して有機層を抽出し、乾燥させ、溶剤を回収し、147gの中間体38bが得られ、収率93%、純度98%、MS(m/z):317(M+1)であった。
【0244】
(3)2-ジメチルアミノ-9,9-ジメチル-7-フルオロフルオレン-1-ブタノン(中間体38c)の調製
【0245】
【化62】
【0246】
四つ口フラスコに、75gのジメチルアミンを含有するエチルエーテル溶液を加え、氷浴に入れ、攪拌しながら158gの中間体38bを滴下し、温度を0℃程度に制御し、攪拌して反応させた。窒素を導入して過剰のジメチルアミンを除去し、反応液を水に移し、有機層を抽出し、中性になるまで水で洗浄し、乾燥させ、エチルエーテルを蒸発させ、減圧蒸留して133gの中間体38cが得られ、収率82%、純度99%、MS(m/z):326(M+1)であった。
【0247】
(4)2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-9,9-ジメチル-7-フルオロフルオレン-1-ブタノン(中間体38d)の調製
【0248】
【化63】
【0249】
162gの中間体38c及び150mlのトルエン溶剤を四つ口フラスコに加え、63gの塩化ベンジルを攪拌しながら徐々に滴下し、昇温して12h攪拌し、蒸留により溶剤を回収し、加水して50-70℃まで昇温し、塩基性液を加えて0.5-1h還流反応させ、冷却後に有機層を分離し、抽出、乾燥後に、黄色の粘着性物質が得られ、エタノールで再結晶させ、193gの中間体38dが得られ、収率93%、純度97%、MS(m/z):416(M+1)であった。
【0250】
(5)2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-9,9-ジメチル-1-(7-モルホリノフルオレニル)ブタノン(化合物38)の調製
【0251】
【化64】
【0252】
四つ口フラスコに、103gの中間体38d、45gのモルホリン、100mlのDMSO溶剤及び5gの炭酸カリウムを順に加え、120-160℃まで昇温して30h反応させた。冷却後に抽出、洗浄、乾燥し、赤褐色のペーストが得られ、エタノールで再結晶させ、乾燥して89gの化合物38が得られ、収率75%、純度99.5%であった。
【0253】
生成物の構造は、水素核磁気共鳴分光法及び質量分析法により確認された。
H-NMR(CDCl,500MHz):0.96-1.54 (5H,m),1.67 (6H,s),2.27(6H,s),2.76(2H,s),2.92(4H,m),3.67(4H,m),6.71-7.66(8H,m),7.92-8.18(3H,m)
MS(m/z):483(M+1)
実施例2
(1)2-アリル-2-ジメチルアミノ-9,9-ジメチル-7-フルオロフルオレン-1-ブタノン(中間体39d)の調製
【0254】
【化65】
【0255】
実施例1における中間体38cを原料とし、162gの38cと適量のトルエン溶剤を四つ口フラスコに加え、39gの塩化アリルを攪拌しながら徐々に滴下し、昇温して12h攪拌し、蒸留により溶剤を回収し、加水して50-70℃まで昇温し、塩基性液を加えて0.5-1h還流反応させ、冷却後に有機層を分離し、抽出、乾燥した後に、黄色の粘着性物質が得られ、エタノールで再結晶させ、167gの中間体39dが得られ、収率92%、純度98%、MS(m/z):366(M+1)であった。
【0256】
(2)2-アリル-2-ジメチルアミノ-9,9-ジメチル-2-(7-ピペリジニルフルオレニル)ブタノン(化合物39)の調製
【0257】
【化66】
【0258】
四つ口フラスコに、92gの中間体39d、45gのピペリジン、適量のDMSO溶剤及び少量の炭酸カリウムを順に加え、120-160℃まで昇温して30h反応させた。冷却後に抽出、洗浄、乾燥して、赤褐色のペーストが得られ、エタノールで再結晶させ、乾燥して83gの化合物39が得られ,収率73%、純度99%であった。
【0259】
生成物の構造は、水素核磁気共鳴分光法及び質量分析法により確認された。
H-NMR(CDCl,500MHz):0.96-1.54 (11H,m),1.67 (6H,s),2.17(2H,s),2.27(6H,s),2.72(4H,m),4.97-5.71(3H,m),6.71-8.18(6H,m)
MS(m/z):431(M+1)
実施例3
(1)9,9-ジブチルフルオレン-1-ブタノン(中間体40a)の調製
【0260】
【化67】
【0261】
方法は、38aの調製方法と同様であり、MS(m/z):349(M+1)
(2)2-クロロ-9,9-ジブチルフルオレン-1-ブタノン(中間体40b)の調製
【0262】
【化68】
【0263】
方法は、38bの調製方法と同様であり、MS(m/z):383(M+1)
(3)2-ジメチルアミノ-9,9-ジブチルフルオレン-1-ブタノン(中間体40c)の調製
【0264】
【化69】
【0265】
方法は、38cの調製方法と同様であり、MS(m/z):392(M+1)
(4)2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-9,9-ジブチルフルオレン-1-ブタノン(化合物40)の調製
【0266】
【化70】
【0267】
方法は、38dの調製方法と同様である。
生成物の構造は、水素核磁気共鳴分光法及び質量分析法により確認された。
【0268】
H-NMR(CDCl,500MHz):0.96-1.87 (23H,m),2.27(6H,s),2.76(2H,s),7.08-8.18(12H,m)
MS(m/z):482(M+1)
【0269】
実施例4
(1)2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-9,9-ジブチル-1-(7-ベンゾイル)ブタノン(化合物41)の調製
【0270】
【化71】
【0271】
1000mlの四つ口フラスコに、80gの無水三塩化アルミニウム、240.5gの化合物3及び200mlのジクロロメタン溶剤を加え、温度を10℃以下に制御し、70gの塩化ベンゾイルを徐々に滴下し、滴下した後に35-45℃に昇温して4-6h攪拌し、反応物が冷却した後に塩酸-氷水中に投入し、有機層を抽出し、中性になるまで洗浄し、乾燥、減圧蒸留して237gの中間体化合物39が得られ、収率81%、純度98%であった。
【0272】
生成物の構造は、水素核磁気共鳴分光法及び質量分析法により確認された。
H-NMR(CDCl,500MHz):0.96-1.87 (23H,m),2.27(6H,s),2.76(2H,s),7.08-8.18(16H,m)
MS(m/z):586(M+1)
実施例5-20
実施例1-4の合成方法に参照し、実施例5-20の化合物42-57(即ち、実施例5で調製された化合物が化合物42であり、実施例6で調製された化合物が化合物43であり、以降同様)を調製した。目的化合物及びそのLC-MSデータは表1に示される。
【0273】
【表1-1】
【0274】
【表1-2】
【0275】
性能評価
1.溶解性能測定
本分野で広く応用されている希釈剤1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)とアセトン溶剤を例として、本発明の光開始剤及び背景技術に言及したIrgacure 369とIrgacure 379の溶解性能を測定し、20℃の条件で100gの溶剤に溶解できる最大重量を評価標準とした。測定結果を表2に示す。
【0276】
【表2-1】
【0277】
表2より、フルオレン構造を含む本発明のα-アミノケトン類光開始剤は、商市販のIrgacure 369とIrgacure 379光開始剤に比べて、溶解性が大幅に向上し、使用する場合に、小分子活性希釈剤の使用量を大幅に減少させた。
【0278】
2.硬化性能測定
α-アミノケトン類光開始剤は、光硬化着色系において高い光開始剤活性を有し、特に光硬化性着色塗料とインクに適用できるため、該類の開始剤をインク系に応用することで硬化性能の評価を行った。
【0279】
ステップ1.顔料ペーストを調製し、この顔料ペーストにおける各成分の重量百分率は以下の通りである。
【0280】
【表2-2】
【0281】
上記の原料成分を竪型サンドミルで粒径<1μmまで研磨し、濾過して前記顔料ペーストが得られた。
【0282】
ステップ2.UV硬化用インクを調製し、該インクにおける各成分の重量比は以下の通りである。
【0283】
ポリウレタンアクリレートSR9010 70%
エポキシアクリレート E201 20%
顔料ペースト 2%
光開始剤 5%
ITX 2%
レベリング剤 0.5%
シランカップリング剤 0.5%
ブタノン 添加する又は添加しない(開始剤の溶解性によって調節する)
上記のインク成分における光開始剤は、本発明の光開始剤又は市販のIrgacure 369と907である。369の溶解性が良くないため、上記の配合物に添加する時、完全に溶解させるためには10%程度のブタノン溶剤を添加する必要がある。
【0284】
上記の配合物を四つ口フラスコにおいて、室温で3h遮光攪拌し、濾過して硬化用インクを得た。インクをセラミックタイルにスプレーし、スプレー厚さが60-80μmであり、そして、紫外光源の線出力密度が80mw/cmである紫外線で50s光照射し、さらに紫外硬化したセラミックタイルを80℃にて50min焼結し、冷却してからセラミックタイル上のインク塗層の効果を調べた。
【0285】
その中で、付着性測定は、GB/T 9286-1998測定標準を参照し、クロスカット法(100マス)により測定し、0-5級の標準に準じて評価した。深層硬化度は、指ほじくり法を採用し、即ち、指の爪で塗層をほじくり、脱落現象や素地見え現象がない場合を底層が完全に硬化したことと評価した。パターン効果は、肉眼で観察し、パターンがはっきり繊細で、エッジがなめらかで粗くない場合をパターン効果が良い標準とした。具体的な測定結果を表3、表4、表5と表6に示す。
【0286】
【表3-1】
【0287】
【表3-2】
【0288】
【表4-1】
【0289】
【表4-2】
【0290】
【表5-1】
【0291】
【表5-2】
【0292】
【表6-1】
【0293】
【表6-2】
【0294】
表3、表4、表5、表6より、フルオレン構造を含む本発明のα-アミノケトン類光開始剤は、より高い感度を有し、着色系の中でより良い深層硬化性能を有し、成膜後の力学性能がより優れている。
【0295】
以上の説明において、本発明の上記の実施例は、以下の技術効果を実現できたことがわかる。本発明が提供するフルオレニルアミノケトン類光開始剤は、伝統的な光開始剤の溶解性を効果的に改善し、小分子活性希釈剤の使用量を低減させることができ、かつ感度が高く、深層硬化効果が良く、着色インク体系の光硬化分野における応用促進に対して、良い推進効果を有する。
【0296】
以下、具体的な実施例により、さらにフルオレニルアミノケトン類光開始剤を含有するUV光硬化性組成物の応用システムを説明し、評価方法及び標準は以下の通りである。
【0297】
一、現像性は、走査型電子顕微鏡(SEM)で基板上のパターンを観察し、非露光部分に残留物が観察されず(○)、非露光部分に少量の残留物が観察されるが、残留量が許容できる(◎)、非露光部分に明らかに残留物が観察される(●)、パターン完全性は、パターンに欠陥の有無を観察し、欠陥なし(△)、ほんの一部の欠陥(□)、ひどい欠陥(▲)。
【0298】
二、硬化膜の残留臭は、鼻で嗅いで評価し、測定結果は、1(無臭)、2(臭気あり)、3(刺激性臭気)の三つのグレードに分ける。
【0299】
三、黄変性は、色差計(アメリカエックスライトのX-Rite Color i7 )により全透過スキャンを行い、スキャン波長が400-700nmであり、△b値を読み取って黄変性を評価し、△bが小さいほど黄変が顕著ではなく、△bが大きいほど黄変がひどい。
【0300】
四、付着力評価は、GB9286-88「着色塗料とワニスフィルムのクロスカット試験」を参照し、クロスカット実験方法により塗膜付着力の良し悪しを評価した。破壊程度によって0-5級(計6つのグレード)に分け、最も良いのは0級であり、即ち膜面のグリッドがいずれも脱落していない。5 級は極めて悪いものであり、膜面がひどく剥落している。
【0301】
以下の論述において、UV光硬化性組成物の調製中、重量百分率で各成分を計量し、Irgacure 907とAPi-307を同等条件における比較例化合物とする。
【0302】
ただし、907と307の構造式は以下に示される。
【0303】
【化72】
【0304】
実施例21:UV塗料
材料名称 使用量(質量部)
芳香族アクリレートハーフエステル 46
低粘度芳香族モノアクリレート 22
POEA(アクリル酸フェノキシエチル) 20
カーボンブラック(Raven 450) 4.0
光開始剤 4.5
ITX 0.5
BP(ベンゾフェノン) 2.0
レベリング剤 1.0
塗布条件:「GB/T 9271-2008 着色塗料とワニス標準試験板」を参照し、基材であるブリキシートを前処理し、そして暗室で均一に攪拌した配合物を25#のワイヤーバーでブリキシートに塗布し、塗層厚さが約25μmであった。露光条件: RW-UV.70201クローラ型露光機、放射波長が250-450nmであった。熟成条件:露光後、80℃のオーブンで24hベークした。測定結果は、表7に示される通りである。
【0305】
【表7】
【0306】
実施例22:UVエッチングレジストインク
材料名称 使用量(質量部)
芳香族酸メタクリル酸ハーフエステルSB400 55
TMPTA(トリヒドロキシメチルプロパントリアクリレート) 25
光開始剤 3
ITX 1.5
フタロシアニンブルー 1
タルク粉末 14
レベリング剤 0.5
印刷条件:100Tスクリーン、乾燥膜厚さ8-10μm、ベーク条件:75℃で20分間ベークした。露光条件:RW-UV.70201クローラ型露光機、放射波長:250-450nm、現像条件:1%炭酸ナトリウム溶液にて、30±2℃で40s現像した。測定結果は表8に示される通りである。
【0307】
【表8】
【0308】
実施例23:UVソルダーレジストインク
A成分材料 使用量(質量部)
エポキシアクリル樹脂 CN144 45
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) 25
光開始剤 3
2-エチルアントラセン-9,10-ジエチルエステル 0.5
ITX 1
フタロシアニンブルー 1
シリカ R972 1.5
沈殿硫酸バリウム 22
消泡剤 1
B成分材料 使用量
エポキシアクリル樹脂 CN2100 45
DPHA 30
シリカ R972 1.5
沈殿硫酸バリウム 23
消泡剤 0.5
A成分とB成分を3:1で均一に混合し、半時間放置した。印刷条件:36-43Tスクリーン印刷を行い、乾燥膜厚さが12-15μmであった。プレベーク条件:75℃で第一の面を20分間、第二の面を25分間ベークした。露光条件:RW-UV.70201クローラ型露光機、放射波長が250-450nmであった。現像条件:0.5%水素酸化ナトリウム溶液にて、30±2℃で60s現像した。測定結果は、表9に示される通りである。
【0309】
【表9】
【0310】
実施例24:UVフレキソ印刷インク
材料名称 使用量(質量部)
ポリエステルアクリル樹脂 EB657 10
エポキシアクリル樹脂 5
3-プロポキシ化グリセリルトリアクリレート 30
TPGDA (トリプロピレングリコールジアクリレート) 31
光開始剤 2
ITX(イソプロピルチオキサントン) 2
EDAB 3
安定剤 1.5
顔料 PY13 14
分散剤 1.5
以上の原料を暗室で均一に混合し、5μmの厚さで白い紙板に塗布した。露光条件:RW-UV.70201クローラ型露光機、放射波長が250-450nmであった。測定結果は表10に示される通りである。
【0311】
【表10】
【0312】
実施例25:UVオフセット印刷インク
材料名称 使用量(質量部)
エポキシアクリル樹脂 CN2204 40
4官能ポリウレタンアクリレート CN294 16
6官能ポリウレタンアクリレート CN293 12
顔料カーボンブラック 18
タルク粉末 4
活性アミン CN373 5
光開始剤 5
以上の原料を暗室で均一に混合し、2μmの厚さでプラスチック基材に塗布した。露光条件:RW-UV.70201クローラ型露光機、輻射波長が250-450nmであった。測定結果は表11に示される通りである。
【0313】
【表11】
【0314】
実施例21-25実験結果より、本発明のフルオレニルアミノケトン光開始剤を含有する光硬化性組成物は、硬化塗料及びインクに応用する場合、光硬化性が良く、耐黄変性が良く、硬化後に臭気残留なし、総合性能が優れている。
【0315】
以上の記載は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、当業者にとって、本発明を様々に変更や変化することが可能である。本発明の趣旨や原則の範囲内でのすべての変更、均等変換、改進等が本発明の保護範囲内に含まれることが意図される。